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審決分類 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1123957
審判番号 不服2003-3104  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-04-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-27 
確定日 2005-09-29 
事件の表示 特願2000-305946「携帯情報端末を用いたプリンティングシステムにおける課金方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月 9日出願公開、特開2002-103752〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成12年10月5日の出願であって、平成15年1月22日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年2月27日付けで本件審判請求がされるとともに、同年3月31日付けで明細書についての手続補正(平成14年改正前特許法17条の2第1項3号の規定に基づく手続補正であり、以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成15年3月31日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正事項
本件補正前後の特許請求の範囲の記載を比較すると、補正前にはすべて独立形式で記載された請求項1〜5であったものが、独立形式で記載された請求項1〜6及び引用形式で記載された請求項7,8に増項されている。
また、本件補正前の請求項1〜5はすべて、携帯情報端末から印刷装置に送信されるプリント要求情報が「ユーザID及びパスワード」を含み、印刷装置は「ユーザID及びパスワード」を含んだ印刷用コンテンツを要求する情報をコンテンツサーバに送信する旨限定しているが、同限定は本件補正後の請求項8にあるだけで、本件補正後の請求項1〜7には同限定がない。

2.補正目的の検討
上記補正事項によれば、本件補正後の請求項1〜7は本件補正前の請求項1〜5のいずれを限定的に減縮したものでもない(特許法17条の2第4項2号非該当)。
上記補正事項が、請求項削除(特許法17条の2第4項1号)、誤記の訂正(同3号)又は明りようでない記載の釈明(同4号)のいずれにも該当しないことは明らかである。
したがって、本件補正は特許法17条の2第4項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
本件補正は特許法17条の2第4項の規定に違反しているから、その余の補正要件について検討するまでもなく、平成14年改正前特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1,2に係る発明は、平成14年12月20日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項1】及び【請求項2】に記載された事項によって特定されるべきものであり、【請求項1】及び【請求項2】の記載は次のとおりである。以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」と、請求項2に係る発明を「本願発明2」と、これらを総称して「本願発明」ということにする。
本願発明1:「携帯情報端末と、該携帯情報端末との間でデータ通信が可能であってかつネットワークに接続された印刷装置と、該ネットワークを介して前記印刷装置との間でデータ通信が可能なコンテンツサーバとによって実現するプリンティングシステムに適用される課金方法であって、前記携帯情報端末が前記コンテンツサーバから参照したコンテンツ情報に関するプリント要求情報を前記印刷装置に送信し、前記印刷装置が前記プリント要求情報を受信した際、該印刷装置はインターネットを介して前記コンテンツサーバに接続して、該当する印刷用コンテンツを要求する情報を送信し、該コンテンツサーバは、受信した印刷用コンテンツを要求する情報に応じて印刷用コンテンツの情報を送信し、前記印刷装置が受信した該印刷用コンテンツを印刷するようにしたプリンティングシステムにおける課金方法において、前記プリンティングシステムは、前記