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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1117953
異議申立番号 異議2003-70726  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-02-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-19 
確定日 2005-05-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第3327175号「検知部及びこの検知部を具えたウェハ研磨装置」の請求項1ないし17に係る特許に対する特許異議の申立てについてした平成16年3月1日付けの決定に対し、東京高等裁判所において「特許庁が異議2003-70726号について平成16年3月1日にした決定中,請求項1及び8に関する部分を取り消す。」との判決(平成16年(行ケ)第148号、平成16年10月6日判決言渡)があったので、更に審理の結果、次のとおり決定する。 
結論 特許第3327175号の請求項2ないし9、11ないし17に係る特許を取り消す。 同請求項1、10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
1 特許第3327175号の請求項1〜17に係る発明は、平成9年7月18日に特許出願され、平成14年7月12日にその特許権の設定登録がされた。
2 特許異議申立人北村清隆により請求項1〜3,10〜12に係る発明についての特許に対し、特許異議申立人大坪秀樹により請求項1〜17に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成15年11月11日に訂正請求がなされた後、平成16年3月1日付けで「訂正を認める。 特許第3327175号の請求項1ないし13に係る特許を取り消す。」との異議の決定がなされた。
3 上記異議の決定に対して、平成16年4月15日付けで「特許庁が異議2003-70726号事件について平成16年3月1日にした特許第3327175号の請求項1ないし13に係る特許を取り消す旨の決定を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求める訴え(平成16年(行ケ)第148号)が提起された。
4 平成16年4月20日付けで、願書に添付した明細書について訂正を求める審判の請求(訂正2004-39079号)がなされ、当該審判の請求に対し、平成16年7月28日付けで「訂正することを認める」旨の審決がなされ、平成16年8月7日に確定した。
5 平成16年9月21日付けで「特許庁が異議2003-70726号事件について平成16年3月1日になした決定中、請求項1及び8に関する部分を取り消す。」との上記訴えの請求の趣旨を減縮する旨の申し立てがなされた。
6 平成16年10月6日、「特許庁が異議2003-70726号について平成16年3月1日にした決定中,請求項1及び8に関する部分を取り消す。」との判決の言い渡しがあった。
7 平成16年10月8日付けで、平成15年11月11日付けの訂正請求を取り下げる訂正請求取下書が提出された。

第2 本件発明
上記訂正の審判の審決が確定したことから、本件特許第3327175号の請求項1〜17に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等という。)は、上記訂正の審判により訂正された明細書及び図面の記載からみて、訂正審判の請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜17に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】 半導体素子が形成され、最上層が金属膜である2以上の層を有するウェハ中の前記金属膜の少なくとも一部を研磨により除くウェハ研磨装置であって、半導体素子が形成されたウェハ研磨面の前記金属膜の一部または全部に、多成分の波長のプローブ光を照射するプローブ光照射部と、ウェハ表面から反射されたプローブ光の分光反射率の波形の変化から、研磨終了点を検知する検知部を有し、前記プローブ光が、ウェハのデバイスの最小構造より十分大きなスポット径で、ウェハのパターン構造部分に照射され、前記デバイスの各部分からの反射光の光波が重ね合わされていて、前記検知部は前記分光反射率の波形が研磨の進行に対して安定した時点を研磨終了点とすることを特徴とするウェハ研磨装置。
