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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
判定2011600040 審決 特許
判定200060165 審決 特許
判定200560030 審決 特許
判定200260108 審決 特許
判定200260110 審決 特許

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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) H01H
管理番号 1121199
判定請求番号 判定2004-60099  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1997-11-28 
種別 判定 
判定請求日 2004-12-21 
確定日 2005-08-22 
事件の表示 上記当事者間の特許第2819272号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「スライドスイッチ」は、特許第2819272号発明の技術的範囲に属する。 
理由 1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号図面及びイ号説明書に示すところの被請求人の製造・販売する「スライドスイッチ」(以下、「イ号物件」という。)が、特許第2819272号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2.本件発明の出願経過
本件判定請求書の「6.請求の理由」の項にも示されているように、本件発明の出願経過等の概略を示すと、次のとおりである。
(1)出 願:平成 8年 5月 8日
(2)出願公開:平成 9年11月28日
(3)審査請求:平成 8年 5月 8日
(4)特許査定:平成10年 6月17日
(5)特許登録:平成10年 8月28日

3.本件発明
本件発明は、願書に添付された明細書及び図面(以下、「特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その構成要件を分説すると、次のとおりである。
A スライダに可動接片とクリック突子とを備えたスライドスイッチにおいて、プラスチック成形した枠体1の凹所2内にその長孔2aからつまみ3aを外部に向けてスライダ3を移動可能に配設するに当たり、
B このスライダ3には予めそのスライド方向にほぼ直交する孔4を形成し、
C この孔4内に挿入したコイルばね5の両側にクリック突子6と可動接片7とを直列配置し、
D 前記スライダ3を前記枠体1内にその弾力に抗し撓ませながら凹所内面の係止爪2Aを経て納置することで、スライダ3の抜け止めを施すと共に、
E 前記クリック突子6と可動接片7とをそれぞれ前記凹所2の対向内面に設けたクリック用凹部8とこの凹部に対向配置した複数の固定接片9とにそれぞれ弾接させた
F スライドスイッチ。

4.イ号物件
判定請求書及び平成17年2月7日付け回答書に添付のイ号図面及びイ号説明書の各記載内容を参考にすると、イ号物件は、次のa〜fの構成からなるものとするのが相当と認める。
a スライダに可動接片とクリック突子とを備えたスライドスイッチにおいて、プラスチック成形した枠体1の凹所2内にその長孔2aからつまみ3aを外部に向けてスライダ3を移動可能に配設するに当たり、
b このスライダ3には予めそのスライド方向にほぼ直交する孔4を形成し、
c この孔4内に挿入したコイルばね5の両側にクリック突子6と可動接片7とを直列配置し、
d 前記スライダ3の側面にスリットSを設け、前記枠体1内にその弾力に抗しスライダ3を撓ませながら凹所内面の係止爪2Aを経て納置することで、スライダ3の抜け止めを施すと共に、
e 前記クリック突子6と可動接片7とをそれぞれ前記凹所2の対向内面に設けたクリック用凹部8とこの凹部に対向配置した複数の固定接片9とにそれぞれ弾接させた
f スライドスイッチ。

5.対比
(1)本件発明とイ号物件との対比
両者を対比すると、イ号物件が、本件発明の構成要件A〜C及びE〜Fと文言上一致する構成を備えていることが明らかであるから、イ号物件は、本件発明の構成要件A〜C及びE〜Fを充足するといえる(ちなみに、答弁書によると、被請求人は、イ号物件が本件発明の構成要件A〜C及びE〜Fを充足することを実質的に争っていないと解される)。
しかしながら、イ号物件の構成dが、本件発明の構成要件Dを充足するか否かが明らかでない。
ところで、判定請求人及び被請求人の各主張を参酌すると、本件発明の構成要件Dとイ号物件の構成dとは、前者が「枠体1」の対向片同士が撓むものであるのに対して後者が「スライダ3」が撓むものであるという点で相違するということにつき両者に実質的に争いがなく、当該相違する部分について、判定請求人は、均等の要件を満たすものであるからイ号物件は本件発明の技術的範囲に属すると主張し、他方、被請求人は、当該相違する部分は本件発明の本質的部分であるからイ号物件は本件発明の技術的範囲に属しないと主張する。
そこで、イ号物件が本件発明の構成要件(d)を充足するといえるか否かの点について、均等論の適用の可否を含めて、以下に検討する。

