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審決分類 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正する G02F
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する G02F
管理番号 1123368
審判番号 訂正2005-39104  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1987-09-16 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2005-06-20 
確定日 2005-08-01 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2047880号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2047880号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第2047880号発明(昭和62年2月28日特許出願、パリ条約による優先権主張1986年2月28日,仏国、平成8年4月25日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち下記のとおり訂正することを求めるものである。

訂正事項:
訂正前の請求項1である
「【請求項1】電気制御複屈折効果を利用し、一方の側が入射光に面していると共に等間隔に配置された両側を有する1つの液晶セル組立体を備える液晶セルにおいて、
前記液晶セル組立体は、
正光学異方性のネマチック液晶層と、
少なくとも2つの電極と、
入射光を偏光するための少なくとも1つの偏光手段と、
前記ネマチック液晶層の複屈折を補償するための少なくとも1つの補償媒体層とを備え、
前記少なくとも2つの電極のそれぞれは前記ネマチック液晶層の両側に配置され、入射光に面した前記一方の側に配置された電極は透明であり、
前記電極間に電圧が印加されていない時は前記ネマチック液晶層の分子が略ホメオトロピック方向に向いており、
前記少なくとも1つの偏光手段は前記入射光に面した側に配置されており、
前記少なくとも1つの補償媒体層は、斜めからの観察を向上させるためのホメオトロピック構造体であり、前記少なくとも1つの補償媒体層は3つの主屈折率を有し、それぞれの主屈折率はそれぞれに対応した軸を有し、前記主屈折率の1つは他の2つの主屈折率よりも小さく、この最小主屈折率に対応した軸は前記ホメオトロピック方向と平行になっていることを特徴とする液晶セル。」を、
「【請求項1】電気制御複屈折効果を利用し、一方の側が入射光に面していると共に等間隔に配置された両側を有する1つの液晶セル組立体を備える液晶セルにおいて、
前記液晶セル組立体は、
正光学異方性のネマチック液晶層と、
少なくとも2つの電極と、
入射光を偏光するための少なくとも1つの偏光手段と、
前記ネマチック液晶層の複屈折を補償するための少なくとも1つの補償媒体層とを備え、
前記少なくとも2つの電極のそれぞれは前記ネマチック液晶層の両側に配置され、入射光に面した前記一方の側に配置された電極は透明であり、
前記電極間に電圧が印加されていない時は前記ネマチック液晶層の分子が略ホメオトロピック方向に向いており、
前記少なくとも1つの偏光手段は前記入射光に面した側に配置されており、
前記少なくとも1つの補償媒体層は、斜めからの観察を向上させるための補償媒体層であり、該補償媒体層は、ホメオトロピック方向に対して平行な対称軸と、この対称軸に対して平行な異常軸とを有する負光学異方性の一軸媒体、または最小主屈折率の軸はホメオトロピック方向に対して平行である二軸媒体であり、前記少なくとも1つの補償媒体層は3つの主屈折率を有し、それぞれの主屈折率はそれぞれに対応した軸を有し、前記主屈折率の1つは他の2つの主屈折率よりも小さく、この最小主屈折率に対応した軸は前記ホメオトロピック方向と平行になっていることを特徴とする液晶セル。」
