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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1119993
審判番号 不服2002-1393  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-08-01 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-01-25 
確定日 2005-07-11 
事件の表示 平成 5年特許願第352839号「半導体装置及び活字輪位置検出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 8月 1日出願公開、特開平 7-195768〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成5年12月28日の出願であって、平成13年12月21日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成14年1月25日付けで本件審判請求がされるとともに、同年2月25日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年2月25日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項1】に記載されたとおりの次のものと認める。
「半導体基板と、
前記半導体基板に形成され、プリンタを制御する半導体集積回路素子とを具備し、
前記半導体集積回路素子は、前記プリンタに内蔵される活字輪回転に同期して前記活字輪回転位置を検出するn個のAパルス及び前記活字輪回転に同期して前記n個のAパルスのうちのi番目とi+1番目(iは、1からnまでの正整数)の間に1パルスづつ配置されるn個のBパルスを交互に直接取込む手段を備えていることを特徴とする半導体装置。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭56-57190号(実開昭57-169546号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には次のア〜キの記載又は図示がある。なお、摘記にあたっては、「リセツト」を「リセット」などと、促音・拗音等通常小さな文字で表記されるものについては、通常の表記に改める。
ア.「本考案はプリンタの同期信号検出装置、特に摺動接点を用いた同期信号検出装置の改良に関するものである。」(2頁5〜7行)
イ.「第1図には従来の同期信号検出が概略的に示されており、・・・図の4個の摺動接点が電極円板14の各電極パターンと摺動接触して所望の同期信号が検出されている。図において、摺動接点16はコモン接点16a、リセットパルス接点16b、第1キャラクタパルス接点16c及び第2キャラクタパルス接点16dから成り、活字ドラム10の1回転に1個所定の基準位置で形成されるリセットパルス及び活字ドラム10の各活字位置と対応するキャラクタパルスとによって同期信号が形成されている。・・・この様な摺動接点を用いた同期信号検出装置では、コストが安いという利点を有する反面、摺動接点16と電極パターンとの接触状態が不安定でチャタリングノイズ等が発生し易く、誤った信号によってプリンタの動作不良が生じるという欠点があった。」(2頁末行〜4頁6行)
ウ.「本考案は、活字ドラムと同期回転し活字ドラムの活字配列に対応した電極パターンを有する電極円板と、電極円板と摺動接触して所定の同期信号を検出する摺動接点と、を含むプリンタの同期信号検出装置において、電極パターンと摺動接点との初期接触時に同期信号立上り作用を行う整形回路を含み、電極パターンと摺動接点との接触中に生じるチャタリングノイズの同期信号に対する悪影響を除去したことを特徴とする。」(4頁12行〜5頁1行)
エ.「第2図の実施例において、電極円板14及び摺動接点16は第1図の従来装置と同様であるが、本考案において、摺動接点16の検出信号は整形回路18に導びかれ、波形整形が行なわれた後に出力されることを特徴とする。実施例における整形回路18は3個のフリップフロップ(以下FFという)20a、20b、20cから成り、それぞれリセットパルス検出用及び第1、第2キャラクタパルス検出用に用いられている。」(5頁4〜12行)
オ.「FF20bも同様にそのセット入力に第1キャラクタパルス接点16cからの信号200がそしてリセット入力に第2キャラクタパルス接点16dからの信号300が供給されており、この結果、その出力端子22bには信号200の立上りにより同期信号立上り作用を行ないまた信号300の立上りによって同期信号立下り作用を行なう第1キャラクタパルスCP1が得られることとなる。」(7頁19行〜8頁6行)
カ.「FF20cはそのセット入力に信号300がそしてリセット入力に信号200が供給され、この結果その出力端子22cには信号300の立上りによって同期信号立上り作用を行ないまた信号200の立上りによって同期信号立下り作用を行なう第2キャラクタパルスCP2が得られることとなる。」(8頁7〜12行)
キ.第1図,第2図には、第1キャラクタパルス接点16cと接触する電極パターンと第2キャラクタパルス接点16dと接触する電極パターンが交互となるように描かれており、第3図には信号200と信号300が交互に出力されるように描かれている。

