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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) D06P
管理番号 1121862
審判番号 無効2002-35361  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-09-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-08-29 
確定日 2005-02-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第1987690号「着色剤」の特許無効審判事件についてされた平成15年 7月 4日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成15年(行ケ)第0360号平成16年 7月29日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第1987690号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第1987690号の請求項1、2に係る発明についての出願は、平成5年3月17日に出願され、平成7年11月8日にその発明について特許権の設定登録がなされた。
そして、平成10年3月30日に大日精化工業株式会社より「請求項1に係る発明の特許を無効とする」との審決を求める審判請求がなされ、平成10年9月1日付けで訂正請求がなされ、平成10年10月21日付けで「訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決がなされ、当該審決は確定した。
その後、平成14年8月22日に株式会社中部パイル工業所(以下、「他の請求人」という。)から無効2002-35348号審判事件として、また、平成14年8月29日にオーケー化成株式会社(以下、「本請求人」という。)から無効2002-35361号審判事件として、それぞれ、本件の請求項1、2に係る発明の特許を無効とする旨の審決を求める審判請求がなされ、被請求人より訂正請求書及び答弁書が提出され、前記各審判事件の請求人より弁ぱく書が提出され、その後、審理を併合の上、平成15年5月9日に口頭審理がなされ、両当事者から上申書が提出され、平成15年7月4日に、「訂正を認める。本件審判の請求は、成り立たない。」との審決がなされた。
これに対して、本請求人は、前記審決に対する訴え(平成15年(行ケ)第360号審決取消請求事件)を東京高等裁判所に提起し、平成16年7月29日に、「特許庁が、無効2002-35348号及び無効2002-35361号事件について、平成15年7月4日にした審決を取り消す。」との判決が言い渡された。

2.本件特許発明
本件特許に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、前記他の請求人に対する審決が確定しているので、その審決で認めるとされた訂正によって訂正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものであり、平成15年5月9日の口頭審理において陳述されたとおりの、請求項1に記載された素材をそこに記載された処理剤で後処理した着色剤に係るものである。
「未染色または染色された繊維径5〜100μm、繊維長0.1〜2mmの有機繊維を素材とし、帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維からなる模様現出用着色剤。」

3.審判請求の理由
本請求人は、下記の甲各号証を提示するとともに、本件特許が無効であるとする理由の1つとして次の理由を主張した。
本件特許発明は、甲第4号証の2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

甲第2号証:特開昭53-63442号公報
