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審決分類 審判 訂正 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 訂正しない E05D
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない E05D
管理番号 1118803
審判番号 訂正2005-39002  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-08-13 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-12-28 
確定日 2005-06-20 
事件の表示 特許第3346691号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件訂正審判請求に係る特許第3346691号は、平成6年10月5日に出願された特願平6-268265号の特許出願を国内優先権主張の基礎として、平成7年10月5日に出願された特願平7-286630号の出願に係り、平成14年9月6日にその発明についての特許の設定登録がなされ、その後、平成16年8月26日付けで、特許第3346691号の請求項1ないし請求項5に係る発明についての特許を取り消す旨の異議の決定(2003年異議第71270号)がなされたところ、前記特許取消決定の取消しを求める訴えが平成16年10月14日に東京高等裁判所になされ、その訴え[平成16年(行ケ)第454号]の提起があった日から起算して90日の期間内である平成16年12月28日に本件の訂正審判が請求されたものである。
これに対し、当審は、請求人が訂正審判において請求した特許明細書の訂正に対して、平成17年3月4日付けで訂正拒絶理由を通知したところ、請求人より指定期間内の平成17年4月7日付けの意見書及び同日付けの手続補正書が提出されたものである。

第2.訂正審判請求書を補正する手続補正について
1.平成17年4月7日付けの手続補正書の補正の内容
平成17年4月7日付けの手続補正書の補正は、訂正審判請求書に添付した全文訂正明細書の特許請求の範囲の【請求項1】及び【請求項2】の記載、並びに、発明の詳細な説明の段落【0008】及び段落【0010】の記載について、訂正審判請求書の「6 請求の理由」欄の「(3)訂正事項」における記載事項を、次のとおりの記載に補正する内容のものである。
[補正1]
訂正審判請求書の「6 請求の理由」欄の「(3)訂正事項」における特許請求の範囲の
「【請求項1】 2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおいて、該羽根板の少なくとも一方は、幅方向にのみ摺動可能な調整板と、該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板と、係合部を設けた調整カムを備え、前記調整板には調整カムが配置される作動穴が穿設され、裏板には調整カムの偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられ、表板には調整カムの係合部を露出して調整カムを回動させる調整穴が穿設され、調整板と裏板とは固定手段によって一体化されることを特徴とする扉用ヒンジ。」の記載を
「【請求項1】 2つの羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおいて、該羽根板の少なくとも一方は、裏板および表板と、前記裏板および表板に対して幅方向にのみ摺動可能に接合される調整板と、係合部を設けた調整力ムを備え、前記調整板には調整力ムが配置される作動穴が穿設され、裏板には調整力ムの偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられ、表板には調整力ムの係合部を露出して調整力ムを回動させる調整穴が穿設され、調整板と裏板とは固定手段によって一体化可能であることを特徴とする扉用ヒンジ。」と補正することにより、訂正審判請求書に添付した全文訂正明細書の特許請求の範囲の【請求項1】の記載を上記[補正1]の内容のとおりに補正する。

