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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F04D
管理番号 1119404
異議申立番号 異議2000-74041  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-02-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-11-07 
確定日 2005-04-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3038432号「真空ポンプ及び真空装置」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3038432号の請求項1ないし6に係る発明についての特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3038432号の請求項1ないし8に係る発明についての出願は、平成10年7月21日に出願され、平成12年3月3日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1ないし8に係る発明についての特許について、松原いづみより特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年5月1日に訂正請求がなされ、再度取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年8月20日に再度訂正請求がなされ、平成13年11月5日に上記平成13年5月1日付けの訂正請求についての取下書が提出されたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
ア.訂正事項1
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された「外部から第1の気体を吸入する吸入口と、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する気体移送部と、前記気体移送部の気体を排出させる排気口と、」を「外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、前記外装体の内側に配設され、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する気体移送部と、」と訂正する。

イ.訂正事項2
同請求項1に記載された「前記圧力変化手段は、前記気体移送部において移送される第1の気体に第2の気体を混入させる気体混入手段を含み、」を「前記圧力変化手段は、前記気体移送部において移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、」と訂正する。

ウ.訂正事項3
同請求項2に記載された「前記気体移送部が、気体の移送方向に多段に固定されたステータ翼と該ステータ翼間において回転するロータ翼とを備え、ロータ翼を回転することにより気体を移送するターボ分子ポンプ部を含み、前記気体混入手段は、前記ターボ分子ポンプ部に前記第2の気体を混入させることを特徴とする請求項1に記載の」を「外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、気体の移送方向に多段に固定されたステータ翼と該ステータ翼間において回転するロータ翼とを備え、ロータ翼を回転することにより気体を移送するターボ分子ポンプ部を含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、前記圧力変化手段は、前記ターボ分子ポンプ部において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御することを特徴とする」と訂正する。

エ.訂正事項4
同請求項3に記載された「前記気体移送部が、回転するロータ側と固定されたステータ側とを備え、そのうちの少なくとも一方にネジ溝を備え、前記ロータ側を回転させることにより気体を移送するネジ溝ポンプ部を含み、前記気体混入手段は、前記ネジ溝ポンプ部に前記第2の気体を混入させることを特徴とする請求項1に記載の」を「外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、回転するロータ側と固定されたステータ側とを備え、そのうちの少なくとも一方にネジ溝を備え、前記ロータ側を回転させることにより気体を移送するネジ溝ポンプ部を含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、前記圧力変化手段は、前記ネジ溝ポンプ部において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御することを特徴とする」と訂正する。

オ.訂正事項5
同請求項4に記載された「前記気体移送部が、ターボ分子ポンプ部と該ターボ分子ポンプ部に続くネジ溝ポンプ部とを含み前記気体混入手段は、前記ターボ分子ポンプ部と前記ネジ溝ポンプ部との間において前記第2の気体を混入させることを特徴とする請求項1に記載の」を「外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、ターボ分子ポンプ部と該ターボ分子ポンプ部に続くネジ溝ポンプ部とを含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、前記圧力変化手段は、前記ターボ分子ポンプ部と前記ネジ溝ポンプ部との間において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御することを特徴とする」と訂正する。

カ.訂正事項6
同請求項5及び請求項6を削除する。

キ.訂正事項7
同請求項7を請求項5に繰り上げるとともに、引用する請求項について「請求項1から請求項6のうちのいずれか1項」を「請求項1から請求項4のうちのいずれか1項」と訂正する。

ク.訂正事項8
同請求項8を請求項6に繰り上げるとともに、引用する請求項について「請求項7」を「請求項5」と訂正する。

ケ.訂正事項9
同明細書段落【0006】(特許公報第2頁右欄第23〜40行)の「【課題を解決するための手段】上記第1の目的を達成するために、本発明は、外部から第1の気体を吸入する吸入口と、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する気体移送部と、前記気体移送部の気体を排出させる排気口と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、前記圧力変化手段は、前記気体移送部において移送される第1の気体に第2の気体を混入させる気体混入手段を含み、前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御する真空ポンプを提供する。
本発明に係る真空ポンプでは、圧力変化手段により、気体移送部内の圧力を変化させ、吸入口から吸引する気体の吸引力を変化させることができる。従って、気体を吸引する容器との間にバルブを介在配置させずに気体の吸引力を調節でき、バルブからの発塵により容器内が汚染されるのを回避することができる。」を
「【課題を解決するための手段】上記第1の目的を達成するために、本発明は、外部から第1の気体を吸入する吸入口と、前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、前記外装体の内側に配設され、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、前記圧力変化手段は、前記気体移送部において移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御する真空ポンプを提供する。
上記第1の目的を達成するために、本発明は、外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、気体の移送方向に多段に固定されたステータ翼と該ステータ翼間において回転するロータ翼とを備え、ロータ翼を回転することにより気体を移送するターボ分子ポンプ部を含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、前記圧力変化手段は、前記ターボ分子ポンプ部において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御する真空ポンプを提供する。
また、上記第1の目的を達成するために、本発明は、外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、回転するロータ側と固定されたステータ側とを備え、そのうちの少なくとも一方にネジ溝を備え、前記ロータ側を回転させることにより気体を移送するネジ溝ポンプ部を含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、前記圧力変化手段は、前記ネジ溝ポンプ部において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御する真空ポンプを提供する。
さらに、上記第1の目的を達成するために、本発明は、外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、ターボ分子ポンプ部と該ターボ分子ポンプ部に続くネジ溝ポンプ部とを含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、前記圧力変化手段は、前記ターボ分子ポンプ部と前記ネジ溝ポンプ部との間において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御する真空ポンプを提供する。
本発明に係る真空ポンプでは、圧力変化手段により、気体移送部内の圧力を変化させ、吸入口から吸引する気体の吸引力を変化させることができる。
従って、気体を吸引する容器との間にバルブを介在配置させずに気体の吸引力を調節でき、バルブからの発塵により容器内が汚染されるのを回避することができる。」と訂正する。

コ.訂正事項10
同明細書段落【0007】(特許公報第2頁右欄第41〜46行)の記載を削除する。

(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
ア.上記訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1に記載された「外部から第1の気体を吸入する吸入口と、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する気体移送部と、前記気体移送部の気体を排出させる排気口と、」に、「外装体」及び「外装体の内側に配設され、」を加えることによって、より下位概念の「外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、前記外装体の内側に配設され、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する気体移送部と、」と限定しようとするものである。
この訂正事項1に関連する記載として、特許明細書段落【0010】に「外装体10は、その上端部に半径方向外方へ延設されたフランジ11を有しており、このフランジ11をボルト等によって半導体製造装置等に留め付けてフランジ11の内側に形成される吸入口16とチャンバ等の容器の排出口とを連接し、容器の内部と外装体10の内部とを連通させるようになっている。」と、同明細書段落【0012】に「スペーサ71は段部を有する円筒状であり、外装体10の内側に積み重ねられている。」と、同明細書段落【0014】に「ネジ溝部スペーサ80は、図1に示すように、外装体10の内側に配設され、かつ、スペーサ71に連設され、スペーサ71とステータ翼72との下方に配設されている。」と、同明細書段落【0022】に「真空ポンプ1の外装体10の下部には、ネジ溝ポンプ部Sにより移送されてきた気体を外部へ排出する排気口52が配置されている。」と記載されている。したがって、上記訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

