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審決分類 審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 無効としない G02B
審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 無効としない G02B
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない G02B
管理番号 1117122
審判番号 無効2003-35236  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1985-01-14 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-06-09 
確定日 2004-04-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第1962765号発明「交換レンズ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由

見出しの一覧

【1】手続の経緯・・・・2頁*

【2】本件特許発明・・・・3頁*

【3】請求人の主張する無効理由・・・・3頁*

【4】請求人が提示した証拠方法に記載された事項 ・・・・7頁*
・・・・
【4-2】甲第2号証(特開昭57-165821号公報) ・・・・7頁*
【4-3】甲第3号証(特開昭55-76309号公報) ・・・・9頁*
【4-4】甲第4号証(特公昭52-15226号公報) ・・・・11頁*
【4-5】甲第5号証(特開昭50-67650号公報) ・・・・12頁*
・・・・
【4-9】甲第9号証(特開昭54-108628号公報) ・・・・14頁*
・・・・

【5】当審の判断
【5-1】無効理由Iについて・・・・18頁*
(1)甲第2号証に開示された発明・・・・18頁*
(2)一致点・・・・19頁*
(3)相違点・・・・19頁*
(4)相違点1についての判断・・・・19頁*
(5)相違点2についての判断・・・・20頁*
(6)結論・・・・21頁*
・・・・
【5-2】無効理由IIについて・・・・26頁*
【5-3】無効理由IIIについて・・・・29頁*
【5-4】無効理由IVについて・・・・29頁*
【5-5】無効理由Vについて・・・・30頁*
【5-6】無効理由VIについて・・・・30頁*
【5-7】無効理由VIIについて・・・・30頁*

【6】結び・・・・30頁*

(注)*は、34字/行・39行/頁で印刷した際の、該当個所を示す目安である。

【1】手続の経緯
本無効審判事件の審理の対象である特許第1962765号は、昭和58年2月1日に出願された特願昭58-15860号の一部を特許法第44条第1項の規定に基づき、同年7月25日に新たな出願としたものであり、平成4年10月6日に出願公告され、平成6年法律第116号による改正前の特許法第64条の規定により平成5年9月13日付け手続補正書により明細書が補正され、その後、平成7年8月25日に設定登録された。そして、株式会社シグマより、平成15年6月9日付けで本件の特許発明に対して無効の審判が請求され、被請求人であるコニカミノルタ株式会社(平成15年11月26日に名義変更届提出)により、平成15年9月8日付けで答弁書が提出され、さらに、請求人より、平成15年12月1日付けで弁駁書が提出された。

【2】本件特許発明
本件の特許請求の範囲第1項に記載された発明の要旨は、出願公告後に補正された明細書の記載(甲第1号証の1及び甲第1号証の2)からみて、補正された特許請求の範囲に記載されたとおりの、以下のものと認められる。(以下、「本件特許発明」という。)
「カメラ本体に交換自在に装着される交換レンズにおいて、(以下、「構成A」という。)
撮影光学系と、(以下、「構成B」という。)
上記撮影光学系内に設けられ、カメラ本体内で算出された駆動量データに応じた量だけ撮影光学系の撮影距離を変化させ、被写体光の結像位置を移動させる撮影距離調整手段と、(以下、「構成C」という。)
上記撮影光学系の焦点距離を設定する焦点距離設定手段と、(以下、「構成D」という。)
上記撮影光学系が有する焦点距離範囲を複数の焦点距離領域に分割して、上記焦点距離設定手段によって設定された焦点距離が上記複数の焦点距離領域のうちどの領域に属しているかを示すデータを出力するデータ出力手段と、(以下、「構成E」という。)
所望の結像位置移動量を上記駆動量に変換するための変換データについて、上記複数の焦点距離領域の夫々につき1つの変換データが記憶された記憶手段と、(以下、「構成F」という。)
上記データ出力手段の焦点距離領域データに基づいて、該当する領域の上記変換データをmビットの指数部とnビットの有効数字部とからなる信号としてカメラ本体へ出力する出力手段と、(以下、「構成G」という。)
を有することを特徴とする交換レンズ。」

【3】請求人の主張する無効理由
【3-1】無効理由I
請求人が主張する第1の無効理由は、甲第2号証の発明に、甲第3、4号証のズームレンズと焦点距離設定手段を適用し、甲第5号証に開示されるコード板による撮影情報設定手段をデータ出力手段として適用して、焦点距離設定手段によって設定された焦点距離が複数の焦点距離領域のうちどの領域に属しているかを示すデータを出力するデータ出力手段を構成し、甲第9号証に開示される記憶装置(ROM)に複数の焦点距離領域の夫々につき1つの変換データを対応させて記憶させ、コード板の出力信号に対応する記憶装置(ROM)からの信号を、慣用手段である浮動小数点方式の出力手段を介して出力する構成とすることにより、甲第7号証、甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証に開示されるデジタル技術分野における技術常識を有する当業者が、本件特許発明を容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同第123条第1項第1号(昭和60年改正法)に該当するというものである。以下、これを「無効理由I」という。
…(審判請求書22頁1行〜25頁末行から1行上まで、弁駁書9頁19行〜17頁2行)

【3-2】無効理由II
請求人が主張する第2の無効理由は、甲第3号証の発明に、甲第5号証に開示されるコード板を使用して焦点距離が複数の焦点距離領域のうちどの領域に属しているかを示すデータを出力するデータ出力手段を適用し、甲第9号証に開示される記憶装置(ROM)に複数の焦点距離領域の夫々につき1つの変換データを対応させて記憶させ、前記データ出力手段の出力信号に応じて該当する領域のデータを出力するデータ出力手段とを組み合わせ、記憶装置(ROM)からの信号を慣用手段である浮動小数点方式の出力手段を介して出力する構成とすることにより、甲第7号証、甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証に開示されるデジタル技術分野における慣用技術を知る当業者が、本件特許発明を容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同第123条第1項第1号(昭和60年改正法)に該当するというものである。以下、これを「無効理由II」という。
なお、無効理由IIに関して、甲3号証、甲第5号証及び甲第9号証に開示される発明を組み合わせる動機は、甲第2、3、5、9号証に開示された発明及び前記デジタル技術分野における慣用技術から容易に生じると主張している。
…(審判請求書25頁末行〜29頁1行、弁駁書17頁3行〜19頁10行)

【3-3】無効理由III
請求人が主張する第3の無効理由は、甲第15号証(拒絶査定不服審判の請求取り下げにより拒絶査定が確定した特許出願の公開特許公報)と本件特許発明を対比すると、甲第15号証では変換データのデジタル信号として、浮動小数点方式の信号を使用することについての記載がない点で異なるが、甲第13号証において特許庁審判部において認めているように、デジタル技術の分野では仕様によって二者択一的に決定される設計的事項であって、その相違により本件特許発明に進歩性を生ずるものではない。してみれば、他の構成を同じくする本件特許発明も同じ拒絶理由により無効にすべきものであるというものである。以下、これを「無効理由III」という。
…(審判請求書29頁2行〜18行、弁駁書19頁11行〜20頁10行)

【3-4】無効理由IV
請求人が主張する第4の無効理由は、本件特許明細書に以下の『』で指摘する記載不備があり、特許法第36条第3、4項(昭和60年改正法)に規定する要件を満たしておらず、同第123条第1項第3号(昭和60年改正法)に該当するというものである。以下、これを「無効理由IV」という。
『本件特許発明の目的は、(1)自動焦点調節方法と(2)その自動焦点方法の実施の際に使用する交換レンズを提供することである。ところが、補正された特許請求の範囲は、交換レンズについての発明しか記載されておらず、また、明細書の説明も交換レンズの構成とその説明だけで「自動焦点調節方法」の解決手段とはどのようなものか明確に記載されていない』
…(審判請求書29頁19行〜30頁4行、弁駁書20頁12行〜21頁4行)

【3-5】無効理由V
請求人が主張する第5の無効の理由は、本件特許明細書に以下の『』で指摘する記載不備があり、特許法第36条第3項(昭和60年改正法)に規定する要件を満たしておらず、同第123条第1項第3号(昭和60年改正法)に該当するというものである。以下、これを「無効理由V」という。
『本件特許発明の効果は、発明の効果をズームレンズのみに限定したことに伴なって甲第1号証の2の補正事項4に記載されるように「カメラ本体側で算出されたズレ量データと交換レンズからの変換係数データとにより駆動手段の駆動量データをカメラ本体側で算出し、この駆動量データに基づいて交換レンズの焦点調節用レンズを移動させて自動的に焦点調節を行なう場合に、上記変換係数のデータが上位mビットの指数部と下位nビットの有効数字部とに分離された(m+n)ビットのデータとして転送されるようにしたので、様々な種類の交換レンズや、特に焦点距離が可変なズームレンズにおいても、この変換係数データのビット数を上記駆動量データ算出に最小限必要なビット数を抑えることができ、且つ転送時間の短縮することができる。」(甲第1号証の1の32頁63欄10〜21行及び、甲第1号証の2の補正事項4)と補正されたが、「特に焦点距離が可変なズームレンズにおいてもこの変換係数データのビット数を…最小限必要なビット数を抑えることができ、且つ転送時間を短縮することができる。」との効果説明は、様々な種類の交換レンズを同一カメラシステムに使用する場合、ズームレンズ以外の単焦点交換レンズも浮動小数点表示方式のデータを出力するものでなければならない(浮動小数点表示方式のデータを出力する単焦点レンズは特許異議申立時に補正により除外されている。)が、ズームレンズは、焦点距離設定後、単焦点レンズと同じ値に出力データが設定されるものであるから、ズームレンズだからといって特にビット数が抑えられるようになったり、転送時間が短縮するわけではないから、この効果説明は虚偽の説明であって、如何にも効果があるように錯覚させ、発明の効果が顕著であると誤認させるものである』
…(審判請求書30頁5行〜31頁8行、弁駁書21頁5行〜23頁16行)

