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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B41F
管理番号 1124146
審判番号 無効2005-80075  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-06-20 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-03-11 
確定日 2005-10-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第2673339号発明「包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2673339号の出願からの主だった経緯を摘記すると以下のとおりである。
・平成6年5月31日 出願
(パリ条約による優先権主張 1993年10月29日 米国)
・平成9年7月18日 登録
・平成13年4月25日 無効審判請求(無効2001-35183号)
・平成15年3月20日 無効理由通知(起案日)
・平成15年6月27日 訂正請求
・平成15年10月2日 審決(送達日)(訂正認容・無効審決)
・平成15年12月29日 審決取消訴訟(平成15年(行ケ)第590号)
・平成16年11月16日 訂正審判請求(訂正2004-39263号)
・平成16年11月25日 口頭弁論終結
・平成16年11月30日 判決言渡(原告請求棄却)
・平成17年1月7日 上告受理申立
・平成17年1月24日 訂正認容審決(送達日)
・平成17年3月11日 本件無効審判請求

2.本件発明
本件特許第2673339号の請求項1ないし請求項4に係る発明は、平成16年11月16日付け訂正の審判の審判請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】クリーニングファブリックのストリップを、少なくとも一端に開口を有する細長い円筒状のコアのまわりに巻きつけてロールを形成し、
これを真空チャンバー内において前記ファブリックに真空作用を受けさせてファブリック内部のエアーを抜き去った後、
このファブリックをおよそゼロから20パーセントの範囲の揮発性をもつ低揮発性有機化合物溶剤と接触させ、このファブリックに前記溶剤を含浸させ、前記溶剤が平衡状態で含浸されたファブリックロールを得、
前記円筒状コアの開口端にエンドキャップを装着し、
熱シール性プラスチックスリーブを前記ファブリックロールのまわりに配置し、
このプラスチックスリーブに真空作用を受けさせてこれを前記ファブリックロールに緊密に接触させ、
その後前記プラスチックスリーブに十分高い温度を受けさせ、前記プラスチックスリーブをファブリックロールのまわりで熱シールして、
前記ファブリックロールをその溶剤の分布状態が実質上乱れないように気密に包囲することにより、使用前、予め溶剤が含浸されたファブリックロールを垂直および水平に搬送および保管しても、前記ファブリックロールのクリーニング力が損なわれないようにしたことを特徴とする印刷機のシリンダ洗浄用の包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法。
【請求項2】クリーニングファブリックを溶剤と接触させる手段が、周囲温度および圧力の下で前記低揮発性溶剤に沈積する方法であることを特徴とする請求項1に記載した印刷機のシリンダ洗浄用の包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法。
【請求項3】熱シール性プラスチックスリーブが熱シール性および熱収縮性のものであることを特徴とする請求項1に記載した印刷機のシリンダ洗浄用の包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法。
【請求項4】プラスチックスリーブのシール温度をおよそ142℃から189℃の温度範囲に選定することを特徴とする請求項1に記載した印刷機のシリンダ洗浄用の包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法。」(以下、「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)

3.請求人の主張
本件特許の請求項1ないし請求項4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第14号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明であるから、同法第123条第1項第8号の規定に該当して無効とすべきである。
特に、下記甲第14号証には、スクリーン印刷において、ファブリックとしての布状製品にスクリーン印刷する際に、真空吸引を作用させて布状内部の空気を抜くと同時に、泡その他の液体を均一に吸い込ませて塗布するようにする技術が開示されている。印刷分野で布状製品に真空作用を生じさせて内部の空気を抜き去り、吸引作用で染液などの液体を含浸させる技術は公知であり、同じ印刷分野のブランケット洗浄技術に適用することに困難性はない。

(証拠方法)
甲第1号証:特開平2-11329号公報
甲第2号証:実願昭63-20525号(実開平1-127762号)のマイクロフィルム
甲第3号証:実願平3-43270号(実開平4-126855号)のマイクロフィルム
甲第4号証:特開平2-8055号公報
甲第5号証:特開昭48-23503号公報
甲第6号証:特公昭56-1230号公報
甲第7号証:特公昭51-49242号公報
甲第8号証:特開平3-1952号公報
甲第9号証:実願平3-17623号(実開平4-113960号)のマイクロフィルム
甲第10号証:「11691の化学商品」、化学工業日報社、1991年1月23日、P.349〜351、449〜450、1027
甲第11号証:特開昭55-148164号公報
甲第12号証:特開平5-15470号公報
甲第13号証:特開平4-258244号公報
甲第14号証:特開昭57-110362号公報

