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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B42D
管理番号 1122382
審判番号 不服2003-9821  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-09-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-30 
確定日 2005-08-25 
事件の表示 平成 5年特許願第 52738号「印刷物およびカード」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 9月20日出願公開、特開平 6-262888〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成5年3月12日の出願であって、平成15年4月21日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年5月30日付けで本件審判請求がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成17年3月25日付けで拒絶の理由を通知したところ、請求人は同年5月30日付けで意見書及び手続補正書を提出した。
したがって、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年5月30日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項2】に記載されたとおりの次のものと認める。
「クレジットカード等のカードにおいて、
カード本体毎に互いに異なった固有の情報である個人情報を記録した白色光再生可能で再生時に目視による真偽判定が可能なリップマンタイプのマルチドット・ホログラムからなる偽造防止マークを備え、前記マルチドット・ホログラムは、3次元画像情報を有する微小なドット状の要素ホログラムが複数形成されており、コンピュータのデータを直接記録してなることを特徴とするカード。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
当審における拒絶の理由に引用した特開平2-308193号公報(以下「引用例1」という。)には、次のア〜エの記載が図示とともにある。
ア.「身分証明用ポートレートにおいて、ポートレートが肖像写真と三次元物体の組合せを記録したリップマンホログラムであることを特徴とする身分証明用ポートレート。」(1頁左下欄5〜8行)
イ.「本発明は身分証明書の偽造を防止するために用いられる身分証明用ポートレートに関するものである。」(1頁左下欄18行〜右下欄1行)
ウ.「従来の写真印画を用いる身分証明用ポートレートでは、写真印画の作成が極めて一般的な技術であるため、写真印画を貼り替え、割印を模造することで身分証明用ポートレートの偽造が容易に行なえるという問題がある。」(1頁右下欄6〜10行)
エ.「身分証明用ポートレートにおいて、写真印画のかわりに肖像写真と三次元物体の組合せを記録したリップマンホログラムを用いることで高い偽造防止効果を見出した。」(2頁左上欄13〜17行)

2.引用例1記載の発明の認定
引用例1は直接的には「身分証明用ポートレート」について記載した文献であるが、記載イにあるとおり、そのポートレートは身分証明書に貼付等されることにより使用されるものである。
したがって引用例1からは、「身分証明用ポートレート」の発明だけでなくそれを備えた身分証明書の発明も把握することができ、それは次のとおりのものである。
「肖像写真と三次元物体の組合せを記録したリップマンホログラムを身分証明用ポートレートとして備えた身分証明書。」(以下「引用発明1」という。)

3.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用発明1の「身分証明書」は通常カードであるから、本願発明の「クレジットカード等のカード」に相当する。仮に、「クレジットカード等のカード」が本願明細書に例示された「クレジットカード,プリペイドカード等のカード」(段落【0002】)に限定されるとしても、そのようなカードにポートレートを貼付等することは周知であるから、せいぜい設計事項程度の軽微な相違でしかない。
引用発明1の「肖像写真と三次元物体の組合せを記録したリップマンホログラム」は、「カード本体毎に互いに異なった固有の情報である個人情報を記録した白色光再生可能で再生時に目視による真偽判定が可能なリップマンタイプの」ホログラムであり、記載ウ,エからみて「偽造防止マーク」でもある。
したがって、本願発明と引用発明1とは、
「クレジットカード等のカードにおいて、
カード本体毎に互いに異なった固有の情報である個人情報を記録した白色光再生可能で再生時に目視による真偽判定が可能なリップマンタイプのホログラムからなる偽造防止マークを備えたカード。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点〉偽造防止マークにつき、本願発明では「3次元画像情報を有する微小なドット状の要素ホログラムが複数形成されており、コンピュータのデータを直接記録してなる」「マルチドット・ホログラム」とされているのに対し、引用発明1では「肖像写真と三次元物体の組合せを記録したリップマンホログラム」である点。

