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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 F24H |
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管理番号 | 1117906 |
異議申立番号 | 異議2003-72468 |
総通号数 | 67 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2001-03-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-10-07 |
確定日 | 2005-04-11 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3393601号「ヒートポンプ式給湯器」に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3393601号の請求項1ないし5,7に係る特許を取り消す。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第3393601号(以下「本件特許」という。)に係る発明は、平成11年9月9日に特許出願され、平成15年1月31日に設定登録(同年4月7日に特許掲載公報発行)がなされたところ、平成15年10月7日に増成孔也から特許請求の範囲の請求項1ないし5,7,8に係る発明について特許異議の申立てがなされ、平成16年2月23日付けの取消理由通知書が同年3月5日に発送され、同年5月6日付けの訂正請求書(以下「本件訂正」という。)が提出されたものである。 第2 本件訂正の適否 本件訂正は、願書に添付した明細書について、下記の事項を訂正しようとするものである。 1.本件訂正の内容 ・訂正事項ア:特許請求の範囲の請求項1の記載を、次のように訂正する。 「CO2を冷媒として臨界圧力以上まで加圧させるヒートポンプサイクルを用いて給湯用の液体を加熱し、その加熱された液体を貯湯槽に蓄えるヒートポンプ式給湯器であって、 前記冷媒と、前記冷媒と対向するように流れる前記液体とを熱交換させる給湯用熱交換器と、 前記液体を加熱する際に掛かる給湯負荷に応じて、前記貯湯槽に蓄えられる液体の貯湯温度を可変する貯湯温度可変手段と、 前記貯湯温度可変手段を制御する制御装置とを備え、 この貯湯温度可変手段は、前記ヒートポンプサイクルの高圧圧力、及び前記ヒートポンプサイクルと前記貯湯槽との間で循環する液体の流量を制御することで前記貯湯温度を可変するものであって、 前記制御装置は、前記ヒートポンプサイクルの高圧圧力が給湯用の液体が予め設定した目標貯湯温度を得るために必要な冷媒温度に対応する圧力となるように、前記ヒートポンプサイクルに備えられる膨張弁の開度を制御し、給湯用の前記液体の流量を制御することを特徴とするヒートポンプ式給湯器。」 ・訂正事項イ:発明の詳細な説明の記載について、特許請求の範囲請求項1の上記訂正事項アに係る訂正と整合するように、段落【0004】の記載を訂正する。 ・訂正事項ウ:特許請求の範囲の、請求項8を削除する。 ・訂正事項エ:発明の詳細な説明の、段落【0012】を削除する。 2.本件訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項アは、特許請求の範囲の請求項1記載の構成を、「冷媒と、前記冷媒と対向するように流れる前記液体とを熱交換させる給湯用熱交換器」なる構成、及び「前記貯湯温度可変手段を制御する制御装置」なる構成を加入することにより限定するとともに、当該「制御装置」を、更に「前記制御装置は、前記ヒートポンプサイクルの高圧圧力が給湯用の液体が予め設定した目標貯湯温度を得るために必要な冷媒温度に対応する圧力となるように、前記ヒートポンプサイクルに備えられる膨張弁の開度を制御し、給湯用の前記液体の流量を制御する」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当するものである。 訂正事項イは、訂正事項アによる特許請求の範囲の記載の訂正に整合するように、発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当するものである。 訂正事項ウは、特許請求の範囲の請求項8の記載を削除するものであるから、請求項の削除を目的とするものである。 訂正事項エは、訂正事項ウによる特許請求の範囲の記載の訂正に整合するように、発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当するものである。 そして、これらの訂正事項による技術的事項は、願書に添付された明細書(特許時の明細書)に記載されている事項の範囲内のものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 3.むすび したがって、本件訂正は、特許法第120条の4第2項並びに同条第3項で準用する同法第126条第2項及び第3項の各規定に適合するので、これを認める。 第3 特許異議の申立について 1.