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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A47K
審判 全部無効 2項進歩性  A47K
管理番号 1123366
審判番号 無効2004-80222  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-01-18 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-11-08 
確定日 2005-07-19 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3541126号発明「合成樹脂製軽石の製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3541126号(以下、「本件特許」という。)の出願は、平成10年6月26日に特許出願された特願平10-181078号(以下、「本願特許出願」という。)であって、その請求項1に係る発明について平成16年4月2日に設定登録され、その後の平成16年11月8日に、前記本件特許の請求項1に係る発明の特許に対して、本件無効審判請求人セーレン株式会社(以下、「請求人」という。)により本件無効審判〔無効2004-80222〕が請求されたものであり、本件無効審判被請求人有限会社西和(以下、「被請求人」という。)により指定期間内の平成17年1月25日付けの審判事件答弁書及び同日付けの訂正請求書が提出され、これに対して請求人により参考資料1及び参考資料2が添付された平成17年3月7日付けの審判事件弁駁書が提出され、さらに被請求人により指定期間内の平成17年4月8日付けの審判事件答弁書(第二)が提出されたものである。

第2 当事者の主張
1.請求人の主張
(1) 請求人は、平成16年11月8日付けの無効審判請求において、下記の甲第1号証刊行物ないし甲第9号証刊行物を提示し、
「特許第3541126号の請求項1に係る発明の特許は、これを無効とする、との審決を求める。」と主張して、概略を次に示すところの無効理由1〜無効理由7を主張した。
無効理由1:本件の請求項1に係る発明は、本願特許出願前に頒布された甲第1号証刊行物に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当することにより特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
無効理由2:本件の請求項1に係る発明は、本願特許出願前に頒布された甲第2号証刊行物に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当することにより特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
無効理由3:本件の請求項1に係る発明は、本願特許出願前に頒布された甲第1号証及び甲第2号証刊行物に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
無効理由4:本件の請求項1に係る発明は、本願特許出願前に頒布された甲第3号証刊行物に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当することにより特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
無効理由5:本件の請求項1に係る発明は、本願特許出願前に頒布された甲第4号証刊行物に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当することにより特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
無効理由6:本件の請求項1に係る発明は、本願特許出願前に頒布された甲第5号証刊行物に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当することにより特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
無効理由7:本件の請求項1に係る発明は、本願特許出願前に頒布された甲第1号証ないし甲第5号証刊行物に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

甲第1号証刊行物:実用新案登録第3008950号公報
甲第2号証刊行物:実用新案登録第3032608号公報
甲第3号証刊行物:特開平7-292240号公報
甲第4号証刊行物:特許第2720424号公報
甲第5号証刊行物:『繊維学会誌 報文 Vol.51 No.12(1995)』の第111〜117頁「一般報文 セリシンを分子鎖中に有する生分解性ポリウレタンの熱的および機械的性質」の項、1995年12月発行(発行所及び発行日は、不明)
甲第6号証刊行物:特開平3-231964号公報
甲第7号証刊行物:特開平6-122746号公報
甲第8号証刊行物:特開平10-120897号公報
甲第9号証刊行物:国際公開WO93/11670号公報

(2) 請求人は、平成17年3月7日付けの審判事件弁駁書において、平成17年1月25日付けの訂正請求に基づいて訂正された特許第3541126号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明に対し、前掲の無効理由7に下記の参考資料1及び参考資料2の刊行物を補充提示して、訂正後の請求項1に係る発明の特許に対しても、無効である旨を主張した。

参考資料1:特開昭64-55191号公報
参考資料2:特開平6-343874号公報

2.被請求人の主張
(1) 被請求人は、先ず、平成17年1月25日付けの審判事件答弁書において、「訂正を認める。本件請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。との審決を求める。」と主張するとともに前記平成17年1月25日付け審判事件答弁書と同日付けの訂正請求書を提出して、請求人の前記主張に対し、
「本件訂正発明は、甲第1号証〜甲第5号証刊行物に記載された発明のいずれとも同一でないから、無効理由1、無効理由2、無効理由4、無効理由5及び無効理由6は、いずれも理由がない。また、本件訂正発明は、甲第1号証刊行物及び甲第2号証刊行物に記載された発明あるいは甲第1号証刊行物〜甲第5号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、無効理由3及び無効理由7は、いずれも理由がない。」と主張した。

(2) 被請求人は、さらに、平成17年4月8日付けの審判事件答弁書(第二)において、請求人の審判事件弁駁書における無効理由7の上記主張に対し、「具体的な無効理由を何ら述べていないから、理由がないものである。」と主張した。

第3 訂正請求の適否についての判断
被請求人の平成17年1月25日付けの訂正請求の適否について検討する。
1.訂正請求の時期的要件についての検討
本件訂正請求書は、改正特許法第134条第1項の規定にづく指定期間内の平成17年1月25日に提出されたものであるから、本件訂正請求は、同法第134条の2第1項本文に規定されている時期的要件を満たすものである。