イ.上記訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記圧力変化手段は、前記気体移送部において移送される第1の気体に第2の気体を混入させる気体混入手段を含み、」に、「前記気体移送部で」を加えることによって、より下位概念の「前記圧力変化手段は、前記気体移送部において移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、」と限定しようとするものである。
この訂正事項2に関連する記載として、特許明細書段落【0023】に「更に、本実施形態の真空ポンプ1は、外装体10を貫通し、外部とロータ翼62及びステータ翼72間とを連通する連通管85を備えており、この連通管85からターボ分子ポンプ部Tへ不活性ガスが供給され、吸引、移送している気体に混合させるようになっている。連通管85は、コンダクタンス可変バルブ(以下バルブ)86を備えており、このバルブ86によって、ターボ分子ポンプ部Tへ供給され混合される不活性ガスの量が調節されるようになっている。」と、特許明細書段落【0031】に「上述の実施形態においては、気体混入手段としての連通管85により、第2の気体としての不活性ガスがターボ分子ポンプ部Tへ導入されているが、これに限れるものではなく、第2の気体をターボ分子ポンプ部Tとネジ溝ポンプ部Sとの連通部や、ネジ溝ポンプ部Sや、排気口52の前の空間部分等、他の部分へ導入してもよい。」と記載されている。したがって、上記訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

ウ.上記訂正事項3は、同請求項2を独立した請求項とするため、請求項2に記載された「ことを特徴とする請求項1に記載の」を訂正後の請求項1の記載に置き換えようとするものである。したがって、この訂正事項3は、訂正前の請求項2に上記訂正事項1及び2の限定を加えたものであり、この訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

エ.上記訂正事項4は、同請求項3を独立した請求項とするため、請求項3に記載された「ことを特徴とする請求項1に記載の」を訂正後の請求項1の記載に置き換えようとするものである。したがって、この訂正事項4は、訂正前の請求項3に上記訂正事項1及び2の限定を加えたものであり、この訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

オ.上記訂正事項5は、同請求項4を独立した請求項とするため、請求項4に記載された「ことを特徴とする請求項1に記載の」を訂正後の請求項1の記載に置き換えようとするものである。したがって、この訂正事項5は、訂正前の請求項4に上記訂正事項1及び2の限定を加えたものであり、この訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

カ.上記訂正事項6は、同請求項5及び6を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

キ.上記訂正事項7及び8は、上記訂正事項6の訂正に伴って、請求項番号の訂正、及び引用する請求項の訂正をするものであり、明瞭でない記載の釈明に該当する。そして、この訂正は、特許明細書に記載した事項の範囲内であり、又、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

ク.上記訂正事項9及び10は、上記訂正事項1〜8の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と整合させるために明細書の発明の詳細な説明を訂正するものであり、明瞭でない記載の釈明に該当する。そして、この訂正は、特許明細書に記載した事項の範囲内であり、又、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明1ないし6
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」〜「本件発明6」という。)は、上記平成13年8月20日付けの訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、
前記外装体の内側に配設され、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する気体移送部と、
前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、
前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、
前記圧力変化手段は、前記気体移送部において移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、
前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御することを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】 外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、
気体の移送方向に多段に固定されたステータ翼と該ステータ翼間において回転するロータ翼とを備え、ロータ翼を回転することにより気体を移送するターボ分子ポンプ部を含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、
前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、
前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、
前記圧力変化手段は、前記ターボ分子ポンプ部において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、
前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御することを特徴とする真空ポンプ。
【請求項3】 外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、
回転するロータ側と固定されたステータ側とを備え、そのうちの少なくとも一方にネジ溝を備え、前記ロータ側を回転させることにより気体を移送するネジ溝ポンプ部を含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、
前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、
前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、
前記圧力変化手段は、前記ネジ溝ポンプ部において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、
前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御することを特徴とする真空ポンプ。
【請求項4】 外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、
ターボ分子ポンプ部と該ターボ分子ポンプ部に続くネジ溝ポンプ部とを含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、
前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、
前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、
前記圧力変化手段は、前記ターボ分子ポンプ部と前記ネジ溝ポンプ部との間において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、
前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御することを特徴とする真空ポンプ。
【請求項5】 請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の真空ポンプと、
前記真空ポンプに内部の気体が吸引排出される容器とを備えることを特徴とする真空装置。
【請求項6】 前記容器内の圧力を検出する圧力センサを備え、
前記制御手段は、前記圧力センサからの出力に応じて制御量を決定することを特徴とする請求項5に記載の真空装置。」

(2)刊行物に記載された発明
(2-1)当審が取消理由通知において引用したPCT国際公開公報 WO97/15760(以下「刊行物1」という。)には、
(a)、第2頁第23行〜第3頁第34行に「第1図の実施例では外側ケーシングが符号1で図示されている。・・・前記軸3には、駆動モータ5、分子ポンプ段のロータ6並びにターボ分子ポンプ段のロータ7が結合されている。前記ロータ7は複数のロータ羽根8を装備し、該ロータ羽根は、外側ケーシング1内に保持された複数の羽根9と協働してターボ分子ポンプ段を形成している。ターボ分子ポンプは、入口を形成するフランジ11を介して、排気すべき排気鐘に接続される。分子ポンプ(もしくは分子ポンプ段)は、軸受室12に被さるベル形のロータ6から成り、該ロータはその外周面に複数のねじ山状の溝13を有し、ポンプ運転時に前記溝13内をガスが高真空側から予真空側へ吐出される。・・・予真空室19には予真空接続管片20が接続されている。・・・ターボ分子ポンプ段8,9は中間取入れ口28を備えている。該中間取入れ口は種々の目的、例えばフランジ11に接続され、図示されていない真空室内における圧力に対してより高い圧力水準を有する真空生成、又は、・・・に役立てうる。」と記載されている。
したがって、上記記載、及び図面の記載からみて、刊行物1には、以下の発明【A】及び【B】が記載されているものと認められる。
「外部から第1の気体を吸入する入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外側ケーシング1と、気体の移送方向に多段に固定されたステータ羽根9と該ステータ羽根9間において回転するロータ羽根8とを備え、ロータ羽根8を回転することにより気体を移送するターボ分子ポンプ段、及び該ターボ分子ポンプ段に続き、回転するロータ6側と固定されたステータ14側とを備え、前記ロータ6側にねじ山状の溝13を備え、前記ロータ6側を回転させることにより気体を移送する分子ポンプ段を含み、前記入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外側ケーシング1の内側に配設された気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記入口からの気体の吸引力を変化する圧力変化手段と、前記圧力変化手段は、前記ターボ分子ポンプ段において移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる中間取入れ口28を含む真空ポンプ。」(以下、「刊行物1記載の発明【A】」という。)
「外部から第1の気体を吸入する入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外側ケーシング1と、気体の移送方向に多段に固定されたステータ羽根9と該ステータ羽根9間において回転するロータ羽根8とを備え、ロータ羽根8を回転することにより気体を移送するターボ分子ポンプ段、及び該ターボ分子ポンプ段に続き、回転するロータ6側と固定されたステータ14側とを備え、前記ロータ6側にねじ山状の溝13を備え、前記ロータ6側を回転させることにより気体を移送する分子ポンプ段を含み、前記入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外側ケーシング1の内側に配設された気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記入口からの気体の吸引力を変化する圧力変化手段と、前記圧力変化手段は、前記ターボ分子ポンプ段において移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる中間取入れ口28を含む真空ポンプと、前記真空ポンプに内部の気体が吸引排出される容器とを備えた真空装置。」(以下、「刊行物1記載の発明【B】」という。)

