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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65G
管理番号 1119466
異議申立番号 異議2003-70233  
総通号数 68 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-04-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-01-24 
確定日 2005-06-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第3307555号「表示装置用基板の積載用カセットおよびこれを用いた静電破壊防止方法」の請求項1ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てについてされた平成16年3月8日付け異議の決定に対し、知的財産高等裁判所において決定取消の判決(17行ケ10079号)があったので、さらに審理の上、次のとおり決定する。 
結論 特許第3307555号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
(1)特許第3307555号の請求項1ないし12に係る発明についての出願は、平成9年2月25日(パリ条約による優先権主張1996年9月4日、大韓民国)に特許出願され、平成14年5月17日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人上杉則亮より特許異議の申立てがなされ、平成15年4月2日に取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成15年7月11日に意見書が提出され、平成15年7月31日に再度取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年2月12日に訂正請求がなされたものである。
(2)平成16年3月8日に「訂正を認める。特許第3307555号の請求項1ないし12に係る特許を取り消す。」旨の異議の決定がなされたところ、特許権者は、平成16年7月17日に東京高等裁判所(知的財産高等裁判所)に特許取消決定取消訴訟[16行ケ324号(17行ケ10079号)]を提起した。
(3)特許権者より平成16年10月15日に明細書の訂正をすることについての審判(訂正2004-39232号)の請求がなされ、平成17年1月25日に「特許第3307555号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。」旨の審決がなされ、これが平成17年2月4日に確定した。
(4)知的財産高等裁判所は、平成17年4月26日に「特許庁が異議2003-70233号事件について平成16年3月8日にした決定を取り消す。」旨判決した。

2.特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
上記1.(3)で示したように平成17年2月4日に確定した訂正審決は、「特許第3307555号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。」ものであって、当該訂正明細書の請求項1ないし12に係る発明(以下、「本件発明1ないし12」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、
前記スロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、
前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、
前記スロット付サイドプレートの下端を支持する底板と、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持された一つ以上のストッパーと、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記上板と底板とに支持されたサイドプレートとを含み、
前記ストッパーまたは前記基板の挿入側と反対側に設けられた前記サイドプレートのみに、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持する複数のサポートバーが形成されており、
前記底板、ストッパー及びサイドプレートは、導電性材質からなり、
前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する、表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項2】
前記サポートバーが形成された前記ストッパーは、前記底板の中央部に位置している請求項1に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項3】
前記スロットを通じて積載された基板が前記スロットを通じて再び抜け出ることを防止するよう前記スロットの基板積載位置より高い位置に位置する複数の突起部を有している抜け出し防止手段と、
前記抜け出し防止手段を前記カセットに脱着可能であるように取り付ける取付手段とをさらに含む請求項1または2に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項4】
前記取付手段は少なくとも一つ以上のボルトである請求項3に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項5】
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、