2.訂正請求の内容
被請求人は、前記訂正請求により、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)を前記訂正請求書に添付した訂正明細書に記載したとおりの次の内容の訂正を請求するものである。
[訂正事項a]
特許明細書(特許掲載公報1頁32〜35行)の特許請求の範囲の請求項1の
「【請求項1】 硬質ポリウレタン等の合成樹脂の原液中にセリシン水溶液または/及びセリシンパウダーを混入し、該原液を発泡させて合成樹脂製軽石を形成したことを特徴とする合成樹脂製軽石の製造方法。」の記載を、
「【請求項1】 硬質ポリウレタンの合成樹脂の原液中にセリシン水溶液を混入し、該原液を独立発泡させて肌の表面の角質化した部分を除去する合成樹脂製軽石を形成したことを特徴とする合成樹脂製軽石の製造方法。」と訂正する。
[訂正事項b]
特許明細書(特許掲載公報2頁13〜17行)の段落【0005】に記載の
「【0005】【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために本発明にかかる合成樹脂製軽石の製造方法は、硬質ポリウレタン等の合成樹脂の原液中にセリシン水溶液または/及びセリシンパウダーを混入し、該原液を発泡させて合成樹脂製軽石を形成したことを特徴とするものである。」の記載を、
「【0005】【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために本発明にかかる合成樹脂製軽石の製造方法は、硬質ポリウレタンの合成樹脂の原液中にセリシン水溶液を混入し、該原液を独立発泡させて肌の表面の角質化した部分を除去する合成樹脂製軽石を形成したことを特徴とするものである。」と訂正する。
[訂正事項c]
特許明細書(特許掲載公報2頁25〜32行)の段落【0007】に記載の
「【0007】 先ず、発泡剤、整泡剤、ポリオール、触媒及、難燃剤及びセリシン水溶液若しくはセリシンパウダーを混合して混練してポリオール系原液を形成する。ここで、セリシン水溶液若しくはセリシンパウダーは、カイコの幼虫の絹糸腺内容物で形成された繭を熱湯に浸し、絹糸であるフィブロインを取り出した残りの熱湯に溶解しており、この熱湯からセリシンを抽出し、あるいはパウダー化して得られる。このカイコの幼虫の絹糸腺内容物にはフィブロインが約70%、セリシンが約30%含まれており、このセリシン中には約10%の保湿剤として作用するセリンが含まれる。」の記載を、
「【0007】 先ず、発泡剤、整泡剤、ポリオール、触媒、難燃剤及びセリシン水溶液を混合して混練してポリオール系原液を形成する。ここで、セリシン水溶液は、カイコの幼虫の絹糸腺内容物で形成された繭を熱湯に浸し、絹糸であるフィブロインを取り出した残りの熱湯に溶解しており、この熱湯からセリシンを抽出して得られる。このカイコの幼虫の絹糸腺内容物にはフィブロインが約70%、セリシンが約30%含まれており、このセリシン中には約10%の保湿剤として作用するセリンが含まれる。」と訂正する。
[訂正事項d]
特許明細書(特許掲載公報2頁33〜41行)の段落【0008】に記載の
「【0008】 また、ポリオール系原液を調製する時のセリシン水溶液は、上記のようにして得られたセリシンの11倍濃縮液を使用し、セリシンパウダーを混合する際にはこれとともに牡蠣殻を主成分とする天然抗菌剤も混入されて調製されている。一方、ポリイソシアネートを含んだポリイソシアネート系原液を用意し、セリシンが混練されたポリオール系原液とポリイソシアネート系原液とを夫々計量してこれを混合し、発泡原液を形成する。上記のようにして調製ならびに計量された両原液を混合して均一に攪拌すると、まず、ポリイソシアネートとポリオールとが重付加反応を開始し、ポリウレタン樹脂を生成すると同時に反応熱を発生する。」の記載を、
「【0008】 また、ポリオール系原液を調製する時のセリシン水溶液は、上記のようにして得られたセリシンの11倍濃縮液を使用している。一方、ポリイソシアネートを含んだポリイソシアネート系原液を用意し、セリシンが混練されたポリオール系原液とポリイソシアネート系原液とを夫々計量してこれを混合し、発泡原液を形成する。上記のようにして調製ならびに計量された両原液を混合して均一に攪拌すると、まず、ポリイソシアネートとポリオールとが重付加反応を開始し、ポリウレタン樹脂を生成すると同時に反応熱を発生する。」と訂正する。
[訂正事項e]
特許明細書(特許掲載公報3頁8〜17行)の段落【0011】に記載の
「【0011】 すると、合成樹脂製軽石1に含まれるセリシン(silk glue)の特にセリンの保水力により保水された状態で角質化した肌と接触接触させるのであるが、この角質化した部分を削り落とす気泡で形成された孔部分の表面部分には湿潤したセリシンがあり、この湿潤したセリシンが肌に優しく接触して角質化した肌部分だけを削り落とすので、その下の新たな肌部分が傷つくのを防止できるのである。
尚、上記実施の形態ではセリシン水溶液若しくはセリシンパウダーをポリオール系原液を調製する時に混合するようにしてあるが、本発明はこうしたものに限られず、発泡に至るまで、例えば図3中に点線で示すようにポリオール系原液とポリイソシアネート系原液とを夫々計量して混合し、発泡原液を形成する時に混合することができるのは勿論である。」の記載を、
「【0011】 すると、合成樹脂製軽石1に含まれるセリシン(silk glue)の特にセリンの保水力により保水された状態で角質化した肌と接触させるのであるが、この角質化した部分を削り落とす気泡で形成された孔部分の表面部分には湿潤したセリシンがあり、この湿潤したセリシンが肌に優しく接触して角質化した肌部分だけを削り落とすので、その下の新たな肌部分が傷つくのを防止できるのである。
尚、上記実施の形態ではセリシン水溶液をポリオール系原液を調製する時に混合するようにしてあるが、本発明はこうしたものに限られず、発泡に至るまで、例えば図3中に点線で示すようにポリオール系原液とポリイソシアネート系原液とを夫々計量して混合し、発泡原液を形成する時に混合することができるのは勿論である。」と訂正する。
[訂正事項f]
特許明細書(特許掲載公報3頁18〜25行)の段落【0012】に記載の
「【0012】【発明の効果】 以上に説明したように、硬質ポリウレタン等の発泡合成樹脂を独立発泡させて形成した本発明の合成樹脂製軽石の製造方法によれば、合成樹脂製軽石にセリシンを含有させてあるので、この合成樹脂製軽石を肌に当てて石鹸や水とともに擦った場合に、合成樹脂製軽石に含まれるセリシン中のセリンの保水力により、保水された状態で肌と接触し、肌に優しく接触させて傷つけるのを防止できながらも、肌の表面の角質化した部分を除去する軽石本来の作用を十分に発揮させることができるという利点がある。」の記載を、
「【0012】【発明の効果】 以上に説明したように、硬質ポリウレタンの発泡合成樹脂を独立発泡させて形成した本発明の肌の表面の角質化した部分を除去する合成樹脂製軽石の製造方法によれば、合成樹脂製軽石にセリシンを含有させてあるので、この合成樹脂製軽石を肌に当てて石鹸や水とともに擦った場合に、合成樹脂製軽石に含まれるセリシン中のセリンの保水力により、保水された状態で肌と接触し、肌に優しく接触させて傷つけるのを防止できながらも、肌の表面の角質化した部分を除去する軽石本来の作用を十分に発揮させることができるという利点がある。」と訂正する。
[訂正事項g]
添付図面の【図3】の図中の
「セリシン水溶液若しくはセリシンパウダー」の記載を、
「セリシン水溶液」と訂正する。

3.訂正請求の目的の適否についての検討
[訂正事項a]の訂正は、請求項1の発明特定事項を限定することを目的とする訂正であるから、改正特許法第134条の2第1項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。
[訂正事項b]ないし[訂正事項g]の訂正は、特許明細書の発明の詳細な説明の記載中の明らかな誤記を正しい表記に訂正することを目的とする訂正であるか、或いは、特許明細書の発明の詳細な説明の記載を、請求項1に関する前記[訂正事項a]の訂正に整合させるための訂正であるから、同法第134条の2第1項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」又は同項ただし書第3号の「明りようでない記載の釈明」を目的とする訂正に該当する。

したがって、上記[訂正事項a]ないし[訂正事項g]の訂正は、上記のとおり、改正特許法第134条の2第1項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項のいずれかを目的としているから、同法第134条の2第1項ただし書の規定に適合する。

4.新規事項の存否についての検討
上記[訂正事項a]ないし[訂正事項g]の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、また、「誤記又は誤訳の訂正」に係る訂正については、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、改正特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第3項の規定に適合する。

5.実質上変更・拡張の有無についての検討
上記[訂正事項a]ないし[訂正事項g]における特許明細書、特許請求の範囲及び図面の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないから、改正特許法第134条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。

6.むすび
以上のとおりであり、本件訂正請求は、改正特許法第134条の2第1項並びに同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、本件訂正請求を認める。

なお、本件無効審判請求は、その請求の対象が特許明細書の請求項1に係る発明の特許に対して請求されているのであり、改正特許法第134条の2第5項において読み替えて適用される同法第126条第5項に「この場合において、第126条第5項中『第1項ただし書第1号又は第2号』とあるのは、『特許無効審判の請求がされていない請求項に係る第1項ただし書第1号又は第2号』と読み替えるものとする。」と規定されていることにより、本件の訂正請求の適否の検討においては、同法第134条の2第5項において読み替えて準用する同法第126条第5項の規定されている、いわゆる「独立特許要件の有無」についての検討を要しないことを、念のために付言しておく。

第4 本件特許の請求項1に係る発明
特許明細書における特許請求の範囲が、平成17年1月25日付けの訂正請求により訂正されたので、本件特許の請求項1に係る発明(以下、これらを、「本件発明1」という。)は、平成17年1月25日付けの訂正請求書に添付した訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 硬質ポリウレタンの合成樹脂の原液中にセリシン水溶液を混入し、該原液を独立発泡させて肌の表面の角質化した部分を除去する合成樹脂製軽石を形成したことを特徴とする合成樹脂製軽石の製造方法。」

