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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない E21B
審判 全部無効 1項2号公然実施 無効としない E21B
管理番号 1124010
審判番号 無効2003-35399  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-01-07 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-09-17 
確定日 2005-09-26 
事件の表示 上記当事者間の特許第2934590号発明「温泉水汲み上げ装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
平成 7年 6月22日 出願(特願平7-181083号)
平成11年 5月28日 設定登録(特許第2934590号)
平成11年10月31日 株式会社秋田技術研究所より特許異議の申立
(異議11年第74083号)
平成12年 5月11日 取消理由通知
平成12年 7月25日 意見書及び訂正請求書提出
平成12年 9月29日 異議決定(訂正を認め、特許を維持する旨)
平成12年10月21日 上記異議決定確定
平成15年 9月17日 本件審判請求(無効2003-35399号)
平成16年 1月19日 答弁書提出
平成16年 4月19日 請求人へ審尋
平成16年 5月14日 審尋回答書
平成16年 7月 8日 仙台市の特許庁審判廷で口頭審理
平成16年 7月23日 請求人より陳述書提出
平成16年 7月30日 被請求人より上申書提出
平成16年 8月23日 請求人へ審尋
平成16年 8月30日 審尋回答書
平成16年 9月 2日 請求人へ審尋
平成16年 9月 8日 審尋回答書

2.本件発明
本件発明は、上記のように平成12年7月25日付けの訂正請求書による訂正を認めた異議決定が確定したので、訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】 地中に設けられて内部に坑を形成するケーシングと、前記坑内の水を汲み上げる汲み上げポンプと、前記坑内に深層部まで挿入されて前記坑内の坑底に固定され、その深層部に配置される端部に排水口を有する送水管と、前記送水管に水を送る送水器とを有し、前記送水器は、前記汲み上げポンプの排水管と前記送水管とに接続された分水器と、この分水器に接続された給水管と、この給水管の給水量を制御する給水バルブとを有することを特徴とする温泉水汲み上げ装置。
【請求項2】 前記送水管に接続された注水管と、この注水管内の水を前記排水口の方向に送る制御バルブとを有することを特徴とする請求項1記載の温泉水汲み上げ装置。
【請求項3】 前記送水管は前記坑の中心線上に配置され、その排水口は、
複数であって、送水管の中心軸を中心とする所定の螺旋軌道上に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の温泉水汲み上げ装置。
(以下、上記請求項1ないし3に係る発明を本件発明1ないし3という。)

3.当事者の主張の概要
(1)請求人の主張
請求人小笠原彬作は、証拠として甲第1号証ないし甲第29号証を提出して、無効理由として次の3点を主張する(口頭審理にて確認)。
無効理由1:本件発明1ないし3は、本件特許出願前に公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、同法第123条第1項第2号により、または、訂正が同法第126条第4項に違反してされたものであり、同法第123条第1項第8号により無効とすべきである。
無効理由2:本件発明1ないし3は、本件特許出願前に公然実施された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、同法第123条第1項第2号により、または、訂正が同法第126条第4項に違反してされたものであり、同法第123条第1項第8号により無効とすべきである。
無効理由3:本件発明1ないし3は、本件特許と同日に出願された実願平7-7348号(実用新案登録第3020698号)に係る考案と同一であり、両出願人は同一であるから、いずれか1の出願人のみが特許または実用新案登録を受けることができるものであるので、特許法第39条第4項に該当し、同法第123条第1項第2号により、または、訂正が同法第126条第4項に違反してされたものであり、同法第123条第1項第8号により無効とすべきである。