前記スロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、
前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、
前記スロット付サイドプレートの下端を支持する、少なくとも一部は金属からなっている第1金属部を含む底板と、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持され、かつ前記底板の第1金属部と連結される第2金属部を有している一つ以上のストッパーとを含み、
前記ストッパーには、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持するサポートバーが形成されており、
前記サポートバーの主体部分は金属製であって前記ストッパーの第2金属部と連結されており、
前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する、表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項6】
前記サイドプレートは金属で形成されている第3金属部を含み、前記第3金属部は前記底板の第1金属部と連結されている請求項5に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項7】
前記サポートバーは積載された基板との接触点を有し、前記接触点部分は前記サポートバーの他の部分より高い表面抵抗率を有する材質からなる請求項5または6に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項8】
前記接触点付近の材質は、表面抵抗率が1010〜1012オーム/m2の帯電防止用樹脂である請求項7に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項9】
前記底板の第1金属部、ストッパーの第2金属部及び前記サポートバーの第3金属部は、アルミニウムからなる請求項5または6に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項10】
少なくとも一部は金属性材質からなる基板積載用カセットに基板を積載する段階と、
前記基板を前記金属性材質に電気的に接続させて静電気を分散させる段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、
前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持するサポートバーとを含み、
前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する、表示装置用基板の静電破壊防止方法。
【請求項11】
金属性材質からなる金属部を含む基板積載用カセットに基板を積載する段階と、
前記カセットの金属部を接地させる段階と、
前記基板を前記金属部に電気的に接続させて静電気電流を放出する段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、
前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持するサポートバーとを含み、
前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質から形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する、表示装置用基板の静電気放出方法。
【請求項12】
前記接地段階は、
前記カセットを接地した運搬機構に搭載する段階と、
前記運搬機構と前記カセットの金属部を接触させる段階とを含む請求項11に記載の表示装置用基板の静電気放出方法。」

(2)引用刊行物記載の発明等
当審が平成15年4月2日付けで通知した取消しの理由で引用した刊行物1(特開平8-46022号公報;特許異議申立人上杉則亮の提示した甲第1号証)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0010】本発明は、このような背景下において、基板支承用側板の巾を狭くしても必要な強度を有し、しかも基板取り扱い時の帯電を有効に防止すると共に、たとえ帯電しても減衰が適度の範囲でゆっくりと行われるため回路障害を起こすことがなく、さらには基板との摩擦によっても摩耗粉などの塵埃を生じがたいカセットを提供すること、およびそのカセットの主要部を構成する基板支承用側板を提供することを目的とするものである。」(第2頁第2欄第50行〜第3頁第3欄第7行)
イ.「【0014】本発明のカセットは、フレーム(1)および基板支承用側板(2),(2)で箱形に形成され、箱形の1対の相対向する側面に基板支承用側板(2),(2)が配設された基本構成を有する。
【0015】フレーム(1)は、底フレーム(11)、天井フレーム(12)、および基板(O)を受けとめるためのストッパーとしての受けフレーム(13)で構成される。受けフレーム(13)に代えて、カセット最奥側のフレームまたはカセット最奥部の基板支承用側板(2)に適宜のストッパー手段を設けることもできる。フレーム(1)の材質は、樹脂であっても金属であってもよい。」(第3頁第3欄第31〜41行)
ウ.「【0022】加えて本発明においては、上記基板支承用側板(2)として、材質的には、金属体(M)を骨格材としかつ背肉部(21)の少なくとも前面側および棚片(22)が樹脂体(R)で形成され、かつその樹脂体(R)のうち基板(O)との接当部の少なくとも一部は発塵防止性樹脂(Rb)で形成されると共に、樹脂体(R)の発塵防止性樹脂(Rb)以外の部分は導電性物質配合樹脂(Ra)で形成されているものを用いる。