[補正2]
訂正審判請求書の「6 請求の理由」欄の「(3)訂正事項」における特許請求の範囲の
「【請求項2】 2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおいて、該羽根板の少なくとも一方は、幅方向にのみ摺動可能な調整板と、該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板と、係合部を設けた調整カムを備え、前記調整板には調整カムが配置される作動穴が穿設され、調整カムは、カム本体と、カム本体の裏面に偏心して突設した回動軸と、カム本体の表面に偏心して突設した回動軸とから構成され、裏面に突設した回動軸と表面に突設した回動軸とは同軸であり、裏板及び表板には調整カムの裏面及び表面の偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられ、表板には調整カムの係合部を露出して調整カムを回動させる調整穴が穿設され、羽根板の前記少なくとも一方は、前記調整板、前記裏板、前記表板、および前記調整カムを組み合わせて構成され、調整板と裏板とは固定手段によって一体化され、表板あるいは裏板の少なくとも一方の内面に、調整板を、幅方向にのみ摺動可能な嵌合状態で配置する凹部を形成し、裏板と表板とは調整板を挟んだ状態で一体化されることを特徴とする扉用ヒンジ。 」の記載を
「【請求項2】 2つの羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおいて、該羽根板の少なくとも一方は、裏板および表板と、前記裏板および表板に対して幅方向にのみ摺動可能に接合される調整板と、係合部を設けた調整力ムを備え、前記調整板には調整力ムが配置される作動穴が穿設され、調整力ムは、カム本体と、カム本体の裏面に偏心して突設した回動軸と、カム本体の表面に偏心して突設した回動軸とから構成され、裏面に突設した回動軸と表面に突設した回動軸とは同軸であり、裏板及び表板には調整力ムの裏面及び表面の偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられ、表板には調整力ムの係合部を露出して調整力ムを回動させる調整穴が穿設され、羽根板の前記少なくとも一方は、前記調整板、前記裏板、前記表板、および前記調整力ムを組み合わせて構成され、調整板と裏板とは固定手段によって一体化可能であり、表板あるいは裏板の少なくとも一方の内面に、調整板を、幅方向にのみ摺動可能な嵌合状態で配置する凹部を形成し、裏板と表板とは調整板を挟んだ状態で一体化されることを特徴とする扉用ヒンジ。」と補正することにより、訂正審判請求書に添付した全文訂正明細書の特許請求の範囲の【請求項2】の記載を上記[補正2]の内容のとおりに補正する。

[補正3]
訂正審判請求書の「6 請求の理由」欄の「(3)訂正事項」における発明の詳細な説明の
「【0008】【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するための第1の手段は、2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおいて、該羽根板の少なくとも一方は、幅方向にのみ摺動可能な調整板と、該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板と、係合部を設けた調整カムを備え、前記調整板には調整カムが配置される作動穴が穿設され、裏板には調整カムの偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられ、表板には調整カムの係合部を露出して調整カムを回動させる調整穴が穿設され、調整板と裏板とは固定手段によって一体化されることを特徴とする扉用ヒンジである。」の記載を
「【0008】【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するための第1の手段は、2つの羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおいて、該羽根板の少なくとも一方は、裏板および表板と、前記裏板および表板に対して幅方向にのみ摺動可能に接合される調整板と、係合部を設けた調整力ムを備え、前記調整板には調整力ムが配置される作動穴が穿設され、裏板には調整力ムの偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられ、表板には調整力ムの係合部を露出して調整力ムを回動させる調整穴が穿設され、調整板と裏板とは固定手段によって一体化されることを特徴とする扉用ヒンジである。」と補正することにより、訂正審判請求書に添付した全文訂正明細書の発明の詳細な説明の段落【0008】の記載を上記[補正3]の内容のとおりに補正する。

