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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1122954
異議申立番号 異議1999-74639  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-11-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-12-07 
確定日 2005-09-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第2911872号「遊技装置」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2911872号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由 1・手続の経緯
本件特許第2911872号の発明は、平成10年4月13日に出願され、平成11年4月9日設定登録され、その後、アルゼ株式会社、鈴木良子、森下辰夫よりそれぞれ特許異議の申立てがなされ、平成15年1月21日付けの取消理由通知に対し、その指定期間内である平成15年3月25日に訂正請求がなされ、平成15年9月5日付けで取消理由通知がなされ、その後、平成15年11月20日付けで特許異議意見書が提出されたものである。
2・訂正の適否
(2-1)訂正明細書(平成15年3月25日付け訂正請求書に添付のもの)の請求項1及び5に係る各発明
訂正明細書の請求項1及び5に係る各発明は、その特許請求の範囲の請求項1及び5に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
請求項1
「種々の表示内容を連続的に変化させつつ表示し得る1又は2以上の表示手段と、遊技者の操作によりその表示手段に前記表示内容を固定的に表示させるための表示固定手段とを有し、前記表示手段が固定的に表示した表示内容が所定の入賞条件を達成することと入賞とが対応するゲームを実行する遊技機であって、
全ての賞又は一部の賞である内部当り対象賞に関し、所定の内部当り条件の達成によって、その内部当り条件に対応する賞について内部当り状態を設定する内部当り設定手段と、
内部当り対象賞の一部である特定の賞に内部当り状態が設定されている場合においてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合に、内部当りの抽選が行われていると遊技者が思うような態様であって抽選に当選したような結果になる報知を行うことにより遊技者に内部当り状態が設定されていることを報知する報知手段と、
前記特定の賞について内部当り状態の設定がない場合に、所定の疑似内部当り条件の達成によって、疑似内部当り状態を設定する疑似内部当り設定手段と、
疑似内部当り状態が設定されている場合に、内部当りの抽選が行われていると遊技者が思うような態様であって抽選が外れたような結果になる報知を遊技者に対し行う疑似報知手段を備え、
前記特定の賞が、内部当り状態が設定されていても入賞が確実ではなく、内部当り状態が、所定の複数回のゲームにおいて入賞するまでの間又は入賞するまでのゲームにおいて継続されるものであることを特徴とする遊技装置」
請求項5
「上記特定の賞に内部当り状態が設定されるゲームの比率が1/100乃至1/300であり、上記疑似内部当り状態が設定されるゲームの比率が1/10乃至1/50である請求項1,2,3又は4記載の遊技装置」
(2-2)刊行物 (取消理由にて引用した順)
刊行物1:パチスロ必勝ガイド98年5月号(株式会社白夜書房発行)。
刊行物2:本件特許出願前に国内において頒布された刊行物である特開平8-117390号公報。
刊行物3:本件特許出願前に国内において頒布された刊行物である特開平8-336642号公報。
(2-3)刊行物1の公知性
刊行物1の表紙右上部には、「平成10年5月1日発行(毎月1回1日発行)」と記載されている。
しかし、
(ア)刊行物1の前月号に当たる特許異議申立人アルゼ株式会社が引用した甲第1号証「パチスロ必勝ガイド98年4月号」の第122頁(甲第1号証の第18頁の「4月号CONTENTS」の下部囲み、「連載軍団」の「P122・・・編集後記&次号告知」参照)には、「次号告知」として「パチスロ必勝ガイド5月号3月23日(月)」と記載されていること、
(イ)同じくアルゼ株式会社が甲第5号証として引用した、丸善ブックメイツワンザ有明店がユニバーサル販売開発管理部特許課宛に出した「パチスロ必勝ガイド5月」の納品書の日付が「98年3月23日」であること、
からみて、
刊行物1は、本件の出願日である平成10年(西暦1998年)4月13日より前に発行されたものと認めることができる。
(2-4)刊行物に記載された発明
刊行物1には、
特に、
「デジタル告知機能と銘打たれたフラグ告知にある。デジタル告知機能とは、ボーナスフラグが成立したゲームの第3リールを止めた瞬間に効果音が鳴り、それと共に普段は消えているクレジットランプ上部のデジタルが回転を始め、そして、デジタルが「7」で停止すればビッグ、「3」ならレギュラーというものだ。ただ光るだけでは終わらない、成立フラグが一発丸判りの究極のフラグ告知システムとなっているのだ」(第64頁上段左から第6行〜中段右から第6行)の記載、
からみて、
「種々の絵柄を連続的に変化させつつ表示し得る3個のリールを有するパチスロであって、