と訂正する。

2.当審の判断
上記の訂正事項は、要するに、訂正前の請求項1における「ホメオトロピック構造体」との記載を、「補償媒体層であり、該補償媒体層は、ホメオトロピック方向に対して平行な対称軸と、この対称軸に対して平行な異常軸とを有する負光学異方性の一軸媒体、または最小主屈折率の軸はホメオトロピック方向に対して平行である二軸媒体」とするものである。

そこで、上記訂正事項について検討するに、「ホメオトロピック構造」との用語は明りょうであるが、「ホメオトロピック構造体」との用語は、ホメオトロピック構造を有するものと漠然と解することができるとしても、通常の技術用語として明りょうとはいえない。
また明細書の発明の詳細な説明に上記用語を定義する記載はない。

そこで、明細書を参酌すると、明細書には、
「(発明の概要)
本発明は、前記の諸難点を解消することを目的とする。
従って、本発明は、電気制御復屈折効果を利用し、一方の側が入射光に面していると共に等間隔に配置された両側を有する1つの液晶セル組立体を備える液晶セルにおいて、液晶セル組立体は、正光学異方性のネマチック液晶層と、少なくとも2つの電極と、入射光を偏光するための少なくとも1つの偏光手段と、ネマチック液晶層の複屈折を補償するための少なくとも1つの補償媒体層とを備え、少なくとも2つの電極のそれぞれはネマチック液晶層の両側に配置され、入射光に面した一方の側に配置された電極は透明であり、電極間に電圧が印加されていない時はネマチック液晶層の分子が略ホメオトロピック方向に向いており、少なくとも1つの偏光手段は入射光に面した側に配置されており、少なくとも1つの補償媒体層は、斜めからの観察を向上させるためのホメオトロピック構造体であり、少なくとも1つの補償媒体層は3つの主屈折率を有し、それぞれの主屈折率はそれぞれに対応した軸を有し、主屈折率の1つは他の2つの主屈折率よりも小さく、この最小主屈折率に対応した軸はホメオトロピック方向と平行になっている液晶セルに関するものである。」
と記載され、また、
「一実施態様においては、2つの偏光手段は、直交直線偏光体であり、補償媒体層は、ホメオトロピック方向に対して平行な対称軸と、この対称軸に対して平行な異常軸とを有する負光学異方性の一軸媒体である。
・・・
他の実施態様によれば、2つの偏光手段は、直交直線偏光体であり、補償媒体層は、二軸媒体であり、最小主屈折率の軸は、ホメオトロピック方向に対して平行である。」
と記載されている。
上記記載によれば、本件発明における「前記ネマチック液晶層の複屈折を補償するための少なくとも1つの補償媒体層」というのは、斜めからの観察を向上させるためのものであって、実施態様においては、負光学異方性の一軸媒体あるいは二軸媒体であることが理解できるから、本件発明の「ホメオトロピック構造体」として記載した事項は、明細書を参酌して、「補償媒体層であり、該補償媒体層は、ホメオトロピック方向に対して平行な対称軸と、この対称軸に対して平行な異常軸とを有する負光学異方性の一軸媒体、または最小主屈折率の軸はホメオトロピック方向に対して平行である二軸媒体」であることが理解できる。

上記訂正が本件発明を実質的に変更するかどうかを検討する。
発明の要旨認定においては、特段の事情のない限り、請求の範囲の記載に基づいてされるべきであるが、特段の事情として、
(i)特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとかあるいは
(ii)一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合
に限って、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許される。
これによれば、本件発明については、「ホメオトロピック構造体」との用語が、上記のとおり通常の技術用語として明りょうとはいえないことから、発明の詳細な説明の記載を参酌すると、上記用語は上記訂正事項として解釈できるものである。
そして、発明の詳細な説明を参酌できる程度において、発明の詳細な説明の記載の範囲内でした訂正が、発明を実質的に変更するとはいえない。