【3-6】無効理由VI
請求人が主張する第6の無効理由は、本件特許明細書に以下『』で指摘する誤った記載があり、特許法第36条第3項(昭和60年改正法)に規定する要件を満たしておらず、同第123条第1項第3号(昭和60年改正法)に該当するというものである。以下、「無効理由VI」という。
『本件特許は単焦点レンズの発明からズームレンズの発明に限定したことに伴って、発明の効果2)として「これにより、焦点調節動作の応答性を向上させることができ、撮影者が焦点調節のスピードに対してもどかしさを感じるようなことがなくなるという効果を有する。特にズームレンズでは、焦点距離の変化に対して、そのとき設定されている焦点距離に対応する変換係数を送る必要があるが、本発明によれば高速でデータ転送を行うことができ、焦点調節動作の応答性は著しく向上する。」(甲第1号証の2の補正事項5)を加入しているが、前段の「焦点調節動作の応答性を向上させることができ、撮影者が焦点調節のスピードに対してもどかしさを感じるようなことがなくなるという効果を有する。」という効果は、交換レンズ自体の効果ではなく、カメラ本体と交換レンズの組合せからなるカメラシステムとしての応答性の問題であるから、被請求人が放棄した甲第2号証に示される単焦点交換レンズと同じであり、格別の効果ではないので、誤った効果の説明である。
さらに、後段の「特に、ズームレンズでは、焦点距離の変化に対して、そのとき設定されている焦点距離に対応する変換係数を送る必要があるが、本発明によれば高速でデータ転送を行うことができ、焦点調節動作の応答性は著しく向上する。」とあるが、この効果は、ズームレンズだからと言っても、焦点距離設定後は単焦点レンズと同じ状態となるのであるから、データ転送について考えれば、単焦点レンズと転送速度は同じであり、「特に」と強調する効果ではない。ましてズームレンズだから単焦点レンズよりも高速でデータ転送が行われるようになる訳ではない。また、甲第12号証で説明されるように、固定小数点方式とした場合と比較しても特に転送速度が優れているとは言えない。従って、ズームレンズの場合について、「特に焦点調節動作の応答性は著しく向上する」という効果は、技術常識では考えられない効果説明である。』
…(審判請求書31頁9行〜32頁16行、弁駁書23頁17行〜24頁6行)

【3-7】無効理由VII
請求人が弁駁書において新に主張する第7の無効理由は、公告後の補正が違法であれば、本件特許の特許請求の範囲は出願公告時のそれであるとみなされるので、そのようにみなされた本件特許発明は、甲第2号証及び甲第9号証に開示された発明並びに浮動小数点方式を開示する甲第10号証或いは甲第11号証に開示された発明に基づいて容易に発明できたものであるというものである。以下、これを「無効理由VII」という。
…(弁駁書24頁14行〜21行)

【4】請求人が提示した証拠方法に記載された事項
【4-1】甲第1号証1及び甲第1号証の2
それぞれ、本件の特許出願(特許第1962765号)を特公平4-62364号として平成4年10月6日に出願公告した特許公報、及び本件特許出願の特許法第64条の規定による補正事項を掲載した平成9年1月8日発行の補正公報である。

【4-2】甲第2号証(特開昭57-165821号公報)
(特許請求の範囲第2、3項)
「(2) カメラ側に設けられ、撮影用変換レンズの透過光を測定し、所定焦点面と実際の被写体結像面との像面ずれ量を検出するTTL式焦点検出手段と:
上記カメラに装着可能な撮影用交換レンズ側に設けられ、その交換レンズの合焦用レンズを駆動する合焦用レンズ駆動手段と:
上記交換レンズ側に設けられ、この交換レンズの種類に応じた補正用信号を発生する補正用信号発生手段と:
上記焦点検出手段の検出出力を、上記合焦用レンズ駆動手段の駆動量を定める駆動信号であって、この駆動信号に起因する上記合焦用レンズの駆動に伴う像面移動量を上記検出された像面ずれ量に等しくする様な値を有する駆動信号に、上記補正用信号に基づき変換する手段と、:
を具備することを特徴とするカメラのTTL式目動合焦装置。
(3)撮影レンズ透過光を測定し、所定焦点面と実際の被写体結像面との像面ずれ量を検出するTTL式焦点検出手段を具備し、この検出出力に応じて撮影レンズの合焦用レンズを駆動して合焦動作を行うTTL式目動合焦カメラに装着可能な撮影用交換レンズにおいて、合焦用レンズの駆動系の特性の差異や合焦用レンズの単位移動量に対するそれに伴う像面移動量の差異に対応した補正量を有する手段を具備し、この補正量が上記合焦用レンズの移動量制御に使用されることを特徴とする自動合焦カメラ用交換レンズ。」
(2頁左上欄下から5行〜左下欄17行)
「本発明は交換可能な撮影レンズの透過光を測定し焦点検出し、自動合焦するTTL式自動合焦カメラ及びに、自動合焦カメラ用の交換レンズに関する。・・・第1図に示す如く撮影レンズ1の所定焦点面2と実際の被写体結像面3との像面ずれ量Δxを検出し、このずれ量Δxに対応する所定量Δdだけ撮影レンズ1を駆動することにより被写体像を所定焦点面2上に結像される。・・・像面ずれ量Δxに対応した撮影レンズ1の移動量Δdは各交換レンズの種類、例えばその焦点距離や合焦方式(合焦操作の際、撮影レンズの構成レンズ素子の全体を移動する方式、又はその1部のみを移動する方式)の相違により異なることがある。・・・本発明の目的は検出した像面ずれ量に対する交換レンズの移動量の関係を各交換レンズ毎に最適にできるカメラのTTL式自動合焦装置及びそれの交換レンズを提供することである。」
(2頁左下欄末行〜3頁右下欄1行)
「第2図において、一眼レフカメラ10には撮影用交換レンズ構体11が装着されている。・・・第2図では、交換レンズ構体11の光学系として単一の合焦用レンズ12のみを描いているが、実際にはその光学系は複数のレンズ素子から構成されている。尚、合焦用レンズ12とはこの複数のレンズ素子のうち焦点調節の為に移動されるレンズ素子を言い、複数のレンズ素子の全部が合焦用レンズに相当する交換レンズ構体もありその1部のレンズ素子のみが該当するものもある。像面移動量信号発生手段15は、モータ13の回転数、伝達係14の移動量又は合焦用レンズ12の移動量に基づき、合焦用レンズ12の移動に伴う像面3(第1図)の移動量を表わす信号を発生する、この像面移動量信号は、伝達係14の伝達比や合焦用レンズ12の単位移動量に対する像面移動量などが、レンズ毎に異なる種々の交換レンズ構体についても、同一像面移動量に対しては同一値をとる様に各交換レンズ毎に規格化されている。・・・次にこの作用を説明する。この自動合焦装置を作動させると、焦点検出装置19は撮影レンズ透過光を測定し像面ずれ量±Δxを検出する。制御回路21はこの像面ずれ量の符号に応じてモータ13を正転又は逆転させる。このモータ13の回転は伝達係14を介して合焦用レンズ12を合焦位置に近づく様に光軸方向に移動させる。この合焦用レンズ12の移動に応じて被写体結像面は所定焦点面に近づき、像面ずれ量信号発生手段15はこのときの像面の移動量を表わす像面移動量信号をリアルタイムで発生し、これは制御装置21に送られる。・・・なお、上述の如く各交換レンズ構体11の像面移動量信号発生手段15は伝達係14の伝達比や合焦レンズ12の移動量とそれに伴う像面移動量との比に無関係に、各交換レンズについて同一像面移動量に対しては同一信号を発生する様に規格化されているので、いかなる交換レンズ構体11が装着されもカメラ本体10内の制御装置21は発生手段15からの信号そのものに応じてモータを停止できる。」
(5頁右上欄1〜5行目)
「補正信号発生手段24はその交換レンズの種類、例えば伝達系の伝達比等に応じた補正用信号を発生する。この補正用信号は、電気的な信号であつても機械的信号であつてもよい。」
(5頁左下欄末行〜右下欄8行)
「第6図において、変換手段26はTTL式焦点検出装置19の検出々力±△xを、交換レンズ側の補正信号発生手段24の補正用信号に基づき、その交換レンズの種類に応じた信号±△x'に変換する。制御装置21はその変換信号±△x'に従ってレンズ駆動手段22の駆動量を制御する駆動信号を出力する。この駆動信号に応答してレンズ駆動手段22は像面移動量が△xとなる量だけ合焦用レンズ12を駆動する。」
【甲第2号証に開示された発明】
以上の記載からみて、同号証には、
「交換レンズ構体側に設けた補正信号発生手段24から交換レンズの種類に応じた補正用信号をカメラ本体側へ出力し、その補正用信号とTTL式焦点検出装置19の検出出力±Δxを変換手段26に入力させてその交換レンズの種類に応じた信号±Δx'に変換し、その変換された信号を制御装置21に与え、制御装置21はその変換信号±Δx'に従って像面移動量がΔxとなるだけ合焦点レンズ12を駆動する交換レンズを用いたTTL式自動合焦装置。」
なる発明が開示されている。
なお、請求人は、甲第2号証の記載について、『甲第2号証には、交換レンズの種類(焦点距離)に対応した補正用信号を出力する交換レンズと、この交換レンズを用いたTTL式オートフォーカス一眼レフカメラシステムが記載されている。』(審判請求書8頁末行〜9頁3行)と主張するが、同号証の2頁左上欄下から5行〜左下欄17行の記載「第1図に示す如く撮影レンズ1の所定焦点面2と実際の被写体結像面3との像面ずれ量Δxを検出し、このずれ量Δxに対応する所定量Δdだけ撮影レンズ1を駆動することにより被写体像を所定焦点面2上に結像される。」、5頁右上欄1〜5行目の記載「補正信号発生手段24はその交換レンズの種類、例えば伝達系の伝達比等に応じた補正用信号を発生する。」からみて、補正用信号は、交換レンズの伝達係の伝達比に応じた値が設定される。第1図に模式的に示され、かつ一般的な全体繰り出しによる合焦方式においては、焦点距離が変わっても像面ずれ量±Δxに対する必要な移動量Δd、すなわち補正用信号は実質上変わらないから、交換レンズの焦点距離に応じて変化する補正用信号が補正信号発生手段24に記憶されてるのではない。「撮影レンズ1の移動量Δdは各交換レンズの種類、例えばその焦点距離や合焦方式(合焦操作の際、撮影レンズの構成レンズ素子の全体を移動する方式、又はその1部のみを移動する方式)の相違により異なることがある。」との記載は、交換レンズの焦点距離が変化したとき、その変化に応じて合焦に必要な移動量が変化することまで意味するものとは認められない。また、焦点距離と移動量との関係を示してもいない。よって、甲第2号証における、「交換レンズの種類に対応した補正用信号」は、交換レンズの伝達系の伝達比等の相違による交換レンズの種類に対応した補正用信号の意味に解すべきであり、請求人の上記『交換レンズの種類(焦点距離)に対応した補正用信号を出力する』との認定は妥当とはいえない。