甲第3号証の1:飯沼憲政著「フロック加工の実際(初版第2刷)」株式会社高分子刊行会(昭和60年2月10日発行)p.1、97、104、105、111〜114、119、122、123、126〜137、157〜160
甲第3号証の2:特開平4-146266号公報
甲第3号証の3:株式会社金原パイル工業の証明書
甲第3号証の4:水口寿生編「珪素の化学工業」化学工業時報社出版部(昭和59年11月10日発行)p.47〜51、61〜63
甲第3号証の5:「合成樹脂工業4/90VOL.37.No.4」株式会社合成樹脂工業新聞社(平成2年4月10日発行)、p.174〜175
甲第4号証の1:特開平3-12435号公報
甲第4号証の2:米国特許第5,187,202号明細書
甲第5号証の1:牧廣他著「図解プラスチック用語辞典初版」株式会社日刊工業新聞社(昭和59年1月31日2刷発行)p.109
甲第5号証の2:「マグローヒル科学技術用語大辞典第3版」株式会社日刊工業新聞社(1996年9月30日発行)p.298。

4.甲各号証の記載内容
甲第3号証の1(飯沼憲政著「フロック加工の実際(初版第2刷)」):
「植毛加工に用いるパイルは、繊維の種類、長さ、太さなどを変化させることによりバラエティに富む特徴を作ることができるものである。・・・。“植毛パイル”“パイル”と呼ぶのは日本における便宜上のもので、正式には“フロック”と呼ばれ、我が国以外では総べて“フロック”として扱われている。」(97頁3〜10行参照)、
「9パイルの電着処理 9-1パイルの電着処理 植毛加工は電界内に存在するパイルが、静電高圧を受け、植毛基材(接着剤が塗布されている)に植付けられる現象であることは、・・・よく理解されていることである。・・・パイルが電界内において良好な飛昇効果を保つためには、次のような条件を持たなければならない。・・・分離性(パイルのほつれやすさ)・・・ 前項の5項目を向上するように、適当な処理剤で、人為的に良好にさせる必要があるわけである。通常処理剤としては、無機塩類、各種界面活性剤(帯電防止効果を持つもの)有機硅素、などがあり、これらは単独又は数種の併用によって使用される。・・・。2)分離性 処理されたパイルが、電気的に満足であってもパイル相互の分離(分散)が容易に行われなければ、パイル同志が絡みあいを生じ、飛昇性が妨げられる。分離性は、電着処理剤、粘着、吸湿、などによって左右される。無機塩類・有機硅素・などの使用では、比較的分離性は良好であるが、繊維によっては、十分満足する電着処理効果をあげ得ることができない事があり、最近では各種界面活性剤の利用というものが普通になっている。」(132頁1行〜133頁19行参照)。

甲第3号証の2(特開平4-146266号公報):
「本発明は、植毛用パイルや、プラスチックスまたはゴムなどに混和する短繊維などに関する。」(1頁左下欄12〜13行)、
「従来、植毛用パイルや、プラスチックスまたはゴムなどに混和する短繊維など(・・・)は、天然繊維や人造繊維を切断、または粉砕(以下、単に切断という)して製造し、通常、そのままの状態で使用していた。ときに何らかの処理を加えることもあるが、それは繊維表面の帯電防止、「ぬれ」性の向上、接着性の改良や、パイルを使用した製品を柔軟化するためのものであった。」(1頁左下欄16行〜同頁右下欄4行参照)、
「パイルは、1本づつがばらばらになっていることが取扱い上も、パイルを使用した製品の品質にとっても好ましい。しかし、パイルは、往々にして相互に絡み合って、フロック(羽毛状の団塊)を形成し、取扱い上の障害になったり、製品の均一性を低下せしめている。」(1頁右下欄8〜14行)、
「パイルがフロックを形成する原因は、一つにはパイルの静電気にあることが知られていて、従来から必要に応じ、パイルに帯電防止処理を施していた。」(2頁左上欄3〜6行)。

甲第4号証の2(米国特許第5,187,202号明細書):
「発明の分野 本発明は、ポリマー添加剤の分野に関する。より特定すれば、本発明は、・・・添加剤コンセントレート;熱可塑性支持体に模造石効果を与える方法;・・・に関する」(1欄6〜14行参照)、
