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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41J
管理番号 1122832
異議申立番号 異議2003-72087  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-04-04 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-11 
確定日 2005-06-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3378622号「テープ印刷装置」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3378622号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
本件の出願から本決定に至るまでの主な経緯は次のとおりである。
・平成5年9月21日 本件出願(特願平5-259201号)
・平成14年12月6日 特許第3378622号として設定登録(請求項1〜請求項4)
・平成15年8月11日付け 特許異議申立人村田優子より、請求項1〜請求項4に係る発明についての特許に対して特許異議申立
・平成15年12月5日付け 当審にて取消理由通知
・平成16年2月16日付け 特許権者より特許異議意見書及び訂正請求書提出(以下、この訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)
・平成16年10月15日付け 特許異議申立人村田優子宛て審尋
・平成16年11月25日付け 特許異議申立人村田優子より回答書提出

第2 訂正の可否の判断

1.訂正の内容

[訂正事項a]
特許請求の範囲を、本件訂正前の
「【請求項1】入力された文字や記号等のデータに基づいて出力用のドットイメージデータを作成するデータ作成装置と、印字媒体としてのテープが巻装されたテープカセットが着脱可能に装着され、そのテープに前記ドットイメージデータに基づいて文字や記号等を印刷するテーププリンタと、を接続線を介して接続した分離型のテープ印刷装置において、
前記テーププリンタは、前記テープカセットに形成され、巻装されたテープに関する情報を表示するカセット情報表示部を検出するカセット情報検出手段と、該カセット情報検出手段により検出されたカセット情報を、前記接続線を介して前記データ作成装置に送信するカセット情報送信手段と、を備え、
前記データ作成装置は、前記テーププリンタのカセット情報送信手段から、前記接続線を介して送信されたカセット情報を受信するカセット情報受信手段と、該カセット情報受信手段により受信されたカセット情報を視認可能に表示する表示手段とを備え、
前記データ作成装置により出力用のドットイメージデータを作成したときに設定されたカセット情報と、前記テーププリンタのカセット情報検出手段により検出されたカセット情報とが同一であるか否かを照合するカセット情報照合手段を備え、両者が同一でない場合にはその旨を前記表示手段に表示するようにしたことを特徴とするテープ印刷装置。
【請求項2】前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに巻装されたテープの幅に関する情報を表示するものであることを特徴とする請求項1に記載のテープ印刷装置。
【請求項3】前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに巻装されたテープの色に関する情報を表示するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のテープ印刷装置。
【請求項4】 前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに巻装されたテープの種類に関する情報を表示するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のテープ印刷装置。」から
「【請求項1】入力された文字や記号等のデータに基づいて出力用のドットイメージデータを作成するデータ作成装置と、印字媒体としての巻装されたテープが収納されたテープカセットが着脱可能に装着され、そのテープに前記ドットイメージデータに基づいて文字や記号等を印刷するテーププリンタと、を接続線を介して接続した分離型のテープ印刷装置において、
前記テーププリンタは、前記テープカセットに形成され、前記テープカセットに収納された巻装されたテープの幅に関する情報を表示するカセット情報表示部を検出するカセット情報検出手段と、該カセット情報検出手段により検出されたカセット情報を、前記接続線を介して前記データ作成装置に送信するカセット情報送信手段と、を備え、
前記データ作成装置は、前記テーププリンタのカセット情報送信手段から、前記接続線を介して送信されたカセット情報を受信するカセット情報受信手段と、該カセット情報受信手段により受信されたカセット情報を視認可能に表示する表示手段とを備え、
前記データ作成装置により出力用のドットイメージデータを作成したときに設定されたカセット情報と、前記テーププリンタのカセット情報検出手段により検出されたカセット情報とが同一であるか否かを照合するカセット情報照合手段を備え、両者が同一でない場合にはその旨を前記表示手段に表示するようにしたことを特徴とするテープ印刷装置。
【請求項2】前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに収納された巻装されたテープの色に関する情報を表示するものであることを特徴とする請求項1に記載のテープ印刷装置。
【請求項3】前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに収納された巻装されたテープの種類に関する情報を表示するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のテープ印刷装置。」と訂正する。

[訂正事項b-1]
本件訂正前の発明の詳細な説明における【0009】に記載された「印字媒体としてのテープが巻装されたテープカセット」、「巻装されたテープに関する情報」をそれぞれ「印字媒体としての巻装されたテープが収納されたテープカセット」、「前記テープカセットに収納された巻装されたテープの幅に関する情報」と訂正する。

[訂正事項b-2]
本件訂正前の発明の詳細な説明における【0010】に記載された「テープカセットに巻装されたテープの幅に関する情報」を「テープカセットに収納された巻装されたテープの色に関する情報」と訂正する。

[訂正事項b-3]
本件訂正前の発明の詳細な説明における【0011】に記載された「テープカセットに巻装されたテープの色に関する情報」を「テープカセットに収納された巻装されたテープの種類に関する情報」と訂正する。

[訂正事項b-4]
本件訂正前の発明の詳細な説明における【0012】を削除する。

[訂正事項c-1]
本件訂正前の発明の詳細な説明における【0015】に記載された「テーププリンタに装着されたテープカセットのテープに関する情報」、「プリンタに装着されているテープカセットのテープに関する情報」をそれぞれ「テーププリンタに装着されたテープカセットに収納された巻装されたテープの幅に関する情報」、「プリンタに装着されているテープカセットのテープの幅に関する情報」と訂正する。

[訂正事項c-2]
本件訂正前の発明の詳細な説明における【0016】に記載された「このように、プリンタに装着されたテープカセットのテープに関する情報が検出されてデータ作成装置に送信され、データ作成装置に備えた表示手段に表示されるので、別体であるテーププリンタの所へ移動することなく、その表示を介してテープカセットのテープに関する情報をデータ作成装置側で簡単に認識できる。」を「このように、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、プリンタに装着されたテープカセットに収納された巻装されたテープの幅に関する情報を表示し、そのテープの幅に関する情報が検出されてデータ作成装置に送信され、データ作成装置に備えた表示手段に表示されるので、別体であるテーププリンタの所へ移動することなく、その表示を介してテープカセットのテープの幅に関する情報をデータ作成装置側で簡単に認識できる。」と訂正する。

[訂正事項c-3]
本件訂正前の発明の詳細な説明における【0017】に記載された「また、請求項2のテープ印刷装置においては、更に、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに巻装されたテープの幅に関する情報を表示するので、プリンタに装着されているテープカセットのテープの幅に関する情報をデータ作成装置側で認識することができる。」を「また、請求項2のテープ印刷装置においては、更に、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに収納された巻装されたテープの色に関する情報を表示するので、プリンタに装着されているテープカセットのテープの色に関する情報をデータ作成装置側で認識することができる。」と訂正する。

[訂正事項c-4]
本件訂正前の発明の詳細な説明における【0018】に記載された「また、請求項3のテープ印刷装置においては、更に、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに巻装されたテープの色に関する情報を表示するので、プリンタに装着されているテープカセットのテープの色に関する情報をデータ作成装置側で認識することができる。」を「また、請求項3のテープ印刷装置においては、更に、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに収納された巻装されたテープの種類に関する情報を表示するので、プリンタに装着されているテープカセットのテープの種類に関する情報をデータ作成装置側で認識することができる。」と訂正する。

[訂正事項c-5]
本件訂正前の発明の詳細な説明における【0019】を削除する。

[訂正事項d-1]
本件訂正前の発明の詳細な説明における【0077】に記載された「請求項1のテープ印刷装置によれば、テーププリンタは、カセット情報検出手段と、カセット情報送信手段とを備え、データ作成装置は、カセット情報受信手段と、表示手段とを備えたことにより、テーププリンタに装着されたテープカセットのテープに関する情報が検出されてデータ作成装置に送信され、データ作成装置に備えた表示手段に表示されるので、別体であるテーププリンタの所へ移動することなく、その表示を介してテープカセットのテープに関する情報をデータ作成装置側で簡単に認識できる。」を「請求項1のテープ印刷装置によれば、テーププリンタは、カセット情報検出手段と、カセット情報送信手段とを備え、データ作成装置は、カセット情報受信手段と、表示手段とを備えたことにより、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テーププリンタに装着されたテープカセットに収納された巻装されたテープの幅に関する情報を表示し、そのテープの幅に関する情報が検出されてデータ作成装置に送信され、データ作成装置に備えた表示手段に表示されるので、別体であるテーププリンタの所へ移動することなく、その表示を介してテープカセットのテープの幅に関する情報をデータ作成装置側で簡単に認識できる。」と訂正する。

[訂正事項d-2]
本件訂正前の発明の詳細な説明における【0078】に記載された「請求項2のテープ印刷装置によれば、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに巻装されたテープの幅に関する情報を表示するので、別体であるテーププリンタの所へ移動することなく、その表示を介してテープカセットのテープの幅に関する情報をデータ作成装置側で簡単に認識できる。」を「請求項2のテープ印刷装置によれば、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに収納された巻装されたテープの色に関する情報を表示するので、別体であるテーププリンタの所へ移動することなく、その表示を介してテープカセットのテープの色に関する情報をデータ作成装置側で簡単に認識できる。」と訂正する。

[訂正事項d-3]
本件訂正前の発明の詳細な説明における【0079】に記載された「請求項3のテープ印刷装置によれば、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに巻装されたテープの色に関する情報を表示するので、別体であるテーププリンタの所へ移動することなく、その表示を介してテープカセットのテープの色に関する情報をデータ作成装置側で簡単に認識できる。」を「請求項3のテープ印刷装置によれば、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットにに収納された巻装されたテープの種類に関する情報を表示するので、別体であるテーププリンタの所へ移動することなく、その表示を介してテープカセットのテープの種類に関する情報をデータ作成装置側で簡単に認識できる。」と訂正する。