【請求項2】 半導体素子が形成されたウェハ中の層間絶縁層又は金属電極膜の少なくとも一部を研磨により除くウェハ研磨装置であって、半導体素子が形成されたウェハ研磨面の一部または全部にプローブ光を照射するプローブ光照射部と、ウェハ表面から反射されたプローブ光又はウェハを透過したプローブ光の分光反射率又は分光透過率の変化により研磨量又は研磨終了点を検知する検知部を有し、前記検知部が、反射率又は透過率の分光曲線における少なくとも一つの極大点もしくは極小点、又はその両方の波長の変動、又は極大点、極小点の出現もしくは消滅を検出することにより、研磨量又は研磨終了点を検知するものであることを特徴とするウェハ研磨装置。
【請求項3】 半導体素子が形成されたウェハ中の層間絶縁層又は金属電極膜の少なくとも一部を研磨により除くウェハ研磨装置であって、半導体素子が形成されたウェハ研磨面の一部または全部にプローブ光を照射するプローブ光照射部と、ウェハ表面から反射されたプローブ光又はウェハを透過したプローブ光の分光反射率又は分光透過率の変化により研磨量又は研磨終了点を検知する検知部を有し、前記検知部が、予め算出又は実測された研磨終了点における分光反射率又は分光透過率の波形と、実測された分光反射率又は分光透過率の波形とを比較することにより、研磨終了点を検知するものであることを特徴とするウェハ研磨装置。
【請求項4】 前記プローブ光が、ウェハのデバイスの最小構造より十分大きなスポット径で、ウェハのパタ-ン構造部分に照射されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のウェハ研磨装置。
【請求項5】 前記プローブ光が、ウェハのデバイスの最小構造より十分大きなスポット径で、ウェハのパタ-ン構造部分に照射され、前記ウェハ表面から反射されたプローブ光又は前記ウェハを透過したプローブ光は、前記デバイスの各部分からの光波の重ね合わせであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のウェハ研磨装置。
【請求項6】 前記検知部が、ウェハのパタ-ン構造部分のみがプローブ光に照射されているときの信号のみを用いて研磨量又は研磨終了点を検知するものであることを特徴とする請求項4又は5に記載のウェハ研磨装置。
【請求項7】 前記プローブ光が、研磨定盤及び研磨パッド或いはウェハキャリアに設けられた透光部材を通してウェハに照射されることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載のウェハ研磨装置。
【請求項8】 前記プローブ光が、研磨パッドからはみだしたウェハ部分に照射されることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載のウェハ研磨装置。
【請求項9】 前記ウェハに照射されるプローブ光が広範囲の波長成分を有するものであり、かつ、反射光もしくは透過光を分光する分光器、又は反射光もしくは透過光中の特定波長の選別を行うフィルタを有することを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載のウェハ研磨装置。
【請求項10】 半導体素子が形成され、最上層が金属膜である2以上の層を有するウェハ中の前記金属膜の少なくとも一部を研磨により除くウェハ研磨に際して、プローブ光照射部が半導体素子が形成されたウェハ研磨面の前記金属膜の一部または全部に多成分の波長のプローブ光を照射し、ウェハ表面から反射されたプローブ光の分光反射率の波形の変化から、研磨終了点を検知し、前記プローブ光が、ウェハのデバイスの最小構造より十分大きなスポット径で、ウェハのパターン構造部分に照射され、前記デバイスの各部分からの反射光の光波が重ね合わされていて、前記分光反射率の波形が研磨の進行に対して安定した時点を研磨終了点とすることを特徴とする検知部。
【請求項11】 半導体素子が形成されたウェハ中の層間絶縁層又は金属電極膜の少なくとも一部を研磨により除くウェハ研磨に際して、プローブ光照射部が半導体素子が形成されたウェハ研磨面の一部または全部に多成分の波長のプローブ光を照射し、ウェハ表面から反射されたプローブ光又はウェハを透過したプローブ光の分光反射率又は分光透過率の変化のうち、反射率又は透過率の分光曲線における少なくとも一つの極大点もしくは極小点、又はその両方の波長の変動、又は極大点、極小点の出現もしくは消滅を検出することにより、研磨量又は研磨終了点を検知することを特徴とする検知部。
【請求項12】 半導体素子が形成されたウェハ中の層間絶縁層又は金属電極膜の少なくとも一部を研磨により除くウェハ研磨に際して、プローブ光照射部が半導体素子が形成されたウェハ研磨面の一部または全部に多成分の波長のプローブ光を照射し、ウェハ表面から反射されたプローブ光又はウェハを透過したプローブ光の分光反射率又は分光透過率の変化のうち、予め算出又は実測された研磨終了点における分光反射率又は分光透過率の波形と、実測された分光反射率又は分光透過率の波形とを比較することにより、研磨終了点を検知することを特徴とする検知部。