第5 無効理由1ないし無効理由7について
1.甲号各証の記載事項
(1)甲第1号証刊行物の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第1号証刊行物には、「風呂用軽石たわし」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】ポリウレタン等の硬質発泡材料を成形固化してなる軽石体1に、絹繊維を微粉末にしたシルクパウダー2を混入し、軽石体1の層中及び表面にシルクパウダー2を含有配置してなることを特徴とする風呂用軽石たわし。
【請求項2】ポリウレタン等の硬質発泡材料を成形固化してなる軽石体1に、絹繊維を微粉末にしたシルクパウダー2を混入し、軽石体1の層中及び表面にシルクパウダー2を含有配置し、前記軽石体1の少なくとも表面の一部に軟質発泡材料のスポンジ体3を貼着してなることを特徴とする風呂用軽石たわし。
【考案の詳細な説明】
【0001】【産業上の利用分野】本考案は、身体部分の特に足の裏や手の掌、肘、膝等の硬皮質部分の荒れを滑らかにするために、風呂等で使用される軽石たわしに関する。
【0002】【従来の技術】従来、足の裏や手の掌、肘等の硬皮質部の汚れや荒れを滑らかにするために、風呂等で使用される軽石たわしとしては、天然ものの軽石やポリウレタン硬質発泡等の成形ものが広く一般に知られ使用されていた。
【0003】【考案が解決しようとする課題】上記のような従来の軽石たわしでは、恰もヤスリのような硬いザラザラした面で硬皮質部分を削り取るものであるから角質化した部分の汚れを除去するには適しているものの、研削により皮膚の表面が却ってザラつきを生じて肌荒れ、或いは損傷するといった問題点を有していた。
【0004】本考案は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、軽石たわしのザラザラした面で身体の硬皮質部分を効率良く削り取って角質化した部分や汚れを除去するものでありながら、皮膚の面を荒さないでシルクパウダーの作用でシルクのように滑らかでうるおいを与えることのできる新しいタイプの風呂用軽石たわしを提供しようとするものである。
【0005】【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本考案における風呂用軽石たわしは、ポリウレタン等の硬質発泡材料を成形固化してなる軽石体1に、絹繊維を微粉末にしたシルクパウダー2を混入し、軽石体1の層中及び表面にシルクパウダー2を含有配置してなるものである。
【0006】また、ポリウレタン等の硬質発泡材料を成形固化してなる軽石体1に、絹繊維を微粉末にしたシルクパウダー2を混入し、軽石体1の層中及び表面にシルクパウダー2を含有配置し、前記軽石体1の少なくとも表面の一部に軟質発泡材料のスポンジ体3を貼着してなるものである。
【0007】【実施例】本考案の実施例を図面を参照して説明する。
【0008】 軽石体1は、ポリウレタン発泡材料に硬化剤を用いて成形機により成形固化するもので、図1に示すように厚手の小判形の他、円盤形、直方体等の形状となす。
【0008】シルクパウダー2は、絹繊維をミクロン単位の微粉末に粉砕して、この微粉末のシルクパウダーを軽石体1となる材料に混入する。
【0009】軽石体の発泡材料とシルクパウダーの割合は、軽石発泡材料100に対してシルクパウダーを0.5〜5.0パーセント、好ましくは2パーセント程度とする。上記割合いの軽石発泡材料にシルクパウダーを混入したものを、成形機にかけると所定形状の成形品がつくられる。この成形品は軽石状の外観を呈しているが、その内部の層中及び表面にシルクパウダーが均等に配置されたものとなり、軽石たわしが得られる。
【0010】軽石体1の表面の片面には、図3に示すように軟質発泡材料のスポンジ体3を貼着する。このスポンジ体3により軽石体1を保護するとともに軽石使用後にスポンジの吸水性、保水性及び柔軟性により皮膚の摩擦部分を滑らかにする働きをする。このスポンジ体3にも少量のシルクパウダーを混入する場合がある。
【0011】【作用】軽石体1を手に持って軽石の面を身体の硬皮質部分に当てがって適当な強さでこすりつける。すると軽石による荒い研削力によって硬皮質部分が削られるものであるが、その際に軽石体に混入、配置したシルクパウダーが皮膚に接触してこすり付けられる為にシルクパウダーの作用で荒削り状態の皮膚の面がなめらかになる。
【0012】【考案の効果】本考案は上記のように、ポリウレタン等の硬質発泡材料を成形固化してなる軽石体1に、絹繊維を微粉末にしたシルクパウダー2を混入し、軽石体1の層中及び表面にシルクパウダー2を含有配置したので、軽石体の荒い面でこすられた身体の硬皮質部分にシルクパウダーが直かに作用して軽石使用による荒れを抑えながら、効果的になめらかにすることができ、而も、シルクパウダーは軽石体の層中に混入されているため消耗が少なく、少量のシルクパウダーで足りる為安価に提供できる。」
そして、甲第1号証刊行物の【図1】及び【図2】には、「ポリウレタン等の硬質発泡材料を成形固化してなる軽石体1に、絹繊維を微粉末にしたシルクパウダー2を混入し、軽石体1の層中及び表面にシルクパウダー2を含有配置した風呂用軽石たわし」が記載されていて、上記摘記事項を裏付ける技術事項が図示されている。
上記甲第1号証刊行物の摘記事項及び添付図面に図示された技術事項を総合すると、甲第1号証刊行物には、「絹繊維をミクロン単位に粉砕した微粉末のシルクパウダー2を、軽石体1となる硬質ポリウレタン発泡材料からなる軽石発泡材料に、軽石体1の発泡材料とシルクパウダー2の割合が、軽石発泡材料100に対してシルクパウダーを0.5〜5.0パーセント、好ましくは2パーセント程度の割合いで混入し、ポリウレタン発泡材料に硬化剤を用いて成形機にかけて、厚手の小判形、円盤形、直方体等の所定形状で、軽石状の外観を呈し、その内部の層中及び表面にシルクパウダー2が均等に配置された成形品に成形固化する風呂用軽石たわしの製造方法」の発明(以下、これを「引用発明」という。)の記載が認められる。