【4-3】甲第3号証(特開昭55-76309号公報)
(1頁右下欄1行〜6行)
「本発明は光学式カメラ、テレビジョンカメラ等のズームレンズ装置を使用したカメラに適用して好適な自動焦点調節装置に関し、特に連続的に焦点調節ができると共に、ズームレンズ装置の焦点距離の如何に拘らず適確な焦点調節ができるものを提案せんとするものである。」
(1頁右下欄7行〜2頁左上欄2行)
「本発明の自動焦点調節装置はズームレンズ装置を有するカメラに於て、ズームレンズ装置のフォーカシングレンズに対しこれと結像面との間の光路長に略等しい位置に設けられた光電変換手段と、フォオーカシングレンズと光電変換手段との間の光路長を所定周波数及びズームレンズ装置の焦点距離に応じた振幅で振動可変する振動手段と、光電変換手段よりの出力中の高周波成分のレベルを検出する高周波レベル検出回路と、この高周波レベル検出回路の出力を振動手段の振動に同期した周波数信号を以って同期検波するする検波回路と、この検波回路の出力が供給されるフォーカシングレンズ駆動手段とを有し、このフォーカシングレンズ駆動手段によりフォーカシングレンズと結像面との間の光路長を自動的に可変するようにするものである。」
(2頁左上欄4行〜10行)
「(1)はズームレンズ装置、(2)はそのフォーカシングレンズ、(3)はそのズーミング用移動レンズ、(4)は主レンズである。フォーカシングレンズ(2)は焦点調節のために光路上を移動せしめられる。ズーミング用移動レンズ(3)が光路上を移動せしめられることによって、ズームレンズ装置(1)の焦点距離が変化する。」
(2頁右上欄17行〜左下欄17行)
「正弦波信号は可変利得増幅器(15)に供給され、その出力が合成器(28)・増幅器(16)を介してモータ(17)に供給される。モータ(17)は正逆両方向に回転し、図示せざるも機械手段を介してフォーカシングレンズ(2)を光路上の前後に移動させ得るようになされている。(19)はズーミング用移動レンズ(3)の移動位置を検出する移動位置検出器であつて、電源+Bと接地との間にポテンシヨメータ(18)が接続され、その可動接点(18a)がズーミング用移動レンズ(3)の光路上の移動に応じて移動し、その移動位置に応じた電圧が可動接点(18a)より得られ、これが利得制御信号として増幅器(15)に供給されるようになされている。この場合、ズームレンズ装置(1)の焦点距離が大きいときは焦点深度が浅くなるから、移動位置検出器(19)の出力によって増幅器(15)の利得を小さくして正弦波発生器(14)よりの正弦波電圧の振幅を小にし、ズームレンズ装置(1)の焦点距離が短いときは焦点深度が深くなるなるので、移動位置検出器(19)の出力に基づき増幅器(15)の利得を大にして正弦波発生器(14)よりの正弦波電圧の振幅を大にする。」
【甲第3号証に開示された発明】
以上の記載からみて、同号証には、
「テレビジョンカメラ等のズームレンズ装置を使用したカメラに適用して好適な、像を光電変換した信号の高周波レベルを最大とするように撮影距離を自動的に可変する自動焦点調節装置において、ズーミング用移動レンズ(3)の移動位置を検出する移動位置検出器(19)は、電源+Bと接地との間にポテンシヨメータ(18)が接続され、その可動接点(18a)がズーミング用移動レンズ(3)の光路上の移動に応じて移動し、その移動位置に応じた電圧が可動接点(18a)より得られ、これが利得制御信号として増幅器(15)に供給され、フォーカシングレンズ(2)をズームレンズ装置の焦点距離に応じた振幅、すなわち焦点深度に応じた振幅で微小に振動可変するようにした、ズームレンズ装置を使用したカメラに適用して好適な自動焦点調節装置。」
なる発明が開示されている。
なお、請求人は、甲第3号証に構成C(上記撮影光学系内に設けられ、カメラ本体内で算出された駆動量データに応じた量だけ撮影光学系の撮影距離を変化させ、被写体光の結像位置を移動させる撮影距離調節手段)が記載されていると主張する(審判請求書10頁13行〜18行)が、同号証の記載(1頁右下欄7行〜2頁左上欄2行、2頁右上欄17行〜左下欄17行)からみて、甲第3号証の撮影距離調整手段は、撮影距離を所定周波数で、かつ、ズームレンズ装置の焦点距離に応じた振幅で微小に振動可変しつつ、像を光電変換手段で検出した信号の高周波成分のレベルに基づいて撮影距離を変化させて自動焦点調整を実現するものであるから、本件特許発明のように、変換データを用いてカメラ本体内で算出された駆動量データに応じた量だけ撮影光学系の撮影距離を変化させるものではなく、焦点調整のための撮影距離の変化は前記高周波成分のレベルに基づいてなされるのである。よって、請求人の甲第3号証の上記認定は妥当とはいえない。

【4-4】甲第4号証(特公昭52-15226号公報)
(2頁4欄7行〜31行)
「第3図で10と13は固定レンズ群で、11は変倍レンズ群、12は補正レンズ群である。又14は変倍レンズ群11の移動量を検知してこれを電気信号に変換する検知手段で、15はレンズ群12に関する同様の検知手段である。…以下動作を説明すると、第2-1、2、3図で説明した様に、まずレンズ群12を手動等で光軸方向に移動させてピント調整を行い、ついでレンズ群11をモーター駆動あるいは手動で光軸方向に動かしてズーミングを行うと、検知回路14および15は、それぞれレンズ群12の移動量a及びレンズ群11の移動量cを検知して電気信号に変換し、この信号を演算回路16に送る。演算回路16内では規定の演算を行って、駆動回路17に演算結果の信号を入力する。この信号に基づいてモーター10を駆動し、モーター18は歯車19を回動させ、ラック20が移動し、レンズ群12は演算結果である移動量bの位置まで移動して静止し、ピント合わせがなされるものである。」
(2頁4欄32行〜42行)
「第4図は検知手段の一例であって、図中の21は不図示のカメラ本体にその中心を軸として回転自在に取付けられた円筒で、23はレンズ群が保持される鏡筒であり、両者は例えばヘリコイドを介して結合されている。円筒21は不図示の回動手段で光軸を中心に回転し、この回転角は可動レンズ群の前後移動量と関連づけられている。又円筒21上には指標22が刻印され、鏡筒23上の同様の指標24との照合は、そのレンズ位置における焦点距離あるいは結像距離設定値を知るために利用される。」
(3頁5欄10行〜16行)
「しゅう動片27の回動そして歯車25による円筒21の回動に伴うレンズ群の移動量は、抵抗体28を介して得られる出力に比例し、この検知量を演算回路に入力するものである。以上は検知手段の一例であって、その他の手段、例えばエンコーダーあるいはマグネスケール(商品名)などを使用することも可能である。」
(3頁5欄22行〜27行)
「この移動量の検知の際に、量の検出がアナログ量であれば普通に知られているアナログ演算回路により、又ロータリーエンコーダあるいはマグネスケール等からの出力、即ちデジタル化された量であれば、同様に普通のデジタル回路により容易に演算回路を構成できるものである。」
【甲第4号証に開示された技術事項】
以上の記載からみて、同号証には、「ズームレンズの変倍レンズ群の移動に伴うピント移動を、補正レンズ群のモーターによる移動により補償するための、変倍レンズ群の移動量を検知する手段として、ロータリーエンコーダあるいはマグネスケール等を使用し、それらの出力がデジタル化された量であれば、普通のデジタル回路により容易に補正レンズ群の駆動量を演算する演算回路を構成できること」が開示されている。