(2-2)当審が取消理由通知において引用した特開平1-244194号公報(以下「刊行物2」という。)には、
(b)、第1頁右下欄第4〜9行に「〔産業上の利用分野〕本発明は、真空排気技術、特に、オイルフリ真空ポンプを用いて高真空を作り出す技術に関し、例えば、半導体装置の製造工程において、ウエハに対して真空雰囲気にて各種の処理を施す際に利用して有効なものに関する。」と、
(c)、第2頁右下欄第3〜12行に「本実施例において、ドライエッチング装置は被処理物としてのウエハ1を処理するための処理室2を備えており、・・・また、蓋体2Bには処理室2内を排気するための排気口3が開設されている。」と、
(d)、第3頁左上欄第10行〜同頁右上欄第6行に「前記排気口3には本発明にかかる真空排気装置10を設備された排気路9が接続されている。真空排気装置10はオイルフリ真空ポンプの一例であるターボ真空ポンプ11と、・・・ターボ真空ポンプ11の吸気側に接続されているターボ分子ポンプ14と、ターボ真空ポンプ11の吸気側に圧力制御用ガスとしての窒素ガスを供給するための制御ガス供給路15と、その制御ガス供給源16と、この供給源16からの供給量を制御するための流量制御装置としての粗制御用流量調整弁17Aおよび密制御用流量調整弁17Bと、真空排気系全体を開閉するエアバルブ18とを備えており、この排気装置10には処理室2の内圧を測定する手段としての真空計19が接続されている。」と、
(e)、第5頁右上欄第2〜10行に「所定のリークチェックが実施された後、コントローラ20により、第5図(b)に示されているように粗制御用流量調整弁17Aが開けられ、所定量の窒素ガスが排気路9に供給される。排気路9に供給された窒素ガスは処理室2内のガスと共に、排気装置10により排気されて行く。したがって、処理室2内の内圧は、第5図(a)に示されているように、予め設定された圧力まで上昇された後、一定に維持されることになる。」と、
(f)、 第5頁左下欄第2〜14行に「このエッチング処理中、ターボ真空ポンプ11およびターボ分子ポンプ14は真空排気を持続するが、第5図(c)に示されているように、コントローラ20によりフイードバック制御されるため、第5図(a)に示されているように、処理室2の真空状態は処理が最適に実行される所定の圧力(例えば・・・)に維持される。この最適制御を実行するために、エッチングガスの供給に対応して第5図(c)に示されているように、コントローラ20の指令によって密流量調整弁17Bが流量を精密に調整することにより、制御用ガスとしての窒素ガスがターボ真空ポンプ11の吸気側に供給される。」と、
(g)、第5頁右下欄第14行〜第6頁左上欄第1行に「前記実施例によれ次の効果が得られる。(1)オイルフリ真空ポンプの真空排気による圧力を制御する際、制御用のガスをオイルフリ真空ポンプが排気している排気路への供給流量を調整しながら供給することにより、オイルフリ真空ポンプの排気性能を実質的に制御することができるのため、オイルフリ真空ポンプによって所望の真空状態を作り出すことができる。」と記載されている。
したがって、上記記載、及び図面の記載からみて、刊行物2には、以下の技術的事項【C】及び【D】が記載されているものと認められる。
「第1ポンプ部であるターボ分子ポンプ14と該第1ポンプ部に続く第2ポンプ部であるターボ真空ポンプ11とを含み、第1の気体を移送する気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、前記圧力変化手段による圧力の変化を制御するコントローラ20とを備え、前記圧力変化手段は、第1ポンプ部と第2ポンプ部との間において、移送される第1の気体に窒素ガスを前記気体移送部で混入させる制御ガス供給路15を含み、前記コントローラ20は、前記制御ガス供給路15により混入される前記窒素ガスの量を制御する真空排気装置10。」(以下、「刊行物2記載の技術的事項【C】」という。)
「第1ポンプ部であるターボ分子ポンプ14と該第1ポンプ部に続く第2ポンプ部であるターボ真空ポンプ11とを含み、第1の気体を移送する気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、前記圧力変化手段による圧力の変化を制御するコントローラ20とを備え、前記圧力変化手段は、第1ポンプ部と第2ポンプ部との間において、移送される第1の気体に窒素ガスを前記気体移送部で混入させる制御ガス供給路15を含み、前記コントローラ20は、前記制御ガス供給路15により混入される前記窒素ガスの量を制御する真空排気装置10と、真空排気装置10に内部の気体が吸引排出される処理室2と、処理室2内の圧力を検出する真空計19を備え、前記コントローラ20は、前記真空計19からの出力に応じて制御量を決定する真空装置。」(以下、「刊行物2記載の技術的事項【D】」という。)