本件発明 上記「第2」で示したように本件訂正は認められ、請求項8に係る発明は削除されたので、本件特許異議の申立の対象は、以下の請求項1〜5,7に記載された発明である。 【請求項1】 CO2を冷媒として臨界圧力以上まで加圧させるヒートポンプサイクルを用いて給湯用の液体を加熱し、その加熱された液体を貯湯槽に蓄えるヒートポンプ式給湯器であって、 前記冷媒と、前記冷媒と対向するように流れる前記液体とを熱交換させる給湯用熱交換器と、 前記液体を加熱する際に掛かる給湯負荷に応じて、前記貯湯槽に蓄えられる液体の貯湯温度を可変する貯湯温度可変手段をと、 前記貯湯温度可変手段を制御する制御装置とを備え、 この貯湯温度可変手段は、前記ヒートポンプサイクルの高圧圧力、及び前記ヒートポンプサイクルと前記貯湯槽との間で循環する液体の流量を制御することで前記貯湯温度を可変するものであって、 前記制御装置は、前記ヒートポンプサイクルの高圧圧力が給湯用の液体が予め設定した目標貯湯温度を得るために必要な冷媒温度に対応する圧力となるように、前記ヒートポンプサイクルに備えられる膨張弁の開度を制御し、給湯用の前記液体の流量を制御することを特徴とするヒートポンプ式給湯器。 【請求項2】 前記貯湯温度可変手段は、季節によって貯湯温度を可変し、夏季の場合は冬季より貯湯温度を低くすることを特徴とする請求項1に記載したヒートポンプ式給湯器。 【請求項3】 前記貯湯温度可変手段は、外気温度によって貯湯温度を可変し、外気温度が高い程、貯湯温度を低くすることを特徴とする請求項1に記載したヒートポンプ式給湯器。 【請求項4】 前記貯湯温度可変手段は、前記ヒートポンプ式給湯器に供給される液体の温度によって貯湯温度を可変し、前記液体の温度が高い程、貯湯温度を低くすることを特徴とする請求項1に記載したヒートポンプ式給湯器。 【請求項5】 前記貯湯温度可変手段は、最近において略毎日連続して使用した場合の実績によって貯湯温度を可変し、実績負荷が高い程、貯湯温度を高くすることを特徴とする請求項1に記載したヒートポンプ式給湯器。 【請求項7】 前記貯湯温度可変手段は、60〜100℃の範囲で貯湯温度を可変することを特徴とする請求項1〜5に記載した何れかのヒートポンプ式給湯器。 以下、上記請求項1〜5及び7に係る発明それぞれ「本件発明1」〜「本件発明5」及び「本件発明7」という。 2.本件発明1の容易想到性について 2-1.引用刊行物に記載された発明 (1)当審の取消理由で周知例として掲げた引用例1(特開平11-193958号公報)には、以下の記載がある。 ・「本発明は,冷媒の凝縮熱を利用したヒートポンプ式給湯機に関する。」(段落【0001】) ・「図1はヒートポンプ式給湯機の回路図で,冷媒回路と給湯回路とを主要構成としている。 冷媒回路は,冷媒を圧縮する圧縮機11,冷媒と水と熱交換させる加熱用熱交換器12,冷媒を減圧又は絞る減圧器13,外気と冷媒との熱交換を行う室外側熱交換器14,冷媒の循環路を切替える4方弁16,加熱用熱交換器12から減圧器13に供給される冷媒と室外側熱交換器14から圧縮機11に供給される冷媒との熱交換を行う冷媒熱交換器17,加熱用熱交換器12から減圧器13に供給される冷媒の一部が冷媒熱交換器17で熱交換するように残りの冷媒をバイパスさせるバイパス手段であるバイパスバルブ18等を有している。 給湯回路は,お湯を貯湯する貯留槽20,該貯留槽20に水を供給する給水口21,貯留槽20からお湯を取出す湯取出口22,貯留槽20の下端部に設けられて,当該貯留槽20から加熱用熱交換器12に水を供給するための流量調整手段であるポンプ23を有し,これらが貯留器をなしている。なお,当該貯留器には,少なくとも圧縮機11,減圧器13,バイパスバルブ18及びポンプ23等を制御して湯温が設定温度になるようにする図示しない温度制御部が設けられている。 上記構成において,給湯する時は,貯留槽20に水が一杯になるように給水口21から水が給水され,また4方弁16を実線矢印の方向に切替えて圧縮機11で圧縮されて高温になった冷媒が加熱用熱交換器12に供給されるようにする。 そして,ポンプ23が始動されて貯留槽20の底部の水が加熱用熱交換器12に給水されて,当該加熱用熱交換器12で冷媒と水との熱交換が開始される。これにより,冷媒は熱を失って凝縮し,また水は冷媒の凝縮熱により温度が上昇して,お湯となって貯留槽20に戻る。 このとき,加熱用熱交換器12内の水は,ピストン流(送水圧等により攪拌されないように)をなして当該加熱用熱交換器12の出口に向って流動するようにポンプ23から供給される。」(段落【0017】〜【0022】) また、同様に当審の取消理由で周知例として掲げた引用例8(特開平9-126547号公報)には以下の記載がある。 ・「本発明はヒートポンプ給湯機に関するものである。」(段落【0001】) ・「図1において、1は圧縮機、2は凝縮器、3は減圧装置、4は蒸発器であり、前記圧縮機1、前記凝縮器2、前記減圧装置3、前記蒸発器4は順次接続され、冷媒循環回路を構成する。5は貯湯槽、12は循環ポンプ、13は水熱交換器であり、前記凝縮器2と熱交換をおこなう。そして、前記循環ポンプ12および前記水熱交換器13は前記貯湯槽5の下部と上部を連通する水循環路を構成する。14は温度検知器であり、前記水熱交換器13の出口に設けられ、媒体温度を検出して信号を発する。15は湯温設定手段であり、沸き上げ湯温を設定し、複数の信号を有する。