【4-5】甲第5号証(特開昭50-67650号公報)
(特許請求の範囲)
「(1)カメラの撮影情報をデジタル化して演算装置に導入するにあたり、各種撮影情報の設定機構にそれぞれ係合してこれらの設定値を符号化するための量子化スイッチ手段を設け、該スイッチ手段の選択切換によりデジタル情報を得ることを特徴とする撮影情報設定方式。
(2)特許請求の範囲(1)記載の方式において、前記量子化スイッチ手段をカメラに着脱可能のレンズ鏡筒に配設することを特徴とする撮影情報設定方式。」
(1頁右下欄3行から7行)
「本発明はカメラの撮影における各種情報、すなわち絞り値、距離等の設定値をデジタル量として演算し、その出力で適正露光量をきめる方式のカメラにおける撮影情報の設定方式に関するものである。」
(2頁右上欄8行〜15行)
「図において1は距離調整リング、2は1の内面に配設した案内溝である。4は回転部材でその上に案内ピン3が取付けられ、これが案内溝2に係合している。5は固定部材で、これに沿って回転部材4が回転する。回転部材4の表面にはコード板6が取り付けられ、これに接触する接片7が接片保持部材8によってコード板6の面に圧着されている。」
(2頁左下欄7行〜9行)
「なお、実施例ではデジタル信号として4ビットのグレーコード(交番2進符号)を用いており、従って伝達接片の数は4個である。」
【甲第5号証に開示された技術事項】
以上の記載からみて、同号証には、「絞り値、距離等の設定値をデジタル量として演算し、その出力で適正露光量をきめる方式のカメラにおける撮影情報の設定方式において、これら設定値を符号化するための量子化スイッチ手段を設け、該スイッチ手段の選択切換によりデジタル情報を得ること」が開示されている。

【4-6】甲第6号証(昭和57年審判838号審決)
甲第5号証に係る特許出願(特願昭48-116578号「撮影情報設定方式」)についての拒絶査定不服審判の審決であり、甲第7号証を引用した上で、同審決公報の右欄5行〜17行に、「差異について検討する。(1)レンズ鏡筒の撮影情報設定操作による回転部材の回転角を電気量に変換することは周知であり、その際これをアナログ量とするかデジタル量とするかは、容易になし得る二者択一の問題にしか過ぎない。そして、後者における量子化スイッチが種々の回転角のデジタル変換に用いられるものであり、レンズ鏡筒における撮影情報設定操作による回転部材の回転角が、その変換技術に関して特別視すべき事情も見当らず、しかも、前者において量子化スイッチを交換レンズに用いることについて格別の構成も認められず、この点は、当業者の容易になし得る域を超えないものと認める。」と記載している。

【4-7】甲第7号証(「エレクトロニクス63-12」、(株)オーム社昭和38年12月1日発行、1435〜1436頁)
甲6号証の審決公報中に記載された原査定の拒絶理由中に引用された引用例で、アナログ-ディジタル変換器が図示され説明されている。

【4-8】甲第8号証(「変換検出器」、(株)コロナ社昭和48年11月30日発行、37〜41頁)
(37頁最終行〜38頁3行)
「連続的なアナログ量を不連続なディジタル量に直すのであるから、必然的にサンプリング測定になることと入力量が有限個の数に量子化されることの二つの変化が生じる。したがって、A-D変換器は変換速度と量子化の数によって評価される。しかし一般に、高速度と高精度とは両立し難い。」
(38頁13行〜39頁1行)
「図1・49は10進符号、2進符号、2進化10進符号の符号板で、各ブラシのオンオフにより位置が符号化される。計算機などに接続する場合には2進符号が便利であるが,表示や記録では10進のほうが便利な場合が多い。しかし10進符号ではトラック及びブラシ数が多くなり、また2進符号から10進符号に変換するにはけた数が多いと論理回路が複雑になってしまう。この中間的なものが4要素10進符号で,全体としては10進,各けたを4要素のオンオフで表す。その一例が図(c)の2進化10進符号板である。」

【4-9】甲第9号証(特開昭54-108628号公報)
(特許請求の範囲)
「(1)撮影レンズの情報をディジタル的に記憶したROM(リードオンリーメモリ)と、前記ROMの情報を、入出力する入出力装置と、入出力装置に接続される接続端子とを前記撮影レンズに設ける一方、前記接続端子に着脱自在に接続される端子と、前記入出力装置からの信号を授受してその信号を処理する情報処理装置とをカメラのボデイ側に設けたことを特徴とするレンズ情報伝達装置。
(2)前記ROMのアドレス指定は直列入力で並列出力のシフトレジスタによつて構成し、前記出力装置は並列入力で直列出力のシフトレジスタによって構成したことを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載のレンズ情報伝達装置。」
(1頁右下欄下から2行〜2頁左上欄8行)
「この発明は上述のような事情に鑑みてなされたものであり、各種のレンズが固有に持つている情報を電気的に記憶しているROM(リード・オンリー・メモリー)等の記憶装置とその読み出し装置とをレンズ側に設け、ボデイ側にはレンズの情報処理のためのマイクロコンピユータなどの処理機構を設けることによつてレンズの情報を簡単な装置で容易にカメラボデイに伝達し得るとともに精度のよい軽量小型化を図りうるレンズとカメラの間の情報伝達装置を提供するものである。」
(2頁左上欄9行〜15行)
「絞り段数値、焦点距離等の可変な信号は各種レンズの固有の動きのまま機械的にボディーへ伝達し、それとは別にそのレンズ固有の動きを各レンズ共通の値に変換するパラメータをROMに記憶してその値をボディ側に伝達し、ボディ側のマイクロコンピュータで電気的に各レンズ共通の値に変換するようにしてある。」
(3頁左上欄末行〜右上欄10行)
「第6図はこの発明を適用したカメラの回路のブロツク図である。測光値31、フィルム感度32、設定絞り段数33、設定シヤツタースピード34、露出補正35、距離情報36、ストロボのガイドナンバー及び充電完了信号37、絞り込み値38はアナログ信号として、マルチプレクサ39へ入力し、マイクロコンピユータのI/O40からの信号でマルチプレクサ39は制御され、各設定量31〜38、8〜15のうちの1つをA-D変換器20へ入力し、このアナログ信号をデイジタル値に変換してI/Oへ出力する。」
【甲第9号証に開示された技術事項】
以上の記載からみて、同号証には、「各種のレンズが固有に持つている情報を電気的に記憶しているROM(リード・オンリー・メモリー)等の記憶装置とその読み出し装置とをレンズ側に設け、ボデイ側にはレンズの情報処理のためのマイクロコンピユータなどの処理機構を設けることによつてレンズの情報を簡単な装置で容易にカメラボデイに伝達するレンズとカメラの間の情報伝達装置において、絞り段数値、焦点距離等の可変な信号は各種レンズの固有の動きのまま機械的にボディーへ伝達し、それとは別にそのレンズ固有の動きを各レンズ共通の値に変換するパラメータをROMに記憶してその値をボディ側に伝達し、ボディ側のマイクロコンピュータで電気的に各レンズ共通の値に変換すること」が開示されている。

【4-10】甲第10号証(「コンピュータ・エレクトロニクス用語辞典」(昭和52年7月30日、丸善株式会社発行))
デジタルデータの数値を表示する表示方式として固定小数点表示方式(102頁)と、浮動小数点表示方式(293頁)とがあり、浮動小数点表示方式では、「小数点の位置を固定せず、別に小数点の位置を指示する数を併記する. すなわち係数部指数部に分けた表示法をいう.」として、mビットの指数部とnビット係数部(有効数字部)から構成されることが開示されている。

【4-11】甲第11号証(「電子計算機・ディジタル計算機編」(第3版昭和36年9月30日、株式会社オーム社発行))
ディジタルデータの数値の表し方として固定小数点方式と、浮動小数点方式とがあり、浮動小数点方式の方がプログラムが容易であると共に数値の範囲を十分広くとることができること(24頁下から8行目〜25頁11行)、計算が早くなること、科学計算用の計算機は比較的小形のものでも浮動小数点演算の装置が用いられること(255頁18行〜23行および付録参照)が開示されている。

【4-12】甲第12号証(書面の写し)
甲第12号証として提出された書面の写しは、株式会社 シグマ ソフトウエア開発部 部長 浜野日出男が作成した私文書の写しと推測され、本書面には、「平成14年5月21日」の日付が記載され、印影が複写されているが、浜野日出男の押印はない。請求人は本書面が「請求人が特許権侵害訴訟事件において提出した「変換係数の説明」である旨説明している。
被請求人は、甲第12号証の成立性について意見は述べていない。
本書面には、交換レンズの駆動量、ズレ量及び変換係数の関係(1頁の(式1))、及びミノルタ社製オートフォーカス一眼レフカメラ「α7」を使用して、特定の変換係数(10ビット)の転送時間を、浮動小数点で転送した場合と固定小数点で転送した場合とを比較し、浮動小数点による転送時間の短縮はわずかであることを記載している。(3頁10行〜6頁8行)

【4-13】甲第13号証(無効2002-35344号審判事件に係る審決抜粋)
本件の特許1962765号についての無効2002-35344号審判事件に係る審決であり、その38頁22行〜31行には、「浮動小数点方式と固定小数点方式自体は周知であると認められる。また、変換データの有効桁数とその最大値と最小値の比によっては、両者にさほどの差が生じないことも考えられる。しかし、本件特許発明は、変換データの出力信号を浮動小数点方式にした点で進歩性を有するのではなく、データ出力手段と焦点距離によって変化する変換データが記憶された記憶手段との組合せにより必要な変換データを出力できるように、「撮影光学が有する焦点距離範囲を複数の焦点距離領域に分割」するという創意工夫がなされ、もって焦点距離可変の自動焦点調節用の交換レンズを実現した点で進歩性を有するから、信号の方式として浮動小数点方式が周知であったとしても、そのことが本件特許発明の進歩性欠如の根拠とはならない。」と記載されている。