4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
当審における拒絶の理由に引用した特開平5-11675号公報(以下「引用例2」という。)には、【図3】(A)〜(C)として、本願の【図4】〜【図6】と実質同一の図面(符番は異なる)が描かれているとともに、
オ.「現在、3次元画像処理技術は幅広く用いられているが、コンピュータで処理、生成した3次元物体画像を立体的に表示できるハードコピーとして、ホログラフィック・ステレオグラム(HS)は極めて優れたものである。HSは、物体を様々な角度からみた平面画像を一枚のホログラムに合成するものであり、架空の物体の立体的な記録、表示に適している。」(段落【0002】)
カ.「HSには種々の方式のものが提案されているが、例えば、マルチプレックス・ホログラム方式では、上下方向の視差情報を記録することができず、かつ、円筒型,半円筒型で、観察に際して再生装置を必要とする等の難点がある。このため、最近、上下方向の視差情報を含み、かつ、平面型のホログラムを、1ステップで合成することのできるリップマンタイプのHSが開発された。」(段落【0003】)
キ.「かかるHSについて図3(A)〜(C)を参照して説明すると、後述する原理で作成された3次元情報を有する画像パターンを、液晶パネル11に表示し、その透過光をレンズ12によりホログラム面に集光して反対方向からの参照光との干渉縞パターンを記録する。そして、ホログラムフィルム13を縦、横方向に僅かずつ移動させて順次露光を行い、ホログラムフィルム13の全面を露光する。」(段落【0004】)
ク.「液晶パネル11に表示する原画パターンは、図3(B)に示すように、遠近法的な投影変換によって作成する。投影の中心点は、そのパターンに露光するホログラムの面上の点であり、図3(A)に示す光学系におけるレンズ12の口径と焦点距離により計算する光線の範囲が決まる。一般のコンピュータ・グラフィックスの手法と異なるのは、投影の中心点と視点が異なるため、隠面消去の処理は図3(B)において右側を手前として行う。これは、物体14から反射する光線の中、ホログラム面上のある一点を通過する光線の方向と強度を計算するものである。」(段落【0005】)
ケ.「HSの記録においては、原画パターン計算の際と同じ向きに光線が集光され、リップマンホログラムとして記録される。このようにして記録されたHSを再生すると、図3(C)に示すようにホログラム面上の各点からの光線が正しく再生され、立体像を観察することができる。」(段落【0006】)
との各記載があり、これら記載と本願明細書の段落【0021】〜【0025】の記載もほとんど同じである。とりわけ、記載オに「コンピュータで処理、生成した3次元物体画像を立体的に表示できるハードコピー」とある以上、ホログラムはコンピュータのデータを直接記録することにより作成されるものと認める。また記載キに「3次元情報を有する画像パターン」及び「ホログラムフィルム13を縦、横方向に僅かずつ移動させて順次露光を行い、ホログラムフィルム13の全面を露光する。」とあること、並びに上記記載及び図面と本願明細書及び図面の類似性から、引用例2記載のホログラムがリップマンタイプのマルチドット・ホログラムであること、及び3次元画像情報を有する微小なドット状の要素ホログラムが複数形成したものであることも明らかである。
すなわち、引用例2には、3次元画像情報を有する微小なドット状の要素ホログラムが複数形成されており、コンピュータのデータを直接記録してなるリップマンタイプのマルチドット・ホログラムが記載されていると認めることができる。
本願明細書の【請求項3】には「前記固有の情報としては、カード本体の使用者を識別するための氏名、番号、顔写真、指紋等の個人情報を記録することを特徴とする請求項2に記載のカード。」と記載があるほか、(段落【0018】)にも「個人情報としては、図示のような番号(会員番号等)、顔写真の他、氏名、指紋等の個別に識別できる情報であれば何でもよい。」との記載があり、これらに記載の「顔写真」と引用発明1の「ポートレート」に相違があると認めることはできず、さらに顔写真(ポートレート)を「3次元画像情報を有する微小なドット状の要素ホログラムが複数形成されており、コンピュータのデータを直接記録してなるリップマンタイプのマルチドット・ホログラム」とするに当たり、何らかの創意工夫が必要である旨の記載は、本願明細書には一切ないから、顔写真(ポートレート)を「3次元画像情報を有する微小なドット状の要素ホログラムが複数形成されており、コンピュータのデータを直接記録してなるリップマンタイプのマルチドット・ホログラム」とすることに技術的困難性があると解することもできない。
そうである以上、引用発明1のリップマンホログラムを、3次元画像情報を有する微小なドット状の要素ホログラムが複数形成されており、コンピュータのデータを直接記録してなるリップマンタイプのマルチドット・ホログラムとすること、すなわち、相違点に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって容易である。