(3)対比・判断
(3-1).本件発明1について
本件発明1と、上記刊行物1記載の発明【A】とを対比すると、刊行物1記載の発明【A】における「入口」、「外側ケーシング1」、「中間取入れ口28」は、その機能からみて、本件発明1における「吸入口」、「外装体」、「気体混入手段」に相当していると認められる。
そして、両者は「外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、前記外装体の内側に配設され、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を変化する圧力変化手段と、前記圧力変化手段は、前記気体移送部において移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含む真空ポンプ。」である点で一致し、次の点で相違している。
【相違点1】前者では「制御手段は、圧力変化手段による圧力の変化を制御し、気体混入手段により混入される第2の気体の量を制御する」事項を有しているとともに、圧力変化手段が行っている事項について、気体移送部内の圧力を変化させることで、吸入口からの気体の吸引力を「調節」しているのに対して、後者では、前記制御手段について明かでないとももに、前記吸引力を「変化」させるものではあるが、「調節」することについては明かでない点。
上記【相違点1】について検討する。刊行物2記載の技術的事項【C】における「コントローラ20」、「真空排気装置10」、「窒素ガス」、「制御ガス供給路15」は、その機能からみて、本件発明1における「制御手段」、「真空ポンプ」、「第2の気体」、「気体混入手段」に相当しているから、刊行物2には、真空ポンプの吸引排出力を調節できるようにするため、上記【相違点1】における本件発明1が有する事項「制御手段は、圧力変化手段による圧力の変化を制御し、気体混入手段により混入される第2の気体の量を制御するとともに、圧力変化手段は、気体移送部内の圧力を変化させることで、吸入口からの気体の吸引力を調節する」ことが記載されていると認められる。
そして、刊行物2記載の技術的事項【C】(発明)は、刊行物1記載の発明【A】、及び本件発明1と、同じ「真空ポンプ」という技術分野に属するものであるから、刊行物1記載の発明【A】に刊行物2記載の技術的事項【C】(発明)を適用して本件発明1とすることは、当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、特許権者は、平成13年8月20日付け特許異議意見書第4頁第16〜19行で、「このように刊行物3(この異議決定の刊行物2)には、処理室2内の圧力を調整する課題については記載されているが、その課題をターボ分子ポンプ14やターボ真空ポンプ11自体で解決するための構成については記載されていず、あくまでガスの供給路15やバイパス回路14A等を追加した真空排気システム全体で解決しています。」と、第5頁第12〜17行で「この混入気体量を制御する必要性がない刊行物1(この異議決定の刊行物1)記載のターボ分子ポンプに、制御用ガスの流入を制御する刊行物3(この異議決定の刊行物2)記載の排気システムを適用することはできません。(2)また、刊行物1はターボ分子ポンプ(真空ポンプ)の構造の改良に関する技術であるが、刊行物3(この異議決定の刊行物2)は排気ラインの構造を改良した真空排気システムに関する技術である。」(なお、上記「(2)」は、意見書では丸内数字で記載されている)と主張している。
しかしながら、上述したように、刊行物1記載の発明【A】と刊行物2記載の技術的事項【C】(発明)とは、同一の技術分野に属するものであって、しかも、両者を組み合わせることを阻害する特段の要因もない以上、上記特許権者の主張は採用できない。