携帯情報端末が前記コンテンツサーバのコンテンツ情報を参照するに際し、所望のコンテンツの入手を要求する情報と、ユーザのID情報と、パスワード情報とを送信し、これら情報を受信した前記コンテンツサーバは、受信した情報に基づいてユーザを認証し、認証結果に応じて所望のコンテンツを検索して、該検索したコンテンツを前記携帯情報端末へ送信し、前記携帯情報端末は、受信したコンテンツ情報を該携帯情報端末の画面に表示し、プリンティングする場合には、対象のコンテンツのURL情報を含む前記プリント要求情報を前記印刷装置に送信し、該印刷装置は、受信したプリント要求情報に応じて、ユーザID及びパスワードを含んだ前記印刷用コンテンツを要求する情報を前記コンテンツサーバに送信し、該コンテンツサーバは、該印刷用コンテンツを要求する情報を受信した際に、再度ユーザの認証作業を行い、認証結果に応じて印刷用コンテンツの情報を検索して前記印刷装置に送信し、前記印刷装置は、受信した情報に従って印刷用コンテンツを印刷するプリンティングシステムであって、前記印刷装置は、印刷対価を算出するための印刷対価計算用データを保持し、前記コンテンツサーバから受信した前記印刷用コンテンツを印刷した際に、前記印刷対価計算用データを参照して印刷対価金額を算出し、算出した該印刷対価金額を該印刷装置が備える表示手段に表示し、該表示手段の表示に対応した金額が、該印刷装置に付設された、または該印刷装置に組み込まれた金銭投入装置に投入されることにより、印刷終了後に印刷対価を徴収することを特徴とするプリンティングシステムにおける課金方法。」
本願発明2:「携帯情報端末と、該携帯情報端末との間でデータ通信が可能であってかつネットワークに接続された印刷装置と、該ネットワークを介して前記印刷装置との間でデータ通信が可能なコンテンツサーバとによって実現するプリンティングシステムに適用される課金方法であって、前記携帯情報端末が前記コンテンツサーバから参照したコンテンツ情報に関するプリント要求情報を前記印刷装置に送信し、前記印刷装置が前記プリント要求情報を受信した際、該印刷装置はインターネットを介して前記コンテンツサーバに接続して、該当する印刷用コンテンツを要求する情報を送信し、該コンテンツサーバは、受信した印刷用コンテンツを要求する情報に応じて印刷用コンテンツの情報を送信し、前記印刷装置が受信した該印刷用コンテンツを印刷するようにしたプリンティングシステムにおける課金方法において、前記プリンティングシステムは、前記携帯情報端末が前記コンテンツサーバのコンテンツ情報を参照するに際し、所望のコンテンツの入手を要求する情報と、ユーザのID情報と、パスワード情報とを送信し、これら情報を受信した前記コンテンツサーバは、受信した情報に基づいてユーザを認証し、認証結果に応じて所望のコンテンツを検索して、該検索したコンテンツを前記携帯情報端末へ送信し、前記携帯情報端末は、受信したコンテンツ情報を該携帯情報端末の画面に表示し、プリンティングする場合には、対象のコンテンツのURL情報を含む前記プリント要求情報を前記印刷装置に送信し、該印刷装置は、受信したプリント要求情報に応じて、ユーザID及びパスワードを含んだ前記印刷用コンテンツを要求する情報を前記コンテンツサーバに送信し、該コンテンツサーバは、該印刷用コンテンツを要求する情報を受信した際に、再度ユーザの認証作業を行い、認証結果に応じて印刷用コンテンツの情報を検索して前記印刷装置に送信し、前記印刷装置は、受信した情報に従って印刷用コンテンツを印刷するプリンティングシステムであって、前記印刷装置は、印刷対価を算出するための印刷対価計算用データを保持し、前記コンテンツサーバから受信した前記印刷用コンテンツを印刷した際に、前記印刷対価計算用データを参照して印刷対価金額を算出し、算出した該印刷対価金額の情報を前記携帯端末装置に送信し、該携帯情報端末は、受信した印刷対価金額の情報を保持して、所定のタイミングで該印刷対価金額の情報を携帯情報端末の運営会社に送信し、該携帯情報端末の運営会社は、前記印刷対価金額を通信料金とともに徴収し、徴収した印刷対価金額を所定の支払先に対して所定の手数料を差し引いて支払うことを特徴とするプリンティングシステムにおける課金方法。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-214003号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア〜ケの記載が図示とともにある。