ボーナスフラグが成立したゲームの第3リールを止めた瞬間に、普段は消えているクレジットランプ上部のデジタルが回転を始め、そして、デジタルが「7」で停止すればビッグという告知を行うことにより遊技者にボーナスフラグが成立したことを告知するデジタルを備えるパチスロ」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。(以下、「刊行物1に記載される発明」という。)
刊行物2には、
特に、
(ア)「可変表示部の可変表示動作を停止制御する制御部」(第4頁第5欄第41行)の記載、
(イ)「遊技者はこれらのボタンを押圧操作することで、対応するリールの回転を停止させることができる。このとき、上記のように有効化されている入賞ライン上で停止したシンボルの組合せが入賞組合せに該当していれば、その入賞の種類に応じた枚数のメダルが・・・払い出される」(第5頁第7欄第46行〜第8欄第1行)の記載から、
遊技者がボタンを押圧操作することで可変表示部2〜4に停止した図柄が有効化されている入賞ライン上で入賞組合わせに該当していればその入賞の種類に応じた枚数のメダルが払い出されるものと認められること、
(ウ)「スロットマシンにおける入賞役の例としては、上記の「大ヒット」、「中ヒット」及び「小ヒット」があるが、以下の例では、「大ヒット」及び「中ヒット」に前述のBB及びNBをそれぞれ対応させる。そして、これら2つの入賞役には、表2に示すように各々2種類の内部的当選役・・・が設定され」(第7頁第12欄第14〜19行)及び表2(第7頁)の記載から、
大ヒット、中ヒット及び小ヒットの内の大ヒット及び中ヒットが内部的当選役であり、又、ビッグボーナスが内部的当選役の一部であるものと認められること、
(エ)上記(ウ)の第7頁第12欄第14〜19行、「制御部は、乱数値が内部的当選役のいずれかに該当するか否かの判断を・・・行う」(第4頁第6欄第10〜13行)及び「乱数値をBB・・・の当選幅・・・と比較し・・・BB・・・に該当するか否かを判定する・・・その結果、該当する場合には、内部的当選が達成され・・・乱数値がBB・・・にも当選しない場合には・・・乱数値を次の内部的当選役NB・・の当選幅・・・と比較し・・・NB・・・に該当するか否かを判定する・・・その結果、該当する場合には内部的当選が達成され・・・最後に、乱数値がNB・・・にも当選しない場合には、その他の役の抽選処理を行う・・・ここで、どの役にも該当しなければ、「ハズレ」になる」(第7頁第12欄第42行〜第8頁第14欄第4行)の記載から、
制御部は、内部的当選役に関し、所定の内部的当選条件の達成によって、その内部的当選条件に対応する賞について内部的当選状態を設定するものと認められること、
(オ)「大ヒットが得られたときには通常のゲームモードからビッグボーナス(BB)ゲームモードに移行し」(第3頁第3欄第38〜40行)、「例えば“7-7-7”が大ヒットのシンボルの組合せであるとき、マイコンは、この大ヒットシンボルの組合せが入賞ライン上に並ぶように可変表示部を停止制御するが、実際に可変表示が停止した時に大ヒットのシンボルの組合せになるかどうかは、遊技者の停止操作のタイミングに依存する。従って、“7-7-7”の大ヒットリクエスト信号が発生した状態になっていても、遊技者がその大ヒットシンボルの組合せを入賞ライン上に並ばせることができなかった場合には、入賞ライン上に“7-7-α”(αは“7”以外の特定のシンボル)のような組合せのシンボル表示を行うように制御すると、大ヒットが近いという状態を表すのに好適である。このように大ヒットが近いことを示すシンボルの組合せは、「リーチ目」と称されている」(第3頁第4欄第12〜25行)、「また、「大ヒット」のような特定の入賞図柄に対応する内部的当選役に当っているとき、可変表示が停止した時にその特定の入賞図柄になるかどうかは、可変表示を停止させる遊技者の操作タイミングに応じて決定されるが、可変表示の停止により可変表示部に出現し得る図柄の組合せが特定の入賞図柄でない場合は、前述の「リーチ目」を出現させることにより、遊技者に内部的当選が特定の入賞であることを知らせることができる」(第5頁第7欄第4〜12行)、「乱数値が内部的当選役のいずれかに該当するとき、その内部的当選を遊技者に知らせる報知手段を備える」(第4頁第6欄第14〜16行)及び「内部的当選の後、リールの回転停止操作によって出現し得る図柄組合せが「大ヒット」のような特定の入賞図柄でない場合には、「リーチ目」を出現させることにより、遊技者に対し内部的当選を知らせるようにしてもよい」(第10頁第17欄第35〜39行)の記載から、
内部的当選役の一部であるビッグボーナスに内部的当選状態が設定されている場合においてその内部的当選状態が設定されているビッグボーナスに入賞しなかった場合に、リーチ目を出現させることにより遊技者に内部的当選状態が設定されていることを報知する報知手段が備えられているものと認められること、
(カ)上記(オ)の第3頁第4欄第12〜25行及び第5頁第7欄第4〜12行並びに「BB、NBが内部当選してから入賞する(入賞組合せになる)までの遊技数は・・・本実施例では平均19回である」(第8頁第14欄第12〜14行)の記載から、
ビッグボーナスが、内部的当選状態が設定されていても入賞が確実ではなく、内部的当選状態が、所定の複数回のゲームにおいて入賞するまでのゲームにおいて継続されるものと認められること、
からみて、
