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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1122848
異議申立番号 異議2002-71283  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-10-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-05-20 
確定日 2005-06-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3229321号「改良された風味保持性及び透明性を有するポリエステル/ポリアミドブレンド」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3229321号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 
理由 (1)手続の経緯
本件特許第3229321号は、平成5年3月31日(優先権主張、平成4年4月2日、米国)に出願され、平成13年9月7日にその特許の設定登録がなされ、その後、東洋紡績株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、それに対し特許異議意見書とともに、その指定期間内である平成15年2月24日に訂正請求書が提出され、特許異議申立人に対し審尋がなされ、それに対し回答書が提出されたものである。
(2)訂正の適否についての判断
ア、訂正の内容
訂正事項a:明細書の特許請求の範囲の訂正
請求項1及び2を、
「【請求項1】(A)(1)少なくとも85モル%のテレフタル酸からの反復単位を含んでなるジカルボン酸成分;及び
(2)少なくとも85モル%のエチレングリコールからの反復単位を含んでなるジオール成分(ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準)を含んでなるポリエステル98.0〜99.95重量%;並びに
(B)12,000未満の数平均分子量を有する低分子量の部分芳香族ポリアミド、6,000未満の数平均分子量を有する低分子量の脂肪族ポリアミド、及びそれらの組合せからなる群から選ばれたポリアミド2.0〜0.05重量%(但し(A)及び(B)の総重量は100%であり、前記低分子量脂肪族ポリアミドはポリ(ヘキサメチレンアジパミド)及びポリ(カプロラクタム)からなる群から選ばれたものである)
を含んでなる、改良された風味保持性を有するポリエステル組成物。
【請求項2】(A)(1)少なくとも85モル%のテレフタル酸からの反復単位を含んでなるジカルボン酸成分;及び
(2)少なくとも85モル%のエチレングリコールからの反復単位を含んでなるジオール成分(ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準)を含んでなるポリエステル98.0〜99.95重量%;並びに
(B)ポリ(m-キシリレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド-コ-イソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド-コ-テレフタルアミド)及びポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド-コ-テレフタルアミド)からなる群から選ばれた、12,000未満の数平均分子量を有する低分子量の部分芳香族ポリアミド2.0〜0.05重量%((A)及び(B)の総重量は100%である)
を含んでなる、改良された透明性を有するポリエステル組成物。」と訂正する。
訂正事項b:明細書の発明の詳細な説明の訂正
b-1:特許明細書(特許公報第2頁第4欄29行、第3頁第5欄11行、同頁第6欄36行、第14頁第27欄27行及び40行、同頁第28欄3行及び14行、第15頁第30欄14行)の「15,000未満」を、「12,000未満」と訂正する。
b-2:特許明細書(特許公報第2頁第4欄31行、第3頁第5欄12行、同頁第6欄37行、第14頁第27欄28行及び41行、同頁第28欄15行、第15頁第30欄15行)の「7,000未満」を、「6,000未満」と訂正する。
b-3:特許明細書(特許公報第3頁第6欄44〜48行)の
「好ましくは、部分芳香族ポリアミドの………、数平均分子量は6,000未満である」を、
「好ましくは、部分芳香族ポリアミドのI.V.は0.7dL/g未満である。脂肪族ポリアミドはI.V.が1.1dL/g未満である。好ましくは、脂肪族ポリアミドのI.V.は0.8dL/g未満である。」と訂正する。b-4:特許明細書(特許公報第4頁第7欄28行)の「3,000〜6,000」を、「3,000〜6,000未満」と訂正する。
イ、訂正の適否
訂正事項aは、低分子量の部分芳香族ポリアミド及び脂肪族ポリアミドの数平均分子量の上限を、それぞれ「12,000未満」及び「6,000未満」に限定するものであり特許請求の範囲の減縮と認められ、特許明細書(特許公報第3頁第6欄44〜48行)の記載を根拠とするものであるから、願書に添付した明細書の範囲内のものと認められる。
訂正事項b(b-1〜b-4)は、発明の詳細な説明の訂正であり、特許請求の範囲の訂正である訂正事項aに伴い、発明の詳細な説明において整合性を保つための訂正であり、不明瞭な記載の釈明と認められ、願書に添付した明細書の範囲内のものと認められる。
また、上記訂正事項a及びbは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合し、当該訂正は認める。
(3)特許異議の申立てについての判断
ア、訂正明細書の請求項1及び2に係る発明
訂正明細書の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】(A)(1)少なくとも85モル%のテレフタル酸からの反復単位を含んでなるジカルボン酸成分;及び
(2)少なくとも85モル%のエチレングリコールからの反復単位を含んでなるジオール成分(ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準)を含んでなるポリエステル98.0〜99.95重量%;並びに
(B)12,000未満の数平均分子量を有する低分子量の部分芳香族ポリアミド、6,000未満の数平均分子量を有する低分子量の脂肪族ポリアミド、及びそれらの組合せからなる群から選ばれたポリアミド2.0〜0.05重量%(但し(A)及び(B)の総重量は100%であり、前記低分子量脂肪族ポリアミドはポリ(ヘキサメチレンアジパミド)及びポリ(カプロラクタム)からなる群から選ばれたものである)
を含んでなる、改良された風味保持性を有するポリエステル組成物。
【請求項2】(A)(1)少なくとも85モル%のテレフタル酸からの反復単位を含んでなるジカルボン酸成分;及び
(2)少なくとも85モル%のエチレングリコールからの反復単位を含んでなるジオール成分(ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準)を含んでなるポリエステル98.0〜99.95重量%;並びに
(B)ポリ(m-キシリレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド-コ-イソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド-コ-テレフタルアミド)及びポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド-コ-テレフタルアミド)からなる群から選ばれた、12,000未満の数平均分子量を有する低分子量の部分芳香族ポリアミド2.0〜0.05重量%((A)及び(B)の総重量は100%である)
を含んでなる、改良された透明性を有するポリエステル組成物。」
イ、引用刊行物
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(特開昭63-35647号公報:特許異議申立人提出甲第1号証)には、次のとおりの記載が認められる。
「(1)エチレンテレフタレート単位を主体とする熱可塑性ポリエステルに、末端アミノ基濃度が0.05乃至50ミリモル/100g樹脂の範囲にある熱可塑性ポリアミドを、ポリエステル100重量部当り5×10-7乃至10重量部の量でアセトアルデヒド濃度低下剤として含有せしめた組成物から成ることを特徴とする香味保持性の向上したポリエステル製容器。」(特許請求の範囲)
「即ち、本発明に用いる末端アミノ基含有ポリアミドは、ポリエチレンテレフタレート中のアセトアルデヒドの濃度低下剤として作用するのであり、その作用機構は未だ十分に解明されるに至っていないが、下記式(式省略)に示されるような反応により、アセトアルデヒドがポリアミドのアミノ基末端に捕捉されることが理由の一つであろうと考えられる。」(第2頁左下欄下から5行〜同右下欄5行)
「上記量比よりも少ない場合にも、アセトアルデヒド濃度を低下させる効果は大きいことが推定され、一方上記範囲よりも多い場合には、多いことによるアセトアルデヒド濃度の低下の程度はあまり改善されず、しかもポリエステル容器の透明性或いは機械的特性等が低下する傾向が認められる。」(第3頁左上欄17行〜同右上欄3行)
「尚、末端アミノ基濃度の調節は、分子量調節、ジアミン成分とジカルボン酸成分との反応モル比の調節、重合終結時における末端処理等により行うことができる。」(第3頁右上欄11〜14行)
「エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルとしては、酸成分の80モル%以上、特に90モル%以上がテレフタル酸成分であり、ジオール成分の80モル%以上、特に90モル%以上がエチレングリコール成分から成るポリエステルが好適である。」(第3頁左下欄1〜7行)