【0023】ここで金属体(M)としては、アルミニウム、ステンレススチールなどが用いられる。」(第3頁第4欄第18〜27行)
エ.「【0035】そのため、基板(O)は実質的に棚片(22)の遊端の山形の頂点の一点で支承されることになり、」(第4頁第5欄第46,47行)
オ.「【0038】また、金属体(M)および導電性物質配合樹脂(Ra)の存在により、基板(O)の取り扱い時の帯電が有効に防止されると共に、たとえ帯電しても減衰時間が0.5秒とか1秒というように一定時間保たれるために減衰が適度の範囲でゆっくりと行われ、回路障害を起こすおそれがない。ちなみに基板支承用側板(2)をオール金属製としたときは、帯電物と接触したときに一気に電流が流れる、」(第4頁第6欄第10〜17行)
カ.「【0041】実施例1
図1は本発明の基板支承用側板(2)の一例を示した斜視図であり、一部を省略表示してある。図2は図1の基板支承用側板(2)の側面図である。図3は本発明のカセットの一例を示した側面図である。
【0042】図3において、(1)はフレームであり、底フレーム(11)、天井フレーム(12)および受けフレーム(13)からなる。底フレーム(11)天井フレーム(12)は、それぞれ後述の発塵防止性樹脂(Rb)、導電性物質配合樹脂(Ra)と同じもので成形されている。受けフレーム(13)は、軸方向に穿孔したポリテトラフルオロエチレン押出成形棒にSUS304製の金属棒をきつく挿入したものからなる。
【0043】(2)は基板支承用側板であり、底フレーム(11)-天井フレーム(12)間に1面につき3枚宛ビスどめしてある。一点鎖線で示した(O)は基板の一例としてのガラス基板であり(図3には1枚のみを表示してある)、相対向する基板支承用側板(2),(2)の対応する棚片(22),(22)間の空隙に収容してある。・・・
【0049】このカセットは比較的軽い上、このカセットにたとえばTFT液晶用ガラス基板を収容したときであっても、帯電防止が確実に図られるためトランジスタの破壊が確実に防止できる。・・・
【0050】実施例2
図4は本発明の基板支承用側板(2)の他の一例を示した斜視図である。
【0051】この実施例2においては、実施例1と同様に背肉部(21)の中央に発塵防止性樹脂(Rb)で形成された突条状の張出部(3x)を縦方向に設けると共に、舌状の棚片(22)の山形構造の棚面の尾根の部分にも発塵防止性樹脂(Rb)で形成された突条状の張出部(3y)を設けてある。
【0052】実施例3
図5は本発明の基板支承用側板(2)のさらに他の一例を示した部分斜視図である。図6は図5の基板支承用側板(2)の巾方向切断断面図である。
【0053】この実施例3においては、背肉部(21)の中央に発塵防止性樹脂(Rb)で形成された突条状の張出部(3x)を縦方向に設けてある。
【0054】実施例4
図7は本発明の基板支承用側板(2)の別の一例を示した部分斜視図である。図8は図7の基板支承用側板(2)の巾方向切断断面図である。
【0055】この実施例4においては、背肉部(21)の中央側の領域に両端側の領域よりも前方に張り出した巾広の張出部(3z)を設けると共に、その張出部(3z)を発塵防止性樹脂(Rb)で形成してある。また、棚片(22)も発塵防止性樹脂(Rb)で形成してある。」(第4頁第6欄第25行〜第5頁第8欄第6行)
上記記載事項ア.〜カ.によると、刊行物1には、
「【A】基板(O)を積載するために前記基板(O)の端部を支持する棚片(22),(22)間の空隙と、
前記棚片(22),(22)間の空隙が互いに向い合うように形成されている基板支承用側板(2)対と、
前記基板支承用側板(2)の上端を支持する天井フレーム(12)と、
前記基板支承用側板(2)の下端を支持する底フレーム(11)と、
前記基板(O)の挿入側と反対側に設けられ、前記棚片(22),(22)間の空隙から積載される前記基板(O)が抜け出ないようにする、前記天井フレーム(12)と底フレーム(11)とに支持された一つ以上の受けフレーム(13)とを含み、
前記底フレーム(11)、受けフレーム(13)及び基板支承用側板(2)は、導電性材質からなり、
前記基板支承用側板(2)は、前記棚片(22),(22)間の空隙によって支持される基板(O)の端部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板(O)を支持し、前記接触点部分は、前記基板支承用側板(2)の骨格材としての金属体(M)よりも高い表面抵抗率を有する導電性物質配合樹脂(Ra),発塵防止性樹脂(Rb)で形成され、かつ前記基板(O)の端部から静電気を除去する、TFT液晶用ガラス基板の積載用カセット。
【B】基板(O)を積載するために前記基板(O)の端部を支持する棚片(22),(22)間の空隙と、
前記棚片(22),(22)間の空隙が互いに向い合うように形成されている基板支承用側板(2)対と、
前記基板支承用側板(2)の上端を支持する天井フレーム(12)と、
前記基板支承用側板(2)の下端を支持する、少なくとも一部は金属からなっている第1金属部を含む底フレーム(11)と、
前記基板(O)の挿入側と反対側に設けられ、前記棚片(22),(22)間の空隙から積載される前記基板(O)が抜け出ないようにする、前記天井フレーム(12)と底フレーム(11)とに支持され、かつ前記底フレーム(11)の第1金属部と連結される第2金属部を有している一つ以上の受けフレーム(13)とを含み、
前記基板支承用側板(2)は骨格材としての金属体(M)を含み、前記金属体(M)は前記底フレーム(11)の第1金属部と連結されており、
