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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1119145
審判番号 不服2003-1465  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-23 
確定日 2005-06-29 
事件の表示 平成 5年特許願第113674号「ゲーム機」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年10月28日出願公開、特開平 6-301343〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成5年4月16日の出願であって、平成14年12月13日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成15年1月23日付けで本件審判請求がされるとともに、同年2月24日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
したがって、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年2月24日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項2】に記載されたとおりの次のものと認める。
「操作者が操作する操作手段と、
ゲーム開始前に複数のキャラクタ情報を前記操作者に対して表示するモニタ画面と、
前記モニタ画面外の上側に設けられ、回りで見ている観客に対して広告を表示する広告表示手段とを有し、
前記操作手段からの操作信号に基づいて、前記モニタ画面に表示された複数のキャラクタ情報からひとつのキャラクタ情報を決定し、その決定情報に対応して前記キャラクタ情報を前記広告表示手段の表示面全体に表示すると共に、決定されたキャラクタ情報によるゲーム画面を前記モニタ画面に表示する
ことを特徴とするゲーム機。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
原審における平成14年1月8日付けの拒絶の理由に引用された特開昭64-58287号公報 (以下「引用例」という。)には、次のア〜オの記載がある。なお、引用例には「ディスプレィ」及び「ディスプレイ」との表記が混在しているが、これらが同義であることは自明であるから、摘記に当たっては「ディスプレイ」に統一する。
ア.「ゲームを映像するゲーム画像ディスプレイと、
前記ゲームに参加するプレイヤが入力操作する操作部と、
前記操作部の入力情報に応じあらかじめ定められたルールに従いゲームを進行するゲーム進行手段と、
前記ゲームのゲーム機側プレイヤを映像するゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイと、
前記ゲーム機側プレイヤの人物側画像を前記ゲームの勝敗や得点等のゲーム状況に応じた表情を備える複数のパターンより構成し、これらをあらかじめ記憶している画像記憶手段と、
前記ゲーム状況を判定する判定手段と、
前記判定手段からの判定情報に応じて前記画像記憶手段より対応する人物画像を読み出す読出手段
とを備えることを特徴とするテレビゲーム機。」(1頁左下欄5行〜右下欄1行、特許請求の範囲)
イ.「テレビゲーム機において、そのゲーム進行中に状況に応じたゲーム機側(コンピユータ側)の感情表現をデイスプレイ表示することによって、ゲームの興趣をより一層高めるようにした新規なテレビゲーム機を提供することを目的とするものである。」(1頁右下欄末行〜2頁左上欄5行)
ウ.「実施例では前記ゲーム進行手段20において分けられた6段階のゲーム難易度の各段階レベル毎に、5人(種類)のゲーム機側プレイヤを設定し、それぞれに個性を持たせるとともに、複数のゲームの状況に対処できるように、一人当り20パターンの画像が備えられている。ゲーム機側プレイヤとしては人気芸能人や政治家あるいは漫画のキャラクタ等適宜のキャラクタが選択される。」(3頁左上欄10〜17行)
エ.「コインやメダルの投入、あるいはスイッチのオンによりこのテレビゲーム機10が始動され、プレイヤによりゲームの難易度レベルが選択される(第4図のステップ41)。次にテレビゲーム機10(ゲーム進行手段20)は選択された難易度レベルの中から一人のゲーム機側プレイヤをアトランダムに選択する(ステップ42)。するとゲーム画像ディスプレイ11にはゲーム画面が、ゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイ15には選択されたゲーム機側プレイヤが映像される。」(3頁左下欄11〜20行)
オ.「この実施例では麻雀テレビゲーム機について説明したが、本発明は上の実施例に限定されることなく、あらゆる種類のテレビゲームに対応でき、また、業務用だけでなく家庭用としても対応できることは言うまでもない。」(4頁右上欄2〜6行)

2.引用例記載の発明の認定
記載ウの「選択された難易度レベル」が記載アの「操作部」によって選択されることは明らかである。
引用例の第1図によれば、ゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイ(符番15)はゲーム画像ディスプレイ(符番11)外の上側にあることが明らかである。
引用例の記載エ,オによれば、引用例記載のテレビゲーム機は業務用であってもよい。
したがって、記載ア〜オを含む引用例の全記載及び図示によれば、引用例には次の発明が記載されているものと認めることができる。
「ゲームを映像するゲーム画像ディスプレイと、
前記ゲームに参加するプレイヤが入力操作する操作部と、
前記操作部の入力情報に応じあらかじめ定められたルールに従いゲームを進行するゲーム進行手段と、
前記ゲーム画像ディスプレイ外の上側にあって、前記ゲームのゲーム機側プレイヤを映像するゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイと、
前記ゲーム機側プレイヤの人物側画像を前記ゲームの勝敗や得点等のゲーム状況に応じた表情を備える複数のパターンより構成し、これらをあらかじめ記憶している画像記憶手段と、
前記ゲーム状況を判定する判定手段と、
前記判定手段からの判定情報に応じて前記画像記憶手段より対応する人物画像を読み出す読出手段とを備え、
前記ゲーム機側プレイヤは、前記操作部によって選択された難易度レベルに応じてアトランダムに選択されるよう構成されている業務用テレビゲーム機。」(以下「引用発明」という。)