6.イ号物件が本件発明の構成要件(d)を充足するか否かについて
(1)本件発明の構成要件Dにおける「前記スライダ3を前記枠体1内にその弾力に抗し撓ませながら凹所内面の係止爪2Aを経て納置する」の技術的意義について
ところで、本件発明の構成要件Dにおける「前記スライダ3を前記枠体1内にその弾力に抗し撓ませながら凹所内面の係止爪2Aを経て納置する」点は、その文章表現を一見すると、「前記スライダ3を」「撓ませながら」「納置する」ことを意味したものと解されるものの、当該記載中の「その(弾力)」が、その前に記載されている「前記スライダ3」又は「前記枠体1」のいずれのものを指しているのかが、特許請求の範囲に記載された事項からは必ずしも明らかでないということができる。
そこで、特許明細書の記載を参酌すると、発明の詳細な説明における「発明の効果」を記載した段落【0019】に、「この発明におけるスライダ3を枠体凹所2内に納置するに当り、先ず、凹所2の開口縁に近い対向内面に突設した係止爪2A間にスライダ3の下部を跨がせ当てがいつつスライダ3を凹所2内に押し込むと枠体対向辺1A同士がその弾力に抗し外向きに撓んで上記係止爪2A同士の間隙が広がり、係止爪2A間を経てスライダ3凹所2内に押し込むことができ、スライダ3の上縁が係止爪2Aを通過した時点で枠体対向辺1Aは、自己弾力でパチンと原状復帰してスライダ3の抜け止めを施こせるので、枠体開口縁に被せる絶縁板(蓋板)を不要化して組立性も向上したという効果も有る。」(注:下線部分は当審が付記した。)との記載があり、また、「発明の実施の形態」を記載した段落【0008】に「上記配置状態にある前記スライダ3を枠体凹所2内に納置するに当り、先ず、図2(a)のように凹所2の開口縁に近い対向内面に突設した係止爪2A同士の内側斜面間にスライダ3の下部を跨がせ当てがいつつスライダ3を凹所2内に押し込むと、この押し込み力で枠体対向辺1A同士がその弾力に抗し外向きに撓む。」との記載、これに続く段落【0009】に「この結果、上記係止爪2A同士の間隙が同図2(a)のようにスライダ幅まで広がると共に、この広がった係止爪2A間を経てスライダ3を図3(b)、図3(c)の順序で押し込むことができ、スライダ3の上縁が係止爪2Aを通過した時点で枠体対向辺1Aは、図3(d)のように自己弾力でパチンと原状復帰する。」との記載がある。
上記の記載事項によれば、本件発明の構成要件Dにおける「前記スライダ3を前記枠体1内にその弾力に抗し撓ませながら凹所内面の係止爪2Aを経て納置する」という記載中の「その(弾力)」は、その前に記載されている「前記スライダ3」及び「前記枠体1」の内の「前記枠体1」を指したものと解することができ、また、このように解釈すると、本件発明の実施例の記載内容とも整合するといえる。
そうすると、判定請求人及び被請求人が共に主張するように、本件発明の構成要件Dとイ号物件の構成dとは、前者が「枠体1」の対向片同士が撓むものであるのに対して後者が「スライダ3」が撓むものであるという点で構成上異なる部分があるということができる。

(2)均等論適用の可否について
そこで、本件発明の構成とイ号物件とが構成上異なる部分につき、最高裁判決(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁、最高裁平成6年(オ)1083号)が判示する次の5つの要件に従って、均等論の適用の余地があるか否かにつき検討する。

(均等論が適用できるための5つの要件)
「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存在する場合であっても、
・その部分が特許発明の本質的部分ではなく(第一要件)、
・その部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって(第二要件)、
・このように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり(第三要件)、
・対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれからその出願時に容易に推考できたものではなく(第四要件)、かつ、
・対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき(第五要件)は、
その対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である。」