前記基板支承用側板(2)は、前記棚片(22),(22)間の空隙によって支持される基板(O)の端部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板(O)を支持し、前記接触点部分は、前記基板支承用側板(2)の骨格材としての金属体(M)よりも高い表面抵抗率を有する導電性物質配合樹脂(Ra),発塵防止性樹脂(Rb)で形成され、かつ前記基板(O)の端部から静電気を除去する、TFT液晶用ガラス基板の積載用カセット。
【C】少なくとも一部は金属性材質からなる基板積載用カセットに基板(O)を積載する段階と、
前記基板(O)を前記金属性材質に電気的に接続させて静電気を分散させる段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、
基板(O)を積載するために前記基板(O)の端部を支持する棚片(22),(22)間の空隙と、
前記棚片(22),(22)間の空隙が互いに向い合うように形成されている基板支承用側板(2)対とを含み、
前記基板支承用側板(2)は、前記棚片(22),(22)間の空隙によって支持される基板(O)の端部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板(O)を支持し、前記接触点部分は、前記基板支承用側板(2)の骨格材としての金属体(M)より高い表面抵抗率を有する導電性物質配合樹脂(Ra),発塵防止性樹脂で形成され、かつ前記基板(O)の端部から静電気を除去する、TFT液晶用ガラス基板の静電破壊防止方法。
【D】金属性材質からなる金属部を含む基板積載用カセットに基板(O)を積載する段階と、
前記基板(O)を前記金属部に電気的に接続させて静電気電流を放出する段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、
基板(O)を積載するために前記基板(O)の端部を支持する棚片(22),(22)間の空隙と、
前記棚片(22),(22)間の空隙が互いに向い合うように形成されている基板支承用側板(2)対とを含み、
前記基板支承用側板(2)は、前記棚片(22),(22)間の空隙によって支持される基板(O)の端部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板(O)を支持し、前記接触点部分は、前記基板支承用側板(2)の骨格材としての金属体(M)より高い表面抵抗率を有する導電性物質配合樹脂(Ra),発塵防止性樹脂で形成され、かつ前記基板(O)の端部から静電気を除去する、TFT液晶用ガラス基板の静電気放出方法。」
の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

同じく引用した刊行物2(特開平2-18929号公報;特許異議申立人上杉則亮の提示した甲第2号証)には、図面とともに次の事項が記載されている。
サ.「産業上の利用分野
半導体製造装置、特に縦型反応装置に用いる基板保持具に関する。
従来の技術
ウエハの大口径化に伴い、膜均一性やダスト低減等から縦型構造を有する反応装置が提案されている。」(第1頁左下欄第9〜15行)
シ.「基板保持具1は二枚の円盤状板1-aと複数の凹凸部を有する柱状基板保持部1-bから成る。前記凸部の先端は球状を有し、基板2との接触を点接触にし、接触面積を小さくしている(第1図(A),(B)参照)。また基板保持部の柱から基板接触部である球状部迄の長さ、すなわち凸部の長さを変化させたり(第1図(A)参照)、凸部先端の球状部の大きさを変化させることにより(第1図(B)参照)基板保持具1における2基板の位置関係が容易で明確に判るようにしている第1図(A)の方法によると基板保持用凸部の長さを長くすることで大口径基板の周辺部のみならず中心部寄りの位置でささえることができ、さらに従来ではできなかった基板挿入側の位置での保持ができる上、その保持が点接触であることから基板に対する熱伝導性等の問題もなく、安定性のよい基板保持を行い得る。その様子を第2図に示す。」(第2頁左上欄第15行〜同頁右上欄第11行)

同じく引用した刊行物3(特開平5-229677号公報;特許異議申立人上杉則亮の提示した甲第3号証)には、図面とともに次の事項が記載されている。
タ.「【産業上の利用分野】本発明はシート状物品の保管装置、特に、オフセット印刷用の刷版や、活版印刷用の樹脂刷版などのシート状物品を、効率よく保管することのできる保管装置に関する。」(第2頁第1欄第38〜41行)
チ.「本願第1の発明は、シート状物品の保管装置において、シート状物品をほぼ水平に載置するための支持面と、載置されたシート状物品の支持を妨げることのないように形成された切り欠き部と、を有するトレイ層を、互いに所定の間隔をおいて上下に複数枚配置することにより構成される物品収納ユニットと、切り欠き部を通ってトレイ層の支持面を上下に通過しうるアームと、このアームを垂直方向および水平方向に駆動する駆動機構と、を有する物品移載部と、複数のトレイ層のうち、シート状物品を搬入出する対象となる対象トレイ層の上部および下部に、所定の空間が確保できるように、必要なトレイ層を上下に移動させるトレイ昇降部と、を設けたものである。」(第2頁第2欄第26〜38行)

同じく引用した刊行物4(特開平6-191578号公報;特許異議申立人上杉則亮の提示した甲第4号証)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ナ.「【0015】図1(a)において、カセットAは、内面に多数のスリット1を水平状態に平行に設けたスリット付カセット側板2が、基板の幅に対応する間隔を隔てて左右に対向して平行状態に設置されており、その上面と底面に、それぞれ上板3と底板4が固定して取付けられており、上記多数のスリット1の後方位置には、前方(図で左方)より押入れられる基板が後方より抜け出るのを防ぐために、垂直方向の板状のスリット5が各スリット1を跨ぐようにして両側板2,2の対称位置に取付けられていることは、従来例(図3)と変りはないが、本実施例では、スリット1の前方部の基板の出入口側にも、基板飛出し防止用のストッパ6が設けられている。