【請求項13】 前記プローブ光が、ウェハのデバイスの最小構造より十分大きなスポット径で、ウェハのパタ-ン構造部分に照射されることを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の検知部。
【請求項14】 前記プローブ光が、ウェハのデバイスの最小構造より十分大きなスポット径で、ウェハのパタ-ン構造部分に照射され、前記ウェハ表面から反射されたプローブ光又は前記ウェハを透過したプローブ光は、前記デバイスの各部分からの光波の重ね合わせであることを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の検知部。
【請求項15】 前記検知部が、ウェハのパタ-ン構造部分のみがプローブ光に照射されているときの信号のみを用いて研磨量又は研磨終了点を検知するものであることを特徴とする請求項13又は14に記載の検知部。
【請求項16】 前記プローブ光が、研磨定盤及び研磨パッド或いはウェハキャリアに設けられた透光部材を通してウェハに照射されることを特徴とする請求項10から請求項15のうちいずれか1項に記載の検知部。
【請求項17】 前記プローブ光が、研磨パッドからはみだしたウェハ部分に照射されることを特徴とする請求項10から請求項15のうちいずれか1項に記載の検知部。」

第3 特許異議申立てについての判断
1 特許異議申立人北村清隆の特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人北村清隆は、証拠として甲第1号証(特開平7-52032号公報)、甲第2号証(特開平7-4921号公報:以下「刊行物1」という。)及び甲第3号証(特開平7-285050号公報)を提出し、請求項1〜3,10〜12に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから取り消すべきである、旨主張している。

2 特許異議申立人大坪秀樹の特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人大坪秀樹は、証拠として甲第2号証(特開平7-280520号公報)、甲第3号証(特開平7-235520号公報)、甲第4号証(特開平9-7985号公報:以下「刊行物2」という。)及び甲第5号証(特開平8-174411号公報:以下「刊行物3」という。)を提出し、請求項1〜17に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから取り消すべきである、旨主張している。
3 取消しの理由の概要
取消しの理由の概要は、請求項1〜17に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された上記の刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜17に係る発明についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消すべきものである、というにある。

4 刊行物1〜3記載の発明(事項)
当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物1〜3には、以下の事項が記載されていると認める。
(1)刊行物1
ア 公報第2頁右欄第23〜31行
「本発明は、例えば、半導体ウエハに形成された薄膜の膜厚を光学的に測定する膜厚測定装置およびその膜厚測定装置が組み込まれたポリシング装置に関する・・一般に、半導体ウエハにおいては、Si基板上に種々の薄膜が形成されている。これらの膜厚はデバイスの諸特性に大きく影響するため、膜厚を所望の値にコントロールする技術が重要である。」
イ 公報第5頁左欄第28〜34行
「本実施例においては、測定光として赤外線半導体レーザ19が用いられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、測定光として多波長の赤外光を用い、バンドパスフィルタによって波長を選択することも可能である。また、測定光として白色光を用いることや、光源として水銀ランプや重水素ランプ等を用いることが可能である。」
ウ 公報第7頁左欄第45行〜第8頁左欄第12行