よって、本件訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、さらに願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでない。

また、他に独立して特許を受けることができない理由を発見しない。

3.むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、当該法律による改正前の特許法第126条第1項ないし第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
液晶セル
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気制御複屈折効果を利用し、一方の側が入射光に面していると共に等間隔に配置された両側を有する1つの液晶セル組立体を備える液晶セルにおいて、前記液晶セル組立体は、正光学異方性のネマチック液晶層と、少なくとも2つの電極と、入射光を偏光するための少なくとも1つの偏光手段と、前記ネマチック液晶層の複屈折を補償するための少なくとも1つの補償媒体層とを備え、前記少なくとも2つの電極のそれぞれは前記ネマチック液晶層の両側に配置され、入射光に面した前記一方の側に配置された電極は透明であり、前記電極間に電圧が印加されていない時は前記ネマチック液晶層の分子が略ホメオトロピック方向に向いており、前記少なくとも1つの偏光手段は前記入射光に面した側に配置されており、前記少なくとも1つの補償媒体層は、斜めからの観察を向上させるための補償媒体層であり、該補償媒体層は、ホメオトロピック方向に対して平行な対称軸とこの対称軸に対して平行な異常軸とを有する負光学異方性の一軸媒体、または最小主屈折率の軸はホメオトロピック方向に対して平行な二軸媒体であり、前記少なくとも1つの補償媒体層は3つの主屈折率を有し、それぞれの主屈折率はそれぞれに対応した軸を有し、前記主屈折率の1つは他の2つの主屈折率よりも小さく、この最小主屈折率に対応した軸は前記ホメオトロピック方向と平行になっていることを特徴とする液晶セル。
【請求項2】
前記2つの電極は透明であり、前記電極の両方の側に配置された2つの相補型偏光手段を有し、前記補償媒体層は前記偏光手段の少なくとも1つと前記偏光手段に隣接した前記電極との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶セル。
【請求項3】
前記2つの偏光手段は、直交直線偏光体であり、前記補償媒体層は、ホメオトロピック方向に対して平行な対称軸と、この対称軸に対して平行な異常軸とを有する負光学異方性の一軸媒体であることを特徴とする請求項2に記載の液晶セル。
【請求項4】
前記補償媒体層はポリマー材料から作製されていることを特徴とする請求項3に記載の液晶セル。
【請求項5】
前記ポリマー材料は熱可塑性であることを特徴とする請求項4に記載の液晶セル。
【請求項6】
前記ポリマー材料は、さらに少なくとも1つの色フィルタを備えた基板を有し、この基板は、熱可塑性ポリマー層によって固定されていることを特徴とする請求項5に記載の液晶セル。
【請求項7】
前記2つの偏光手段は、相補型円形偏光体であり、前記補償媒体層は、ホメオトロピック方向に対して平行な対称軸と、この対称軸に対して平行な異常軸とを有する負光学異方性の一軸媒体であることを特徴とする請求項2に記載の液晶セル。
【請求項8】
前記補償媒体層はポリマー材料から形成されていることを特徴とする請求項7に記載の液晶セル。
【請求項9】
前記ポリマー材料は熱可塑性であることを特徴とする請求項8に記載の液晶セル。
【請求項10】
前記ポリマー材料は、さらに少なくとも1つの色フィルタを備えた基板を有し、この基板は、熱可塑性ポリマー層によって固定されていることを特徴とする請求項9に記載の液晶セル。
【請求項11】
前記2つの偏光手段は、直交直線偏光体であり、前記補償媒体層は、二軸媒体であり、前記最小主屈折率の軸は、ホメオトロピック方向に対して平行であることを特徴とする請求項2に記載の液晶セル。
【請求項12】