(2)甲第2号証刊行物の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第2号証刊行物には、「スキンケアスポンジ」に関し、次の技術事項が記載されている。
「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】三次元構造より形成される多孔体において、多孔体を形成する骨格部及び/又は該骨格部周囲表面にセリシンを担持してなることを特徴とするスキンケアスポンジ。
【請求項2】多孔体が連続気泡で構成されていることを特徴とする請求項1記載のスキンケアスポンジ。
【考案の詳細な説明】
【0001】【考案の属する技術分野】本考案は身体の皮膚表面をくり返し摩擦することにより、きめ細かで潤いのある素肌に整えるために使用されるスキンケアスポンジに関するものである。
【0002】【従来の技術】近年、特に女性のスキンケアに対する関心が著しく高まって来ており、各々の使用用途に適したスポンジ用品が種々市場に出まわり注目を集めている。そしてその種類も顔、手、足、身体等、各々の皮膚に相応した材料が採用され、使い易さも考慮された形態のものとなっている。このような用品の中で、特に感触がよく、皮膚の損傷に配慮されているものとしては、柔軟で弾力性のある多孔体に特定の天然蛋白質成分を配合したり、発泡体表面に付着させた製品が市販されている。
【0003】しかしながら、該多孔体に使用されている蛋白質成分の組成より考慮するに、期待される効果を得るには不適切と認識せざるを得ない製品も多い状況である。
【考案が解決しようとする課題】【0004】本考案は、この様な課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは三次元構造より形成される多孔体に絹糸より抽出されたセリシン微粉末を適宜に担持させたものであり、このような多孔体より成る用品に水分を与えて直接皮膚表面を摩擦することによって、皮膚角質の欠如しているアミノ酸を補い、保水機能の低下を防止して肌荒れを防ぎ、きめ細かで潤いのあるしっとりとした素肌を保つことができると云う極めて実用性に富むスキンケアスポンジを提供しようとするものである。
【0005】【課題を解決するための手段】本考案者は、この様な課題に対して鋭意研究した結果、次の構造を有す考案を完成した。即ち本考案は、セリシン微粉末が三次元構造より形成される多孔体において、多孔体を形成する骨格内部及び/又は該骨格部周囲表面の皮膜面に担持してなることを特徴とするスキンケアスポンジを要旨とするものである。次に本考案を、図面により詳細に説明する。
【0006】【考案の実施の形態】図1は、本考案のスキンケアスポンジの一例を示す斜視図であり、図2は該スポンジの一部を示す概略拡大断面図である。
【0007】図2のスキンケアスポンジは、三次元構造より形成される骨格部(2)と空泡部(3)よりなる多孔体よりなるものであり、天然蛋白質であるセリシン微粒子(5)は、骨格内部及び/又は該骨格部表面(4)に担持されている。
【0008】本考案に採用する多孔体としては、合成樹脂系、ゴム系、木質や非木質等の繊維素系が挙げられる。スキンケアをするに当たってセリシンを皮膚表面に効果的に作用させるには、連続気泡によりなる三次元多孔体が好宜である。特にこのようなスキンケアの効果を最大限に発揮させるためには、例えば膝、肘等の比較的硬い皮膚、顔、首等の柔らかい皮膚、ボディー等、各々の皮膚に適する多孔体を適宜選択することが好ましい。尚、独立気泡よりなる多孔体を使用した場合は、該多孔体の外部に付着したセリシンのみが皮膚に作用することになるので、セリシンの効果の持続性や耐久性の面から推奨されない。
【0009】次に、本考案のスキンケアスポンジに担持させる天然系蛋白質であるセリシンは、絹繊維に含まれるセリシンを化学精練法、又は酵素精練法により部分加水分解して溶出させた後、薬剤による析出法やその他の方法により粉体の形態で得ることができる。本考案に使用されるセリシンのアミノ酸構成は、特に親水性に富むセリンを多量に含有するものであり、皮膚の角質層にあって皮膚の保湿性をコントロ-ルしている天然保湿因子を構成しているアミノ酸組成と類似のものであるために、セリシンの皮膚に対する作用効果は特に顕著である。
【0010】本考案による該スポンジは、多孔体を構成する原料の中にセリシン微粉末を1〜30%混入させ、通常の条件にて多孔化した後、所望の形状に成型されることにより得られ、セリシンは多孔体の骨格部内及び該骨格周囲の表面に担持される。
【0011】【作用】身体の皮膚表面を、本考案によるスキンケアスポンジで擦り込むように摩擦することにより、スポンジに含まれているセリシンが皮膚の角質層に付与されるので、その作用によりきめ細かで潤いのある素肌を作るのである。
【0012】【考案の効果】本考案は上記で説明したように、天然蛋白質であるセリシンを三次元構造なる多孔体の骨格内部や骨格周囲の皮膜表面に担持させてあるので、該スポンジで皮膚表面を摩擦することにより、含まれているセリシンが除々に溶出し、皮膚の角質層に作用して保湿機能の低下を積極的に補う働きをする。このような原理により、身体の皮膚の乾燥を防止し、常にきめ細かで潤いのある素肌を維持することを可能とし、従って肌荒れや皮膚の老化を抑制する大きな効果を奏する。」

(3)甲第3号証刊行物の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第3号証刊行物には、「吸放湿性ポリウレタンフォームとその製造方法」に関し、次の技術事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】ポリウレタンフォームの気泡膜および骨格内にセリシンを分散させてなる吸放湿性ポリウレタンフォーム。
【請求項2】ポリオール、ポリイソシアネート、触媒および発泡剤を含む組成物を反応させてポリウレタンフォームを製造するに際して、ポリオール100重量部当り0.01〜50重量部のセシリンを共存させて反応を行うことを特徴とする吸放湿性ポリウレタンフォームの製造方法。」
「【0006】例えば、特開昭57-57778号公報には、ポリウレタンフォームシートの内部に吸放湿性を有する極細繊維をニードルパンチして柔軟複合材を得るという方法が提案されている。しかし、この方法は、成形品を成形した後に行われるのでフォームのクッション性や通気性を悪化させる傾向にありまた、この様な後処理は製造工程を複雑化する上、成形品表層の処理であるため効果を付与することは、困難である。一方、ポリウレタンフォームを製造する際にウレタン樹脂に皮革粉やゼラチン粉等を混入する方法も提案されているが、皮革粉をウレタン樹脂中に混合した場合は、皮革粉の粒径が大きいために、混入された樹脂素材に滑性が少なく、樹脂の流動性を悪化させ、従って成形の際に押出し抵抗が大となり滑らかな押出しに支障をきたすことになる。
【0007】更に樹脂と粉体との均一な混練に手間を要する等の問題もある。またゼラチンを使用する場合は、ゼラチン粉は粒径が微小であっても粉砕により微粉化しているために凝集が生じ易く、このため粉体が樹脂内で偏在し、成形歪や成形品の片寄りを引き起こす原因になるという問題がある。」
「【0010】本発明で用いるセリシンとしては平均粒径が20μm以下の球状粉体が好ましく、特に最大粒径が10μm以下で平均粒径が5μm程度のものが好ましい。これらのセリシンは通常絹の精練液から得られ、平均分子量600〜40000を有している。
【0011】本発明の吸放湿性ポリウレタンフォームは上記したセリシンがポリウレタンフォームの気泡膜部および骨格内に分散してなる構造を有するものであり、ポリウレタンフォーム製造反応時にセリシンを共存させることによって製造される。
【0012】ポリウレタンフォームの製造に用いる原料化合物及び同フォームの製造条件は従来知られた原料化合物及び条件を適宜採用しうる。
【0013】ポリウレタンフォーム、製造用の原料はポリオール、ポリイソシアネート、触媒および発泡剤を必須とし、通常さらに整泡剤や他の添加剤を含有してなるものである。」
「【0019】発泡剤としては、一般に軟質ウレタンフォームに使用される公知の発泡剤である水あるいは低沸点を有する揮発性液体が用いられる。低沸点を有する揮発性液体とは例えばトリクロロモノフルオロメタン、ジブロモジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、モノクロロジフルオロメタン、トリフルオロエチルブロミド、ジクロロメタン等でありこれらの発泡剤は単独あるいは混合して使用することができる。」
「【0022】かかる原料組成物中に混人されるセリシン量は、ポリオール100重量部に対して0.01〜50重量部であり、好ましくは0.1〜10重量部である。セリシン添加量が少なすぎるとセリシン添加による効果が充分得られず、多すぎるとポリウレタンフォームの強度などの機械的特性が低下する。
【0023】ポリウレタンフォームの気泡膜および骨格内部にセリシンは分散され一体に成形されて、成形面表面に露出しているセリシン微小球状粒子が直接水分を吸収して膨潤し、その吸収水分を成形物中に散在しているセリシン粒子を介しながら順次成形物の内奥に送り込む機能を有する。しかもこれらの粒子が所定値の水分を含有して膨潤状態とされていることにより、ポリウレタンフォーム固有の帯電が防止され、不快な静電気の放電が生じない。」
「【0024】実施例1
エクセノール828(グリセリンにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを付加して、分子量5000としたポリエーテルポリオール、OH値34.1、旭硝子株式会社製)80部、エクセノール940(ポリオールにアクリロニトリルとスチレンを1:1の比率で重合させたポリマーポリオール、OH値26.4、旭硝子株式会社製)20部、TDI-80(2,4-体/2,6-体=80/20品、NCO%=48.2%、住友バイエルウレタン株式会社製)35.8部、SF-2962(シリコーン整泡剤、東レダウコーニングシリコーン株式会社製)1部、水3部、トリエタノールアミン2部、カオーライザーNo.1(テトラメチルヘキサメチレンジアミン、花王株式会社製)0.8部、NiaxA-1(混合触媒、ユニオンカーバイト株式会社製)0.1部からなる組成物にセリシン(平均粒径10μm)5部を混合し、常法によりポリウレタンフォームを製造した。」
「【0025】実施例2
エクセノール3031K(グリセリンにプロピレンオキサイドを付加して、分子量3000としたポリエーテルポリオール、OH値54.9、旭硝子株式会社製)100部、TDI-80(2,4-体/2,6-体=80/20品、NCO%=48.2%、住友バイエルウレタン株式会社製)52.1部、SH-190(シリコーン整泡剤、東レダウコーニングシリコーン株式会社製)1.5部、水4部、Dabco-33LV(トリエチレンジアミンの33%DPG溶液、AirProduct&Chemical社製)0.3部、スタノクト T-90(オクチル酸錫、古富製薬株式会社製)0.3部からなる組成物にセリシン(平均粒径10μm)5部を混合し、常法によりポリウレタンフォームを製造した。」
「【0032】【発明の効果】本発明により高い吸放湿性をもつポリウレタンフォームが簡便に得られる。
【0033】またセリシンは従来絹の精練工程で廃棄されていた副生物であり、実質上無価値であっただけでなく、廃水処理における設備や運転経費等に大きな負荷をかけていたが、分離回収して有効利用できる結果、その価値が高まり且つ上記の負荷を大きく軽減できるという二次的効果も得られる。」