ア.「非湿式現像処理を採用した写真プリント作成装置は、通常の現像・プリント店やラボラトリ等において利用できることは勿論であるが、維持管理が比較的容易であることから、コンビニエンスストア等に設置してエンドユーザーに直接操作させるような利用形態にも適している。」(段落【0004】)
イ.「エンドユーザーに直接操作させる場合は、エンドユーザーが持参した写真プリント等の反射原稿や、現像済み写真フィルム等の透過原稿を光電的読取装置にかけたり、あるいはエンドユーザーが持参したフロッピーディスク等の画像データ記録媒体をデータ読出装置にかける等により、プリンタに供給する画像データが得られ、この画像データに基づいて写真プリントが作成されることになる。」(段落【0005】)
ウ.「エンドユーザーに上記のような選択操作をさせると、持参した現像済み写真フィルム1本分、あるいはフロッピーディスク1枚分等の画像を機械的に全て各1枚ずつプリントする場合と比べて、プリント作成装置の稼働率は確実に低下する。装置稼働率が低下すれば、利益確保のためにプリント単価は当然高く設定されることになる。」(段落【0006】)
エ.「本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、プリント画像を選択できる機能を有し、その一方で、安価かつ迅速に画像プリントを作成することも可能な画像プリント作成装置を提供することを目的とする。」(段落【0008】)
オ.「本発明による画像プリント作成装置は、画像データに基づいてプリント用紙に写真像等の画像を形成するプリンタを備えてなる画像プリント作成装置において、前述した通りの画像表示手段および画像選択手段が設けられた上で、さらに、所与の画像データを前記画像表示手段に入力させるとともに、該画像データのうち前記画像選択手段により選択された画像に関する画像データのみを前記プリンタに入力する第1モードと、所与の画像データを前記画像表示手段に入力させずに全て前記プリンタに入力する第2モードとを取り得る入力切替手段と、この入力切替手段において、上記の第1モードおよび第2モードのうちの一方を択一的に設定させるモード選択手段とが設けられたことを特徴とするものである。」(段落【0009】)
カ.「本発明の画像プリント作成装置においては、・・・プリント単価と作成された画像プリントの枚数とに応じてプリント料金を計算する料金計算手段と、この料金計算手段が計算した料金を表示する料金表示手段とが設けられるのが望ましい。」(段落【0010】)
キ.「画像データサービス装置について説明する。図示の通りこの装置は、デジタル画像データを入力するための複数の入力装置からなる入力ユニット134と、入力ユニット134によって入力された画像データの加工処理を行なうように構成された本体120と、加工処理された画像データを出力するための複数の出力装置からなる出力ユニット148とから構成されている。」(段落【0028】)
ク.「入力ユニット134は、各々のデータ記録媒体にアクセスが可能なフロッピーディスク装置136Aと、光磁気ディスク装置138Aと、CD-ROMドライブ144と、メモリカード読取装置146Aとを含んで構成されている。さらにこの入力ユニット134は、データ記録媒体156によらずに通信網を介してデータ入力可能な受信装置140Aと、フィルム上に記録されている画像を読み取るスキャナ142とを有している。」(段落【0029】)
ケ.「制御部122はステップS8において、決定したプリント枚数から総計料金を計算し、それを表示部130に表示させる。装置ユーザーはこの表示に従って、図2の料金装置170に料金を投入することになる。次に制御部122はステップS9において、表示通りの料金が投入されたか否かを判別し、投入されていれば次にステップS10において、プリント開始してもよいかどうか表示部130に表示させる。」(段落【0067】)

3.引用例1記載の発明の認定
引用例1記載の「画像プリント作成装置」は、コンビニエンスストア等に設置し、各種データ記録媒体を持参したエンドユーザーが直接操作可能とし、エンドユーザーからプリント料金を徴収するものであり、引用例1の記載カ,ケによれば、プリント料金を計算し、それを表示した後、表示通りの料金が投入された後にプリント開始されるものである。
したがって、引用例1には「画像プリント作成装置」による「課金方法」の発明として、次のような発明が記載されていると認めることができる。