16は回転数制御器であり、前記温度検知器14の信号が前記湯温設定手段15の信号に一致するように前記循環ポンプ12の回転数を制御する。17はミキシングバルブであり、前記貯湯槽5の上部から取り出す湯と減圧弁11で減圧されて前記貯湯槽5の下部に給水される水を混合し、任意に湯温調整する。 つぎに、上記構成において動作を説明する。給湯負荷が多い場合には、前記湯温設定手段15により高温湯の沸き上げ設定をおこない、給湯負荷が少ない場合には中温水の沸き上げ設定をおこなう。そして、前記圧縮機1から吐出された高温高圧の過熱ガスは前記凝縮器2に流入し、ここで前記循環ポンプ12から送られ前記水熱交換器13に流入した水を加熱する。その際に、放熱作用で凝縮液化して前記減圧装置3に流入し、ここで減圧されて前記蒸発器4に流入する。そして、大気熱を吸熱して蒸発ガス化し、前記圧縮機1にもどる。一方、前記貯湯槽5の下部から流出した水は前記循環ポンプ12を介して前記水熱交換器13に流入し、冷媒の凝縮熱で加熱され、前記貯湯槽5の上部にたくわえられる。この運転を繰り返しながら前記貯湯槽5内の上部からしだいに全体を貯湯する。」(段落【0041】〜【0042】) 更に、同様に当審の取消理由で周知例として掲げた引用例3(特開昭60-250号公報)には以下の記載がある。 ・「本発明はヒートポンプ給湯器の運転制御に関するものである。」(1頁左欄14〜15行) ・「第2図に示すごとく貯湯槽6内の水を循環ポンプ8により凝縮器2’へ強制循環する方式では循環水温の検知センサ7’の信号によりヒートポンプをオン-オフさせる方式等がある。」(1頁右欄2〜6行) 引用例1,引用例8及び引用例3の上記記載及びそれぞれの図面の記載を参酌すれば、これら各引用例にはいずれにも、次の発明が記載されているものと認められるので、この発明は本件発明の出願前に周知の発明であったと認定できる。 「ヒートポンプサイクルを用いて給湯用の液体を加熱し、その加熱された液体を貯湯槽に蓄えるヒートポンプ式給湯器であって、冷媒と、冷媒と対向するように流れる液体とを熱交換させる給湯用熱交換器と、液体を加熱する際に掛かる給湯負荷に応じて、貯湯槽に蓄えられる液体の貯湯温度を可変する貯湯温度可変手段と、貯湯温度可変手段を制御する制御装置とを備えたヒートポンプ式給湯器。」(以下「周知発明」という) (2)当審で通知した取消理由で引用した引用例7(特公平7-18602号公報)には、以下の事項が記載されている。 ア.「この発明は、閉回路において、高サイドにおいては超臨界条件下で作動される冷媒を利用する冷凍機、空調ユニット及びヒートポンプのような蒸気圧縮サイクルの運転方法およびその装置に関し、特に、その種の装置の能力を調整及び制御する方法に関するものである。」(2頁左欄28〜32行) イ.「この発明の前述及び他の目的は、装置の冷凍及び加熱能力を制御するにあたり、超臨界状態における熱力学的特性が利用されるようにした、超臨界条件(すなわち、超臨界高サイド圧力、臨界未満低サイド圧力)において通常的に運転される方法を提供することにより達成される。 この発明は、能力制御のための絞り操作前の圧力及び/又は温度の慎重利用による、蒸発器流入口における比エンタルピの調整を包含する。能力は、蒸発器における冷媒のエンタルピ差を変動させることにより、かつ絞り操作前の冷媒の比エンタルピを変化させることにより制御される。これは超臨界状態においては、圧力及び温度を独立して変化させることにより実施され得る。好ましい実施例において、この比エンタルピの調整は、絞り操作前の圧力を変化させることにより実施される。冷媒は、有効な冷却媒体により、可能な限り冷却され、また圧力が必要なエンタルピを与えるように調整される。」(3頁左欄50行〜同右欄16行) ウ.「適切な作動流体は、例えば、エチレン(C2H4)、デイボラン(B2H6)、2酸化炭素(CO2)、エタン(C2H6)及び酸化窒素(N2O)、とすることができる。」(4頁左欄3〜6行) エ.「向流型熱交換器12はこの装置の機能を達成するために絶対に必要であるというものではないが、その効率、特に能力増大要件に対する応答速度を改善する。」(4頁左欄19〜21行) オ.「超臨界サイクル装置の能力調整は、蒸発器流入口、すなわち第5図の点「d」における冷媒の状態を変動させることにより達成される。冷媒の単位質量当たりの冷却能力、すなわち、所定の冷却能力は、状態「d」及び状態「e」間のエンタルピ差に対応する。このエンタルピ差は、第5図において、エンタルピ・圧力線図の水平長さとして示されている。 絞り操作は定エンタルピ処理であり、従って点「d」におけるエンタルピは、点「c」におけるエンタルピに等しい。その結果、定冷媒質量流量における冷却能力(kW)は、点「c」におけるエンタルピを変動させることにより制御され得る。 超臨界サイクルにおいては、高圧単層冷媒蒸気は凝縮されないが、熱交換器11において温度が低下されることに注目すべきである。熱交換器(点「b」)における冷媒の最終温度は、向流が利用される場合、流入冷却空気又は水温より数度高い。そして、高圧蒸気は向流型熱交換器において、数度低い点「c」まで冷却されることができる。しかし、その結果、定冷却空気又は水流入温度において、点「c」における温度は、高サイドにおける圧力レベルとは無関係に、主として一定になる。 