(3-2).本件発明2について
本件発明2と、上記刊行物1記載の発明【A】とを対比すると、刊行物1記載の発明【A】における「入口」、「外側ケーシング1」、「ステータ羽根9」、「ロータ羽根8」、「ターボ分子ポンプ段」、「中間取入れ口28」は、その機能からみて、本件発明2における「吸入口」、「外装体」、「ステータ翼」、「ロータ翼」、「ターボ分子ポンプ部」、「気体混入手段」に相当していると認められる。
そして、両者は「外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、気体の移送方向に多段に固定されたステータ翼と該ステータ翼間において回転するロータ翼とを備え、ロータ翼を回転することにより気体を移送するターボ分子ポンプ部を含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を変化する圧力変化手段と、前記圧力変化手段は、前記ターボ分子ポンプ部において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含む真空ポンプ。」である点で一致し、上記(3-1)の【相違点1】と同じ相違点で相違している。
したがって、本件発明2は、上記(3-1)で述べた理由と同様の理由により、刊行物1記載の発明【A】、及び刊行物2記載の技術的事項【C】(発明)から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-3).本件発明3について
本件発明3と、上記刊行物1記載の発明【A】とを対比すると、刊行物1記載の発明【A】における「入口」、「外側ケーシング1」、「ロータ6」、「ステータ14」、「ねじ山状の溝13」、「分子ポンプ段」、「中間取入れ口28」は、その機能からみて、本件発明3における「吸入口」、「外装体」、「ロータ」、「ステータ」、「ネジ溝」、「ネジ溝ポンプ部」、「気体混入手段」に相当していると認められる。
そして、両者は「外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、回転するロータ側と固定されたステータ側とを備え、ロータ側にネジ溝を備え、前記ロータ側を回転させることにより気体を移送するネジ溝ポンプ部を含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を変化する圧力変化手段と、前記圧力変化手段は、気体移送部において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含む真空ポンプ。」である点で一致し、上記(3-1)と同じ【相違点1】、及び下記【相違点2】で相違している。
【相違点2】気体混入手段に関し、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる位置が、前者では「ネジ溝ポンプ部」であるのに対し、後者では、「ターボ分子ポンプ部」である点。
上記【相違点1】の検討については、上記(3-1)で行ったとおりである。
上記【相違点2】について検討すると、移送される第1の気体に第2の気体を混入させる位置を、気体移送部のどこにするかは、当業者が適宜選択しうる程度のことであるから、混入位置を気体移送部の中のターボ分子ポンプ部に代えてネジ溝ポンプ部とするようなことは、当業者が容易になしうることであると認められる。
したがって、本件発明3は、刊行物1記載の発明【A】、及び刊行物2記載の技術的事項【C】(発明)から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-4).本件発明4について
本件発明4と、上記刊行物1記載の発明【A】とを対比すると、刊行物1記載の発明【A】における「入口」、「外側ケーシング1」、「ターボ分子ポンプ段」、「分子ポンプ段」、「中間取入れ口28」は、その機能からみて、本件発明4における「吸入口」、「外装体」、「ターボ分子ポンプ部」、「ネジ溝ポンプ部」、「気体混入手段」」に相当していると認められる。
そして、両者は「外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、ターボ分子ポンプ部と該ターボ分子ポンプ部に続くネジ溝ポンプ部とを含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を変化する圧力変化手段と、前記圧力変化手段は、前記気体移送部において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含む真空ポンプ。」である点で一致し、上記(3-1)と同じ【相違点1】、及び下記【相違点3】で相違している。
【相違点3】気体混入手段に関し、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる位置が、前者では「ターボ分子ポンプ部とネジ溝ポンプ部との間」であるのに対し、後者では、「気体移送部」である点。
上記【相違点1】の検討については、上記(3-1)で行ったとおりである。
上記【相違点3】について検討すると、第2の気体の混入位置を気体移送部のどこにするかは当業者が適宜選択しうる程度のことであるから、混入位置を気体の移送部の中の「ターボ分子ポンプ部とネジ溝ポンプ部との間」とするようなことは、当業者が容易になしうる程度のことであると認められる。
したがって、本件発明4は、刊行物1記載の発明【A】、及び刊行物2記載の技術的事項【C】(発明)から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-5).本件発明5について
本件発明5と、上記刊行物1記載の発明【B】とを対比すると、刊行物1記載の発明【B】における「入口」、「外側ケーシング1」、「ステータ羽根9」、「ロータ羽根8」、「ターボ分子ポンプ段」、「ロータ6」、「ステータ14」、「ねじ山状の溝13」、「分子ポンプ段」、「中間取入れ口28」、「排気鐘」は、その機能からみて、本件発明5における「吸入口」、「外装体」、「ステータ翼」、「ロータ翼」、「ターボ分子ポンプ部」、「ロータ」、「ステータ」、「ネジ溝」、「ネジ溝ポンプ部」、「気体混入手段」、「容器」に相当していると認められる。
そして、両者は「外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、気体の移送方向に多段に固定されたステータ翼と該ステータ翼間において回転するロータ翼とを備え、ロータ翼を回転することにより気体を移送するターボ分子ポンプ部と、該ターボ分子ポンプ部に続く回転するロータ側と固定されたステータ側とを備え、ロータ側にネジ溝を備え、前記ロータ側を回転させることにより気体を移送するネジ溝ポンプ部とを含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を変化する圧力変化手段と、前記圧力変化手段は、ターボ分子ポンプ部である前記気体移送部において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含む真空ポンプと、前記真空ポンプに内部の気体が吸引排出される容器とを備えた真空装置。」である点で一致し、上記(3-1)、(3-3)及び(3-4)の【相違点1】〜【相違点3】と同じ相違点で相違している。
したがって、本件発明5は、上記(3-1)、(3-3)及び(3-4)で述べた理由と同様の理由により、刊行物1記載の発明【B】、及び刊行物2記載の技術的事項【C】(発明)から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3-6).本件発明6について
本件発明6と、上記刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明【B】における「入口」、「外側ケーシング1」、「ステータ羽根9」、「ロータ羽根8」、「ターボ分子ポンプ段」、「ロータ6」、「ステータ14」、「ねじ山状の溝13」、「分子ポンプ段」、「中間取入れ口28」、「排気鐘」は、その機能からみて、本件発明6における「吸入口」、「外装体」、「ステータ翼」、「ロータ翼」、「ターボ分子ポンプ部」、「ロータ」、「ステータ」、「ネジ溝」、「ネジ溝ポンプ部」、「気体混入手段」、「容器」に相当していると認められる。
そして、両者は「外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、気体の移送方向に多段に固定されたステータ翼と該ステータ翼間において回転するロータ翼とを備え、ロータ翼を回転することにより気体を移送するターボ分子ポンプ部と、該ターボ分子ポンプ部に続く回転するロータ側と固定されたステータ側とを備え、ロータ側にネジ溝を備え、前記ロータ側を回転させることにより気体を移送するネジ溝ポンプ部とを含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を変化する圧力変化手段と、前記圧力変化手段は、ターボ分子ポンプ部である前記気体移送部において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含む真空ポンプと、前記真空ポンプに内部の気体が吸引排出される容器とを備えた真空装置。」である点で一致し、上記(3-1)、(3-3)及び(3-4)の【相違点1】〜【相違点3】と同じ相違点、及び下記【相違点4】で相違している。
【相違点4】容器を備える真空装置において、前者では「容器内の圧力を検出する圧力センサを備え、制御手段は、前記圧力センサからの出力に応じて制御量を決定する」ようにしているのに対し、後者では、圧力センサについて明らかでない点。