証拠方法(無効理由1、2に関するもの)
甲第8号証:整図H.7.2.27小笠原というサインの入った「綾部市温泉井戸改善昇温増量設備工事設計図」、
甲第9号証:施工指示図(作成者、作成年月日不詳)、
甲第10号証:綾部温泉熱誘導昇温システム放水管詳細図(作成者、作成年月日不詳、但し欄外に95 04/10との記載あり)、
甲第12号証:平成6年4月9日付け日本経済新聞の抜粋
甲第13号証:株式会社秋田技術研究所と株式会社明間ボーリング間の業務提携契約書 平成7年1月10日
甲第14号証:「企画書 <綾部市温泉井・昇温増量>」1995.2.28
甲第15号証:「企画書 -明間温泉-」95.4.14、秋田技術研究所
甲第16号証:綾部温泉の実施工程表(作成者、作成年月日不詳)
甲第17号証:平成7年3月25日付け、株式会社明間ボーリング本社事業本部宮崎から秋田技術研究所小笠原社長へのFAX、
甲第18号証:平成7年4月10日付け、株式会社明間ボーリング本社事業本部宮崎から秋田技術研究所小笠原社長へのFAX、
甲第19号証:写真(撮影者、撮影場所、撮影対象、撮影年月日いずれも不詳)、
甲第20号証:写真(撮影者不詳、撮影場所、撮影対象、撮影年月日いずれも不詳、平成7年5月15日試運転綾部市温泉との記入あり)、
甲第21号証:写真(撮影場所、撮影対象、撮影年月日いずれも不詳、平成7年6月6日より試運転明間温泉との記入あり)、
甲第22号証:秋田地裁平成7年(ワ)第85号と思われる事件の証人(阿部清士)の証人調書の一部
甲第23号証:平成7年6月14日付け北鹿新聞の抜粋
甲第25号証:平成7年6月19日付け大館新報の抜粋
甲第26号証:秋田地裁大館支部(と思われる)平成10年(ワ)第62号、同76号、同64号事件の判決書の一部
甲第29号証:秋田地裁大館支部(と思われる)平成7年(ワ)第85号事件の証人(成田新正)調書の一部
参考資料
参考資料1:仙台高等裁判所秋田支部平成9年(ネ)第95号事件の判決
参考資料2:平成8年12月7日成田新正と小笠原彬作との会話の内容
参考資料3:平成9年1月15日成田新正と小笠原彬作との会話の内容

(2)被請求人の主張
被請求人は、無効理由1及び2に対しては、本件発明1ないし3は本件特許出願前に公然実施された発明ではなく、また、公然実施された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもない旨主張し、無効理由3については、実用新案登録第3020698号の請求項1ないし2を削除したので、もはや無効理由はなくなったと主張する。

4.判断
4-1 無効理由1、2について
請求人は、証拠として甲第8号証ないし甲第10号証、甲第12号証、、甲第14号証ないし甲第16号証、甲第19号証ないし甲第23号証、甲第25号証、甲第26号証を提出して、平成7年6月6日から8日間、大館市清水町の明間温泉において実施した工事名「温泉改善装置移設試験」は、公然実施されたものであって、本件発明1ないし3と同一、または、その工事から容易に発明はできたものであると主張するので、以下、検討する。