【0016】上記のストッパ6は、同図(b)に示すように、断面円形又は楕円形の椀状の突起体6aによって構成されている。また、該ストッパ6を構成する各突起体6aを、同図(a)に示す垂直方向部材6cによって上下方向に移動可能に連係し、上下方向に位置調整できるようにすることも可能である。これによってストッパ6の最適位置を得ることができる。」(第3頁第3欄第15〜33行)

(3)対比・判断
<本件発明1について>
本件発明1と刊行物1記載の発明(発明【A】参照。)を対比する。
刊行物1記載の発明の「基板(O)」は、本件発明1の「基板」に相当し、以下同様に、「棚片(22),(22)間の空隙」は「スロット」に、「基板支承用側板(2)」は「スロット付サイドプレート」に、「天井フレーム(12)」は「上板」に、「底フレーム(11)」は「底板」に、「受けフレーム(13)」は「ストッパー」に、「導電性物質配合樹脂(Ra),発塵防止性樹脂(Rb)」は「金属よりも高い表面抵抗率を有する材質」に、「TFT液晶用ガラス基板」は「表示装置用基板」に、それぞれ、相当する。
してみると、両者は、
「基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、
前記スロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、
前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、
前記スロット付サイドプレートの下端を支持する底板と、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持された一つ以上のストッパーとを含み、
前記底板及びストッパーは、導電性材質からなる、表示装置用基板の積載用カセット。」
の点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点1〕本件発明1は、前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記上板と底板とに支持されたサイドプレートを含み、前記サイドプレートは、導電性材質からなるのに対して、刊行物1記載の発明は、当該構成を備えていない点。
〔相違点2〕本件発明1は、前記ストッパーまたは前記基板の挿入側と反対側に設けられた前記サイドプレートのみに、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持する複数のサポートバーが形成されており、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去するのに対して、刊行物1記載の発明は、前記スロット付サイドプレートは、前記スロットによって支持される基板の端部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記スロット付サイドプレートの骨格材としての金属体(M)よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の端部から静電気を除去する点。
上記〔相違点1〕〔相違点2〕について検討する。
〔相違点1〕について
基板の挿入側と反対側において上板と底板とに支持されたストッパー兼用のサイドプレートを複数設けることは、周知の技術(必要なら、特開平5-147680号公報の受け側フレーム(13),(13)、参照。)であるから、しかも、ストッパーを導電性材質で形成することは、刊行物1に開示されているから、刊行物1記載の発明において、ストッパーに加えて、基板の挿入側と反対側において上板と底板とに支持されたサイドプレートを設け、前記サイドプレートを導電性材質で形成することは、当業者が適宜なし得る設計的事項と認められる。
〔相違点2〕について
刊行物2には、上記記載事項サ.シ.によると、複数の凹凸部を有する柱状基板保持部1-bと、前記柱状基板保持部1-bの上端を支持する円盤状板部1-aと、前記柱状基板保持部1-bの下端を支持する円盤状板部1-aとを含む基板保持具1において、「基板2(ウエハ)の挿入側と正反対側に柱状基板保持部1-bを追加して設け、この柱状基板保持部1-bの凸部を基板2の挿入側の空間に向かって突出して延長し、かつ前記基板2を基板2の挿入側の位置で支持することにより、安定性のよい基板保持を行う」技術が、刊行物3には、上記記載事項タ.チ.によると、オフセット印刷用の刷版や,活版印刷用の樹脂刷版などのシート状物品の保管装置において、「少なくともシート状物品の端部及び中央部を支持する」技術が、刊行物4には、上記記載事項ナ.によると、「スリット1を通じて積載された基板が前記スリット1を通じて再び抜け出ることを防止するよう前記スリット1の基板積載位置より高い位置に位置する複数の突起体6aを有しているストッパ6を設けたカセットA」の技術が、それぞれ開示されている。しかしながら、刊行物2〜4には、上記〔相違点2〕に係る本件発明1の構成の内、「前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」点について、開示も示唆もされていない。
そうすると、刊行物1記載の発明において、刊行物2〜4記載の上記技術を適用してみても、上記〔相違点2〕に係る本件発明1の構成の内、「前記ストッパーまたは前記基板の挿入側と反対側に設けられた前記サイドプレートのみに、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持する複数のサポートバーが形成されており、」の点については、当業者が格別困難なく想到し得るとしても、「前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」点については、当業者が格別困難なく想到し得るものとは認められない。