【4-14】甲第14号証(無効2002-35344号審判事件において被請求人が提出した答弁書抜粋)
無効2002-35344号審判事件に係る答弁書であり、その10頁14行〜24行に、「本件特許発明では、本件特許明細書第26欄3〜4行目に「ズームレンズの焦点距離は、コード板FCDの5ビットの出力に対応して多数の領域に区分され」と記載されているように、コード板FCDが「データ出力手段」に対応しており、このコード板FCDが、焦点距離がどの焦点距離領域に属するかを示すデータを出力している。審判請求書に添付された証拠をいくら仔細に検討しても、例えばコード板(エンコーダ)のようにアナログパラメータを複数領域に分割してパラメータ値がどの領域に属するかを出力する手段については何ら記載も示唆もされていない。ましてや、カメラ用交換レンズの分野において、コード板を用いること等により焦点距離領域を複数に分割するという先行技術など存在しないのである。したがって、本件特許発明における「データ出力手段」自体が本件特許出願時には新規な構成であり、そこにも進歩性が認められる基礎があるのである。」と記載されている。

【4-15】甲第15号証(特開昭58-166331号公報)
甲第15号証は本件特許出願の1年前に被請求人が出願した特許願(特願昭57-216133号)の発明の内容を示す特許公開公報であり、特許請求の範囲に、
「1.設定情報に応じたディジタル信号を発生する情報設定装置と、設定情報に依存して変化する複数種のデータを設定情報別及びデータの種類別に異なったアドレスにそれぞれ記憶している固定記憶回路と、データの種類を決めるためのカメラ本体からのディジタル信号と設定情報を示す上記情報設定装置からのディジタル信号とに応じ上記固定記憶回路のアドレスを指定するアドレス指定装置とを有し、指定されたアドレスのデータをカメラ本体側に出力することを特徴とする記憶情報をカメラ本体側に伝達可能な一眼レフレックスカメラのカメラアクセサリー。
2.上記アドレス指定装置は上記情報設定装置からのディジタル信号に応じてアドレス信号の一部を形成すると共に、カメラ側からのクロックバルスに応じてアドレス信号の他の部分を形成することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載のカメラアクセサリー。
3.上記情報設定装置は設定情報に応じて駆動されるコード板であり、このコード板により作られるディジタル信号が上記アドレス信号の一部になるとともに、上記アドレス指定装置はカメラ本体側からの読込開始信号に応答してカメラ本体側からのクロックパルスをカウントするカウンターを有し、このカウンターの出力が上記アドレス信号の他の部分となることを特徴とする特許請求の範囲第2項記載のカメラアクセサリ」。
4.上記情報設定装置はレンズの焦点距離を情報として設定することを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第3項のいずれかに記載のカメラアクセサリー。
5.交換レンズとして構成されていることを特徴とする特許請求の範囲第1項乃至第4項のいずれかに記載のカメラアクセサリー。」と記載されている
また17頁左上欄5行〜13行には「なお、一つの設定情報に依存して変化する複数のデータが存在するために本発明が必要となるケースとしては、他に、焦点距離を設定情報とする場合ではレンズ繰出量と像面移動面に関するデータ、赤外光と可視光との像面位置の差に関するデータが考えられ、また、撮影距離を設定情報とする場合では有効絞り値に関するデータ、レンズ繰り出し量と像面移動量の関係に関するデータ等が考えられる。」と記載されている。

【4-16】甲第16号証(甲第15号証に係る拒絶査定不服審判経過を示す特許庁電子図書館のデータの写し)
甲第16号証は、甲第15号証に係る特許出願の拒絶査定が審判請求の取下げにより確定していることを示している。

【4-17】甲第17号証(「出願公告決定後の補正」、平成2年9月、社団法人発明協会発行)
特許庁が昭和49年に作成した一般基準として作成した「出願公告決定後の補正」であり、旧特許法第64条第2項で準用する同法第126条第2項でいう「実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するもの」として「カテゴリーは変更しないが、発明の対象が変更される補正」([1]-10-8頁16行ないし17行)を挙げ、添付[例27]〜[例29]の類型に該当するものは、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものとしてその補正は認められないものであること、また、構成要件の直列的付加は特許請求の範囲の減縮に該当すること([1]-10-4頁10行ないし14行)が記載されている。

【4-18】甲第18号証(「マイクロコンピュータ応用技術に関する発明についての審査運用指針」、昭和57年12月、社団法人発明協会発行)
マイクロコンピュータ応用技術に関する発明についての進歩性の判断の指針として、マイクロコンピュータに関係する公知の技術事項を寄せ集めた発明であって、その寄せ集めに困難性がなく、また、その寄せ集めによってもたらされる効果も普通に予測される効果をこえるものでない場合には進歩性なしとする旨、及びマイクロコンピュータに関係する公知の技術事項の適用対象を限定又は変更した発明にあっては、その限定又は変更に困難性がなく、また、その限定又は変更によってもたらされる効果も普通に予測される効果をこえるものではない場合は進歩性なしとなる旨記載されている(13〜14頁、「2.4.2.3進歩性の判断」の項)。また、81頁6行〜8行には、「演算処理を省くために、ROM に対応表を記憶させ、入力パラメータをアドレス信号とし、出力を得ること」が、マイクロコンピュータ応用技術のありふれた技術として例示されている。

【5】当審の判断
【5-1】無効理由Iについて
(1)甲第2号証に開示された発明
甲第2号証には、前記【4-2】【甲第2号証に開示された発明】の認定のとおり、「交換レンズ構体側に設けた補正信号発生手段24から交換レンズの種類に応じた補正用信号をカメラ本体側へ出力し、その補正用信号とTTL式焦点検出装置19の検出出力±Δxを変換手段26に入力させてその交換レンズの種類に応じた信号±Δx'に変換し、その変換された信号を制御装置21に与え、制御装置21はその変換信号±Δx'に従って像面移動量がΔxとなるだけ合焦点レンズ12を駆動する交換レンズを用いたTTL式自動合焦装置」が開示されている。
ここで、甲第2号証に開示された発明における、(i)「カメラ本体」、(ii)「交換レンズ構体」、(iii)「合焦点レンズ12を駆動する」手段、(iv)「検出出力±Δx」、(v)「変換レンズの種類に応じた信号±Δx'」、(vi)「補正用信号」、(vii)「補正信号発生手段24」、及び(viii)「補正用信号をカメラ本体側へ出力」する手段は、それぞれ、本件特許発明の、(i)「カメラ本体」、(ii)「カメラ本体に交換自在に装着される交換レンズ」、(iii)「撮影距離調整手段」、(iv)「所望の結像位置移動量」、(v)「駆動量データ」、(vi)「変換データ」、(vii)構成Fの内の「記憶手段」、及び(viii)構成Gの内の「変換データをカメラ本体へ出力する出力手段」に相当する。

(2)一致点
以上のことから、両者は、
「カメラ本体に交換自在に装着される交換レンズ(構成A) において、
撮影光学系 (構成B) と、
上記撮影光学系内に設けられ、カメラ本体内で算出された駆動量データに応じた量だけ撮影光学系の撮影距離を変化させ、被写体光の結像位置を移動させる撮影距離調整手段 (構成C) と、
所望の結像位置移動量を上記駆動量に変換するための変換データが記憶された記憶手段 (構成F') と、
上記変換データをカメラ本体へ出力する出力手段 (構成G')と、
を有する交換レンズ。」
の点で一致する。

(3)相違点
そして両者は、以下の点で相違する。
相違点1:
本件特許発明は、撮影光学系の焦点距離を設定する焦点距離設定手段(構成D)を有するものであるのに対し、甲第2号証に開示された発明は、撮影光学系の焦点距離を設定する焦点距離設定手段を有しない点。
相違点2:
本件特許発明は、以下の構成E、F、Gを備えるが、甲第2号証に開示された発明はそれらを具備しない点。
・構成E…撮影光学系が有する焦点距離範囲を複数の焦点距離領域に分割して、上記焦点距離設定手段によって設定された焦点距離が上記複数の焦点距離領域のうちどの領域に属しているかを示すデータを出力するデータ出力手段。
・構成F…所望の結像位置移動量を上記駆動量に変換するための変換データについて、上記複数の焦点距離領域の夫々につき1つの変換データが記憶された記憶手段。
・構成G…上記データ出力手段の焦点距離領域データに基づいて、該当する領域の上記変換データをmビットの指数部とnビットの有効数字部とからなる信号としてカメラ本体へ出力する出力手段。

(4)相違点1についての判断
相違点1は、両者の発明の交換レンズが、単焦点交換レンズ(甲第2号証)であるか、ズーム式の交換レンズ(本件特許発明)であるかの違いに基づくものである。そこで、甲第2号証の単焦点レンズをズーム式の交換レンズに置き換えることが当業者にとって容易であるか否かを検討する。
一般に交換レンズは、単焦点(固定焦点)のものとズーム式のもとに大別できることは、請求人の主張(審判請求書22頁19、20行)のとおりと認められる。よって、当業者にとって、甲第2号証の単焦点交換レンズをズーム式の交換レンズにしてみようとする着想ないし動機は生じるものと認められる。そして、交換レンズをズーム式とすることは、とりもなおさず、撮影光学系の焦点距離を変化させて所望の焦点距離に設定する焦点距離設定手段(構成D)を交換レンズに備えることに他ならないから、構成Dを甲第2号証に開示された発明に適用すること自体は、上記着想を抱いた当業者にとって極めて当然のことであり、格別の困難性を伴うものとは認められない。