前記補償媒体層の各層の厚みと前記補償媒体層の他の2つの主屈折率の差の絶対値との積が約0.125μmであることを特徴とする請求項11に記載の液晶セル。
【請求項13】
前記補償媒体層は、さらに光学反射層を有し、この光学反射層は、入射光に面した側とは反対のセルの側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶セル。
【発明の詳細な説明】
(技術分野)
本発明は、電気制御複屈折効果を利用した液晶セルに関するものであり、特にマトリクススクリーン等のデータディスプレイ装置の製造に適用し、より具体的にはカラーディスプレイ用複合スクリーンの作製を目的とするものである。
(従来技術)
電気制御複屈折効果を利用した液晶セルは、既に周知である。この効果は、既に液晶マトリクススクリーンの開発を可能にし、IEEE Transaction on Electron Device,vol.Ed26,No.8,August1979に掲載されたJ.ROBERTの技術論文“T.V.image with L.C.D.”並びに雑誌Display’s,October1981に掲載されたJ.F.Clercの論文“Electrooptical limits of the E.C.B.effect in nematic liquid crystals”に紹介されている。
電気制御複屈折効果を利用した液晶セルは、従来技術によれば、例えば透明電極が設けられた2枚のガラス板の間にネマチック液晶を入れている。このようにして得られた組立体の両側に、それぞれ1つの偏光手段、例えば直交直線偏光体がそれぞれ配置される。電極間に電圧が印加されていないときは、液晶の分子は“ホメオトロピー方向”と呼ばれる方向に対して略平行で、ガラス板に対して垂直になっており、入射光はセルを通過することができない。電極間に適切な電圧が印加されると、液晶の分子はホメオトロピー方向に対してある角度をなす方向に略向き、その角度は印加電圧又は励起電圧によって決まる。そして少なくとも一部の入射光がセルを通過でき、従ってセルを通過する光の強度を電気的に制御することができ、この光強度は印加電圧の関数である。
電気制御複屈折効果を利用した液晶セルは、斜めから見たときにセルのコントラストが悪くなり、観察角度が大きくなるにつれて更に悪くなり、観察角度によってはコントラストが逆転することさえあるという欠点を持っている。
フランス特許出願第8407767号(1984年5月18日)には、この欠点を解消しようとする電気制御複屈折効果を利用した液晶セルが開示されている。
しかし、このセルにもいくつかの難点がある。即ち、一定の厚みの液晶層を必要とし、光の2つの入射面とその近傍の液晶層の複屈折しか有効に補償することができず、また色度欠陥があり、特定の光波長では他の光波長に比べて消光が十分に行なわれない。
(発明の概要)
本発明は、前記の諸難点を解消することを目的とする。
従って、本発明は、電気制御復屈折効果を利用し、一方の側が入射光に面していると共に等間隔に配置された両側を有する1つの液晶セル組立体を備える液晶セルにおいて、液晶セル組立体は、正光学異方性のネマチック液晶層と、少なくとも2つの電極と、入射光を偏光するための少なくとも1つの偏光手段と、ネマチック液晶層の複屈折を補償するための少なくとも1つの補償媒体層とを備え、少なくとも2つの電極のそれぞれはネマチック液晶層の両側に配置され、入射光に面した一方の側に配置された電極は透明であり、電極間に電圧が印加されていない時はネマチック液晶層の分子が略ホメオトロピック方向に向いており、少なくとも1つの偏光手段は入射光に面した側に配置されており、少なくとも1つの補償媒体層は、斜めからの観察を向上させるためのホメオトロピック構造体であり、少なくとも1つの補償媒体層は3つの主屈折率を有し、それぞれの主屈折率はそれぞれに対応した軸を有し、主屈折率の1つは他の2つの主屈折率よりも小さく、この最小主屈折率に対応した軸はホメオトロピック方向と平行になっている液晶セルに関するものである。