「複数の図柄を可変表示する3個の可変表示部2〜4と、遊技者がストップボタンを押圧操作することでその可変表示部2〜4の可変表示動作を停止制御する制御部とを有し、前記可変表示部2〜4に停止した図柄が有効化されている入賞ライン上で入賞組合わせに該当していればその入賞の種類に応じた枚数のメダルが払い出されるゲームを実行する遊技機であって、
大ヒット、中ヒット及び小ヒットの内の大ヒット及び中ヒットである内部的当選役に関し、所定の内部的当選条件の達成によって、その内部的当選条件に対応する賞について内部的当選状態を設定する制御部と、
内部的当選役の一部であるビッグボーナスに内部的当選状態が設定されている場合においてその内部的当選状態が設定されているビッグボーナスに入賞しなかった場合に、リーチ目を出現させることにより遊技者に内部的当選状態が設定されていることを報知する報知手段を備え、
前記ビッグボーナスが、内部的当選状態が設定されていても入賞が確実ではなく、内部的当選状態が、所定の複数回のゲームにおいて入賞するまでのゲームにおいて継続されるものである遊技装置」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。(以下、「刊行物2に記載される発明」という。)
刊行物3には、
特に、
(ア)「可変開始させた後、表示結果を導出表示させる制御を行なう可変表示制御手段」(第2頁第1欄第4,5行)の記載、
(イ)「可変停止された状態で・・・予め定められた特定の識別情報の組合せ・・・となり、表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合には、特定遊技状態が発生して・・・大当り状態となる」(第3頁第4欄第30〜35行)及び「以下に示す第2実施例は、図1〜図3に示されたものと同様の構成の遊技機に適用されるものである」(第10頁第18欄第11〜13行)の記載、
(ウ)「CPUは・・・C RND1の値の読出および判定を行なう」(第8頁第13欄第49行〜第14欄第2行)、「C RND1の値を抽出し、その抽出値が通常時においては「3」のとき、前述した高確率状態時においては「3」・・・であるときには、大当りを発生させることが事前決定される」(第11頁第19欄第1〜6行)及び(ア)の第10頁第18欄第11〜13行記載から、
CPUがC RND1の値を抽出し、その抽出値が「3」のときには大当たりを事前決定するものと認められること、
(エ)「大当りを発生させることが事前決定された場合には・・・大当り予告を実行する」(第11頁第19欄第6〜9行)、「図16〜図19は、大当り予告の報知方法の具体例を示す説明図である。まず、キャラクタを用いた報知方法の例を説明する。図16には、音およびキャラクタの両方を用いた具体的な報知方法が示される」(第12頁第22欄第41〜44行)、「3つ目の始動記憶・・・が大当りとなることが事前に決定されている」(第13頁第23欄第1,2行)、「3つ目の始動記憶・・・に対応して、音の報知がなされるとともに、移動中のキャラクタ55の動作がさらに継続される」(第13頁第23欄第11〜13行)及び図16(第21頁)の記載から、
大当りが事前決定されている場合に、移動中のキャラクタ55の動作がさらに継続される報知を行うことにより遊技者に大当りが事前決定されていることを報知するキャラクタを用いた報知方法が行われるものと認められること、
(オ)「大当りが事前決定されていない遊技状態(図中「大当り以外」)」(第11頁第19欄第27,28行)及び「「大当り以外」の場合は、C RND YOKの・・・抽出値が「0」〜「3」である場合には、音による大当り予告の報知を行う。抽出値が「500」〜「503」である場合には、キャラクタによる偽りの大当り予告の報知を行なう。抽出値が「800」である場合には、音およびキャラクタの両方による偽りの大当り予告の報知を行なう」(第11頁第19欄第33〜40行)の記載から、
大当りが事前決定されていない場合に、C RND YOKの抽出値が「0」〜「3」、「500」〜「503」及び「800」である場合に、C RND YOKが偽りの大当りを設定するものと認められること、
(カ)「偽りの大当り予告の報知の場合に限り、その大当り予告報知の最後の回のリーチ表示において、キャラクタ55が画面の左横へ戻って消えるようにしてもよい。このようにすれば、遊技者は、偽りの大当り予告であることを認識することができる」(第13頁第23欄第15〜19行)の記載から、
偽りの大当りが設定されている場合に、キャラクタ55が画面の左横へ戻って消える偽りの大当り予告であることを認識することができる報知を遊技者に対し行う偽りの大当り予告があるものと認められること、
からみて、
「種々の識別情報を連続的に変化させつつ表示し得る3個の可変表示部と、その可変表示部に前記識別情報を可変開始させた後、表示結果を導出表示させる制御を行う可変表示制御手段とを有し、前記可変表示部が可変停止された状態の識別情報が予め定められた特定の識別情報の組合わせとなり表示結果が予め定められた表示態様となった場合には、特定遊技状態が発生して大当り状態を実行する遊技機であって、
C RND1の値を抽出し、その抽出値が「3」のときには大当りを事前決定するCPUと、
大当りが事前決定されている場合に、移動中のキャラクタ55の動作がさらに継続される報知を行うことにより遊技者に大当りが事前決定されていることを報知するキャラクタを用いた報知方法と、
大当りが事前決定されていない場合に、C RND YOKの抽出値が「0」〜「3」、「500」〜「503」及び「800」である場合に、偽りの大当りを設定する手段と、