この点請求人は、「引用発明(審決注;審決の引用発明)は、「肖像写真は二次元の物体であるため…ボケの少ない…再生像が得られる。…三次元の部分は…ボケることが予想されるが、その独特なボケ方により…(第2頁右上欄第5-10行目参照)」との記載がある。この記載から、引用発明1において、二次元画像の肖像写真を用いたのは偶然ではなく、三次元の部分がボケるので、必然的に、二次元画像の肖像写真を用いることが推測できる。すなわち、引用発明は、本願発明とは異なり、必然的に二次元画像の肖像写真を用いるものである。」(平成17年5月30日付け意見書2頁9〜16行)と主張するので検討する。引用例1に請求人がいう記載があることは事実であるが、正確には「肖像写真は二次元の物体であるため、これをホログラム近傍に配して記録することにより、ボケの少ない鮮明な肖像の再生像が得られる。被写体の三次元の部分は、再生条件によりボケることが予想されるが、その独特なボケ方によりホログラムであることが識別可能であるため、身分証明用ポートレートとしての偽造防止効果はいささかも損なわれない。」(2頁右上欄5〜13行)と記載されているのであり、引用例1には「最大の問題はホログラフィの再生像のボケである。すなわちホログラフィでは、光源の大きさ、位置といった再生条件が不十分な場合、ホログラム面から離れた位置の再生像にボケが生じる。これは、いかなる観察条件下でも鮮明な像が要求されるという身分証明用ポートレートにとつて致命的な問題であつた。」(2頁左上欄3〜10行)との記載もあることからすれば、肖像写真をホログラム近傍に配して記録することにより肖像写真のボケを防止し、個人識別に直接影響しない三次元部分にはボケを許容したものであって、ボケがなくともホログラムであることを明確に認識できるものがあれば、それに代えることを妨げるものではない。したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

なお、本願明細書の【請求項3】及び段落【0018】の記載からみて、「カード本体毎に互いに異なった固有の情報である個人情報」は「顔写真」を包含すると解すべきことは上述したとおりであるが、平成17年5月30日付け手続補正において「コンピュータのデータを直接記録してなる」との限定を加えており、【請求項3】及び段落【0018】記載の「顔写真」及び「指紋」はこれに該当しない(【請求項3】及び段落【0018】を補正すべきであったが、補正を怠ったとの趣旨である。)との反論があるかもしれないので、更に検討を加える。
引用発明1はポートレートをリップマンホログラムとすることにより、偽造防止を図った身分証明書であり、ポートレートは身分証明書の固有情報の1つであるが、身分証明書の固有情報はポートレートだけではないことは周知であって(例えば、特開平1-283192号公報に「パスポート所持者固有の証明事項、例えば、顔写真、国籍、生年月日、性別、住所、所属団体名、血液型等が記載されている。」(2頁右上欄17〜20行)とあるとおりである。)、ポートレート以外の固有情報もホログラム化することにより偽造防止効果があることは自明である(前掲特開平1-283192号公報には、ホログラムシート背面に固有情報を形成することで偽造防止を図ることが記載されているが、固有情報自体をホログラム化することが偽造防止上有効であることは、引用例1に接した当業者には自明である。)から、本願発明の「カード本体毎に互いに異なった固有の情報である個人情報」が顔写真以外であるとしても、進歩性を左右しない。

以上のとおり、相違点に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1並びに引用例2記載の発明(及び周知技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-06-21 
結審通知日 2005-06-28 
審決日 2005-07-11 
出願番号 特願平5-52738
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 聡子  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 藤井 靖子
砂川 克
発明の名称 印刷物およびカード  
代理人 中村 誠  
代理人 橋本 良郎  
代理人 村松 貞男  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 河野 哲  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 河野 哲  
代理人 村松 貞男  
代理人 橋本 良郎  
代理人 村松 貞男  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 河野 哲  
代理人 中村 誠  
代理人 橋本 良郎  
代理人 中村 誠  
代理人 橋本 良郎  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  
代理人 村松 貞男  
代理人 鈴江 武彦  

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