「適当なホモポリアミドの例としては、
ポリカプラミド(ナイロン6)、
……
ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6)、
……
さらに、上述した脂肪族ポリアミドに代えて含芳香族ポリアミド、例えば、……などに記載されているような、メタキシリレンジアミンと、……炭素原子数が6乃至10個のα,ω-脂肪族ジカルボン酸とから生成した構成単位を分子鎖中に少なくとも70モル%含有した含芳香族ポリアミド。例えば、ポリメタキシリレンアジパミド。」(第4頁左上欄11行〜同右下欄12行)
「これらのポリアミドの分子量も、一般のフィルム形成能を有する範囲内にあれば、特に制限なく使用し得るが、後述するように、96%硫酸100mlに1グラムの重合体を溶解して、25℃で測定したときの相対粘度(ηREL)が0.4乃至4.5の範囲にあることが一般に好ましい。」(第5頁右上欄1〜6行)
実施例1には、ポリエチレンテレフタレート100重量部に、相対粘度(ηREL)が3.42、末端アミノ基濃度(〔-NH2〕)が1.637m・mol/100gのポリカプラミド(ナイロン6)を1.0重量部を添加して、ボトル材としたときの材質中のアセトアルデヒド濃度が約20%に低下することが記載され、実施例2では、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6)(ηREL=1.27、〔-NH2〕=4.429m・mol/100g)を0.01重量部添加したとき、アセトアルデヒドが49.9%に低下すること、実施例3では、ポリメタキシリレンアジパミド(ナイロンMXD6)(ηREL=2.24、〔-NH2〕=0.471m・mol/100g)を0.5重量部添加して、アセトアルデヒドが26.8%に低下し、透明性は添加0のときの1.7%より低い1.6%であることが記載されている。
また、実施例4の重合脂肪酸ポリアミド(ηREL=0.52、〔-NH2〕=31.08m・mol/100g)を1.0重量部添加したとき、固有粘度0.75のポリエステル(PET-A)では、アセトアルデヒドが13.1%に、固有粘度0.65のポリエステル(PET-B)の場合は、同じく5.2%に低下し、また、透明性も1.7%(無添加)から1.5%、同じく1.6%(無添加)から1.6%と、透明性が向上ないしは維持していることが記載されている。
ウ、対比・判断
本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、ポリエステル並びに部分芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、及びそれらの組合せからなる群から選ばれたポリアミド(前記低分子量脂肪族ポリアミドはポリ(ヘキサメチレンアジパミド)及びポリ(カプロラクタム)からなる群から選ばれたものである)を含んでなる、改良された風味保持性を有するポリエステル組成物であり、ポリエステルのジカルボン酸成分及びジオール成分及び量比、また、ポリエステルとポリアミドの量比において一致し、ポリアミドについて、本件発明1では、12,000未満の数平均分子量を有する低分子量の部分芳香族ポリアミド、6,000未満の数平均分子量を有する低分子量の脂肪族ポリアミドとするのに対し、刊行物1では、96%硫酸100mlに1グラムの重合体を溶解して、25℃で測定したときの相対粘度(ηREL)が0.4乃至4.5の範囲にあるのが好ましいとの記載はあるものの、分子量についての記載がない点で相違するものと認める。
そこで、上記相違点について検討する。
刊行物1には、分子量そのものの記載はないとしても、上記のとおり、好ましいものとして、0.4という極めて低い相対粘度のポリアミドが記載され、低分子量のポリアミドが示唆されており、また、刊行物1にはポリアミドの末端アミノ基の多いものがアセトアルデヒドの捕捉が大きいことが示され、末端アミノ基濃度を増やす方法として、分子量調節すること、即ち、低分子量のものほど末端アミノ基の濃度が大きくなることはよく知られたところであるから、刊行物1に記載されるポリアミドの末端アミノ基の濃度に代えて、特定の数平均分子量のポリアミドとする程度のことは当業者であれば容易になし得たところと認められ、そのことによる作用効果も予測し得たところであって、格別なものとすることはできない。
なお、特許権者は、特許異議意見書において、刊行物1は、フィルム形成能を有する範囲内の分子量としており、本件発明1の低分子量のものは示唆していないと主張しているが、ポリキシリレン系ポリアミド単独からなるフィルムに使用されるポリアミドの相対粘度が1.8〜4.0(特許異議申立人提出の回答書とともに提出された特開昭56-49226号公報、特開昭57-51247号公報参照)及び1.7〜5.5(特開平4-120168号公報参照)であり、刊行物1ではそれらの下限値より極めて低い0.4という相対粘度のものが記載されており、刊行物1に記載のフィルム形成性というのは、単独でフィルムとして使用される強度のあるフィルムを意味するというよりも、フィルムとしての形成が可能なものをも意味していると解するのが相当であり、刊行物1には、本件発明1の低分子量のポリアミドが示唆されているものと認める。
よって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者であれば容易に発明をすることができたものである。
本件発明2は、本件発明1におけるポリアミドが部分芳香族ポリアミドに特定され、改良された透明性を有するポリエステル組成物とするものであるが、刊行物1には、本件発明2で特定する部分芳香族ポリアミドが記載され、透明性が維持ないしは良くなることが記載されており、相違点である分子量については、本件発明1における同様の理由により、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者であれば容易に発明をすることができたものである。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、上記刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1及び2の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
改良された風味保持性及び透明性を有するポリエステル/ポリアミドブレンド
【発明の詳細な説明】
発明の分野
本発明は、優れた気体遮断性及び改良された風味(又はフレーバー)保持性、並びに透明性を有するポリエステル/ポリアミドブレンドに関する。更に詳しくは、本発明は、ポリエステル中に含まれるアセトアルデヒドの濃度を減少させることによって、曇りを生じずに食品などの貯蔵性並びに風味保持性及び芳香保持性が非常に改良された、優れた気体遮断性を有するポリエチレンテレフタレート/低分子量ポリアミドブレンドに関する。
発明の背景
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、二次成形適性及び耐クリープ性のような機械的性質が優れているので、軽量プラスチック成形品の製造に広く使用されている。しかしながら、成形又は押出プロセスの間に、ポリエステルの熱分解によってアセトアルデヒドが形成され、ポリエステルを二次成形して成形品とする際に成形品の壁面中のアルデヒドが成形品内容物中に移行(又は泳動)する。少量のアセトアルデヒドは食品及び飲料の風味保持性並びに食品、飲料、化粧品及び他の容器内容物の芳香保持性に悪影響を与える。このために、アセトアルデヒドの容器内容物への移行を最小にすることが望ましい。
気体遮断性が優れた熱可塑性ポリエステルが提案されている。例えば、米国特許第4,398,017号は、酸成分としてテレフタル酸及びイソフタル酸を含み且つジオール成分としてエチレングリコール及びビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼンを含むコポリエステルを開示している。しかしながら、このような気体遮断性ポリエステルを容器の構成材料として使用する場合には、酸素及び二酸化炭素のような気体の透過は制御されるが、食品又は飲料へのアセトアルデヒドの移行は制御されず、従って、内容物の風味及び芳香が影響を受ける。
ポリエチレンテレフタレート樹脂の気体遮断性を増大させるためにポリアミドを使用することは、米国特許第4,837,155号、第4,052,481号及び第4,501,781号に開示されている。
米国特許第4,837,115号は、ポリエチレンテレフタレートと、ポリエステル中に含まれる残留アセトアルデヒドを減少させるように作用する高分子量ポリアミドを含む熱可塑性組成物を開示している。米国特許第4,837,115号は、ポリアミドがフィルム形成能を有する場合には、その分子量は決定的ではないと述べている。従って、このようなポリアミドはフィルムを形成するのに充分に高い分子量を有する必要がある。フィルムを形成するためには少なくとも12,000の分子量を有するポリアミドが必要であることは公知である。
米国特許第4,052,481号は、芳香族コポリエステル、ポリアミド及びポリアルキレンフェニレンエステル又はポリアルキレンフェニレンエステルエーテルを含む樹脂組成物を開示している。芳香族コポリエステルはテレフタル酸、イソフタル酸及びビスフェノールを含む。
米国特許第4,501,781号、対応するヨーロッパ特許0212339及び0092979号は、ポリエチレンテレフタレート樹脂70〜95重量%及びキシレン基含有ポリアミド樹脂5〜30重量%を含む混合物を開示している。米国特許第4,501,781号はアセトアルデヒドには触れていないが、高い気体遮断性を有する容器を成形するためには樹脂混合物材料がPETに対してできる限り30重量%に近いキシリレン基含有ポリアミド樹脂を含むべきであると述べている。更に、その特許は、PETに対して5〜10重量%のキシリレン基含有ポリアミド樹脂を使用すると、高い気体遮断性を有さない容器が製造されるであろうと述べている。