4.被請求人の主張
甲第14号証の技術は、長尺の布地を走行させながら染料を柄パターンに沿って押し込み又は吸い込んで染色するものであるので、ロール巻した布地への適用には無理があること、サクション装置に代えて全体を真空チャンバ内におくのは装置が巨大化するなど非現実的であること、そもそも真空中では泡状の染料が生成できないこと、など技術的背景が本件訂正発明のものと全く異なっている。
甲第14号証の公知例は、訂正審決で各刊行物(前記甲第1号証ないし甲第13号証)についてなされた判断、即ち『本件訂正発明の要件である「これを真空チャンバー内において前記ファブリックに真空作用を受けさせてファブリック内部のエアーを抜き去った後」(相違点)について記載されたものでもなく、これを示唆する記載もない』との判断を覆すに足りるものではない。
したがって、請求人の主張する無効理由には理由がない。

5.甲各号証の記載事項
甲第1号証ないし甲第14号証には、それぞれ下記の事項が記載されている。
(甲第1号証の記載事項)
a.「布供給ロールと布巻取りロールと前記両ロール間に張り渡される帯状の洗浄布と洗浄時に前記洗浄布を印刷機のシリンダの外周に押圧する手段とを有する印刷機のシリンダ洗浄装置において、前記洗浄布が前記洗浄装置に装着する前に洗浄液を含浸させた布であることを特徴とする印刷機のシリンダ洗浄装置。」(特許請求の範囲、第1項)。
b.「本発明の目的は、洗浄布への洗浄液の供給装置を省略した印刷機のシリンダ洗浄装置を提供することである。」(第2頁右上欄第10〜12行)。
c.「前記洗浄布は、合成樹脂、天然繊維、または木材パルプ等を原料とする織物または不織布、あるいは合成樹脂、天然繊維、または木材パルプ等のうち少なくとも2種の複合体である。」(第2頁左下欄第4〜7行)。
d.「いずれの場合も、前記洗浄布に含浸させる洗浄液は、例えばジエチレングリコール90部およびポリエチレングリコール10部の混合液を採用できる。」(第2頁左下欄第8〜11行)。
e.「洗浄液の蒸散を防止するには、前記供給ロールの両端部を貫通させるとともに、使用前はシールされ使用時に前記洗浄布を引き出すスリットとなる開口を有し、密閉した筒状のケースに、洗浄布を収納し、カセット化する。」(第2頁左下欄第12〜16行)。
f.「洗浄布2は、通気性の無い円筒状のケース20に収納されて、カセット式に印刷機に装着される。ケース20には使用時は(図示しない)シールにより密封され使用時に洗浄布を引き出すスリット22を形成してある。また、ケース20の両端部には、シール26を介して布供給ロール4を貫通状態で軸受けするふた24をはめてある。」(第2頁右下欄第18行〜第3頁左上欄第5行)。
g.「通気性のないケース20に収納する方式に代えて、第5図に示すように、洗浄液を含浸させた洗浄布2の裏側全面に、通気性がなくごく薄いフィルム30をラミネートして布供給ロール4に巻いてもよい。洗浄布2の両端面からの洗浄液の蒸散は、例えば布供給ロール4にフランジを形成して防ぐことができる。ちなみに、第3図〜第5図実施例において、布供給ロール4が中空でもよいことは勿論である。」(第3頁左上欄第18行〜右上欄第6行)。