「図14は本発明の第3実施例を示しており、図中の符号71は膜厚測定装置である。この膜厚測定装置71においては、測定光学系72が、赤外線半導体レーザ73、レンズ74、75、76、投受光ファイバ77、スリット板78、反射ミラー79、回折格子80、及び、一次元撮像素子81を有している。・・薄膜として前述の各実施例と同様にSiO2膜29が採用されており、赤外線半導体レーザ73は波長約 1.2μm以上の赤外光を出力する。・・膜厚測定装置71の作用を説明する。赤外線半導体レーザ73から出射されたレーザ光89は・・ウエハ1に入射する。ウエハ1に入射したレーザ光89は、(Si)基板28とSiO2膜29との界面、及び、SiO2膜29中で反射し、両反射光u1、u2が干渉する。・・干渉光90は回折格子80により分光され、・・一次元撮像素子81に入射する。・・一次元撮像素子81は入射光を光電変換し、各波長毎の光の強度に応じた信号を出力する。一次元撮像素子81の出力信号はインタフェース83を介して演算器82に送られ、演算器82は入力された信号と以下の (5)式に基づいてSiO2膜29の厚さdを演算する。・・図16は、干渉光90の波形(エネルギ反射率-波長の関係)を示している。さらに、SiO2膜29の厚さdと干渉光90との間には以下のような関係が在る。・・
【数7】

・・ここで、λm は図16の干渉光90の波形に現れた1つの反射率極大(または極小)を与える波長であり、λm-l はλm から波長の増加する方向に数えてl番目の反射率極大(または極小)を与える波長である。また、nはSiO2の屈折率、θはレーザ光89のSiO2への入射角である。・・すなわち、この膜厚測定装置71においても、前述の各実施例と同様に、ウエハ1をポリシングしながら膜厚をインプロセスで測定することができる。」
エ 公報第8頁左欄第26〜40行
「図17乃至図20は本発明の第4の実施例を示す。この実施例は半導体製造プロセスにおいて、図17(a)〜(c)に示すように半導体ウエハ100の表面を平坦化するプロセスである。・・上記プロセスにおいては、まず図17(a)に示すようにSi基板28上にSiO2からなる絶縁膜29aが部分的に形成される。ついで、同図(b)に示すように基板28には回路パターンを形成する、アルミニウムなどの金属膜29bがたとえばCVDなどの手段によって設けられる。金属膜29bは基板28の絶縁膜29a以外の部分だけでなく、この絶縁膜29a上にも堆積するから、同図(c)に示すように上記金属膜29bをポリシングによって平坦化する。」
オ 公報第8頁右欄第23行〜第9頁左欄第10行
「・・半導体ウエハ100は基板28を上側にし、しかも基板28に形成された絶縁膜29aが上部回転テーブル3の窓18に対向するよう位置決めされている。・・レーザ光27の波長が1.2 μm以上であれば、そのレーザ光27は図18に示すように基板28を透過し、一部が絶縁膜29aで反射するとともに残りの一部は上記基板28と絶縁膜29aを透過し、この絶縁膜29aを被覆した金属膜29bで反射する。・・上記絶縁膜29aで反射した第1の反射光27aと、上記金属膜29bで反射した第2の反射光27bとは干渉して基板28から出射し、・・光検出器23で検出された干渉光27cの強度に対応する出力の電気信号は増幅器25で増幅されて演算器26に入力される。この演算器26は、ここに予め設定された設定値と上記干渉光27cの強度とを比較し、干渉光27cの強度が所定値以下になったときに、上記金属膜29bのポリシングを終了させるようになっている。」
したがって、上記記載事項(1)ア及びウ、並びに、半導体ウエハにおいては、ウエハ中に半導体素子が形成され、2以上の層を有することは、当業者において技術常識であること(必要であれば、上記記載事項(1)アの「一般に、半導体ウエハにおいては、Si基板上に種々の薄膜が形成されている。これらの膜厚はデバイスの諸特性に大きく影響する・・」、上記記載事項(1)エの「Si基板28上にSiO2からなる絶縁膜29aが部分的に形成される。(ついで、・・基板28には回路パターンを形成する、アルミニウム等の金属膜29bがたとえばCVDなどの手段によって設けられる。)」、下記記載事項(2)ウの「酸化物層52の表面造作72、74、76の1組が、その下の構造体78、80、82と関連して例示される。」を参照。)からみて、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認める。
<刊行物1記載の発明>
半導体素子が形成され、最上層がSiO2膜29である2以上の層を有するウエハ1中の前記SiO2膜29の一部をポリシングにより除くウエハポリシング装置であって、半導体素子が形成されたウエハ1ポリシング面の前記SiO2膜29の一部に、レーザ光89を照射する測定光学系72と、ウエハ1表面から反射されたレーザ光89を分光した各波長毎の光の強度に応じた信号の波形に現れた反射率極大(または極小)を与える2つの波長からSiO2膜の厚さdを演算して、ポリシングの終点を検知する演算器82を有し、前記レーザ光89が、ウエハ1に照射され、反射光が、ウエハ1の(Si)基板28とSiO2膜29との界面、及び、SiO2膜29中で反射した反射光u1、u2の干渉光90となっているウエハポリシング装置。