[訂正事項d-4]
本件訂正前の発明の詳細な説明における【0080】を削除する。

2.訂正目的の適否、新規事項追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項aのうち、本件訂正前の「テープが巻装されたテープカセット」、「巻装されたテープ」をそれぞれ「巻装されたテープが収納されたテープカセット」、「テープカセットに収納された巻装されたテープ」と訂正する訂正事項は、巻装されたテープがテープカセットに収納されていることを明りょうにするものであり、明りょうでない記載の釈明に該当する。また、訂正事項aのうち、本件訂正前の請求項1を削除するとともに、本件訂正前の請求項2を本件訂正前の請求項1を引用することなく独立形式に記載した請求項1とし、本件訂正前の請求項1又は請求項2を引用して記載した本件訂正前の請求項3を本件訂正後の請求項1を引用して記載した請求項2とし、本件訂正前の請求項1乃至請求項3を引用して記載した本件訂正前の請求項4を本件訂正後の請求項1又は請求項2を引用して記載した請求項3とする訂正事項は、特許請求の範囲の減縮に該当する。
訂正事項b〜訂正事項dに係る訂正は、訂正事項aに係る特許請求の範囲の訂正と整合させるため、発明の詳細な説明を訂正するものであり、明りようでない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項a〜訂正事項dは、それぞれ願書に添付した明細書又は図面(以下、「特許明細書」という。)における「印刷機構PMに着脱自在に矩形状のテープ収納カセットCSが装着されており、このテープ収納カセットCSには、透明なラミネートフィルム8が巻装されたテープスプール9と、インクリボン10が巻装されたリボン供給スプール11と、このインクリボン10を巻取る巻取りスプール12と、ラミネートフィルム8と同一幅を有する両面テープ13が剥離紙を外側にして巻装された供給スプール14と、これらラミネートフィルム8と両面テープ13とを接合させる接合ローラ15とが回転自在に設けられている。」(【0027】)等の記載に基づくものであるから、特許明細書に記載した事項の範囲内でなされた訂正である。
そして、訂正事項a〜訂正事項dが、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものでないことは明らかである。

3.訂正の可否の判断の結論
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、本件訂正を認める。

第3 特許異議申立についての判断

1.本件発明の認定
上記したとおり、本件訂正が認められるから、本件の請求項1〜請求項3に係る発明(以下、請求項番号に従い「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明3」という。)は、訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜請求項3に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】入力された文字や記号等のデータに基づいて出力用のドットイメージデータを作成するデータ作成装置と、印字媒体としての巻装されたテープが収納されたテープカセットが着脱可能に装着され、そのテープに前記ドットイメージデータに基づいて文字や記号等を印刷するテーププリンタと、を接続線を介して接続した分離型のテープ印刷装置において、
前記テーププリンタは、前記テープカセットに形成され、前記テープカセットに収納された巻装されたテープの幅に関する情報を表示するカセット情報表示部を検出するカセット情報検出手段と、該カセット情報検出手段により検出されたカセット情報を、前記接続線を介して前記データ作成装置に送信するカセット情報送信手段と、を備え、
前記データ作成装置は、前記テーププリンタのカセット情報送信手段から、前記接続線を介して送信されたカセット情報を受信するカセット情報受信手段と、該カセット情報受信手段により受信されたカセット情報を視認可能に表示する表示手段とを備え、
前記データ作成装置により出力用のドットイメージデータを作成したときに設定されたカセット情報と、前記テーププリンタのカセット情報検出手段により検出されたカセット情報とが同一であるか否かを照合するカセット情報照合手段を備え、両者が同一でない場合にはその旨を前記表示手段に表示するようにしたことを特徴とするテープ印刷装置。
【請求項2】前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに収納された巻装されたテープの色に関する情報を表示するものであることを特徴とする請求項1に記載のテープ印刷装置。
【請求項3】前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに収納された巻装されたテープの種類に関する情報を表示するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のテープ印刷装置。」

なお、本件発明2は、本件発明1のテープの幅に関する情報に代えて、テープの色に関する情報をカセット情報表示部に表示するものと、同じく本件発明3は、本件発明1のテープの幅に関する情報又は本件発明2のテープの色に関する情報に代えて、テープの種類に関する情報をカセット情報表示部に表示するものと解される余地がある。
しかしながら、本件訂正後の請求項2及び請求項3には、請求項1に記載したテープの幅に代えて、テープの色またはテープの種類に関する情報をカセット情報表示部に表示するといった記載はなく、しかも平成16年2月16日付け特許異議意見書には「訂正した本件特許発明の請求項2の発明及び請求項3の発明は、それぞれ前記訂正した請求項1の発明の構成を必須条件としてさらに限定された発明である」(4.(4)最終段落)と記載されていることに鑑みると、本件発明2はテープの幅及び色に関する情報をカセット情報表示部に表示するものであり、本件発明3はテープの幅及び種類に関する情報又はテープの幅、色及び種類に関する情報をカセット情報表示部に表示するもの、と解すべきである。

2.引用刊行物記載の発明
平成15年12月5日付けの取消理由に引用された特開平3-67824号公報(特許異議申立人村田優子が提出した甲第1号証。以下、「引用例」という。)には次の事項が記載又は図示されている。なお、大きい「つ」または「ツ」で表記されていても、小さい「っ」または「ッ」にすべきところは、そのように記載した。

(ア)第1ページ右下欄1行〜同欄5行
「本発明は、ホストコンピュータで作成した文書を通信回線を介して印刷装置で印刷する文書印刷方式に係り、特に、種類(用紙サイズ、紙質)の異なる用紙を混在して印刷するときの文書印刷方式に関する。」

(イ)第1ページ右下欄6行〜同欄16行
「〔従来の技術〕パーソナルコンピュータやワードプロセッサ等文字や図形の文書を作成するホストコンピュータで文書を大量に印刷する場合、用紙が用紙格納部に格納されここから用紙を自動給紙できる印刷装置を使用すれば操作者が1枚1枚用紙をセットすることなく印刷できるため印刷効率が良い。さらには、用紙サイズの異なる複数の用紙を格納できる印刷装置ならば、操作者は用紙サイズが替わる毎に用紙をセットし直さなくてすむため、印刷効率はさらに良い。」

(ウ)第2ページ左上欄13行〜同ページ右上欄14行
「〔発明が解決しようとする課題〕一方、印刷用紙には、普通紙(白紙、未使用紙)とは紙質の異なる特殊紙(オフセット印刷済の用紙、トレース紙、色紙、OHPシート、裏面印刷済の用紙等)が使用される機会が多くなってきた。前記した従来装置は、複数の用紙格納部を持ち、各格納部には用紙サイズを設定する設定部を持ち、セットされている用紙格納部のうち印刷に必要なサイズの用紙を格納している用紙格納部を自動的に選択して印刷する。しかし、これらの設定部には紙質の情報を持たない。このため、同一サイズで紙質の異なる用紙を交代で印刷するときは、たとえ普通紙と特殊紙を同時に格納できたとしても同一サイズであるため、どちらの紙質の用紙が選択され印刷されるかわからない。このため操作者は普通紙から特殊紙へ、または特殊紙から普通紙へ、用紙をセットし直す必要があった。また、普通紙と特殊紙を混在して使用する操作者にとっては、印刷する際わざわざ印刷装置の所に行き、格納されている用紙の紙質を確認してから印刷要求しなければならないという煩わしさがあった。」

(エ)第2ページ右下欄11行〜第3ページ左上欄7行
「本発明の一実施例を第1図〜第3図により説明する。第1図は、複数台(図ではn台)のワードプロセッサ(以下、WPと略す)と1台の印刷装置が通信回線で接続される印刷システムを示したものである。WP1は、WP1全体の制御を行うWP本体2と、WP本体2の制御により表示を行う表示画面3と、操作者からのキー入力を受けてこの入力データをWP本体2へ送るキーボード4とからなる、文書作成装置である。WP本体2は、その内部に、印刷しようとする用紙の種類を指定する用紙種類指定データ31(データ0、データ1、データ2)を持ち、用紙サイズ(A3、B4、A4、B5)と紙質(普通紙、特殊紙)を指定することができ、割り付けを表1のようにする。データ2が紙質を指定するデータで、レベル”0”で普通紙を、レベル”1”で特殊紙を指定する。」

(オ)第3ページ左上欄下から2行〜同ページ右上欄11行
「印刷装置5は、印刷装置5全体を制御する印刷装置本体6と、用紙格納部である用紙カセット(用紙カセット上7a、用紙カセット下7b)からなり、WP1で作成した文書を印刷する。印刷装置本体6は、用紙カセットを2個まで差し込むことができ、上側に差し込まれた方を用紙カセット上7a、下側に差し込まれた方を用紙カセット下7bとする。用紙カセット上7a及び用紙カセット下7bは、側面に、格納されている用紙の種類を設定する用紙種類設定ピン32(ピンA、ピンB、ピンC)を持ち、格納している用紙サイズ(A3、B4、A4、B5)と紙質(普通紙、特殊紙)をピンの有無によって設定することができ、割り付けを表2のようにする。印刷装置本体6は、その内部に、上記のピンの有無を検知する検知部を持ち、用紙カセット上7a及び用紙カセット下7bに格納されている用紙の種類を知ることができる。」