(甲第2号証の記載事項)
a.「染料にて着色された液状インクを含有するインクリボン(R)、若しくは、それを収納したインクリボンカートリッジ(C)を包装材(2)にて包装してあるインクリボン包装体であって、前記包装材(2)を非通気性の材料から構成するとともに、この包装材(2)にて前記インクリボン(R)若しくはインクリボンカートリッジ(C)を気密状態で包装し、かつ、前記包装材(2)内を酸素の少ない又は無い状態に構成してあるインクリボン包装体。」(実用新案登録請求の範囲、第1項)。
b.「長期保存に伴うインクリボンのインク濃度の低下を良好に抑制することができる。それ故に、製品の耐久性向上を図ることができると同時に、輸送時や保管時等における取り扱いの容易化を達成することができるに至った。」(第4頁第17行〜第5頁第2行)。
c.「第1図ないし第3図に示すインクリボン包装体は、染料にて着色された液状インクを含有するインクリボン(R)を収納したインクリボンカートリッジ(C)と、・・・脱酸素剤(1)とを、包装材の一例であるポリ塩化ビニリデンをコートしたポリプロピレンフィルム等の非通気性フィルム(2)にて同梱し、その全周を熱溶着によって気密状態に密封包装してある。この密封包装時には、前記非通気性フィルム(2)内の空気を吸引排出してシュリンク包装してある。」(第5頁第6〜17行)。
d.「前記包装材(2)内を真空にして実施してもよい。」(第7頁第20行〜第8頁第1行)。
e.「例えば、第4図及び第5図に示すように、交換用インクリボン(R)を収納した紙製ケース(3)のみを包装材(2)にて包装したインクリボン包装体に本考案を適用してもよい。」(第8頁第8〜12行)。
f.「前記包装材(2)として、ポリ塩化ビニリデンをコートしたポリプロピレンフィルムを例に挙げて説明したが、この材料に限定されるものではなく、例えば、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、飽和ポリエステル等の単独又はこれら二種以上を層状に構成したフィルムから構成して実施してもよい。」(第8頁第13〜20行)。

(甲第3号証の記載事項)
a.「本考案は印刷機ドラムの洗浄シート供給装置に係り、特にブランケット胴等の印刷機ドラムを払拭洗浄する洗浄シートをロール供給するとともに、払拭後の洗浄シートを巻取り回収するように構成した洗浄シート供給装置の改良に関する。」(第3頁第4〜6行)。
b.「このような構成において、前記圧着部に洗浄シート24を供給し、払拭洗浄後の洗浄シート24を巻き取るようにした洗浄シート供給装置が設けられている。これは前記メインステー12の背面部に配置された供給ロール26と、更にその後方にて供給ロール26と平行に配置された巻取りロール28とを備え、供給ロール26から洗浄シート24を繰り出し、前記圧着部に巻き掛けた後、巻取りロール28にて巻き取るようにしている。・・・また、供給ロール26および巻取りロール28は紙管によって形成されており、側板14に設けられた繰り出し軸34、巻取り軸36に着脱可能に装着されるようになっている。」(第6頁第2〜13行)。

(甲第4号証の記載事項)
a.「シリンダ2の両端の本機フレーム201A及び201Bに取付けられた一対のサイドプレート7A及び7Bにそれぞれの端部を回転自在に支持された一対のロールの例えば布供給ロール8と布巻取りロール9との間に懸架され、一方のロールの例えば布供給ロール8から供給される帯状の洗浄布10をシリンダの外周に押圧又は離脱させる押圧手段と、洗浄布10を巻取ってシリンダの外周に対し相対的に移動させる他方のロール例えば布巻取りロール9の駆動手段とを具備した印刷機のシリンダ洗浄装置」(第4頁右上欄第2〜13行)。

(甲第5号証の記載事項)
a.「本発明の目的はオフセット式複写機の印刷円筒を掃除するための装置を提供することにある。この装置は前述の欠点を(溶剤の蒸発)解消し、掃除作用の永久的に効果及び迅速性を保ち、洗浄性材料の消費を最小にし、印刷円筒からインクを取除いた後洗浄性材料の接触するローラー又は他の機構の頻繁な洗浄の必要性を無くする。この目的からして、本発明に従う装置は、単一の狭い開口によつて外部と連絡している内室の備えられた容器を含み、該容器内にある溶剤で浸されたリボン状洗浄性材料の一部が該開口を通して通過し、」(第2頁左上欄第12行〜右上欄第8行)。
b.「該開口27を通してぬれた紙28のリボンが出ており、」(第3頁左上欄第15行〜右上欄第1行)。