(1)各証拠に記載された技術事項
請求人が公然実施されたと主張する明間温泉における工事「温泉改善装置移設試験」に関する証拠及び記載事項は次のとおりである。
(ア)甲第8号証(設計図)には、中央に株式会社秋田技術研究所と記載され、整図H.7.2.27小笠原というサインの入った「綾部市温泉井戸改善昇温増量設備工事設計図」として、坑と思われるパイプが1800の位置まで延びており、その中に、供給管と連絡して、約300の位置に水中ポンプ、約1750の位置に放水管が配置されている図が記載されている。
(イ)甲第9号証(施工指示図)は、作成者、作成年月日不詳(但し、欄外に95 03/25との記載あり。請求人は請求人の指導により被請求人会社の宮崎英彦が作図したと主張する。)であり、図の中央下部に坑と思われるパイプの中に、ポンプと注入パイプ(エクセル20A)が設けられ、注入パイプの下方には「電鉛メッキ管25A」と記入された部材が記載され、その左側に「孔底1800密着」と記入されている。
(ウ)第10号証(放水管詳細図)は、作成者、作成年月日不詳であり、図の上部に綾部温泉熱誘導昇温システム放水管詳細図と記入され、図の中央に上下方向に坑と思われるパイプの中に、エクセルパイプ20Aが記入され、そのパイプの下方には4個の放水孔(φ10mm)が設けられ、その下方には1700mの位置に「プラグ」、「沈降□」と記入されている。
(エ)甲第12号証(日本経済新聞)には秋田技術研究所(秋田市、小笠原彬作社長)が開発したシステムについて、「「湧出量は多いが、くみ上げ温度が低い井戸」では温水をいったんくみ上げ、その一部を井戸の下層部に再注入する。こうすると井戸の中で水が循環し、下層部にある地熱が上層部に伝わり、くみ上げポンプのある上層部の水温が上がる。深層部に六〇度以上の地熱があれば四五度程度の温泉水を確保できるという。」と記載されている。
(オ)甲第14号証(綾部市温泉井企画書)には、綾部温泉に関して、表紙に「1995.2.28」、第1頁の温泉の昇温及び増量の検討の項に「孔内の熱を利用して温泉を造成することが可能となります。・・・孔内注水式の深層熱誘導法による昇温及び増量が適当と考えます。」、第2頁の「孔内注水式の深層熱誘導法について」の項に、「当該温泉井戸内に、揚湯管を備えた温泉水中ポンプ(a)と、放水管(d)を備えた還水管(c)を設けて、井戸口元後に、管理機材を備えた口元装置と、熱誘導促進器(b)、温泉供給管(e)を設備。近辺に地下水井戸を掘削して、水中ポンプ(g)を設け、還水管(c)に接続した管から温泉井戸内へと注水、自然水位を確保しながら張水していく。・・・放水位(放水管位置):図のように孔内深層部とする・・・本設備の稼働は、温泉水中ポンプ(a)を運転することで、孔内水が揚湯されて、熱誘導促進器(b)において、供給管(e)と還水管(c)とに分湯され、還水管(c)に流入した温泉は放水管(d)から孔内に還る。この動作の連続で孔内に「強制循環流」が発生して温度が上昇する。」と記載され、2頁の設備概略図には、温泉水中ポンプ(a)と還水管(c)とが熱誘導促進器(b)とに配管され、還水管(c)の下端に放水管(d)が設けられ、その放水管(d)はB.L.-1800mよりも少し上方に記載されている。
(カ)甲第15号証(明間温泉企画書)には、表紙に「95.4.14」、第1頁の「深層熱誘導法施行による目的達成可否の検討」の項に「3.昇温増量サイクル 次頁掲載の図に示す昇温増量装置とし、ポンプにより160l/minを揚湯、深層熱誘導促進器にて100l/minを供給、還水器で60l/minの温泉と注水40l/minを混水にして、孔内還水管を経て、孔底部の放水管より孔底に還水する。」と記載され、甲第14号証と同様の図が第2頁に記載されている(但し、図には符号がなく、放水管と思われるものは927mよりも少し上方に配置されている)。
(キ)甲第16号証(実施工程表)には、綾部温泉の実施工程表(作成者、作成年月日不詳)が記載されている。
(ク)甲第19号証(写真(撮影者、撮影場所、撮影対象、撮影年月日いずれも不詳))について請求人は、被請求人花岡工場において平成7年4月15日行われた装置の製作検査の状況を示すものと主張するが、パイプと計器が認められるものの、どのような状態を示しているのか、全く不明である。
(ケ)甲第20号証(写真(撮影者不詳、撮影場所、撮影対象、撮影年月日いずれも不詳、平成7年5月15日試運転綾部市温泉との記入あり))について、請求人は、撮影場所が綾部市温泉で、撮影平成7年5月15日と主張するが、井戸のようなものの中にパイプが挿入されていることは認められるものの、どのような状態を示しているのか、全く不明である。
(コ)甲第21号証(写真(撮影場所、撮影対象、撮影年月日いずれも不詳、平成7年6月6日より試運転明間温泉との記入あり))について、請求人は、撮影場所が明間温泉で、撮影平成7年6月6日と主張するが、井戸のようなものの中にパイプが挿入されていることは認められるものの、どのような状態を示しているのか、全く不明である。
(サ)甲第22号証(秋田地裁平成7年(ワ)第85号と思われる事件の証人(阿部清士)の証人調書の一部)には、証人の証言の一部が記載されている。
(シ)甲第23号証(北鹿新聞)には、平成7年6月14日付けで、「温泉の温度、湯量調整 明間ボーリング深層熱誘導実験に成功」との表題で、「大館市の(株)明間ボーリング・・は、深層熱誘導法の実験に成功した。・・・今回実験に成功した深層熱誘導法は、これまでボイラーなどに頼っていた温泉の加熱を地熱で行うもの。地下七百メートルの深さでは、地熱は約六十度になることを利用し、地上に出た水をポンプで強制的にもう一度地下にもどし、滞留させて温度を上げる。・・・同社は、昭和五十五年に清水町の工場敷地内に掘り、湯量不足で使用していなかった源泉を実験に利用。三十七.五度だった湯温が、最高四十二.二度まで上昇した。」と記載されている。
(ス)甲第25号証(大館新聞)には、平成7年6月19日付けで、「「死んだ温泉」を復活 明間ボーリングが画期的システム 地下ボイラー開発」との表題で、「温泉井深層熱誘導昇温システムと呼ばれるもので、同社の宮崎英彦技師(四〇)が開発した。地底の温泉をかき混ぜることで、地熱を吸収して湯温を上げることができる、という発想。幸い同社には実験井があった。同市清水町の資材置き場の一角・・が今回の実験場となった。・・・企業秘密になる部分は多いが、初期のデータによると、毎分百七十五リットルをくみ上げ、このうち七十五リットルを排出し、百リットルを地中に戻した。これが地中深層部をかき混ぜるとともに、地底の熱交換も同時に行い、湯温上昇に結びついた。」
(セ)甲第26号証(判決書)には、「二 争いのない事実及び証拠上明らかに認められる事実」として、「同年(当審注:平成7年)六月六日から八日間、明間温泉の試運転が行われ、原告代表者(当審注:原告は株式会社秋田技術研究所で代表者は本件請求人小笠原彬作)もこれに立ち会った。」と記載されている。