「クレーム1.約10〜125ミルの長さ及び約1〜約25デニールの繊度を有するセルロース短繊維又はフロックと、シリコーン液、グリセロール可塑剤、エポキシ可塑剤、脂肪酸の金属塩、ワックス、及びこれらの2つまたはそれ以上の混合物から選ばれる少なくとも1つの分散補助剤、とを含む添加剤コンセントレート。」(8欄14〜21行参照)、
「発明の詳細な説明 本発明によって、熱可塑性樹脂に模造石の外見を与えるのに有効な添加剤であって、(A)約80重量%までの少なくとも1つのキャリヤー;(B)少なくとも約50重量%のセルロース短繊維又はフロック;及び(C)約10重量%までの少なくとも1つの分散補助剤、を含む添加剤が提供される。1つの実施態様において、本発明の添加剤は、ドライカラーコンセントレートとして調製される。このようなコンセントレートにおいて、キャリヤー(A)は一般的には、無機充填剤、例えば炭酸カルシウム、カオリン、長石、あられ石、シリカ、タルク、これらの1つ又はそれ以上の混合物等である。本発明のドライカラーコンセントレートは一般的に、キャリヤー(A)として0〜約50重量%までの無機充填剤、より多くの場合、約15〜約30重量%を含んでいる。」(2欄43〜63行参照)、
「この組成物が、任意にその他の通常の成分、例えば充填剤、補強材料、難燃剤、UV安定剤、酸化防止剤、顔料、染料、帯電防止剤、離型剤等を含むことも、本発明の範囲内にある。」(5欄30〜34行参照)。

[前記以外の甲各号証については省略。]

5.対比・判断
甲第4号証の2には、前記した内容からみて、ドライカラーコンセントレートの態様として、約10〜125ミルの長さ及び約1〜約25デニールの繊度を有するセルロース短繊維又はフロックと分散補助剤とからなる熱可塑性樹脂に模造石効果を与えるための添加剤が記載され、前記分散補助剤として、シリコーン液、脂肪酸の金属塩を用いることが記載されているところ、前記シリコーン液と脂肪酸の金属塩は本件特許発明において滑剤として例示されているものである。
したがって、甲第4号証の2には、本件特許発明に係る「未染色又は染色された繊維径5〜100μm、繊維長0.1〜2mmの有機繊維と滑剤とからなる合成樹脂への模様現出用着色剤」という構成を有する発明が記載されているということができる(前記判決12頁24行〜14頁23行参照)。
そして、甲第3号証の1によれば、甲第4号証の2に記載の前記フロックは、我が国ではパイルとも呼ばれ、フロック加工(電気植毛)に用いられる短繊維であり、加工を有効に行うためには分離性(パイルのほつれやすさ。パイルどうしの絡み合いが生じないような性質)が必要であることが従来から広く知られ、この分離性を満足するための処理剤として、帯電防止効果のある界面活性剤などが使用されることも周知であり、甲第3号証の2によれば、フロックに相当する植毛用パイルや、プラスチックス、ゴムなどに混和する短繊維が、相互にからみ合って羽毛状の団塊を形成し、取扱い上の障害になったり、製品の均一性を低下することが知られ、その原因の1つにパイルの静電気があることから、従来より必要に応じて帯電防止処理を施すことが行われていたことが認められる(前記判決16頁24行〜17頁10行参照)。
してみると、フロックに対して必要に応じて帯電防止処理を施していた従来からの技術常識と、フロックと滑剤からなる甲第4号証の2に記載のドライカラーコンセントレートの態様に基いて、フロックと滑剤からなるドライカラーコンセントレートに更に帯電防止剤を追加した着色剤を想到することは、当業者が容易になし得ることである(前記判決17頁11〜16行参照)。
また、フロックと滑剤に、更に帯電防止剤を追加した着色剤の有する効果として、分散補助剤としても使用される前記滑剤が本来有する糸玉といわれるような繊維同士の塊状凝集を起こすことがないという効果に加えて、帯電防止剤によってフロックに静電気が発生し難く、混合機の槽壁に付着することがないという効果を生じるであろうことは、当業者が十分に予測できることであり、本件特許発明がその構成を採用したことにより格別の効果を奏したとも認められない(前記判決19頁4行〜21頁3行参照)。

よって、本件特許発明は、甲第4号証の2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

