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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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判定200260110 | 審決 | 特許 |
判定200260108 | 審決 | 特許 |
判定200060165 | 審決 | 特許 |
判定200160010 | 審決 | 特許 |
判定200360077 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) B65B |
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管理番号 | 1122956 |
判定請求番号 | 判定2005-60030 |
総通号数 | 70 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2002-01-09 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2005-04-28 |
確定日 | 2005-09-16 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3619121号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「瓶ホルダー」は、特許第3619121号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
理 由 1.請求の趣旨 本件判定請求は、イ号写真ならびにその説明書に示す瓶ホルダー(以下、「イ号物件」という。)が、特許の第3619121号の請求項1係る発明(以下、「本件特許発明」という)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 2.本件特許発明 本件特許発明は、その明細書または図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(符号を付し分説して示す)。 A:蓋を外した瓶(1)の口部(2)を差し込み、瓶(1)を逆さまに起立保持できるリング(3)の周囲に、取り容器(4)の上縁に係止させるためのツバ(5)を設けてあり、 B:リング(3)は、内径が瓶の口部(2)の外径より大きく、 C:リングの内側に瓶(1)の口部(2)を差し込んだ時に、瓶(1)の口部(2)の先端がリング(3)から突出するように形成してあることを特徴とする D:瓶ホルダー 3.イ号 判定請求書に添付された「イ号写真の説明書」には、次のとおり記載されている。 「イ号の構成 蓋を外した瓶1の口部2を差し込み、瓶1を逆さまに起立保持できる鍔状リング3の該外周縁から起立する立上壁4を介し一段上に、取り容器5の上部近傍内面に係止する外向き鍔部6を設けてある。 前記立上壁4には、周方向に定間隔をあけて取り容器5の内面に弾力的に当接する突部7を有する垂下片8が取付けてある。前記鍔状リング3は、内径が瓶1の口部2の外径より大きく、鍔状リングの内側に瓶1の口部2を差し込んだ時に、瓶1の口部2の先端が鍔状リング3から突出するように形成してある。」 ここで、被請求人は、本件特許発明の構成Aに関して、「本件特許発明は・・・「ツバ5を取り容器4の上縁に係止させる」構成であるのに対して、イ号は・・・「外向き鍔部6の外周縁を取り容器5の上部近傍内面に嵌合させる」構成であり、この点において両者の構成は相違している。 ところで、請求人は、本件特許発明のツバ5とイ号の外向き鍔部6とは係止部分が相違しているものの、取り容器4(5)に瓶ホルダーに係止させる機能を果たしている点において技術的に同一視できると主張している。しかし・・・本件特許発明のツバ5とイ号の外向き鍔部6とで奏する作用効果が大きく相違する以上、両者の構成を請求人が主張する如く技術的に同一視することはできない。」(判定請求答弁書第3頁第17〜第4頁第10行)と主張する。 しかしながら、イ号物件の「瓶ホルダー」に関して、イ号写真の説明書は、上記のものであり、本件特許発明に即して符号を付し分説すると、次のとおりのものとなる。 a1.蓋を外した瓶1の口部2を差し込み、瓶1を逆さまに起立保持できる鍔状リング3の該外周縁から起立する立上壁4を介し一段上に、取り容器5の上部近傍内面に係止する外向き鍔部6を設け、 a2.前記立上壁4には、周方向に定間隔をあけて取り容器5の内面に弾力的に当接する突部7を有する垂下片8が取付けてあり、 b.前記鍔状リング3は、内径が瓶1の口部2の外径より大きく、 c.鍔状リングの内側に瓶1の口部2を差し込んだ時に、瓶1の口部2の先端が鍔状リング3から突出するように形成してある d.瓶ホルダー。 4.