セルの斜め観察用のホメオトロピック構造のネマチック液晶層の複屈折を補償するために、この媒体層を用いれば、最高70度という大きい角度での観察でも高いコントラストを確保することができる。更に、本発明によるセルは、前述の色度欠陥がなく、いかなる光入射面においても複屈折を効果的に補償し、複合スクリーンの製造に要求される非常に大きい厚みを含めて任意の液晶厚みのセルとすることができる(補償媒体層の厚みは、液晶層の厚みの関数として最適補償が確保できるように調節される)。更に、本発明のセルは、任意の偏光手段(直線、円又は楕円偏光)と適合する利点がある。
本発明は、液晶の厚みが相当に厚く、従って多重度が高く、かつ色収差がなく、従って斜めに見たときの表示された色の純粋性と安定性を維持することのできるディスプレイ装置を作製することができる。
本発明の一実施態様としてのセルにおいては、2つの電極は透明であり、電極の両方の側に配置された2つの相補型偏光手段を有し、補償媒体層は偏光手段の少なくとも1つと偏光手段に隣接した電極との間に配置されている。
“相補型偏光手段”なる語は、例えば2つの直交直線偏光体、又は2つの相補型楕円偏光体、円偏光体を意味し、それはホメオトロピー方向における入射平面光波に関して互いに、あるいは前記光波の左右に関してそれぞれ相補的である。
一実施態様においては、2つの偏光手段は、直交直線偏光体であり、補償媒体層は、ホメオトロピック方向に対して平行な対称軸と、この対称軸に対して平行な異常軸とを有する負光学異方性の一軸媒体である。
本発明の他の実施態様においては、補償媒体層はポリマー材料から作製され、また、ポリマー材料は熱可塑性であることが好ましい。以下に述べるように、このポリマーにより、複屈折を補償することが出きるだけでなく、それが配置された両側のセル構成要素を互いに接着する層を比較的簡単な方法で形成することができる。
本発明のセルをカラーディスプレイ用に用いる場合、ポリマー材料は、さらに少なくとも1つの色フィルタを備えた基板を有し、この基板は、熱可塑性ポリマー層によって固定されている場合、その基板は前記熱可塑性ポリマーの層によって効果的に固定、保持され得る。
他の実施態様によれば、2つの偏光手段は、直交直線偏光体であり、補償媒体層は、二軸媒体であり、最小主屈折率の軸は、ホメオトロピック方向に対して平行である。
好ましくは、補償媒体層の各層の厚みと補償媒体層の他の2つの主屈折率の差の絶対値との積が約0.125μmとし、その結果、可視領域において前記層を四分の一波長遅延板に類似のものとして構成することができる。
電極を透明にした本発明の一実施態様においては、補償媒体層は、さらに光学反射層を有し、この光学反射層は、入射光に面した側とは反対のセルの側に配置されている。
(実施例)
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。
第1図は、本発明の第1の実施態様に対応する液晶セルの分解図である。このセルは、下プレート4と上プレート6との間に液晶層2を有し、その上下プレートは平行でかつ透明であり、例えばガラスからできている。プレート4,6の互いに対向する面にそれぞれ透明電極8及び10が設けられている。
第1及び第2の直交直線偏光体12,14が、液晶層2及び2つのプレート4,6によって構成された組立体の両側に配置されている。第1の偏光体12はプレート6側に、また第2の偏光体14はプレート4側にある。セルは、第1の偏光体12から光が入射し、第2の偏光体14を通して観察するように意図されている。これらの2つの偏光体は、プレート4及び6に平行な板状をしている。
セルは又、下プレート4と第2の偏光体14との間に位置しこれらと平行な補償媒体の板又はシート16を有する。これについては後述する。
以上述べたセルは、透過モードで使用する。第2の偏光体14に関して補償板16とは反対側に、それらと平行に光学反射層18を付加し、第1の偏光体12を通して観察すれば、反射モードで使用することもできる。
使用する液晶層は、負誘電異方性のネマチック液晶層であり、その分子は、電極間に電圧が印加されていないときは、本質的に、ホメオトロピー方向と呼ばれるプレート4,6に垂直な方向Dに向いている。このネマチック液晶層は又、正の光学異方性一軸媒体であり、その媒体の異常屈折率NeClは常屈折率NoClより大きい。この媒体の屈折率の楕円面は対称軸を持っており、この対称軸は強屈折率軸(この場合はNeCl)で、電極間に電圧が印加されていないときの液晶分子の主軸及びホメオトロピー方向に対して平行である。