(カ)第3ページ左下欄下から8行〜同ページ右下欄末行
「WP1は、印刷を行おうとするときは、印刷装置5に差し込まれている用紙カセット上7a及び用紙カセット下7bの用紙種類を知るために、まず、印刷装置5へ用紙種類設定ピン報知要求21を送信する(ステップ101)。印刷装置5は、これを受信して(201)、用紙カセット7a、7bの用紙種類設定ピン32を検知する(202)。そしてこれをWP1へ用紙種類設定ピン報知24として送信する(203)。WP1はこれを受信して、用紙種類指定データ31と用紙種類設定ピン32との一致を確認する(102)。これが不一致ならば、表示画面3に、用紙種類の不一致を表示し、必要な用紙をセットする要求を表示する(103)。・・・用紙種類指定データ31と用紙種類設定ピン32の一致が確認(102)できたならば、WP1は印刷装置5へ印刷データ22を送信し、・・・印刷装置5は・・・1頁分の印刷データを受け取り、文字展開を行い、一致した用紙カセット(7aあるいは7b)を選択して、印刷を実行する(204)。」

(キ)第4ページ右上欄2行〜同欄11行
「〔発明の効果〕本発明によれば、用紙サイズと紙質との両者を確認して用紙を選択する方式としたことにより、操作者は格納されている用紙の紙質を確認する必要はなく、また意図しなかった用紙に印刷することがなくなり用紙を無駄にせずに印刷することができる。また、たとえ同一サイズの普通紙と特殊紙を同時に格納しても、操作者が普通紙から特殊紙へまたは特殊紙から普通紙へと用紙をセットし直すことなく抑制することができる。」

(ク)第1図
第1図からは、用紙種類設定ピン報知が、ワードプロセッサと印刷装置を接続する通信回線を介して、印刷装置からワードプロセッサに送信されることが看取できる。

まず、ワードプロセッサ(WP1)は文字や図形の文書を作成するもの(上記(イ)参照。)であり、当該文書は操作者からのキー入力によって作成されるのであるから、操作者からキー入力された入力データは当然に文字や図形の入力データである。
また、上記(カ)の「WP1は印刷装置5へ印刷データ22を送信し、・・・印刷装置5は・・・1頁分の印刷データを受け取り、文字展開を行い、・・・印刷を実行する」との記載や、上記(ア)の「本発明は、ホストコンピュータで作成した文書を通信回線を介して印刷装置で印刷する文書印刷方式・・・に関する。」との記載からみて、ワードプロセッサ(WP1)が印刷装置へ送信する「印刷データ」は文書を印刷するためのデータであるから、当該「印刷データ」は、操作者から入力された文字や図形の入力データに基づいて作成されたものということができる。
そして、用紙カセットは印刷装置に差し込まれていること、及び用紙補給のためには差し込まれている用紙カセットを取り外して給紙する方が自然であることからみて、用紙カセットは、印刷装置に着脱可能に装着されていると解される。
さらにワードプロセッサは、その内部に用紙種類指定データを有しているが、用紙サイズ及び紙質は作成する文書によって変わり得るものであるから、用紙種類指定データは文書を作成したとき、すなわち印刷データ作成したときに設定されなければならない。
それ故、これら(ア)〜(ク)の記載及び図示を含む引用例の全記載及び図示からみて、引用例には、以下の発明が記載されているものと認める(以下、「引用発明」という。)。

「操作者から入力された文字や図形の入力データに基づいて印刷データを作成する、表示画面を有するワードプロセッサと、
用紙が格納された用紙カセットが着脱可能に装着され、その用紙に前記印刷データを文字展開して文字や図形を印刷する印刷装置と、
を通信回線を介して接続した印刷システムにおいて、
前記印刷装置は、格納された用紙の用紙サイズ及び紙質を設定する用紙種類設定ピンが設けられた複数の用紙カセットと、前記用紙種類設定ピンを検知する検知部とを有しており、該検知部により検知された用紙サイズ及び紙質を用紙種類設定ピン報知として前記通信回線を介して前記ワードプロセッサに送信し、
前記ワードプロセッサは、その内部に印刷しようとする用紙の用紙サイズ及び紙質を指定する用紙種類指定データを有し、当該用紙種類指定データは前記印刷データを作成したときに設定されており、前記用紙種類設定ピン報知を受信して、前記用紙種類指定データと前記用紙種類設定ピンとの一致を確認し、これが不一致ならば前記表示画面に用紙サイズ及び紙質の不一致を表示する印刷システム。」

3.本件発明1と引用発明の一致点及び相違点の認定
本件発明1と引用発明とを対比する。

(1)引用発明における「操作者から入力された文字や図形の入力データ」、「通信回線」は、それぞれ本件発明1における「入力された文字や記号等のデータ」、「接続線」に相当する。

(2)引用発明における「印刷データ」と本件発明1における「出力用のドットイメージデータ」とは、ともに接続線を介して出力される「出力用のデータ」という点で一致する。それ故、引用発明における「ワードプロセッサ」は、入力された文字や記号等のデータに基づいて出力用のデータを作成するという限りにおいて本件発明1における「データ作成装置」に相当する。また、引用発明におけるワードプロセッサの「表示画面」は、本件発明1におけるデータ作成装置の「表示手段」に相当する。

(3)引用発明における「用紙」と本件発明1における「テープ」とはともに「印字媒体」であるという点で一致するから、引用発明における「用紙カセット」と本件発明1における「テープカセット」はともに「印字媒体が収納されたカセット」であるという点で一致する。そして、引用発明における「印刷装置」と本件発明1における「テーププリンタ」とは、「文字や記号等を印刷するプリンタ」であるという点で一致する。

(4)引用発明における「用紙種類設定ピン」は、用紙が格納された用紙カセットに設けられており、これが指定する「用紙サイズ及び紙質」は、用紙カセットに格納された用紙に関する情報の一種であり、本件発明における「カセット情報」に相当する。それ故、引用発明における「用紙種類設定ピン」は、印字媒体が収納されたカセットに形成され、前記カセットに収納された印字媒体に関する情報を表示する限りにおいて、本件発明1における「カセット情報表示部」に相当する。そうすると、引用発明における「用紙種類設定ピンを検知する検知部」は、本件発明1における「カセット情報検出手段」に相当する。
また、引用発明では、用紙種類設定ピンを検知する検知部により検知された用紙サイズ及び紙質を用紙種類設定ピン報知としてワードプロセッサに送信している。この「用紙サイズ及び紙質」は、前述のとおり本件発明1における「カセット情報」に相当するから、引用発明における印刷装置は、本件発明1における「カセット情報を接続線を介して送信するカセット情報送信手段」を当然に備えている。

(5)引用発明におけるワードプロセッサは、通信回線を介して送信される用紙サイズ及び紙質を受信しているのであるから、本件発明1における「接続線を介して送信されたカセット情報を受信するカセット情報受信手段」を当然に備えている。

(6)引用発明におけるワードプロセッサは、印刷装置から送信された用紙の用紙サイズ及び紙質を受信し、ワードプロセッサ内部の用紙種類指定データと用紙種類設定ピンとの一致を確認し、これが不一致ならばワードプロセッサの表示画面に用紙サイズ及び紙質の不一致を表示するものである。
ここで用紙種類指定データと用紙種類設定ピンとの一致を確認するということは、ワードプロセッサ内部に設定された用紙サイズ及び紙質と、印刷装置の、用紙種類設定ピンを検知する検知部により検出された用紙サイズ及び紙質とが同一であるか否かを確認することであるから、引用発明は、本件発明1における「カセット情報照合手段」を当然に備えている。

(7)引用発明における「印刷システム」は、ワードプロセッサと印刷装置とを通信回線を介して接続してなるものであるが、これを接続線を介して接続した分離型の印刷装置と認識することも可能であるから、引用発明における「印刷システム」は本件発明1における「分離型の印刷装置」に相当する。

したがって、両者は、
「入力された文字や記号等のデータに基づいて出力用のデータを作成するデータ作成装置と、印字媒体が収納されたカセットが着脱可能に装着され、その印字媒体に前記出力用のデータに基づいて文字や記号等を印刷するプリンタと、を接続線を介して接続した分離型の印刷装置において、
前記プリンタは、前記カセットに形成され、前記カセットに収納された記録媒体に関する情報を表示するカセット情報表示部を検出するカセット情報検出手段と、該カセット情報検出手段により検出されたカセット情報を、前記接続線を介して前記データ作成装置に送信するカセット情報送信手段と、を備え、
前記データ作成装置は、前記プリンタのカセット情報送信手段から、前記接続線を介して送信されたカセット情報を受信するカセット情報受信手段と、表示手段とを備え、
前記データ作成装置により出力用のデータを作成したときに設定されたカセット情報と、前記プリンタのカセット情報検出手段により検出されたカセット情報とが同一であるか否かを照合するカセット情報照合手段を備え、両者が同一でない場合にはその旨を前記表示手段に表示するようにした印刷装置。」
において一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
データ作成装置と接続線を介して接続される、印字媒体に出力用のデータに基づいて文字や記号等を印刷するプリンタとして、本件発明1では、印字媒体としての巻装されたテープが収納されたテープカセットが着脱可能に装着されたテーププリンタであるのに対して、引用発明では、用紙が格納された用紙カセットが着脱可能に装着された印刷装置である点。

[相違点2]
本件発明1では、検出するカセット情報がテープの幅であるのに対して、引用発明では、用紙サイズ及び紙質を検出している点。

[相違点3]
本件発明1では、データ作成装置から出力されるデータがドットイメージデータであるのに対して、引用発明では、ワードプロセッサから出力される印刷データのデータ形式が明らかでない点。なお、本件発明1では、出力用のドットイメージデータを作成したときにカセット情報を設定しているのに対して、引用発明では、印刷データを作成したときに用紙種類指定データを設定している点においても相違するが、当該相違は、出力されるデータがドットイメージデータであるか、あるいは印刷データであるかの違いによるものであり、相違点として別個に検討することはしない。