したがって、装置能力の調整は、点「c」における温度をほぼ一定の状態として、高サイドにおける圧力を変動することにより達成される。」(4頁右欄13〜36行) カ.「なお、参考として述べるならば、高サイド圧力を主として一定に保持すると共に、絞り操作(状態「c」)する前の冷媒温度を、冷却空気又は水の循環速度を変動させることによって調整することにより、超臨界サイクル装置の能力の調整が可能であることも明らかであろう。冷却流体、すなわち空気又は水の流量を低減することにより、絞り操作前の温度は増大し、能力は低下する。冷却流体の流量が増大すると、絞り操作前の温度が低下し、したがって装置の能力が増大する。圧力及び温度制御を組み合わせることも可能である。」(5頁右欄38〜48行) 2-2.対比・判断 本件発明1と周知発明を対比すると、下記の一致点及び相違点がある。 【一致点】 ヒートポンプサイクルを用いて給湯用の液体を加熱し、その加熱された液体を貯湯槽に蓄えるヒートポンプ式給湯器であって、冷媒と、前記冷媒と対向するように流れる前記液体とを熱交換させる給湯用熱交換器と、前記液体を加熱する際に掛かる給湯負荷に応じて、前記貯湯槽に蓄えられる液体の貯湯温度を可変する貯湯温度可変手段と、前記貯湯温度可変手段を制御する制御装置とを備えたヒートポンプ式給湯器。 【相違点】 A.本件発明1は、ヒートポンプサイクルが、「CO2を冷媒として臨界圧力以上まで加圧させる」ものであるのに対し、周知発明は、そのようなヒートポンプサイクルを採用していない点。 B.本件発明1は、「貯湯温度可変手段は、前記ヒートポンプサイクルの高圧圧力、及び前記ヒートポンプサイクルと前記貯湯槽との間で循環する液体の流量を制御することで前記貯湯温度を可変するものであって、前記制御装置は、前記ヒートポンプサイクルの高圧圧力が給湯用の液体が予め設定した目標貯湯温度を得るために必要な冷媒温度に対応する圧力となるように、前記ヒートポンプサイクルに備えられる膨張弁の開度を制御し、給湯用の前記液体の流量を制御する」ものであるのに対し、周知発明は、貯湯温度可変手段及び制御装置が、そのような制御を行っていない点。 以下、上記相違点について検討する。 相違点Aについて CO2を冷媒として臨界圧力以上まで加圧させるヒートポンプサイクルは上記引用例7や取消理由の中で引用した引用例2(特許第2548962号公報)に開示されているように本件出願前にすでに周知のものであり、そのようなヒートポンプサイクルの採用は当業者であれば何ら困難性なく行えるものである。 相違点Bについて CO2を冷媒として臨界圧力以上まで加圧させるヒートポンプサイクルにおいて、ヒートポンプサイクルの能力調整のために、ヒートポンプサイクルの高サイド圧力(高圧圧力)及び冷却流体の流量を制御する点は上記引用例7(「カ.」の記載参照)に記載されており、引用例7記載のものも周知発明同様ヒートポンプの制御に関するものであるとともに、周知発明のものにおいても高圧圧力及び冷却流体の流量を制御すれば冷却流体の温度を制御でき、結果として貯湯温度を制御できるものと認められるから、周知発明において貯湯温度の制御を行うに際して、引用例7記載の制御手法を採用して本願発明のごとくすることに困難性は認められない。 なお、引用例7記載のものはヒートポンプ自体の能力を調整するものであるが、周知発明においては、ヒートポンプサイクルと給湯用の液体のサイクルは1対1に対応しているのであるから、上記引用例7記載の点を、周知発明のような貯湯槽を有するヒートポンプ式給湯器に適用したならば、熱交換器の冷却は給湯用の液体で行われるようになることは自明のことである。そして、引用例7記載の発明において冷却流体の流量を制御することは、引用例7記載の発明を周知発明に適用するに際しては、給湯用の液体の流量を制御することを意味することになり、ヒートポンプの能力を調整することは、冷却流体の温度(すなわち、貯湯温度)を制御することになることは、当業者であれば容易に把握できることである。 2-3.小括 以上のとおりであるから、本件発明1は引用例7及び周知の技術から当業者が容易に発明できたものと認められる。 3.本件発明2の容易想到性について 本件の請求項2で特定された事項は、当審の取消理由で引用した引用例3(2頁左上欄1〜7行参照)、引用例4(段落【0008】、【0009】参照)、引用例5(1頁右欄18行〜2頁左上欄16行参照)及び引用例6(2頁左欄19行〜同右欄7行参照)に記載されているように周知の事項である。そして、本件発明2は、請求項1を引用するものであるが、引用される構成については上記「2.」の認定があてはまる。 したがって、本件発明2は、引用例7及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。 4.本件発明3の容易想到性について 本件の請求項3で特定された事項は、当審の取消理由で引用した引用例6(2頁左欄19行〜同右欄7行参照)に記載されている。 そして、本件発明3は、請求項1を引用するものであるが、引用される構成については上記「2.」の認定があてはまる。 したがって、本件発明3は、引用例6,引用例7及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。 5.