(4)甲第4号証刊行物の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第4号証刊行物には、「セリシン含有生分解性ウレタン系発泡体及びその製造方法」に関し、次の技術事項が記載されている。
「【請求項2】セリシン1重量部とポリオール化合物2〜50重量部を含む有機溶媒溶液に、ポリイソシアネートを発泡条件下で反応させることを特徴とする生分解性ウレタン系発泡体の製造方法。」
「【0006】本発明において用いるセリシンは、生糸の精錬に際して副生する廃棄物であり、生糸の精錬廃水から分離回収することができる。
【0007】本発明のウレタン系発泡体は、セリシンからなるセグメントとポリオール化合物からなるセグメントを含有するものであり、セリシンとポリオール化合物を有機溶媒に溶解するか又はセリシンを液状ポリオール化合物に溶解し、得られた溶液にポリイソシアネートを添加し、重合反応させ、ついで得られた重合生成物に水、発泡剤及び触媒を加えて反応させる。このような反応方法は従来良く知られており、従来公知の方法により実施される。」
「【0011】本発明においては、反応原料として、セリシンを溶解させた液状のポリオール化合物を好ましく用いることができる。
セリシンとポリオール化合物の使用割合は、セリシン1重量部に対し、ポリオール化合物2〜50重量部、好ましくは2〜30重量部の割合である。
【0012】ポリイソシアネートの使用割合は、セリシンとポリオール化合物との合計量100重量部に対し、10〜1,000重量部、好ましくは10〜900重量部の割合である。発泡体を得る場合には、セリシン、ポリオール化合物及びジイソシアネートの合計量100重量部に対し、発泡剤としての水は0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部の割合で用いられる。
【0013】本発明によれば、セリシンを溶解したポリオール化合物を用いた場合には、セリシン:5〜90重量%、好ましくは10〜70重量%、ポリオール化合物:5〜90重量%、好ましくは10〜70重量%、ポリイソシアネート5〜90重量%、好ましくは10〜70重量%からなるポリウレタンを得ることができる。また、セリシンとポリオール化合物を溶解させた有機溶媒溶液を用いる場合には、セリシン:5〜90重量%、好ましくは10〜70重量%、ポリオール化合物:0〜90重量%、好ましくは10〜70重量%、ポリイソシアネート5〜90重量%、好ましくは10〜70重量%からなるポリウレタンを得ることができる。一般的には、ポリウレタン中のポリオール化合物/セリシンの重量比は2〜50、好ましくは2〜30、より好ましくは2〜10の範囲にするのが良い。」
「【0016】実施例1
屑生糸を蒸留水の沸騰水中で約3時間煮沸した後、フィブロイン部等を除去し、ついで脱水乾燥して200メッシュのフィルターにかけて粒度を揃え、セリシンを単離した。次に、このセリシンを分子量400のポリプロピレングリコール(PPG)に溶解させ、この溶液1重量部に、シリコン系整泡剤0.01重量部、発泡剤としての水0.01重量部、触媒としてのラウリン酸ジブチルスズ0.01重量部を加え、さらにMDI 1.5重量部を加え、25℃において、ホモジナイザーで良く撹拌して5分間叉応させた。その後、室温で一夜放置した。」

(5)甲第5号証刊行物の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第5号証刊行物には、「セリシンを分子鎖中に有する生分解性ポリウレタンの熱的および機械的性質」に関し、図面の図示とともに甲第4号証刊行物と同趣旨の内容の次の技術事項が記載されている。
「2.1 資料の調製
図1にセリシンを分子鎖中に組込んだポリウレタンの調製フローを示す。セリシン(Ser)は屑生糸を沸騰水中で約3時間煮沸した後,脱水,乾燥し,200メッシュのフィルターを通して粒度を揃えた。PUフォームは,Serと分子量400のポリプロピレングリコール(PPG,三官能ポリオール)にスズ系反応触媒,シリコン系整泡剤および発泡剤として用いた水を加えて良く攪拌し,これにMDIを加え,さらにホモジナイザーで良く攪拌して反応させ調製した。PUフィルムはSerと分子量400のPPGあるいはポリエチレングリコール(PEG,二官能ポリオール)を混合したポリオールとMDIをテトラヒドロフラン(THF)中で約1時間反応させ,デシケータ中で水平をとったガラス板上で製膜して調製した。Ser-PPG-MDI系およびSer-PEG-MDI系いずれの場合も淡黄色で半透明なフィルムが得られた。またフォームは淡黄色でで均一な発泡を持つ硬質系のものが有られた。」(111頁右下欄13行〜112頁右下欄2行)

(6)甲第6号証刊行物の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第6号証刊行物には、「抗菌性ポリウレタンフォーム、抗菌性ポリウレタンエラストマー及び抗菌性ポリウレタン塗料組成物」に関し、次の技術事項が記載されている。
「(1)ポリオール、有機イソシアネート、触媒、発泡剤及びキトサンを含む発泡原料を用いて製造された抗菌性ポリウレタンフォームであって、前記ポリウレタンフォーム中にキトサンが分散されて含有することを特徴とする抗菌性ポリウレタンフォーム。」(1頁左欄7〜12行)
「本発明は、台所用クリーナー、マスク、ボディスポンジ、化粧品用パフ、フィルターエレメント、シール材、下着パッド、シートクッション、マットレス、ヘッドレスト、皿洗い機用パッド、農芸用フォーム、内壁材、紙オムツ、靴底(インソール)、スキーウェア等に利用される。」(2頁左上欄2〜7行)
「発泡剤としては、通常、水(有機イソシアネートとの反応で炭酸ガスを生成する)を使用するが、必要に応じて、トリクロロモノフロオメタン、メチレンクロライド等の低沸点の有機化合物や、空気、二酸化炭素等の基体を用いることもできる。」(3頁右下欄1〜6行)
「前記ポリウレタンフォームとしては、通常、軟質の物が用いられるが、これに限定されず、半硬質、硬質のものとすることもできる。」(3頁右下欄11〜13行)
「即ち、この軟質ポリウレタンフォームは、所定のトリオール、キトサン抗菌剤、アミン触媒、シリコン整泡剤、発泡剤として水を攪拌混合した後、スタナス(II)オクテートを添加し、更にトリレンジイソシアネートを所定量加え、攪拌することにより製造された。」(4頁右上欄3〜8行)
「キトサンとしては「キトサンS」(太洋化学工業株式会社製、粒径;10〜200μm)のものを用いた。」(4頁右上欄17〜20行)

