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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41M
管理番号 1121936
審判番号 不服2001-5414  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-10-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-03-01 
確定日 2005-08-17 
事件の表示 平成 6年特許願第111655号「スタンプ転写」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年10月24日出願公開、特開平 7-276778〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は、平成6年4月13日の出願であって、平成13年1月17日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年3月5日付けで本件審判請求がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成15年6月16日付けで新たな拒絶理由を通知したところ、請求人は平成15年8月22日付けで意見書及び手続補正書を提出した。
したがって、本願の請求項1に係る発明は、平成15年8月22日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「感圧接着層と、該感圧接着層の上部に形成した単色又は多色の文字、記号又は絵柄、模様、ドット等の表示部からなる印刷層とをシルクスクリーン印刷法にて離型シート表面に順次に厚肉定着せしめたパターンからなる転写印刷シートと、下面が平滑で且つ下端部を弱粘着性を付与せしめたスタンプ型の透明性立体性印板とからなり、且つこの立体性印板下面の弱粘着強度は上記印刷層の下面接着層と離型シートとの粘着強度より大なる粘着強度を有するようにすると共に、前記パターンの上表に前記立体性印板を圧着し、この立体性印板の下面にパターンを付着させた状態で被印刷面に立体性印板を押圧することにより被印刷面に転写することを特徴とするスタンプ転写方法。」
第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
一方、当審における拒絶の理由で通知した特開昭62-180000号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に下記の記載がある。
ア.「本発明の転写方法には転写シート1および転写用具を用いる。前記転写シート1は、第1図に示す如く文字図形等フィルム状転写パターン1の裏面に粘着層3を形成して、これをシリコンペーパ或いは表面にシリコン処理された紙、合成樹脂フィルム等のベース4の表面に剥離可能に軟止着している。該転写シートの製作は主に2つの方法を採用する。その1つは、べース4の表面へ、文字図形等転写パターンと同一形状の粘着層3、この粘着層3の表面に必要に応じてメジューム層、所謂合成樹脂層を介して所定着色インクによる転写パターン2を公知の印刷法により処理して行う。他の1つは、合成樹脂シートの表面に着色インクによる転写パターン、このパターン上に合成樹脂層、樹脂層の表面に粘着層を積層形成し、粘着層に対し前述と同様な剥離性ベースを軟止着した後、合成樹脂シートをベース上の転写パターンから剥離することにより、第1図と同様な転写シートが得られる。転写用具5は、第2図に示す如く、片面に粘着層6を有す可撓性テープ材51、或いは第3図に示す如く、ハンドル52先端に押圧板53を設けてその表面に粘着層6を形成し、または第4図に示す如く、ハンドル52先端に回転ロール54を設けてその周囲に粘着層6を形成したもの等、被接着面の形状に応じて選択使用する。然して、転写に際しては、転写用具5の粘着層6をベース4上の転写パターン2に押圧して接着し(第5図a)、転写パターン2をベース4から剥離して転写用具5に移した後(第5図b)、該転写パターン2の粘着層3を被転写面7に接合して押圧する(第5図c)。このとき、転写パターン2における粘着層3の粘着力を転写用具5の粘着層6より大となしているため、転写用具5は、転写パターン2を被転写面7に残してこれより離れる(第5図d)。その後、被接着面7上の転写パターン2の全面を加圧することにより、転写作業は完了する。」(第2頁右上欄第10行目〜右下欄第9行目。)
イ.第3図から、ハンドル52の先端に設けられた押圧板53の形状について、下面が湾曲状で、且つ立体であることが看取できる。
2.引用例1記載の発明の認定
引用例1の“粘着層6の粘着強度”と“粘着層3とベース4との粘着強度”は、「転写に際しては、転写用具5の粘着層6をベース4上の転写パターン2に押圧して接着し(第5図a)、転写パターン2をベース4から剥離して転写用具5に移した後(第5図b)」であるから“粘着層6の粘着強度”が“粘着層3とベース4との粘着強度”より大きいと認められる。
そうすると、引用例1の上記記載ア、イを含む明細書及び図面からみて、引用例1には、次のような発明が記載されていると認めることができる。
「シリコンペーパ或いは表面にシリコン処理された紙、合成樹脂フィルム等のべース4の表面へ、公知の印刷法により文字図形等転写パターン2と同一形状の粘着層3、所定着色インクによる文字図形等転写パターン2を剥離可能に軟止着し、転写用具は、ハンドル先端に下面が湾曲状の押圧板53を設けてその表面に粘着層6を形成したものからなり、且つこの押圧板53下面の粘着層6の粘着強度は上記転写パターン2の下面粘着層3とベース4との粘着強度より大である粘着強度を有するようにすると共に、転写に際しては、転写用具の粘着層6をベース4上の転写パターン2に押圧して接着し、転写パターン2をベース4から剥離して転写用具に移した後、該転写パターン2の粘着層3を被転写面7に接合して押圧し、転写用具は、転写パターン2を被転写面7に残してこれより離れる転写方法。」(以下、「引用発明1」という。)