本件発明4の容易想到性について 本件の請求項4で特定された事項は、当審の取消理由で引用した引用例6(2頁左欄19行〜同右欄7行参照)に記載されている。 そして、本件発明4は、請求項1を引用するものであるが、引用される構成については上記「2.」の認定があてはまる。 したがって、本件発明4は、引用例6,引用例7及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。 6.本件発明5の容易想到性について 本件の請求項5で特定された事項は、当審の取消理由で引用した引用例4(段落【0008】、【0009】参照)に記載されている。 そして、本件発明5は、請求項1を引用するものであるが、引用される構成については上記「2.」の認定があてはまる。 したがって、本件発明5は、引用例4,引用例7及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。 7.本件発明7の容易想到性について 当審の取消理由で引用した引用例2([実施例]の項参照)には、CO2冷媒を用いることにより、負荷流体(本願発明7の貯湯温度に相当)を70℃(すなわち、60℃以上)に加熱することが記載されている。すなわち、引用例2にはCO2冷媒を用いることによりヒートポンプによる加熱能力を60℃以上に出来ることが開示されているものと認められるところ、貯湯温度はヒートポンプの能力の範囲内で決定することに何らの技術的意味は認められない。 ここで、本件発明7においては、貯湯温度の上限を100℃としているが、そのような上限を設定するための特別の構成を本件発明7が有しているものとは認められず、また当該上限の設定に何ら臨界的意義を認めることはできない。 よって、本件の請求項7で特定された事項は設計的事項にすぎないことと認められる。 そして、本件発明7は、請求項1ないし5を引用するものであるが、引用される構成については上記「2.」ないし「6.」の認定があてはまる。 したがって、本件発明7は、引用例2,引用例4,引用例6,引用例7及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。 8.むすび 以上のとおりであるから、本件発明1ないし5、7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。したがって、本件発明1ないし5、7に係る特許は、特許法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ヒートポンプ式給湯器 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 CO2を冷媒として臨界圧力以上まで加圧させるヒートポンプサイクルを用いて給湯用の液体を加熱し、その加熱された液体を貯湯槽に蓄えるヒートポンプ式給湯器であって、 前記冷媒と、前記冷媒と対向するように流れる前記液体とを熱交換させる給湯用熱交換器と、 前記液体を加熱する際に掛かる給湯負荷に応じて、前記貯湯槽に蓄えられる液体の貯湯温度を可変する貯湯温度可変手段と、 前記貯湯温度可変手段を制御する制御装置とを備え、 この貯湯温度可変手段は、前記ヒートポンプサイクルの高圧圧力、及び前記ヒートポンプサイクルと前記貯湯槽との間で循環する液体の流量を制御することで前記貯湯温度を可変するものであって、 前記制御装置は、前記ヒートポンプサイクルの高圧圧力が給湯用の液体が予め設定した目標貯湯温度を得るために必要な冷媒温度に対応する圧力となるように、前記ヒートポンプサイクルに備えられる膨張弁の開度を制御し、給湯用の前記液体の流量を制御することを特徴とするヒートポンプ式給湯器。 【請求項2】 前記貯湯温度可変手段は、季節によって貯湯温度を可変し、夏季の場合は冬季より貯湯温度を低くすることを特徴とする請求項1に記載したヒートポンプ式給湯器。 【請求項3】 前記貯湯温度可変手段は、外気温度によって貯湯温度を可変し、外気温度が高い程、貯湯温度を低くすることを特徴とする請求項1に記載したヒートポンプ式給湯器。 【請求項4】 前記貯湯温度可変手段は、前記ヒートポンプ式給湯器に供給される液体の温度によって貯湯温度を可変し、前記液体の温度が高い程、貯湯温度を低くすることを特徴とする請求項1に記載したヒートポンプ式給湯器。 【請求項5】 前記貯湯温度可変手段は、最近において略毎日連続して使用した場合の実績によって貯湯温度を可変し、実績負荷が高い程、貯湯温度を高くすることを特徴とする請求項1に記載したヒートポンプ式給湯器。 【請求項6】 前記貯湯温度可変手段は、過去の同一季節の実績に基づいて貯湯温度を可変することを特徴とする請求項1に記載したヒートポンプ式給湯器。 【請求項7】 前記貯湯温度可変手段は、60〜100℃の範囲で貯湯温度を可変することを特徴とする請求項1〜6に記載した何れかのヒートポンプ式給湯器。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、CO2を冷媒とするヒートポンプサイクルを用いたヒートポンプ式給湯器に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来より、R22冷媒を使用するヒートポンプ式給湯器が公知である。この給湯器では、貯湯槽に蓄えられた液体を直接給湯用として使用する場合、衛生面上から液体の温度(貯湯温度)を60℃以上に保つ必要がある。