[相違点4]
本件発明1では、カセット情報受信手段により受信されたカセット情報を、データ作成装置に備えられた表示手段に視認可能に表示しているのに対して、引用発明では、用紙サイズ及び紙質をワードプロセッサが受信しているものの、これらをワードプロセッサに備えられた表示画面に表示していない点。

4.相違点についての判断及び本件発明1の進歩性の判断

(1)相違点1について
まず、引用発明における課題、すなわち印刷装置に装着されたカセット内の用紙の紙質を確認する煩わしさや、意図しない用紙に印刷することによる用紙の無駄といった課題(上記(ウ)及び(キ))からみて、引用発明の印刷システムは、用紙サイズ及び紙質だけではなく、色や種類など異なる特性を備えた印字媒体を混在して印刷する場合にも適用可能であることは、当業者であれば容易に想到できることである。
そして、データ作成装置とテーププリンタとを接続線を介して接続した分離型のテープ印刷装置は、実願平3-101943号(実開平5-43240号)のCD-ROM(段落番号0006〜0010、図1)、カシオ計算機株式会社製「NAME LAND 漢字ラベルライター KL-1000」(平成15年8月11日付け特許異議申立書に添付した参考資料「NAME LAND 漢字ラベルライター KL-1000 取扱説明書(保証書付)」第84ページ〜第86ページ参照。)等にみられるように、本件出願前に周知な技術であるし、テーププリンタでは、通常、テープの幅、色または種類の異なるテープが巻装されて収納された複数のテープカセットの中から使用目的に応じたものを選択して着脱可能に装着されることも、実願平3-69501号(実開平5-18853号)のCD-ROM(段落番号0017、図2)、特開平4-246583号公報(段落番号0010、0014、図1)等にみられるように、当業者において自明なことである。
それ故、引用発明における印刷装置に代えて、印字媒体としての巻装されたテープが収納されたテープカセットが着脱可能に装着されたテーププリンタを使用することは、当業者であれば容易に想到できることである。

(2)相違点2について
前述したとおり、引用発明の印刷システムのうち、ワードプロセッサと通信回線を介して接続される印刷装置に代えて、印字媒体としての巻装されたテープが収納されたテープカセットが着脱可能に装着されたテーププリンタを使用することは想到容易である。そして、テープカセットに巻装されて収納されたテープに印刷するとなれば、用紙サイズのうち印字文字や図形の長さに応じて決められるテープの長さを検出する必要はなく、テープの幅のみを検出すれば足りることは明らかである。また、カセット情報として何を検出するかは、混在しての使用が予定されるテープの幅、色または種類といった特性に応じて決められる事項である。
それ故、引用発明における印刷装置に代えるにあたり、検出するカセット情報をテープの幅とすることは設計事項である。

(3)相違点3について
まず、プリンタは文字や図形をドットで表現するものであるから、印字媒体に印刷するためには、入力された文字や記号等のデータに基づいてドットイメージデータを作成しなければならない。分離型のテープ印刷装置であれば、データ作成装置またはテーププリンタのいずれかにおいてドットイメージデータが作成されなければならないが、必ずしもテーププリンタで作成する必要はなく、データ作成装置においてドットイメージデータを作成し、作成されたドットイメージデータをテーププリンタに送信してテープに印刷させても良い。つまり、データ作成装置またはテーププリンタのいずれにおいてドットイメージデータを作成するかは、データ作成装置とテーププリンタそれぞれの処理能力や接続線の送信スピード等を考慮した上で決定される事項である。
引用発明では、ワードプロセッサから送信された印刷データを印刷装置が文字展開していることからみると、印刷装置においてドットイメージデータを作成しているものと解されるが、引用発明における印刷装置に代えてテーププリンタを使用する場合には、テーププリンタの処理能力はワードプロセッサの処理能力よりも劣ることが一般的であるから、ワードプロセッサが操作者から入力された文字や図形の入力データに基づいて出力用のドットイメージデータを作成し、当該作成されたドットイメージデータを通信回線を介してテーププリンタに送信させるよう構成することは、当業者であれば容易に想到できることである。

(4)相違点4について
引用発明では、印刷装置に格納された用紙の用紙サイズ及び紙質と、印刷しようとする用紙の用紙サイズ及び紙質とが不一致ならばその旨をワードプロセッサに備えられた表示画面に表示するものであるが、不一致である旨の表示だけでなく、印刷装置に格納された用紙の用紙サイズ及び紙質が何であるかを操作者が把握できるならば、印刷装置に格納された用紙サイズや紙質を予め確認することができるので不一致の回数の削減にもつながるし、たとえ不一致となった場合であっても、格納された用紙サイズ及び紙質で印刷しても良いのであれば、ワードプロセッサ内部に設定した用紙サイズ及び紙質を変更して印刷したり、格納された用紙サイズ及び紙質で印刷する予定であった別の文字や図形を先に印刷するなどの対処も可能となる等、より利便性の向上した印刷システムとなることは当業者にとって容易に想到できることである。
そして、引用発明におけるワードプロセッサは、印刷装置に格納された用紙の用紙サイズ及び紙質を通信回線を介して受信しているのであるから、当該情報を表示画面に表示することは、当業者であれば容易に想到できることといわざるをえない。
実際、プリンタに格納されている印字媒体のサイズや幅を表示画面に表示させることは、実願平3-69501号(実開平5-18853号)のCD-ROM(段落番号0028、図7)、特開平2-201631号公報(第2ページ右上欄5行〜同欄末行、第3ページ左上欄3行〜同ページ右上欄2行)等にみられるように、本件出願前に周知な技術である。

(5)本件発明1の進歩性の判断
相違点1〜相違点4に係る本件発明1の構成は設計事項であるか、当業者にとって想到容易である。さらに、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本件発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

5.本件発明2と引用発明の一致点及び相違点の認定
本件発明2は、本件発明1におけるカセット情報として、「テープの幅」に加えて「テープの色」を追加するものである。
それ故、本件発明2と引用発明とを対比すると、上記3.において本件発明1と引用発明とが一致すると認定した点で本件発明2と引用発明は一致し、以下の点で相違する。

[相違点5]
データ作成装置と接続線を介して接続される、印字媒体に出力用のデータに基づいて文字や記号等を印刷するプリンタとして、本件発明2では、印字媒体としての巻装されたテープが収納されたテープカセットが着脱可能に装着されたテーププリンタであるのに対して、引用発明では、用紙が格納された用紙カセットが着脱可能に装着された印刷装置である点。

[相違点6]
本件発明2では、検出するカセット情報がテープの幅及び色であるのに対して、引用発明では、用紙サイズ及び紙質を検出している点。

[相違点7]
本件発明2では、データ作成装置から出力されるデータがドットイメージデータであるのに対して、引用発明では、ワードプロセッサから出力される印刷データのデータ形式が明らかでない点。なお、本件発明2では、出力用のドットイメージデータを作成したときにカセット情報を設定しているのに対して、引用発明では、印刷データを作成したときに用紙種類指定データを設定している点においても相違するが、当該相違は、出力されるデータがドットイメージデータであるか、あるいは印刷データであるかの違いによるものであり、改めて相違点として検討することはしない。

[相違点8]
本件発明2では、カセット情報受信手段により受信されたカセット情報を、データ作成装置に備えられた表示手段に視認可能に表示しているのに対して、引用発明では、用紙サイズ及び紙質をワードプロセッサが受信しているものの、これらをワードプロセッサに備えられた表示画面に表示していない点。

6.相違点についての判断及び本件発明2の進歩性の判断
(1)相違点5、相違点7及び相違点8について
相違点5、相違点7及び相違点8は、本件発明1と引用発明との相違点1、相違点3及び相違点4と同一である。そして、相違点1、相違点3及び相違点4に係る本件発明1の構成を採用することが当業者にとって想到容易であることは4.(1)、(3)及び(4)で述べたとおりであるから、同様の理由により、相違点5、相違点7及び相違点8に係る本件発明2の構成を採用することは、当業者であれば容易に想到できることである。

(2)相違点6について
検出するカセット情報をテープの幅とすることが設計事項であること、そしてテーププリンタでは、通常、テープの幅、色または種類の異なるテープが使用目的に応じて選択されるのであるから、カセット情報として何を検出するかは混在しての使用が予定されるテープの幅、色または種類といった特性に応じて決められること、は上記4.(1)及び(2)において述べたとおりである。
それ故、検出するカセット情報をテープの幅及び色とすることは、引用発明における印刷装置に代えてテーププリンタを使用するに際し、異なる幅及び色のテープへの印刷を予定する場合に必要となる設計事項である。

(3)本件発明2の進歩性の判断
相違点5〜相違点8に係る本件発明2の構成は設計事項であるか、当業者にとって想到容易である。さらに、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本件発明2は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

7.本件発明3と引用発明の一致点及び相違点の認定
本件発明3は、本件発明1におけるカセット情報として、「テープの幅」に加えて「テープの種類」または「テープの色及び種類」を追加するものである。
それ故、本件発明3と引用発明とを対比すると、上記3.において本件発明1と引用発明とが一致すると認定した点で本件発明3と引用発明は一致し、以下の点で相違する。

[相違点9]
データ作成装置と接続線を介して接続される、印字媒体に出力用のデータに基づいて文字や記号等を印刷するプリンタとして、本件発明3では、印字媒体としての巻装されたテープが収納されたテープカセットが着脱可能に装着されたテーププリンタであるのに対して、引用発明では、用紙が格納された用紙カセットが着脱可能に装着された印刷装置である点。