上記【相違点4】について検討すると、刊行物2記載の技術的事項【D】における「コントローラ20」、「真空排気装置10」、「窒素ガス」、「制御ガス供給路15」、「処理室2」、「真空計19」は、その機能からみて、本件発明6における「制御手段」、「真空ポンプ」、「第2の気体」、「気体混入手段」、「容器」、「圧力センサ」に相当しているから、刊行物2には、上記【相違点4】における本件発明6が有する事項「容器内の圧力を検出する圧力センサを備え、制御手段は、前記圧力センサからの出力に応じて制御量を決定する」ことが記載されていると認められる。そして、この刊行物2記載の技術的事項【D】(発明)を刊行物1記載の発明【B】に適用して、本件発明6のようにするようなことは、当業者が容易になしうる程度のことであると認められる。
したがって、本件発明6は、刊行物1記載の発明【B】、及び刊行物2記載の技術的事項【C】、【D】(発明)から、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし6は、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし6についての特許は、特許法29条第2項の規定に違反してなされたものである。
したがって、本件発明1ないし6についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
真空ポンプ及び真空装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、
前記外装体の内側に配設され、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する気体移送部と、
前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、
前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、
前記圧力変化手段は、前記気体移送部において移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、
前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御することを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】 外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、
気体の移送方向に多段に固定されたステータ翼と該ステータ翼間において回転するロータ翼とを備え、ロータ翼を回転することにより気体を移送するターボ分子ポンプ部を含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、
前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、
前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、
前記圧力変化手段は、前記ターボ分子ポンプ部において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、
前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御することを特徴とする真空ポンプ。
【請求項3】 外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、
回転するロータ側と固定されたステータ側とを備え、そのうちの少なくとも一方にネジ溝を備え、前記ロータ側を回転させることにより気体を移送するネジ溝ポンプ部を含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、
前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、
前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、
前記圧力変化手段は、前記ネジ溝ポンプ部において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、
前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御することを特徴とする真空ポンプ。
【請求項4】 外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、
ターボ分子ポンプ部と該ターボ分子ポンプ部に続くネジ溝ポンプ部とを含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、
前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、
前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、
前記圧力変化手段は、前記ターボ分子ポンプ部と前記ネジ溝ポンプ部との間において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、
前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御することを特徴とする真空ポンプ。
【請求項5】 請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の真空ポンプと、
前記真空ポンプに内部の気体が吸引排出される容器とを備えることを特徴とする真空装置。
【請求項6】 前記容器内の圧力を検出する圧力センサを備え、
前記制御手段は、前記圧力センサからの出力に応じて制御量を決定することを特徴とする請求項5に記載の真空装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空ポンプ及び真空装置に関し、詳細には、真空容器内の圧力を調節できる真空ポンプ及び真空装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体や液晶の製造において、ドライエッチング、CVD等を行う場合には、チャンバ内にプロセスガスを導入し、このプロセスガスを真空ポンプにより吸引排出する真空装置が用いられる。図7は、従来から使用されている真空ポンプの一例としてのターボ分子ポンプを表したものである。この図7に示すように、真空ポンプ(ターボ分子ポンプ)は、ステータ部とロータ部に、それぞれステータ翼とロータ翼を軸方向に多段配置し、モータによりロータ部を高速回転することで、図面上側の吸気口側から図面左下側の排気口側に排気(真空)処理を行うようになっている。
【0003】
図8はこのような真空ポンプをチャンバに取り付けた従来の真空装置の概要を表したものである。この図8に示されるように、従来の真空装置では、チャンバ(容器)90内に試料91等が配置されるステージ92が配設されると共に、ステージ92の下側にはステージ92を回転等するための駆動機構93がチャンバ90外に配設されている。そして、チャンバの下面(または側面)に配設された排出口94部分にチャンバ90の外側から真空ポンプ95を取り付けてチャンバ90内の気体を排気する構造になっている。この図8に示すように、従来の真空装置においては、チャンバ90の排気口と真空ポンプ95の吸入口とは、コンダクタンス可変バルブ96を介して連通されており、コンダクタンス可変バルブ96のコンダクタンスを変化させることにより、チャンバ90から吸引排出されるプロセスガスの量を調節し、チャンバ90内を所定の圧力に制御している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この様な従来の真空装置においては、コンダクタンス可変バルブ96がチャンバ90の排出口94に直接連設されているため、コンダクタンス可変バルブ96の作動等で発生する塵がチャンバ90に逆流してしまうおそれがある。このような発塵は、半導体や液晶の製造においては特に回避すべき重要な問題である。
【0005】
そこで、本発明は、発塵なく気体の吸引排出力を調節できる真空ポンプを提供することを第1の目的とする。
また、発塵なく真空容器内の圧力を調節できる真空装置を提供することを第2の目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、本発明は、外部から第1の気体を吸入する吸入口と、前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、前記外装体の内側に配設され、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、前記圧力変化手段は、前記気体移送部において移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御する真空ポンプを提供する。
上記第1の目的を達成するために、本発明は、外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、気体の移送方向に多段に固定されたステータ翼と該ステータ翼間において回転するロータ翼とを備え、ロータ翼を回転することにより気体を移送するターボ分子ポンプ部を含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、前記圧力変化手段は、前記ターボ分子ポンプ部において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御する真空ポンプを提供する。