高分子量ポリアミドはポリエステルに対して曇りを与えずに残留アセトアルデヒドを充分に減少させることはないので、前記特許は不十分である。このような特許に少量の高分子量ポリアミドを使用する場合には、許容され得るレベルの曇りを達成し得るが、残留アセトアミドは極めて多い。他方、比較的多量の高分子量ポリアミドを使用する場合には、残留アセトアルデヒドは減少し得るが、曇りが犠牲になる。
これに対して、本発明者は意外にも、12,000未満の数平均分子量を有する低分子量の部分芳香族ポリアミド及び6,000未満の数平均分子量を有する低分子量の脂肪族ポリアミドからなる群から選ばれたポリアミドが、臨界量で使用された場合に、ポリエチレンテレフタレートを基材とするポリエステル中の残留アセトアルデヒドの減少に、高分子量ポリアミドよりも有効であることを見出した。更に、PETの0.05〜2.0重量%の臨界量で使用される本発明の低分子量ポリアミドは曇りを生じない。従って、本発明は、曇りを犠牲にする場合にのみ低残留アセトアルデヒドが達成できた二律背反性を克服した。
発明の要約
従って、本発明の目的は、ポリエチレンテレフタレートを基材とするポリエステル中に含まれる残留アセトアルデヒドを減少させ且つ、このポリエステルから形成された容器中における内容物の風味保持性及び芳香保持性を改良することにある。
本発明の別の目的は、優れた透明性を示すポリエステル/ポリアミドブレンド及び該ブレンドの製造方法を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、耐衝撃性、耐応力亀裂性及び耐熱性のような優れた機械的性質を示し、且つその成形時に優れた溶融流動性を示すポリエステル/ポリアミドブレンドを提供すること、並びに該ブレンドの製造方法を提供することにある。
これらの及び他の目的は、
(A)(1)少なくとも85モル%のテレフタル酸からの反復単位を含んでなるジカルボン酸成分;及び
(2)少なくとも85モル%のエチレングリコールからの反復単位を含むジオール成分(ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準)
を含んでなるポリエステル98.0〜99.95重量%;並びに
(B)12,000未満の数平均分子量を有する低分子量の部分芳香族ポリアミド、6,000未満の数平均分子量を有する低分子量の脂肪族ポリアミド、及びそれらの組合せからなる群から選ばれたポリアミド2.0〜0.05重量%((A)及び(B)の総重量は100%である)を含んでなる、改良された風味保持性を有する半結晶質ポリエステル組成物によって達成される。
発明の説明
本発明のポリエステル、成分(A)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂である。PETのコポリエステルもまた、使用できる。ポリエチレンテレフタレート樹脂はジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準で、少なくとも85モル%のテレフタル酸及び少なくとも85モル%のエチレングリコールからの反復単位を含む。
ポリエステルのジカルボン酸成分は、場合によっては、テレフタル酸以外の1種又はそれ以上の種々のジカルボン酸又はジメチルテレフタレートのような適当な合成相当物15モル%以下で改質されていてもよい。このような追加のジカルボン酸としては、炭素数が好ましくは8〜14の芳香族ジカルボン酸、炭素数が好ましくは4〜12の脂肪族ジカルボン酸、又は炭素数が好ましくは8〜12の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。テレフタル酸と共に含ませることができるジカルボン酸の例は以下の通りである:フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン二酢酸、ジフェニル-4,4′-ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸など。ポリエステルは2種又はそれ以上の前記ジカルボン酸から製造できる。
用語「ジカルボン酸」にはこれらの酸の対応する酸無水物、エステル、及び酸塩化物の使用を含むものとする。
更に、ポリエステル、成分(A)は場合によっては、15モル%以下の、エチレングリコール以外の1種又はそれ以上の種々のジオールで改質されていてもよい。このような追加のジオールとしては、炭素数が好ましくは6〜20の脂環式ジオール又は炭素数が好ましくは3〜20の脂肪族ジオールが挙げられる。エチレングリコールと共に含ませることができるこのようなグリコールの例は以下の通りである:ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、プロパン-1,-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、3-メチルペンタンジオール-(2,4)、2-メチルペンタンジオール-(1,4)、2,2,4-トリメチルペンタン-ジオール-(1,3)、2-エチルヘキサンジオール-(1,3)、2,2-ジエチルプロパン-ジオール-(1,3)、ヘキサンジオール-(1,3)、1,4-ジ-(ヒドロキシエトキシ)-ベンゼン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン、2,4-ジヒドロキシ-1,1,3,3-テトラメチル-シクロブタン、2,2-ビス-(3-ヒドロキシエトキシフェニル)-プロパン及び2,2-ビス-(4-ヒドロキシプロポキシフェニル)-プロパン。ポリエステルは2種又はそれ以上の前記ジオールから製造できる。
ポリエチレンテレフタレート樹脂はまた、少量の三官能価又は四官能価コモノマー、例えば、トリメリット酸無水物、トリメチロールプロパン、ピロメリット酸二無水物、ペンタエリトリトール及び一般に当業界で知られた他のポリエステル形成性多酸又はポリオールを含むことができる。
本発明のブレンドを熱成形、結晶化PET成形品の製造に使用する場合には、実質的にジメチルテレフタレート及びエチレングリコールのみからなるポリエステルが好ましい。
本発明の、ポリエチレンテレフタレートを基材とするポリエステルは公知の常用の重縮合法によって製造できる。このような方法としては、1種又はそれ以上のジカルボン酸と1種又はそれ以上のジオールとの直接縮合又はジアルキルジカルボキシレートを用いたエステル交換によるものが挙げられる。例えば、ジメチルテレフタレートのようなジアルキルテレフタレートは触媒の存在下において高温で1種又はそれ以上のジオールによってエステル交換される。ポリエステルはまた、固相重合法に供することもできる。
本発明の第2の成分は、12,000未満の数平均分子量を有する低分子量の部分芳香族ポリアミド及び6,000未満の数平均分子量を有する低分子量の脂肪族ポリアミドからなる群から選ばれたポリアミドである。このようなポリアミドの組合せも、本発明の範囲内に含まれる。「部分芳香族ポリアミド」とは、部分芳香族ポリアミドのアミド結合が少なくとも1個の芳香環及び非芳香族のものを含むことを意味する。部分芳香族ポリアミドはI.V.が0.8dL/g未満である。好ましくは、部分芳香族ポリアミドのI.V.は0.7dL/g未満である。脂肪族ポリアミドはI.V.が1.1dL/g未満である。好ましくは、脂肪族ポリアミドのI.V.は0.8dL/g未満である。
本発明の組成物又は成形品は2重量%以下、好ましくは1重量%未満の低分子量ポリアミドを含むことができる。ポリエステルの重量基準で2重量%より多いポリアミドを使用すると不所望のレベルの曇り及び色が生じることが測定された。
イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、m-もしくはp-キシリレンジアミン、1,3-もしくは1,4-シクロヘキサン(ビス)メチルアミン、炭素数6〜12の脂肪族二酸、炭素数6〜12の脂肪族アミノ酸もしくはラクタム、炭素数4〜12の脂肪族ジアミン、並びに他の一般に公知のポリアミド形成性二酸及びジアミンから形成された低分子量ポリアミドも使用できる。低分子量ポリアミドはまた、少量の三官能価又は四官能価コモノマー、例えば、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、又は公知の他のポリアミド形成性多酸及びポリアミンも含むことができる。
好ましい低分子量の部分芳香族ポリアミドとしては以下のものが挙げられる:ポリ(m-キシリレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド-コ-イソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド-コ-テレフタルアミド)、及びポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド-コ-テレフタルアミド)。最も好ましい低分子量の部分芳香族ポリアミドは、数平均分子量が4,000〜7,000及びインヘレント粘度が0.3〜0.6dL/gのポリ(m-キシリレンアジパミド)である。好ましい低分子量の脂肪族ポリアミドとしては、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)及びポリ(カプロラクタム)が挙げられる。最も好ましい低分子量の脂肪族ポリアミドは、数平均分子量が3,000〜6,000未満及びインヘレント粘度が0.4〜0.9dL/gのポリ(ヘキサメチレンアジパミド)である。
ポリエステル、成分(A)と共に使用する、本発明の低分子量の脂肪族及び部分芳香族ポリアミドは、このようなブレンドから成形される成形品中のアセトアルデヒド濃度を均一に減少させる。しかしながら、透明性及び分散性が決定的である場合には、低分子量の部分芳香族ポリアミドは脂肪族ポリアミドよりも好ましい。