偽りの大当りが設定されている場合に、キャラクタ55が画面の左横へ戻って消える偽りの大当り予告であることを認識することができる報知を遊技者に対し行う偽りの大当り予告を備える遊技装置」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。(以下、「刊行物3
に記載される発明」という。)
(2-5)訂正明細書の請求項1に係る発明と刊行物に記載された発明との対比及び判断
訂正明細書の請求項1に係る発明(前者)と刊行物2に記載される発明(後者)とを対比すると、後者の、
「複数の」、「図柄」、「可変表示する」、「3個」、「可変表示部2〜4」、「遊技者がストップボタンを押圧操作することで」、「可変表示部の可変表示動作を停止制御する制御部」、「可変表示部2〜4に停止した図柄が有効化されている入賞ライン上で入賞組合わせに該当していればその入賞の種類に応じた枚数のメダルが払い出される」、「大ヒット、中ヒット及び小ヒットの内の大ヒット及び中ヒット」、「内部的当選役」、「内部的当選」、「制御部」、「ビッグボーナス」及び「リーチ目を出現させことにより」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ訂正明細書の請求項1に係る発明の、
「種々の」、「表示内容」、「連続的に変化させつつ表示し得る」、「1又は2以上」、「表示手段」、「遊技者の操作により」、「表示手段に前記表示内容を固定的に表示させるための表示固定手段」、「表示手段が固定的に表示した表示内容が所定の入賞条件を達成することと入賞とが対応する」、「一部の賞」、「内部当り対象賞」、「内部当り」、「内部当り設定手段」、「特定の賞」及び「報知を行うことにより」
に相当するものと認められるから、両者は、
「種々の表示内容を連続的に変化させつつ表示し得る1又は2以上の表示手段と、遊技者の操作によりその表示手段に前記表示内容を固定的に表示させるための表示固定手段とを有し、前記表示手段が固定的に表示した表示内容が所定の入賞条件を達成することと入賞とが対応するゲームを実行する遊技機であって、
一部の賞である内部当り対象賞に関し、所定の内部当り条件の達成によって、その内部当り条件に対応する賞について内部当り状態を設定する内部当り設定手段と、
内部当り対象賞の一部である特定の賞に内部当り状態が設定されている場合においてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合に、報知を行うことにより遊技者に内部当り状態が設定されていることを報知する報知手段を備え、
前記特定の賞が、内部当り状態が設定されていても入賞が確実ではなく、内部当り状態が、所定の複数回のゲームにおいて入賞するまでのゲームにおいて継続されるものである遊技装置」である点で一致し、
相違点1・・前者は、特定の賞について内部当り状態の設定がない場合に、所定の疑似内部当り条件の達成によって、疑似内部当り状態を設定する疑似内部当り設定手段と、疑似内部当り状態が設定されている場合に、抽選が外れたような結果になる報知を遊技者に対し行う疑似報知手段を備えているのに対し、後者には、このような疑似内部当り設定手段、及び疑似報知手段を備えていない点
相違点2・・報知の態様について、前者は、内部当り対象賞の一部である特定の賞に内部当り状態が設定されている場合においてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合の報知も、疑似報知の場合も、内部当りの抽選が行われていると遊技者が思うような態様であって、それぞれ、抽選に当選したような結果、抽選が外れたような結果になる報知を行うのに対し、後者はこのような報知手段を備えていない点
で相違するものと認められる。
相違点1について検討する。
刊行物3に記載される発明の
「識別情報」、「3個」、「可変表示部」、「可変開始させた後、表示結果を導出表示させる制御を行う可変表示制御手段」、「可変停止された状態の」、「予め定められた特定の識別情報の組合わせとなり表示結果が予め定められた表示態様となった場合には、特定遊技状態が発生して大当り状態」、「C RND1の値を抽出し、その抽出値が「3」のときには大当りを事前決定するCPU」、「大当りが事前決定されている」、「移動中のキャラクタ55の動作がさらに継続される」、「キャラクタを用いた報知方法」、「大当りが事前決定されていない」、「C RND YOKの抽出値が「0」〜「3」、「500」〜「503」及び「800」である場合に」、「偽りの大当り」、「偽りの大当りを設定する手段」、「キャラクタ55が画面の左横へ戻って消える偽りの大当り予告であることを認識することができる」及び「偽りの大当り予告」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「表示内容」、「1又は2以上」、「表示手段」、「固定的に表示させるための表示固定手段」、「固定的に表示した」、「所定の入賞条件を達成することと入賞とが対応するゲーム」、「内部当り対象賞に関し、所定の内部当り条件の達成によって、その内部当り条件に対応する賞について内部当り状態を設定する内部当り設定手段」、「内部当り状態が設定されている」、「抽選に当選したような結果になる」、「報知手段」、「前記特定の賞について内部当り状態の設定がない」、「所定の疑似内部当り条件の達成によって」、「疑似内部当り状態」、「疑似内部当り設定手段」、「抽選が外れたような結果になる」及び「疑似報知手段」