[補正4]
訂正審判請求書の「6 請求の理由」欄の「(3)訂正事項」における発明の詳細な説明の
「【0010】 上記目的を達成するための第2の手段は、2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおいて、該羽根板の少なくとも一方は、幅方向にのみ摺動可能な調整板と、該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板と、係合部を設けた調整カムを備え、前記調整板には調整カムが配置される作動穴が穿設され、調整カムは、カム本体と、カム本体の裏面に偏心して突設した回動軸と、カム本体の表面に偏心して突設した回動軸とから構成され、裏面に突設した回動軸と表面に突設した回動軸とは同軸であり、裏板及び表板には調整カムの裏面及び表面の偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられ、表板には調整カムの係合部を露出して調整カムを回動させる調整穴が穿設され、羽根板の前記少なくとも一方は、前記調整板、前記裏板、前記表板、および前記調整カムを組み合わせて構成され、調整板と裏板とは固定手段によって一体化され、表板あるいは裏板の少なくとも一方の内面に、調整板を、幅方向にのみ摺動可能な嵌合状態で配置する凹部を形成し、裏板と表板とは調整板を挟んだ状態で一体化されることを特徴とする扉用ヒンジである。」の記載を
「【0010】 上記目的を達成するための第2の手段は、2つの羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおいて、該羽根板の少なくとも一方は、裏板および表板と、前記裏板および表板に対して幅方向にのみ摺動可能に接合される調整板と、係合部を設けた調整力ムを備え、前記調整板には調整力ムが配置される作動穴が穿設され、調整力ムは、カム本体と、カム本体の裏面に偏心して突設した回動軸と、カム本体の表面に偏心して突設した回動軸とから構成され、裏面に突設した回動軸と表面に突設した回動軸とは同軸であり、裏板及び表板には調整力ムの裏面及び表面の偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられ、表板には調整力ムの係合部を露出して調整力ムを回動させる調整穴が穿設され、羽根板の前記少なくとも一方は、前記調整板、前記裏板、前記表板、および前記調整力ムを組み合わせて構成され、調整板と裏板とは固定手段によって一体化可能であり、表板あるいは裏板の少なくとも一方の内面に、調整板を、幅方向にのみ摺動可能な嵌合状態で配置する凹部を形成し、裏板と表板とは調整板を挟んだ状態で一体化されることを特徴とする扉用ヒンジである。」と補正することにより、訂正審判請求書に添付した全文訂正明細書の発明の詳細な説明の段落【0010】の記載を上記[補正4]の内容のとおりに補正する。

上記補正を、訂正事項ごとに整理すれば、次に示す内容のものとなる。
(1)上記[補正1]の補正により、従前の訂正審判請求書の訂正事項と比較して、
ア.「2以上の羽根板」を「2つの羽根板」とする訂正事項、
イ.「幅方向にのみ摺動可能な調整板と、該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板と、」を「裏板および表板と、前記裏板および表板に対して幅方向にのみ摺動可能に接合される調整板と、」とする訂正事項、及び
ウ.「調整板と裏板とは固定手段によって一体化される」を「調整板と裏板とは固定手段によって一体化可能である」とする訂正事項の、
新たに3個の訂正事項を、追加する。
(2)上記[補正2]の補正により、従前の訂正審判請求書の訂正事項と比較して、
ア.「2以上の羽根板」を「2つの羽根板」とする訂正事項、
イ.「幅方向にのみ摺動可能な調整板と、該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板と、」を「裏板および表板と、前記裏板および表板に対して幅方向にのみ摺動可能に接合される調整板と、」とする訂正事項、及び
ウ.「調整板と裏板とは固定手段によって一体化され、」を「調整板と裏板とは固定手段によって一体化可能であり、」とする訂正事項の、
新たに3個の訂正事項を、追加する。
(3)上記[補正3]の補正により、従前の訂正審判請求書の訂正事項と比較して、
ア.「2以上の羽根板」を「2つの羽根板」とする訂正事項、
イ.「幅方向にのみ摺動可能な調整板と、該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板と、」を「裏板および表板と、前記裏板および表板に対して幅方向にのみ摺動可能に接合される調整板と、」とする訂正事項の、
新たに2個の訂正事項を、追加する。
(4)上記[補正4]の補正により、従前の訂正審判請求書の訂正事項と比較して、
ア.「2以上の羽根板」を「2つの羽根板」とする訂正事項、
イ.「幅方向にのみ摺動可能な調整板と、該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板と、」を「裏板および表板と、前記裏板および表板に対して幅方向にのみ摺動可能に接合される調整板と、」とする訂正事項、及び
ウ.「調整板と裏板とは固定手段によって一体化され、」を「調整板と裏板とは固定手段によって一体化可能であり、」とする訂正事項の、
新たに3個の訂正事項を、追加する。