3.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
引用発明の「プレイヤ」及び「操作部」は、本願発明の「操作者」及び「操作手段」にそれぞれ相当する。
引用発明の「ゲーム画像ディスプレイ」はゲーム画面を表示する点で、本願発明の「モニタ画面」と一致する。
引用発明の「ゲーム機側プレイヤ」は、「操作部によって選択された難易度レベルに応じて」ゲーム機によって選択されるのであるから、操作手段からの操作信号に基づいて決定されたということができ、その限度で本願発明の「決定されたキャラクタ情報」と一致する。そうである以上、引用発明の「ゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイ」と本願発明の「広告表示手段」とは、「モニタ画面外の上側に設けられ」ている点、及び決定情報に対応したキャラクタ情報が表示される手段である点で一致する。以下、一致点の限度で「表示手段」ということにする。出願人(請求人)は「引用文献1(審決注;引用例)の「ゲーム機側画像ディスプレイ」は、ゲーム機側プレイヤを表示するものであり、操作者が選択したプレイヤではありません。本願発明とは表示内容が全く異なります。」(平成14年3月25日付け意見書2頁10〜12行)と主張するが、本願の【請求項2】には「複数のキャラクタ情報を前記操作者に対して表示する」及び「決定情報に対応して前記キャラクタ情報を前記広告表示手段の表示面全体に表示する」とあるだけで、キャラクタ情報を操作者側のキャラクタ情報に限定解釈しなければならない理由はない。引用発明のゲーム機側プレイヤは、操作者が選択したわけではない(後記相違点2として扱う。)けれども、表示内容について本願発明と引用発明に相違があると認めることはできない。したがって、上記主張を採用することはできない。
引用発明において、ゲーム機側プレイヤは難易度レベルに応じて選択されるのであるから、ゲーム機側プレイヤ決定後のゲーム画面は、ゲーム機側プレイヤによると理解しなければならない。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「操作者が操作する操作手段と、
ゲーム画面を表示するモニタ画面と、
前記モニタ画面外の上側に設けられた表示手段とを有し、
前記操作手段からの操作信号に基づいて、ひとつのキャラクタ情報を決定し、その決定情報に対応して前記キャラクタ情報を前記表示手段に表示すると共に、決定されたキャラクタ情報によるゲーム画面を前記モニタ画面に表示するゲーム機。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉本願発明の「表示手段」は「回りで見ている観客に対して広告を表示する広告表示手段」であるのに対し、引用発明ではその点明らかでない点。
〈相違点2〉本願発明の「モニタ画面」は、ゲーム開始前に複数のキャラクタ情報を操作者に対して表示するものであり、「モニタ画面に表示された複数のキャラクタ情報からひとつのキャラクタ情報を決定」することにより、決定情報に対応したキャラクタ情報を表示手段に表示するのに対し、引用発明ではゲーム開始前に複数のキャラクタ情報が操作者に対して表示されることはなく、操作部によって選択された難易度レベルに応じて、ゲーム機によってキャラクタ情報(ゲーム機側プレイヤ)が選択される点。
〈相違点3〉本願発明が「決定情報に対応して前記キャラクタ情報を前記広告表示手段の表示面全体に表示する」としているのに対し、引用発明ではゲーム機側プレイヤをゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイの表示面全体に表示するのかどうか明らかでない点。