3.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用発明1の「粘着層3」は、「製作は(中略)公知の印刷法により処理して行(第2頁右上欄第17行目〜左下欄第3行目)」い、「転写パターン2の粘着層3を被転写面7に接合して押圧する(第2頁右下欄第2行目〜第3行目)」ことにより接着するから、本願発明の「感圧接着層」に相当し、
引用発明1の「転写パターン2」は、「文字図形等フィルム状(第2頁右上欄第12行目〜第13行目)」で、「製作は(中略)公知の印刷法により処理して行(第2頁右上欄第17行目〜左下欄第3行目)」うから、本願発明の「印刷層」に相当し、
引用発明1の「ベース4」は、「シリコンペーパ或いは表面にシリコン処理された紙、合成樹脂フィルム等のベース4の表面に剥離可能に軟止着している(第2頁右上欄第14行目〜第17行目)」であるから、本願発明の「離型シート」に相当し、
引用発明1の「転写シート1」は、「文字図形等フィルム状転写パターンの(中略)印刷法により処理して行う。(第2頁右上欄第12行目〜左下欄第3行目)」であるから、本願発明の「転写印刷シート」に相当し、
引用発明1の「転写用具5」は、「ハンドル52先端に押圧板53を設けてその表面に粘着層6を形成し(第2頁左下欄第12行目〜第13行目)」てあるから、本願発明の「立体性印板」に相当し、
引用発明1の「転写作業」は、「転写に際しては(中略)該転写パターン2の粘着層3を被転写面7に接合して押圧する(中略)転写作業は完了する。(第2頁左下欄第18行目〜右下欄第9行目)」であるから、本願発明の「パターンの上表に前記立体性印板を圧着し、この立体性印板の下面にパターンを付着させた状態で被印刷面に立体性印板を押圧することにより被印刷面に転写する」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明1とは、
「感圧接着層と、該感圧接着層の上部に形成した単色又は多色の文字、記号又は絵柄、模様、ドット等の表示部からなる印刷層とをシルクスクリーン印刷法にて離型シート表面に順次に厚肉定着せしめたパターンからなる転写印刷シートと、下端部を弱粘着性を付与せしめたスタンプ型の立体性印板とからなり、且つこの立体性印板下面の弱粘着強度は上記印刷層の下面接着層と離型シートとの粘着強度より大なる粘着強度を有するようにすると共に、前記パターンの上表に前記立体性印板を圧着し、この立体性印板の下面にパターンを付着させた状態で被印刷面に立体性印板を押圧することにより被印刷面に転写することを特徴とするスタンプ転写方法。」である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1>
立体性印板の下面が、本願発明では「平滑」であるのに対し、引用発明1では湾曲状である点。
<相違点2>
立体性印板が、本願発明では「透明性」であるのに対し、引用発明1ではその点が明らかでない点。
4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)<相違点1>について
「平滑」につき、平成12年9月27日付け手続補正書により付加されたが、同日付け意見書における「このような下面が三次元曲面の転写パッドでは平面的な「感圧接着層と、該感圧接着層の上部に形成した単色又は多色の文字、記号又は絵柄、模様、ドット等の表示部からなる印刷層」とからなる絵柄層を拾うことはできない。」という主張及び同補正書により当初明細書の段落【0017】及び【0018】並びに【図5】及び【図6】に記載された下部を曲面とした実施例が削除されたという出願経過からすると、「下面が平滑」とは下面が“平面”であることに限定されたものと解する他ない。そこで、引用発明1についてみるに、立体性印板へのパターンの付着に関する作用は、本願発明と同様のものであることから、押圧板は湾曲してはいるものの、その湾曲具合は転写パターンが押圧板への移行を妨げる程度のものではないことは明らかであり、立体性印板の下面形状はパターンの被印刷面への転写に最適な形状とすることは当業者が当然選択すべき事項であるから、立体性印板の下面を平滑とすることは、当業者が容易に相当しうるものである。
(2)<相違点2>について
スタンプ等の立体性押圧部材を、押圧部材下部を被押圧物に正確に押圧するために透明とすることは、例えば実願平5-27795号(実開平6-81751号)のCD-ROM等に記載されているとおり、この出願前周知慣用されている事項にすぎないものである。
してみると、相違点2に係る構成については、周知例の記載から得られるものであり、かかる構成を引用発明1に適用することは、当業者が容易になし得ることができたものであり、しかも、かかる構成を備えた本願発明の作用効果は、引用発明1及び周知例の記載から予測し得る範囲のものにすぎないものである。
第3 むすび
以上のとおり、本願発明は引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-23 
結審通知日 2005-05-31 
審決日 2005-06-22 
出願番号 特願平6-111655
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 史郎井上 茂夫藤村 泰智  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 藤井 靖子
藤本 義仁
発明の名称 スタンプ転写  
代理人 中島 正次  

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