2.訂正審判請求書の補正についての当審の判断
訂正審判請求人のした平成17年4月7日付けの手続補正書の前記補正は、訂正審判請求書の「6 請求の理由」欄の「(3)訂正事項」における訂正事項の記載を補正することにより、訂正審判請求書に添付すべき全文訂正明細書の記載事項を補正することを求める内容のものであり、かかる補正により、前述のとおり、訂正審判請求書に添付した全文訂正明細書が、従前の訂正事項に加えて、さらに合計11個の新たな訂正事項が追加される内容の全文訂正明細書に変更されることにより、訂正審判請求書の「5 請求の趣旨」欄に記載されているところの「『特許第3346691号の明細書を請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める。』との審決を求める。」の中の「訂正明細書」の記載事項が、結果的に変更されるものとなった。
したがって、訂正審判請求人のした平成17年4月7日付けの手続補正書の前記補正は、訂正審判請求書の「請求の趣旨」の要旨を変更するものである。

3.むすび
以上のとおりであり、平成17年4月7日付けの手続補正書の補正は、訂正審判請求書の要旨を変更するものであるから、平成15年改正特許法(以下、「改正特許法」という。)第131条の2第1項の規定により、認めることができない。

第3.訂正審判請求における訂正の内容
上記「第2.訂正審判請求書を補正する手続補正について」欄に前述したとおり、平成17年4月7日付けの手続補正書の補正は、認めることができないものであるので、訂正審判請求人が平成16年12月28日付け審判請求書において求めている訂正の内容は、次のとおりのものである。
[訂正事項A]
特許査定時の願書に添付した明細書(以下、これを「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の
「【請求項1】 2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおいて、該羽根板の少なくとも一方は、幅方向にのみ摺動可能な調整板と、該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板と、係合部を設けた調整カムを備え、前記調整板には調整カムが配置される作動穴が穿設され、裏板または表板の少なくとも一方には調整カムの偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられ、表板には調整カムの係合部を露出して調整カムを回動させる調整穴が穿設され、調整板と裏板とは固定手段によって一体化されることを特徴とする扉用ヒンジ。」の記載を、
「【請求項1】 2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおいて、該羽根板の少なくとも一方は、幅方向にのみ摺動可能な調整板と、該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板と、係合部を設けた調整カムを備え、前記調整板には調整カムが配置される作動穴が穿設され、裏板には調整カムの偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられ、表板には調整カムの係合部を露出して調整カムを回動させる調整穴が穿設され、調整板と裏板とは固定手段によって一体化されることを特徴とする扉用ヒンジ。」と訂正する。

[訂正事項B]
特許明細書の特許請求の範囲の
「【請求項2】 表板あるいは裏板の少なくとも一方の内面に、調整板を、幅方向にのみ摺動可能な嵌合状態で配置する凹部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の扉用ヒンジ。」の記載を、
「【請求項2】 2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおいて、該羽根板の少なくとも一方は、幅方向にのみ摺動可能な調整板と、該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板と、係合部を設けた調整カムを備え、前記調整板には調整カムが配置される作動穴が穿設され、調整カムは、カム本体と、カム本体の裏面に偏心して突設した回動軸と、カム本体の表面に偏心して突設した回動軸とから構成され、裏面に突設した回動軸と表面に突設した回動軸とは同軸であり、裏板及び表板には調整カムの裏面及び表面の偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられ、表板には調整カムの係合部を露出して調整カムを回動させる調整穴が穿設され、羽根板の前記少なくとも一方は、前記調整板、前記裏板、前記表板、および前記調整カムを組み合わせて構成され、調整板と裏板とは固定手段によって一体化され、表板あるいは裏板の少なくとも一方の内面に、調整板を、幅方向にのみ摺動可能な嵌合状態で配置する凹部を形成し、裏板と表板とは調整板を挟んだ状態で一体化されることを特徴とする扉用ヒンジ。」と訂正する。