また、R22冷媒を使用し、補助加熱手段を持たないヒートポンプ式給湯器では、冷媒の特性上、貯湯温度の上限が約65℃であったため、給湯負荷に係わらず、貯湯温度は一定(65℃)に保たれている。従って、液体を蓄える貯湯槽の容量は、温水使用量が増加する冬季に対応できるように設計する必要がある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 ところが、冬季に比べて給湯負荷が減少する夏季では、加熱されて貯湯槽に蓄えられた液体のうち、給湯用として使用されない高温の液体が増加するため、放熱による熱ロスが増大し、且つ不要なタンク容量を備えていることとなって不経済である。なお、給湯負荷とは、必要な温水を得るために要するエネルギー量のことであり、例えば、同一の温水温度及び温水量を得るためには、供給水温が低いほど、必要エネルギー量は増大する。本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、貯湯槽からの放熱による熱ロスを低減できるヒートポンプ式給湯器を提供することにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】 (請求項1の手段) CO2を冷媒として臨界圧力以上まで加圧させるヒートポンプサイクルを用いて給湯用の液体を加熱し、その加熱された液体を貯湯槽に蓄えるヒートポンプ式給湯器であって、、冷媒と、冷媒と対向するように流れる記液体とを熱交換させる給湯用熱交換器と、液体を加熱する際に掛かる給湯負荷に応じて、貯湯槽に蓄えられる液体の貯湯温度を可変する貯湯温度可変手段と、貯湯温度可変手段を制御する制御装置とを備え、この貯湯温度可変手段は、ヒートポンプサイクルの高圧圧力、及びヒートポンプサイクルと貯湯槽との間で循環する液体の流量を制御することで貯湯温度を可変するものであって、制御装置は、ヒートポンプサイクルの高圧圧力が給湯用の液体が予め設定した目標貯湯温度を得るために必要な冷媒温度に対応する圧力となるように、前記ヒートポンプサイクルに備えられる膨張弁の開度を制御し、給湯用の前記液体の流量を制御することを特徴とする。この構成によれば、CO2を冷媒とするヒートポンプサイクルを使用することにより、貯湯温度を従来の65℃を超える90℃以上にすることができる。この場合、例えば給湯負荷が増加する冬季において、貯湯温度を高く制御することにより、従来より貯湯槽を小型化できる。但し、給湯負荷が減少する夏季においても冬季と同じ貯湯温度で使用すると、貯湯温度が高い分、放熱による熱ロスも大きくなってしまう。そこで、給湯負荷に応じて貯湯温度を変更すれば、放熱による熱ロスを低減することが可能である。 【0005】 (請求項2の手段) 貯湯温度可変手段は、季節によって貯湯温度を可変し、夏季の場合は冬季より貯湯温度を低くすることを特徴とする。即ち、夏季の方が冬季に比べて給湯負荷が減少するため、これに合わせて貯湯温度を低く設定することで、放熱による熱ロスを低減できる。また、ヒートポンプサイクルでは、貯湯温度を高くする程、サイクル効率が低下する(図5参照)ため、夏季に貯湯温度を低くすることは、サイクル効率の良い領域でヒートポンプサイクルを運転できるため、夏季に冬季と同じ貯湯温度で使用した場合と比較して、消費電力の低減を図ることができる。 【0006】 更に、ヒートポンプサイクルでは、夏季においても冬季と同じ高い貯湯温度で使用すると、外気温度や水道水温度が高くなるため、圧縮機から吐出される冷媒の圧力が過度に上昇する。特に、CO2を冷媒として使用した場合、R22等のフロンを使用した場合と比較して、サイクル内の冷媒圧力が約10倍程度高圧になるため、ヒートポンプサイクルを構成する各機器への影響がより大きくなる。これに対し、夏季には冬季より貯湯温度を低くすることで、過度の圧力上昇を防止できる。 【0007】 (請求項3の手段) 貯湯温度可変手段は、外気温度によって貯湯温度を可変し、外気温度が高い程、貯湯温度を低くすることを特徴とする。この場合、外気温度が高い時の方が低い時に比べて給湯負荷が減少するため、貯湯温度を低く設定することで、放熱による熱ロスを低減できる。また、請求項2の手段に記載した場合と同様に、外気温度が高い程、貯湯温度を低くすることで、サイクル効率の良い領域でヒートポンプサイクルを運転できるため、外気温度が低い時と同じ貯湯温度で使用した場合と比較して、消費電力の低減を図ることができる。更には、外気温度が高い程、貯湯温度を低くすることで、サイクル内の過度の圧力上昇を防止できる。 【0008】 (請求項4の手段) 貯湯温度可変手段は、ヒートポンプ式給湯器に供給される液体の温度によって貯湯温度を可変し、液体の温度が高い程、貯湯温度を低くすることを特徴とする。この場合、外気温度が高くなる夏季の方が冬季よりヒートポンプ式給湯器に供給される液体の温度が高くなる、つまり給湯負荷が低くなるため、その液体の温度が高い程、貯湯温度を低くすれば、放熱による熱ロスを低減できる。また、請求項2の手段に記載した場合と同様に、液体の温度が高い程、貯湯温度を低くすることで、消費電力の低減を図ることができ、更に、サイクル内の過度の圧力上昇を防止できる。 