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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1123939 |
審判番号 | 不服2003-7574 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-01-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-05-01 |
確定日 | 2005-09-29 |
事件の表示 | 平成11年特許願第190978号「生活習慣改善支援装置及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月26日出願公開,特開2001- 22837〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成11年7月5日の出願であって,平成15年3月25日付けで拒絶査定がされ,これに対して同年5月1日拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同年5月29日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成15年5月29日付の手続補正についての補正却下の決定 1 補正却下の決定の結論 平成15年5月29日付の手続補正を却下する。 2 理由 (1) 補正後の本願発明 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は, 「【請求項1】 利用者の生活習慣に関する個人情報に基づいて生活習慣の改善を働きかける働きかけ情報を提供する生活習慣改善支援装置であって, 利用者に対し,前記個人情報に応じた働きかけ情報を含む電子メールを供給するメール供給手段と, 前記メール供給手段が供給した電子メールを特定するメール情報を記憶する記憶手段と, 利用者に対し,その前記記憶手段に記憶された最新のメール情報に対応する働きかけ情報を含むホームページを供給するホームページ供給手段と, 生活習慣チェックにより得られた,生活習慣データから利用者の生活習慣改善に対する意欲,自信及び理解の程度を示す状態変数を決定し,前記状態変数に応じて当該利用者に順次供給していく働きかけ情報を規定した支援の計画を作成する計画作成手段と, 前記メール供給手段による前記計画に従った電子メールの供給期間中に,生活習慣チェックを行って,当該利用者の前記心理状態に係る個人情報を得,前記計画を当該個人情報に応じた計画に変更する計画変更手段と を有し, 前記メール供給手段は,利用者毎に前記ホームページの利用回数を行動履歴として登録しておき,前記電子メールのパーツを前記行動履歴に基づき選定し,前記計画作成手段により作成された計画に従って当該利用者に対する電子メールの供給を行うことを特徴とする生活習慣改善支援装置。」と補正された。 上記補正は,請求項に記載した必須の構成要件を更に限定するための補正であり,特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の前記請求項に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法17条の2第5項において準用する126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2) 引用例 原査定の拒絶の理由で引用された,大竹剛,「社員の健康管理をネットで NTTデータがシステム提供」,日経マルチメディア,日本,日経BP社,1998年 7月15日,第37号,第24-25頁(以下「引用例」という。)には次の事項が開示されている。 ア 「メールとWebで生活指導」の項には,次の記載がある。 「サービスの利用にあたり,ユーザーはまずIDとパスワードを登録し,「身長」「体重」「血圧」「職種」「喫煙の有無」「運動をどのくらいするか」など,身体の基礎情報と生活習慣を入力する(図1)。データはSSL(Secure Socket Layer)で暗号化されて,NTTデータ通信のデータベースに送信される。このデータを基に,NTTデータ通信のシステムがユーザーを「診断」する。 その診断結果と禁煙や運動などの生活習慣改善の提案を電子メールで受け取ったユーザーは,提案された複数のプログラムの中から実行するものを選ぶ。同時に個人用のホームページが作成され,今後はそこに様々な健康情報やアドバイスが表示されることになる。 NTTデータ通信は,このシステムを行動科学や心理学の専門家の意見を参考にして構築した。「一番苦労したのは,継続的にユーザーを繋ぎ止める工夫だ」と井田氏は語る。生活習慣の改善には,ユーザーの意欲に合わせた的確なアドバイスが必要になる。そこでユーザーの心理状態を,「無関心期」「関心期」「準備期」「実行期」「継続期」の5段階に分け,各段階に応じたアドバイスを電子メールで提供するようにした。 