そして、本件発明1は、上記〔相違点2〕に係る本件発明1の構成により、「基板及び基板上の素子の静電破壊の防止を図りながら、基板中央部から電荷を効率的に放出するとともに、基板の歪みの防止を図る」(段落【0001】【0016】【0035】参照)という刊行物1記載の発明,刊行物2〜4記載の技術から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものと認められる。

<本件発明2〜4について>
本件発明2〜4は、本件発明1を更に限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、刊行物1記載の発明,刊行物2〜4記載の技術から当業者が格別困難なく想到し得るものではない。

<本件発明5について>
本件発明5と刊行物1記載の発明(発明【B】参照。)を対比する。
刊行物1記載の発明の「基板(O)」は、本件発明5の「基板」に相当し、以下同様に、「棚片(22),(22)間の空隙」は「スロット」に、「基板支承用側板(2)」は「スロット付サイドプレート」に、「天井フレーム(12)」は「上板」に、「底フレーム(11)」は「底板」に、「受けフレーム(13)」は「ストッパー」に、「導電性物質配合樹脂(Ra),発塵防止性樹脂(Rb)」は「金属よりも高い表面抵抗率を有する材質」に、「TFT液晶用ガラス基板」は「表示装置用基板」に、それぞれ、相当する。
してみると、両者は、
「基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、
前記スロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、
前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、
前記スロット付サイドプレートの下端を支持する、少なくとも一部は金属からなっている第1金属部を含む底板と、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持され、かつ前記底板の第1金属部と連結される第2金属部を有している一つ以上のストッパーとを含む、表示装置用基板の積載用カセット。」
の点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点〕本件発明5は、前記ストッパーには、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持するサポートバーが形成されており、前記サポートバーの主体部分は金属製であって前記ストッパーの第2金属部と連結されており、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去するのに対して、刊行物1記載の発明は、前記スロット付サイドプレートは骨格材としての金属体(M)を含み、前記金属体(M)は前記底板の第1金属部と連結されており、前記スロット付サイドプレートは、前記スロットによって支持される基板の端部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記スロット付サイドプレートの骨格材としての金属体(M)よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の端部から静電気を除去する点。
上記〔相違点〕について検討する。
刊行物2には、上記記載事項サ.シ.によると、複数の凹凸部を有する柱状基板保持部1-bと、前記柱状基板保持部1-bの上端を支持する円盤状板部1-aと、前記柱状基板保持部1-bの下端を支持する円盤状板部1-aとを含む基板保持具1において、「基板2(ウエハ)の挿入側と正反対側に柱状基板保持部1-bを追加して設け、この柱状基板保持部1-bの凸部を基板2の挿入側の空間に向かって突出して延長し、かつ前記基板2を基板2の挿入側の位置で支持することにより、安定性のよい基板保持を行う」技術が、刊行物3には、上記記載事項タ.チ.によると、オフセット印刷用の刷版や,活版印刷用の樹脂刷版などのシート状物品の保管装置において、「少なくともシート状物品の端部及び中央部を支持する」技術が、刊行物4には、上記記載事項ナ.によると、「スリット1を通じて積載された基板が前記スリット1を通じて再び抜け出ることを防止するよう前記スリット1の基板積載位置より高い位置に位置する複数の突起体6aを有しているストッパ6を設けたカセットA」の技術が、それぞれ開示されている。しかしながら、刊行物2〜4には、上記〔相違点〕に係る本件発明5の構成の内、「前記サポートバーの主体部分は金属製であって前記ストッパーの第2金属部と連結されており、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」点について、開示も示唆もされていない。
そうすると、刊行物1記載の発明において、刊行物2〜4記載の上記技術を適用してみても、上記〔相違点〕に係る本件発明5の構成の内、「前記ストッパーには、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持するサポートバーが形成されており、」の点については、当業者が格別困難なく想到し得るとしても、「前記サポートバーの主体部分は金属製であって前記ストッパーの第2金属部と連結されており、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」点については、当業者が格別困難なく想到し得るものとは認められない。