なお、被請求人は、本件審判請求は、確定審決の登録がなされた審判請求である平成10年審判第35124号と同一の事実及び同一の証拠に基づくものであり、特許法第167条の規定により審判を請求することができない場合に該当する旨を主張するが、前記確定審決に係る審判請求は、特許法第29条第1項第3号の規定を根拠とするものであり、特許法第29条第2項の規定を根拠とする本件審判請求とは事実を異にするものであるから、被請求人の当該主張は採用しない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
着色剤
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】未染色または染色された繊維径5〜100μm、繊維長0.1〜2mmの有機繊維を素材とし、帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維からなる模様現出用着色剤。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、合成樹脂成形品、紙、塗料などに添加する着色剤に関し、特に繊維の色調を模様として現出させる模様現出用の着色剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、合成樹脂、紙、塗料などに添加される着色剤として、無機顔料、有機顔料または染料が知られている。このうち顔料は、被着色基材に分散配合されて光を反射、吸収し所定の色調を付与し、通常、被着色基材を均一な色調で無模様に着色するものである。この種の着色剤の多くは、通常10μm程度の粒子であるが、粒子径が小さいほど表面積は大きくなるので、0.02μm〜5μm程度として着色力を効率良く高めたものが普及している。
【0003】
また、着色剤のうち、染料は、溶解して用いるものであって、被着色基材に色素の粒子が見えることはなく、均一な色調で無模様に着色されるのは、前記した顔料と同様である。
【0004】
本願の発明者は、着色されたものの表面に、斑点または糸状模様を現出させるようにして、商品価値を高めて多様の需要に応じることができる模様現出用着色剤を特開平2-68373号公報で開示した。
【0005】
この着色剤は、ビスコース誘導体のセロハンフィルムまたはビスコースレーヨンを素材とし、その欠点である吸水性を防止するために反応性染料で染色した繊維を適当な長さに揃えて裁断したものであり、混合添加された熱可塑性樹脂成形品に斑点または糸状の模様を現出させることができる。
【0006】
そして、上記した模様現出用着色剤のうち、レーヨンなどの繊維の太さが50デニール以下で1mm以下の微細で短寸の糸状のものは、合成樹脂などの被着色基材に混在した状態で、繊維が成形体表面にランダムに並んで点描画風に着色することができるので、独特の色調を呈する極めて装飾性に富んだ成形品を得ることのできるものであった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記した点描画風の模様現出用着色剤は、被着色材料と混合機で攪拌すると、激しく静電気を発生して混合機の槽壁に強力に付着するので、添加効率が極めて悪いという問題点がある。
【0008】
また、この着色剤は、乾式にて裁断された後、繊維同士が塊状に絡み合って、いわゆる糸玉と呼ばれるようになり、着色剤として効率良く機能しないものであった。
【0009】
このような着色剤は、特に経時的にも安定した品質が要求される塗料やプラスチック添加用の着色剤として利用することは困難である。
【0010】
そこで、この発明は上記した問題点を解決し、所定の太さと長さの有機繊維を用いた模様現出用着色剤を、混合容器に付着しないものとし、しかもそれが糸玉といわれるような塊状凝集を起こさないものとして、効率よく成形体などを点描画風に着色できる着色剤とすることを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、この発明においては、未染色または染色された繊維径5〜100μm、繊維長0.1〜2mmの有機繊維を素材とし、帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理した前記有機繊維からなる模様現出用着色剤としたのである。
