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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1120669 |
審判番号 | 不服2003-12684 |
総通号数 | 69 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-02-15 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-07-03 |
確定日 | 2005-08-05 |
事件の表示 | 特願2000-229463「摺動体及び磁気ヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月15日出願公開、特開2002- 50004〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 手続の経緯 本願は、平成12年7月28日の出願であって、平成14年11月29日付けで手続補正がなされ、平成15年5月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月1日付けで手続補正がなされたものである。 2. 平成15年8月1日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年8月1日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1) 本件手続補正前及び本件手続補正後の本願発明 本件手続補正は、特許請求の範囲について、本件手続補正前の、 「【請求項1】 摺動面に所定形状のセグメントの耐摩耗膜を間隔を存して多数形成したことを特徴とする摺動体。 【請求項2】 請求項1に記載の摺動体において、 更に潤滑性を有する所定形状のセグメントの膜を間隔を存して多数形成し、前記耐摩耗膜と前記潤滑性を有するセグメントの膜とを交互に配置することを特徴とする摺動体。 【請求項3】 記録媒体との摺動面に耐摩耗膜を形成した磁気ヘッドにおいて、 前記耐摩耗膜は、前記摺動面における磁気ギャップを横切って前記記録媒体の走行方向に延び且つ前記磁気ギャップの長手方向に間隔を存して矩形状のセグメントの耐摩耗膜を複数並べて形成したことを特徴とする磁気ヘッド。 【請求項4】 記録媒体との摺動面に耐摩耗膜を形成した磁気ヘッドにおいて、 前記耐摩耗膜は、前記摺動面における磁気ギャップの部分を除いて所定形状のセグメントの耐摩耗膜を間隔を存して多数形成したことを特徴とする磁気ヘッド。 【請求項5】 請求項3又は4に記載の磁気ヘッドにおいて、 更に潤滑性を有する所定形状のセグメントの膜を間隔を存して多数形成し、前記耐摩耗膜と前記潤滑性を有するセグメントの膜とを交互に配置することを特徴とする磁気ヘッド。 【請求項6】 前記耐摩耗膜の厚みは、前記摺動面における磁気ギャップの幅以下であることを特徴とする請求項3乃至5に記載の磁気ヘッド。 【請求項7】 前記耐摩耗膜は、セラミックスの薄膜であることを特徴とする請求項1乃至5に記載の摺動体又は磁気ヘッド。 【請求項8】 前記耐摩耗膜は、前記摺動面に粒子径1μm以下のセラミックス材料の超微粒子を高速で吹き付けて該超微粒子の持つ高い運動エネルギを瞬時に熱エネルギに変換させて前記耐摩耗膜を形成することを特徴とする請求項1乃至7に記載の摺動体又は磁気ヘッド。」 とある記載を、本件手続補正により、 「【請求項1】 摺動体の摺動面に、耐摩耗材料の超微粒子を高速で吹き付けて所定形状の耐摩耗性を有するセグメントの膜を間隔を存して多数形成すると共に潤滑性を有する材料の超微粒子を高速で吹き付けて所定形状の潤滑性を有するセグメントの膜を間隔を存して多数形成し、且つ前記耐摩耗性を有するセグメントの膜と潤滑性を有するセグメントの膜とを交互に間隔を存して配置したことを特徴とする摺動体。 【請求項2】 磁気ヘッドの記録媒体との摺動面に、耐摩耗材料の超微粒子を高速で吹き付けて所定形状の耐摩耗性を有するセグメントの膜を間隔を存して多数形成すると共に潤滑性を有する材料の超微粒子を高速で吹き付けて所定形状の潤滑性を有するセグメントの膜を間隔を存して多数形成し、且つ前記耐摩耗性を有するセグメントと潤滑性を有するセグメントとを交互に間隔を存して配置したことを特徴とする磁気ヘッド。 