(イ)第一要件(本質的部分)について
ところで、特許発明の本質的部分とは,明細書の特許請求の範囲に記載された特許発明の構成のうち,当該発明特有の課題解決のための手段を基礎付ける技術的思想の中核をなす特徴的部分を意味するものと解される(H17. 5.30 東京地裁 平成15年(ワ)第25968 号)。
そこで、特許明細書の記載について検討する。
特許明細書には、発明の目的につき、段落【0005】に「この発明は、上記した問題点をすべて解消するためになされたもので、その目的とするところは、スライダの抜け止め兼用の固定接片定位用絶縁蓋を不要化することと、只1個のコイルばねをクリック用と可動接片の固定接片に対する弾接用とに兼用することで、切換え節度感を有し、ばねに所謂「ヘタリ」を生じない平面的に小型のスライドスイッチを作業性よく安価に提供することに有る。」との記載があり、
また、課題を解決するための手段につき、段落【0006】に「上記したこの発明の目的は、プラスチック成形した枠体の凹所内にその長孔からつまみを外部に向けてスライダを移動可能に配設するに当たり、このスライダには予めそのスライド方向にほぼ直交する孔を形成し、この孔内に挿入したコイルばねの両側にクリック突子と可動接片とを直列配置し、前記スライダを前記枠体内にその弾力に抗し撓ませながら凹所内面の係止爪を経て納置することで、スライダの抜け止めを施すと共に、前記クリック突子と可動接片とをそれぞれ前記凹所の対向内面に設けたクリック用凹部とこの凹部に対向配置した複数の固定接片とにそれぞれ弾接させたことで達成できた。」との記載があり、
さらに、発明の効果につき、段落【0018】に「この発明は、以上のように構成したので、以下に記載の効果を奏する。絶縁枠体1の凹所2内にその長孔2aからつまみ3aを外部に向けて移動可能に配設するべきスライダ3に予じめそのスライド方向にほぼ直交する孔4を形成しておき、この孔4内に挿入したコイルばね5を挟み突出傾向に直列配置したクリック突子6と可動接片7とをそれぞれ前記凹所2の対向内面に設けたクリック用凹部8とこの凹部に対向して配置した複数の固定接片9とにそれぞれ弾接させて前記スライダ3を前記凹所2内に配設したので、只1個のコイルばねを用いるだけで、このコイネばねをクリック用と可動接片の固定接片に対する弾接用とに兼用でき、切換え節度感を有し、ばねに「ヘタリ」を生じない平面的に小型のスライドスイッチを作業性よく安価に提供することができたという工業的効果が有る。」との記載及び段落【0019】に、上記したように、「さらに、この発明におけるスライダ3を枠体凹所2内に納置するに当り、先ず、凹所2の開口縁に近い対向内面に突設した係止爪2A間にスライダ3の下部を跨がせ当てがいつつスライダ3を凹所2内に押し込むと枠体対向辺1A同士がその弾力に抗し外向きに撓んで上記係止爪2A同士の間隙が広がり、係止爪2A間を経てスライダ3凹所2内に押し込むことができ、スライダ3の上縁が係止爪2Aを通過した時点で枠体対向辺1Aは、自己弾力でパチンと原状復帰してスライダ3の抜け止めを施こせるので、枠体開口縁に被せる絶縁板(蓋板)を不要化して組立性も向上したという効果も有る。」との記載がある。
上記記載事項によれば、本件発明は、スライダの抜け止め兼用の固定接片定位用絶縁蓋を不要化することと、只1個のコイルばねをクリック用と可動接片の固定接片に対する弾接用とに兼用することで、切換え節度感を有し、ばねに所謂「ヘタリ」を生じない平面的に小型のスライドスイッチを作業性よく安価に提供するという特有の技術課題を解決するため、「スライダには予めそのスライド方向にほぼ直交する孔を形成し、この孔内に挿入したコイルばねの両側にクリック突子と可動接片とを直列配置し、前記スライダを前記枠体内にその弾力に抗し撓ませながら凹所内面の係止爪を経て納置することで、スライダの抜け止めを施すと共に、前記クリック突子と可動接片とをそれぞれ前記凹所の対向内面に設けたクリック用凹部とこの凹部に対向配置した複数の固定接片とにそれぞれ弾接させた」という構成を採用したものといえる。
そして、上記の技術課題の内の「スライダの抜け止め兼用の固定接片定位用絶縁蓋を不要化すること」という技術課題は、スライダを枠体内にその弾力に抗し撓ませながら凹所内面の係止爪を経て納置することで、スライダの抜け止めを施すことにより達成できることが明らかであり、いいかえれば、その弾力に抗し撓ませるものが、必ずしも枠体であるか又はスライダであるかのいずれかに関わらず達成できることが明らかである。
そうすると、本件発明の課題解決を基礎付ける特徴的な部分は「スライダには予めそのスライド方向にほぼ直交する孔を形成し、この孔内に挿入したコイルばねの両側にクリック突子と可動接片とを直列配置し、前記スライダを前記枠体内にその弾力に抗し撓ませながら凹所内面の係止爪を経て納置することで、スライダの抜け止めを施すと共に、前記クリック突子と可動接片とをそれぞれ前記凹所の対向内面に設けたクリック用凹部とこの凹部に対向配置した複数の固定接片とにそれぞれ弾接させた」という構成を採用した点にあって、これが本件発明の本質的部分であると解すべきであり、その弾力に抗し撓ませるものが、必ずしも枠体であるか又はスライダであるかに関わらないことが明らかであるから、上述した本件発明とイ号物件とが相違する部分である前者が「枠体1」の対向片同士が撓むものであるのに対して後者が「スライダ3」が撓むものであるという構成上異なる部分は、本件発明の本質的部分でないというべきである。