対比 構成要件Aについて、 本件特許発明の構成要件Aは、「蓋を外した瓶(1)の口部(2)を差し込み、瓶(1)を逆さまに起立保持できるリング(3)の周囲に、取り容器(4)の上縁に係止させるためのツバ(5)を設けてあり」である。 一方、イ号物件では、蓋を外した瓶1の口部2を差し込み、瓶1を逆さまに起立保持できる鍔状リング3の該外周縁から起立する立上壁4を介し一段上に、取り容器5の上部近傍内面に係止する外向き鍔部6を設けている(構成a1)。 ここで、本件特許発明の構成要件Aのツバ(5)は、「取り容器の(4)の上端に係止させるためのツバ(5)」であるのに対し、イ号物件の構成a1の鍔部6は、「取り容器5の上部近傍内面に係止する外向き鍔部6」であり、上端に係止させることと、上部近傍内面に係止することとは、係止位置及び係止の態様において異なることは明らかであるから、イ号物件の構成a1の「取り容器5の上部近傍内面に係止する外向き鍔部6」は、本件特許発明の構成要件Aの「取り容器(4)の上縁に係止させるためのツバ(5)」を充足しない。 したがって、イ号物件の「瓶1」、「口部2」、「鍔状リング3」、「取り容器5」及び「外向き鍔部6」を、本件発明の「瓶(1)」、「口部(2)」、「リング(3)」、「取り容器(4)」及び「ツバ(5)」に相当するものとみなしたとしても、イ号物件の構成a1は、本件特許発明の構成要件Aを充足しない。 なお、イ号物件は、構成a2を具備しているが、そのことは、構成a1と構成要件Aとの属否判断と直接関係するものではない。 構成要件Bについて、 本件特許発明の構成要件Bは、「リング(3)は、内径が瓶の口部(2)の外径より大きく」した構成である。 一方、イ号物件の構成bでは、「前記鍔状リング3は、内径が瓶1の口部2の外径より大きく」したものであり、その、「前記鍔状リング3」、「瓶1」及び「口部2」は、それぞれ本件特許発明の構成要件の、「リング(3)」、「瓶」及び「口部(2)」に相当するので、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Bを充足する。 構成要件Cについて、 本件特許発明の構成要件Cは、「リングの内側に瓶(1)の口部(2)を差し込んだ時に、瓶(1)の口部(2)の先端がリング(3)から突出するように形成してある」構成である。 一方、イ号物件の構成cでは、「鍔状リングの内側に瓶1の口部2を差し込んだ時に、瓶1の口部2の先端が鍔状リング3から突出するように形成してある」ものであり、その、「鍔状リング」、「瓶1」、「口部2」及び「鍔状リング3」は、それぞれ本件特許発明の構成要件の、「リング」、「瓶(1)」、「口部(2)」及び「リング(3)」に相当するので、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Cを充足する。 構成要件Dについて、 本件特許発明の構成要件Dは、「瓶ホルダー」である。 一方、イ号物件の構成要件dも、「瓶ホルダー」であるので、イ号物件は、本件特許発明の構成要件Dを充足する。 以上を整理すると、イ号物件は、本件特許発明の構成要件B、C及びDを充足するが、本件特許発明の構成要件Aを充足しない。 5.均等の判断 判定請求人は、判定請求書において、「ツバはリングに瓶のロ部を差し込んで保持し瓶を起立状態にしたときに、その状態を保ち得るように取り容器に係止しておれば足りるものであり、ツバの係止位置が取り容器のどこであるかは、本件特許発明による瓶ホルダーの本質的部分ではない。 よって、本件の「ツバ5」の係止位置とイ号の「外向き鍔部6」の係止位置とが取り容器の異なる部分であることは本件特許発明の本質的部分ではない・・・想到することができたものである。」と主張する。 ところで、最高裁平成6年(オ)第1083号(平成10年2月24日)判決は、均等の要件について、次のように述べている。 「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、(1)右部分が特許発明の本質的部分ではなく、(2)右部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、(3)右のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、(4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから右出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、(5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、右対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である。」 