に相当するものと認められるから、
刊行物3に記載される発明には、
「種々の表示内容を連続的に変化させつつ表示し得る1又は2以上の表示手段と、その表示手段に前記表示内容を固定的に表示させるための表示固定手段とを有し、前記表示手段が固定的に表示した表示内容が所定の入賞条件を達成することと入賞とが対応するゲームを実行する遊技機であって、
内部当り対象賞に関し、所定の内部当り条件の達成によって、その内部当り条件に対応する賞について内部当り状態を設定する内部当り設定手段と、
内部当り状態が設定されている場合に、抽選に当選したような結果になる報知を行うことにより遊技者に内部当り状態が設定されていることを報知する報知手段と、
内部当り状態の設定がない場合に、所定の疑似内部当り条件の達成によって、疑似内部当り状態を設定する疑似内部当り設定手段と、
疑似内部当り状態が設定されている場合に、抽選が外れたような結果になる報知を遊技者に対し行う疑似報知手段を備える遊技装置」という構成、
すなわち、後者は内部当りと大当りが連動しているものであるが、
相違点1の前者の主要部分の構成である
「内部当り対象賞について内部当り状態の設定がない場合に、所定の疑似内部当り条件の達成によって、疑似内部当り状態を設定する疑似内部当り設定手段と、疑似内部当り状態が設定されている場合に、抽選が外れたような結果になる報知を遊技者に対し行う疑似報知手段」という構成、
が備わっているものと認められる。
また、後者も、刊行物3に記載される発明も、共に、「種々の表示内容を連続的に変化させつつ表示し得る1又は2以上の表示手段」を有する、極めて近似した遊技機乃至遊技装置に関するものである以上、
後者の内部当り対象賞の一部である特定の賞に内部当り状態が設定されている場合においてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合に、刊行物3に記載される発明を適用し、後者に、「特定の賞について内部当り状態の設定がない場合に、所定の疑似内部当り条件の達成によって、疑似内部当り状態を設定する」という構成を持つ「疑似内部当り設定手段」、及び「疑似内部当り状態が設定されている場合に、抽選が外れたような結果になる報知を遊技者に対し行う」という構成を持つ「疑似報知手段」を備えさせ、後者を相違点1の前者のように構成することは、当業者が格別創意工夫を要することではないというべきである。
また、相違点1に関し、前者の効果が、後者及び刊行物3に記載される発明の各効果の総和以上の格別なものとは認められない。
相違点2について検討する。
前者における疑似報知が擬似であることが遊技者にわかるためには、少なくとも最初は正しいものなのかそれとも疑似なのかの区別が付かないが、最終的な報知により本当のものか疑似のものかがわかる報知でなければならない。即ち、最初はどちらかわからない状態をしばらく続け遊技者の興味を引きつけ、最後に結果を報知する。抽選が行われていると思わせる態様は、まさにこのような態様の一種であって、抽選により、どのような結果が出るか分からないための期待感、気(興趣)を持たせるための常套手段として、遊技機の分野に広く用いられているものである。たとえば、パチンコ機の分野における、抽選による内部当たりが既に行われたとしても、可変表示器を回転させることにより、その回転中はあたかも抽選が行われているように見せかけ、回転の停止に伴って抽選の結果を表示することは慣用されている事項であり、刊行物1に記載される発明においても、このように見せかけ(あたかも抽選が行われているように見える形態、即ちデジタルが回転している状態)、内部当たりの種類を報知することが行われている。しかも、報知にこのような手段を採用することに格別な技術的工夫を要するものとはいえない。
そうすると、後者において、刊行物3に記載される発明のような内部当たりの疑似報知を採用するにあたって、上記刊行物1に記載される発明のような周知技術を採用して前者の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者の設計的事項程度のことというべきである。
また、相違点1,2に関し、前者の効果が、後者、刊行物3に記載される発明、及び周知技術の各効果の総和以上の格別なものとは認められない。
(2-6)訂正明細書の請求項5に係る発明と刊行物に記載される発明との対比及び判断
訂正明細書の請求項5に係る発明(前者)と刊行物2に記載される発明(後者)とを対比すると、
両者間には、上記に記した請求項1に係る発明の相違点1,2の他に、
前者が、上記特定の賞に内部当り状態が設定されるゲームの比率が1/100乃至1/300であり、上記疑似内部当り状態が設定されるゲームの比率が1/10乃至1/50である、
のに対し、
後者が、かかる構成を備えていない、
という新たな相違点があるものと認められる。
しかし、この新たな相違点の前者の構成は、内部当たり、疑似内部当たりをどの程度の割合で設定するかという数値の限定であり、単にその良好な範囲を設定しているだけでるから、当業者の設計的事項というべきものであり、当業者が適宜採用し得る事項にすぎない。
したがって、前者は、後者及び3に記載される発明、及び刊行物1に記載される発明のような周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、前者の効果が、前者及び刊行物3に記載される発明、及び刊行物1に記載される発明のような周知技術の各効果の総和以上の格別なものとは認められない。
(2-7)訂正明細書の請求項2〜4に係る各発明について