「エンドユーザーが持参した各種データ記録媒体等から画像プリント作成装置に画像を入力し、プリント料金を計算し、計算したプリント料金を画像プリント作成装置が備える料金表示手段に表示し、プリントを開始する前に表示通りの料金が投入されたことを判別する課金方法。」(以下「引用発明1」という。)

4.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用発明1の「画像プリント作成装置」及び「エンドユーザー」は本願発明の「印刷装置」及び「ユーザ」にそれぞれ相当し、引用発明1において各種データ記録媒体等から画像プリント作成装置に入力される画像は、本願発明1の「印刷用コンテンツ」に相当する。
引用発明1の「画像プリント作成装置」はプリント料金を計算する料金計算手段を備えており、当然「金銭投入装置」が付設又は組み込まれているから、本願発明と引用発明1とは「印刷装置は、印刷対価を算出するための印刷対価計算用データを保持し、印刷用コンテンツを印刷した際に、前記印刷対価計算用データを参照して印刷対価金額を算出」する点で一致し、さらに本願発明1と引用発明1とは「算出した該印刷対価金額を該印刷装置が備える表示手段に表示し、該表示手段の表示に対応した金額が、該印刷装置に付設された、または該印刷装置に組み込まれた金銭投入装置に投入されることにより、印刷対価を徴収する」点でも一致することが明らかである。
また、引用発明1は「プリンティングシステムにおける課金方法」である。
したがって、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は次のとおりである。相違点1は本願発明1,2に共通し、相違点2は本願発明1のみ、相違点3は本願発明2のみの相違点である。
〈本願発明1と引用発明1との一致点〉
「ユーザが印刷要求をする印刷用コンテンツを印刷するようにしたプリンティングシステムにおける課金方法であって、
印刷装置は、印刷対価を算出するための印刷対価計算用データを保持し、印刷用コンテンツを印刷した際に、前記印刷対価計算用データを参照して印刷対価金額を算出し、算出した該印刷対価金額を該印刷装置が備える表示手段に表示し、該表示手段の表示に対応した金額が、該印刷装置に付設された、または該印刷装置に組み込まれた金銭投入装置に投入されることにより印刷対価を徴収する
プリンティングシステムにおける課金方法。」
〈本願発明2と引用発明1との一致点〉
「ユーザが印刷要求をする印刷用コンテンツを印刷するようにしたプリンティングシステムにおける課金方法であって、
印刷装置は、印刷対価を算出するための印刷対価計算用データを保持し、印刷用コンテンツを印刷した際に、前記印刷対価計算用データを参照して印刷対価金額を算出し、算出した該印刷対価金額を徴収する
プリンティングシステムにおける課金方法。」
〈相違点1〉本願発明の「プリンティングシステム」が「携帯情報端末と、該携帯情報端末との間でデータ通信が可能であってかつネットワークに接続された印刷装置と、該ネットワークを介して前記印刷装置との間でデータ通信が可能なコンテンツサーバとによって実現するプリンティングシステム」であり、より詳細には「携帯情報端末が前記コンテンツサーバから参照したコンテンツ情報に関するプリント要求情報を前記印刷装置に送信し、前記印刷装置が前記プリント要求情報を受信した際、該印刷装置はインターネットを介して前記コンテンツサーバに接続して、該当する印刷用コンテンツを要求する情報を送信し、該コンテンツサーバは、受信した印刷用コンテンツを要求する情報に応じて印刷用コンテンツの情報を送信し、前記印刷装置が受信した該印刷用コンテンツを印刷するようにしたプリンティングシステム」であり、さらに詳細にいうと「携帯情報端末が前記コンテンツサーバのコンテンツ情報を参照するに際し、所望のコンテンツの入手を要求する情報と、ユーザのID情報と、パスワード情報とを送信し、これら情報を受信した前記コンテンツサーバは、受信した情報に基づいてユーザを認証し、認証結果に応じて所望のコンテンツを検索して、該検索したコンテンツを前記携帯情報端末へ送信し、前記携帯情報端末は、受信したコンテンツ情報を該携帯情報端末の画面に表示し、プリンティングする場合には、対象のコンテンツのURL情報を含む前記プリント要求情報を前記印刷装置に送信し、該印刷装置は、受信したプリント要求情報に応じて、ユーザID及びパスワードを含んだ前記印刷用コンテンツを要求する情報を前記コンテンツサーバに送信し、該コンテンツサーバは、該印刷用コンテンツを要求する情報を受信した際に、再度ユーザの認証作業を行い、認証結果に応じて印刷用コンテンツの情報を検索して前記印刷装置に送信し、前記印刷装置は、受信した情報に従って印刷用コンテンツを印刷するプリンティングシステム」であるのに対し、引用発明1はそうではない点。