2.引用例記載の発明の認定
第1キャラクタパルス接点16cと接触する電極パターンを「第1電極パターン」と、第2キャラクタパルス接点16dと接触する電極パターンを「第2電極パターン」ということにし、信号200及び信号300を「第1パルス」及び「第2パルス」ということにする。
引用例は直接的には、「プリンタの同期信号検出装置」について記載した文献であるが、検出された同期信号はプリンタを制御するために用いられるのであるから、プリンタの制御装置も記載されているということができ、それは次のようなものである。
「同期信号検出装置を有するプリンタの制御装置であって、
前記同期信号検出装置は、活字配列と同期回転し活字ドラムの活字配列に対応した第1電極パターン及び第2電極パターンと、第1キャラクタパルス接点及び第2キャラクタパルス接点がそれぞれ接触することにより交互に発生する第1パルス及び第2パルスの第1及び第2の整形回路を有し、
前記第1の整形回路は第1パルスの立上りで同期信号立上り作用を行ない第2パルスの立上りによって同期信号立下り作用を行なうようにフリップフロップ回路によって構成され、
前記第2の整形回路は第2パルスの立上りで同期信号立上り作用を行ない第1パルスの立上りによって同期信号立下り作用を行なうようにフリップフロップ回路によって構成されている
プリンタの制御装置。」(以下「引用発明」という。)

3.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
引用発明の「活字ドラム」は本願発明の「活字輪」に相当するから、引用発明の「第1パルス」は本願発明の「プリンタに内蔵される活字輪回転に同期して前記活字輪回転位置を検出するn個のAパルス」に相当する。
引用発明では「第1パルス」と「第2パルス」が交互に発生するから、活字ドラム1回転での個数は同数であり、引用発明の「第2パルス」は本願発明の「n個のAパルスのうちのi番目とi+1番目(iは、1からnまでの正整数)の間に1パルスづつ配置されるn個のBパルス」に相当する。
引用発明の第1の整形回路(フリップフロップ回路)についていうと、第1パルスの立上りで同期信号立上り作用を行った後は、引き続いて(第2パルスの立上り前に)第1パルス(チャタリングによるもの)が入力されても、第1の整形回路の出力には影響を及ぼさない(チャタリングによるパルスを無視する)ものであり、第2の整形回路も同様であるから、第1及び第2の整形回路を第1パルス及び第2パルスを交互に取込む手段ということができる。
本願発明は、プリンタを制御する半導体集積回路素子を具備するものであるから、本願発明と引用発明とは「プリンタの制御装置」の点で一致する。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「プリンタに内蔵される活字輪回転に同期して前記活字輪回転位置を検出するn個のAパルス及び前記活字輪回転に同期して前記n個のAパルスのうちのi番目とi+1番目(iは、1からnまでの正整数)の間に1パルスづつ配置されるn個のBパルスを交互に取込む手段を備えているプリンタの制御装置。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉本願発明では「半導体基板に形成され、プリンタを制御する半導体集積回路素子」がAパルス及びBパルスを交互に取込む手段を備えるとしているのに対し、引用発明ではその点明らかでない点。なお、本願発明が「半導体基板」を備える点、及び「半導体装置」の発明とされている点は、相違点1に付随するものであるから、別途独立した相違点とはしない。
〈相違点2〉Aパルス及びBパルスを交互に取込む手段につき、本願発明が「直接取込む手段」としているとしているのに対し、引用発明では直接かどうか明らかでない点。