【0009】 (請求項5の手段) 貯湯温度可変手段は、最近において略毎日連続して使用した場合の実績によって貯湯温度を可変し、実績負荷が高いほど、貯湯温度を高くすることを特徴とする。この場合、最近(例えば1〜2週間前)の実績負荷を学習制御することにより、ユーザーの使用状況に合った貯湯温度を設定することが可能である。なお、実績負荷とは、使用した温水量×(貯湯温度-供給水の温度)で表すことができる。 【0010】 (請求項6の手段) 貯湯温度可変手段は、過去の同一季節の実績に基づいて貯湯温度を可変することを特徴とする。 【0011】 この場合、過去の同一季節で使用した時の貯湯温度を学習制御することにより、季節毎にユーザーの使用状況に合った貯湯温度を設定することが可能である。 【0012】 【0013】 【発明の実施の形態】 次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1はヒートポンプ式給湯器1の全体構成図である。本実施例のヒートポンプ式給湯器(以下、給湯器1と呼ぶ)は、給湯用の液体(以下、給湯用水と呼ぶ)を貯留する貯湯槽2、給湯用水の加熱手段であるヒートポンプサイクルC、貯湯槽2とヒートポンプサイクルCとを接続する流水配管3、この流水配管3に給湯用水を循環させるウォータポンプ4、及び給湯器1の作動を制御する制御装置5(図2参照)等より構成される。 【0014】 ヒートポンプサイクルCは、圧縮機6、給湯用熱交換器7、膨張弁8、室外熱交換器9、アキュムレータ10を順次冷媒配管11により接続して構成され、冷媒として臨界温度の低いCO2を使用している。圧縮機6は、内蔵する電動モータ(図示しない)によって駆動され、アキュムレータ10より吸引した冷媒を、一般的使用条件において臨界圧力以上まで圧縮して吐出する。 【0015】 給湯用熱交換器7は、圧縮機6より吐出された高圧のガス冷媒と給湯用水とを熱交換するもので、冷媒が流れる冷媒通路7aと、給湯用水が流れる給湯用水通路7bとを有し、冷媒の流れ方向と給湯用水の流れ方向とが対向するように構成されている。なお、冷媒通路7aに流入する冷媒(CO2)は、圧縮機6で臨界圧力以上に加圧されているので、給湯用熱交換器7で放熱しても凝縮することはない。 【0016】 膨張弁8は、給湯用熱交換器7から流出する冷媒を弁開度に応じて減圧する減圧装置で、制御装置5によって弁開度が電気的に制御される。室外熱交換器9は、膨張弁8で減圧された冷媒をファン12によって送風される外気との熱交換によって蒸発させる。アキュムレータ10は、室外熱交換器9で蒸発した冷媒を気液分離して液冷媒を貯留し、気相冷媒のみを圧縮機6に吸引させ、サイクル中の余剰冷媒を蓄えている。 【0017】 流水配管3は、給湯用熱交換器7の給湯用水通路7bに接続される冷水管3aと温水管3bとで構成され、冷水管3aの上流端が貯湯槽2の底面に接続され、温水管3bの下流端が貯湯槽2の上面に接続されている。ウォータポンプ4は、冷水管3a(温水管3bでも良い)に設けられ、通電されて回転することにより、貯湯槽2内の給湯用水を流水配管3に流通させる。なお、給湯用水の流通方向は、図1に矢印で示すように、貯湯槽2内の下部→冷水管3a→給湯用熱交換器7の給湯用水通路7b→温水管3b→貯湯槽2内の上部へと流れる。また、貯湯槽2の底面には、貯湯槽2内に給水するための給水配管13が接続され、貯湯槽2の上面には、貯湯槽2内に蓄えられた給湯用水(温水)を使用者に供給するための給湯配管14が接続されている。 【0018】 制御装置5は、図2に示すように、給湯器1の運転を開始する給湯スイッチ15のON信号を受けて起動し、圧縮機6(電動モータ)、膨張弁8、ファン12、及びウォータポンプ4を通電制御して、貯湯槽2内に蓄えられる給湯用水の温度(貯湯温度)を所定の温度範囲(例えば60〜100℃)にコントロールしている。 【0019】 但し、制御装置5には、例えば月単位の時間を計数できるカレンダー時計が内蔵され、このカレンダー時計によって判断される季節ごとに予め目標貯湯温度が設定されている。この目標貯湯温度は、年間を通じて温水使用量を比較すると、夏場より冬場の方が多くなるため、例えば図3に示すように、夏季は低く(例えば65℃)、冬季は高く(例えば90℃)設定されている。なお、個々のユーザーの使用状況に合わせて、使用する湯量及び給湯温度を学習制御しても良い。例えば、過去の同一季節の使用実績から、目標貯湯温度を設定または補正するように学習制御しても良い。あるいは最近において略毎日連続して使用した場合の実績によって貯湯温度を可変しても良い。 【0020】 次に、本実施例の作動を説明する。制御装置5を通じて給湯器1の運転を開始すると、ウォータポンプ4の作動によって流水配管3に給湯用水の流れが生じ、圧縮機6の作動によってヒートポンプサイクルCを冷媒が循環する。これにより、給湯用熱交換器7では、給湯用水通路7bを流れる給湯用水と冷媒通路7aを流れる高温冷媒との間で熱交換が行われる。冷媒との熱交換によって加熱された給湯用水は、温水管3bを流れて貯湯槽2内の上部へ還流する。 【0021】 一方、給湯用水に放熱した冷媒は、膨張弁8で減圧されて室外熱交換器9に流入し、室外熱交換器9で外気から吸熱して蒸発した後、アキュムレータ10で気液分離され、ガス冷媒のみ圧縮機6に吸引される。