〈相違点2〉印刷対価徴収に当たり、本願発明1では「印刷終了後に印刷対価を徴収」するのに対し、引用発明1ではプリント開始前に印刷対価を徴収する点。
〈相違点3〉印刷対価徴収に当たり、本願発明2では「算出した該印刷対価金額の情報を前記携帯端末装置に送信し、該携帯情報端末は、受信した印刷対価金額の情報を保持して、所定のタイミングで該印刷対価金額の情報を携帯情報端末の運営会社に送信し、該携帯情報端末の運営会社は、前記印刷対価金額を通信料金とともに徴収し、徴収した印刷対価金額を所定の支払先に対して所定の手数料を差し引いて支払う」のに対し、引用発明1では「計算したプリント料金を画像プリント作成装置が備える料金表示手段に表示し、プリントを開始する前に表示通りの料金が投入されたことを判別する」点。

5.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
以下では「発明を特定するための事項」という意味で「構成」との用語を用いることがある。
(1)相違点1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-355498号公報(以下「引用例2」という。)には、「携帯端末からのWWWサーバーへのアクセスを可能にし、そのアクセス情報を印刷することができる画像形成装置を提供する。」(1頁【要約】の【課題】欄)及び「PDA10のユーザは、WWWサーバー12のURL等の接続先情報のみをIrDA通信部9を介してディジタル複写機1に送り、その複写機1によってWWWサーバー12より必要な情報を取得してプリントする。」(同【解決手段】欄)との記載があり、これら記載中の「携帯端末」若しくは「PDA」、「WWWサーバー」、「WWWサーバー12のURL等の接続先情報」及び「ディジタル複写機」は、本願発明の「携帯情報端末」、「コンテンツサーバ」、「コンテンツのURL情報」及び「印刷装置」と異ならず、引用例2記載の発明(以下「引用発明2」という。)において、携帯端末とディジタル複写機との間がデータ通信可能であること、並びにディジタル複写機とWWWサーバーがインターネットを介して接続されデータ通信可能となっていることは自明である。
そうすると、引用発明2のプリンティングシステムは、本願発明でいう「携帯情報端末と、該携帯情報端末との間でデータ通信が可能であってかつネットワークに接続された印刷装置と、該ネットワークを介して前記印刷装置との間でデータ通信が可能なコンテンツサーバとによって実現するプリンティングシステム」であり、「携帯情報端末がコンテンツ情報に関するプリント要求情報を印刷装置に送信し、前記印刷装置が前記プリント要求情報を受信した際、該印刷装置はインターネットを介して前記コンテンツサーバに接続して、該当する印刷用コンテンツを要求する情報を送信し、該コンテンツサーバは、受信した印刷用コンテンツを要求する情報に応じて印刷用コンテンツの情報を送信し、前記印刷装置が受信した該印刷用コンテンツを印刷するようにしたプリンティングシステム」であり、さらには「携帯情報端末は、対象のコンテンツのURL情報を含むプリント要求情報を印刷装置に送信し、該印刷装置は、受信したプリント要求情報に応じて、印刷用コンテンツを要求する情報をコンテンツサーバに送信し、該コンテンツサーバは、該印刷用コンテンツを要求する情報を受信した際に、印刷用コンテンツの情報を検索して前記印刷装置に送信し、前記印刷装置は、受信した情報に従って印刷用コンテンツを印刷するプリンティングシステム」であるといわなければならない。
ところで、引用発明1はコンビニエンスストア等に設置することを想定したものであり、コンビニエンスストアにおいて一般ユーザが「画像プリント作成装置」を利用する形態としては、従来から複写サービスが普及しており、コンビニエンスストアに複写機とは別に各種データ記録媒体から入力した画像をプリントする装置を配置することはスペース効率上不都合であることは自明である。そうすると、引用発明1の「画像プリント作成装置」は複写機を兼ねたものであり、複写機能に加えて各種データ記録媒体からのプリント機能を付加することにより、サービス機能を拡張したものと理解するのが自然であり、そのような理解を妨げる理由はなにもない。