(2)刊行物2
ア 公報第9頁左欄第23〜42行
「プラーテン16にはホール(穴)30が形成され、このホールはプラーテンパッド18の上にある。研磨ヘッド12の平行移動的な動きに関係なく、プラーテンが回転している時間の一部の間、研磨ヘッド12によって保持されるウエハ14から見えるように、このホール30の位置が与えられる。レーザー干渉計32は、プラーテン16の下にあって、ホール30がウエハ14に近接した時には、レーザー干渉計32によって投影されるレーザービーム34がプラーテン16のホール30を通過してその上にあるウエハ14の表面に入射するような位置に、固定される。・・プラーテンホール30は、ステップ状の直径を有し、ショルダ36を形成する。ショルダ36は、レーザービーム34のためのウィンドウとして機能するクオーツインサート38を有してこれを指示するために用いられる。」
イ 公報第10頁右欄第20〜31行
「プラーテン16は典型的には、CMPプロセスの最中は回転されるだろう。従って、プラーテンホール30は、自身が一周する間にウエハ14を1回だけ見えることになる。従って、ウエハ14にレーザービーム34が入射する時だけ、レーザー干渉計32からの検出信号をサンプリングすることが可能である。レーザービーム34がホール30を通って部分的にしか伝送されないときには検出信号はサンプリングされず、その理由は、ホールのエッジでプラーテン16の底部によって一部が干渉された場合は、信号に著しいノイズが発生するだろうからである。このことが発生することを防止するため、位置センサ装置が結合される。」
ウ 公報第13頁左欄第32行〜第14頁左欄第24行
「図11(a)〜(c)には、酸化物層52の表面造作72、74、76の1組が、その下の構造体78、80、82と関連して例示される。これらは、典型的なパターニングされたウエハ14上に見られ、CMPプロセス中に変化していく。・・造作72、74、76のそれぞれからの個々の反射の全てから部分的に成る結合された干渉信号は、前述の周期的な正弦波状信号ではなく、外見上ランダムな様式で変動するだろう。・・しかし、上述のように、造作72、74、76の研磨速度は、平坦化のポイントに近付く傾向がある。従って、・・結合された干渉信号が周期的な正弦波の形態として認識できるようになる。従って、正弦波状の干渉信号が開始するときを検出することにより、パターニングされたウエハの表面が平坦化された時を決定することが可能となる。・・図13は、CMPの手順が行われているときのパターニングされたウエハに対する検出器信号の振幅を時間に対してプロットしたグラフである。・・レーザー干渉計からの出力信号がいつ周期化し、即ちウエハ表面が平坦化されているかを実際に決定することは、様々な方法により行うことが可能である。例えば、信号をデジタル処理し、この決定を行うアルゴリズムを用いることができるだろう。・・更に、カーブにフィッティングするための様々な周知のアルゴリズムを用いることが可能である。これらの方法は、干渉計信号の正弦波曲線との類似性を見出すために本質的に用いられるだろう。所定の許容範囲の中で一致すれば、周期が開始したと決定される。」
エ 公報第15頁左欄第7〜23行
「レーザー干渉計によって発生するレーザービームのビームの直径(即ちスポット)及び波長を有利なように操作することが可能であることに更に注意すべきである。図15の(a)及び(b)に示されているように、用いる波長に対し最小可能なスポットに合わせたビーム等の幅の狭いビーム84は、ウエハ14の表面に対して、フォーカスできていない広いビーム86よりも小さな領域をカバーする。この狭いビーム84は、広いビームに比べて、表面の不均一90による散乱(即ちビーム88)を生じやすく、なぜなら、この広いビーム86はウエハ14の表面の更に広い面積に広がり、表面の不均一90よりも大きな部分を包含するからである。従って、広いビームは積分効果を有することとなり、ウエハ14の表面を移動するときには、反射干渉信号に極端な変動を生じさせにくい。従って、この理由から、ビームは広い方が好ましい。レーザービームの幅を広くするためには、周知の光学装置を用いることが可能である。」

(3)刊行物3
ア 公報第3頁右欄第5〜10行
「トップリング2は矢印Cに示すように移動できるようになっており、該通常の研磨時は半導体ウエハFの研磨面の全面がターンテーブル1の上面で覆われた状態となるような位置をとるが、研磨終了点検出時は図示するように、半導体ウエハFが研磨面が露出するように、ターンテーブル1の横にはみでる位置をとる。」