(5)相違点2についての判断
甲第2号証の発明に構成Dを付加したズーム式の交換レンズにおいて自動焦点調整を実現しようとした場合に、上記相違点2の構成を採用して本件特許発明の構成とすることが容易か否かを検討するために、構成E、Fを付加するための前提となる事項が甲第2号証に開示された発明に備わっているか否かについて検討する。
本件特許発明においては、撮影光学系の焦点距離に対応して変化し、焦点距離に個別に対応する変換データにかえて、複数の焦点距離を含む焦点距離領域に対して1つ割り当てた変換データ(すなわち、複数の焦点距離に対して共通する1つの変換データ)を、駆動量データを算出のためにカメラ本体へ出力する。これを実現するために、撮影光学が有する焦点距離範囲を複数の焦点距離領域に分割して設定された焦点距離が上記複数の焦点距離領域のうちどの領域に属しているかを示すデータを出力するデータ出力手段(構成E)、及び上記複数の焦点距離領域の夫々につき1つの変換データが記憶された記憶手段(構成F)を用いている。この点は、本件特許明細書の記載、特に甲第1号証の1、24欄4行〜7行、第7図及び25欄30行〜26欄11行の記載から明らかである。
ここで、甲第2号証の発明に構成Dを付加してズーム式とした交換レンズに、さらに構成E、Fを適用して自動焦点調整を可能とするためには、記憶手段(補正信号発生手段24)に記憶させるべき変換データを確定する必要がある。このためには、本件特許発明の構成E、Fによる上記の「撮影光学が有する焦点距離範囲を複数の焦点距離領域に分割」して焦点距離に関する処理を行った上で駆動量データを算出する作用から、まず、焦点距離設定手段(構成D)により設定される焦点距離に対して、自動焦点調整に必要な駆動量算出のための変換データがズーム式の交換レンズにおいては焦点距離の関数として変化するとの知見が必要である。次に、撮影光学系の焦点距離に個別に対応した変換データ(補正用信号)のかわりに、複数の焦点距離を含む焦点距離領域に対して1つ割り当てた変換データ(すなわち、複数の焦点距離に対して共通する1つの変換データ)を用いても撮影光学系の自動焦点調整が実現可能であるという知見がさらに必要である。本件特許発明においては、甲第1号証の1、4欄40行〜6欄3行、25欄30行〜26欄32行、第7図において、前提となるこれら知見に基づいて技術事項が説明されている。
ところが、甲第2号証に開示された発明は上記【4-2】【甲第2号証に開示された発明】のとおりであり、上記知見を前提するものではなく、また、甲第2号証は上記知見を開示していない。さらに、甲第3、4、5、9号証を検討しても、上記前提となる知見は見いだせず、それらが自明の事項であるとも認められない。
そうすると、甲第2号証に開示された発明に構成E、Fを適用するために必要な前提を欠くから、仮に、構成E、F自体が甲第3、4、5、9号証、その他の証拠方法において公知ないしは慣用手段であるとしても、データ出力手段を複数の焦点距離領域へ分割するものとすること(構成E)、及び記憶手段へ格納すべき変換データを焦点距離領域の夫々に対応した1つの変換データとして確定すること(構成F)は不可能であるといわざるを得ない。
なお、請求人は、この前提となる前者の知見に関連して、『甲第2号証には、交換レンズの種類(焦点距離)に対応した補正用信号を出力する交換レンズと、この交換レンズを用いたTTL式オートフォーカス一眼レフカメラシステムが記載されている。』(審判請求書8頁末行〜9頁3行)と主張し、前記知見のうち前者が甲第2号証に開示されているごとく主張するが、甲第2号証の記載がこの様な知見を示すものでないことは前記【4-2】【甲第2号証に開示された発明】で説明したとおりであり、請求人の当該主張は採用できない。

(6)結論
以上、(4)、(5)から、本件特許発明は、甲第2号証に開示された発明に、甲第3、4、5、9号証に開示された技術事項を適用することにより当業者が容易に想到し得たものということはできない。
よって、請求人の主張する無効理由Iは成り立たない

(7)相違点2についての予備的判断
(7-1)予備的判断の前提
甲第2号証に開示された発明をズーム式の交換レンズに適用した場合、設定された焦点距離に応じて異なる変換データを出力しなければならないという知見が、何らかの契機により得られたと仮定する。
ここで、甲第2号証の他に、請求人が無効理由Iにおいて容易性の根拠とする甲第3、4、5、9号証には、前記【4-3】【甲第3号証に開示された発明】、【4-4】【甲第4号証に開示された技術事項】、【4-5】【甲第5号証に開示された技術事項】、【4-9】【甲第9号証に開示された技術事項】の認定のとおり、以下の事項が示されている。
甲第3号証:テレビジョンカメラ等のズームレンズ装置を使用したカメラに適用して好適な、像を光電変換した信号の高周波レベルを最大とするように撮影距離を自動的に可変する自動焦点調節装置において、ズーミング用移動レンズ(3)の移動位置を検出する移動位置検出器(19)は、電源+Bと接地との間にポテンシヨメータ(18)が接続され、その可動接点(18a)がズーミング用移動レンズ(3)の光路上の移動に応じて移動し、その移動位置に応じた電圧が可動接点(18a)より得られ、これが利得制御信号として増幅器(15)に供給され、フォーカシングレンズ(2)をズームレンズ装置の焦点距離に応じた振幅、すなわち焦点深度に応じた振幅で微小に振動可変すること。
甲第4号証:ズームレンズの変倍レンズ群の移動に伴うピント移動を、補正レンズ群のモーターによる移動により補償するための、変倍レンズ群の移動量を検知する手段として、ロータリーエンコーダあるいはマグネスケール等を使用し、それらの出力がデジタル化された量であれば、普通のデジタル回路により容易に補正レンズ群の駆動量を演算する演算回路を構成できること。
甲第5号証:絞り値、距離等の設定値をデジタル量として演算し、その出力で適正露光量をきめる方式のカメラにおける撮影情報の設定方式において、これら設定値を符号化するための量子化スイッチ手段を設け、該スイッチ手段の選択切換によりデジタル情報を得ること。
甲第9号証:各種のレンズが固有に持つている情報を電気的に記憶しているROM(リード・オンリー・メモリー)等の記憶装置とその読み出し装置とをレンズ側に設け、ボデイ側にはレンズの情報処理のためのマイクロコンピユータなどの処理機構を設けることによつてレンズの情報を簡単な装置で容易にカメラボデイに伝達するレンズとカメラの間の情報伝達装置において、絞り段数値、焦点距離等の可変な信号は各種レンズの固有の動きのまま機械的にボディーへ伝達し、それとは別にそのレンズ固有の動きを各レンズ共通の値に変換するパラメータをROMに記憶してその値をボディ側に伝達し、ボディ側のマイクロコンピュータで電気的に各レンズ共通の値に変換すること。
以上の開示内容からみて、甲第3、4、5、9号証には、本件特許発明の、撮影光学が有する焦点距離範囲を複数の焦点距離領域に分割して、上記焦点距離設定手段によって設定された焦点距離が上記複数の焦点距離領域のうちどの領域に属しているかを示すデータを出力するデータ出力手段(構成E)と、複数の焦点距離領域の夫々につき1つの変換データが記憶された記憶手段(構成F)と、変換データを指数部と有効数字部とからなる信号としてカメラ本体へ出力する出力手段(構成G)とを備えた交換レンズは示されていない。

(7-2)甲第3、9号証の技術事項を甲第2号証へ適用することについて
甲第3号証のものは、焦点距離に応じて変わる撮影光学系の焦点深度に合わせて撮影距離調節手段の振動の振幅を変化させるために、ポテンショメータにより移動レンズ(3)の移動を電圧として検知し増幅率を変えることを示すが、この焦点深度に対応する信号は、甲第2号証における補正用信号のように焦点調整に必要な駆動量データを算出するための信号ではなく、その技術的意義や利用する目的が甲第2号証のものとは異なるものである。このため、ポテンショメータにより得られる電圧としての信号は、甲第2号証のように、交換レンズの種類に応じた駆動量データの算出に利用できる変換データとはならないし、そのままでは甲第2号証のデータを記憶させた手段(補正用信号発生手段)から変換データを選択するための信号にもならない。さらに、前記ポテンショメータは、焦点距離範囲を複数の領域に分割して処理する構成になっていない。
一方、甲第9号証のものは交換レンズ側からカメラ本体側への信号の伝達手段について、可変でない信号は交換レンズ側に記憶するが、可変信号である焦点距離に対応する信号は機械的にボディーへ伝達するものである。これに従えば、甲第2号証の発明に構成Dを付加した結果、可変信号となる焦点距離に対応する信号や変換データ(補正用信号)の伝達は、機械的に行うこととなる。
すなわち、甲第3、9号証は、設定された焦点距離(焦点距離領域)に応じて変化する変換データのように、変化するデータを何らかの他のデータの算出に使用できる形態で出力する構成、及び焦点距離範囲を複数の領域に分割して処理する構成を教示していない。よって、構成Dを付加してズーム式の交換レンズとした甲第2号証の発明に、甲第3、9号証の技術事項であるポテンショメータによる焦点距離に対応する電圧を出力する手段や、機械的にボディーへ信号を伝達する手段を適用しても、本件特許発明の複数の焦点距離領域のうちどの領域に属しているかを示すデータを出力するデータ出力手段(構成E)、複数の焦点距離領域の夫々につき1つの変換データが記憶された記憶手段(構成F)を用いた構成に至らないことはいうまでもなく、前記(7-1)で仮定した知見を実現するための具体的構成を想到することさえ困難であるといわざるを得ない。