そして、本件発明5は、上記〔相違点〕に係る本件発明5の構成により、「基板及び基板上の素子の静電破壊の防止を図りながら、基板中央部から電荷を効率的に放出するとともに、基板の歪みの防止を図る」(段落【0001】【0016】【0035】参照)という刊行物1記載の発明,刊行物2〜4記載の技術から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものと認められる。

<本件発明6〜9について>
本件発明6〜9は、本件発明5を更に限定したものであるから、上記本件発明5についての判断と同様の理由により、刊行物1記載の発明,刊行物2〜4記載の技術から当業者が格別困難なく想到し得るものではない。

<本件発明10について>
本件発明10と刊行物1記載の発明(発明【C】参照。)を対比する。
刊行物1記載の発明の「基板(O)」は、本件発明10の「基板」に相当し、以下同様に、「棚片(22),(22)間の空隙」は「スロット」に、「導電性物質配合樹脂(Ra),発塵防止性樹脂(Rb)」は「金属より高い表面抵抗率を有する材質」に、「TFT液晶用ガラス基板」は「表示装置用基板」に、それぞれ、相当する。
してみると、両者は、
「少なくとも一部は金属性材質からなる基板積載用カセットに基板を積載する段階と、
前記基板を前記金属性材質に電気的に接続させて静電気を分散させる段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットを含む、表示装置用基板の静電破壊防止方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点〕本件発明10は、前記基板積載用カセットは、前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持する、サポートバーを含み、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去するのに対して、刊行物1記載の発明は、前記基板積載用カセットは、前記スロットが互いに向い合うように形成されている基板支承用側板(2)対を含み、前記基板支承用側板(2)は、スロットによって支持される基板の端部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記基板支承用側板(2)の骨格材としての金属体(M)より高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の端部から静電気を除去する点。
上記〔相違点〕について検討する。
刊行物2には、上記記載事項サ.シ.によると、複数の凹凸部を有する柱状基板保持部1-bと、前記柱状基板保持部1-bの上端を支持する円盤状板部1-aと、前記柱状基板保持部1-bの下端を支持する円盤状板部1-aとを含む基板保持具1において、「基板2(ウエハ)の挿入側と正反対側に柱状基板保持部1-bを追加して設け、この柱状基板保持部1-bの凸部を基板2の挿入側の空間に向かって突出して延長し、かつ前記基板2を基板2の挿入側の位置で支持することにより、安定性のよい基板保持を行う」技術が、刊行物3には、上記記載事項タ.チ.によると、オフセット印刷用の刷版や,活版印刷用の樹脂刷版などのシート状物品の保管装置において、「少なくともシート状物品の端部及び中央部を支持する」技術が、刊行物4には、上記記載事項ナ.によると、「スリット1を通じて積載された基板が前記スリット1を通じて再び抜け出ることを防止するよう前記スリット1の基板積載位置より高い位置に位置する複数の突起体6aを有しているストッパ6を設けたカセットA」の技術が、それぞれ開示されている。しかしながら、刊行物2〜4には、上記〔相違点〕に係る本件発明10の構成の内、「前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」点について、開示も示唆もされていない。
そうすると、刊行物1記載の発明において、刊行物2〜4記載の上記技術を適用してみても、上記〔相違点〕に係る本件発明10の構成の内、「前記基板積載用カセットは、前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持する、サポートバーを含み、」の点については、当業者が格別困難なく想到し得るとしても、「前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」点については、当業者が格別困難なく想到し得るものとは認められない。
そして、本件発明10は、上記〔相違点〕に係る本件発明10の構成により、「基板及び基板上の素子の静電破壊の防止を図りながら、基板中央部から電荷を効率的に放出するとともに、基板の歪みの防止を図る」(段落【0001】【0016】【0035】参照)という刊行物1記載の発明,刊行物2〜4記載の技術から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものと認められる。

<本件発明11について>
本件発明11と刊行物1記載の発明(発明【D】参照。)を対比する。
刊行物1記載の発明の「基板(O)」は、本件発明11の「基板」に相当し、以下同様に、「棚片(22),(22)間の空隙」は「スロット」に、「導電性物質配合樹脂(Ra),発塵防止性樹脂(Rb)」は「金属より高い表面抵抗率を有する材質」に、「TFT液晶用ガラス基板」は「表示装置用基板」に、それぞれ、相当する。
してみると、両者は、
「金属性材質からなる金属部を含む基板積載用カセットに基板を積載する段階と、
前記基板を前記金属部に電気的に接続させて静電気電流を放出する段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、