他方、引用例2の全記載及び図示を精査しても、携帯端末所有者がディジタル複写機所有者と独立した一般ユーザであることを示唆する記載は一切なく、携帯端末所有者に対して印刷料金を課金することも記載されていない。すなわち、引用発明2は、本願明細書の「コンビニエンスストアやオフィスに設置されたMFPと携帯電子機器とを接続し、コンテンツ等の画像情報を印刷するプリティングシステムが提案されている。」(段落【0005】)との記載のうち、コンビニエンスストアではなくオフィスに設置されたものと理解するのが自然である。しかし、引用例2記載の携帯端末所有者が一般ユーザでないとしても、引用発明2がディジタル複写機の機能を拡張したプリンティングシステムであることは明らかであり、このような拡張機能がコンビニエンスストアに設置されたディジタル複写機(本願出願当時、コンビニエンスストアに設置された複写機のほとんどがディジタル複写機であることは本願明細書の段落【0005】に記載されているとおりである。)にも、新たな利用者を開拓する上で有用であることは明らかであるから、引用発明1のプリティングシステムに引用発明2のものを追加することは、特段の障害がない限り当業者にとって想到容易である。ここで、その障害となりうるものを検討すると、引用発明2のユーザが一般ユーザではないため、一般ユーザの所有する携帯端末から「コンテンツ情報に関するプリント要求情報」(URL情報)を印刷装置に送信できるかどうかの点である。そこで検討するに、本願出願当時、一般ユーザが所有する携帯情報端末として携帯電話が普及しており、この携帯電話を利用して「コンテンツ情報に関するプリント要求情報」(URL情報)を印刷装置に送信できることは明らかであるから、引用発明1のプリティングシステムに引用発明2のものを追加することには別段障害がないというべきである。
そうすると、引用発明1のプリティングシステムに引用発明2のものを追加することは当業者にとって想到容易であり、相違点1に係る本願発明の構成のうち、そのようにしてもなお至らない構成は次のa及びbである。
a.携帯情報端末から印刷装置に送信され、印刷装置からコンテンツサーバに送信される情報が、URL情報だけでなくユーザID及びパスワードを含み、コンテンツサーバはユーザの認証作業を行うこと。なお、「再度の認証作業」とあるが、印刷装置からの要求に対しては1度目であり、再度かどうかは後記bとの関係で定まることにすぎないから、ここではとりあげない。
b.「携帯情報端末が前記コンテンツサーバのコンテンツ情報を参照するに際し、所望のコンテンツの入手を要求する情報と、ユーザのID情報と、パスワード情報とを送信し、これら情報を受信した前記コンテンツサーバは、受信した情報に基づいてユーザを認証し、認証結果に応じて所望のコンテンツを検索して、該検索したコンテンツを前記携帯情報端末へ送信し、前記携帯情報端末は、受信したコンテンツ情報を該携帯情報端末の画面に表示」し、表示内容に基づいてユーザが「プリンティングする場合」かどうかを決定すること。

まずaについて検討する。ユーザID及びパスワードについて、引用例1はもちろんのこと引用例2にも何の記載もないが、多くのコンテンツサーバが会員制を採用し、コンテンツの入手要求があった際にユーザID及びパスワードを要求することは周知の事実である。引用発明2ではディジタル複写機(印刷装置)からWWWサーバー(コンテンツサーバ)に対してコンテンツの入手要求をするのであるから、ユーザID及びパスワードが要求された場合に、それらをWWWサーバー(コンテンツサーバ)に送信すべきはディジタル複写機(印刷装置)であって、ディジタル複写機(印刷装置)がユーザID及びパスワードを知っておく必要があることはいうまでもない。他方、ユーザID及びパスワードは携帯情報端末の所有者に固有の情報であるから、ディジタル複写機(印刷装置)は携帯情報端末からそれら情報を取得するか、それともユーザがディジタル複写機(印刷装置)にユーザID及びパスワードを入力しない限り、WWWサーバー(コンテンツサーバ)にそれら情報を送信することができないことは自明である。そして、携帯情報端末と印刷装置において送受信可能な情報に格別制限がないことは明らかであるから、印刷装置からコンテンツサーバに対してユーザID及びパスワードを送信することができるように、携帯情報端末から印刷装置にユーザID及びパスワードを送信することは、コンテンツサーバが会員制を採用している場合の設計事項というべきである。なお、携帯情報端末固有の情報を何らかのサービス提供機器に送信することは、原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-66430号公報(以下「引用例3」という。)に、「無線電話機でID番号等を電子レジスターへ伝送し」(段落【0005】)に記載されているとおり、本願出願当時には周知というべきであり、このことからも上記判断は妥当である。