(7-3)甲第4、5号証の甲第2号証への適用について
甲第2号証に開示された発明をズーム式の交換レンズに適用した場合、設定された焦点距離に応じて異なる変換データを出力しなければならいという知見が、何らかの契機により得られたと仮定しているので、以下のように甲第4、5号証の技術を更に適用しようとする動機が生じる。
上記の仮定の下では、甲第2号証の補正用信号発生手段を構成するROM等の記憶手段に、焦点距離に対応する変換データが記憶されることとなる。ここで、交換レンズの焦点距離に対応する信号をロータリーエンコーダ、マグネスケール等、又は量子化スイッチ手段を使用し、デジタル化した信号とすることは甲第4、5号証において公知であるから、これら公知の手段を適用して、デジタル化した焦点距離についての信号を、前記ROM等の記憶手段のアドレスとして、記憶した変換データを出力させること自体は、甲第18号証81頁にみられるようなコンピュータ応用技術の慣用手段に基づいて、当業者であれば容易に想到できるであろう。
しかし、デジタル化した信号を形成する手段は、連続的なアナログ値をデジタル値に変換するとき必然的に不連続な値とするものであり、変換後のディジタル値ができるだけもとのアナログ値に忠実に対応するように、一般には量子化の数を多くすることが変換速度等の他の条件が許す限り好ましい(甲第8号証、37頁最終行〜38頁3行)。そして、量子化された状態の数が多いほどもとのアナログ値に忠実なものとなるため、当業者であれば、同一のデジタル値に対応するアナログ値の範囲はできるだけ小さくし、量子化効果(不連続による影響)が実質上動作に影響しないようにする。
したがって、甲第2号証に開示された発明に構成Dを付加してズーム式の交換レンズに拡張しようと考えた当業者が、変換データ(補正用信号)を焦点距離ごとに設定しておくことにより、ズーム式の交換レンズにおいても自動焦点調整のための駆動量データを算出できるという知見(設定された焦点距離に応じて異なる変換データを出力しなければならいという知見)を何らかの手段で獲得したと仮定して、甲第4、5号証の技術事項をズーム式交換レンズの焦点距離のデジタル化に適用する場合には、当業者であれば、できる限り忠実な変換を実現しようとする。このために、焦点距離設定手段(構成D)の操作の仕方、すなわち焦点距離を変えるために当該手段を回動させるか並進させるかに応じて、回動操作又は並進操作の極めて微小な等角度又は等距離の範囲に亘ってのみ、同一のデジタル値(量子化されたデジタル値)となるように構成することとなる。すなわち、デジタル化された信号のとり得る状態の数(量子化された状態の数)は極めて膨大なものになる。このため、上記公知のデジタル化する手段を用いて、甲第2号証に開示された発明をズーム式交換レンズに拡張する場合、変換データは焦点距離に応じて変化するのであるから分割された焦点距離領域に対して1つの変換データを設定するのではなく、量子化された各焦点距離に対応して個別の変換データを設定することが必要となる。ここで、量子化効果が実質上動作に影響を及ぼさないように構成する必要から、交換レンズの撮影光学系の変倍範囲に渡って微小な等間隔をなして存在する膨大な数の焦点距離に対応する変換データをカメラ本体へ出力する構成となり、微小な等間隔に区切られた極めて膨大な数の量子化された焦点距離の夫々に対応する変換データを記憶した記憶手段(構成F'')を必要とする。
なぜなら、前述の構成E、Fを採用する前提の1つである、撮影光学系の焦点距離に対応した変換データのかわりに、複数の焦点距離を含む焦点距離領域に対して1つ割り当てた変換データ(すなわち、複数の焦点距離に対して共通する1つの変換データ)を用いて撮影光学系の自動焦点調整が実現できるという知見を持たないからである。このため、焦点距離範囲を複数に分割して属する領域を示すデータを出力する構成Eや複数の焦点距離領域の夫々につき1つの変換データを記憶する構成Fを採用する動機が生じる余地はない。
これに対して、本件特許発明は、撮影光学系の焦点距離に個別に対応した変換データのかわりに、複数の焦点距離を含む焦点距離領域に対して1つ割り当てた変換データ(すなわち、複数の焦点距離に対して共通する1つの変換データ)を用いても撮影光学系の自動焦点調整が実現可能であるとの知見を前提とし、この知見に基づいて、焦点距離に対応する変換データをカメラ本体へ出力するに際して、撮影光学系の焦点距離を設定する焦点距離設定手段(構成D)、撮影光学が有する焦点距離範囲を複数の焦点距離領域に分割して、上記焦点距離設定手段によって設定された焦点距離が上記複数の焦点距離領域のうちどの領域に属しているかを示すデータを出力するデータ出力手段(構成E)、所望の結像位置移動量を上記駆動量に変換するための変換データについて、上記複数の焦点距離領域の夫々につき1つの変換データが記憶された記憶手段(構成F)、及び上記データ出力手段の焦点距離領域データに基づいて、該当する領域の上記変換データを指数部と有効数字部とからなる信号としてカメラ本体へ出力する出力手段(構成G)を採用して、カメラ本体内で撮影距離調整手段の駆動量データを算出している。
以上のとおり、設定された焦点距離に応じて異なる変換データを出力しなければならいという知見が得られたという仮定の下でも、常識的なデジタル技術・慣用手段等を前提として、甲第4、5号証に開示された技術事項を甲第2号証に開示された発明に適用したとすると、本件特許発明の構成E、Fとは異なるデータ出力手段、記憶手段となる。したがって、前記仮定の下でも、当業者が容易に本件特許発明の構成E、Fを想到することは困難であるといわざるを得ない。

(7-4)予備的判断のまとめ
以上のように、ズーム式の交換レンズにおいて設定された焦点距離に応じて異なる変換データを出力しなければならいという知見を有する当業者を仮定した場合であっても、甲第2号証の撮影光学系に構成Dを付加してズーム式の交換レンズとし、さらに、デジタル技術等の常識・慣用手段、甲第3、4、5、9号証に開示された技術事項を適用して、本件特許発明の構成E、Fを想到することは困難であるといわざるを得ない。

(8)補足
請求人は、『出願公告後の補正についてみるに…発明の対象が変更された補正に該当する。』旨及び「合成樹脂状ポリアミドの耐熱耐候性の改善方法」東高判昭43(行ケ)22号、昭47.10.17、無体裁集4巻2号、590頁(審判便覧54‐10、8頁)を引用し、『特許庁は、このような直列的でない付加を内容とする出願公告後の補正を違法であると認定してきていないが、後述するとおり、その事実から特許庁がこのような構成要件の付加が当業者に周知の技術手段であると認定していることを意味することは明らかである。』(弁駁書3頁3行〜4頁10行)と主張し、本件の公告決定後の補正は、直列的でない付加であるため原則として違法であり、このような補正が認められるのは補正によって付加された事項が周知の場合であるという論を展開している。
しかし、本件の平成6年法律第116号による改正前の特許法第64条の規定による補正において、構成Dと構成Eは補正前の光学系に技術的に密接に関連するものであるから、補正前の光学系に実質的に付随する構成というべきである。また、構成Fと構成Gは、それぞれ、補正前の記憶手段と出力手段を技術的に限定したものである。
よって、構成D、E、F、Gについての上記補正は、一般審査基準(甲第17号証、[1]-10-4頁)における、直列的付加に相当するものと認められるから、請求人の主張は、前提において誤っており、これを採用することはできない。また、本件の場合、上記補正により付加された技術事項が周知の事項であることを理由として当該補正が認められたものではない。

【5-2】無効理由IIについて
(対比)
甲第3号証には、前記【4-3】【甲第3号証に開示された発明】の認定のとおり、「テレビジョンカメラ等のズームレンズ装置を使用したカメラに適用して好適な、像を光電変換した信号の高周波レベルを最大とするように撮影距離を自動的に可変する自動焦点調節装置において、ズーミング用移動レンズ(3)の移動位置を検出する移動位置検出器(19)は、電源+Bと接地との間にポテンシヨメータ(18)が接続され、その可動接点(18a)がズーミング用移動レンズ(3)の光路上の移動に応じて移動し、その移動位置に応じた電圧が可動接点(18a)より得られ、これが利得制御信号として増幅器(15)に供給され、フォーカシングレンズ(2)をズームレンズ装置の焦点距離に応じた振幅、すなわち焦点深度に応じた振幅で微小に振動可変するようにした、ズームレンズ装置を使用したカメラに適用して好適な自動焦点調節装置。」なる発明が開示され、当該発明のズーミング用移動レンズ(3)を備えたズームレンズ装置は、本件特許発明の構成B(撮影光学系)と、構成D(撮影光学系の焦点距離を設定する焦点距離設定手段)を有する。
したがって、構成B、Dを備える点で本件特許発明と甲第3号証に開示された発明は一致する。そして、甲第3号証のものは、構成C、E、F、Gを備えていない点で、本件特許発明と相違する。

(判断)
そこで、構成B、Dを備える甲第3号証の発明に、甲第5、9号証の技術事項を適用した場合に、本件特許発明の構成C、E、F、Gを容易に想到できるか否かを検討する。
甲第5、9号証に開示された技術事項は前記【4-5】【甲第5号証に開示された技術事項】、【4-9】【甲第9号証に開示された技術事項】の認定のとおりであり、甲第5、9号証は、本件特許発明の構成C、E、F、Gに相当する構成を開示していない。
したがって、甲第3号証の発明に、デジタル技術分野における慣用技術を前提として、甲第5号証及び甲第9号証の技術事項を適用しても本件特許発明が容易に想到できたということはできず、請求人の主張する無効理由IIは成り立たない。