イ 公報第3頁右欄第48〜第4頁左欄第8行
「図2(a)において、研磨面の表面は一様な物質の酸化皮膜Oxで覆われているため、反射光LR1〜LR5は研磨面のどの部分に照射しても同じ反射光量となる。しかしながら、図2(b)に示すように、研磨が進行し表面に異質材である金属部分Mが露出すると、該金属部分Mで反射した反射光LR1、LR3、LR5は酸化膜Oxで反射した反射光LR2、LR4と異なり、反射強度も強くなる。従って、半導体ウエハFの研磨面に対して広い範囲で多数の光を照射し、その反射光強度の変化を検出することにより、ポリッシングの研磨終了点を検出することができる。」

5 対比・判断
(1)本件発明2について
本件発明2と、刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「絶縁膜29a」、「金属膜29b」、「ウエハ1」及び「ポリシング」は、本件発明2の「層間絶縁層」、「金属電極膜」、「ウェハ」及び「研磨」にそれぞれ相当することは明らかであり、また、刊行物1記載の発明の「レーザ光27」、「測定光学系13」及び「演算器26」は、その技術的意義からみて、本件発明2の「プローブ光」、「照射部」及び「検知部」にそれぞれ相当している。
してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
層間絶縁膜又は金属電極膜の少なくとも一部を研磨により除くウェハ研磨装置であって、ウェハ研磨面の金属電極膜の一部または全部にプローブ光を照射するプローブ光照射部と、ウェハ表面から反射されたプローブ光の変化から、研磨終了点を検知する検知部を有してなるウェハ研磨装置。
<相違点1>
本件発明2では、「ウェハ」に「半導体素子が形成され」ているのに対し、刊行物1記載の発明では、ウエハ1に半導体素子が形成されているかどうか不明である点。
<相違点2>
本件発明2では、ウェハ表面から反射されたプローブ光の変化を「分光反射率」により検知しているのに対し、刊行物1記載の発明では、そうなっていない点。
<相違点3>
本件発明2では、「反射率の分光曲線における少なくとも一つの極大点もしくは極小点、又はその両方の波長の変動、又は極大点、極小点の出現もしくは消滅」を検出することにより、研磨量又は研磨終了点を検知するものであるのに対し、刊行物1記載の発明では、そのようになっていない点。
上記相違点1〜3について、以下検討する。
<相違点1について>
刊行物1記載の発明の金属膜29bは回路パターンを形成するものである以上、何らかの半導体素子と半導体素子を結合するものと認められ、Si基板に半導体素子を形成することも従来周知の技術手段であるから、上記相違点1は、従来周知の技術手段の付加に過ぎないものと認める。
<相違点2について>
刊行物1には、他の実施例(公報第7頁右欄第35行〜第8頁左欄第12行参照)として、分光された干渉光の波形に現れる反射率極大(または極小)を与える波長の変化を検知し、膜厚を測定することが記載されている。
そして、刊行物1記載の発明に上記構成の膜厚測定方法を採用することを阻害する特段の事情も見当たらない以上、上記構成を刊行物1記載の発明に適用してかかる相違点2のような構成となすことが、当業者にとって格別困難なものと認めることができない。
<相違点3について>
「本件発明2について 相違点2について」でみたとおり、刊行物1記載の発明において、分光された干渉光の波形に現れた反射率極大(または極小)を与える波長の変化により、研磨終了点を検知するようになすことに格別の困難性は認められない。
また、分光された干渉光の波形に現れた反射率極大(または極小)を与える波長の変化とは、上記相違点3の構成、すなわち反射率の分光曲線における少なくとも一つの極大点もしくは極小点、又はその両方の波長の変動に他ならないから、上記相違点3にかかる構成となすことが、当業者にとって格別困難なものと認めることができない。
そして、本件発明2の作用効果は、上記刊行物1記載の発明及び上記周知の技術から、当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものといえない。
してみると、本件発明2は、上記刊行物1記載の発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明3について
本件発明3と、刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「絶縁膜29a」及び「金属膜29b」は、本件発明3の「層間絶縁層」及び「金属電極膜」にそれぞれ相当することは明らかであるから、両者は、「本件発明2について」でみたとおりの一致点並びに相違点1、2、及び下記の相違点を有する。