補償板16は、負光学異方性一軸媒体であり、その異常屈折率はNe1は常屈折率No1より小さい。この媒体の屈折率の楕円面は対称軸を持っており、この対称軸は弱屈折率軸(この場合はNe1)でホメオトロピー方向に対して平行である。
一例として、液晶層2は、MERCKからZLI1936(NeCl-NoCl=0.19)の商品名で発売されている材料を素材とする厚み5μmの液晶層とし、一方、補償板16は、Dupont de NemoursからSURLYNの商品名で発売されている熱可塑性ポリマーを素材とする15の積層とし、それぞれのシートの厚さは、50μmである。補償板16の最適厚みは、実際には液晶層の厚みに左右され(正比例)、液晶層の厚みを設定し、それに従って特定の観察角度で最適なコントラストが得られるように補償板16の厚みを探して実験的に決定される。なお、補償板16は、プレート4と偏光体14の間ではなく、プレート6と偏光体12の間に入れることもできる。
より一般的には、補償板16を複数層とし、そのいくつかをプレート6と偏光体12の間に入れ、残余をプレート4と偏光体14の間に入れて、それらの層のトータルの厚みを補償板16の厚みと等しくすることができる。
第2図は、本発明の第2の実施態様の分解図である。このセルは、透明電極8,10を備えた2枚のガラス板4,6間に液晶層2を有し、又2つの直行直線偏光体12,14と、必要に応じて光学反射層18(反射モードでは、偏光体12に光が入射し、その偏光体12を通して観察する)を、第1図に示したと同様の位置に備えている。
第2図に示すセルは又、プレート6と偏光体12の間にプレート20を、プレート4と偏光体14の間にプレート22をそれぞれ有し、それらのプレート20及び22はプレート4,6に平行である。ネマチック液晶層2の光学特性は第1図の場合と同じである。
各プレート20,22はそれぞれ略同じ値の2つの主要屈折率N1o,N2oと、N1o,N2oより小さい第3の屈折率N3eとを有する二軸媒体であり、弱屈折率軸N3eはホメオトロピック方向に対して平行である。
好ましくは、プレート20及び22の厚みが略等しく、(N1o-N2o)の絶対値とプレートの何れか一方の厚みとの積が0.125μmに非常に近くなるように選び(条件1)、これを可視領域における準四分の一波遅延板として構成する。0.125μmという値は、第2図のセルの励起電圧印加時に対応する“白”状態での最高輝度に相当する。
各プレート20,22の最適厚み(特定の観察角度と特定の液晶セルで最適コントラストを確保するための)は、設定された液晶層の厚みの関数として実験的に決定することができる。プレート6と偏光体12との間か又はプレート4と偏光体14との間に位置させた1つの補償板のみを使用することもでき、その場合の単一のプレートには、液晶層の厚みの関数として決定されたプレート20と22の厚みの和に等しい厚みを持たせる。
しかし、上に示した実施態様においては、プレート20及び22の厚みが条件1によって既に固定されているため、液晶層の複屈折の最適補償は、その補償に対する最適異常屈折率N3eを有するプレート20及び22の構成材料を選択することにより決定される。
一例として、液晶層は、MERCKよりZLI1936(NeCl-NoCl=0.19)の商品名で発売されている材料を素材とする4〜6μmの厚みの層とし、一方、プレート20及び22は、Rhone Poulencから発売され、約3.5〜4μmの厚みを有し、屈折率がN1o=1.660、N2o=1.6425、N3e=1.5000のセロハンシートとする。
第3図は、本発明の第3の実施態様を示したものであり、透明電極8及び10をそれぞれ備えたガラス板4,6の間に液晶層2を有する。これらの要素の配置は第1図のものと同一である。また、液晶層2の光学的特性も第1図のセルの場合と同じである。