[相違点10]
本件発明3では、検出するカセット情報がテープの幅及び種類又はテープの幅、色及び種類であるのに対して、引用発明では、用紙サイズ及び紙質を検出している点。

[相違点11]
本件発明3では、データ作成装置から出力されるデータがドットイメージデータであるのに対して、引用発明では、ワードプロセッサから出力される印刷データのデータ形式が明らかでない点。なお、本件発明3では、出力用のドットイメージデータを作成したときにカセット情報を設定しているのに対して、引用発明では、印刷データを作成したときに用紙種類指定データを設定している点においても相違するが、当該相違は、出力されるデータがドットイメージデータであるか、あるいは印刷データであるかの違いによるものであり、改めて相違点として検討することはしない。

[相違点12]
本件発明3では、カセット情報受信手段により受信されたカセット情報を、データ作成装置に備えられた表示手段に視認可能に表示しているのに対して、引用発明では、用紙サイズ及び紙質をワードプロセッサが受信しているものの、これらをワードプロセッサに備えられた表示画面に表示していない点。

8.相違点についての判断及び本件発明3の進歩性の判断
(1)相違点9、相違点11及び相違点12について
相違点9、相違点11及び相違点12は、本件発明1と引用発明との相違点1、相違点3及び相違点4と同一である。そして、相違点1、相違点3及び相違点4に係る本件発明1の構成を採用することが当業者にとって想到容易であることは4.(1)、(3)及び(4)で述べたとおりであるから、同様の理由により、相違点9、相違点11及び相違点12に係る本件発明3の構成を採用することは、当業者であれば容易に想到できることである。

(2)相違点10について
引用発明における用紙の「紙質」は、本件発明3におけるテープの「種類」に相当するから、相違点10に係る本件発明3と引用発明との実質的な相違は、カセット情報として種類を検出する他に、本件発明ではテープの幅を検出しているのに対して、引用発明では用紙サイズを検出している点にあるが、検出するカセット情報をテープの幅とすることが設計事項であることは4.(2)において述べたとおりである。
それ故、検出するカセット情報をテープの幅及び種類とすることは、引用発明における印刷装置に代えてテーププリンタを使用するにあたり、異なる幅及び種類のテープへの印刷を予定する場合に必要となる設計事項である。

(3)本件発明3の進歩性の判断
相違点9〜相違点12に係る本件発明3の構成は設計事項であるか、当業者にとって想到容易である。さらに、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本件発明3は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