【0012】
また、上記着色剤は、繊維径が5〜100μmの未染色または染色された有機繊維のトウに含水させ、このトウを繊維長0.1〜2mmに裁断した後、帯電防止剤と滑剤を両者併用した処理剤で表面処理することによって製造できる。以下にその詳細を述べる。
【0013】
この発明に用いる有機繊維は、所定の繊維径(直径)と繊維長を有するものであれば、特に限定することなく使用でき、具体的には、綿、絹、カボック、羊毛、亜麻、大麻、ラミ、ジュート、椰子などの天然繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アクリル、アラミドなどの合成繊維、アセテートなどの半合成繊維、レーヨン、ビニロンなどの再生繊維を挙げることができる。
【0014】
このうち、レーヨン、ビニロン、ポリエステル、アセテートなどの繊維は、延伸することにより、一見して絹のような素晴らしい光沢を備えた着色剤となり、これを用いてパールカラー状の着色を施すことができる。また、黄麻などの糸を染色したり、艶消し糸を使用することにより、艶消しの色調を現出する着色剤とすることもできる。
【0015】
このような有機繊維は、繊維径(直径)が5〜100μmでありかつ繊維長が0.1〜2mmのものを使用する。なぜなら、上記した所定範囲未満の細径かつ短いものでは、点描画風に着色できず一色の単色となるので好ましくなく、これに対して、前記所定範囲を越える大径かつ長いものでは、成形体表面に繊維が並列するので、点描画風に着色できないからである。なお、前記繊維径は、比重が約1.5のレーヨン、同1.38のポリエステル、同1.14のナイロンなどの場合、慣用される繊維の太さとして1〜50デニール(以下、dと略記する)であってよい。
【0016】
この発明に用いる帯電防止剤は、有機繊維の表面に緻密な分子層を形成して電気の表面漏洩抵抗を小さくする、いわゆる帯電防止剤であり、各種の界面活性剤を使用できる。また、水溶性無機物を用いてもよく、このものは、帯電防止性と共に、物理的に繊維同士の接触を妨げる作用もある。具体例としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、または、水溶性無機物としてケイ酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0017】
この発明に用いる滑剤は、有機繊維の表面に密着し、繊維同士の絡み合いを防ぐように作用する滑剤であって、滑剤として公知の脂肪酸またはその塩、高級脂肪族アルコール、脂肪族アマイド、金属石鹸、またはシリコーンオイル、フッ素オイル、植物油、鉱油、合成油を用いることができる。このうち、脂肪族アマイド、脂肪族ビスアマイド、金属石鹸を水系の乳化物として使用して好ましい結果を得ており、また、潤滑油の配合割合は20重量%以下が好ましいことが判明している。
【0018】
以上述べた帯電防止剤と滑剤は、両者併用する。なぜなら、繊維の種類によって静電気の発生率が異なり、または繊維径によって繊維同士の絡み合いの程度が異なるので、最適な状態となるように適宜処理剤を選択することが望ましいからである。特に、10d以下の細い繊維のものは、通常、帯電防止剤と滑剤を併用することが必要である。
【0019】
なお、この発明の着色剤に、所期の効果を阻害しない範囲で、周知の充填剤を添加したり、汎用の顔料を併用してもよいのは勿論である。
【0020】
【作用】
この発明の模様現出用着色剤は、トウの裁断時に含水状態にすることで、裁断時に水が、繊維同士またはその繊維と裁断刃を潤滑して静電気の発生が抑制される。また、被着色基材と混合機で攪拌したとき、添加された帯電防止剤によって、有機繊維に静電気が発生し難いので、混合機の槽壁に付着せずまた飛散せず、添加効率が改善される。裁断された有機繊維は、滑剤を介して繊維同士が潤滑されるので、塊状に絡み合わず、いわゆる糸玉が発生しない。