(7)甲第7号証刊行物の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第7号証刊行物には、「抗菌・抗カビ・防臭・消臭機能をもった発泡ウレタンの製造方法」に関し、図面の図示とともに「微粉末化した抗菌抗カビ剤と、微粉末化した消臭剤を、原料ポリオールに配合し、発泡剤、整泡剤、触媒を併用して同時発泡して発泡ウレタンを得ることを特徴とする抗菌・抗カビ・防臭・消臭機能をもった発泡ウレタンの製造方法」についての技術事項が記載されている。

(8)甲第8号証刊行物の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第8号証刊行物には、「抗菌性ポリウレタン樹脂およびその製造方法」に関し、図面の図示とともに「茶または茶成分を含む粉末からなる抗菌剤をポリウレタン樹脂の原料であるポリオールおよび有機イソシアネートを含む樹脂原料に配合し、該樹脂原料の重合反応を進めてポリウレタン樹脂を合成し、該ポリウレタン樹脂で形成されるマトリックス中に該抗菌剤を分散保持させたことを特徴とする抗菌性ポリウレタン樹脂の製造方法」についての技術事項が記載されている。

(9)甲第9号証刊行物の記載事項
本件の特許出願前に頒布された甲第9号証刊行物には、「抗菌剤及び食品の鮮度保持方法」に関し、「かき貝殻を焼成して得られる平均粒子径が74μm以下の酸化カルシウム型焼成物及び/又は水酸化カルシウム型焼成物からなる殺菌剤」についての技術事項が記載されている。

(10)参考資料1の記載事項
本件の特許出願前に頒布された参考資料1の刊行物には、「絹タンパク質の超微粉末の製造方法」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「絹フィブロインと絹セリシンとを有する絹蛋白質の粉末は、例えばファンデーション、乳液等の化粧品の材料として、或いは例えば細胞培養床等の医療品の材料として用いられており、特にこれら材料の特性の向上を計るために絹蛋白質粉末の粒径を微細にしようとする方法が行われている。かかる方法として例えば繭糸或いは生糸を、またはこれら糸の外層セリシンを除去した絹繊維を粉砕機によって機械的に粉砕して微粉末を得る粉砕方法が知られている。」(1頁左欄16行〜同頁右欄5行)

(11)参考資料2の記載事項
本件の特許出願前に頒布された参考資料2の刊行物には、「絹素材と光半導体の複合材料」に関し、図面の図示とともに次の技術事項が記載されている。
「【0007】絹不織布は絹繊維を含んだ不織布のことで、絹繊維と熱可塑性合成繊維を適宜割合で混合し、通常の不織布製造法によって製造する。乾式(メルトブロー法、接着繊維法、ニードルパンチ法)、湿式(抄紙法)のどちらでも可能である。使用する絹繊維としては精錬してセリシンを除いた繊維でもセリシンを含んだ状態のものでもよい。不織布の厚さ、含有する絹繊維の量は適宜設定すればよいが、絹繊維の作用を十分に発揮させるには絹繊維を50%以上含有するものが好適である。
【0008】ゲル状の絹素材を得る場合には、絹繊維(生糸、精錬後の糸)をたとえば50%塩化カルシウム液に浸し、オートクレーブで120℃、30分ボイルした後、冷却し、これを透析チューブに入れ流水下で塩分を除去して絹の溶液を作製し、得られた溶液をクエン酸等で等電点にすることによってゲル状の絹として得られる。顆粒状あるいは粉末状の絹を得る場合には、上記のゲル状の絹を凍結乾燥して水分を除去した後、粉砕し、顆粒状または粉末状として得られる。」

2.無効理由7についての当審の判断
(1)対比及び一致点・相違点
本件発明1と甲第1号証刊行物に記載された引用発明とを対比すると、引用発明の「軽石体1となる硬質ポリウレタン発泡材料からなる軽石発泡材料」、「厚手の小判形、円盤形、直方体等の所定形状で、軽石状の外観を呈する成形品」、「成形機にかけて、成形品に成形固化する」、及び「風呂用軽石たわしの製造方法」が、本件発明1の「硬質ポリウレタンの合成樹脂の原液」、「合成樹脂製軽石」、「合成樹脂製軽石を形成した」及び「合成樹脂製軽石の製造方法」にそれぞれ対応する。
そして、引用発明の「絹繊維をミクロン単位に粉砕した微粉末のシルクパウダー2」と、本件発明1の「セリシン水溶液」とは、ともに「絹由来物質」である点において共通している。
また、引用発明の「風呂用軽石たわし」と本件発明1の「合成樹脂製軽石」の両者は、等しく風呂の中で肌の角質化部分除去の目的で使用される軽石であるから、本件発明1の「合成樹脂製軽石」が具備するところの「肌の表面の角質化した部分を除去する」という作用効果を、引用発明の「風呂用軽石たわし」も本来的に具備すると考えられることは、引用発明の前記用途からすれば当然のことというべきである。
そうすると、本件発明1と引用発明の両者は、「硬質ポリウレタンの合成樹脂の原液中に絹由来物質を混入し、該原液を発泡させて肌の表面の角質化した部分を除去する合成樹脂製軽石を形成した合成樹脂製軽石の製造方法」である点で一致し、次の点で両者の構成が相違する。
相違点1:本件発明1が、「原液を独立発泡させ」るのに対して、引用発明は、独立発泡か否か不明である点。
相違点2:混入すべき「絹由来物質」が、本件発明1では「セリシン水溶液」であるのに対して、引用発明では「絹繊維をミクロン単位に粉砕した微粉末のシルクパウダー2」である点。

(2)相違点についての検討
ア.相違点1について
請求人が提出した甲第1号証刊行物ないし甲第9号証刊行物並びに参考資料1ないし参考資料2の刊行物のいずれにも、本件発明1の上記相違点1に係る「原液を独立発泡させ」る点についての構成が記載されているということができず、また、上記相違点1に係る構成が、本件特許出願時の「合成樹脂製軽石の製造方法」における周知慣用技術であるとも、あるいは、本件訂正明細書における自明の技術事項であるとも認めることができないから、本件発明1の上記相違点1に係る構成は、当業者が容易に想到できたことであるとは、いえない。