低分子量ポリアミドは一般に、その場において又は別の工程において製造できる二酸-ジアミンのコンプレックスからの溶融相重合によって製造される。いずれの方法においても、二酸及びジアミンが出発原料として使用される。あるいは、二酸のエステル型、好ましくはジメチルエステルも使用できる。エステルを使用する場合には、エステルがアミドに転化されるまで、反応は比較的低温において、一般に、80〜120℃において実施しなければならない。次いで、混合物は重合温度まで加熱される。ポリカプロラクタムの場合には、カプロラクタム又は6-アミノカプロン酸が出発原料として使用でき、重合は、ナイロン6/66コポリマーを生成するアジピン酸/ヘキサメチレンジアミン塩の添加によって触媒され得る。二酸-ジアミンコンプレックスを使用する場合には、混合物は溶融するまで加熱し、平衡に達するまで攪拌される。
分子量は二酸-ジアミン比によって制御される。過剰のジアミンは、アセトアルデヒドとの反応に使用できる比較的高濃度の末端アミノ基を生成する。二酸-ジアミンコンプレックスが別の工程で製造される場合には、過剰のジアミンは重合前に添加される。重合は大気圧又は高圧のいずれにおいても実施できる。
本発明のポリエステル/ポリアミドブレンドの製造方法は、ポリエステル及び低分子量ポリアミドを各々、前述の方法によって製造することを含む。ポリエステル及びポリアミドは乾燥空気又は乾燥窒素の雰囲気において、又は減圧下で乾燥される。ポリエステル及びポリアミドは混合されてから、例えば、一軸又は二軸スクリュー押出機中で溶融配合される。溶融温度は少なくともポリエステルの融点と同じ温度でなければならず、代表的には260〜310℃である。好ましくは、溶融配合温度は前記範囲内でできるだけ低く保たれる。溶融配合の完了後、押出物はストランドの形態で取り出され、切断のような通常の方法によって回収される。溶融配合の代わりに、ポリエステル及びポリアミドがドライブレンドされ、そしてプラスチック成形品に加熱成形又は圧伸成形されることもできる。
ポリアミドはポリエステル製造の後半の段階で添加されることができる。例えば、ポリアミドは、重縮合反応器から取り出された時に、ペレット化される前に溶融ポリエステルとブレンドされることができる。しかしながら、この方法は、ポリエステル/ポリアミドブレンドが固相重合に供される場合には、長時間、高温において不所望の色及び/又は曇りが発生し得るので、望ましくない。ポリアミドはまた、透明性が決定的ではない場合に、例えば、結晶化熱成形品の場合にはポリオレフィンを基材とする成核剤濃縮物の一部として添加されることができる。
本発明のブレンドは、押出又は射出成形による全ての型の成形品の製造に優れた出発原料として役立つ。具体的な用途としては、熱成形又は射出成形トレイ、蓋及びカップ;射出延伸ブロー成形ボトル、フィルム及びシート;押出ブロー成形ボトル及び多層成形品のような種々の包装への用途が挙げられる。包装材料内容物の例としては食品、飲料及び化粧品が挙げられるが、それらに限定されない。
ブレンドの性能特性を向上させるために、本発明の組成物に多くの他の成分が添加されることができる。例えば、結晶化助剤、耐衝撃性改良剤、離型剤、嵌め外し剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、着色剤、例えば、二酸化チタン及びカーボンブラック、成核剤、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン、ホスフェート安定剤、充填剤などを本発明の組成物に含ませることができる。これらの添加剤の全て及びそれらの使用は当業界で公知であり、詳しい解説を必要としない。従って、言及するのは限られた数であるが、本発明の目的の達成を妨げない限りにおいて、これらの化合物を全て使用できることを理解されたい。
無色透明の樹脂が望ましい用途においては、加工の間に発生するかすかな黄色い色は青色染料の添加によって消されることができる。着色剤は重合の間にはブレンドのいずれかの成分に、又は配合の間にはブレンドに直接添加され得る。ブレンドの間に添加される場合には、着色剤は純粋な形態で添加されることもできるし、濃縮物として添加されることもできる。着色剤の量は、その吸光係数及びその用途に望ましい色に依存する。好ましい着色剤は、1-シアノ-6-(4-(2-ヒドロキシエチル)アニリノ)-3-メチル-3H-ジベンゾ(F,I,J)-イソキノリン-2,7-ジオンであり、2〜15ppmの量で使用される。
望ましい添加剤としては更に、耐衝撃性改質剤及び酸化防止剤が挙げられる。当業界で公知であって、本発明において有用な、代表的な市販の耐衝撃性改良剤の例としては、エチレン/プロピレンターポリマー、スチレン基材ブロックコポリマー及び種々のアクリル樹脂コア/シェル型耐衝撃性改良剤が挙げられる。耐衝撃性改良剤は全組成物の0.1〜25重量%の常用量で、好ましくは0.1〜10重量%の量で使用され得る。本発明において有用な、代表的な市販の酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール、ホスファイト、ジホスファイト、ポリホスファイト、及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。芳香族及び脂肪族ホスファイト化合物の組合せもまた、挙げることができる。
本明細書中に示した結果に関して使用した材料及び試験方法は以下の通りである:
ポリエステルAは、本質的に、I.V.が0.76のポリエチレンテレフタレートのホモポリマーである。
ポリエステルBは、本質的に、I.V.が0.90のポリエチレンテレフタレートのホモポリマーである。
ポリエステルCは、テレフタル酸100モル%、エチレングリコール98〜99モル%及び1,4-シクロヘキサンジメタノール1〜2モル%からなる、I.V.が0.76のコポリエステルである。
なお、これらのポリエステルA,B,Cはそれぞれ以下の市販品(いずれもEastman Chemical Co.より市販)を用いた。
ポリエステルA:Eastapak Polymer7352
ポリエステルB:Eastapak Versatray Plastic12822
ポリエステルC:Eastapak Polymer9921W
アセトアルデヒドの発生(AA Gen)は、以下の方法によって測定した。180℃において30分間結晶化後、ペレット化したポリエステルを真空オーブン中で、120℃において一晩中、乾燥させた。Tinius-Olsenメルトインデックサーにポリエステル5gを装填し、5分間、試験温度に保持した。溶融ポリエステルを水中に押し出し、粉砕まで-40℃の温度で貯蔵した。サンプルを20メッシュ又はそれより細かく粉砕し、0.5gをサンプル管に入れて、それを直ちにシールした。パーキンエルマー自動熱脱着(Perkin Elmer Automatic ThermalDesorption)ATD-50を注入システムとするヒューレット-パッカード(Hewlett-Packard)5890ガスクロマトグラフを用いて、動的ヘッドスペースのガスクロマトグラフィー分析によってサンプルを分析した。サンプルを150℃において10分間加熱することによってアセトアルデヒドが脱着された。ガスクロマトグラフィーカラムは30m×0.53mm(内径)であった。
押出後のアセトアルデヒド濃度は、ペレット又はシートを20メッシュ又はそれより細かく粉砕し、そしてアセトアルデヒド発生に関して記載したのと同一のガスクロマトグラフィー法によってアセトアルデヒド濃度を測定することによって測定した。
色は、ASTM D2244に従ってハンターカラー(Hunter Color)Lab計測器を用いて測定した。色の測定はRd、a及びbとして報告する。
曇りは、ASTM D1003によって測定した。3.0%より大きい曇り価は目に見える曇りを示す。
ボトル中のヘッドスペースアセトアルデヒド濃度(HSAA)をガスクロマトグラフィーによって測定した。ボトルは、吹き込み後直ちに窒素ガスをパージすることによって製造し、そしてシールした。次いで、ボトルは、20〜23℃及び相対湿度50%において24時間貯蔵してから試験した。
インヘレント粘度(I.V.)は、フェノール60重量%及びテトラクロロエタン40重量%からなる溶媒100ml当りポリマー0.50gを用いて、25℃において測定した。
ポリアミドの数平均分子量を、ヘキサフルオロイソプロパノールを用いて沸点法によって測定した。
末端カルボキシル基濃度は、電位差滴定によって測定した。ポリアミド1gをベンジルアルコール50ml中に入れ、溶解するまで加熱した。滴定剤はイソプロパノール中0.01N水酸化カリウムであった。
末端アミノ基濃度は、電位差滴定によって測定した。ポリアミド1gを25℃においてm-クレゾール90ml中に溶解させた。滴定剤は、2:1の比のイソプロパノール/プロピレングリコール中0.01N過塩素酸であった。滴定剤は水中70%過塩素酸から製造した。
本発明を更に、以下の例を考慮することによって説明するが、以下の例は本発明の代表例である。例中の全ての部及び百分率は特に断わらない限り、重量に基づく。
例1
ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)を、以下の方法によって製造した。
アジピン酸5.19kg、ヘキサメチレンジアミンの70%水溶液6.18kg及び水3.64kgを含む混合物を調製した。混合物を窒素雰囲気下の反応器中に入れ、30分間、攪拌し、次いで、150℃に加熱し、60分間保持した。反応器を75psi(517.13kPa)に加圧し、次いで、275℃に加熱し、120分間保持した。ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)を水中に押し出し、粉砕し、そして乾燥させた。ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)の数平均分子量及びI.V.を測定すると、各々、3,600及び0.61dL/gであった。末端アミノ基濃度は0.16mmol/gであり、末端カルボキシル基濃度は0.13mmol/gであった。