【請求項3】 前記耐摩耗性を有するセグメントの膜と潤滑性を有するセグメントの膜は、矩形状をなし、前記摺動面における磁気ギャップを横切って前記記録媒体の走行方向に延びることを特徴とする請求項2記載の磁気ヘッド。 【請求項4】 前記耐摩耗性を有するセグメントの膜と潤滑性を有するセグメントの膜は、前記摺動面における磁気ギャップの部分を除いて形成したことを特徴とする請求項2記載の磁気ヘッド。 【請求項5】 前記耐摩耗性を有するセグメントの膜と潤滑性を有するセグメントの膜の厚みは、前記摺動面における磁気ギャップの幅以下であることを特徴とする請求項2記載の磁気ヘッド。」 と補正したものである。 (2) 本件手続補正の検討 (ア)本件手続補正の請求項1及び2において、潤滑性を有するセグメントの膜に関して、「潤滑性を有する材料の超微粒子を高速で吹き付けて所定形状の潤滑性を有するセグメントの膜を間隔を存して多数形成」する構成は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されていない。 請求人が根拠とする段落14及び段落20について以下検討する。 段落14には、「コーティングするセラミック薄膜の耐摩耗性材料としては、硬度(耐摩耗性)や、潤滑性を考慮して・・の混合物、化合物がある。セグメントは、種々の従来公知の成膜方法が適用可能であるが、セラミック材料の超微粒子を高速で吹き付け、その衝撃力で薄膜を形成する成膜方法が好適である。」と記載されているが、ここで「潤滑性を考慮」する対象は「耐摩耗性材料」についてであり、また当該段落における「セグメント」とは、「耐摩耗性」のセグメントについての記載であり、段落14における記載は、「潤滑性を有するセグメントの膜」についての記載ではない。 段落20には、「尚、上記各実施例においても、耐摩耗性を有するセグメントと潤滑性を有するセグメントとを交互に配列するようにしても良い。」と記載されているが、潤滑性を有するセグメントの具体的な形成方法については何ら記載されていない。 そして、段落14及び20の記載並びに当業者の技術常識を総合的に勘案しても、特に「潤滑性を有するセグメントの膜」を「潤滑性を有する材料の超微粒子を高速で吹き付けて」形成することは、自明の事項ではないので、上記構成は、当初明細書等に記載した事項の範囲内であるということはできない。 (イ)本件手続補正の請求項3において、潤滑性を有するセグメントの膜を「矩形状」とすること、本件手続補正の請求項4において、潤滑性を有するセグメントの膜を「前記摺動面における磁気ギャップの部分を除いて形成」すること、及び本件手続補正の請求項5において、潤滑性を有するセグメントの膜の厚みを「前記摺動面における磁気ギャップの幅以下」とすることについては、当初明細書等の段落20に「耐摩耗性を有するセグメントと潤滑性を有するセグメントとを交互に配列するようにしても良い。尚、セグメントの形状及び配列としては、上記各実施例に示した形状や配列に限るものではなく、他の種々の形状や配列が考えられる。例えば、丸型や亀甲形等の形状のものを、互い違いに配列しても良い。」と記載があるのみで、「潤滑性を有するセグメントの膜」の具体的な形状、形成位置、膜の厚みについて、当初明細書等に記載がなく、自明の事項でもないので、当初明細書等に記載した事項の範囲内であるということはできない。 (3)本件手続補正についてむすび 以上のとおりであるから、本件手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3. 本願発明について (1)本願発明 平成15年8月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至8に係る発明は、平成14年11月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至8に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 摺動面に所定形状のセグメントの耐摩耗膜を間隔を存して多数形成したことを特徴とする摺動体。」 (2) 引用例 原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭57-162113号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。 (ア)「記録媒体に摺接する関係上摩耗が避けられない磁気ピックアップに於いて、局所的な摩耗換言すれば特定の一部特に信号再生に大きな影響を及ぼす部分に偏った摩擦が生じることのない磁気ピックアップを提供する」(第3頁左下欄第1行乃至同欄第6行)。 (イ)「また、29は耐摩耗部であり、広い面積を有する信号検出補助磁極面25に例えば第4図乃至第7図に示される如くのパターンにある程度の深さを持って埋め込まれ、かつ記録媒体対接面に於いて露出するとともに平面性が維持されてなるものである。 この耐摩耗部29の材料としては、SiC,Ta2O3,SiO2,SiO,Si,Al2O3,W,Ta等が好ましい。 また、耐摩耗部29の記録媒体対接面露出パターンは第5図乃至第7図の如く平行な直線上に限定されることなく、らせん形状、同心円上、格子状等適当なパターンで良いが、とくに均一なパターンに露出していることが耐摩耗上好ましい。」(第3頁左下欄第19行乃至同頁右下欄第11行)。 (ウ)「耐摩耗性材料34を前記溝32の深さと同一寸法の厚みになるようスパッタリングにより積層する(第8図(ハ))。」(第4頁左上欄第16行乃至同欄第18行)。 (エ)矩形状の耐摩耗部29が間隔を存して多数形成されたものが図示されている(第4,5,6,7図)。 上記技術事項(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び第4図乃至第7図の記載によれば、引用例には、次の発明が記載されている。 「記録媒体対接面に耐摩耗部を間隔を存して多数形成したことを特徴とする磁気ピックアップ。」 (3) 対比 本願発明と引用例に記載された発明とを対比する。 引用例に記載された発明の「磁気ピックアップ」は、記録媒体に摺接するものであるので、本願発明の「摺動体」に相当する。 引用例に記載された発明の「記録媒体対接面」は、記録媒体に摺接する面である(上記事項(ア)参照)ので本願発明における「摺動面」に相当する。 引用例に記載された発明の「耐摩耗部」は、スパッタリング等により形成される膜(上記事項(ウ)参照)であるので、本願発明の「耐摩耗膜」に相当する。 本願発明の「セグメント」という語の意味は、一般には「切片、部分」という意味に用いられ、本願の明細書に「小さく細長い矩形状の耐摩耗膜(以下「セグメント」という)」(段落17)及び「丸形や亀甲形等の形状」(段落20)と記載されていることからすれば、本願発明の「所定形状のセグメント」とは、小さく所定形状の部分という程度の意味であるを解せられる。引用例の耐摩耗部は、小さく例えば矩形状の部分で構成されている(上記事項(エ)参照)から、本願発明の「所定形状のセグメントの耐摩耗膜」であるということができる。 したがって、本願発明は引用例に記載された発明と同一である。 (4)請求人の意見に対して 請求人は、引用例に記載された発明との相違について、本願発明は「セグメント膜が摺動面から膜厚分だけ突出している」と意見書及び請求の理由で主張している。 しかしながら、本願発明は、その請求の範囲においてセグメント膜が膜厚分突出していることを特定しているものではないので、引用例に記載された発明における、耐摩耗膜が埋め込まれ露出しているものと何ら相違しないから、請求人の主張は採用できない。 なお、原審において引用例を引用したのは、特許法第29条第2項を理由とする拒絶理由の通知においてであるが、その通知書中に引用例について、特許法第29条第1項も理由に含まれることが出願人に容易に理解できるように記載されており、出願人は、その拒絶理由には、本願発明と引用例に記載されている発明とが同一であることも実質的には含まれていることを理解することが期待でき、またその同一について意見を述べる等の対応をする機会も与えられていたものといえる。よって、本願発明について改めて第29条第1項を理由とする拒絶理由を通知することなく、審決する(なお、例えば、平成3年(行ケ)第82号判決を参照されたい。)。 (5)むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-08-30 |
結審通知日 | 2004-09-01 |
審決日 | 2004-09-22 |
出願番号 | 特願2000-229463(P2000-229463) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(G11B)
P 1 8・ 561- Z (G11B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 富澤 哲生 |
特許庁審判長 |
小林 秀美 |
特許庁審判官 |
片岡 栄一 相馬 多美子 |
発明の名称 | 摺動体及び磁気ヘッド |
代理人 | 長門 侃二 |
代理人 | 長門 侃二 |