イ.相違点2について
請求人の提出した甲第3号証刊行物ないし甲第6号証刊行物等には、「ポリウレタンフォームの製造時に、発泡剤として『水』を用いる技術」が記載されていて、これらの記載からみて、ポリウレタンの発泡時に必要な発泡剤として「水」を用いることが周知慣用技術であることは明らかである。
そして、請求人は、発泡剤としての「水」を加えることが、ポリウレタンフォームの製造時の従来からの周知技術である上記事実を踏まえて、「ポリウレタンフォームの製造時に、発泡剤として「水」を加えると、『セリシンパウダー』が、発泡剤としての『水』に溶けることにより、その結果として『セリシン水溶液』になる」旨を主張する。
しかして、請求人の提出した甲第3号証刊行物に、実施例1として、「エクセノール828(グリセリンにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを付加して、分子量5000としたポリエーテルポリオール、OH値34.1、旭硝子株式会社製)80部、エクセノール940(ポリオールにアクリロニトリルとスチレンを1:1の比率で重合させたポリマーポリオール、OH値26.4、旭硝子株式会社製)20部、TDI-80(2,4-体/2,6-体=80/20品、NCO%=48.2%、住友バイエルウレタン株式会社製)35.8部、SF-2962(シリコーン整泡剤、東レダウコーニングシリコーン株式会社製)1部、水3部、トリエタノールアミン2部、カオーライザーNo.1(テトラメチルヘキサメチレンジアミン、花王株式会社製)0.8部、NiaxA-1(混合触媒、ユニオンカーバイト株式会社製)0.1部からなる組成物にセリシン(平均粒径10μm)5部を混合し、常法によりポリウレタンフォームを製造した。」が記載され、また、実施例2として、「エクセノール3031K(グリセリンにプロピレンオキサイドを付加して、分子量3000としたポリエーテルポリオール、OH値54.9、旭硝子株式会社製)100部、TDI-80(2,4-体/2,6-体=80/20品、NCO%=48.2%、住友バイエルウレタン株式会社製)52.1部、SH-190(シリコーン整泡剤、東レダウコーニングシリコーン株式会社製)1.5部、水4部、Dabco-33LV(トリエチレンジアミンの33%DPG溶液、AirProduct&Chemical社製)0.3部、スタノクトT-90(オクチル酸錫、古富製薬株式会社製)0.3部からなる組成物にセリシン(平均粒径10μm)5部を混合し、常法によりポリウレタンフォームを製造した。」が記載されている。
そうすると、上記甲第3号証刊行物の記載によれば、実施例1においては、セリシン(平均粒径10μm)の5部に対して水の3部が混合されるのであり、また、実施例2においては、セリシン(平均粒径10μm)の5部に対して水の4部が混合されることになる。
一方、請求人の提出した同じ甲第3号証刊行物には、「【0007】更に樹脂と粉体との均一な混練に手間を要する等の問題もある。またゼラチンを使用する場合は、ゼラチン粉は粒径が微小であっても粉砕により微粉化しているために凝集が生じ易く、このため粉体が樹脂内で偏在し、成形歪や成形品の片寄りを引き起こす原因になるという問題がある。」とも記載されている。
また、甲第6号証刊行物には、「発泡剤としては、通常、水(有機イソシアネートとの反応で炭酸ガスを生成する)を使用する…………。」(3頁右下欄1〜6行)と記載されている。
そうすると、甲第6号証刊行物の上記記載からみて、ポリウレタンフォームの製造時に、発泡剤として「水」を使用すると、有機イソシアネートとの反応で炭酸ガスを生成する化学反応が生じることになるのであり、このときの発泡剤としての「水」は、その「水」の全部が有機イソシアネートとの反応で炭酸ガスを生成する化学反応に消費されてしまうことが容易に推察できるから、請求人が主張する「ポリウレタンフォームの製造時に、発泡剤として「水」を加えると、『セリシンパウダー』が、発泡剤としての『水』に溶けることにより『セリシン水溶液』になる」ことが、ポリウレタンの発泡時の化学反応において必然的に生じる現象であるとは、到底考えられることではない。
そしてまた、甲第3号証刊行物の実施例1及び実施例2の場合の前記「セリシン(平均粒径10μm)」とは、いわゆる「セリシンの粉体」のことであるから、甲第3号証刊行物の上記記載からすれば、実施例1の場合のようにセリシンの粉体の5部に対して水の3部が混合され、また、実施例2の場合のようにセリシンの粉体の5部に対して水の4部が混合されることになるとしても、実施例1及び実施例2のいずれの場合にも、混合される水の量よりも、セリシン(平均粒径10μm)の量の方が多いことが明らかであり、このような実施例1及び実施例2の場合に、甲第3号証刊行物に記載されている「ウレタン樹脂に粉体を混入したときに発生する問題点」と同じように、「樹脂とセリシンの粉体との均一な混練に手間を要し、セリシンの粉体は粒径が微小であっても粉砕により微粉化しているために凝集が生じ易く、このためセリシンの粉体が樹脂内で偏在し、成形歪や成形品の片寄りを引き起こす」という問題が発生することは、当業者に容易に推察できることでもあるから、組成物中に発泡剤として加えられた水によって該組成物に混入されるセリシン(平均粒径10μm)が、組成物中の発泡剤としての水に溶けることにより、組成物の中で「セリシン水溶液」が生成されるということは、考えられることではない。換言すれば、甲第3号証刊行物における実施例1及び実施例2の場合には、発泡剤としての水を含む組成物に混入される「セリシン(平均粒径10μm)」は、該組成物の中では、溶けることなく「継粉(ママコ)」すなわち「ダマ」になってしまい、請求人が主張するような「発泡剤としての『水』により、セリシンパウダーが溶解することにより、組成物中に『セリシン水溶液』が生成される」という現象の発生は、到底考えられることではない。
したがって、上記甲第3号証刊行物に記載の実施例の場合において、請求人が主張するような「ポリウレタンフォームの製造時に、発泡剤として「水」を加えると、『セリシンパウダー』が、発泡剤としての『水』に溶けることにより『セリシン水溶液』になる」ということはいえない。
以上のとおりであるから、請求人が提出した甲第1号証刊行物ないし甲第9号証刊行物並びに参考資料1ないし参考資料2の刊行物のいずれにも、本件発明1の上記相違点2に係る「硬質ポリウレタンの合成樹脂の原液中にセリシン水溶液を混入」する点についての構成が記載されているということができず、また、上記相違点2に係る構成が、本件特許出願時の「合成樹脂製軽石の製造方法」における周知慣用技術であるとも、あるいは、本件訂正明細書における自明の技術事項であるとも認めることができないから、本件発明1の上記相違点2に係る構成は、甲第1号証刊行物ないし甲第9号証刊行物並びに参考資料1ないし参考資料2の刊行物の記載に基づいて、当業者が容易に想到できたことであるとは、いえない。
そして、本件発明1が奏する作用効果は、本件訂正明細書に記載されているとおりであり、甲第1号証刊行物ないし甲第9号証刊行物並びに参考資料1ないし参考資料2の刊行物に記載の公知技術ないし周知慣用技術から予測できる作用効果の範囲外のものと認められる。

(3)まとめ
以上のとおりであり、本件発明1は、引用発明に甲第2号証刊行物ないし甲第9号証刊行物、あるいは、参考資料1ないし参考資料2の刊行物に記載の公知技術ないし周知慣用技術を適用したとしても、当業者が容易に本件発明1の構成を得ることができたものということができないから、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない発明に対してなされたものということが、できない。

3.無効理由1ないし無効理由6についての当審の判断
(1)本件発明1に対する無効理由1ないし無効理由6について
上記「2.無効理由7についての当審の判断」欄において前述したとおり、本件発明1の相違点1に係る構成及び相違点2に係る構成が、甲第1号証刊行物ないし甲第9号証刊行物、あるいは、参考資料1ないし参考資料2の刊行物のいずれにも記載されているということができず、また、上記構成が、本件特許出願時の周知慣用技術であるとも、あるいは、本件訂正明細書において自明の技術事項であるとも認めることができないから、本件発明1は、甲第1号証刊行物ないし甲第5号証刊行物にそれぞれ記載された発明でないばかりでなく、甲第1号証刊行物ないし甲第9号証刊行物、或いは参考資料1ないし参考資料2の刊行物にそれぞれ記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