9.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1〜本件発明3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1〜本件発明3についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
テープ印刷装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】入力された文字や記号等のデータに基づいて出力用のドットイメージデータを作成するデータ作成装置と、印字媒体としての巻装されたテープが収納されたテープカセットが着脱可能に装着され、そのテープに前記ドットイメージデータに基づいて文字や記号等を印刷するテーププリンタと、を接続線を介して接続した分離型のテープ印刷装置において、
前記テーププリンタは、前記テープカセットに形成され、前記テープカセットに収納された巻装されたテープの幅に関する情報を表示するカセット情報表示部を検出するカセット情報検出手段と、該カセット情報検出手段により検出されたカセット情報を、前記接続線を介して前記データ作成装置に送信するカセット情報送信手段と、を備え、
前記データ作成装置は、前記テーププリンタのカセット情報送信手段から、前記接続線を介して送信されたカセット情報を受信するカセット情報受信手段と、該カセット情報受信手段により受信されたカセット情報を視認可能に表示する表示手段とを備え、
前記データ作成装置により出力用のドットイメージデータを作成したときに設定されたカセット情報と、前記テーププリンタのカセット情報検出手段により検出されたカセット情報とが同一であるか否かを照合するカセット情報照合手段を備え、両者が同一でない場合にはその旨を前記表示手段に表示するようにしたことを特徴とするテープ印刷装置。
【請求項2】前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに収納された巻装されたテープの色に関する情報を表示するものであることを特徴とする請求項1に記載のテープ印刷装置。
【請求項3】前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに収納された巻装されたテープの種類に関する情報を表示するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のテープ印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、データ作成装置と、これに接続線を介して接続された別体のテーププリンタとからなるテープ印刷装置に関し、特にテーププリンタに装着されたテープカセットに関する情報をデータ作成装置に転送して表示するようにしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、本願出願人は、実開平1-85050号公報に記載のように、キーボードやディスプレイや印字機構を備え、印字媒体としてのテープ(例えば、10ミリ、24ミリのテープ幅)に文字や記号を印刷できるテープ印刷装置を実用化するとともに、このテープ印刷装置に各種の編集機能を付加したものを提案した。このテープ印刷装置は、ファイル名などをラベルとして印刷しファイルの背表紙に貼着するテープを作成するのに好適のものである。
【0003】
即ち、この従来のテープ印刷装置は、キーボードやディスプレイを備える一方、サーマルヘッドやテープを収納したテープカセットを有する印字機構を内蔵した一体型であり、文書データを入力するとともに、この文書の印字に最適のテープを収納したテープカセットを装着し、文書データを印刷処理するようになっている。
【0004】
ところで、本発明の発明者は、キーボードや大型のディスプレイを備え、キーボードから入力した文字や記号のコードデータだけでなく、イメージデータなどをディスプレイを介して処理可能にしたデータ作成装置と、これに接続線を介して接続されたプリンタとからなる分離型のテープ印刷装置に着想した。
【0005】
しかも、貼着スペースの大きさや貼着するファイルの色に応じて印刷用テープを選択できるように、印刷用テープとして、テープ幅を「6mm」、「9mm」、「12mm」・・・「24mm」とする一方、各テープ幅を有するテープの色を「赤」、「青」、「黄」・・・「白」とする複数種類のテープカセットを準備するようにした。
【0006】
これにより、オペレータは、データ作成装置で所望の文書を入力する一方、所望のテープ幅や色のテープを収納したテープカセットをプリンタにセットし、そのテープ幅と色のテープに文書を印刷することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、本発明の発明者が着想したプリンタ分離型のテープ印刷装置においては、印刷用テープを収納したテープカセットとして多種類存在することから、文書データをプリント出力する前に、プリンタの所へ移動して、プリンタに装着されているテープカセットの種類を確認する必要があること、確認しない場合に、装着されているテープカセットのテープのテープ幅や色が所望のものと異なるときには、その印刷用テープが無駄になること、などの問題がある。
【0008】
本発明の目的は、プリンタに装着されているテープカセットに関するテープ幅や色などの情報を、本体側のデータ作成装置で容易に認識し得るようなテープ印刷装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1のテープ印刷装置は、入力された文字や記号等のデータに基づいて出力用のドットイメージデータを作成するデータ作成装置と、印字媒体としての巻装されたテープが収納されたテープカセットが着脱可能に装着され、そのテープに前記ドットイメージデータに基づいて文字や記号等を印刷するテーププリンタと、を接続線を介して接続した分離型のテープ印刷装置において、前記テーププリンタは、前記テープカセットに形成され、前記テープカセットに収納された巻装されたテープの幅に関する情報を表示するカセット情報表示部を検出するカセット情報検出手段と、該カセット情報検出手段により検出されたカセット情報を、前記接続線を介して前記データ作成装置に送信するカセット情報送信手段と、を備え、前記データ作成装置は、前記テーププリンタのカセット情報送信手段から、前記接続線を介して送信されたカセット情報を受信するカセット情報受信手段と、該カセット情報受信手段により受信されたカセット情報を視認可能に表示する表示手段とを備え前記データ作成装置により出力用のドットイメージデータを作成したときに設定されたカセット情報と、前記テーププリンタのカセット情報検出手段により検出されたカセット情報とが同一であるか否かを照合するカセット情報照合手段を備え、両者が同一でない場合にはその旨を前記表示手段に表示するようにしたものである。
【0010】
また、請求項2のテープ印刷装置は、請求項1に記載のテープ印刷装置と同様の構成を備え、更に、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに収納された巻装されたテープの色に関する情報を表示するようにしたものである。
【0011】
また、請求項3のテープ印刷装置は、請求項1又は請求項2に記載のテープ印刷装置と同様の構成を備え、更に、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに収納された巻装されたテープの種類に関する情報を表示するようにしたものである。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【作用】
請求項1のテープ印刷装置においては、カセット情報検出手段は、テーププリンタに装着されたテープカセットに収納された巻装されたテープの幅に関する情報を検出するので、カセット情報送信手段は、そのカセット情報検出手段から出力されたカセット情報を接続線を介してデータ作成装置に転送する。一方、データ作成装置に設けられたカセット情報受信手段は、カセット情報送信手段から送信されたカセット情報を受信し、表示手段は、このカセット情報を視認可能に表示する。その結果、そのカセット情報が表示手段に表示されることから、プリンタに装着されているテープカセットのテープの幅に関する情報をデータ作成装置側で認識することができる。
【0016】
このように、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、プリンタに装着されたテープカセットに収納された巻装されたテープの幅に関する情報を表示し、そのテープの幅に関する情報が検出されてデータ作成装置に送信され、データ作成装置に備えた表示手段に表示されるので、別体であるテーププリンタの所へ移動することなく、その表示を介してテープカセットのテープの幅に関する情報をデータ作成装置側で簡単に認識できる。更に、この表示されたカセット情報により、所望のテープか否かを確認でき、テープの浪費を防止できる上、的確なテープを用いて正確にプリント出力することができる。
更に、前記カセット情報照合手段により、前記データ作成装置により出力用のドットイメージデータを作成したときに設定されたカセット情報と、前記テーププリンタのカセット情報検出手段により検出されたカセット情報とが同一であるか否かが照合され、両者が同一でない場合にはその旨が前記表示手段に表示されるので、所望のテープでない場合にはテープの浪費を防止することができる。
【0017】
また、請求項2のテープ印刷装置においては、更に、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに収納された巻装されたテープの色に関する情報を表示するので、プリンタに装着されているテープカセットのテープの色に関する情報をデータ作成装置側で認識することができる。
【0018】
また、請求項3のテープ印刷装置においては、更に、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに収納された巻装されたテープの種類に関する情報を表示するので、プリンタに装着されているテープカセットのテープの種類に関する情報をデータ作成装置側で認識することができる。
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面に基いて説明する。
【0024】
本実施例は、アルファベット文字や記号などの多数のキャラクタを入力して印刷用テープに印刷可能な英語専用のテープ印刷装置に本発明を適用した場合のものである。
【0025】
図2に示すように、テープ印刷装置1は、文字や記号などを複数行分表示可能なCRTディスプレイ3とキーボード4と座標入力装置(以下、マウスという)39と制御本体部5とを備えたデータ作成装置2と、このデータ作成装置2の制御本体部5に接続線Lで接続されたプリンタ6とから構成されている。ここで、CRTディスプレイ3とキーボード4とマウス39とは、接続線を介して制御本体部5に夫々接続されている。
【0026】
キーボード4には、アルファベット文字や数字や記号を入力する為の文字キー、スペースキー、リターンキー、CRTディスプレイ3上のカーソルを上下左右方向へ移動させるカーソル移動キー、文字や記号からなる文書のデータを印刷する印刷キーなどが設けられている。
【0027】
次に、図3に基いて、プリンタ6に内蔵された印刷機構PMについて簡単に説明すると、印刷機構PMに着脱自在に矩形状のテープ収納カセットCSが装着されており、このテープ収納カセットCSには、透明なラミネートフィルム8が巻装されたテープスプール9と、インクリボン10が巻装されたリボン供給スプール11と、このインクリボン10を巻取る巻取りスプール12と、ラミネートフィルム8と同一幅を有する両面テープ13が剥離紙を外側にして巻装された供給スプール14と、これらラミネートフィルム8と両面テープ13とを接合させる接合ローラ15とが回転自在に設けられている。
【0028】
前記ラミネートフィルム8とインクリボン10とが重なる位置には、サーマルヘッド16が立設され、これらラミネートフィルム8とインクリボン10とをサーマルヘッド16に押圧するプラテンローラ17と、ラミネートフィルム8と両面テープ13とを接合ローラ15に押圧して印刷用テープ25を作成する送りローラ18とは、プリンタ6のフレームに回動自在に枢着された支持体19に回転可能に枢支されている。このサーマルヘッド16には、128個の発熱素子からなる発熱素子群が上下方向に列設されている。
【0029】
従って、テープ送りモータ50(図4参照)の所定回転方向への駆動により接合ローラ15と巻取りスプール12とが所定回転方向に夫々同期して駆動されながら発熱素子群に通電されたとき、ラミネートフィルム8上には複数のドット列により文字が印刷され、しかもラミネートフィルム8は両面テープ13を接合した状態で印刷用テープ25としてテープ送り方向Aにテープ送りされ、図2に示すように、プリンタ6の外部に送り出される。ここで、図示はしていないが、この印刷機構PMには、可動刃と固定刃とを有し、可動刃をカッター駆動モータ65(図4参照)により揺動させて、可動刃と固定刃との協働により、印刷後の印刷用テープ25を切断するテープ切断機構が設けられている。尚、印刷機構PMの詳細については、特開平2-106555号公報を参照。
【0030】
ここで、前記テープ収納カセットCSに収納された印刷用テープ25として、前記ラミネートフィルム8と両面テープ13とを接合したテープ25、このラミネートフィルム8を省略しかつ剥離紙を外側に貼着した片面テープに印刷するノンラミネートテープ25、感熱用テープ25、インスタントレタリング用テープなど4種類のテープが準備されている。また、これらのテープ25の各々には、テープ幅が6mm、9mm、12mm、18mm、24mmの5種類のテープ25が準備されている。更に、各テープ幅毎の印刷用テープ25の各テープ色毎に、「赤」、「青」、「黄」、「緑」・・・など約13色のテープ色が準備されている。