(甲第6号証の記載事項)
a.「印刷インキに対して溶解力を有する溶剤を洗浄液として含浸する含液洗浄紙を、印刷機の圧胴とブランケット胴の間に挿入し、その回転圧着を利用してブランケットを洗浄することを特徴とする、ブランケット洗浄法。」(特許請求の範囲、第1項)。
b.「本発明に用いられる印刷インキに対して溶解力を有する溶剤としては、たとえば石油系溶剤たとえばテレピン油、ホワイトスピリット、塩素系溶剤たとえばトリクロルエタンがあげられる。」(第2欄第13〜16行)。
c.「洗浄液又は水を含浸させる用紙としては、組織が粗くて液を含みやすく、かつ液を吸収しやすい性質のものが好ましい。紙としては植物繊維を原料とする和紙のほか、合成繊維又は合成繊維から成る紙状物も用いられる。」(第2欄第19〜23行)。

(甲第7号証の記載事項)
a.「ブランケット面を清掃する洗剤としては、例えば脂肪族炭化水素とナフサとエチレングリコールモノエーテルの混合物を用いる。前記の洗剤は市販品を利用できる。」(第7欄第12〜15行)。

(甲第8号証の記載事項)
a.「洗浄用基布に要求される性能としては、(1)一定時間内における吸水及び吸油性がある、(2)強力が強い、(3)湿摩擦に強く、毛羽立ちにより繊維脱落がない、(4)ワイピング性(紙粉及びインキの汚れ取り)が良い、(5)ウエット時の寸法変化が少ない、(6)基布の厚みが薄い(7)使い捨てのため安価である、等が挙げられる。」(第2頁左上欄第5〜11行)。
b.「目付30〜100g/m2からなる熱可塑性合成長繊維不織布に、アクリル酸エステル共重合体樹脂と親水性-疎水性バランス3.6〜9の脂肪酸エステル若しくは脂肪酸エーテル系界面活性剤との混合物が5〜30g/m2付着されているオフセット印刷洗浄用基布。」(特許請求の範囲、第1項)。
c.「自動洗浄装置の概要は第1図に示す如く、洗浄基布は巻き取り方式によるカートリッジ方法である。原理は、ウエス代替に不織布が使用されており、洗浄液(水及び白灯油、水-白灯油混合)を自動的に一定時間内で一定量放出し、不織布に噴霧及び浸漬方法等で吸水及び吸油させ、紙粉及びインキで汚れているロール(ブランケット胴)に一定時間及び一定圧力をかけ接触させて洗浄する方法である。」(第1頁右下欄第9〜17行)。

(甲第9号証の記載事項)
a.「本考案は、プリンタやファクシミリ等の記録装置に用いられるインクフィルム、特に、熱転写性インクフィルムを供給用コアにロール状に巻き取ってあるインクフィルムロールの包装技術に関する。」(第4頁第4〜6行)。
b.「【請求項1】熱転写性インクフィルム(1)を供給用コア(2)にロール状に巻き取ってあるインクフィルムロール(A)を緩衝材(4)で包み、この緩衝材(4)を含むインクフィルムロール(A)全体を熱収縮性フィルム(5)にて密着包装してあるインクフィルム包装体。」(実用新案登録請求の範囲、請求項1)。
c.「本考案の第1請求項による場合では、インクフィルムロールを熱収縮性フィルムにて密着包装することにより、インクフィルムロールを湿気や塵埃から保護することができるばかりでなく、熱収縮性フィルムの収縮力を利用してインクフィルムロール全体を緊縛することができるから、このインクフィルムロールから繰り出される熱転写性インクフィルムの遊端部を仮止めする程度でも、当該熱転写性インクフィルムの不測の繰り出しを確実に防止することができるとともに、包装後における包装体の体積も可及的に小さくすることができる。しかも、インクフィルムロールは緩衝材で包まれているから、流通過程等でのインクフィルムロールの損傷を良好に抑制することができると同時に、この緩衝材の持つ断熱機能を利用して、熱収縮性フィルムの加熱時における熱転写性インクフィルムへの悪影響をも回避することができる。」(第6頁第7〜17行)。
d.「上述の実施例では、前記インクフィルムロールAから繰り出される熱転写性インクフィルム1の遊端部に巻取用コア3を付設したインクフィルム包装体について説明したが、このような巻取用コア3を設けていないタイプ、つまり、熱転写性インクフィルム1の遊端部を粘着テープ等で仮止めしてあるタイプにも本考案の技術を適用することができる。」(第8頁第28行〜第9頁第3行)。
(甲第10号証の記載事項)
a.ジエチレングリコールの沸点・引火点が示され、並びに用途としてブレーキ油に用いられることが記載されている。また、ポリエチレングリコールの引火点が示され、不揮発性であることが明示されている。