ユーザーをホームページに引き込む仕組みも工夫した。ホームページでは電子メールの内容と連動して,さらに詳しい情報を写真や絵を交えて提供する。インタラクティブなツールも多数用意した。例えば無関心期には楽しみながら健康のことを学べるように,健康クイズや運動による消費カロリーを計算するツールを提供し,実行期にはカレンダやグラフを使って効果を分析できるようにこした。 挫折しそうな時には,ホームページ上の「苦しい」ボタンを押せば励ましの電子メールももらえる。こうしたツールから入力されたデータはデータベースで管理され,電子メールのアドバイスに反映する仕掛けになっている。 6月からは,同じプログラムを実行しているユーザー同士がホームページ上で励まし合うことができる「フォーラム」という電子会議室を開設した。フォーラムには実際の医師もアドバイスを提供するために参加する予定だ。」 イ 図面1には,「パーソナル・ヘルスケア・ネットワーク」のアンケート画面が示され,その下に「ユーザーが記入したデータを基に生活習慣を分析,指導する。」と記載されている。 (3) 対比 本願発明と引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比する。 引用発明においては,電子メール及び個人用のホームページを備え,生活習慣の改善を支援する装置が示されており,「挫折しそうな時には,ホームページ上の「苦しい」ボタンを押せば励ましの電子メールももらえる。こうしたツールから入力されたデータはデータベースで管理され,電子メールのアドバイスに反映する仕掛けになっている。」ことから,データベースで管理される入力データは,メール情報に反映され,当然にメール情報を記憶していると理解でき,ホームページの利用回数を行動履歴として管理していると見ることができる。 そうすると,本願発明と引用発明とは次の点で一致し,後述する相違点を有することが認められる。 【一致点】 利用者の生活習慣に関する個人情報に基づいて生活習慣の改善を働きかける働きかけ情報を提供する生活習慣改善支援装置であって,利用者に対し,前記個人情報に応じた働きかけ情報を含む電子メールを供給するメール供給手段と,前記メール供給手段が供給した電子メールを特定するメール情報を記憶する記憶手段と,利用者に対し,その前記記憶手段に記憶された最新のメール情報に対応する働きかけ情報を含むホームページを供給するホームページ供給手段と, を有し,前記メール供給手段は,利用者毎に前記ホームページの利用回数を行動履歴として登録しておき,前記電子メールのパーツを前記行動履歴に基づき選定し,前記計画作成手段により作成された計画に従って当該利用者に対する電子メールの供給を行うことを特徴とする生活習慣改善支援装置。 【相違点】 相違点1:本願発明では,生活習慣チェックにより得られた,生活習慣データから利用者の生活習慣改善に対する意欲,自信及び理解の程度を示す状態変数を決定し,前記状態変数に応じて当該利用者に順次供給していく働きかけ情報を規定した支援の計画を作成する計画作成手段を備えているのに対し,引用発明では,状態変数に関する記載がなく計画作成手段が明記されていない点。 相違点2:本願発明では,メール供給手段による前記計画に従った電子メールの供給期間中に,生活習慣チェックを行って,当該利用者の前記心理状態に係る個人情報を得,前記計画を当該個人情報に応じた計画に変更する計画変更手段を備えるのに対し,引用発明では,計画変更手段が明示されていない点。 (4) 当審の判断 ア 相違点1について 引用発明には,「「身長」「体重」「血圧」「職種」「喫煙の有無」「運動をどのくらいするか」など,身体の基礎情報と生活習慣を入力する(図1)。」とあることから,生活習慣チェックにより得られた,利用者の生活習慣データを取得している。 また,「生活習慣の改善には,ユーザーの意欲に合わせた的確なアドバイスが必要になる。そこでユーザーの心理状態を,「無関心期」「関心期」「準備期」「実行期」「継続期」の5段階に分け,各段階に応じたアドバイスを電子メールで提供するようにした。」と記載されていることから,利用者の生活習慣改善に対する意欲,自信及び理解の程度を把握して居ることが理解できる。ここで,5段階に分けてアドバイスをしていることから支援の計画作成手段を備えているといえる。 ただし,状態変数を決定することに関しては,引用発明に明記されていないが,「状態変数」がいかなる数値であるのか,また「生活習慣チェックで得られる生活習慣のデータが含まれる」ことについては,「意欲,自信及び理解の程度を示す」と規定されるのみで何ら具体的な変数を特定しているものではないから,「状態変数」は,単に「利用者の生活習慣改善に対する意欲,自信及び理解」を数値化したという以上の技術的意義を有するものとは認められない。 以上にかんがみれば相違点1は,当業者が引用発明に基づいて容易に想到できる程度の事項にすぎない。 