また、上記(5)の条件でいう、「特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情」について、同判決は、「(四)また、特許出願手続において出願人が特許請求の範囲から意識的に除外したなど、特許権者の側においていったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか、又は外形的にそのように解されるような行動をとったものについて、特許権者が後にこれと反する主張をすることは、禁反言の法理に照らし許されない」と述べている。 そこで、これらの要件に基づいて、イ号物件と本件発明の構成要件Aとの異なる部分が均等なものとなりえるかを、(1)の条件からまず検討する。 均等要件(1)(本質的部分)について 本件特許発明では、ツバを取り容器の上縁に係止させているから、「取り容器4、例えばレギュラーコーヒーを入れる時に用いる耐熱ガラス製のサーバーポットや、ボールやビーカー、あるいは鍋などの上縁に架け渡すようにして係止できさえすれば良い。」(本件公報第2ページ第38〜40行)ようなものであり、「取り容器の上縁に係止させるためのツバを設けてあり・・・ことを特徴とする。この瓶ホルダーを使用すれば、瓶を逆さまにして取り容器の上に立たせておくことができ、この状態でしばらく放置しておけば、瓶の中の高粘度食品は残らず取り容器内に流れ落ちる。」(本件公報第2ページ第12〜第17行)との本件特許明細書に記載された本件特許発明による作用が得られ、本件特許発明の目的が達成されるものである。 一方、イ号物件は、ツバを取り容器の上部近傍内面に係止させるものである。 このため、「すなわち引用文献1記載のものは、本発明の特徴である瓶の口部を単に差し込んで起立保持するリングも、リングの外周に設けられ取り容器の上縁に係止するツバも有していません。・・・また引用文献1記載のものは、お互いの容器の口部の大きさにぴったり合わせて製作する必要があり、どちらかの容器の口部の大きさが異なれば使用できないものです。本発明の瓶ホルダーは、これらの不都合を全て解消することができるものです。」(意見書第1ページ第45〜第2ページ第7行)との記載と同様に、イ号物件は、「瓶の口部を単に差し込んで起立保持するリングも、リングの外周に設けられ取り容器の上縁に係止するツバも有して」いないし、「お互いの容器の口部の大きさにぴったり合わせて製作する必要があり、どちらかの容器の口部の大きさが異なれば使用できないもの」である。 そうすると、本件特許発明の構成要件Aにおけるツバの係止位置が、イ号物件のツバの係止位置と異なることは、本質的な相違点といえ、構成要件Aは、本件特許発明の本質的部分であるとするのが相当である。 均等要件(5)(意識的除外等の特段の事情)について 判定請求人は、本件特許発明に係る出願の意見書において、「すなわち引用文献1記載のものは、本発明の特徴である瓶の口部を単に差し込んで起立保持するリングも、リングの外周に設けられ取り容器の上縁に係止するツバも有していません。・・・また引用文献1記載のものは、お互いの容器の口部の大きさにぴったり合わせて製作する必要があり、どちらかの容器の口部の大きさが異なれば使用できないものです。本発明の瓶ホルダーは、これらの不都合を全て解消することができるものです。」と主張している。 してみると、判定請求人は、本件特許発明のツバを取り容器の上縁に係止させた特定の構成によって、本件特許発明には特許性がある旨主張しているのであるから、この構成を備えないものは、本件特許発明には属さないものとして、意識的にこれを排除しているものと認められる。 そして、イ号物件は、ツバを取り容器の上部近傍内面に係止させるものであるから、取り容器の大きさ、内面形状等が特定され、上記引用文献1記載のものと同じく、取り容器の口部の大きさが異なれば使用できないものでもある。 そうすると、イ号物件は、本件特許発明から意識的に除外されたものにあたると認められるので、イ号物件は、均等の要件(5)を満たさないものとするのが相当である。 したがって、判定請求人の均等論の主張については、均等の要件(1)及び(5)を満足しないから、他の要件については検討するまでもなく、採用することができない。 7.むすび したがって、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。 |
判定日 | 2005-09-06 |
出願番号 | 特願2000-186795(P2000-186795) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(B65B)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
松縄 正登 |
特許庁審判官 |
種子 浩明 溝渕 良一 |
登録日 | 2004-11-19 |
登録番号 | 特許第3619121号(P3619121) |
発明の名称 | 瓶ホルダー |
代理人 | 西川 惠清 |
代理人 | 宮田 信道 |
代理人 | 森 厚夫 |