次にbについて検討する。本願発明は「プリンティングシステムにおける課金方法」であり、印刷装置と携帯情報端末との関係のうち課金の対象となるのは、携帯情報端末が「対象のコンテンツのURL情報を含む前記プリント要求情報を前記印刷装置に送信」した後の行為である。すなわち、bの構成は、単にユーザが印刷を要求するコンテンツであるかどうかを確認する作業であって、課金対象にはならない。逆に、bの構成を経ずに携帯情報端末が印刷装置に対して印刷要求をした(対象のコンテンツのURL情報を含むプリント要求情報を印刷装置に送信)場合にも、印刷装置は当然携帯情報端末所有者に対して課金しなければならない。換言すれば、bの構成があるかないかは、課金を行う印刷装置にとってはあずかり知らぬことがらである。そうである以上、bの構成を「プリンティングシステムにおける課金方法」の発明特定事項と認定することはできない。仮に、bの構成を「プリンティングシステムにおける課金方法」の発明特定事項と認定する余地があるとして設計事項である。その理由は次のとおりである。
引用発明2が一般ユーザを対象としたものでないことは既に述べたとおりであり、引用発明2の携帯端末がコンテンツサーバと接続されているかどうかも明らかでない(引用例2の段落【0007】に「本発明は・・・携帯端末からのWWWサーバーへのアクセスを可能に・・・することを目的とする。」とあり、WWWサーバーへ直接アクセスするのはディジタル複写機であるから、接続されていない可能性が高い。)。しかし、コンテンツが印刷に値するかどうかを、印刷に先立ってユーザが決定すべきことはいうまでもないことがらであり、引用発明2のプリンティングシステムを一般ユーザを対象とした場合、携帯情報端末又は印刷装置のどちらかで、コンテンツを確認しなければならない。そして、印刷装置でコンテンツを確認するためには、印刷装置に表示部を設ければ事足りるから技術的困難性があるわけではないが、引用例1の記載ウにあるとおり、一般ユーザを対象として課金する場合には、装置稼働率の低下を防止しなければならないから、印刷装置でコンテンツを確認することは避けるべきである。そして、本願明細書に「携帯情報端末の最近の動きとしてインターネットへの対応がすすんでいる・・・Webブラウザでインターネット上の情報をダイレクトに検索したりデータを引き出すことができる。」(段落【0002】)と記載があるほか、引用例2にも「PDA等のようにネットワークに接続されていない小型携帯端末機をWWWアクセス機器として使用する場合」(段落【0005】)と記載があるとおり、本願出願時点では、携帯情報端末でコンテンツを確認することは普通に行われている。そうであれば、印刷に先立ってのコンテンツの確認を印刷装置ではなく携帯情報端末で行うことは設計事項である。携帯情報端末で確認するためには、携帯情報端末から「所望のコンテンツの入手を要求する情報」(URL情報)をコンテンツサーバに送信しなければならないこと、ユーザID及びパスワードを要求された場合には、これらの情報を送信しなければならないことはいうまでもなく、「これら情報を受信した前記コンテンツサーバは、受信した情報に基づいてユーザを認証し、認証結果に応じて所望のコンテンツを検索して、該検索したコンテンツを前記携帯情報端末へ送信し、前記携帯情報端末は、受信したコンテンツ情報を該携帯情報端末の画面に表示」することも当然である。
以上述べたとおり、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは、引用発明1,2及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたというべきである。

(2)相違点2について