【0021】
したがって、所定の太さと繊維長を有する極めて微細な繊維状の着色剤として、繊維が成形体表面にランダムに分散し、点描画風に着色する機能が極めて優れた着色剤となる。さらに、このような着色剤は、塗料添加用の着色剤としても安定した品質を保つ。
【0022】
【実施例】
〔実施例1〕
レーヨン繊維(大和紡績社製:38μm(15d))に水分を含ませて、約50重量%含水品とし、これを裁断機で長さ0.5mmに裁断した。
【0023】
上記裁断された繊維を材料として、次の▲1▼〜▲4▼に示す手順および組成比率で染色を行なった。
【0024】
(a-1)染色工程
▲1▼水800gにケイ酸ナトリウム20gと硫酸ナトリウム30gを溶かして溶液を調整し、前記の裁断した繊維400g(含水率50重量%)を添加した。
【0025】
▲2▼40℃に加温した後に反応性染料(日本化薬社製:ブルーRS)5gを入れ、攪拌した。
【0026】
▲3▼これを脱水した後、水1000gを投入して水洗した後、40℃の温水500gと共に固定剤(日本化薬社製:カヤフィックス)16gを添加して10分間混合し、フィックス処理を行なった。
【0027】
▲4▼脱水、水洗(2回)の後、さらに脱水して水分を50重量%とした。
【0028】
上記裁断および染色を経た繊維400gに対し、下記の組成比率で各材料を加えて5分間攪拌混合して表面を処理し、その後脱水し乾燥して着色剤を得た。
【0029】

帯電防止剤(日本油脂社製:エレガンT0F100水溶液) 5g
金属石鹸 (旭電化社製:アデカファインエフコデスーパーZ、45%水分散品)
10g
変性シリコーンオイル(東レ社製:SH3746、乳化品) 5g
〔実施例2〕
実施例1において、レーヨン繊維(大和紡績社製:38μm(15d))に代えてレーヨン繊維(大和紡績社製:17μm(3d))を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にして染色および表面処理を行ない、着色剤を得た。
【0030】
〔実施例3〕
レーヨン繊維(大和紡績社製:38μm(15d))に代えて、レーヨン繊維(大和紡績社製:17μm(3d))を用い、さらに染色工程(a)で反応性染料(日本化薬社製:ブルーRS)に代えて反応性染料(日本化薬社製:ミカシオンスカーレットGS)を用いたこと以外は、実施例1と全く同様にして染色および表面処理を行ない、着色剤を得た。
【0031】
〔実施例4〕
レーヨン繊維(大和紡績社製:38μm(15d))に水分を含ませて、約50重量%含水品とし、これを裁断機で長さ0.5mmに裁断した。
【0032】
上記裁断された繊維を材料として、次の▲1▼〜▲4▼に示す手順および組成比率で染色を行なった。
【0033】
(a-2)染色工程
▲1▼水600gに硫酸ナトリウム30gと炭酸ナトリウム14gとを溶かして溶液を調整し、前記の裁断した繊維400g(乾燥重量200g)を添加した。
【0034】
▲2▼90℃に加温した後に直接染料(日本化薬社製:グリンGG、ブラウンMA)15gを入れ、40分間攪拌した。
【0035】
▲3▼これに固定剤(日本化薬社製:カヤフィックスM)10gを添加して10分間混合し、フィックス処理を行なった。
【0036】
▲4▼脱水した後、水1000gを投入して水洗した後、さらに脱水して水分を約50重量%とした。
【0037】
上記裁断および染色を経た繊維500gに対し、下記の組成比率で各材料を加えて5分間攪拌混合して表面を処理し、その後脱水し乾燥して着色剤を得た。
【0038】

帯電防止剤(日本油脂社製:エレガンT0F100水溶液) 10g
低分子量ポリエチレンワックス(三洋化成社製:パーマリンPN) 25g
金属石鹸 (旭電化社製:ステアリン酸カルシウム、アデカファインエフコデスーパーC)
25g
〔実施例5〕
レーヨン繊維(大和紡績社製:38μm(15d))に代えて、レーヨン繊維(大和紡績社製:17μm(3d))を用いたこと以外は、実施例4と全く同様にして染色および表面処理を行ない、着色剤を得た。
【0039】