第3図に示すセルは又、プレート4,6及び液晶層2で構成される組立体の両側に第1の円偏光体24と第2の円偏光体26とを有し、第1の偏光体24はプレート6側にあって入射光を受け、他方、第2の偏光体26はプレート4側にある。偏光体24,26はプレート4及び6に平行で、セルは偏光体26を通して観察される。偏光体24,26はまた互いに相補型で、即ち入射光に対して偏光体の一方が左方向、他方が右方向である。
前述のように、反射モードとして使用するときは、光学反射層18を偏光体26に関してプレート4とは反対側に設けることができ、この場合、セルは偏光体24を通して観察される。
偏光体24は、四分の一波板30が組み合わされた直線偏光体28で構成されている。四分の一波板30は正の光学異方性一軸媒体で、その主軸は偏光体28の面内(即ちホメオトロピー方向に対して垂直方向)にあり、偏光体28の偏光方向と45度の角度をなしている。第2の円偏光体26は第1の偏光体24と同一で、偏光体24及び26の四分の一波板30はそれぞれプレート6及び4に対面している。
第3図に示すセルは又、負光学異方性を持つ一軸材料からなる少なくとも1つのプレートを備えており、その光学的特性は、第1図で述べたプレート16のそれと同じである。そのプレートは、プレート4と6に平行で、プレート4,6の1つと円偏光体の1つとの間に配置される。
第3図の場合のセルは、そのようなプレート32及び34を2つ持っており、プレート32はプレート6と偏光体24との間に、プレート34はプレート4と偏光体26との間にそれぞれ位置している。
単一のプレート32又は34の(特性観察角度における最適コントラストを得るための)最適厚み、又はプレート32及び34の最適トータル厚みは、液晶層2の厚みの関数として決定される。第3図のセルに1つ又は複数の負光学異方性一軸材料のプレートを使用すると、液晶層を通過する光波の可視領域全体の略円形楕円率(almost circular ellipticity;これはセルの白状態での発光効率を向上させる)と、前記負光学異方性一軸材料のプレートと2つの円偏光体とで構成されるシステムの補償挙動(この補償は前記プレートの製作状態に依存する)とをそれぞれ別個に制御することができる。
第3図のセルで用いられる各補償板は、第1図のセルで用いられるものと同様な方法で作製され、(第1図のセルの各プレートと同様に)後述するように、セルの封止工程と一体化することができる。
液晶層の厚みが同じ場合、第3図のセルを作製するに必要な負光学異方性一軸材料の厚みは、ここでは四分の一波遅延板を使用するため、第1図に示すセルを作製するに必要な材料厚みより小さい。
一例として、第3図のセルは、MERCKからZLI1936(NeCl-NoCl=0.19)の商品名で発売されている材料を素材とする厚み5μmの液晶層を有し、各円偏光体は、POLAROIDからHCP37の商品名で発売されている偏光体とし、また各プレート32及び34は、Dupont de NemoursからSURLYNの商品名で発売されているシート(1枚の厚み80μm)5枚重ねの積層体によって構成されている。第4図は、層に対して垂直な対称軸を有する負光学異方性の一軸材料からなる層の製造工程を示したもので、その層の弱屈折率軸は前記対称軸に平行である。このような層は第1図、第3図に示すセルの作製に使用することができる。
この工程によれば、硬く、平坦で透明な2枚の基板間に、1又は複数の熱可塑性材料からなるシート40、例えばDupont de NemoursからSURLYNの商品名で発売されているシートを入れる。その材料は、常温ではガラス質状であるが、その履歴に依存する複屈折性を有する。この材料は、適切な温度に加熱すると、ガラス質状から等方性状になり、複屈折性がなくなる。
基板36及び38は、例えば第1図のセルに使用されたプレート4,6と同様な2枚のガラス板である。
1又は複数のシートを基板間に入れた状態で、各基板に均一な圧力をかける。この方法として、シートと基板からなる組立体をプラスチックバッグ42に入れる。このバッグは、後述する理由でオーブンにも入れることができるものである。バッグ内を真空にし、加熱封止した後大気圧に等しい均一な圧力を各基板にかける。続いて、組立体を含むバッグを例えばオーブン内で加熱し、熱可塑性材料をガラス質状態から等方性状態に変化させ、その後バッグをオーブンから取り出して開ける。
