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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1122207 |
審判番号 | 不服2003-4379 |
総通号数 | 70 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-04-06 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-03-17 |
確定日 | 2005-07-28 |
事件の表示 | 平成8年特許願第523311号「腔内エコグラフィー映像カテーテル」拒絶査定不服審判事件〔平成8年8月8日国際公開、WO96/23444、平成11年4月6日国内公表、特表平11-503928〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、1996年(平成8年)1月30日(優先権主張1995年2月1日、フランス国)を国際出願日とする出願であって、平成14年12月17日に拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年3月17日に審判請求がなされるとともに、同年4月16日付けで手続補正がなされたものである。 2.補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成15年4月16日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正事項 本件手続補正は、次の補正事項を含むものである。 [補正事項a] 特許請求の範囲の請求項1において、補正前に「超音波透明カプセル(26)を包含し」とあったのを「超音波透過性のカプセル(26)を含有し」と補正し、補正前の「先導ケーブル(24)を含み」の後に「前記マイクロ駆動装置(32)が、可変静電容量及び放射励磁を有する静電モータであって」を追加し、補正前の「且つ前記マイクロ駆動体装置」を「且つ前記静電モータ」とする補正、 [補正事項b] 補正前の請求項1に「超音波透明カプセル(26)を包含し」とあったのを「超音波透過性のカプセル(26)を含有し」と補正し、補正前の請求項1の「先導ケーブル(24)を含み」の後に補正前の請求項5に記載のあった「前記マイクロ駆動装置(32)が電磁モータであって」を追加し、補正前の請求項1の「且つ前記マイクロ駆動体装置」を「且つ前記静電モータ」と補正した上、新たな独立請求項として請求項2に記載する補正、 [補正事項c] 補正前の請求項4から請求項3に繰り上げると共に、「特許請求の範囲第2項又は第3項のいずれかに記載のカテーテル」とあったのを「請求項1又は2に記載のカテーテル」とする補正、 [補正事項d] 補正前の請求項6から請求項4に繰り上げると共に、「前記特許請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載のカテーテル」とあったのを「前記請求項1〜3のいずれかに記載のカテーテル」と補正し、 補正前の請求項7から請求項5に繰り上げると共に、「特許請求の範囲第6項に記載のカテーテル」とあったのを「請求項4に記載のカテーテル」と補正し、 補正前の請求項8から請求項6に繰り上げると共に、「特許請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載のカテーテル」とあったのを「請求項1〜3のいずれかに記載のカテーテル」と補正し、 補正前の請求項9から請求項7に繰り上げると共に、「特許請求の範囲第6項又は第8項に記載のカテーテル」とあったのを「請求項4又は6に記載のカテーテル」と補正し、 補正前の請求項10から請求項8に繰り上げると共に、「特許請求の範囲第9項に記載のカテーテル」とあったのを「請求項7に記載のカテーテル」と補正し、 補正前の請求項11から請求項9に繰り上げると共に、「特許請求の範囲第1項〜第10項のいずれかに記載のカテーテル」とあったのを「請求項1〜8のいずれかに記載のカテーテル」と補正し、 補正前の請求項12から請求項10に繰り上げると共に、「特許請求の範囲第1項〜第11項のいずれかに記載のカテーテル」とあったのを「請求項1〜9のいずれかに記載のカテーテル」と補正し、 補正前の請求項13から請求項11に繰り上げると共に、「特許請求の範囲第1項〜第12項のいずれかに記載のカテーテル」とあったのを「請求項1〜10のいずれかに記載のカテーテル」とする補正。 (2)補正事項aの補正の適否 補正事項aにおいて、補正前の「超音波透明カプセル(26)を包含し」を「超音波透過性のカプセル(26)を含有し」とする補正は、「明りょうでない記載の釈明」に該当し、補正前の「先導ケーブル(24)を含み」の後に「前記マイクロ駆動装置(32)が、可変静電容量及び放射励磁を有する静電モータであって」を追加する補正、及び、補正前の「且つ前記マイクロ駆動体装置」を「且つ前記静電モータ」とする補正は、「特許請求の範囲の限縮」に該当するから、補正事項aは、特許法17条の2第4項2号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、また、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるので、次に、補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 (2-1)本願補正発明の認定 本願補正発明は、上記手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。 「患者の体外に位置する近位部(10)、探査対象組織近隣域に位置する末端部(12)、及びこれら(10,12)の両端部をつなぐ本体(14)を含有して成る腔内エコグラフィー映像カテーテルであって、該末端部(12)は、超音波透過性のカプセル(26)を含有し、その中に、固定圧電変換器(28)及び同様にカプセル(26)内に収容されたマイクロ駆動装置(32)とそのロータ(34)によって回転する超音波屈折鏡体(30)が収容され、前記鏡体(30)は、連結伝達軸なしで、前記マイクロ駆動装置(32)のロータ(34)の表面に直接置かれ、前記端末部(12)は先導ケーブル(24)を含み、前記マイクロ駆動装置(32)が、可変静電容量及び放射励磁を有する静電モータであって、且つ前記静電モータのステータ(36)が前記カプセル(26)内に収容されていることを特徴とする腔内エコグラフィー映像カテーテル。」 (2-2)刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-218144号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載・図示されている。 『【0014】【実施例】・・・図1の超音波探触子1において、直径1mm程度の円筒部2内の先端に超音波振動子3が設けられている。この超音波振動子3は、円盤状の例えば圧電素子が使用され、・・・断続的に超音波を発生させ、一方反射して戻った超音波の強度を測定する。 【0015】また、超音波振動子3より所定距離に、・・・ロータ6が配置される。このロータ6は、45度の凹面形状に形成された反射鏡7と回転用電極8が一体に形成されたものである。・・・回転用電極8は、反射鏡7の反射面の表面にエッチングにより形成されたもので、電極が放射状に延出したプロペラ形状に形成される・・・。 【0016】一方、ステータ10には回転用電極8と同様なプロペラ形状の固定用電極11が設けられ、回転用電極8と・・・ギャップを隔てて対向して配置される。そして、ステータ10の固定用電極11に・・・外部から正、負の交番電荷が印加され・・・対向した電極間の電荷が同極性、異極性で生じる斥力、吸引力によりロータ6を回転させるもので、いわゆる静電モータを構成する。』 『【0027】・・・図4は、本発明の超音波探触子を医療器具のカテーテルに適用して血管内部を検査する場合を示しており、・・・。 【0028】まず、カテーテル30の先端に本発明の超音波探触子・・・が設けられており、この超音波探触子20を駆動するリード線4a、4b等がコード部31に内設される。このカテーテル30は直径1mm程度の微細血管32に挿入して超音波探触子20を駆動すると、血管32内の管壁に沈着した異物33を検知するものである。すなわち、超音波探触子20からは、血管32の半径方向の全周に超音波ビーム9を断続的に発してその反射波を該超音波探触子20で受信し、その強度を電気信号に変換して取出すものである。 【0029】・・・このように、異物33が存在すれば、その形状を画像として取出して検査するものである。』 (2-3)対比・判断 刊行物1に記載の「カテーテル」は、微細血管32内に挿入されて管壁に沈着した異物33の形状を画像として取出すものであるから、本願補正発明の「腔内エコグラフィー映像カテーテル」に相当し、刊行物1に記載の「円筒部2」「コード部31」「円盤状の圧電素子」「反射鏡7」「ステータ10」は、それぞれ、本願補正発明の「末端部(12)」「本体(14)」「固定圧電変換器(28)」「超音波屈折鏡体(30)」「ステータ(36)」に相当し、 刊行物1に記載の「反射鏡7」は、ロータ6の回転用電極8と一体に形成されているから、本願補正発明の「超音波屈折鏡体(30)」が「マイクロ駆動装置(32)のロータ(34)によって回転」され、「連結伝達軸なしで、マイクロ駆動装置(32)のロータ(34)の表面に直接置かれ」ているのと同等であり、 