〔実施例6〕
ポリエステル繊維(ユニチカ社製:32μm(10d)、黒色原着品)に水分を含ませて、約20重量%含水品とし、これを裁断機で長さ1mmに裁断した。
【0040】
上記裁断を経た繊維1000kgに対し、下記の組成比率で各材料を加えて5分間攪拌混合して表面を処理し、その後脱水し乾燥して着色剤を得た。
【0041】

帯電防止剤(日本油脂社製:エレガンT0F100水溶液) 2.5g
ラウリン酸(日本油脂社製:NAA-312乳化液) 25g
低分子量ポリエチレンワックス(三洋化成社製:パーマリンPN) 50g
〔実施例7〕
ナイロン6繊維(東レ社製:61μm(30d)、イエロー原着品)に水分を含ませて、約20重量%含水品とし、これを裁断機で長さ2mmに裁断した。
【0042】
上記裁断を経た繊維1000kgに対し、下記の組成比率で各材料を加えて5分間攪拌混合して表面を処理し、その後脱水し乾燥して着色剤を得た。
【0043】

ステアリン酸カルシウム(アデカファインエフコデスーパーC) 30g
硫酸マグネシウム 80g
上記した実施例1〜7の有機繊維の種類と染色剤の色調を表1にまとめた。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1、3、6または7を用いてプラスチック成形品を以下の要領で製造し、その色調を調べた。
【0046】
[実験例1]
ポリプロピレン100重量部に対して、流動パラフィン0.3重量部を混合機にて3分間混合し、次いで実施例を1重量部、実施例3を0.3重量部、ステアリン酸亜鉛で分散処理した酸化チタンRを0.5重量部添加して15分間混合し、常法による射出成形にて板状の成形品を製造した。
【0047】
[実験例2]
実施例6の2重量部とカーボンブラック0.3重量部を乾式混合したものに、ポリスチレン100重量部を混合し、さらに流動パラフィン0.3重量部を混合機にて3分間混合し、常法による射出成形にて板状の成形品を製造した。
【0048】
[実験例3]
実施例1の1重量部と、実施例3の1重量部と、実施例7の1重量部と、酸化チタン0.5重量部を乾式混合したものに、低分子量ポリエチレン100重量部をヘンシェルミキサーにて混合し、さらに流動パラフィン0.3重量部を混合機にて3分間混合し、成形温度180℃の射出成形にて板状の成形品を製造した。
【0049】
この結果、実験例1では、ブルー色とスカーレット色の単繊維がそれぞれ確認でき、点描画風の色調であると共に、見る角度によっては混合色のバイオレット色に着色されていた。
【0050】
また、実験例2では、全体的にカーボンブラックによる黒色系であり、さらに光沢のある黒色の単繊維が点描画風にはっきりと認められる独特の色調に着色されていた。
【0051】
実験例3では、イエロー、ブルー、スカーレット各色の単色が判別でき、見る角度によってグリーンやバイオレットに見える色調であった。
【0052】
この発明の模様現出用塗料の実施例について、以下に述べる。
【0053】
〔実施例8〕
塗料の原材料および配合割合(重量%)を一括して以下に示す。
【0054】
(1)増粘成分;カルボキシメチルセルロース(ダイセル化学社製:CMC-1150の0.5重量%を50℃の水道水99.5重量%に攪拌しながら混合溶解したもの)
12重量%
(2)混合着色剤;実施例1 0.2重量%
実施例7 0.3 〃
酸化チタンR型(堺化学社製) 0.5 〃
コーンスターチ(日本コーンスターチ社製) 1.0 〃
(3)造膜成分;スチレン・アクリルエマルジョン(Net.49%)(サンデン化学社製:サイビノールE-16)
20.4 〃
水 1.8 〃
乳化剤(花王社製:レベノールWZ) 0.03〃
造膜助剤(ベンジルアルコール)(スチレン・アクリルエマルジョンを攪拌しながら先に乳化した水、乳化剤、造膜助剤を徐々に添加した)
1.8 〃
(4)凍結防止剤;エチレングリコール 0.5 〃
(5)防腐剤;(ICI社製:プロクセルGXL) 0.04〃
(6)防腐剤;(ICI社製:デンシルS-25) 0.02〃
(7)消泡剤;(サンノプコ社製:ノプコ8034L) 0.02〃
(塗料の製造方法)