[訂正事項C]
特許明細書の段落【0008】の
「【0008】【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するための第1の手段は、2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおいて、該羽根板の少なくとも一方は、幅方向にのみ摺動可能な調整板と、該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板と、係合部を設けた調整カムを備え、前記調整板には調整カムが配置される作動穴が穿設され、裏板または表板の少なくとも一方には調整カムの偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられ、表板には調整カムの係合部を露出して調整カムを回動させる調整穴が穿設され、調整板と裏板とは固定手段によって一体化されることを特徴とする扉用ヒンジである。」の記載を、
「【0008】【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するための第1の手段は、2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおいて、該羽根板の少なくとも一方は、幅方向にのみ摺動可能な調整板と、該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板と、係合部を設けた調整カムを備え、前記調整板には調整カムが配置される作動穴が穿設され、裏板には調整カムの偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられ、表板には調整カムの係合部を露出して調整カムを回動させる調整穴が穿設され、調整板と裏板とは固定手段によって一体化されることを特徴とする扉用ヒンジである。」と訂正する。

[訂正事項D]
特許明細書の段落【0010】の
「【0010】 上記目的を達成するための第2の手段は、表板あるいは裏板の少なくとも一方の内面に、調整板を、幅方向にのみ摺動可能な嵌合状態で配置する凹部を形成したことを特徴とする上記第1の手段に記載の扉用ヒンジである。」の記載を、
「【0010】 上記目的を達成するための第2の手段は、2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおいて、該羽根板の少なくとも一方は、幅方向にのみ摺動可能な調整板と、該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板と、係合部を設けた調整カムを備え、前記調整板には調整カムが配置される作動穴が穿設され、調整カムは、カム本体と、カム本体の裏面に偏心して突設した回動軸と、カム本体の表面に偏心して突設した回動軸とから構成され、裏面に突設した回動軸と表面に突設した回動軸とは同軸であり、裏板及び表板には調整カムの裏面及び表面の偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられ、表板には調整カムの係合部を露出して調整カムを回動させる調整穴が穿設され、羽根板の前記少なくとも一方は、前記調整板、前記裏板、前記表板、および前記調整カムを組み合わせて構成され、調整板と裏板とは固定手段によって一体化され、表板あるいは裏板の少なくとも一方の内面に、調整板を、幅方向にのみ摺動可能な嵌合状態で配置する凹部を形成し、裏板と表板とは調整板を挟んだ状態で一体化されることを特徴とする扉用ヒンジである。」と訂正する。

第4.訂正の適否についての当審の判断
1.訂正の目的の適否について
上記[訂正事項A]の訂正は、請求項1の「裏板または表板の少なくとも一方には」の択一的記載の要素を削除して「裏板には」に限定することにより請求項1に係る発明の構成を特定することを目的とする訂正であるから、[訂正事項A]の訂正は、改正特許法第126条第1項ただし書に掲げる第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。

上記[訂正事項B]の訂正は、請求項1の引用形式で表現されていた請求項2の記載を独立形式で表現するようにした訂正の他に、請求項2の扉用ヒンジに対して、「調整カムは、カム本体と、カム本体の裏面に偏心して突設した回動軸と、カム本体の表面に偏心して突設した回動軸とから構成されること」、「裏面に突設した回動軸と表面に突設した回動軸とは同軸であること」、「裏板及び表板には調整カムの裏面及び表面の偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられること」、「羽根板の前記少なくとも一方は、前記調整板、前記裏板、前記表板、および前記調整カムを組み合わせて構成されること」及び「裏板と表板とは調整板を挟んだ状態で一体化されること」のように限定することにより請求項2に係る発明の構成を特定することを目的とする訂正であるから、[訂正事項B]の訂正は、同法第126条第1項ただし書に掲げる第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。

上記[訂正事項C]の訂正は、特許請求の範囲の請求項1が訂正されることにより不合理となった発明の詳細な説明における記載を、訂正後の請求項1の記載に整合させるための訂正であるから、[訂正事項C]の訂正は、同法第126条第1項ただし書に掲げる第3号の「明りようでない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。