確実な印刷対価徴収を行うためには、印刷に先立って対価徴収を行う方が有利であり、引用発明1でもそのようにしている。しかし、印刷時に紙詰まり等何らかの障害が発生することは十分ありうることがらであり、対価徴収後にかかる障害が発生した場合には、ユーザから苦情が寄せられ、ユーザと印刷提供業者間のトラブルの原因ともなりかねない。しかも、印刷装置をコンビニエンスストア等に設置した場合、コンビニエンスストア等と印刷装置所有者は必ずしも同一人とは限らないし、コンビニエンスストア等の従業員にトラブル解決を委嘱することも困難な場合が多いと予測できる。逆に、印刷終了後に対価徴収を行うとすると、印刷未了や印刷不良等があったとしても、対価を払っていないユーザにはさほどの不満は生じないであろう。そうであれば、印刷と対価徴収の順序については、対価徴収の確実性とユーザの不満発生可能性とを総合的に考慮した上で、決定すべきことがらといえる。そして、通常の複写機としての利用や引用発明1のように、ユーザを特定できない場合には、対価徴収の確実性を優先すべきであるかもしれないが、引用発明2のプリンティングシステムを一般ユーザを対象として引用発明1に採用した場合には、一般ユーザ所有の携帯情報端末との通信が行われているのだから、ユーザを特定することが可能であり、ユーザが特定されている以上対価未払いになる可能性は低いばかりか、仮にユーザが対価を支払わないことがあったとしても後日徴収することは不可能ではないのだから、ユーザの不満発生可能性を優先し、印刷終了後に対価を徴収することは設計事項である。
そうである以上、相違点1に係る本願発明1の構成を採用することを前提とした上で、相違点2に係る本願発明1の構成を採用することは設計事項程度とうべきであり、引用発明1を出発点とした場合には当業者にとって想到容易というべきである。

(3)相違点3について
引用例3には、「本発明は、無線電話機の通信機能と店舗などに設置するネットワークを利用し、安全性の高い課金・支払システムを提供する。」(段落【0004】)、「無線電話機の利用者が販売店等において支払いを行なうとき、無線電話機でID番号等を電子レジスターへ伝送し、電子レジスターは無線電話機に利用明細を送る。さらに無線電話機はその通信機能を用いて、無線電話基地局へID番号、パスワード、そして利用明細を伝送する。・・・利用者は無線電話機の基本料・通話料などと共に請求額を支払う。」(段落【0005】)及び「各店舗へは、無線電話局から利用明細の支払いが行なわれる。」(段落【0010】)との各記載があり、ここに記載の「無線電話機」、「無線電話局」及び「基本料・通話料」は本願発明2の「携帯端末装置」、「携帯情報端末の運営会社」及び「通信料金」に相当し、「無線電話基地局へID番号、パスワード、そして利用明細を伝送する」ことは「無線電話局」に通信することでもあり、引用例3に明示的記載はないけれども「各店舗へは、無線電話局から利用明細の支払いが行なわれる。」にあたり「所定の手数料を差し引いて支払う」ことは常識といえる。そうであれば、引用例3には、対価が「印刷対価金額」であることを除いて、相違点3に係る本願発明2の構成が記載されているといえる。そして、対価支払いにあたり、印刷対価金額である場合には引用例3記載の方法を採り得ないと解することはできない。
そうである以上、相違点3に係る本願発明2の構成を採用することは、単に引用例3記載の方法を採用しただけであるから、当業者にとって想到容易といわなければならない。

(4)本願発明の進歩性の判断
相違点1,2に係る本願発明1の構成を採用すること、及び相違点1,3に係る本願発明2の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明1は引用発明1,引用発明2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明2は引用発明1,引用発明2,引用例3記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これら発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
以上のとおり、本件補正は却下されなければならず、本願発明1及び本願発明2が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-26 
結審通知日 2005-08-02 
審決日 2005-08-18 
出願番号 特願2000-305946(P2000-305946)
審決分類 P 1 8・ 56- Z (B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石原 徹弥清水 康司桐畑 幸▲廣▼  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 藤本 義仁
番場 得造
発明の名称 携帯情報端末を用いたプリンティングシステムにおける課金方法  
代理人 高野 明近  

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