4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
本願発明は「回りで見ている観客に対して広告を表示する」ものであるが、回りに観客がいるかどうかは、ゲーム機の使用状況に依存することがらであり、回りに観客がいないことも想定される。そうである以上、相違点1に係る本願発明の構成は「回りで見ている観客がいる場合に、観客に対して広告を表示する広告表示手段」と解すべきである。
引用発明は「業務用テレビゲーム機」であるから、回りで見ている観客がいる場合も当然予定されている。その場合、モニタ画面(ゲーム画像ディスプレイ)よりも上側にある表示手段(ゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイ)を観客が視認できることは明らかである。また、引用発明のゲーム機側プレイヤとしては「人気芸能人や政治家あるいは漫画のキャラクタ等適宜のキャラクタ」(記載ウ)が予定されており、これらキャラクタが観客が視認できる「ゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイ」に表示されれば、観客の注目を集め、当該ゲーム機又は表示キャラクタの広告となることは明らかである。すなわち、相違点1は実質的相違点にはあたらない。
この点、出願人(請求人)は「引用文献1(審決注;引用例)の第2頁右下欄第1〜3行に「ゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイ15は、前記ゲーム画像ディスプレイ11の後部上方のプレイヤの目線等を考慮した位置に設けられる。」と記載されていることから明らかなように、プレイヤに見せるためのディスプレイです。これに対し、本願発明の広告表示手段はプレイヤではなく回りで観ている観客に見せるための表示手段です。本願発明とは見せようとする対象が全く異なります。」(平成14年3月25日付け意見書2頁13〜18行)と主張している。引用発明の「ゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイ」がプレイヤに見せることを目的として設けられたディスプレイであることは認められるものの、そのディスプレイを観客が見ることができないとも、広告機能がないとも認めることはできない。要するに、ここでの出願人(請求人)の主張は、表示手段(ゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイ)の設置目的が異なる旨の主張にすぎず、構成面において実質的相違点がある場合に、目的の相違がその相違点の判断に影響を及ぼすことはあり得るものの、構成面での実質的相違点がない場合には、目的の相違は新規性進歩性の判断において考慮されないものである。したがって、上記主張を採用することはできない。
さらに、本願出願当時、ゲーム機不使用時にゲームとは別の広告を表示することは周知であり(例えば、特開昭62-84792号公報又は特開昭55-130687号公報参照。)、この周知技術を引用発明に適用することには何の困難性もない。その際、引用発明には2つのディスプレイがあるところ、観客にとってより見やすいのは上側にある「ゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイ」であるから、そこに広告を表示する(ゲーム画像ディスプレイにも表示してもよい。)ことは自然な帰結である。そうである以上、本願発明の「広告表示手段」を、ゲーム機不使用時にゲームとは別の広告を表示する手段と限定解釈することが可能であるとしても、進歩性の判断を左右しない。

(2)相違点2について
引用例の記載イによれば、引用発明においてゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイにゲーム機側プレイヤを表示することの技術的意義は、プレイヤがゲーム機側プレイヤの表情等を見ることによりテレビゲームの興趣を高めることにある。そのためには、ゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイにゲーム機側プレイヤを表示しなければならないが、表示すべきゲーム機側プレイヤをどのように選択・決定するかは直接的には関係しない。引用例の特許請求の範囲(記載ア)に、ゲーム機側プレイヤの選択手段が限定されていないのもそのためである。
引用発明は、操作者が難易度レベルだけを選択し、選択レベルに応じたゲーム機側プレイヤをゲーム機が決定する(より具体的な実施例では、選択レベル毎に5人のゲーム機側プレイヤが設定されており、そこからアトランダムに選択する。)ものであるが、例えば、選択レベル毎の5人のゲーム機側プレイヤをさら操作者が選択できるように変更しても、上記技術的意義をそこなうことにはならない。
加えて、本願出願当時、ゲーム機を対戦相手とするゲーム(引用発明もそうである。)において、対戦相手(ゲーム機側プレイヤ)を操作者が選択・決定するものは周知である(例えば、1992年(平成4年)に販売されたボクシングゲーム「餓狼伝説2」に採用されているほか、「月刊ログイン」誌第7巻第3号(1988年3月1日発行)244〜245頁、及び同誌第7巻第18号22〜23頁に麻雀ゲームの例として紹介されている。)。
そして、ゲーム機側プレイヤの決定をゲーム機に委ねるのか、操作者が決定するのかにより、前者では意外性があり、後者では操作者の意志が明確に反映されるとのそれぞれ利点があるから、すべての作用効果が同一とまではいえないけれども、どちらを採用するかは、それぞれの利点のどちらに重きを置くかによって当業者が適宜選択すべき設計事項にすぎない。前述のとおり、後者が周知であることを考慮すればなおさらである。
さらに、キャラクタ(対戦相手(ゲーム機側プレイヤ)を含む。)を操作者が決定する場合に、その候補となる複数のキャラクタをゲーム開始前にゲーム画像ディスプレイ(モニタ画面)に表示し、表示された候補群から操作者が選択することは極めてありふれている。
以上のとおりであるから、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは設計事項というべきである。

(3)相違点3について
引用発明においてゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイにゲーム機側プレイヤを表示することの技術的意義は(2)で述べたとおりである。また、引用例には、「ゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイ」に「ゲーム機側プレイヤ」以外が表示される旨の記載はない。そうである以上、「ゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイ」の表示面全体に「ゲーム機側プレイヤ」が表示されると理解するのが自然である。すなわち、相違点3は実質的相違点ではない。
仮に、ゲーム機側プレイヤ画像ディスプレイの一部分だけにゲーム機側プレイヤが表示されると理解する余地があるとしても、相違点3に係る本願発明の構成を採用することは設計事項というべきである。

(4)本願発明の進歩性の判断
相違点1〜3は実質的相違点でないか、それとも設計事項程度の相違点であり、これら相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願の請求項1に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-07 
結審通知日 2005-04-19 
審決日 2005-05-09 
出願番号 特願平5-113674
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 仁科 雅弘  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 藤井 靖子
谷山 稔男
発明の名称 ゲーム機  
代理人 三村 治彦  
代理人 北野 好人  

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