(2)平成7年6月6日から八日間、株式会社明間ボーリング(以下、「明間」という)が大館市清水町の同社敷地内の温泉井戸(以下、「明間温泉」という。)において行った試運転の内容
平成7年6月6日から八日間、明間が明間温泉において行った試運転の具体的な内容については、甲第15号証、甲第21号証、甲第23号証、甲第25号証以外には、送水管と孔底部との関係を示す具体的な記載は認められない。また、明間温泉において用いられた装置は、綾部温泉において用いられた装置を移設したものであるから、その深さは別として綾部温泉において用いられた装置と基本的には同じものであるといえ、甲第15号証、甲第21号証、甲第23号証、甲第25号証、並びに、綾部温泉における甲第8号証、甲第9号証、甲第14号証、口頭審理における両当事者の主張をも参考にして総合的に検討すると、次のようなものであったといえる。
「温泉井戸内に、揚湯管を備えた温泉水中ポンプと、温泉井戸孔内深層部に配置され下端部に放水管を備えた還水管とを設け、揚湯管と還水管及び温泉供給管とに接続された熱誘導促進器を有し、熱誘導促進器において温泉供給管と還水管とに分湯し、さらに、還水管には別の井戸から管を介して温泉井戸内へ注水する温泉井戸の昇温増量装置」
(以下、この装置を「明間温泉発明」という。)