ポリエステルAと共にポリ(ヘキサメチレンアジパミド)25重量%を含むブレンドを以下の方法で調製した。
ポリアミドをコンエア(ConAir)乾燥機中で120℃において16時間乾燥させた。ポリエステルAをコンエア乾燥機中で120℃において16時間乾燥させた。ポリアミド3.97kg及びポリエステルA11.92kgをドライブレンドし、中程度のスクリューが装着された1.25インチ(3.175cm)スターリング(Sterling)一軸スクリュー押出機を用いて277℃の溶融温度において押出及びペレット化した。押出機上の帯域(ゾーン)1〜5に関する温度設定は各々、250、260、270、270及び265℃であった。
ポリエチレン成核剤3.0重量%と共に前記ブレンドを2.0及び4.0重量%含むポリエステルBからシートを押し出した。ポリエステルBを150℃において4時間乾燥させた。ポリアミド濃縮物をポリエステルBとドライブレンドし、助剤供給系を用いて成核剤を添加した。押出機は、直径12インチ(30.48cm)のロールを有するウェレックス(Welex)3-ロールスタック引き取り装置を用いる、100HPエディ電流駆動装置(Eddy current drive)を有する3.5インチ(8.89cm)24:1プロデックス(Prodex)押出機であった。スクリューはミキサーを有さない効率のよい型であった。押出条件は以下の通りであった:シリンダー帯域1〜5の温度:325、320、305、295及び295℃;ゲートとヘッド:280℃;アダプター:280℃;ダイ帯域1〜5の温度:280、260、260、260及び260℃;スクリュー速度:35rpm;ロール温度(上部/中央部/底部):50/60/70℃。シートの厚さは30milであった。これらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表Iに要約する。
例2
ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)を例1に従って製造し、以下の方法を用いてポリエステルBとブレンドした。
ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)を微粉砕し、次いで、真空オーブン中で120℃において48時間乾燥させた。ポリエステルBをコンエア乾燥機中で150℃において16時間乾燥させた。ポリアミド粉末を表Iに挙げたような濃度でポリエステルBペレットとドライブレンドした。ブレンドを、混合スクリューを装着した3/4インチ(1.91cm)のブラベンダー押出機を用いて285℃のダイ温度において押出及びペレット化した。これらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表Iに要約する。
例3
ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)を以下の方法によって製造した。
アジピン酸5.05kg、ヘキサメチレンジアミンの70%水溶液6.31kg及び水3.64kgを含む混合物を調製した。混合物を例1と同様にして反応させ、そして押し出した。ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)の数平均分子量及びI.V.を測定すると各々、2,500及び0.43dL/gであった。末端アミノ基濃度は0.28mmol/gであり、末端カルボキシル基濃度は0.13mmol/gであった。
前記方法に従って製造したポリ(ヘキサメチレンアジパミド)を使用して、例2と同様な方法を用いてポリエステルBとのブレンドを調製した。これらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表Iに要約する。
例4
ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)を以下の方法によって製造した。
アジピン酸4.93kg、ヘキサメチレンジアミンの70%水溶液6.44kg及び水3.64kgを含む混合物を調製した。混合物を例1と同様にして反応させ、そして押し出した。ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)の数平均分子量及びI.V.を測定すると各々、2,300及び0.31dL/gであった。
前記方法に従って調製したポリ(ヘキサメチレンアジパミド)を使用して、例2と同様な方法を用いてポリエステルBとのブレンドを調製した。これらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表Iに要約する。
例5
ポリエステルA中に、I.V.1.2dL/g及び数平均分子量20,000を有する商品グレードのポリ(ヘキサメチレンアジパミド)25重量%を含むブレンドを、例1に記載した方法に従って調製した。
例1の方法に従って前記ブレンドを含むポリエステルBからシートを押し出した。これらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表Iに要約する。
例6
I.V.が1.2dL/g及び数平均分子量20,000の商品グレードのポリ(ヘキサメチレンアジパミド)を使用して、例2に記載した方法に従ってポリエステルBとのブレンドを調製した。これらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表Iに要約する。

表Iの結果は、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)を含むポリエチレンテレフタレート型のブレンドがアセトアルデヒド濃度を減少させることを明白に示す。更に、結果は、本発明の低分子量ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)ポリアミドが、インヘレント粘度によって決定されるように、臨界量で使用された時に、例5及び6において使用される高分子量ポリアミドよりも、このようなポリエステル中のアセトアルデヒド濃度の減少において有効であることを示す。更に、例2、3及び4は、ポリアミドの分子量とアセトアルデヒド濃度の減少におけるその有効性とが逆の関係にあることを示す。
例7
ポリ(カプロラクタム)、ナイロン-6を以下の方法によって製造した。
アミノカプロン酸131.0g及び水60.0gを含む混合物を調製した。混合物を窒素雰囲気下の重合反応器中に入れ、そして還流するまで加熱しながら30分間、攪拌した。水を蒸留して除き、混合物を275℃に加熱し、30分間保持した。この混合物を275℃において20分間攪拌した。ポリカプロラクタムはI.V.が0.47dL/g及び数平均分子量5,000であった。反応の最終工程を30分に増やすと、I.V.が0.63dL/gのポリ(カプロラクタム)が生成された。
前記方法に従って製造したポリ(カプロラクタム)を用いて、ポリエステルBとブレンドを調製した。ポリアミドを微粉砕し、次いで、真空オーブン中で120℃で48時間乾燥させた。ポリエステルBをコンエア乾燥機中で150℃において16時間乾燥させた。ポリアミド粉末を0.5重量%の濃度でポリエステルBペレットとドライブレンドした。このブレンドを、混合スクリューが装着された3/4インチのブラベンダー押出機を用いて285℃のダイ温度において押出及びペレット化した。ブレンドから発生したアセトアルデヒドを表IIに要約する。
例8
I.V.1.3dL/g及び数平均分子量6,000を有する商品グレードのポリ(カプロラクタム)を用いて、例7に記載した方法に従って、ポリエステルBとのブレンドを調製した。これらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表IIに要約する。

表IIの結果は、ポリ(カプロラクタム)を含むポリエチレンテレフタレート型ブレンドがアセトアルデヒド濃度を減少させたことを明白に示す。更に、この結果は、本発明の低分子量ポリ(カプロラクタム)ポリアミドは、インヘレント粘度によって決定されるように、臨界量で使用された時に、例8において使用される高分子量ポリアミドよりも、このようなポリエステル中のアセトアルデヒド濃度の減少において有効であることを示す。
例9
ポリ(m-キシリレンアジパミド)を、以下の方法によって製造した。
アジピン酸4.32kg、m-キシリレンジアミン4.82kg、及び水7.72kgを含む混合物を調製した。混合物を窒素雰囲気下の重合反応器中に入れた。混合物を30分間還流するまで攪拌しながら加熱した。混合物を120℃に加熱し、60分間保持すると同時に、水を蒸留して除去した。次いで、温度を3.25時間にわたって275℃に上昇させた。混合物を275℃において30分間攪拌した。ポリ(m-キシリレンアジパミド)を水中に押し出し、粉砕し、そして乾燥させた。ポリ(m-キシリレンアジパミド)の数平均分子量及びI.V.を測定すると各々、2,300及び0.27dL/gであった。
前記方法に従って調製したポリ(m-キシリレンアジパミド)を、ポリエステルA中にポリアミド25重量%を含む濃縮物を調製するのに使用した。ポリアミドを微粉砕し、次いで、真空オーブン中で120℃で16時間乾燥させた。ポリエステルAをコンエア乾燥機中で150℃において16時間乾燥させた。ポリアミド粉末を0.5重量%及び1.0重量%の濃度でポリエステルAペレットとドライブレンドした。ブレンドを、1.25インチ(3.175cm)のキリオン(Killion)一軸スクリュー押出機を用いて260〜275℃のダイ温度において押出及びペレット化した。