そして、刊行物1に記載のものも、患者の体外から円筒部の圧電素子や静電モータを制御するための制御部、すなわち、本願補正発明の「患者の体外に位置する近位部(10)」に相当するものを備えており、また、刊行物1に記載の「円筒部2」が、本願補正発明の「超音波透過性のカプセル(26)」に相当するものを含有していることも自明であるから(例えば、特開平2-286141号公報8頁右下欄4〜7行を参照)、 本願補正発明と刊行物1に記載の発明とは、 (一致点) 「患者の体外に位置する近位部(10)、探査対象組織近隣域に位置する末端部(12)、及びこれら(10,12)の両端部をつなぐ本体(14)を含有して成る腔内エコグラフィー映像カテーテルであって、該末端部(12)は、超音波透過性のカプセル(26)を含有し、その中に、固定圧電変換器(28)及び同様にカプセル(26)内に収容されたマイクロ駆動装置(32)とそのロータ(34)によって回転する超音波屈折鏡体(30)が収容され、前記鏡体(30)は、連結伝達軸なしで、前記マイクロ駆動装置(32)のロータ(34)の表面に直接置かれ、前記マイクロ駆動装置(32)が静電モータであって、且つ前記静電モータのステータ(36)が前記カプセル(26)内に収容されていることを特徴とする腔内エコグラフィー映像カテーテル」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1> 本願補正発明の「端末部(12)」が「先導ケーブル(24)」を有しているのに対し、刊行物1に記載の「円筒部2」は「先導ケーブル」を有していない点。 <相違点2> 本願補正発明では、「静電モータ」が「可変静電容量及び放射励磁を有する」のに対し、刊行物1に記載のものにはそのような限定が記載されていない点。 上記相違点について検討する。 まず、<相違点1>について、細い管内へのカテーテルの挿入を容易にするために、カテーテルの先端に先導ケーブルを設けておくことは周知であるから(例えば、特開昭62-270140号公報の3頁左上欄下から7行〜右上欄3行、特開平5-76530号公報の【0006】の記載を参照。)、刊行物1に記載のものに上記周知技術を適用し、「円筒部2」の先端に「先導ケーブル」を設けることは、当業者が容易に想到しうることである。 次に、<相違点2>について、刊行物1に記載の「静電モータ」も、ロータ6がステータ10に対して相対位置を変えるのに応じて両者の間の静電容量が当然に変化するものであり(可変静電容量)、また、ロータ6の回転用電極8が放射状に延出するように形成されており、「可変静電容量及び放射励磁を有する静電モータ」であると容易にみることができるから、相違点2は当業者が容易に想到しうることである。 また、仮に、本願補正発明における「静電モータ」を、本件出願の第6図や第7図に示されるようなロータの外周方向にステータを配置する構造を有するものに限定解釈したとしても、かかる幾何学的構造を有する静電モータは周知であるから(例えば、特開平2-207214号公報、特開平3-22885号公報、特開平4-255475号公報を参照。)、刊行物1に記載の「静電モータ」を前記第6図や第7図に示される幾何学的構造を有するようなものとすることも当業者が容易になし得ることである。 よって、補正事項aによる補正後の請求項1に係る本願補正発明は、刊行物1に記載の発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 (3)補正事項bの補正の適否 補正事項bにおいて、補正前の請求項1の「超音波透明カプセル(26)を包含し」を「超音波透過性のカプセル(26)を含有し」とした補正は、「明りょうでない記載の釈明」に該当し、補正前の請求項1の「先導ケーブル(24)を含み」の後に「前記マイクロ駆動装置(32)が電磁モータであって」を追加する補正、及び、補正前の請求項1の「且つ前記マイクロ駆動体装置」を「且つ前記静電モータ」とする補正は、「特許請求の範囲の限縮」に該当すると一応は認められる。 しかしながら、その結果として、補正事項bによる補正後の請求項2に係る発明は、「前記マイクロ駆動装置(32)が電磁モータであって、且つ前記静電モータのステータ(36)」との構成を含むものになるところ、「電磁モータ」と「静電モータ」の両者を含む態様のものは、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されておらず、新規事項の追加に当たり、特許法第17条の2第3項の規定に違反する。 