訂正明細書の請求項2〜4は、文言上は訂正されていない。しかし、何れも、訂正明細書の請求項1を引用するものであるから検討する。
訂正明細書の請求項2〜4に係る各発明のうち、訂正されていない各構成、すなわち、引用構成を除く各構成、についてみると、請求項2に係るものは、下記(3-5-2)の所に記したように、当業者が格別創意工夫を要するものではなく、請求項3に係るものは、下記(3-5-3)の所に記したように、刊行物1に記載されたものであり、請求項4に係るものは、下記(3-5-4)の所に記したように、当業者が格別創意工夫を要するものではない。一方、引用構成である訂正明細書の請求項1に係る発明は、上記(2-5)の所に記したように、当業者が格別創意工夫を要するものではない。そうすると、訂正明細書の請求項2〜4に係る各発明は、それぞれ、訂正されていない各構成と引用構成とからなるものであるから、当業者が格別創意工夫を要するものではないというべきである。
(2-8)平成15年11月20日付け特許異議意見書について
(2-8-1)同意見書において、刊行物1の「ボーナスフラグが成立したゲームの第3リールを止めた瞬間に効果音が鳴り、それと共に普段は消えているクレジットランプ上部のデジタルが回転を始め、そして、デジタルが「7」で停止すればビッグ、「3」ならレギュラーというものだ」という記載は、「内部当りの抽選が行われていると遊技者が思うような態様であって抽選に当選したような結果になる報知を行うことにより遊技者に内部当り状態が設定されていることを報知する」というものではない、旨主張している。
しかし、訂正明細書の段落【0030】において、「あたかもその報知の時点において内部当りの抽選が行われていると遊技者が思うような態様」として例示するものの一つは、同段落の「表示装置により表示される数字(又は文字若しくは図形)を連続的に変化させ、最後に当りの数字(又は文字若しくは図形)を表示させる態様(より具体的には、ルーレットのような表示態様)」であり、これは具体的には、訂正明細書の段落【0090】、【0091】の「BBフラグ・・・がセットされていて入賞なしと判定された場合において、BBフラグがセットされているときは・・・内部当り・・・表示用デジタル表示器36に表示させる数字として、「3」又は「7」を・・・セットする・・・次いで・・・内部当り・・・表示用デジタル表示器36が作動を開始すると共に・・・スピーカ20から「作動開始」効果音を出力する。更に・・・内部当り・・・表示用デジタル表示器36が0乃至9の10種の数字を素早く変更しつつ表示した後約5秒後にセットされた数字を固定的に表示する」というものであると認められ、しかして、この段落【0090】、【0091】の記載が、上記刊行物1の記載とよく符合することからすれば、刊行物1に記載された発明の報知手段も、「あたかもその報知の時点において内部当りの抽選が行われていると遊技者が思うような態様」のものであることは疑う余地がないから、上記主張は理由がない。
(2-8-2)同意見書において、刊行物3の第13頁第23欄第16〜18行における「大当り予告報知の最後の回のリーチ表示において、キャラクタ55が画面の左横へ戻って消えるようにしてもよい」という記載は、たまたま記載された内容にすぎない、旨主張している。
しかし、刊行物3の第13頁第23欄第18、19行に記載されているように、「このようにすれば、遊技者は、偽りの大当り予告であることを認識することができる」ことは明らかであるので、上記主張は理由がない。
(2-9)まとめ
以上のとおり、訂正明細書の請求項1〜5に係る各発明は、当業者が刊行物2、3に記載される各発明、及び刊行物1に記載される発明のような周知技術に基いて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、当該訂正は、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
3・特許異議申立てについて
(3-1)本件請求項1〜5に係る各発明
上記(2-7)に記したように、訂正が認められないから、本件請求項1〜5に係る各発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
請求項1
「種々の表示内容を連続的に変化させつつ表示し得る1又は2以上の表示手段と、その表示手段に前記表示内容を固定的に表示させるための表示固定手段とを有し、前記表示手段が固定的に表示した表示内容が所定の入賞条件を達成することと入賞とが対応するゲームを実行する遊技機であって、全ての賞又は一部の賞である内部当り対象賞に関し、所定の内部当り条件の達成によって、その内部当り条件に対応する賞について内部当り状態を設定する内部当り設定手段と、内部当り対象賞の一部又は全てである特定の賞に内部当り状態が設定されている場合においてその内部当り状態が設定されている特定の賞に入賞しなかった場合に遊技者に内部当り状態が設定されていることを報知する報知手段と、前記特定の賞について内部当り状態の設定がない場合に、所定の疑似内部当り条件の達成によって、疑似内部当り状態を設定する疑似内部当り設定手段と、疑似内部当り状態が設定されている場合に前記報知手段により報知される内容と同一又は類似の内容を遊技者に報知する疑似報知手段を備えることを特徴とする遊技装置」
請求項2