4.相違点についての判断
(1)相違点1について
本願出願当時、プリンタに限らず、各種装置を制御するための装置として、半導体基板に形成された半導体集積回路素子とすることは周知である。また、本願明細書を精査しても、相違点1に係る本願発明の構成を採用するに当たり、技術的に克服すべき困難性があると解することはできない。
したがって、「プリンタの制御装置」である引用発明を「半導体基板に形成された半導体集積回路素子」として構成し、そこに「Aパルス及びBパルスを交互に取込む手段」を備えさせること、すなわち相違点1に係る本願発明の構成を採用することは設計事項というべきである。

(2)相違点2について
「直接取込む」とは、何らかの手段を介在せずに取込むとの意味である。引用発明の第1及び第2の整形回路が「プリンタの制御装置」の一部であるかどうかは認識の問題であり、しかもそれら回路はフリップフロップであるから、半導体集積回路素子の一部として構成することには何の問題もない。そして、整形経路(フリップフロップ)を「プリンタの制御装置」の一部と認識する限度では、その制御装置を半導体集積回路素子として構成したものに、第1パルス及び第2パルス(Aパルス及びBパルス)は交互に直接取り込まれることになる(3.で述べたようにチャタリング成分は無視され、取り込まれない。)。したがって、相違点2は実質的相違ではない。
この点請求人は、「「整形回路」は、「プリンタを制御する集積回路」の動作を制御する信号を整形する回路であって、プリンタを制御するものではない。」(平成14年2月25日付け手続補正書(審判請求書の補正書であり、請求の理由を補正した書面)4頁1〜3行)と主張するが、本願発明の「プリンタを制御する集積回路」が「整形回路」を含まないと解釈しなければならない理由はないから、請求人の上記主張を採用することはできない。
のみならず、本願明細書の「印字動作を開始する場合に、・・・Bパルスを入力するBパルス入力用ポート6の外部割り込みを禁止(図6(2))し、かつ、・・・Aパルスを入力する・・・Aパルス入力用ポート5に対して外部割り込みを許可(図6(3)、(4))して図4の任意のAnパルスの外部割り込みをAパルス入力用ポート5で待つ。次に、Anパルス割り込み後、即時Aパルス外部割り込みを禁止(図6(5))し、つづいて、パルス外部割り込みを許可(図6(6))してBnパルスが割り込まれるのを待つ。又Bnパルスが割り込まれた後即時割り込み禁止(図6(7))を行う。」(段落【0011】)及び「チャタリングの有無に拘らず1回割り込み処理がなされてしまえばその後のパルスがどのようになろうと全く影響を受けない。」(段落【0014】)との記載によれば、本願発明実施例の「直接取込む手段」はAパルス又はBパルスの割り込み禁止・許可手段と解されるところ、実施例に限定しても進歩性判断に影響を及ぼさない。なぜなら、引用発明では2つの整形回路(フリップフロップ)により、チャタリングパルスを無視していることは既に述べたとおりであり、本願発明の実施例ではAパルス又はBパルスの立上りによりBパルス又はAパルスの一方が割り込み許可され、他方が割り込み禁止されるのであるから、チャタリングパルスを無視している点において、本願発明実施例と引用発明に相違はなく、要はハード的に行う(引用発明)か、ソフト的に行う(本願発明実施例)かの相違である。しかし、本願出願当時、パルスの割り込み禁止・許可を行うことによりチャタリング取りを行うことは周知(例えば特開平3-163363号公報参照。)であるから、引用発明の整形回路(フリップフロップ)と同機能のものを、パルスの割り込み禁止・許可によりソフト的に実現することに困難性はないからである。
以上のとおり、相違点2は実質的相違でないか、実質的相違としても当業者にとって想到容易な相違点でしかない。

(3)本願発明の進歩性の判断
相違点1に係る本願発明の構成をなすことは設計事項であり、相違点2は実質的相違でないかせいぜい当業者にとって想到容易な相違点であり、これら相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-18 
結審通知日 2005-05-18 
審決日 2005-05-31 
出願番号 特願平5-352839
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾崎 俊彦  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 藤井 靖子
砂川 克
発明の名称 半導体装置及び活字輪位置検出方法  
代理人 竹村 壽  

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