基板を積載するために前記基板の一部を支持するスロットを含む、表示装置用基板の静電気放出方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点1〕本件発明11は、前記カセットの金属部を接地させる段階を含むのに対して、刊行物1記載の発明は、この点につき不明である点。
〔相違点2〕本件発明11は、前記基板積載用カセットは、前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持する、導電性材質のサポートバーを含み、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質から形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去するのに対して、刊行物1記載の発明は、前記基板積載用カセットは、前記スロットが互いに向い合うように形成されている基板支承用側板(2)対とを含み、前記基板支承用側板(2)は、スロットによって支持される基板の端部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記基板支承用側板(2)の骨格材としての金属体(M)よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の端部から静電気を除去する点。
上記〔相違点1〕〔相違点2〕について検討する。
〔相違点1〕について
刊行物1記載の発明は、静電気電流を放出する段階を含むのであるから、金属部を接地させる段階を含むことは、技術常識である。そうすると、刊行物1記載の発明は、「前記カセットの金属部を接地させる段階を含む」ものと認められる。
〔相違点2〕について
刊行物2には、上記記載事項サ.シ.によると、複数の凹凸部を有する柱状基板保持部1-bと、前記柱状基板保持部1-bの上端を支持する円盤状板部1-aと、前記柱状基板保持部1-bの下端を支持する円盤状板部1-aとを含む基板保持具1において、「基板2(ウエハ)の挿入側と正反対側に柱状基板保持部1-bを追加して設け、この柱状基板保持部1-bの凸部を基板2の挿入側の空間に向かって突出して延長し、かつ前記基板2を基板2の挿入側の位置で支持することにより、安定性のよい基板保持を行う」技術が、刊行物3には、上記記載事項タ.チ.によると、オフセット印刷用の刷版や,活版印刷用の樹脂刷版などのシート状物品の保管装置において、「少なくともシート状物品の端部及び中央部を支持する」技術が、刊行物4には、上記記載事項ナ.によると、「スリット1を通じて積載された基板が前記スリット1を通じて再び抜け出ることを防止するよう前記スリット1の基板積載位置より高い位置に位置する複数の突起体6aを有しているストッパ6を設けたカセットA」の技術が、それぞれ開示されている。しかしながら、刊行物2〜4には、上記〔相違点2〕に係る本件発明11の構成の内、「前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質から形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」点について、開示も示唆もされていない。
そうすると、刊行物1記載の発明において、刊行物2〜4記載の上記技術を適用してみても、上記〔相違点2〕に係る本件発明11の構成の内、「前記基板積載用カセットは、前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持する、導電性材質のサポートバーを含み、」の点については、当業者が格別困難なく想到し得るとしても、「前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質から形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」点については、当業者が格別困難なく想到し得るものとは認められない。
そして、本件発明11は、上記〔相違点2〕に係る本件発明11の構成により、「基板及び基板上の素子の静電破壊の防止を図りながら、基板中央部から電荷を効率的に放出するとともに、基板の歪みの防止を図る」(段落【0001】【0016】【0035】参照)という刊行物1記載の発明,刊行物2〜4記載の技術から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものと認められる。

<本件発明12について>
本件発明12は、本件発明11を更に限定したものであるから、上記本件発明11についての判断と同様の理由により、刊行物1記載の発明,刊行物2〜4記載の技術から当業者が格別困難なく想到し得るものではない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜12に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明1〜12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-03-08 
出願番号 特願平9-40988
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B65G)
最終処分 維持  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 長谷川 一郎
清田 栄章
登録日 2002-05-17 
登録番号 特許第3307555号(P3307555)
権利者 三星電子株式会社
発明の名称 表示装置用基板の積載用カセットおよびこれを用いた静電破壊防止方法  
代理人 宮川 良夫  
代理人 稲積 朋子  
代理人 小野 由己男  

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