【0031】
そして、これらテープ収納カセットCSの底部壁には、これら5種類のテープ幅の何れかを指定する為に3つの突出爪を組合せた第1突出片20、これら13色のテープ色の何れかを指定する為に4つの突出爪を組合せた第2突出片21、これら4種類のテープ種類の何れかを指定する為に2つの突出爪を組合せた第3突出片22が夫々設けられている。そして、プリンタ6のフレームには、第1突出片20の突出爪の状態からテープ幅を検出するテープ幅センサ60(図4参照)、第2突出片21の突出爪の状態からテープ色を検出するテープ色センサ61(図4参照)、第3突出片22の突出爪の状態からテープ種類を検出する種類センサ62(図4参照)が夫々取付けられている。
【0032】
更に、プリンタ6のフレームには、これら多種類のテープ収納カセットCSが択一的に装着されたことを検出する為に、カセットスイッチ63(図4参照)が取付けられている。
【0033】
次に、テープ印刷装置1の制御系は、図4のブロック図に示すように構成されている。
【0034】
先ず、データ作成装置2の制御系について説明すると、キーボード(K/B)4と、CRTディスプレイ(CRTD)3に表示データを出力する為の表示用RAMを有するCRTディスプレイコントローラ(CRTC)30と、制御本体部5に設けられたフロッピーディスクドライブ(FDD)31の為のフロッピーディスクドライブコントローラ(FDC)32と、座標入力装置(マウス)39とは、制御本体部5に設けられた制御装置C1の入出力インターフェース(入出力I/F)36に夫々接続されている。
【0035】
制御装置C1は、CPU33と、このCPU33にデータバスなどのバス38を介して接続された入出力インターフェース36と、通信用インターフェース(I/F)37と、ハードディスクを装着したハードディスクドライブ装置(HDD)34の為のハードディスクドライブコントローラ(HDC)35と、RAM40とから構成されている。
【0036】
前記ハードディスクには、多数のキャラクタの各々に関して、表示の為のドットパターンデータがコードデータに対応させて格納された表示パターンデータメモリ、キャラクタを印刷する為に多数のキャラクタの各々に関して、キャラクタの輪郭線を規定する輪郭線データ(アウトラインデータ)が書体(ゴシック系書体、明朝系書体など)毎に分類されコードデータに対応させて格納されたフォントメモリ、キーボード4から入力された文字や数字や記号などのキャラクタのコードデータに対応させてCRTディスプレイコントローラ30を制御する表示駆動制御プログラム、RAM40のテキストメモリ41の各コードデータに対応するアウトラインデータからドットパターンデータに変換処理してプリンタ6に出力するドットイメージ展開制御プログラム、本願特有の後述の印刷データ作成制御の制御プログラムなどが格納されている。
【0037】
前記RAM40のテキストメモリ41には、キーボード4から入力された文書のデータが格納される。ドットイメージメモリ42には、テキストメモリ41に格納された文書データについてイメージ展開された文字や記号のプリント出力用ドットイメージデータが格納される。ドキュメント情報メモリ43には、印刷する文書名のデータ、設定されたテープ幅やテープ色やテープ種類などのカセット情報のデータが格納される。ステータス情報メモリ44には、プリンタ6から転送されたプリンタ6のステータス情報(複数項目からなる状態を示す情報)が格納される。エラーデータメモリ45には、データ作成時や印刷処理時に発生した各種のエラーデータが格納される。
【0038】
次に、プリンタ6の制御系について説明すると、テープ幅センサ60と、テープ色センサ61と、種類センサ62と、カセットスイッチ63と、テープエンドセンサ64と、サーマルヘッド16を駆動する為の駆動回路52と、テープ送りモータ50を駆動する為の駆動回路51と、カッター駆動モータ65を駆動する駆動回路53とは制御装置C2の入出力インターフェース(入出力I/F)57に夫々接続されている。ここで、テープエンドセンサ64は、テープエンド状態のときには、「H」レベルのテープエンド検出信号ESを出力し、またカセットスイッチ63はテープ収納カセットCSが装着されているときには、「H」レベルのカセット検出信号SSを出力する。
【0039】
制御装置C2は、CPU54と、このCPU54にデータバスなどのバス59を介して接続された入出力インターフェース57と、通信用インターフェース(I/F)58と、ROM55と、RAM56から構成されている。
【0040】
前記ROM55には、両通信用インターフェース37・58を介してデータ作成装置2との間でデータの送受信を行なう為の転送制御プログラム、データ作成装置2から送信されたドットイメージデータに基いて、サーマルヘッド16やテープ送りモータ50を駆動する印刷駆動制御プログラムが格納されている。
【0041】
前記RAM56には、通信用インターフェース58を介して、データ作成装置2から送信されたドットイメージデータを受信して格納する受信バッファ、発生したエラーのステータス情報を格納するエラーデータメモリ、装着されているテープ収納カセットCSに関するカセット情報を格納するカセット情報メモリ、受信したドットイメージデータを印刷出力形態に展開する印字バッファ、CPU54で演算した演算結果を一時的に格納する為の各種のメモリなどが設けられている。
【0042】
次に、データ作成装置2の制御装置C1で行なわれる印刷データ作成制御のルーチンについて、図5〜図8のフローチャートに基いて説明する。尚、図中符号Si(i=10、11、12・・・・)は各ステップである。
【0043】
印刷データ作成制御について説明すると、電源が投入されるとこの制御が開始され、文字キーや記号キーや数字キーなどの印字可能なキーが操作されたときには(S10・S11:Yes)、入力されたコードデータを文書データとしてRAM40のテキストメモリ41に格納する文書データ入力処理が実行されるとともに、そのコードデータに対応するキャラクタをCRTディスプレイ3に表示する表示処理が実行され(S12)、S10に戻る。ところで、前記文書データ入力・表示処理制御においては、指定された文字サイズや印刷用テープ25のテープ幅のデータなどがドキュメント情報メモリ43に格納される。
【0044】
次に、印刷キーが操作されたときには(S10:Yes、S11:No、S13:Yes)、印刷指示されている文書名のデータがドキュメント情報メモリ43に格納され、テキストメモリ41に格納された文書データに基いて、各文字や記号や数字のコードデータに対応するアウトラインデータが読出されてプリント出力用のドットイメージデータに展開処理され、ドットイメージメモリ44に格納される。
【0045】
そして、ドットイメージメモリ44に格納された印字データをプリンタ6に転送するデータ転送処理制御(図6参照)が実行される(S15)。
【0046】
この制御が開始されると、先ずプリンタ状態検出処理(図7参照)が実行される(S20)。
【0047】
この制御が開始されると、先ずプリンタ6の状態つまりステータス情報の転送を要求するコマンドSCMをプリンタ6に転送する転送処理が実行され、同時に、データ受信の為の所定の待機時間がソフトタイマーなどにセットされる(S30)。即ち、このS30においては、このステータス情報要求コマンドSCMが通信用インターフェース37と接続線Lを介してプリンタ6の通信用インターフェース58に転送される。そして、通信用インターフェース37を介してプリンタ6からステータス情報SIが受信されないときに(S31:No)、データ受信の待機時間がタイムアウトしていないときには(S32:No)、S31・S32が繰り返して実行される。
【0048】
そして、プリンタ6からステータス情報SIが受信されたときには(S31:Yes)、この受信したステータス情報SIが解析される(S33)。ここで、この受信されたステータス情報SIとしては、特にプリンタ6のハードウェア情報や通信エラーに関する所定の複数項目からなる固定長のステータス情報である。また、このハードウェア情報には、ハードウェアエラーのデータ、印刷機構PMに装着されているテープ収納カセットCSのテープ幅データ、テープ色データ、テープ種類データなどが含まれている。
【0049】
次に、この解析結果により、通信エラーやハードウェアエラーがないときには(S34:No)、ドキュメント情報メモリ43に格納されたドキュメント情報とその受信したハードウェア情報とに基いて、文書データの作成時に設定されたテープ幅やテープ色やテープ種類からなるカセット情報が、プリンタ6の印刷機構PMに装着されているテープ収納カセットCSのカセット情報と同一か否かが照合され、同一のカセット情報のときには(S36:Yes)、この制御を終了して、データ転送処理制御のS21にリターンする。
【0050】
しかし、ステータス情報要求コマンドSCMを転送してから所定の待機時間がタイムアウトしたとき(S32:Yes)、またステータス情報SIに通信エラーやハードウェアエラーが検出されたとき(S34:Yes)、更に設定したカセット情報と受信したカセット情報とが異なるときには(S36:No)、これら発生したエラーの種類に応じたエラーデータがRAM40のエラーデータメモリ45に格納され(S37)、この制御を終了して、前記S21にリターンする。
【0051】
次に、データ転送処理制御において、カセット情報をCRTディスプレイ3に表示させる表示指令がメインルーチンに対して出力される(S21)。その結果、前記受信したステータス情報SIに基いて、印刷機構PMに装着されているテープ収納カセットCSのカセット情報であるテープ幅、テープ色、テープ種類などがCRTディスプレイ3に夫々表示される。
【0052】
次に、エラーデータメモリ45のデータに基いて、エラーデータが格納されているときには(S22:Yes)、そのエラーデータがメインルーチンに指令され、この制御を終了して、メインルーチンにリターンする。その結果、メインルーチンにより、そのエラーデータに対応するエラー情報がCRTディスプレイ3に表示される。
【0053】
一方、エラーデータメモリ45にエラーデータが格納されていないときに(S22:No)、ドットイメージメモリ42にプリント出力用ドットイメージデータが格納されてるときには(S23:Yes)、印刷データ送信処理制御(図8参照)が実行される(S24)。ここで、ドットイメージメモリ42には、そのドットイメージデータに先行して、サーマルヘッド16に印加する電圧レベルの設定や印刷用テープ25の自動カットを設定するなどの各種のモード設定データや、印刷用テープ25をテープ送りするなどの制御コマンドが含まれている。
【0054】
この制御が開始されたときに、ドットイメージメモリ42のドットイメージデータについて送信が完了していないときには(S40:No)、そのドットイメージデータが送信可能なデータ量だけプリンタ6に送信される(S41)。そして、そのデータ送信に際して、何れのエラー情報をプリンタ6から受信しないときには(S42:No)、S40〜S42が繰り返して実行される。そして、何らかのエラー情報を受信したときには(S42:Yes)、そのエラー情報を表示するように指令され(S43)、この制御及びデータ転送処理制御を終了して、印刷データ作成制御のS10にリターンする。また、ドットイメージメモリ42のドットイメージデータについて送信が完了したときには(S40:Yes)、同様に前記S10にリターンする。
【0055】
次に、プリンタ6の制御装置C2で行なわれる印刷制御のルーチンについて、図9〜図14のフローチャートに基いて説明する。
【0056】
プリンタ6に電源が投入されるとこの制御が開始され、先ずハードウェア検査処理制御(図10参照)が実行される。
【0057】
この制御が開始されると、先ずRAMなどのメモリチップに関する一般的なチェック処理が実行される(S60)。そして、チェック処理の結果、何らエラーが検出されないときには(S61:No)、前記テープ切断機構の作動の良否を検出する為に、切断駆動処理が実行される(S62)。即ち、この切断駆動処理においては、カッター駆動モータ65を駆動させて可動刃が1往復駆動される。そして、このカッター駆動モータ65に連結させたエンコーダからのエンコーダ信号の有無に基いて、カッターが正常に作動しているときには(S63:No)、テープ送りモータ50を数パルス分だけ正転駆動し且つ逆転駆動したときのテープ送りモータ50の電流値に基いて、テープ送りが正常か否かチェック処理され(S64)、この電流値が正常であって、テープジャムが起こっていないときには(S65:No)、テープエンドセンサ64からのテープエンド検出信号ESが読込まれ、「L」レベルであって、テープエンドでないときには(S66:No)、この制御を終了して、印刷制御のS51にリターンする。
【0058】
一方、ハードウェア検査の結果、メモリチップにエラーを検出したとき(S61:Yes)、或いはテープ切断機構にカッタジャムを検出したとき(S63:Yes)、或いはテープジャムを検出したとき(S65:Yes)、或いはテープエンドを検出したときには(S66:Yes)、これら検出したハードウェアエラーに対応するエラーステータス情報がRAM56のエラーデータメモリに格納され且つデータ作成装置2に転送され(S67)、この制御を終了して、前記S51にリターンする。
【0059】
次に、印刷制御において、カセット情報検出処理制御(図11参照)が実行される(S51)。
【0060】
この制御が開始されると、先ずカセットスイッチ63からのカセット検出信号SSが「H」レベルであって、テープ収納カセットCSが装着されているときには(S70:Yes)、センサ60〜62からのセンサ信号に基いて、テープ幅とテープ色とテープ種類などからなるカセット情報が読出され(S71)、このカセット情報がRAM56のカセット情報メモリに格納され(S72)、この制御を終了して、印刷制御のS52にリターンする。