(補足)
請求人は『甲第3号証の発明に、甲第5号証に開示されるコード板使用の焦点距離設定手段によって焦点距離が複数の焦点距離領域のうちどの領域に属しているかを示すデータを出力するデータ出力手段を構成し、甲第9号証に開示される記憶装置(ROM)に、複数の焦点距離領域の夫々につき1つの変換データを対応させて記憶させ、前記データ出力手段の出力信号に応じて該当する領域のデータを出力するデータ出力手段とを組み合わせようとする動機は、甲3号証、甲第2号証、甲第5号証及び甲第9号証に開示される発明及び、甲第7号証、甲第8号証、甲第10号証及び甲第11号証に開示されるデジタル技術分野における慣用技術から容易に生じる』と主張する。しかし、請求人が無効理由IIにおいて容易想到性の主たる根拠とする甲第3号証の記載事項の認定が妥当性を欠いていることは【4-3】【甲第3号証に開示された発明】で説明したとおりである。そして、前記【4-2】【甲第2号証に開示された発明】と【4-3】【甲第3号証に開示された発明】の認定のとおり、両者は同じ自動焦点調整に関するものではあってもその方式が異なる(被写体結像面との像面ずれ量を検出するTTL式焦点検出方式と像を光電変換した信号の高周波レベルを最大とする方式)。このため、甲第2号証の構成Cは、カメラ本体内で算出された駆動量データを必要としない甲第3号証の発明に適用する余地はなく、甲第5、9号証の技術事項を適用する際の参考とはならない。
念のため、甲第3号証の発明に、デジタル技術分野における技術常識・慣用技術を前提として、甲第5号証及び甲第9号証の技術事項を適用した場合について以下に検討する。
甲第5号証には、甲第3号証のズーミング用移動レンズ(3)の移動位置を検出する移動位置検出器(19)として適用できる量子化スイッチ手段が示されているので、これを甲第3号証の発明に適用したとすると、ズームレンズ装置の焦点距離に応じた振幅で撮影距離を所定周波数で振動可変するための回路がデジタル化される。甲第3号証においては、焦点深度に応じて振動可変するために、焦点距離に応じた振幅で撮影距離を所定の周波数で微小に振動可変しているが、焦点調整のための撮影距離は、像を光電変換手段で検出した信号の高周波成分のレベルに基づいて変化させているのであり、焦点距離に対応した変換データを用いる必要性はなく、さらにはカメラ本体内で駆動量データを算出する必要性も生じない。また、甲第5、9号証において、カメラ本体内で算出されるのは適正露光量であり、被写体結像面との像面ずれ量を検出しカメラ本体内で駆動量データを算出して撮影距離を変化させる技術思想、及び焦点距離に対応した変換データを用いる技術思想は示されていない。
よって、本件特許発明のように、カメラ本体内で算出された駆動量データに応じた量だけ撮影光学系の撮影距離を変化させ、被写体光の結像位置を移動させる構成Cを採用する必要性は、甲第3、5、9号証からは生じない。さらに、甲第3、5、9号証は、カメラ本体内で算出された駆動量データに応じた量だけ撮影光学系の撮影距離を変化させるものではないから、駆動量データの算出に必要な構成E、F、Gを甲第3号証の発明に付加する必要性を生じさせるものでもない。
なお、甲第9号証は焦点距離等の可変な信号は各種レンズの固有の動きのまま機械的にボディーへ伝達することを教示している。したがって、甲第9号証のこの教示を参考にして甲第3号証の発明を変形すると、甲第3号証の可変な信号を発生するポテンシヨメータ(18)の出力の伝達手段を機械的な伝達手段に変更することとなり、ポテンショメータを非機械的な手段であるROMのような記憶手段を用いたデジタル的な手段(構成F)やデータ出力手段(構成E)に置き換えることは前記教示に反することとなる。
さらに、甲第3号証は、そもそも、ズーミング用移動レンズ(3)の移動位置を検出して焦点深度に関する信号を出力するためにポテンシヨメータ(18)を利用するものであるから、甲第3号証のポテンシヨメータ(18)を用いたメカニズムに甲第5号証の量子化スイッチ手段を適用して、さらに、量子化スイッチの出力をアドレスとして甲第9号証の固定データ用のROMを読み出し、読み出した信号をカメラ本体側へ出力する構成にするとしても、前記ROMからの出力はあくまで焦点深度に対応した信号でなければならず、上記構成のROMには本件特許発明の変換データとは技術的意義の異なる焦点深度についてのデータが記憶されることになる。
請求人は動機付けの根拠として甲第2号証を挙げているが、甲第2号証の発明と甲第3号証の発明とは同じ自動焦点調整に関するものではあっても、その方式が異なることは既に説明したとおりである。このため、甲第3号証の方式を維持する以上、甲第2号証の方式に特有の構成Cを付加することはあり得ないから、構成Cを開示する甲第2号証の存在の如何にかかわらず、甲第3号証の発明に甲第5、9号証の技術事項を適用した結果は上記のとおりとなる。

【5-3】無効理由IIIについて
甲第15号証に係る特許出願につての拒絶査定不服審判手続において、甲第15号証に係る特許出願の進歩性の判断の結果及び判断の対象とする技術事項は、審判請求の取り下げがあったため審決等として示されていない。また、手続中に通知された拒絶理由とその対象となる技術事項も不明である。したがって、甲第15号証に係る特許出願の拒絶査定が審判請求の取り下げにより確定しても、その事実は本件特許発明の進歩性の判断に何ら影響を及ぼすものではない。
よって、請求人の主張する無効理由IIIは成り立たない。
なお、甲第15号証が開示する技術(出願公開された明細書等)は、【4-15】に摘記したとおりのもであり、少なくとも駆動量データを算出することを前提とした構成C、E、Fを備えていない点で、本件特許発明の構成とは相違するものである。また、甲第15号証の17頁左上欄5行〜13行において、焦点距離を設定情報とする場合に、それに依存して変化する複数のデータとして、レンズ繰出量と像面移動面に関するデータ及び赤外光と可視光との像面位置の差に関するデータが考えられることを開示するが、それらデータの使用目的や使用するための具体的構成は示されていない。

【5-4】無効理由IVについて
本件特許発明は、前記【2】の認定のとおり、技術事項として明りょうである。本件特許発明の目的は、(1)変換係数のデータがカメラ本体に転送できる自動焦点調節方法と(2)そのために使用する交換レンズを提供することであり、それらが本件特許発明の構成により達成できることは、明細書全体及び添付された図面から明らかである。すなわち、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載された交換レンズとして所定の動作を達成し前記目的を達成するために必要な技術事項をその構成としている。したがって、本件特許明細書の特許請求の範囲には、発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことのできない事項が記載されているものと認められる。
また、発明の構成がどのように具体化され、当初の目的を達成するか(すなわち解決手段)は、明細書および図面の記載から把握すべきものであるところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例の説明には、それが具体的に示されている(甲第1号証の1、3欄39行以下、及び添付された図面)。そして、その記載に基づけば、当業者が容易に本件特許発明の技術事項を理解し、本件特許発明の構成を具体化し、所期の目的を達成するすることができる。したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件特許発明を容易に実施することができる程度に必要な技術事項等が記載されているものと認められる。
よって、本件特許明細書に請求人の主張する記載不備はなく、無効理由IVは成り立たない。

【5-5】無効理由Vについて
ズームレンズの場合、単焦点レンズと異なり、変換データの絶対値の最小と最大の比が大きくなるため、変換データが一定である単焦点レンズに比べて、指数部と有効数字部とに分けた浮動小数点形式の信号とするメリットが大きいことは当業者に明らかであるから、補正事項4の効果説明が不適切であるという主張は失当である。
よって、本件特許明細書に請求人の主張する記載不備はなく、無効理由Vは成り立たない。
なお、請求人は『ズームレンズは、焦点距離設定後、単焦点レンズと同じ値に出力データが設定される』と認識しているが、本件の場合、複数の焦点距離領域のうちどの領域に属しているかを示すデータに応じて、焦点距離領域の夫々に対応する1つの変換データが、浮動小数点形式の信号としてカメラ本体側に出力される。したがって、撮影光学系の焦点距離が例えばXmmに設定されているとしても、Xmmの単焦点レンズに最適化した変換データと一般には異なる変換データがXmmを含む焦点距離領域に対応した1つの変換データとして記憶手段から読み出されるから、本件特許発明の交換レンズは、焦点距離設定後の出力データが単焦点レンズに最適に設定された変換データと同じ値に設定されるとは一般にはいえない。

【5-6】無効理由VIについて
ズームレンズの場合、単焦点レンズに比べて、変換データの絶対値の最小と最大の比が大きいので、変換データが一定である単焦点レンズに比べて、指数部と有効数字部とに分けた浮動小数点形式の信号とするメリットがあることについては上記【5-5】のとおりであり、補正事項5の効果説明が不適切であるという主張は失当である。
よって、本件特許明細書に請求人の主張する記載不備はなく、無効理由VIは成り立たない。

【5-7】無効理由VIIについて
弁駁書において主張する無効理由VIIは、審判請求の要旨を変更するものであり、特許法第131条第2項(平成10年改正法)の規定により補正できないものであるから、本無効審判の審理においては審理の対象とすることはできない。
なお、本件の平成6年法律第116号による改正前の特許法第64条の規定による補正の適合性については、前記【5-1】(8)を参照されたい。

【6】結び
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては本件の特許請求の範囲に記載された特許発明を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-01-30 
結審通知日 2004-02-04 
審決日 2004-02-23 
出願番号 特願昭58-136059
審決分類 P 1 112・ 121- Y (G02B)
P 1 112・ 531- Y (G02B)
P 1 112・ 532- Y (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋場 健治片寄 武彦山田 洋一  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 瀬川 勝久
辻 徹二
登録日 1995-08-25 
登録番号 特許第1962765号(P1962765)
発明の名称 交換レンズ  
代理人 一色国際特許業務法人  
代理人 服部 修一  
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