(ロ)第二要件(置換可能性ないし同一の作用効果)について
上述したように、本件発明の課題解決を基礎付ける特徴的な部分は「スライダには予めそのスライド方向にほぼ直交する孔を形成し、この孔内に挿入したコイルばねの両側にクリック突子と可動接片とを直列配置し、前記スライダを前記枠体内にその弾力に抗し撓ませながら凹所内面の係止爪を経て納置することで、スライダの抜け止めを施すと共に、前記クリック突子と可動接片とをそれぞれ前記凹所の対向内面に設けたクリック用凹部とこの凹部に対向配置した複数の固定接片とにそれぞれ弾接させた」という構成を採用した点にあって、これが本件発明の本質的部分であると解すべきであり、その弾力に抗し撓ませるものが、必ずしも枠体であるか又はスライダであるかに関わらないことが明らかである。
すなわち、本件発明の「枠体1」の対向片同士が撓むものである点を、イ号物件の「スライダ3」が撓むものに置き換えて見ても、「スライダの抜け止め兼用の固定接片定位用絶縁蓋を不要化すること」という本件発明の技術課題が達成できることに相違はなく、イ号物件は、本件発明と同一の作用効果を奏するものであることが明らかである。

なお、被請求人は、答弁書において、本件発明を利用した設計変更前の枠体を撓ませる製品はその組み付けに不具合があるのに対して、イ号物件はこのような不具合が無い旨を主張している。
ところで、本件発明の実施品やイ号物件のような具体化された製品同士を比較した場合には、当該具体化に伴う些細な構造上の差異が少なからず存在するのは当然のことであって、それに伴なう些細な作用効果上の相違も当然ながら存在するといえる。
しかしながら、仮に、このような具体的製品同士に見られるような些細な作用効果上の相違が有るとしても、上述したように、イ号物件が本件発明と同一の技術課題が達成できることに相違はなく、イ号物件は、本件発明の本質的部分における作用効果に関して、同一の作用効果を奏するという点に相違はないというべきである。

(ハ)第三要件(置換容易性)について
ところで、判定請求書に添付された甲第3号証(実開平5-6514号公報)を見ると、「車両用灯具」の考案に関して、その車両用灯具のハウジングに係合突起を有するレンズを嵌合するに当たり、係合突起が係合する係合孔の周囲に切り込み13(スリットに相当するもの)を設けることにより、係合部分を撓みやすいものとした構成が開示されており、また、その図面の第1図及び第2図には、切り込みにつき横方向の切り込み13aと縦方向の切り込み13bとを設けたものが示されているとともに、上述の嵌合に際して、上記考案の実施例を示す図3にはハウジング10側が撓む様子が示されており、他方、従来技術を示す図5には嵌合されるレンズ6側が撓む様子が示されている(なお、図面の内容については、上記考案の出願である実願平3-61025号(実開平5-6514号)の願書に最初に添付した明細書及び図面の内容を記録したCD-ROMを参酌した)。
そして、本件の特許明細書の段落【0001】に、「【発明の属する技術分野】この発明は、車内灯などの点滅や切換え用スイッチとして用いて好適なスライドスイッチに関する。」と記載されていることから、本件発明と上記「車両用灯具」の考案とは、車内灯ないし車両用灯具に関する技術であるという点で共通する技術分野に属するものといえる。
そうすると、本件発明の属する車両用灯具の技術分野において、その係合部分を撓みやすいものとするために切り込みないしスリットを設けることは従来より周知の技術であり、また、その係合部分を用いて相互に嵌合する関係にある一対の部材を嵌合するに際して、当該係合部分を有する一対の部材のいずれを撓みやすいものと選択するかは、当業者が適宜選択し得た技術的事項であるということができる。
してみると、本件発明の構成要件Dにおける「前記スライダ3を前記枠体1内にその弾力に抗し撓ませながら凹所内面の係止爪2Aを経て納置する」点を、イ号物件の構成dにおける「前記スライダ3の側面にスリットSを設け、前記枠体1内にその弾力に抗しスライダ3を撓ませながら凹所内面の係止爪2Aを経て納置する」ものと置き換えることは、本件発明の属する技術の分野における当業者が、イ号物件の製造等の時点において容易に想到することができたものであるといわざるを得ない。