ポリエチレン成核剤3.0重量%と共に前記ブレンドを2.0及び4.0重量%含むポリエステルBからシートを押し出した。ポリエステルBを150℃において4時間乾燥させた。ポリアミド濃縮物をポリエステルBとドライブレンドし、助剤供給系を用いて成核剤を添加した。押出機は、直径12インチ(30.48cm)のロールを有するウェレックス(Welex)3-ロールスタック引き取り装置を用いる、100HPエディ(Eddy)電流駆動装置を有する3.5インチ(8.89cm)24:1プロデックス(Prodex)押出機であった。スクリューはミキサーを有さない効率のよい型であった。押出条件は以下の通りであった:シリンダー帯域1〜5の温度:各々、310、315、300、290及び290℃;ゲートとヘッド:265℃;アダプター:265℃;ダイ帯域1〜5の温度:275、270、270、270及び270℃;ポリアミド濃度0、2及び4重量%におけるスクリュー速度:各々、31、32及び35rpm;上部、中央部及び底部におけるロール温度:各々、55、60及び66℃。シートの厚さは30mil(0.763mm)であった。
熱金型/冷金型機能の付いた24インチ(60.96cm)のリレ(Lyle)連続巻き取り供給熱成形機を用いて熱成形した。熱成形条件は以下の通りである:ヒーター帯域1〜8の温度:各々、415、オフ、350、260、260、260、350℃及びオフ;熱金型:205℃;冷金型:77℃;0、2及び4重量%のポリアミド濃縮物のサイクル時間:各々、3.95、3.90及び4.10秒。
この方法によって製造された熱成形PETトレイは、ポリアミド0.5重量%に関して0.5ppmのアセトアルデヒドを含み、1.0重量%のポリアミドに関しては0.2ppmのアセトアルデヒドを含み、ポリアミドがない場合にはアセトアルデヒドを12.2ppm含んでいた。このように、臨界量で使用された、本発明の低分子量ポリアミドは、熱成形、結晶化PETトレイ中のアセトアルデヒド濃度を60倍も減少させた。
例10
ポリ(m-キシリレンアジパミド)を、以下の方法によって製造した。
アジピン酸43.8g、m-キシリレンジアミン53.0g(30%モル過剰)及び水50.0gを含む混合物を調製した。混合物を窒素雰囲気下の500mLフラスコ中に入れた。混合物を20〜30分間、還流するまで攪拌しながら加熱した。水を蒸留して除去し、温度を30分間にわたって275℃に上昇させた。混合物を275℃において30分間攪拌した。この方法で生成したポリ(m-キシリレンアジパミド)はI.V.が0.20dL/gであった。
前述のようにして製造したポリ(m-キシリレンアジパミド)と、ポリエステルCとのブレンドを以下の方法で製造した。
ポリアミドを微粉砕し、次いで、真空オーブン中で120℃で48時間乾燥させた。ポリエステルCをコンエア乾燥機中で150℃において16時間乾燥させた。ポリアミド粉末を0.1、0.3及び0.5重量%の濃度でポリエステルCペレットとドライブレンドした。ブレンドを、混合スクリューが装着された3/4インチ(1.91cm)のブラベンダー押出機を用いて270℃のダイ温度において押出及びペレット化した。ブレンドから発生したアセトアルデヒドを表III及びVIに要約する。
以下の方法によってボトルを調製した。ポリエチレンテレフタレート1990g中の前述のように製造したポリ(m-キシリレンアジパミド)10gをポリエステルCとドライブレンドした。単一キャビティの予備成形金型を装着したシンシナティ ミラクロン(CincinnatiMilacron)モデルPC-3成形機を用いて溶融温度275℃においてボトル予備成形品を射出成形した。この予備成形品を1/2-リットルのボトルに再加熱ブロー成形した。ボトルのヘッドスペース、側面曇り価及びこれらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表VIに要約する。
例11
ポリ(m-キシリレンアジパミド)を、以下の方法によって製造した。
アジピン酸43.80g、m-キシリレンジアミン48.96g(20%モル過剰)及び水50gを含む混合物を調製した。混合物は例10に記載した方法に従って、調製し、そして重合させた。ポリ(m-キシリレンアジパミド)はI.V.が0.26dL/g及び数平均分子量3,500であった。
ポリ(m-キシリレンアジパミド)とポリエステルCとのブレンドを例10と同様にして調製した。これらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表IIIに要約する。
例12
ポリ(m-キシリレンアジパミド)を、以下の方法によって製造した。
アジピン酸43.80g、m-キシリレンジアミン43.86g(7.5%モル過剰)及び水50gを含む混合物を調製した。この混合物は、例10に記載した方法に従って、調製し、そして重合させた。ポリ(m-キシリレンアジパミド)はI.V.が0.44dL/g及び数平均分子量5,000であった。
ポリ(m-キシリレンアジパミド)とポリエステルCとのブレンドを例10と同様にして調製した。これらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表III及びVIに要約する。
ボトルを例10と同様にして調製した。ボトルのヘッドスペース、側面曇り価及びこれらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表VIに要約する。
例13
ポリ(m-キシリレンアジパミド)を、以下の方法によって製造した。
アジピン酸43.80g、m-キシリレンジアミン42.84g(5%モル過剰)及び水50.0gを含む混合物を窒素雰囲気下の500mlフラスコ中に入れた。混合物は、例10に記載した方法に従って調製し、そして重合させた。ポリ(m-キシリレンアジパミド)は、I.V.が0.53dL/g及び数平均分子量が7,030であった。末端アミノ基濃度は0.13mmol/gであった。末端カルボキシル基濃度は0.035mmol/gであった。
ポリ(m-キシリレンアジパミド)とポリエステルCとのブレンドを例10と同様にして調製した。これらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表IIIに要約する。
例14
ポリ(m-キシリレンアジパミド)を、以下の方法によって製造した。
アジピン酸43.80g、m-キシリレンジアミン41.82g(2.5%モル過剰)及び水50gを含む混合物を窒素雰囲気下の500mlフラスコ中に入れた。混合物は例10に記載した方法に従って調製し、そして重合させた。ポリ(m-キシリレンアジパミド)はI.V.が0.70dL/g及び数平均分子量が10,500であった。末端アミノ基濃度は0.049mmol/gであった。末端カルボキシル基濃度は0.039mmol/gであった。
ポリ(m-キシリレンアジパミド)とポリエステルCとのブレンドを例10と同様にして調製した。これらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表IIIに要約する。
例15
ポリ(m-キシリレンアジパミド)を、以下の方法によって製造した。
アジピン酸51.10g、m-キシリレンジアミン48.79g及び水 60.0gを含む混合物を調製した。混合物は、例10に記載した方法に従って調製し、そして重合させた。ポリ(m-キシリレンアジパミド)はI.V.が1.0dL/g及び数平均分子量22,000であった。
ポリ(m-キシリレンアジパミド)とポリエステルCとのブレンドを例10と同様にして調製した。これらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表III及びVIに要約する。
ボトルを例10と同様にして調製した。ボトルのヘッドスペース、側面曇り価及びこれらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表VIに要約する。

表IIIの結果は、ポリ(m-キシリレンアジパミド)を含むポリエチレンテレフタレート型ブレンドがアセトアルデヒド濃度を減少させることを明白に示す。更に、これらの結果は、臨界量で使用した、本発明の低分子量ポリ(m-キシリレンアジパミド)ポリアミドが、例15において使用した高分子量ポリアミドよりも、このようなポリエステル中のアセトアルデヒド濃度を減少させるのに有効であることを示す。更に、例10〜14は、ポリアミドの分子量とアセトアルデヒドの減少におけるその有効性の間に逆の関係があることを示す。
例16
I.V.が0.61である、例1に従って調製したポリ(ヘキサメチレンアジパミド)をポリエステルB、ポリエチレン成核剤及びTiO2とブレンドした。ブレンドを、以下の方法を用いてフィルムに押し出した。
ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)を微粉砕してから、真空オーブン中で120℃において48時間乾燥させた。ポリエステルBをコンエア乾燥機中で150℃において16時間乾燥させた。ポリエステルA中の50重量%ブレンドとしてTiO2を加えた。TiO2ブレンドを真空オーブン中で120℃において48時間乾燥させた。ブレンドは全て、ポリエチレン成核剤3.3重量%を含んでいた。ポリアミド及びTiO2の濃度を表IVに挙げる。成分をドライブレンドしてから、ダイ温度が285℃のキリオン(Killion)1.25インチ(3.175cm)押出機を用いて30mil(0.763mm)のフィルムに押し出した。フィルムサンプルを強制空気炉中で180℃において30分間結晶化した。結晶化フィルムに関する測色を表IVに挙げる。
混合スクリューを装着した3/4インチ(1.91cm)のブラベンダー押出機を用いて、ダイ温度285℃においてドライブレンド成分を押出することによって、ポリエチレン成核剤3.3重量%、I.V.が0.61のポリ(ヘキサメチレンアジパミド)0.75重量%、及びTiO20.5重量%を含むポリエステルBのブレンドを調製した。成核剤を含むがポリアミド又はTiO2を含まないPETについてはペレット中のアセトアルデヒドが7.7ppmであるのに比べて、このブレンドはペレット中のアセトアルデヒドが1.0ppmであった。