4.まとめ
以上のとおりであり、請求人が主張する無効理由1ないし無効理由7のいずれの理由によっても、本件発明1を無効とすることができない。

第6 むすび
請求人の主張する無効理由1ないし無効理由7についての当審の判断は、以上のとおりであり、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法第29条第2項の規定にも該当しないから、本件発明1に係る本件特許は、同法第123条第1項第2号の規定に該当せず、無効とすべきものとすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
合成樹脂製軽石の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ポリウレタンの合成樹脂の原液中にセリシン水溶液を混入し、該原液を独立発泡させて肌の表面の角質化した部分を除去する合成樹脂製軽石を形成したことを特徴とする合成樹脂製軽石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は合成樹脂製軽石の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
軽石は一般的に火山岩で形成された天然のものが知られている。
ところで、天然の軽石はガスでマグマに気泡が形成されたものであることから、その気泡の大きさも不揃いで品質も不均一なものが多く、硬いものや目の粗いもの(気泡の大きなもの)では肌を傷つけてしまうという問題があった。また、大きな固まりを手頃な大きさに切り出して成形されることから、形状も四角や小判形等、無駄が少なく歩留りのよい形状に限られていた。
【0003】
そこで、こうした問題点を解消するために例えば登録実用新案第3008950号公報に示されるように硬質ポリウレタンフォーム等の合成樹脂で軽石を形成するとともに、その表面部分に絹繊維を微粉末にしたシルクパウダーを貼着もしくは混入したものが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記登録実用新案公報に記載された硬質ポリウレタンフォーム等の合成樹脂製軽石にシルクパウダーを設けたものでは、シルクパウダーの成分は絹繊維の線分である不水溶性のフィブロインで形成されていることから、軽石の表面とこれが接触する肌との間に介在してクッションとして作用するために、軽石としての作用、即ち、角質化した肌の表面を削り落とす作用が弱められてしまうという問題があった。本発明は斯かる問題をも解消するために提案されたもので、角質化した肌の表面を削り落とす作用を低下させることなく、さらには肌の保湿も行えるようにした合成樹脂製軽石を提供できるようにすることを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明にかかる合成樹脂製軽石の製造方法は、硬質ポリウレタンの合成樹脂の原液中にセリシン水溶液を混入し、該原液を独立発泡させて肌の表面の角質化した部分を除去する合成樹脂製軽石を形成したことを特徴とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の合成樹脂製軽石の製造方法を図面に基づいて説明する。
図1は合成樹脂製軽石の正面図、図2はその側面図であって、図中符号1はこの合成樹脂製軽石を全体的に示す。この合成樹脂製軽石1は、独立発泡の硬質ポリウレタンフォームで形成されており、硬質ポリウレタンフォームにはセリシンが混入されている。次に、セリシンを混入した合成樹脂製軽石1の製造工程を図3に基づいて説明する。
【0007】
先ず、発泡剤、整泡剤、ポリオール、触媒、難燃剤及びセリシン水溶液を混合して混練してポリオール系原液を形成する。ここで、セリシン水溶液は、カイコの幼虫の絹糸腺内容物で形成された繭を熱湯に浸し、絹糸であるフィブロインを取り出した残りの熱湯に溶解しており、この熱湯からセリシンを抽出して得られる。このカイコの幼虫の絹糸腺内容物にはフィブロインが約70%、セリシンが約30%含まれており、このセリシン中には約10%の保湿剤として作用するセリンが含まれる。
【0008】
また、ポリオール系原液を調製する時のセリシン水溶液は、上記のようにして得られたセリシンの11倍濃縮液を使用している。一方、ポリイソシアネートを含んだポリイソシアネート系原液を用意し、セリシンが混練されたポリオール系原液とポリイソシアネート系原液とを夫々計量してこれを混合し、発泡原液を形成する。上記のようにして調製ならびに計量された両原液を混合して均一に攪拌すると、まず、ポリイソシアネートとポリオールとが重付加反応を開始し、ポリウレタン樹脂を生成すると同時に反応熱を発生する。
【0009】
揮発性物質を発泡剤とした場合にはこの反応熱により発泡剤が気化し、ガスを発生する。水を発泡剤とした場合にはポリイソシアネートと反応してポリ尿素を生成すると同時に炭酸ガスを発生し、これと同時にポリ尿素も樹脂化をすすめる。発泡原液の反応熱による温度上昇や反応により生成されたこれらのガスは、シリコーン整泡剤を核として気泡となる。この気泡が無数に発生・成長する状態を図3にいうところの発泡である。また、この反応は更に進行し、それに伴って発泡原液の粘度が増加し、ついには三次元構造を持つ樹脂状に固化すると此処に硬質ウレタンフォームが形成される。
【0010】
上記のようにして形成された硬質ウレタンフォームを成形すると、図1及び図2に示すような無数の気泡で形成されたセリシンを含む略小判形の合成樹脂製軽石1が完成するのである。尚、合成樹脂製軽石1の形状は小判形に代えて図4に示すようにドーナツ形にすることもできるしその他の形状、例えば星形や球や棒状等にも形成することができる。上記のようにして形成されたセリシンを含む合成樹脂製軽石1を例えば浴室等で足や肘部分の角質化した表面部分を削り落とす場合、当該部分を濡らしたり、洗剤をつけたり、または合成樹脂製軽石1に水や石鹸をつけて擦る。
【0011】
すると、合成樹脂製軽石1に含まれるセリシン(silk glue)の特にセリンの保水力により保水された状態で角質化した肌と接触させるのであるが、この角質化した部分を削り落とす気泡で形成された孔部分の表面部分には湿潤したセリシンがあり、この湿潤したセリシンが肌に優しく接触して角質化した肌部分だけを削り落とすので、その下の新たな肌部分が傷つくのを防止できるのである。
尚、上記実施の形態ではセリシン水溶液をポリオール系原液を調製する時に混合するようにしてあるが、本発明はこうしたものに限られず、発泡に至るまで、例えば図3中に点線で示すようにポリオール系原液とポリイソシアネート系原液とを夫々計量して混合し、発泡原液を形成する時に混合することができるのは勿論である。
【0012】
【発明の効果】
以上に説明したように、硬質ポリウレタンの発泡合成樹脂を独立発泡させて形成した本発明の肌の表面の角質化した部分を除去する合成樹脂製軽石の製造方法によれば、合成樹脂製軽石にセリシンを含有させてあるので、この合成樹脂製軽石を肌に当てて石鹸や水とともに擦った場合に、合成樹脂製軽石に含まれるセリシン中のセリンの保水力により、保水された状態で肌と接触し、肌に優しく接触させて傷つけるのを防止できながらも、肌の表面の角質化した部分を除去する軽石本来の作用を十分に発揮させることができるという利点がある。
【0013】
また、本発明の合成樹脂製軽石に含まれるセリシンが溶解して触れた肌に付着乃至吸収されると、その保水力により肌がしっとりと潤い、スキンケアや美肌作りにも貢献できるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】は合成樹脂製軽石の正面図である
【図2】は合成樹脂製軽石の側面図である。
【図3】は合成樹脂製軽石の製造工程を示す
【図4】は合成樹脂製軽石の変形例を示す正面図である。
【符号の説明】
1・・・合成樹脂製軽石
【図面】




 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2005-05-11 
結審通知日 2005-05-23 
審決日 2005-06-06 
出願番号 特願平10-181078
審決分類 P 1 113・ 121- YA (A47K)
P 1 113・ 113- YA (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江成 克己  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 佐藤 昭喜
▲高▼橋 祐介
登録日 2004-04-02 
登録番号 特許第3541126号(P3541126)
発明の名称 合成樹脂製軽石の製造方法  
代理人 杉本 勝徳  
代理人 斉藤 武彦  
代理人 杉本 勝徳  

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