イ 相違点2について 引用発明には,「電子メールで受け取ったユーザーは,・・・同時に個人用のホームページが作成され,今後はそこに様々な健康情報やアドバイスが表示される・・・各段階に応じたアドバイスを電子メールで提供するようにした。・・・挫折しそうな時には,ホームページ上の「苦しい」ボタンを押せば励ましの電子メールももらえる。こうしたツールから入力されたデータはデータベースで管理され,電子メールのアドバイスに反映する仕掛けになっている。」と記載されていることから,「ホームページ上の「苦しい」ボタンを押」すことは,利用者の心理状態に係る個人情報を得ることに該当し,「5段階に分け,各段階に応じたアドバイスを電子メールで提供するようにし」ていることから,計画を個人情報に応じた計画に変更しているとみることができる。 そして,引用発明は,ホームページの利用に基づいているものであるから,利用者ごとにホームページの利用回数を行動履歴として登録しておき,電子メールの画面パーツを行動履歴に基づき選定し,利用者に電子メールでアドバイスを提供することは当業者であれば容易に想到できたものと認められる。 したがって,引用発明は,計画変更手段を実質的に備えているといえ,計画変更手段を具体的に記載した相違点2に当業者が格別困難を伴うものとは認められない。 ウ 以上,相違点1及び2は当業者が引用例に記載された発明から容易に推考できる程度の事項であり,効果についても,引用発明から当業者が予測しうる範囲であり,格段顕著な技術的効果も認められない。 したがって,本願補正発明は,引用例に記載された発明から当業者が容易に発明できたものであり,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のとおり,本件補正は,平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反するものであり,159条1項で準用する53条1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 平成15年5月29日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成14年9月17日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。 「【請求項1】 利用者の生活習慣に関する個人情報に基づいて生活習慣の改善を働きかける働きかけ情報を提供する生活習慣改善支援装置であって,利用者に対し,その個人情報に応じた働きかけ情報を含む電子メールを供給するメール供給手段と,前記メール供給手段が供給した電子メールを特定するメール情報を記憶する記憶手段と,利用者に対し,その前記記憶手段に記憶された最新のメール情報に対応する働きかけ情報を含むホームページを供給するホームページ供給手段と,利用者の生活習慣改善に対する意欲,自信及び理解を状態変数で示した心理状態に係る個人情報に応じ,当該利用者に順次供給していく働きかけ情報を規定した支援の計画を作成する計画作成手段と,前記メール供給手段による前記計画に従った電子メールの供給期間中に,当該利用者の前記心理状態に係る個人情報を得,前記計画を当該個人情報に応じた計画に変更する計画変更手段とを有し,前記メール供給手段は,前記計画作成手段により作成された計画に従って当該利用者に対する電子メールの供給を行うことを特徴とする生活習慣改善支援装置。」 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及びその記載事項は,前記「第2 2(2)」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は,前記第2で検討した本願補正発明から状態変数の特定及び行動履歴等の限定を省いたものである。 そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第2 2(4)」で判断したとおり,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり,本願発明は,引用例に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたもので,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-07-27 |
結審通知日 | 2005-08-02 |
審決日 | 2005-08-18 |
出願番号 | 特願平11-190978 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 丹治 彰 |
特許庁審判長 |
杉山 務 |
特許庁審判官 |
岡本俊威 大野 弘 |
発明の名称 | 生活習慣改善支援装置及び記録媒体 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 青山 正和 |