表IVの結果は、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)のようなポリアミドを含むポリエチレンテレフタレートの乳白色が二酸化チタンの添加によって改良されることを明白に示す。更に、二酸化チタンの添加はこのようなブレンドの黄色度を減少させる。
例17
ポリ(m-キシリレンアジパミド)を、以下の方法によって製造した。
アジピン酸2.69kg、m-キシリレンジアミン2.76kg(10%モル過剰)及び水4.82kgを含む混合物を調製した。混合物を窒素雰囲気下の重合反応器中に入れた。混合物を30分間還流するまで攪拌しながら加熱した。混合物を120℃に加熱し、60分間保持すると同時に、水を蒸留して除去した。次いで、温度を3.25時間にわたって275℃に上昇させた。混合物を30分間、275℃において攪拌した。ポリ(m-キシリレンアジパミド)を水中に押し出し、粉砕し、そして乾燥させた。ポリ(m-キシリレンアジパミド)の数平均分子量及びI.V.を測定すると、各々、6.730g/モル及び0.41dL/gであった。
前述のようにして製造したポリ(m-キシリレンアジパミド)と、ポリエステルCとのブレンドを以下の方法で製造した。
ポリアミドを微粉砕し、次いで、真空オーブン中で120℃において48時間乾燥させた。ポリエステルCをコンエア乾燥機中で150℃において16時間乾燥させた。ポリアミド粉末を0.5重量%の濃度でポリエステルCペレットとドライブレンドした。ブレンドを、混合スクリューが装着された3/4インチ(1.91cm)のブラベンダー押出機を用いて270℃のダイ温度において押出及びペレット化した。ブレンドから発生したアセトアルデヒドを表VIに要約する。
以下の方法によってボトルを調製した。前述のように製造したポリ(m-キシリレンアジパミド)0.34kgをポリエステルC65.58kg及び、1-シアノ-6-(4-(2-ヒドロキシエチル)アニリノ)-3-メチル-3H-ジベンゾ(F,I,J)イソキノリン-2,7-ジオン250ppmを含む濃縮物2.18kgとドライブレンドした。ブレンドは着色剤8ppmを含んでいた。この濃縮物は、エステル交換後、重縮合前において、重合の間にPETのバッチに1-シアノ-6-(4-(2-ヒドロキシエチル)アニリノ)-3-メチル-3H-ジベンゾ(F,I,J)イソキノリン-2,7-ジオンを添加することによって調製した。濃縮物用のPET基材は、標準溶融相重合法を用いてジメチルテレフタレート及びエチレングリコールから調製した。ポリエステル樹脂を強制空気乾燥機中で乾燥させた。ボトル予備成形品は、8個取予備成形金型を装着したハスキー(Husky)XL225射出成形機上で二段延伸ブロー成形法を用いて成形した。ボトル予備成形品は溶融温度275〜300℃において成形した。予備成形品はボトルブロー成形工程前に周囲条件において24時間貯蔵した。ボトルは、石英ランプを用いて予備成形品を再加熱することによってブロー成形した。予備成形品はガラス転移温度よりもわずかに高温に加熱し、加圧して、2リットルのボトル型金型の中にブロー成形した。ボトルのヘッドスペース、側面曇り価及びこれらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表Vに要約する。各ブレンドを8回試験し、8個のボトルについてヘッドスペースアセトアルデヒド残留(HSAA)に関する標準偏差を括弧内に挙げる。

表Vのデータは、本発明のポリアミドを使用すると曇り価のレベルがわずかに増加することを示す。また、メルト温度が上昇するにつれて、発生するアセトアルデヒドが増加することに注目することは重要である。
例18
ポリ(m-キシリレンアジパミド)を、以下の方法によって製造した。
アジピン酸43.80g、m-キシリレンジアミン46.92g(15%モル過剰)及び水50gを含む混合物を窒素雰囲気下の500mlフラスコ中に入れた。混合物を例10に記載した方法に従って調製し、そして重合させた。ポリ(m-キシリレンアジパミド)はI.V.が0.31dL/g及び数平均分子量が3,050g/モルであった。末端アミノ基濃度は0.42mmol/gであった。末端カルボキシル基濃度は0.011mmol/gであった。
ポリ(m-キシリレンアジパミド)とポリエステルCとのブレンドを例17と同様にして調製した。これらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表VIに要約する。
ボトルを例10と同様にして調製した。ボトルヘッドスペース、側面曇り価及びこれらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表VIに要約する。
例19
ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)を、以下の方法によって製造した。
イソフタル酸及びヘキサメチレンジアミンの予め形成された塩98.7g、ヘキサメチレンジアミンの70%水溶液10.36g(15%モル過剰)及び水60.0gを含む混合物を窒素雰囲気下の500mlフラスコ中に入れた。混合物を20〜30分間還流するまで攪拌しながら加熱した。水を蒸留して除去し、温度を30分間にわたって285℃に上昇させた。混合物を30分間285℃において攪拌した。ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)を水中に押し出し、粉砕し、そして乾燥させた。ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)はI.V.が0.15dL/g及び数平均分子量1,800であった。
前述のようにして製造したポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)と、ポリエステルCとのブレンドを以下の方法で製造した。
ポリアミドを微粉砕し、次いで、真空オーブン中で120℃において48時間乾燥させた。ポリエステルCをコンエア乾燥機中で150℃において16時間乾燥させた。ポリアミド粉末を0.5重量%の濃度でポリエステルCペレットとドライブレンドした。ブレンドを、混合スクリューが装着された3/4インチ(1.91cm)のブラベンダー押出機を用いて270℃のダイ温度において押出及びペレット化した。ブレンドから発生したアセトアルデヒドを表VIに要約する。
例10と同様にしてボトルを調製した。ボトルのヘッドスペース、側面曇り価及びこれらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表VIに要約する。
例20
I.V.が0.854dL/g及び数平均分子量の18,000の、三菱ガス化学(株)製のMXD6ポリアミド、グレード#6001を微粉砕し、真空オーブン中で120℃において48時間乾燥させた。ポリエステルCと乾燥ポリアミド粉末とを乾式タンブル混合することによって、0.25及び0.5重量%のMXD6ポリアミドのブレンドを調製した。予備成形品を、8個のキャビティー予備成形金型を装着したハスキー(Husky)XL225射出成形機上で287℃の溶融温度において射出成形した。この予備成形品を2リットルのボトルに再加熱ブロー成形した。ボトルのヘッドスペース、側面曇り価及びこれらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表VIに要約する。
例21
I.V.が1.4dL/g及び数平均分子量の24,000の、市販の成形用ポリ(カプロラクタム)を微粉砕し、次いで、真空オーブン中で120℃において48時間乾燥させた。
例11と同様にしてボトルを調製した。ボトルのヘッドスペース、側面曇り価及びこれらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表VIに要約する。
例22
I.V.が0.85dL/g及び数平均分子量の18,000の、三菱ガス化学(株)製のMXD6ポリアミド、グレード#6001を微粉砕し、真空オーブン中で120℃において48時間乾燥させた。
例11と同様にしてボトルを調製した。ボトルのヘッドスペース、側面曇り価及びこれらのブレンドから発生したアセトアルデヒドを表VIに要約する。

表VIの結果は、臨界量で使用した、本発明の低分子量ポリアミドが、例15及び20〜22において使用した高分子量ポリアミドよりも、PET基材ポリエステル中のアセトアルデヒド濃度を減少させるのに有効であることを示す。同時に、臨界量で使用した、本発明の低分子量ポリアミドは目に見える曇りを生じない。例えば、1未満のヘッドスペースアルデヒド値及び3未満の曇り価パーセントは、本発明の低分子量ポリアミドを用いて初めて同時に達成される。これに対して、比較例として使用する例15及び20〜22は、低いヘッドスペースアセトアルデヒド値及び低い曇り価を同時に達成することはできない。比較例における問題は、少量の高分子量ポリアミドを使用する場合には許容され得るレベルの曇りが達成できるが、残留アセトアルデヒドが非常に多いことである。他方、比較的多量の高分子量ポリアミドを使用する場合には、残留アセトアルデヒドは曇りを犠牲にした場合にのみ減少させることができる。従って、本発明は曇りを犠牲にした場合にしか低残留アセトアルデヒドを達成できないという二律背反性を克服した。
前記の詳細な説明に鑑みて、多くの変更が当業者には自明であろう。このような自明な修正は全て、添付した請求の範囲の全範囲内であることを意図するものである。
以下に本発明の態様を説明する。
1.(A)(1)少なくとも85モル%のテレフタル酸からの反復単位を含んでなるジカルボン酸成分;及び
(2)少なくとも85モル%のエチレングリコールからの反復単位を含んでなるジオール成分(ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準)