また、上記第1の目的を達成するために、本発明は、外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、回転するロータ側と固定されたステータ側とを備え、そのうちの少なくとも一方にネジ溝を備え、前記ロータ側を回転させることにより気体を移送するネジ溝ポンプ部を含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、前記圧力変化手段は、前記ネジ溝ポンプ部において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御する真空ポンプを提供する。
さらに、上記第1の目的を達成するために、外部から第1の気体を吸入する吸入口と前記気体を排出させる排気口とを有する外装体と、ターボ分子ポンプ部と該ターボ分子ポンプ部に続くネジ溝ポンプ部とを含み、前記吸入口から吸入した前記第1の気体を移送する、前記外装体の内側に配設された気体移送部と、前記気体移送部内の圧力を変化させることで、前記吸入口からの気体の吸引力を調節する圧力変化手段と、前記圧力変化手段による圧力の変化を制御する制御手段とを備え、前記圧力変化手段は、前記ターボ分子ポンプ部と前記ネジ溝ポンプ部との間において、移送される第1の気体に第2の気体を前記気体移送部で混入させる気体混入手段を含み、前記制御手段は、前記気体混入手段により混入される前記第2の気体の量を制御する真空ポンプを提供する。
本発明に係る真空ポンプでは、圧力変化手段により、気体移送部内の圧力を変化させ、吸入口から吸引する気体の吸引力を変化させることができる。
従って、気体を吸引する容器との間にバルブを介在配置させずに気体の吸引力を調節でき、バルブからの発塵により容器内が汚染されるのを回避することができる。
【0007】
【0008】
前記第2の目的を達成するために、本発明は、上記真空ポンプと、この真空ポンプに内部の気体を吸引排出される容器とを備える真空装置を提供する。
この場合、容器内の圧力を検出する圧力センサを備え、制御手段は、圧力センサからの出力に応じて制御量を決定するものとすることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に好適な実施の形態について、図1から図6を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の真空ポンプの一実施形態の全体構成の断面を表したものである。この真空ポンプ1は、例えば半導体製造装置内等に設置され、チャンバ等からプロセスガスの排出を行うものである。またこの真空ポンプ1は、チャンバ等からのプロセスガスをステータ翼72とロータ翼62とにより下流側へ移送するターボ分子ポンプ部Tと、ターボ分子ポンプ部Tからプロセスガスが送り込まれ、このプロセスガスをネジ溝ポンプにより更に移送して排出するネジ溝ポンプ部Sとを備えている。
【0010】
図1に示すように、真空ポンプ1は、略円筒形状の外装体10と、この外装体10の中心部に配置される略円柱形状のロータ軸18と、ロータ軸18に固定配置されロータ軸18とともに回転するロータ60と、ステータ70とを備えている。外装体10は、その上端部に半径方向外方へ延設されたフランジ11を有しており、このフランジ11をボルト等によって半導体製造装置等に留め付けてフランジ11の内側に形成される吸入口16とチャンバ等の容器の排出口とを連接し、容器の内部と外装体10の内部とを連通させるようになっている。
【0011】
図2は、ロータ60をロータ翼62の上下面に沿って切断した場合の断面斜視図である。ロータ60は、ロータ軸18の外周配置された断面略逆U字状のロータ本体61を備えている。このロータ本体61は、ロータ軸18の上部にボルト19で取り付けられている。ロータ本体61は、ターボ分子ポンプ部Tにおいては、外周にロータ円環部64が多段に形成されており、図2に示すように、各ロータ円環部64にロータ翼62が環装されている。各段のロータ翼62は、外側が開放された複数のロータブレード(羽根)63を有している。
【0012】
ステータ70はターボ分子ポンプ部Tにおいては、スペーサ71と、このスペーサ71、71間に外周側が支持されることでロータ翼62の各段の間に配置されるステータ翼72とを備えており、ネジ溝ポンプ部Sにおいては、スペーサ71に連設するネジ溝部スペーサ80を備えている。スペーサ71は段部を有する円筒状であり、外装体10の内側に積み重ねられている。各スペーサ71の内側に位置する段部の軸方向の長さはロータ翼62における各段の間隔に応じた長さになっている。
【0013】
図3は、ステータ翼の一部を表した斜視図である。ステータ翼72は、外周側の一部がスペーサ71によって周方向に挟持される外側円環部73と、内側円環部74と、外側円環部73と内側円環部74とにより両端が放射状に所定角度で支持された複数のステータブレード75とから構成されている。内側円環部74の内径は、ロータ本体61の外径よりも大きく形成され、内側円環部74の内周面77とロータ本体61の外周面65とが接触しないようになっている。このステータ翼72は、各段のロータ翼62間に配置するために、円周2分割されている。ステータ翼72は、この2分割された例えばステンレス製鋼又はアルミニウム製の薄肉の板から、エッチング法等により半円環状の外形部分とステータブレード75の部分を切り出し、ステータブレード75の部分をプレス加工により所定角度に曲げることで図3に示す形状に形成される。各段のステータ翼72は、それぞれスペーサ71とスペーサ71との段部により、外側円環部73が周方向に挟持されることで、ロータ翼62間に保持される。
【0014】
ネジ溝部スペーサ80は、図1に示すように、外装体10の内側に配設され、かつ、スペーサ71に連設され、スペーサ71とステータ翼72との下方に配設されている。このネジ溝部スペーサ80は、内径壁がロータ本体61の外周面と近接する位置まで張り出した厚みを有しており、内径壁に螺旋構造のネジ溝81が複数条形成されている。このネジ溝81は、上記ステータ翼72とロータ翼62との間と連通されており、移送排出されてきた気体がネジ溝81に導入されるようになっている。なお、この実施形態では、ネジ溝81をステータ70側に形成したが、ネジ溝81をロータ本体61の外径壁に形成するようにしてもよい。またネジ溝81をネジ溝部スペーサ80に形成すると共に、ロータ本体61の外径壁にも形成するようにしてもよい。
【0015】
真空ポンプ1は、更に、ロータ軸18を磁力により支持する磁気軸受20と、ロータ軸18にトルクを発生させるモータ30と、回路基板を収納する回路基板収納部40を備えている。磁気軸受20は、5軸制御の磁気軸受であり、ロータ軸18に対して半径方向の磁力を発生させる半径方向電磁石21、24と、ロータ軸18の半径方向の位置を検出する半径方向センサ22、26と、ロータ軸18に対して軸方向の磁力を発生させる軸方向電磁石32、34と、軸方向電磁石32、34による軸方向の力が作用する金属ディスク31、回路基板収納部40内からロータ軸18の軸方向の位置を検出する軸方向センサ36とを備えている。
【0016】
半径方向電磁石21は、互いに直交するように配置された2対の電磁石で構成されている。各対の電磁石は、ロータ軸18のモータ30よりも上部の位置に、ロータ軸18を挟んで対向配置されている。この半径方向電磁石21の上方には、ロータ軸18を挟んで対向する半径方向センサ22が2対設けられている。2対の半径方向センサ22は、2対の半径方向電磁石21に対応して、互いに直交するように配置されている。さらに、ロータ軸18のモータ30よりも下部の位置には、同様に2対の半径方向電磁石24が互いに直交するように配置されている。この半径方向電磁石24とモータ30との間にも、同様に半径方向電磁石24に隣接して半径方向センサ26が2対設けられている。
【0017】
これら半径方向電磁石21、24に励磁電流が供給されることによって、ロータ軸18が磁気浮上される。この励磁電流は、磁気浮上時に、半径方向センサ22、26からの位置検知信号に応じて制御され、これによってロータ軸18が半径方向の所定位置に保持されるようになっている。
【0018】
ロータ軸18の下部には、磁性体で形成された円盤状の金属ディスク31が固定されており、この金属ディスク31を挟み、且つ対向した一対ずつの軸方向電磁石32、34が配置されている。さらにロータ軸18の下端部に対向して軸方向センサ36が配置されている。この軸方向電磁石32、34の励磁電流は、軸方向センサ36からの位置検知信号に応じて制御され、これによりロータ軸18が軸方向の所定位置に保持されるようになっている
【0019】
磁気軸受20は、これら半径方向センサ22、26、および軸方向センサ36の検出信号を基に、半径方向電磁石21、24および軸方向電磁石32、34などの励磁電流をそれぞれフィードバック制御することでロータ軸18を磁気浮上させる磁気軸受制御部を制御系45内に備えている。この磁気軸受を使用することによって、機械的接触部分が存在しないため粉塵の発生がなく、また、シール用のオイル等が不要であるためガス発生もなく、クリーンな環境での駆動を実現でき、半導体製造等の高いクリーン度が要求される場合に適している。
【0020】
また、本実施形態の真空ポンプ1では、ロータ軸18の上部及び下部側には保護用ベアリング38、39が配置されている。通常、ロータ軸18及びこれに取り付けられている各部からなるロータ部は、モータ30により回転している間、磁気軸受20により非接触状態で軸支される。保護用ベアリング38、39は、タッチダウンが発生した場合に磁気軸受20に代わってロータ部を軸支することで装置全体を保護するためのベアリングである。従って保護ベアリング38、39は、内輪がロータ軸18には非接触状態になるように配置されている。
【0021】
モータ30は、外装体10の内側の半径方向センサ22と半径方向センサ26との間で、ロータ軸18の軸方向ほぼ中心位置に配置されている。このモータ30に通電することによって、ロータ軸18および、これに固定されたロータ60、ロータ翼62が回転するようになっている。この回転の回転数は回路基板収納部40内の回転数センサ41により検出され、この回転数センサ41からの信号に基づいて制御系45によって制御されるようになっている。