上記[訂正事項D]の訂正は、特許請求の範囲の請求項2が訂正されることにより不合理となった発明の詳細な説明における記載を、訂正後の請求項2の記載に整合させるための訂正であるから、[訂正事項D]の訂正は、同法第126条第1項ただし書に掲げる第3号の「明りようでない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。

以上のとおりであるから、[訂正事項A]ないし[訂正事項D]の訂正は、改正特許法第126条第1項ただし書に掲げる訂正の目的に適合する。

2.訂正審判請求の時期的要件について
上記「第1.手続の経緯」欄に前述したように、本件訂正審判が、特許第3346691号についての特許異議の申立ての審判に係る特許取消決定の取消しを求める訴えの提起があった平成16年10月14日から起算して90日の期間内である平成16年12月28日に請求されたものであり、改正特許法附則第2条第12項において読み替えられた同法第126条第2項に規定されている「特許異議の申立てについての平成15年改正前の特許法第114条第2項の取消決定に対する訴えの提起があった日から起算して90日の期間内に請求したもの」の要件を満たしているから、本件訂正審判は、改正特許法第126条第2項の規定に適合する。

3.新規事項の有無及び実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の存否について
上記[訂正事項A]ないし[訂正事項D]における特許請求の範囲及び明細書の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、また、上記[訂正事項A]ないし[訂正事項D]における特許請求の範囲及び明細書の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、改正特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。

4.独立特許要件の有無について
訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載された発明について、改正特許法第126条第5項に規定する、いわゆる独立特許要件の有無を検討する。
(1)本件訂正発明
本件訂正審判に係る発明は、本件訂正審判請求書に添付した全文訂正明細書(以下、「訂正明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載されたとおりの次のものである(上記[訂正事項A]及び[訂正事項B]を参照)。
「【請求項1】 2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおいて、該羽根板の少なくとも一方は、幅方向にのみ摺動可能な調整板と、該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板と、係合部を設けた調整カムを備え、前記調整板には調整カムが配置される作動穴が穿設され、裏板には調整カムの偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられ、表板には調整カムの係合部を露出して調整カムを回動させる調整穴が穿設され、調整板と裏板とは固定手段によって一体化されることを特徴とする扉用ヒンジ。
【請求項2】 2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおいて、該羽根板の少なくとも一方は、幅方向にのみ摺動可能な調整板と、該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板と、係合部を設けた調整カムを備え、前記調整板には調整カムが配置される作動穴が穿設され、調整カムは、カム本体と、カム本体の裏面に偏心して突設した回動軸と、カム本体の表面に偏心して突設した回動軸とから構成され、裏面に突設した回動軸と表面に突設した回動軸とは同軸であり、裏板及び表板には調整カムの裏面及び表面の偏心した位置に突設した回動軸を支持する軸受が設けられ、表板には調整カムの係合部を露出して調整カムを回動させる調整穴が穿設され、羽根板の前記少なくとも一方は、前記調整板、前記裏板、前記表板、および前記調整カムを組み合わせて構成され、調整板と裏板とは固定手段によって一体化され、表板あるいは裏板の少なくとも一方の内面に、調整板を、幅方向にのみ摺動可能な嵌合状態で配置する凹部を形成し、裏板と表板とは調整板を挟んだ状態で一体化されることを特徴とする扉用ヒンジ。 【請求項3】 請求項1または2に記載の固定手段は、調整板と裏板とを一体化するための固定ネジを螺合するネジ穴を裏板に形成し、前記固定ネジが貫通する長穴を調整板の上下両側に幅方向に長く穿設し、前記固定ネジを挿通する締付穴を表板に穿設したものとしたことを特徴とする扉用ヒンジ。
【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか一つに記載の扉用ヒンジであって、表板の外周に、裏板の周縁と接合する折曲部を形成したことを特徴とする扉用ヒンジ。
【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか一つに記載の扉用ヒンジであって、表板に一対のピンを裏板の方へ突設し、前記ピンを貫通する一対の小穴を裏板に穿設したことを特徴とする扉用ヒンジ。」
(以下、これらを請求項順に「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明5」という。)