(甲第11号証の記載事項)
a.「印刷機のブランケットシリンダを洗浄布帛で洗浄するための装置であって、a)ブランケットシリンダの両端に近接して位置決められたエンドフレーム手段と、b)洗浄布帛供給ロールと、洗浄布帛巻取ロールと、洗浄布帛を前記供給ロールから前記巻取ロールに導くための手段と、c)水を洗浄布帛に導くための手段と、d)水以外の溶媒を洗浄布帛に導くための手段と、e)前記洗浄布帛を移動させ、ブランケットシリンダの一部と接触させる手段とからなり、(イ)前記最後の手段は膨張して洗浄布帛を移動させ、ブランケットシリンダに接触させることができ、緩んで洗浄布帛をブランケットシリンダから離脱させることができる可撓性を有する部材を含むことを特徴とする装置。」(特許請求の範囲(1))。

(甲第12号証の記載事項)
a.「セルロース系短繊維に直接性を有する染料を含む水溶液をセルロース系繊維不織布もしくは紙に含浸させた後、水蒸気透過性100g/m2/hr.以下であるフイルムにより密閉包装することを特徴とするおしぼりの製造方法。」(特許請求の範囲、請求項1)。
b.「厚さ15μmのポリプロピレンフイルムで包装し、ヒートシールにより密閉した。24時間後におしぼりとして使用したが、色落ちもなく、カラーおしぼりとして十分機能するものが得られた。」(段落【0010】)。

(甲第13号証の記載事項)
a.「熱収縮性プラスチックフィルムから形成された袋の中に、生鮮魚介類と15℃以下の水性液状媒体とが収納されており、この袋内の空気を実質的に除いた後、袋の開口部をヒートシールによって密封し、しかる後、80〜100℃の熱水中に5〜30秒間浸漬して袋の熱収縮性プラスチックフィルムを収縮させることを特徴とする生鮮魚介類の包装法。」(特許請求の範囲【請求項1】)。
b.「【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするところは熱収縮性プラスチックフィルムから形成された袋の中に、生鮮魚介類と15℃以下の水性液状媒体とが収納されており、この袋内の空気を実質的に除いた後、袋の開口部をヒートシールによって密封し、しかる後、80〜100℃の熱水中に5〜30秒間浸漬して袋の熱収縮性プラスチックフィルムを収縮させることを特徴とする生鮮魚介類の包装法に存する。」(段落【0005】)。