「上記遊技機が、外周面に複数のシンボルが表示され、回転停止状態において前記シンボルの1又は2以上を遊技者が視認し得る、回転自在に支持された回転体、及びその回転体を回転駆動するための回転駆動装置からなる1又は2以上の表示装置と、回転駆動されている前記回転体を停止させてシンボルを固定表示させるための表示固定装置とを有し、その表示固定装置によって停止した回転体における前記シンボルの種類とその停止位置が所定の入賞条件を達成することと入賞とが対応するスロットマシンである請求項1記載の遊技装置」
請求項3
「特定の賞が複数種あり、特定の賞に内部当り状態が設定されている場合に報知手段によって報知される内容又は時期が、内部当り状態が設定されている特定の賞の種類に応じ変る請求項1又は2記載の遊技装置」
請求項4
「各特定の賞に対応した複数種の疑似報知内容又は疑似報知の時期を有する請求項3記載の遊技装置」
請求項5
「上記特定の賞の一部又は全てが、内部当り状態が設定されていても入賞が確実ではなく、内部当り状態が、所定の複数回のゲームにおいて入賞するまでの間又は入賞するまでの何回のゲームにおいても継続されるものである請求項1,2,3又は4記載の遊技装置」
(3-2)刊行物
刊行物1:パチスロ必勝ガイド98年5月号(株式会社白夜書房発行)。
刊行物2:本件特許出願前に国内において頒布された刊行物である特開平8-117390号公報。
刊行物3:本件特許出願前に国内において頒布された刊行物である特開平8-336642号公報。
(3-3)刊行物1の公知性
刊行物1の公知性については上記(2-3)に記したとおりである。
(3-4)刊行物に記載される発明
刊行物1〜3に記載された発明は上記(2-4)に記したとおりである。
更に、刊行物1には、
上記(2-4)の刊行物1の所で特に指摘した記載からみて、
「ボーナスがビッグとレギュラーであり、ボーナスにボーナスフラグが成立した場合にデジタルによって告知される数字が、ボーナスフラグが成立したボーナスがビッグかレギュラーかに応じ変わる刊行物1に記載された発明のパチスロ」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。(以下、「刊行物1に記載される発明B」という。)
また、刊行物2には、
上記(2-4)の刊行物2の所で特に指摘した記載からみて、
「上記遊技機が、外周面に複数のシンボルが表示され、回転停止状態において前記シンボルの3個を遊技者が視認し得る、回転自在に支持されたリール2〜4、及びそのリール2〜4を回転駆動するためのステッピングモータ2S〜4Sからなる3個の可変表示部と、回転駆動されている前記リール2〜4を停止させてシンボルを停止表示させるためのリール停止信号回路36とを有し、そのリール停止信号回路36によって停止したリール2〜4における前記シンボルの種類とその停止位置が所定の入賞条件を達成することと入賞とが対応するスロットマシンである上記刊行物2に記載された発明の遊技装置」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。(以下、「刊行物2に記載される発明B」という。)
(3-5)対比及び判断
(3-5-1)本件請求項1に係る発明と訂正明細書の請求項1に係る発明に記載された発明とを対比すると、
a.本件請求項1に係る発明の「その表示手段に」を「遊技者の操作によりその表示手段に」に
b.本件請求項1に係る発明の「内部当たり対象賞の一部又は全てである特定の賞」を「内部当たり対象賞の一部である特定の賞」に
c.本件請求項1に係る発明の「遊技者に内部当り状態が設定されていることを報知する報知手段」を「、内部当りの抽選が行われていると遊技者が思うような態様であって抽選に当選したような結果になる報知を行うことにより遊技者に内部当り状態が設定されていることを報知する報知手段」に
d.本件請求項1に係る発明の「前記報知手段により報知される内容と同一又は類似の内容を遊技者に報知する疑似報知手段を備える」を、「、内部当りの抽選が行われていると遊技者が思うような態様であって抽選が外れたような結果になる報知を遊技者に対し行う疑似報知手段を備え、前記特定の賞が、内部当り状態が設定されていても入賞が確実ではなく、内部当り状態が、所定の複数回のゲームにおいて入賞するまでの間又は入賞するまでのゲームにおいて継続されるものである」に
と訂正するものであり、訂正事項a〜dはいずれも請求項1に係る発明の減縮に相当するものと認められる。
そうすると、本件請求項1に係る発明の構成要件を全て備えている訂正明細書の請求項1に係る発明が上記のとおり刊行物2、3に記載される発明及び刊行物1に記載される発明のような周知技術から当業者が容易に発明することができたものである以上、本件請求項1に係る発明も、刊行物2、3に記載される発明及び刊行物1に記載される発明のような周知技術から訂正明細書の請求項1に係る発明と同様に当業者が容易に発明することができたといわざるをえない。
(3-5-2)本件請求項2に係る発明(前者)と刊行物2に記載される発明B(後者)とを対比すると、
後者の
「3個」、「リール2〜4」、「ステッピングモータ2S〜4S」、「3個」、「可変表示部」、「停止」及び「リール停止信号回路36」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「1又は2以上」、「回転体」、「回転駆動装置」、「1又は2以上」、「表示装置」、「固定」及び「表示固定装置」
に相当するものと認められるから、
後者には、