上記した造膜成分(3)を収容した混合槽に造粘剤(1)を入れ、攪拌しながら混合着色剤(2)を投入し、さらに原料(4)、(5)、(6)、(7)を順次混合してアクリル系エマルジョン塗料を得た。
【0055】
〔実施例9〕
実施例8において、混合着色剤を以下の(8)の成分とした以外は、全く同様にしてアクリル系エマルジョン塗料を得た。
【0056】
(8)混合着色剤;実施例3 0.2重量%
実施例4(グリーン) 0.3 〃
実施例4(ブラウン) 0.1 〃
〔実施例10〕
塗料の原材料および配合割合(重量%)を一括して以下に示す。
【0057】
(1)混合着色剤;実施例3 0.1重量%
実施例5 0.1 〃
実施例6 0.1 〃
白の分散カラー(涛和化学社製:ホワイトAE) 0.4 〃
(2)パルプ(山陽国策パルプ社製:W200) 6.0 〃
(3)消泡剤;(サンノプコ社製:ノプコ8034) 0.32〃
(4)増粘剤;カルボキシメチルセルロース(ダイセル化学社製:CMC-1150の0.5重量%を50℃の水道水99.5重量%に攪拌しながら混合溶解したもの)
60 〃
(5)造膜剤;ウレタンエマルジョン(バイエル社製:DLP、Net.46%)
40 〃
(6)防腐剤;(ICI社製:プロクセルGXL) 0.24〃
(7)防黴剤;(ICI社製:デンセルS-25) 0.24〃
(塗料の製造方法)
混合着色剤(1)とパルプ(2)を乾式で混合し、混合槽へ原料(3)、(4)、(5)を投入し、攪拌しながら前記混合された(1)と(2)を投入して10分間混合し、さらに防腐剤(6)、防黴剤(7)を添加して3分間混合してウレタン塗料を得た。
【0058】
[実験例4〜6]
実施例8〜10の塗膜の色調を調べるため、硬質塩化ビニルの清浄面に、各実施例の塗料をそれぞれエアスプレーにて塗装し、50℃で20分間乾燥して塗装した。
【0059】
この結果、実験例4(実施例8の塗料)は、ブルー、イエローの各色が点描画風に認められ、見る角度によってはグリーンに見える装飾性の高い塗膜を形成した。
【0060】
実験例5(実施例9の塗料)は、スカーレット、グリーン、ブラウンのそれぞれの単繊維が肉眼で確認でき、見る角度によってはブラウン系、またはグリーン系の黒色に見える装飾性の高い塗膜を形成した。
【0061】
実験例6(実施例10の塗料)は、ブラック、ブラウン、スカーレットのそれぞれの単繊維が肉眼で確認でき、見る角度によっては黒色系の赤またはブラウンに見える装飾性の高い塗膜を形成した。
【0062】
【効果】
この発明は、以上説明したように、所定の繊維径と繊維長の有機繊維を素材として、帯電防止剤と滑剤を両者併用してこれを表面処理した有機繊維からなる着色剤としたので、合成樹脂、紙、塗料などの被着色用基材に混合した場合に、混合槽に付着せずに添加効率がよく、しかもそれ自体が糸玉といわれるような塊状凝集を起こさないので、被着色物の表面に細密な繊維がランダムに並んで点描画風の色調で着色できる優れた装飾性のある着色剤となり、産業上利用価値の高いものであるといえる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2003-06-13 
結審通知日 2003-06-18 
審決日 2003-07-04 
出願番号 特願平5-57191
審決分類 P 1 112・ 121- ZA (D06P)
最終処分 成立  
前審関与審査官 福井 悟  
特許庁審判長 雨宮 弘治
特許庁審判官 佐藤 修
関 美祝
唐木 以知良
西川 和子
登録日 1995-11-08 
登録番号 特許第1987690号(P1987690)
発明の名称 着色剤  
代理人 浅村 皓  
代理人 尾崎 雄三  
代理人 井沢 洵  
代理人 浅村 肇  
代理人 歌門 章二  
代理人 湊谷 秀光  
代理人 歌門 章二  
代理人 安藤 克則  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 皓  
代理人 安藤 克則  
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