(甲第14号証の記載事項)
a.「本発明は、泡立装置の混合室に別個の供給導管を介して圧力空気と、処理媒体としての液体、染液又はペーストとを供給して泡を発生させ、泡立てたままの状態で塗布装置へ処理媒体供給装置によって搬送して面状製品に処理媒体を均一に塗布する方法と、該方法を実施する装置に関するものである。」(第3頁右上欄14〜20行)。
b.「本発明の方法の要旨とするところは、面状製品上に載るスクリーン又はスクリーン状中間支持体を通過させて、泡を又は、スクリーン通過時に生じる液体を面状製品に塗布する点にある。」(第3頁右下欄15〜18行)。
c.「本発明の実施態様によれば、無圧の状態でもたらされた泡は、スクリーン又はスクリーン状中間支持体を通して吸出される。更に前記泡又は、スクリーン通過時に生じる液体は面状製品内に吸込まれる。真空ないし負荷によるサクション作用によって泡を塗布する場合の利点は、液体割当分ないし染液割当分が全面にわたって均一に布地内へ吸込まれることである。これによって染液塗布は所望の許容誤差範囲内に留まる。また真空度を変化させることによってスクリーン範囲の上方で液体割当分ないし染液割当分を制御し、かつ又、布地への吸込み深さを制御することができる。」(第4頁左上欄18行〜右上欄12行)。
d.「泡はスクリーンを介して塗布する際に破壊されるので、布地には最小限の量の液体が使用され全面にわたって均一に分配され、従って布地内に均一に浸透する。この場合、「均一」という概念は、例えば一様な通過断面を有するスクリーンを使用する場合についてのみ狭く解されてはならない。柄パターンに応じて閉じた面と開いた面とを有するステンシルの場合にも上記のことは当て嵌まり、この場合は均一な、しかし柄パターンに応じた塗布が保証される訳である。・・・真空の度合を制御することによって布地から空気が除去されるので、染液は布地内へ抵抗なく均一に浸透することができる。」(第4頁右上欄13行〜左下欄10行)。
e.「長尺布帛のような面状製品の下位にか、又は、該面状製品とこれを支持する捺染ブランケットのような、パーフォレーションを有する搬送ベルト又はシープドラムとの下位にサクション装置が配置されている。」(第5頁左上欄17行〜右上欄1行)。
f.「本発明の装置では、スクリーン又はスクリーン状中間支持体の上位又は内部にドクターや塗布ローラのような塗布装置が配置されており、かつ、処理染液を泡立てたままの状態で塗布装置へ搬送する供給装置が、泡を前記塗布装置の全作業幅にわたって均一にもたらすように構成されている。また、ドクター又は塗布ローラのような塗布装置以外にサクション装置が配置されている。この場合、ドクター又は塗布ローラのような塗布装置はサクション装置に後置されている。前記塗布装置によって、例えば染料を含む泡の押込み又は掻込みが行われる。・・・ただ吸引されただけでは、装置の調整不良の場合には染液が布地の表面から吸取られ、これによって布地表面の最外端は染色されず、また不充分にしか染色されず、その結果著しい品質低下が生じる。」(第5頁右上欄2行〜左下欄4行)。
g.「微量の染液を比較的大きな作業幅にわたって1つの面上に均一に分配することは極めて困難であり、殆ど不可能に近い。これが可能になるのは染液の体積増大によってだけであり、これは泡立てによって行われる。・・・泡立てのみによっては染色の均一な分配は生じない。従って、上記の難点は、泡の塗布をスクリーン又はスクリーン状中間支持体を通して行なうことによって克服される。泡の主構成部分はスクリーンを通して押込む又は吸込む際に再び液化される。従って、これによって生じる液量は、布地上又は布地中に均一に分配され、塗布は全作業幅にわたって均一に行われる。」(第5頁左下欄16行〜右下欄13行)。
h.「面状製品は紙、ガラス又はプラスチックから成ることができ、また布地特に立毛布地のような繊維材料からなることもできるのは勿論である。」(第6頁右上欄7〜10行)。
i.「図示のすべての装置は、繊維面状製品殊に長尺布帛1に処理染液を均一に塗布するために用いられる。」(第6頁左下欄17〜19行)。
j.「図面から判るように、泡立てられた染液ないし泡はスクリーン又はスクリーン状中間支持体4に向って開いた空間50内へ、圧力をかけぬ無圧の状態でもたらされる。・・・空間50の下方には、本発明ではサクション装置6が配置されており、・・・サクション装置6は真空ポンプ60に接続されている。強さを制御可能な低真空によって、被処理材料つまり長尺布帛1のような繊維面状製品から空気が除去され、こうして被処理材料内に染液を抵抗なく均一に浸透させることが可能である。」(第7頁左上欄14行〜右上欄20行)。

6.当審の判断
本件発明1と甲第1号証ないし甲第14号証に記載された事項とを対比すると、いずれの甲号証にも、本件発明1を構成する要件である、「これを真空チャンバー内において前記ファブリックに真空作用を受けさせてファブリック内部のエアーを抜き去った後、」(以下、「相違点1」という。)、及び「前記円筒状コアの開口端にエンドキャップを装着し、」(以下、「相違点2」という。)について、記載がなくこれを示唆する記載もない。