【0061】
次に、印刷制御において、印刷データ受信処理制御(図12参照)が実行される(S52)。
【0062】
この制御が開始されたときに、1バイト毎の受信データを通信用インターフェース58が受信しているときには(S75:Yes)、その受信データが通信用インターフェース58から取り込まれる(S76)。そして、このデータの受信時に受信エラーが発生していないときには(S77:No)、その受信データが印字データとしてRAM56の受信バッファに格納される(S78)。次に、その受信データが改ブロックコード(頁替えの為のコード)又はデータ終了コード(テキストエンドコード)でないときには(S80)、S75に戻る。即ち、S80でNoと判定されたときには、S78において、受信バッファには、1バイトのドットイメージデータ或いはモード設定データ或いは制御コマンドが格納されている。
【0063】
一方、データの受信時に受信エラーが発生したときには(S77:Yes)、この受信エラーに関するエラーステータス情報がエラーデータメモリに格納されるとともに、データ作成装置2に転送処理され(S79)、S80以降が実行される。そして、格納した受信データが改ブロックコード又はデータ終了コードのとき(S80:Yes)、或いはデータ受信していないときには(S75:No)、この制御を終了して、印刷制御のS53にリターンする。
【0064】
次に、印刷制御において、コマンド解析処理制御(図13参照)が実行される(S53)。
【0065】
この制御が開始されたときに、受信バッファに受信データが格納されているときには(S85:Yes)、その受信データについて解析され、データ作成装置2から転送されたステータス要求コマンドSCMのときには(S86:Yes)、プリンタ6に関するハードウェア情報や通信エラーに関する所定の複数項目からなる固定長のステータス情報SIが作成され、このステータス情報SIが通信用インターフェース58と接続線Lを介してデータ作成装置2に転送され(S87)、S85に戻る。ここで、そのハードウェア情報には、ハードウェアエラーのデータ、印刷機構PMに装着されているテープ収納カセットCSのテープ幅データ、テープ色データ、テープ種類データなどのカセット情報が含まれている。
【0066】
次に、前記受信データを解析した結果、印字データに先行して受信した制御コマンドに含まれるモードセットコマンドのときには(S85:Yes、S86:No、S88:Yes)、サーマルヘッド16に印加する電圧レベルの設定や印刷用テープ25の自動カットを設定するなどのセットコマンドに対応するモード設定が実行され(S89)、S85に戻る。一方、受信バッファの受信データが上述したステータス要求コマンドSCMやモードセットコマンド以外のときつまり印字データのときには(S85:Yes、S86・S88:No)、直ぐにS85に戻る。そして、受信バッファの全ての受信データについてコマンド解析したときには(S85:No)、この制御を終了して、印刷制御のS54にリターンする。
【0067】
次に、印刷制御において、印刷処理制御(図14参照)が実行される(S54)。
【0068】
この制御が開始されたときに、カセットスイッチ63から「L」レベルのカセット検出信号SSが出力されており、テープ収納カセットCSが装着されていないときには(S91:No)、テープ収納カセットCSが装着されていない旨のエラーを含むステータス情報がデータ作成装置2に転送され(S109)、この制御を終了して、印刷制御のS50にリターンする。
【0069】
しかし、カセットスイッチ63から「H」レベルのカセット検出信号SSが出力されており、テープ収納カセットCSが装着されているときには(S91:Yes)、受信バッファ内に格納されている文書データの先頭アドレスがデータポインタPにセットされ(S92)、このデータポインタPで指示するアドレスに印字データが格納されているときには(S93:Yes)、そのデータポインタPで指示するアドレスのデータが読込まれる(S94)。そして、このデータが改ブロックコードやデータ終了コードでないときには(S95・S96:No)、そのデータつまりドットイメージデータがRAM56の印字バッファに展開され(S98)、データポインタPが1つインクリメントされ(S99)、S93に戻る。
【0070】
次に、データポインタPで指示するアドレスのデータが改ブロックコードのときには(S94、S95:Yes)、印字バッファに展開されているドットイメージデータが印刷機構PMにより印刷用テープ25に印刷処理される(S100)。次に、テープ送りモータ50を数パルス分だけ正転駆動し且つ逆転駆動したときのテープ送りモータ50の電流値に基いて、テープ送りが正常か否かチェック処理され(S101)、この電流値が正常であって、テープジャムが起こっていないときには(S102:No)、テープエンドセンサ64からのテープエンド検出信号ESが読込まれ、「L」レベルであって、テープエンドでないときには(S103:No)、セット状態のモードが検索され、自動カットモードが設定されていないときには(S104:No)、印刷用テープ25が切断されないでS93に戻る。
【0071】
しかし、自動カットモードが設定されているときには(S104:Yes)、カッター駆動モータ65が駆動され、テープ切断機構により印刷用テープ25が切断処理される(S105)。次に、テープ切断機構が正常に作動しているか否かをチェックする為に、カッター駆動モータ65を駆動させて可動刃を1往復駆動され、エンコーダからのエンコーダ信号の有無に基いて、カッターが正常に作動しているときには(S107:No)、ステータス情報が有れば、データ作成装置2に転送され(S108)、S99を経てS93に戻る。
【0072】
次に、データポインタPで指示するアドレスのデータがデータ終了コードのときには(S94、S95:No、S96:Yes)、印字バッファに展開されているドットイメージデータが印刷機構PMにより印刷用テープ25に印刷処理される(S97)。その後、S105〜S108・S99が実行されてS93に戻る。そして、受信バッファのデータ印刷の完了時には(S93:No)、この制御を終了して、印刷制御のS50にリターンする。
【0073】
ところで、テープジャムが検出されたとき(S102:Yes)、テープエンド検出信号ESが「H」レベルでテープエンドのとき(S103:Yes)、またカッタージャム状態のときには(S107:Yes)、これらのエラーを含むエラーステータス情報がデータ作成装置2に転送され(S109)、この印刷処理制御を終了して、前記S50にリターンする。その結果、印刷処理が中止されるとともに、CRTディスプレイ3にはエラーメッセージが表示される。
【0074】
以上説明したように、プリンタ6の印刷機構PMに装着されたテープ収納カセットCSの印刷用テープ25について、テープ幅とテープ色と種類を含むカセット情報が検出されて、両通信用インターフェース37・58を介してデータ作成装置2に転送され、データ作成装置2のCRTディスプレイ3に表示されるので、別体であるプリンタ6の所へ移動することなく、その表示を介してテープ収納カセットCSの印刷用テープ25のテープ幅とテープ色と種類とをデータ作成装置2側で簡単に認識できる。更に、この表示されたカセット情報により、所望の印刷用テープ25か否かを確認でき、印刷用テープ25の浪費を防止できる上、的確な印刷用テープ25を用いて正確にプリント出力することができる。
【0075】
ここで、特許請求の範囲に記載した各手段と、上記実施例中の構成との対応関係について説明すると、カセット情報検出手段に相当するものは、テープ収納カセットCSに設けられた第1〜第3突出片20〜22と、これら突出片を検出するテープ幅センサ60、テープ色センサ61、テープ種類を検出する種類センサ62であり、情報転送手段に相当するものは、通信用インターフェース58とコマンド解析処理制御の特にS87であり、情報表示制御手段に相当するものは、通信用インターフェース37とデータ転送処理制御の特にS21である。
【0076】
尚、カセット情報は、文書データの入力処理中や編集処理中に出力されたステータス要求コマンドに応じて、随時、カセット情報を含むステータス情報をプリンタ6からデータ作成装置2に転送するようにしてもよい。尚、1台のプリンタ6に複数のデータ作成装置2を接続したシステム的なテープ印刷装置を構成した場合には、ステータス情報要求コマンドが指令されたデータ作成装置にカセット情報を含むステータス情報を出力するようにしてもよい。尚、本発明の技術的思想の範囲内において、前記実施例の制御に関し、既存の技術や当業者に自明の技術に基いて種々の変更を加えることもあり得る。尚、ディスプレイやキーボードやプリンタを備えた種々のテープ印刷装置に本発明を適用し得ることは勿論である。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1のテープ印刷装置によれば、テーププリンタは、カセット情報検出手段と、カセット情報送信手段とを備え、データ作成装置は、カセット情報受信手段と、表示手段とを備えたことにより、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テーププリンタに装着されたテープカセットに収納された巻装されたテープの幅に関する情報を表示し、そのテープの幅に関する情報が検出されてデータ作成装置に送信され、データ作成装置に備えた表示手段に表示されるので、別体であるテーププリンタの所へ移動することなく、その表示を介してテープカセットのテープの幅に関する情報をデータ作成装置側で簡単に認識できる。更に、この表示されたカセット情報により、所望のテープか否かを確認でき、テープの浪費を防止できる上、的確なテープを用いて正確にプリント出力することができる。
また、カセット情報照合手段を備えたことにより、前記データ作成装置により出力用のドットイメージデータを作成したときに設定されたカセット情報と、前記テーププリンタのカセット情報検出手段により検出されたカセット情報とが同一でない場合にはその旨が前記表示手段に表示されるので、所望のテープでない場合にはテープの浪費を防止することができる。
【0078】
また、請求項2のテープ印刷装置によれば、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットに収納された巻装されたテープの色に関する情報を表示するので、別体であるテーププリンタの所へ移動することなく、その表示を介してテープカセットのテープの色に関する情報をデータ作成装置側で簡単に認識できる。更に、この表示されたカセット情報により、所望のテープか否かを確認でき、テープの浪費を防止できる上、的確なテープを用いて正確にプリント出力することができる。
【0079】
また、請求項3のテープ印刷装置によれば、前記テープカセットに形成されたカセット情報表示部は、テープカセットにに収納された巻装されたテープの種類に関する情報を表示するので、別体であるテーププリンタの所へ移動することなく、その表示を介してテープカセットのテープの種類に関する情報をデータ作成装置側で簡単に認識できる。更に、この表示されたカセット情報により、所望のテープか否かを確認でき、テープの浪費を防止できる上、的確なテープを用いて正確にプリント出力することができる。
【0080】
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】テープ印刷装置の斜視図である。
【図3】印刷機構の概略平面図である。
【図4】テープ印刷装置の制御系のブロック図である。
【図5】印刷データ作成制御のルーチンの概略フローチャートである。
【図6】データ転送処理制御のルーチンの概略フローチャートである。
【図7】プリンタ状態検出処理制御のルーチンの概略フローチャートである。
【図8】印刷データ送信処理制御のルーチンの概略フローチャートである。
【図9】印刷制御のルーチンの概略フローチャートである。
【図10】ハードウェア検査処理制御のルーチンの概略フローチャートである。
【図11】カセット情報検出処理制御のルーチンの概略フローチャートである。
【図12】印刷データ受信処理制御のルーチンの概略フローチャートである。
【図13】コマンド解析処理制御のルーチンの概略フローチャートである。
【図14】印刷処理制御のルーチンの概略フローチャートである。
【符号の説明】
1 テープ印刷装置
3 CRTディスプレイ
4 キーボード
6 プリンタ
25 印刷用テープ
16 サーマルヘッド
20 第1突出片
21 第2突出片
22 第3突出片
33 CPU
34 ハードディスクドライブ装置
40 RAM
41 テキストメモリ
54 CPU
55 ROM
56 RAM
60 テープ幅センサ
61 テープ色センサ
62 種類センサ
C1 制御装置
C2 制御装置
CS テープ収納カセットCS
PM 印刷機構
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-04-26 
出願番号 特願平5-259201
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B41J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 湯本 照基  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 谷山 稔男
藤本 義仁
登録日 2002-12-06 
登録番号 特許第3378622号(P3378622)
権利者 ブラザー工業株式会社
発明の名称 テープ印刷装置  

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