請求人は、甲第9号証において、環水管端に設けた放水管は「坑の孔底に密着固定」と指示し(請求書3頁ウの項)、「明間温泉発明」の放水管は、放水管に付設した固定板と環水管の荷重により孔底に密着固定されるものである(平成16年5月14日付け審尋回答書3頁ハの項)と主張する。
しかしながら、甲第9号証には「孔底1800密着」と記載され、この1800という数字は深さを意味する(同図の「ジョイント@100m17ケ所とも整合する)が、甲第15号証によれば明間温泉の孔深度は927mであり、一方、甲第14号証によれば綾部温泉の孔深度は1800mであるから、甲第9号証は、綾部温泉についての施工指示図であったと解され(綾部の工事準備は平成7年3月から始まっており、平成7年3月25日に請求人が被請求人に指示したと考えられる)、平成16年9月8日審尋回答書によれば、請求人による送水管端部を孔底に密着するとの指示は綾部温泉では実施されなかったのである。
また、綾部温泉と、明間温泉とでは、深さや、地質等が相違していると考えられるから、綾部温泉で指示したことが、明間温泉においても同様にそのまま適用できるかどうか不明であり、「明間温泉発明」において放水管を孔底に密着させたかどうかは不明といわざるを得ない。
さらに、甲第8号証、甲第9号証、甲第14号証、甲第15号証において、放水管に固定板が設けられていることは記載されていないことから、「明間温泉発明」において、放水管に固定板が設けられていたことや、放水管が環水管の荷重により孔底に密着固定されたことを証する証拠は何ら提出されていない。
よって、上記のように認定した。

(3)「明間温泉発明」は、本件特許出願前に公然実施されたか
「明間温泉発明」は、本件特許出願前の平成7年6月6日から八日間、明間の大館市清水町の同社敷地内において行われたものであるが、以下の理由によって当該発明が公然と実施されたものとはいえない。
(ア)「明間温泉発明」の実施は、平成16年7月23日付けの請求人の陳述書及び甲第26号証よれば、請求人が立ち会い、明間が試運転を行い、その際に八洋ボーリング畑沢社長外2〜3名、福島県西白川郡大信村役場職員3名、被請求人会社の従業員6名の見学があったとしている(現場責任者は被請求人の成田新正取締役会長、工事担当者は被請求人の宮崎英彦技術課長)。
しかしながら、当該発明が行われた場所は、明間の敷地内であり、当該敷地が具体的のどのような状況であったかについては、請求人からは何ら主張立証がないため、外部の者が敷地内に自由に立ち入ることができる状況にあったとか、外部の者が当該発明の実施状況を見ることができたということはできない。むしろ、当該敷地は、明間の私有地であるから、自由な立ち入りは困難であったと推測される。
(イ)請求人は「明間温泉発明」が実施された平成7年6月6日から八日間の時期に、八洋ボーリング畑沢社長外2〜3名、福島県西白川郡大信村役場職員3名、被請求人会社の従業員6名の見学があり、当該発明を見学することができたと主張するので、当審は平成16年8月23日付けで、当該事実を証明する証拠があれば提出するように審尋したが、請求人からは証拠は何ら提出されなかった。
請求人は、平成16年8月30日付け審尋回答書において、公然実施されたことを証明する人として数名を挙げているが、平成16年9月8日付けの審尋回答書において、平成16年8月30日付けでした回答を全て撤回している。
(ウ)特許権者である明間は、新聞社への発表において「早期の実用新案申請を予定している」(平成7年6月14日発行の甲第23号証、石垣営業課長談)、「近く実用新案を申請するとともに、販売に乗り出す・・・企業秘密となる部分は多い・・」(平成7年6月19日発行の甲第25号証)としており、この時点において実用新案登録出願や特許出願を考えていたことから、「明間温泉発明」の実施を極力秘密にしておきたいと考えていたと推測される。このことは、上記のように平成16年7月23日付けの請求人の陳述書において、立ち会ったのは請求人及び被請求人である明間の従業員であり、また、請求人の平成16年9月8日付けの審尋回答書において、「(明間温泉において)工事中は、工事関係者以外の接近を禁止しており・・」と回答していることからも窺える。
(エ)当該発明実施当時、請求人が社長である株式会社秋田技術研究所と明間との間には、温泉井戸の状況改善技術、温泉熱回収利用技術、地熱利用技術等について業務提携契約がなされ(甲第13号証、乙第1号証)、第12条により互いに秘密を保持することになっており、当該契約は有効であったから、「明間温泉発明」は、請求人が見たことにより公知となったということはできない。
(オ)他に「明間温泉発明」が、公然実施されたことを証明する証拠は提出されていない。