ここで、制御装置5は、給湯用水の温度が予め設定されている目標貯湯温度となるように、ウォータポンプ4の吐出流量、及びヒートポンプサイクルCの運転状態(膨張弁8の弁開度)を制御している。なお、膨張弁8は、圧縮機6の吐出圧力(高圧圧力)が、上記の目標貯湯温度を得るために必要な冷媒温度に対応する圧力となるように、弁開度が制御される。 【0022】 (実施例の効果) 本実施例の給湯器1は、給湯用水の加熱手段として、CO2を冷媒とするヒートポンプサイクルCを使用しているので、貯湯槽2内の貯湯温度を90℃以上にすることができる。これにより、給湯用水の衛生面上から必要な最低温度60℃より高い温度範囲で目標貯湯温度を変更することが可能となる。 【0023】 そこで、年間を通じて最も温水使用量が増加する冬季の目標貯湯温度を従来より高く(従来の給湯器では約65℃が上限)設定することにより、貯湯槽2の小型化を図ることができる。但し、温水使用量が減少する夏季においても冬季と同じ目標貯湯温度を設定すると、貯湯温度が高い分、放熱による熱ロスも大きくなってしまう。そこで、温水使用量が少なくなる夏季の目標貯湯温度を冬季に比べて低く設定すれば、その分、貯湯槽2からの放熱による熱ロスを低減することができ、経済的である。 【0024】 また、ヒートポンプサイクルCでは、必要とする貯湯温度によって高圧圧力(圧縮機6の吐出圧力)が決定されるため、図4のモリエル線図に示すように、目標貯湯温度が高くなる程、高圧圧力が高くなり、圧縮機6の吸入側と吐出側との圧力差が大きくなる。従って、貯湯温度が高くなる程、サイクル効率(COP)が低下する(図5参照)ため、夏季の目標貯湯温度を低く設定すれば、サイクル効率の良い領域でヒートポンプサイクルCを運転することができる。その結果、夏季に冬季と同じ貯湯温度で使用した場合と比較して、消費電力の低減を図ることができる。 【0025】 更に、ヒートポンプサイクルCでは、夏季においても冬季と同じ高い目標貯湯温度を設定した場合、外気温度や水道水温度が高くなることで、圧縮機6の吐出冷媒圧力が過度に上昇する。特に、CO2を冷媒として使用した場合、R22等のフロンを使用した場合と比較して、サイクル内の冷媒圧力が約10倍程度高圧になるため、ヒートポンプサイクルCを構成する各機器への影響がより大きくなる。これに対し、夏季の目標貯湯温度を冬季より低く設定することで、過度の圧力上昇を防止できるため、冷媒配管11等の耐圧性を低く設計でき、製造コストの上昇を抑えることが可能である。 【0026】 (その他の実施例) 上記の実施例において、外気温度の影響を加味するために、予め設定されている目標貯湯温度をその時の外気温度に応じて補正しても良い。具体的には、外気温度がその季節における平均外気温度より高ければ、目標貯湯温度を低く補正し、外気温度がその季節における平均外気温度より低ければ、目標貯湯温度を高く補正する。 【0027】 また、予め目標貯湯温度を設定することなく、供給される水道水の温度から目標貯湯温度を設定しても良い。つまり、水道水の温度は、季節ごとの温度変化と相関性を有しているため、水道水の温度に応じて目標貯湯温度を設定しても上記の実施例と同様の効果を得ることができる。更には、その時の外気温度に応じて目標貯湯温度を変更しても良い。例えば、外気温度が高い時は、目標貯湯温度を低く設定し、外気温度が低い時は、目標貯湯温度を高く設定する。 【0028】 上記の実施例において、貯湯槽2内に貯留されている給湯用水(温水)は、そのまま飲料水や風呂湯等に使用しても良いが、貯湯槽2内の給湯用水を飲料水や風呂水を加熱するための熱媒体として使用しても良い。また、貯湯槽2内の給湯用水は、給湯用だけでなく、床暖房用、室内空調用として使用することもできる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 ヒートポンプ式給湯器の全体構成図である。 【図2】 制御装置のブロック図である。 【図3】 季節ごとの目標貯湯温度の変化を示すグラフである。 【図4】 ヒートポンプサイクルのモリエル線図である。 【図5】 サイクル効率と貯湯温度との関係を示すグラフである。 【符号の説明】 1 ヒートポンプ式給湯器 2 貯湯槽 4 ウォータポンプ 5 制御装置(貯湯温度可変手段) C ヒートポンプサイクル |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-07-16 |
出願番号 | 特願平11-255895 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
ZA
(F24H)
|
最終処分 | 取消 |
特許庁審判長 |
橋本 康重 |
特許庁審判官 |
井上 哲男 原 慧 |
登録日 | 2003-01-31 |
登録番号 | 特許第3393601号(P3393601) |
権利者 | 東京電力株式会社 財団法人電力中央研究所 株式会社デンソー |
発明の名称 | ヒートポンプ式給湯器 |
代理人 | 伊藤 高順 |
代理人 | 加藤 大登 |
代理人 | 伊藤 高順 |
代理人 | 加藤 大登 |
代理人 | 碓氷 裕彦 |
代理人 | 碓氷 裕彦 |
代理人 | 伊藤 高順 |
代理人 | 加藤 大登 |
代理人 | 碓氷 裕彦 |
代理人 | 伊藤 高順 |
代理人 | 加藤 大登 |
代理人 | 碓氷 裕彦 |