さらに、前記「前記マイクロ駆動装置(32)が電磁モータであって、且つ前記静電モータのステータ(36)」に係る部分の構成を理解することができず、補正後の請求項2に係る発明を明確に把握することができないから、特許法第36条6項2号の規定に違反し、補正事項bによる補正後の請求項2に係る発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 (4)補正事項cの補正の適否 補正前の請求項4に係る発明は、補正前の請求項2及び3に記載の「マイクロ駆動装置(32)」が『静電モータ』であるものについて、当該モータの「外径」及び「厚さ」に関し数値範囲を限定するものであったのに対し、補正後の請求項3は、補正後の請求項1及び2を引用し、その請求項1は「マイクロ駆動装置(32)」が『静電モータ』であるものの、請求項2は『電磁モータ』に関連するものである。 そうすると、補正事項cは、補正前には「マイクロ駆動装置(32)」が『静電モータ』であるものを発明の範囲としていたものを、補正後には『静電モータ』であるもののみならず『電磁モータ』に関連するものをも発明の範囲に含めようとするものであるから、かかる補正が「特許請求の範囲の限縮」に該当しないことは明らかであり、しかも、上記補正事項a及びbと整合させるためにした補正、すなわち、「明りょうでない記載の釈明」に該当しないことも明らかである。 そして、補正事項cが「請求項の削除」や「誤記の訂正」に該当しないことも明らかであるから、補正事項cは、特許法17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。 (5)むすび 以上のとおり、補正事項a及びbは、補正後の発明が、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反し、また、補正事項bは、特許法17条の2第3項(新規事項追加禁止)にも違反し、補正事項cは、特許法17条の2第4項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。 したがって、上記補正事項a〜cを含む平成15年4月16日付けの手続補正は、特許法159条1項で準用する同法53条1項の規定により、一体として却下されるべきでものある。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 3.本願発明について (1)本願発明の認定 平成15年4月16日付けの手続補正は却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年10月30日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「患者の体外に位置する近位部(10)、探査対象組織近隣域に位置する末端部(12)、及びこれら(10,12)の両端部をつなぐ本体(14)を含有して成る腔内エコグラフィー映像カテーテルであって、該末端部(12)は、超音波透明カプセル(26)を包含し、その中に、固定圧電変換器(28)及び同様にカプセル(26)内に収容されたマイクロ駆動装置(32)とそのロータ(34)によって回転する超音波屈折鏡体(30)が収容され、前記鏡体(30)は、連結伝達軸なしで、前記マイクロ駆動装置(32)のロータ(34)の表面に直接置かれ、前記端末部(12)は先導ケーブル(24)を含み、且つ前記マイクロ駆動体装置のステータ(36)が前記カプセル(26)内に収容されていることを特徴とする腔内エコグラフィー映像カテーテル。」 (2)刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項は、「2.(2-2)」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、前記「2.(2-1)」で認定した本願補正発明において、「超音波透過性のカプセル(26)を含有し」とあるのを同等の意味である「超音波透明カプセル(26)を包含し」との記載に戻し、「マイクロ駆動装置(32)」が「可変静電容量及び放射励磁を有する静電モータ」と限定していたのを単なる「マイクロ駆動体装置」に上位概念化するものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(2-3)」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載の発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができず、本願のその余の請求項に係る発明についての検討・判断を示すまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-03-01 |
結審通知日 | 2005-03-02 |
審決日 | 2005-03-17 |
出願番号 | 特願平8-523311 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 右▲高▼ 孝幸 |
特許庁審判長 |
渡部 利行 |
特許庁審判官 |
長井 真一 菊井 広行 |
発明の名称 | 腔内エコグラフィー映像カテーテル |
復代理人 | 荒井 鐘司 |