「上記遊技機が、外周面に複数のシンボルが表示され、回転停止状態において前記シンボルの1又は2以上を遊技者が視認し得る、回転自在に支持された回転体、及びその回転体を回転駆動するための回転駆動装置からなる1又は2以上の表示装置と、回転駆動されている前記回転体を停止させてシンボルを固定表示させるための表示固定装置とを有し、その表示固定装置によって停止した回転体における前記シンボルの種類とその停止位置が所定の入賞条件を達成することと入賞とが対応するスロットマシンである遊技装置」という構成、
すなわち、
新たな相違点の前者の構成である請求項2に記載の構成が備わっているものと認められる。
なお、上記請求項2に記載の構成は、いわゆるスロットマシンと呼ばれる遊技装置において普通の構成を採用しているものである(例えば、特許異議申立人森下辰夫が甲第1号証として引用した特開平10-33750号公報にも記載されているものと認められる)。
また、新たな相違点に関し、前者の効果が、後者の効果の総和以上の格別なものとは認められない。
そして、上記請求項1に係る相違点については、上記で判断済みである。
(3-5-3)本件請求項3に係る発明(前者)と刊行物1に記載される発明B(後者)とを対比すると、
後者の
「ボーナス」、「ビッグとレギュラー」、「ボーナスフラグが成立した」、「デジタル」、「告知」、「数字」、「ビッグかレギュラーか」及び「パチスロ」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「特定の賞」、「複数種」、「内部当り状態が設定されている」、「報知手段」、「報知」、「内容」、「種類」及び「遊技装置」
に相当するものと認められるから、
後者は、
「特定の賞が複数種あり、特定の賞に内部当り状態が設定されている場合に報知手段によって報知される内容が、内部当り状態が設定されている特定の賞の種類に応じ変わる遊技装置」という構成、
すなわち、
新たな相違点の前者の構成である請求項3に記載の構成が備わっているものと認められる。
前者は、後者のこの点を上記刊行物2に記載される発明に単に適用しただけのことで、格別の創意工夫は認められない。
また、請求項1、2に係る点については、上記でそれぞれ判断済みである。
(3-5-4)本件請求項4に係る発明(前者)と刊行物1に記載される発明B(後者)とを対比すると、
後者の
「ボーナス」及び「ビッグとレギュラー」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「特定の賞」及び「複数種」
に相当するものと認められるから、
後者は、
「各特定の賞に対応した複数種の報知内容を有する遊技装置」という構成、
すなわち、
新たな相違点の前者の構成である請求項4に記載の構成が備わっているものと認められる。
この新たな相違点の前者の構成は、後者に、複数種の特定の賞の報知内容を特定の賞の種類に応じ変えるという構成があり、そして、刊行物3に記載される発明に、報知に対応する疑似報知を設けるという構成がある以上、当業者が格別創意工夫を要することなく構成し得るものであるというべきである。
前者は、後者のこの点を上記刊行物2に記載される発明に単に適用しただけのことで、格別の創意工夫は認められない。
また、請求項1〜3に係る点については、上記でそれぞれ判断済みである。
(3-5-5)本件請求項5に係る発明(前者)と刊行物2に記載される発明(後者)とを対比すると、
後者には、「ビッグボーナスが、内部的当選状態が設定されていても入賞が確実ではなく、内部的当選状態が、所定の複数回のゲームにおいて入賞するまでのゲームにおいて継続される」という構成が記載されている。
そして、後者の「ボーナス」及び「内部的当選」がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「特定の賞」及び「内部当り」
に相当するものと認められるから、
後者には、この新たな相違点の前者の構成が備わっているものと認められる。
なお、この新たな相違点の前者の構成は、スロットマシンと呼ばれる遊技装置において普通の構成である(例えば、特許異議申立人森下辰夫が甲第1号証として引用した特開平10-33750号公報にも、この新たな相違点の前者の構成が記載されているものと認められる)。
また、新たな相違点に関し、前者の効果が、後者及び刊行物2に記載された発明の各効果の総和以上の格別なものとは認められない。
そして、請求項1〜4に係る点については、上記でそれぞれ判断済みである。
(3-6)まとめ
以上のとおり、本件請求項1〜5に係る発明は、当業者が上記刊行物1〜3に記載された各発明及び周知技術に基いて、それぞれ容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1〜5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件請求項1〜5に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-04-15 
出願番号 特願平10-120121
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (A63F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 渡部 葉子
塩崎 進
登録日 1999-04-09 
登録番号 特許第2911872号(P2911872)
権利者 李 籍雄
発明の名称 遊技装置  
代理人 廣瀬 邦夫  
代理人 高良 尚志  

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