(2)特許法第36条第6項の記載要件の有無についての検討
ア.「2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジ」について
(ア) 訂正後の請求項1及び請求項2、並びに、前記請求項1及び請求項2を引用する請求項3ないし請求項5には、「2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジ」と記載されている。
そして、この請求項1ないし請求項5の上記記載においては、「2以上の羽根板」が、「2枚の羽根板」を意味するだけではなく、「3枚以上の羽根板」ないし「∞(無限大)の枚数の羽根板」をも包含することを意味することは明らかである。
しかして、扉用ヒンジの揺動可能に結合された羽根板が、「2枚の羽根板」の場合には、2枚の羽根板が夫々取付けられるべき扉と扉枠とが1:1で対応するものであり、訂正明細書の発明の詳細な説明又は図面に開示されている普通の扉用ヒンジの取付態様についての技術事項のとおりであるから、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)にも理解できるところのものである。
一方、扉用ヒンジの揺動可能に結合された羽根板が、「3枚以上の羽根板」ないし「∞(無限大)の枚数の羽根板」の場合には、3〜∞(無限大)の羽根板が夫々取付けられるべき扉と扉枠との関係は、扉が1又は複数存在する場合と扉枠が1又は複数存在する場合の3通りの組合わせが考えられるところ、それらの取付態様は普通の扉用ヒンジの取付態様以外のものと推定されるから、当業者には到底想像できるところのものではない。そして、扉と扉枠とに夫々取付けられる「3〜∞(無限大)の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジ」についての技術事項が、訂正明細書の発明の詳細な説明又は図面には一切開示されていない。
したがって、訂正後の請求項1ないし請求項5に記載された本件訂正発明1ないし本件訂正発明5は、「2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジ」について、訂正明細書の発明の詳細な説明において記載されていない技術事項を含んでいるから、同法第36条第6項第1号に規定する記載要件を満たしていない。
(イ) また、訂正後の請求項1ないし請求項5に記載された本件訂正発明1ないし本件訂正発明5は、「2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジ」について、その発明特定事項が明確であるということができないから、同法第36条第6項第2号に規定する記載要件を満たしていない。

イ.「該羽根板の少なくとも一方」について
(ア) 訂正後の請求項1及び請求項2、並びに、前記請求項1及び請求項2を引用する請求項3ないし請求項5には、「該羽根板の少なくとも一方」と記載されている。
しかるに、「一方」という語は「一対のもの」に対して使用する語であり、そして「一方」に対する語が、通常「他方」であることは、技術常識である。
しかしながら、この請求項1ないし請求項5の上記記載においては、「該羽根板の少なくとも一方」が、「2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジ」、すなわち「2〜∞の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジ」において、どの羽根板を指すのかを特定することができず、また「該羽根板の少なくとも一方」に対する「該羽根板の他方」が、一体「2〜∞の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジ」のどの羽根板を指すことになるのかについても、明確であるということができない。
そうすると、訂正後の請求項1ないし請求項5に記載された本件訂正発明1ないし本件訂正発明5は、「2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおける該羽根板の少なくとも一方」について、訂正明細書の発明の詳細な説明において記載されていない技術事項を含んでいるから、同法第36条第6項第1号に規定する記載要件を満たしていない。
(イ) また、訂正後の請求項1ないし請求項5に記載された本件訂正発明1ないし本件訂正発明5は、「2以上の羽根板が揺動可能に結合された扉用ヒンジにおける該羽根板の少なくとも一方」について、その発明特定事項が明確であるということができないから、同法第36条第6項第2号に規定する記載要件を満たしていない。