即ち、まず相違点1について検討する。
上記訂正審判(訂正2004-39263号)においても検討した甲第1号証ないし甲第13号証には、請求人も認めているように、前記相違点1については、記載がなくこれを示唆する記載もない。
ところで、甲第14号証には、上記甲第14号証の記載a〜jを含む明細書及び図面の記載からみて、以下の技術的事項が記載されている。
スクリーン又はスクリーン状中間支持体を通して泡染料を布地へ押込むか吸込むことによって、均一塗布の問題を解決しようとしたものであり、真空作用は、染料の泡を破壊して吸い込むためである。
更に、この真空吸引だけでは染料の均一分配は難しいことから、ドクターや塗布ローラのような塗布装置の配置が必要である(甲第14号証、記載f)。
甲第14号証に記載されているのは、布地製品を搬送ベルトなどで走行させる過程で、布地の上方に配置された染料を布地の下方に配置されたサクション装置で染料液を吸い込み布地に浸透させる技術であり、布地だけを真空吸引したり、布地全体のエアーを抜き去るという技術的思想は存在しない。
即ち、本件発明1の構成である、「クリーニングファブリックのストリップを、少なくとも一端に開口を有する細長い円筒状のコアのまわりに巻きつけてロールを形成し、」、及び「これを真空チャンバー内において前記ファブリックに真空作用を受けさせてファブリック内部のエアーを抜き去った後、」については、記載されておらず、又これを示唆する記載もない。

次に相違点2について、検討する。
甲第14号証には、上記相違点2について記載がなくこれを示唆する記載もないことは明らかである。
甲第1号証には、洗浄液含浸の洗浄布を予めロールに形成してなる構成が開示されているが、具体的製造方法の工程については開示されていない。
そして、甲第1号証には、「ケース20の両端部には、シール26を介して布供給ロール4を貫通状態で軸受けするふた24をはめてある。」(甲第1号証、記載f)との記載があるが、このふた24はファブリックロールをケース20に軸受けするためのものであり、本件発明1における、真空包装への対応であるコアの開口端に装着されるエンドキャップといえるものではない。
さらに、甲第1号証には、「通気性のないケース20に収納する方式に代えて、第5図に示すように、洗浄液を含浸させた洗浄布2の裏側全面に、通気性がなくごく薄いフィルム30をラミネートして布供給ロール4に巻いてもよい。洗浄布2の両端面からの洗浄液の蒸散は、例えば布供給ロール4にフランジを形成して防ぐことができる。ちなみに、第3図〜第5図実施例において、布供給ロール4が中空でもよいことは勿論である。」(甲第1号証、記載g)との記載があるが、この布供給ロール4に形成されたフランジは、洗浄布2の両端面からの洗浄液の蒸散を防ぐためのものであり、本件発明1における、真空包装への対応であるコア(中空の布供給ロール4)の開口端に装着されるエンドキャップといえるものではない。

また、上記相違点1及び相違点2の本件発明1に係る構成は、当該技術分野において周知の技術でもない。

そして、本件発明1は、上記相違点1、2の本件発明1に係る構成により、「低揮発溶剤であってもこれをファブリック内へ迅速に十分な量だけ浸透させることを実証し、搬送・保管に好適な溶剤を、長尺のファブリック全体に亘って効果的に平衡状態に含浸させることに成功した」(訂正2004-39263号、平成16年11月16日審判請求書 第8頁第2〜5行参照)、「使用前、含浸されたファブリックロールを垂直および水平に搬送し、保管することができ且つ前記ファブリックのクリーニング力が損なわれないようにした包装され、含浸されたクリーニングファブリックが得られる。」(訂正2004-39263号訂正明細書、段落【0006】(審判請求書添付、全文訂正明細書参照))という、各甲号証に記載のものからは期待できない格別の効果を奏するものである。
したがって、本件発明1が本件出願前に頒布された上記甲第1号証ないし甲第14号証に記載のものから当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
してみると、本件発明1は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

そして、本件発明2ないし本件発明4は、本件発明1の全てを主要部とし、さらに種々の構成要件を付加したものである。
してみると、上記のとおり本件発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができるものである以上、本件発明2ないし本件発明4も特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

7.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由および提出した証拠方法によっては、本件特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-09 
結審通知日 2005-08-12 
審決日 2005-08-26 
出願番号 特願平6-142427
審決分類 P 1 113・ 121- Y (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南 宏輔  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 酒井 進
番場 得造
登録日 1997-07-18 
登録番号 特許第2673339号(P2673339)
発明の名称 包装され、含浸されたクリーニングファブリックを製造する方法  
代理人 村上 友一  
代理人 村田 紀子  
代理人 大久保 操  
代理人 武石 靖彦  
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