(ニ)第四要件(対象製品の容易推考性)について
第四要件及び次の第五要件は、侵害訴訟事件等においては、通常、侵害等を行っているとされた被請求人が反論ないし立証すべき要件であると解されるものであるところ、本件判定事件の被請求人は何らの反論ないし立証もしていないが、念のために以下検討する。
ところで、後記(ホ)で指摘するように、本件特許の出願経過において拒絶理由が通知されていないので、本件特許公報の参考文献として掲載された次のものを本件特許の出願時の公知技術として参酌することとする。
(参考文献)
a 実開昭50-3076号公報(以下、「参考文献1」という。)
b 実開昭51-9269公報(以下、「参考文献2」という。)
c 実開昭53-19785公報(以下、「参考文献3」という。)
d 実開昭62-150828公報(以下、「参考文献4」という。)
e 実開平1-92043公報(以下、「参考文献5」という。)
f 実開平3-8833公報(以下、「参考文献6」という。)

参考文献6は、本件の特許明細書において従来技術として示された「スライドスイッチ」に関する考案を開示するものであって、可動接片をスプリングによって固定接片側に付勢するものであるが、スライダの抜け止めのために絶縁板12という蓋を用いることを開示するものである。
参考文献5は、「スライドスイッチ」に関する考案を開示するものであって、上記従来技術における可動接片の代わりに導電性ボールを用いた技術を開示する。
参考文献1は、「カーヒーターコントロールスイッチ装置」に関する考案を開示するものであって、可動子(7)をスプリング(6)により固定接点(8a)(8b)に付勢するとともに、当該スプリングの可動子(7)とは反対側にスチールボール(5)を設け、これを節度切欠(3a)に係合させるようにした構成を開示するものである。
参考文献2は「摺動式スイッチ」に関する考案を、参考文献3は「スイッチ」に関する考案を、参考文献4は「摺動型切替スイッチ」に関する考案を、それぞれ開示するものであって、上述した参考文献1と同様の技術をそれぞれ開示するものである。
そして、上記参考文献1〜参考文献6のいずれにも、上記「(イ)第一要件(本質的部分)について」で指摘したところの「スライダの抜け止め兼用の固定接片定位用絶縁蓋を不要化すること」という技術課題が、スライダを枠体内にその弾力に抗し撓ませながら凹所内面の係止爪を経て納置することで、スライダの抜け止めを施すことにより達成できることを、開示ないし示唆する記載を見出すことができない、いいかえれば、本件発明の構成要件Dは勿論のこととして、イ号物件の構成dを開示ないし示唆する記載も見出すことができない。
してみると、イ号物件は、本件発明の特許出願時における公知技術と同一であるとも、また、当業者がこれら公知技術からその出願時に容易に推考できたものであるともいうことができない。

(ホ)第五要件(意識的除外等の特段の事情の有無)について
本件の特許明細書を精査しても、本件発明の実施例として「枠体1」の対向片同士が撓むものが例示されているものの、本件発明から「スライダ3」が撓むものとすることを除外する等の記載は何ら見いだし得ない。
そして、本件特許の出願経過を参酌してみても、本件特許は出願と同時に審査請求がなされたものであり、その審査請求から特許査定に至る間においても拒絶理由が通知される等の出願経過が何ら存在しないものである。
したがって、イ号物件のような構成を採用することが、その特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情を見いだすことができない。

(3)まとめ
以上検討したとおり、最高裁判決(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁、最高裁平成6年(オ)1083号)が判示するところの均等論が適用できるための5つの要件の全てを満たすということができるから、本件発明とイ号物件とが構成上異なる部分につき、均等論の適用ができるというべきである。
したがって、イ号物件は、本件発明の構成要件Dを充足するということができる。

7.むすび
以上のとおり、イ号物件は、本件発明の構成要件A〜Fの全てを充足するといえるから、本件発明の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2005-08-10 
出願番号 特願平8-137556
審決分類 P 1 2・ 1- YA (H01H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山田 洋一  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 内藤 真徳
北川 清伸
登録日 1998-08-28 
登録番号 特許第2819272号(P2819272)
発明の名称 スライドスイッチ  
代理人 加藤 恭介  
代理人 福田 賢三  
代理人 福田 伸一  
代理人 福田 武通  
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