請求人は、請求書において、甲第9号証(施工図)、甲第10号証(詳細図)の図面により公然実施された旨主張(3頁ウの項)し、平成16年7月23日付けの陳述書2頁において、「明間温泉発明」が実施された平成7年6月6日から八日間の時期に、八洋ボーリング社長外2〜3名、福島県西白川郡大信村役場職員3名の見学があったと主張(この主張は上記のように撤回されている)し、平成16年9月8日付けの審尋回答書において、「明間温泉発明」が公然実施されたことは、甲第8、9、10、19、20、21、22、26号証並びに明間の前会長成田新正と請求人との間で平成8年12月7日と平成9年1月15日に行われた会話の内容から明らかであると主張する。
しかしながら、甲第9号証(施工図)、甲第10号証(詳細図)は、いずれも1700m〜1800mの深さの孔を示しているから、綾部温泉の井戸の図面であると考えられ、そもそも明間温泉の井戸ではなく、また、綾部温泉においても送水管端部は孔底に密着させなかったのであるから、これを根拠に「明間温泉発明」が公然と実施されたとすることはできない。
また、平成16年9月8日付けの審尋回答書において主張する証拠である甲第8号証、甲第19〜22号証、明間の前会長成田新正と請求人との間で平成8年12月7日と平成9年1月15日に行われた会話の内容は、「明間温泉発明」が公然と実施されたことに関しては何ら記載されていない。
さらに、甲第26号証の判決においては、「二 争いのない事実及び証拠上明らかに認められる事実」の4項において「・・・その後、被告明間は綾部市温泉の装置全部を明間温泉井戸に移設した。そして、同年(当審注:平成7年)六月六日から八日間、明間温泉の試運転が行われ、原告代表者(当審注:小笠原彬作)もこれに立ち会った。」(判決書8頁)と記載されており、仙台高等裁判所秋田支部の平成9年(ネ)第95号判決書(参考資料1の15頁〜16頁)においても、「7・・・被控訴人(注:株式会社明間ボーリング)は、同年(当審注:平成7年)六月ころまでに、右システムを大館市所在の被控訴人所有の温泉井戸(以下「明間温泉」という。)に移設した。・・・8 右のとおり綾部市温泉から明間温泉にシステムが移設された後にも、控訴人(当審注:秋田技術研究所)が立ち会って試運転が行われるなどしていた・・・」との事実が認められると記載されているにすぎず、試運転が行われたことは認定されているものの、その試運転(「明間温泉発明」)が部外者を含めて公然と実施されたとの認定はなされていない。

(4)小括
したがって、「明間温泉発明」は本件特許出願前に公然と実施されたものということはできないから、特許法第29条第1項第2号及び同条第2項には該当せず、無効理由1、2は存在しない。

4-2 無効理由3について
本件特許と同日に出願された実願平7-7348号(実用新案登録第3020698号)については、平成16年8月2日に訂正により実用新案登録請求の範囲の請求項1、2が削除された。そして、実用新案法第14条の2第3項の規定により、訂正後における明細書又は図面により実用新案登録出願及び実用新案権の設定の登録がされたものとみなされるから、実用新案登録第3020698号の請求項は初めからなかったものとみなされ、実用新案登録を受けようとする考案が最初からないものとなった。
したがって、無効理由3の対象となる考案が存在しなくなった。

5.まとめ
以上のように、請求人主張の理由及び証拠によっては、本件発明1ないし3についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-09-28 
結審通知日 2004-09-30 
審決日 2004-10-13 
出願番号 特願平7-181083
審決分類 P 1 112・ 121- Y (E21B)
P 1 112・ 112- Y (E21B)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 木原 裕
▲高▼橋 祐介
登録日 1999-05-28 
登録番号 特許第2934590号(P2934590)
発明の名称 温泉水汲み上げ装置  
代理人 須田 篤  
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