次に、材料を冷まして収縮させる。2つの基板に対して垂直な一方向にしか収縮しない。このようにして、ガラス質状態に戻ると複屈折状態を回復する前記材料に、前記方向に対して垂直な対称軸Sが生じる。かくして、層に対して垂直な対称軸を有し、媒体の異常屈折率を含んでいる負光学異方性の一軸材料の層が得られる。
第4図を参照して上に述べた工程は、本発明による液晶セルの製造工程、特にセルの封止工程と効果的な方法で直接結合することができる。封止は、セルに液晶を導入する前に加熱、低圧で行なう。
第5図は、この結合を示したものである。図示しない透明電極と封止手段44とを備え、後でその間に液晶を導入する2枚のガラス板4,6を考えて、ガラス板4,6の一方と透明基板48との間に1又は複数の熱可塑性ポリマーシート46を入れる。透明基板48は、セルの偏光体の1つ又はセルをカラーディスプレイとして考える場合は色フィルタになるガラス板にすることができる。そこでガラス板6と基板48は、第4図における基板36,38と同様に作用する。
具体的には、基板4,6及び48と1又は複数の層46からなる組立体をオーブンに入れることのできるバッグに入れた後、バッグ内を真空にしてそれをオーブンに入れる。熱可塑性材料が遷移温度(その材料の遷移温度は既知とする)に達した後、バッグをオーブンから取り出し、開ける。前述のように、後工程の冷却の間に、シート又は熱処理によって互いに積層されたシートのグループが垂直な対称軸と媒体又は材料の異常軸をもつ負光学異方性の一軸材料の1つの層となる。さらに、熱と圧力によって、得られた層がプレート6と基板48とを互いに接着することになる。
なお、SURLYNタイプの材料の場合は、約105Pa〜2・105Paの均一な圧力、少なくとも100℃の温度をかけ、材料の遷移温度は約90℃である。
このようにして、1又は複数層の負光学異方性一軸材料層の形成工程と、その材料層を使用する本発明によるセルの製造工程とを明らかに一体化することができるものである。
第6図も又この一体化の可能性を示したものである。例えば、カラーディスプレイ装置に適用する本発明のセルの製造を考えてみる。この目的のために、下プレート4と偏光体14の間に、それに平行な3色フィルタ50を備えた、第1図に示すタイプのセルを製造することができる。液晶層の両側の電極の数や形態は、当然フィルタに合せる。
第3図に示すセルの場合は、第1図に示した熱可塑性ポリマー板(補償板)16及びその設定された最適厚みが、補償板16と同性質の3つの層52に置き換えられている。しかしそのトータルの厚みは補償板16の厚みに等しい。
第5図の場合と同一工程(偏光体12及び14に均一な圧力をかけ、その加圧状態で熱可塑性ポリマーの遷移温度になるまで加熱し、遷移温度に達した後、熱及び圧力を除く)によって、プレート4,6間に液晶層が入れられるセルの組立体を得ることができる。
本発明によるセルの実施態様はこの他にも可能であり、例えば、入射光が当る側から順に円偏光体、負光学異方性一軸材料板、第1のガラス板、ネマチック液晶層及び第2のガラス板を備え、第1ガラス板には液晶層に対面している透明電極が設けられており、第2のガラス板には液晶層に対面している光学反射層が設けられているものなどである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2005-07-20 
出願番号 特願昭62-46621
審決分類 P 1 41・ 854- Y (G02F)
P 1 41・ 855- Y (G02F)
最終処分 成立  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 向後 晋一
稲積 義登
登録日 1996-04-25 
登録番号 特許第2047880号(P2047880)
発明の名称 液晶セル  
代理人 園田 吉隆  
代理人 園田 吉隆  

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