<相違点4>
本件発明3では、「予め算出又は実測された研磨終了点における分光反射率又は分光透過率の波形と、実測された分光反射率又は分光透過率の波形とを比較する」ことにより、研磨終了点を検知するものであるのに対し、刊行物1記載の発明では、そのようになっていない点。
上記相違点4について、以下検討する。
<相違点4について>
「本件発明2について 相違点2について」でみたとおり、刊行物1記載の発明において、分光された干渉光の波形に現れた反射率極大(または極小)を与える波長の変化により、研磨終了点を検知するようになすことに格別の困難性は認められない。
そして、分光された干渉光の波形に現れた反射率極大(または極小)に着目することは、分光反射率の波形に着目することに他ならず、かつ、予め算出又は実測されたデータと実測されるデータとを比較することにより何らかの検知を行うことが検知方法としては従来周知の技術手段(必要であれば、刊行物2の公報第17頁左欄第38行〜第47行の記載を参照)であることを考えると、予め算出又は実測した波形と実測される波形とを比較して、研磨終了点を検知して、係る相違点4のような構成とすることは、当業者であれば、容易に想到しうるものと認められる。
してみると、本件発明3は、上記「本件発明2について」で検討したとおりの理由、及び刊行物2記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明4、5及び6について
本件発明4は、本件発明1〜3において、プローブ光が、「ウェハのデバイスの最小構造より十分大きなスポット径で、ウェハのパターン構造部分に照射される」点(以下、「特定事項1」という。)を、本件発明5は、本件発明4に加えて、ウェハ表面から反射されたプローブ光又はウェハを透過したプローブ光が、「デバイスの各部分からの光波の重ね合わせである」点(以下、「特定事項2」という。)を、本件発明6は、本件発明4又は5に加えて、検知部が、「ウェハのパターン構造部分のみがプローブ光に照射されているときの信号のみを用いて研磨量又は研磨終了点を検知する」(以下、「特定事項3」という。)点を、さらに特定するものである。
そこで、上記特定事項1〜3について、以下検討する。
特定事項1について、表面の不均一によるビームの散乱により信号に極端な変動が起きるのを避けるよう、ビームの幅を広くとることは、刊行物2(公報第17頁左欄第38行〜第47行参照)に記載されている。そして、レーザ光27が所定のパターンで形成された絶縁膜29aに照射されるようにウエハを位置決めすることが刊行物1記載の発明(公報第8頁右欄第23行〜第36行参照)に記載されている以上、刊行物2記載のものと同様の課題が内在している刊行物1記載の発明に、上記刊行物2記載の構成を適用することは、当業者にとって容易である。
特定事項2について、ビームの幅を広くとった場合、その反射光が、ビームの照射された各部分の重ね合わせとなることは自明の事項である。してみると、特定事項2は、特定事項1の構成を採用したときに生じる自明の事項を特定したに過ぎないものである。
特定事項3について、刊行物1記載の発明(公報第8頁右欄第23行〜第36行参照)のものも、レーザ光27が所定のパターンで形成された絶縁膜29aに照射されるようにウエハを位置決めしている以上、ウエハのパターン構造部分のみが照射されているときの信号のみを検知しているものと認められる。
してみると、本件発明4、5及び6は、上記「本件発明2について」〜「本件発明3について」で検討したとおりの理由、及び刊行物2記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

(4)本件発明7について
本件発明7は、本件発明1〜6において、プローブ光が、「研磨定盤及び研磨パッド或いはウェハキャリアに設けられた透光部材を通してウェハに照射される」点を、さらに特定するものである。
ところで、刊行物1記載の発明(公報第8頁右欄第23行〜第36行参照)におけるレーザ光27も、本件発明7の「ウェハキャリア」に相当する上部回転テーブル3の窓18を通してウエハに照射しているから、刊行物1記載の発明は、本件発明7の上記特定事項を備えている。
してみると、本件発明7は、上記「本件発明2について」〜「本件発明6について」で検討したとおりの理由に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

(5)本件発明8について