【0022】
真空ポンプ1の外装体10の下部には、ネジ溝ポンプ部Sにより移送されてきた気体を外部へ排出する排気口52が配置されている。また、真空ポンプ1は、コネクタおよびケーブルを介して制御系45に接続されている。
【0023】
更に、本実施形態の真空ポンプ1は、外装体10を貫通し、外部とロータ翼62及びステータ翼72間とを連通する連通管85を備えており、この連通管85からターボ分子ポンプ部Tへ不活性ガスが供給され、吸引、移送している気体に混合させるようになっている。連通管85は、コンダクタンス可変バルブ(以下バルブ)86を備えており、このバルブ86によって、ターボ分子ポンプ部Tへ供給され混合される不活性ガスの量が調節されるようになっている。バルブ86は、バルブモータによりシャッターを開閉駆動させるようになっており、このバルブモータが、制御系45からの信号により制御されるようになっている。
【0024】
次に、上述の実施形態の真空ポンプを用いた本発明の真空装置の実施形態について説明する。尚、本実施形態において、図8に示す従来の真空装置と同一の部材については同一の符号を付し、説明は省略する。図4は、本発明の真空装置の一実施形態の構成を表す概略斜視図である。この図4に示すように、本実施形態の真空装置においてはチャンバ90内に、圧力センサ97が配設されており、チャンバ内における圧力が検出されるようになっている。そして、この圧力センサ97はコネクタ及びケーブルを介して制御系45に接続されており、圧力センサ97からの圧力に対応する信号が、制御系45に出力されるようになっている。また、この真空装置においては、真空ポンプ1はチャンバ90の排出口94にバルブを介さずに直接取り付けられている。
【0025】
以上のように構成された真空ポンプ1及び真空装置では、モータ30によりロータ60を定格値(2万〜5万rpm)で高速回転することで、ロータ翼62も高速回転する。これにより、チャンバ90内のプロセスガス等が排出口94及び真空ポンプ1の吸入口16を介して、ロータ翼62及びネジ溝81により移送され排気口52から排出される。
【0026】
図5は、本実施形態の真空装置におけるチャンバ90内の圧力の制御系を表すブロック図である。この図5に示すように、チャンバ90からの圧力に対応する信号は、制御系45に出力されるようになっている。そして、制御系45において目標値と比較され、その差がPID補償器46に出力され、PID補償器46において目標値との差に対応した値の制御信号が出力され、アンプ47において増幅された後、バルブ駆動モータ87に出力される。
【0027】
そして、バルブ駆動モータ87が入力信号に基づいて駆動して、バルブ86を開閉させる。圧力センサ97近傍の圧力が低い場合には、制御系45からの制御信号によりバルブ86が広げられて連通管85からの不活性ガス流入量が増加され、ターボ分子ポンプ部Tの圧力が上昇する。そのため、吸入口16の圧力も上昇し、チャンバ90内の気体を吸引する吸引力が減少し、チャンバ90内の圧力は上昇する。圧力センサ97近傍の圧力が高い場合には、バルブ86が狭められて連通管85からの不活性ガス流入量が低減される。そして、ポンプ作用による気体の移行排出量は変化しないので、ターボ分子ポンプ部Tの圧力が減少する。そのため、吸入口16の圧力も下降し、チャンバ90内の気体を吸引する吸引力が増加し、チャンバ90内の圧力は減少する。
【0028】
図6は、真空ポンプ1の気体移送部(ターボ分子ポンプ部T及びネジ溝ポンプ部Sの気体通路)内の気圧と、吸入口16の気圧との関係を示すグラフである。このように、真空ポンプ1の気体移送部内の気圧が高くなると吸入口16の圧力も高くなり、外部からの気体の吸引力が弱められる。また、気体移送部内の気圧が所定(約1.5〜2.0Torr.)以上となると、特に、気体移送部内の気圧の上昇によって吸入口16も上昇するため、この所定以上の気圧において特に効率よく真空ポンプ1の吸引力を調節することが可能となる。
【0029】
このように、本実施形態では、ターボ分子ポンプ部Tへ不活性ガスを流入し、チャンバ90からの気体に混入させる混入量を制御することにより、チャンバ90内の圧力を制御する。従って、本実施形態によると、チャンバ90の排出口94と真空ポンプ1の間に、バルブ等の、真空ポンプ1の気体吸入排出量を調節するための部材を設ける必要がなく、これらの部材による発塵がチャンバ90に逆流するおそれがない。
【0030】
また、本実施形態では、チャンバ90内の圧力を検出する圧力センサ97を備え、圧力センサ97からの出力に基づいてバルブ86の開閉量を決定し、不活性ガスの混入量を制御しているので、効率的且つ良好に、チャンバ90内の圧力を所望の値に調節することができる。
【0031】
尚、本発明の真空ポンプ及び本発明の真空装置は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜変更可能である。例えば、上述の実施形態においは、気体移送部を、ターボ分子ポンプ部Tとネジ溝ポンプ部Sとにより構成しているが、これに限られるものではなく、例えば、ターボ分子ポンプ部Tのみで構成したり、ターボ分子ポンプ部Tと遠心流型ポンプ等のネジ溝ポンプ以外のポンプのポンプ機構部とにより構成したりすることもできる。上述の実施形態においては、気体混入手段としての連通管85により、第2の気体としての不活性ガスがターボ分子ポンプ部Tへ導入されているが、これに限られるものではなく、第2の気体をターボ分子ポンプ部Tとネジ溝ポンプ部Sとの連通部や、ネジ溝ポンプ部Sや、排気口52の前の空間部分等、他の部分へ導入してもよい。
【0032】
また、真空ポンプ1の排気口52から排出される気体を吸引する補助ポンプを備えた場合には、連通管85を、排気口52から排出された気体に不活性ガスを混入させ、補助ポンプに吸入させるように配置させてもよい。更に、真空ポンプ1の排気口52から排出される気体を吸引する補助ポンプを備えた場合には、連通管を備えず、気圧上昇手段として、排気口52と補助ポンプとの間にバルブを配設し、このバルブの開閉により排気口52から補助ポンプに吸引される気体を制御して、真空ポンプ1内の気圧を上昇させるようにしてもよい。この場合、バルブの取り付け位置が、気体の流れにおける真空ポンプ1の下流であることにより、バルブからの発塵が、チャンバ90内に逆流するのが回避される。
【0033】
上述の実施形態においてはロータ軸18は磁気軸受けにより軸受けされているが、これに限られるものではなく、動圧軸受け、静圧軸受け、その他の軸受けによってもよい。
【0034】
上述の実施形態においては真空ポンプ1は、インナーロータ式のモータを用いているが、アウターロータ式のモータを用いたものとすることもできる。上述の実施形態においては真空ポンプ1の吸入口16から吸入し移送する第1の気体に混入される第2の気体として不活性ガスを用いているが、第2の気体はこれに限られるものではない。但し、チャンバ90内に逆流し混入してもチャンバ90内の反応等に悪影響を及ぼさないものが好ましく、パージガス、及び、窒素や希ガス等の不活性ガスが好ましく用いられる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る真空ポンプ及び真空装置によれば、発塵なく気体の吸引排出力を調節することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の真空ポンプの一実施形態の全体構成の断面を表したものである。
【図2】
図1の真空ポンプのロータをロータ翼の上下面に沿って切断した場合の断面斜視図である。
【図3】
図1の真空ポンプのステータ翼の一部を表した斜視図である。
【図4】
本発明の真空装置の一実施形態の構成を表す概略斜視図である。
【図5】
図4の真空装置におけるチャンバ内の圧力の制御系を表すブロック図である。
【図6】
真空ポンプの気体移送部内の気圧と、吸入口の気圧との関係を示すグラフである。
【図7】
従来の真空ポンプの一例としてのターボ分子ポンプの構成をあらわした断面図である。
【図8】
従来の真空装置の概要を表した斜視図である。
【符号の説明】
1 真空ポンプ
10 外装体
11 フランジ
16 吸入口
18 ロータ軸
20 磁気軸受
30 モータ
31 金属ディスク
44 コネクタ
45 制御系
52 排気口
60 ロータ
61 ロータ本体
62 ロータ翼
70 ステータ
71 スペーサ
72 ステータ翼
80 ネジ溝部スペーサ
81 ネジ溝
85 連通管
86 コンダクタンス可変バルブ
87 バルブ駆動モータ
90 チャンバ
91 試料
92 ステージ
93 駆動機構
94 排出口
96 コンダクタンス可変バルブ
97 圧力センサ
T ターボ分子ポンプ部
S ネジ溝ポンプ部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2001-12-20 
出願番号 特願平10-222342
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (F04D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 黒瀬 雅一唐 強  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 氏原 康宏
清水 信行
登録日 2000-03-03 
登録番号 特許第3038432号(P3038432)
権利者 セイコーインスツルメンツ株式会社
発明の名称 真空ポンプ及び真空装置  
代理人 仲野 均  
代理人 川井 隆  
代理人 仲野 均  
代理人 川井 隆  

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