ウ.「幅方向にのみ摺動可能な調整板」及び「該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板」について
訂正後の請求項1及び請求項2、並びに、前記請求項1及び請求項2を引用する請求項3ないし請求項5には、「幅方向にのみ摺動可能な調整板」及び「該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板」が記載されている。
しかして、上記「幅方向にのみ摺動可能な調整板」の記載によれば、「調整板」はその幅方向にのみ摺動可能であることが明記されているといえる。また、上記「該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板」の記載によれば、「裏板および表板」は「調整板」に対して摺動可能に接合されるようになっていることが明記されているといえる。
そうすると、「調整板」と「裏板および表板」の挙動は、上記記載からみて、「裏板および表板」が幅方向にのみ摺動可能である「調整板」に対して摺動可能であることになるから、「裏板および表板」は、自らが摺動可能な「調整板」に対しても摺動可能であることになり、結局のところ、「裏板および表板」の挙動は、「調整板」の幅方向にのみの摺動に関係なく、自由自在に摺動可能であることになる。
このように、本件訂正発明1ないし本件訂正発明5においては、「調整板」と「裏板および表板」の挙動が明確でなく、その結果、「調整板」が「裏板および表板」に対して摺動するのか、或いは、「裏板および表板」が「調整板」に対して摺動するのかについて、いずれのものとも特定することができず、明確であるということができない。
したがって、訂正後の請求項1ないし請求項5に記載された本件訂正発明1ないし本件訂正発明5は、「幅方向にのみ摺動可能な調整板」及び「該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板」について、その発明特定事項が明確であるということができないから、同法第36条第6項第2号に規定する記載要件を満たしていない。

エ.「該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板」及び「調整板と裏板とは固定手段によって一体化される」について
訂正後の請求項1及び請求項2、並びに、前記請求項1及び請求項2を引用する請求項3ないし請求項5には、「該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板」及び「調整板と裏板とは固定手段によって一体化される」が記載されている。
しかるに、「該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板」の記載によれば、「裏板」と「調整板」とが相互に摺動可能であること、つまり、両者は固定されてなく互いに可動な存在であることを意味していることは明らかである。
それに対して、「調整板と裏板とは固定手段によって一体化される」の記載によれば、「裏板」と「調整板」とは、互いに固定されていて両者が一体化されていることが明記されている。
そうしてみると、訂正後の請求項1ないし請求項5に記載された本件訂正発明1ないし本件訂正発明5においては、「調整板」と「裏板」とは、両者が固定状態にあるのか、或いは両者が可動状態にあるのか、いずれのものとも特定することができず、明確であるということができない。
したがって、訂正後の請求項1ないし請求項5には、「該調整板と摺動可能に接合される裏板および表板」及び「調整板と裏板とは固定手段によって一体化される」のように、互いに相容れることができない技術事項が記載されていて、本件訂正発明1ないし本件訂正発明5は、その発明特定事項が明確であるということができないから、同法第36条第6項第2号に規定する記載要件を満たしていない。

(3)まとめ
したがって、本件訂正審判請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲に記載された請求項1ないし請求項5に記載の本件訂正発明1ないし本件訂正発明5が、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていないので、本件訂正発明1ないし本件訂正発明5は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

第5.むすび
以上のとおりであり、本件訂正審判請求においてした訂正は、改正特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2項ないし第4項の規定に適合するものの、しかしながら、本件訂正審判請求書に添付した訂正明細書の請求項1ないし請求項5に記載された本件訂正発明1ないし本件訂正発明5が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件訂正審判請求は、同法第126条第5項の規定に適合しないので、当該訂正を認めることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-21 
結審通知日 2005-04-22 
審決日 2005-05-10 
出願番号 特願平7-286630
審決分類 P 1 41・ 537- Z (E05D)
P 1 41・ 856- Z (E05D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長島 和子伊藤 陽  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
佐藤 昭喜
登録日 2002-09-06 
登録番号 特許第3346691号(P3346691)
発明の名称 扉用ヒンジ  
代理人 藤田 隆  
代理人 藤田 隆  

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