本件発明8は、本件発明1〜6において、プローブ光が、「研磨パッドからはみだしたウェハ部分に照射される」点を、さらに特定するものである。 そこで、当該特定事項について検討するに、半導体ウエハFの研磨面を、研磨終了点検出時に本件発明8の「研磨パッド」に相当するターンテーブル1からはみ出た位置になるようにすることが刊行物3(公報第3頁右欄第5行〜第10行参照)に記載されており、そして、研磨終了点をどこの位置で検出するかは研磨装置の構成に応じて適宜決められることを考えると、刊行物1記載の発明を、刊行物3に記載のような位置で研磨終了点検出を行うものに適用することに、技術的に格別な困難性も認められない。
してみると、本件発明8は、上記「本件発明2について」〜「本件発明6について」で検討したとおりの理由、及び刊行物3記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

(6)本件発明9について
本件発明9は、本件発明1〜8において、「ウェハに照射されるプローブ光が広範囲の波長成分を有するものであり、かつ、反射光もしくは透過光を分光する分光器、又は反射光もしくは透過光中の特定波長の選別を行うフィルタを有する」点を、さらに特定するものである。
ところで、刊行物1記載の他の実施例(公報第3頁右欄第35行〜第8頁左欄第12行参照)では、干渉光を分光する回折格子80を用いており、また、測定光として多波長の赤外光を用いたり、バンドパスフィルタを用いたりすることも、刊行物1(公報第5頁左欄第28行〜第34行参照)には記載されているから、刊行物1記載の発明は、本件発明9の上記特定事項を備えている。
してみると、本件発明9は、上記「本件発明2について」〜「本件発明8について」で検討したとおりの理由に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

(7)本件発明11〜17について、
本件発明11〜17は「検知部」の発明であって、「ウエハ研磨装置」である本件発明2〜8が有する「検知部」についてそれぞれその表現ぶりを変更して記載したものであるから、本件発明11〜17における特定事項は、刊行物1記載の発明との対比において、実質上新たな相違点となるものではない。
してみると、本件発明11〜17は、上記「本件発明2について」〜「本件発明8について」で検討したとおりの理由に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(8)本件発明1,10について
本件発明1に記載された「検知部は分光反射率の波形が研磨の進行に対して安定した時点を研磨終了点とする」点については、特許異議申立人の提出する各証拠のいずれにも、記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、上記特定事項を具備することにより、訂正明細書段落【0070】記載の「この波形bが安定した時点で研磨終了とすることで、300nmほど研磨する工程において、約10%の精度での終了検知が可能になった。」及び段落【0071】の「半導体研磨において、研磨中あるいは研磨後の研磨量又は研磨終了点の検知が感度よく、簡便な機構でなされる。この装置は雑音に強く、信号擾乱の影響も小さい。」という格別な作用効果を奏するものと認められる。
してみると、本件発明1は、特許異議申立人の提出する各証拠に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと云うことができない。
さらに、本件発明1の上記特定事項を具備する本件発明10も、同様の理由により、特許異議申立人の提出する各証拠に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと云うことができない。

第4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明2〜9、11〜17の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明1及び10の特許については、取消理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-03-01 
出願番号 特願平9-193995
審決分類 P 1 651・ 121- ZC (H01L)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 鈴木 充  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 鈴木 孝幸
林 茂樹
登録日 2002-07-12 
登録番号 特許第3327175号(P3327175)
権利者 株式会社ニコン
発明の名称 検知部及びこの検知部を具えたウェハ研磨装置  
代理人 渡辺 隆男  

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