を含んでなるポリエステル98.0〜99.95重量%;並びに
(B)12,000未満の数平均分子量を有する低分子量の部分芳香族ポリアミド、6,000未満の数平均分子量を有する低分子量の脂肪族ポリアミド、及びそれらの組合せからなる群から選ばれたポリアミド2.0〜0.05重量%((A)及び(B)の総重量は100%である)
を含んでなる、改良された風味保持性を有するポリエステル組成物。
2.(A)(1)テレフタル酸からの反復単位から本質的になるジカルボン酸成分;及び
(2)エチレングリコールからの反復単位から本質的になるジオール成分(ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準)
を含んでなるポリエステル98.0〜99.95重量%;並びに
(B)12,000未満の数平均分子量を有する低分子量の部分芳香族ポリアミド、6,000未満の数平均分子量を有する低分子量の脂肪族ポリアミド、及びそれらの組合せからなる群から選ばれたポリアミド2.0〜0.05重量%((A)及び(B)の総重量は100%である)
を含んでなる、改良された風味保持性を有するポリエステル組成物。
3.(A)(1)少なくとも85モル%のテレフタル酸からの反復単位を含んでなるジカルボン酸成分;及び
(2)少なくとも85モル%のエチレングリコールからの反復単位を含んでなるジオール成分(ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準)
を含んでなるポリエステル98.0〜99.95重量%;並びに
(B)12,000未満の数平均分子量を有する低分子量の部分芳香族ポリアミド2.0〜0.05重量%((A)及び(B)の総重量は100%である)を
含んでなる、改良された透明性を有するポリエステル組成物。
4.(A)(1)少なくとも85モル%のテレフタル酸からの反復単位を含んでなるジカルボン酸成分;及び
(2)少なくとも85モル%のエチレングリコールからの反復単位を含んでなるジオール成分(ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準)
からなるポリエステル98.0〜99.5重量%;並びに
(B)12,000未満の数平均分子量を有する低分子量の部分芳香族ポリアミド、6,000未満の数平均分子量を有する低分子量の脂肪族ポリアミド、及びそれらの組合せからなる群から選ばれたポリアミド2.0〜0.05重量%((A)及び(B)の総重量は100%である)
を含んでなる熱可塑性ポリエステル組成物からなる熱成型又は圧伸成型プラスチック成形品。
5.前記ジカルボン酸成分がテレフタル酸からの反復単位から本質的になり、且つ前記ジオール成分がエチレングリコールからの反復単位から本質的になる態様4に係るプラスチック成形品。
6.前記低分子量部分芳香族ポリアミドが、ポリ(m-キシリレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド-コ-イソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド-コ-テレフタルアミド)、及びポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド-コ-テレフタルアミド)からなる群から選ばれる態様1に係る組成物。
7.前記低分子量部分芳香族ポリアミドがポリ(m-キシリレンアジパミド)である態様6に係る組成物。
8.前記低分子量芳香族ポリアミドがポリ(ヘキサメチレンアジパミド)及びポリ(カプロラクタム)からなる群から選ばれる態様1に係る組成物。
9.前記低分子量芳香族ポリアミドがポリ(ヘキサメチレンアジパミド)である態様8に係る組成物。
10.前記低分子量部分芳香族ポリアミドが、ポリ(m-キシリレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド-コ-イソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド-コ-テレフタルアミド)及びポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド-コ-テレフタルアミド)からなる群から選ばれる態様4に係る成形品。
11.前記低分子量部分芳香族ポリアミドがポリ(m-キシリレンアジパミド)である態様10に係る成形品。
12.前記低分子量芳香族ポリアミドがポリ(ヘキサメチレンアジパミド)及びポリ(カプロラクタム)からなる群から選ばれる態様4に係る成形品。
13.前記低分子量芳香族ポリアミドがポリ(ヘキサメチレンアジパミド)である態様12に係る成形品。
14.前記熱可塑性ポリエステル組成物の層を含んでなる多層成形品である態様4に係る成形品。
15.共押出によって前記熱可塑性ポリエステル組成物の層を有するラミネートを形成し、そして該ラミネートを成形品に成形することによって得られる態様14に係る成形品。
16.結晶化助剤、耐衝撃性改良剤、離型剤、嵌め外し剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、着色剤、成核剤、ホスフェート安定剤、加工助剤及び充填剤からなる群からなる群から選ばれた添加剤を更に含む態様1に係る組成物。
17.前記成核剤がポリエチレンである態様16に係る組成物。
18.前記着色剤が二酸化チタンである態様16に係る組成物。
19.前記着色剤がカーボンブラックである態様16に係る組成物。
20.結晶化助剤、耐衝撃性改良剤、離型剤、嵌め外し剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、着色剤、成核剤、ホスフェート安定剤、加工助剤及び充填剤からなる群から選ばれた添加剤を更に含む態様4に係る製品。
21.前記成核剤がポリエチレンである態様20に係る成形品。
22.前記着色剤が二酸化チタンである態様20に係る成形品。
23.前記着色剤がカーボンブラックである態様20に係る成形品。
24.前記着色剤が1-シアノ-6-(4-(2-ヒドロキシエチル)アニリノ)-3-メチルは3H-ジベンゾ(F,I,J)インキノリン-2,7-ジオンである態様20に係る成形品。
25.熱可塑性ポリエステルを、ポリエステル基準で0.05〜2.0重量%の、数平均分子量が12,000未満の低分子量の部分芳香族ポリアミド、数平均分子量が6,000未満の低分子量の脂肪族ポリアミド及びそれらの組合せからなる群から選ばれたポリアミドとドライブレンドし、組成物を溶融混練し、そして溶融混練組成物を成形品に熱成形することを含んでなる、熱成形品ポリエステル成形品のアセトアルデヒド濃度を減少させる方法。
26.態様25の方法の成形品。
(57)【特許請求の範囲】
1.(A)(1)少なくとも85モル%のテレフタル酸からの反復単位を含んでなるジカルボン酸成分;及び
(2)少なくとも85モル%のエチレングリコールからの反復単位を含んでなるジオール成分(ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準)
を含んでなるポリエステル98.0〜99.95重量%;並びに
(B)12,000未満の数平均分子量を有する低分子量の部分芳香族ポリアミド、6,000未満の数平均分子量を有する低分子量の脂肪族ポリアミド、及びそれらの組合せからなる群から選ばれたポリアミド2.0〜0.05重量%(但し(A)及び(B)の総重量は100%であり、前記低分子量脂肪族ポリアミドはポリ(ヘキサメチレンアジパミド)及びポリ(カプロラクタム)からなる群から選ばれたものである)
を含んでなる、改良された風味保持性を有するポリエステル組成物。
2.(A)(1)少なくとも85モル%のテレフタル酸からの反復単位を含んでなるジカルボン酸成分;及び
(2)少なくとも85モル%のエチレングリコールからの反復単位を含んでなるジオール成分(ジカルボン酸100モル%及びジオール100モル%基準)
を含んでなるポリエステル98.0〜99.95重量%;並びに
(B)ポリ(m-キシリレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド-コ-イソフタルアミド)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド-コ-テレフタルアミド)及びポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド-コ-テレフタルアミド)からなる群から選ばれた、12,000未満の数平均分子量を有する低分子量の部分芳香族ポリアミド2.0〜0.05重量%((A)及び(B)の総重量は100%である)
を含んでなる、改良された透明性を有するポリエステル組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-07-30 
出願番号 特願平5-517684
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (C08L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 森川 聡  
特許庁審判長 柿崎 良男
特許庁審判官 佐野 整博
佐藤 健史
登録日 2001-09-07 
登録番号 特許第3229321号(P3229321)
権利者 イーストマン ケミカル カンパニー
発明の名称 改良された風味保持性及び透明性を有するポリエステル/ポリアミドブレンド  
代理人 石田 敬  
代理人 西山 雅也  
代理人 竹内 浩二  
代理人 鶴田 準一  
代理人 樋口 外治  
代理人 西山 雅也  
代理人 鶴田 準一  
代理人 竹内 浩二  
代理人 石田 敬  
代理人 樋口 外治  

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