• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B24B
管理番号 1124252
異議申立番号 異議2003-70718  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-02-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-24 
確定日 2005-07-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3326443号「ウエハ研磨方法及びその装置」の請求項1ないし27に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3326443号の請求項1ないし16に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第3326443号の請求項1ないし27に係る発明は、平成5年8月10日に特許出願され、平成14年7月12日にその特許権の設定登録がされ、その後特許異議申立人大坪秀樹により請求項1ないし27に係る発明についての特許に対し、特許異議申立人北村清隆により請求項1ないし27に係る発明についての特許に対し、特許異議申立人平野周子により請求項1ないし5、7ないし11、17ないし21、23ないし27に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成15年11月4日に訂正請求(後日取り下げ)がなされた後、再度取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年4月20日に訂正請求がなされたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
特許権者が訂正請求で求める訂正の内容は、以下の訂正事項aないしbに示すとおりのものである。
(1)訂正事項a
設定登録時の願書に添付した明細書(以下「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1、3、7、9、17、19、23、25の「窓から」を「窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で」と訂正し、同じく、請求項2、6、18、22の「研磨液の膜を通して」を「研磨液の膜を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で」と訂正し、請求項1ないし3、6ないし7、9、17ないし19、22ないし23、25の「ウエハ研磨面」を「ウエハ上の膜面」と訂正し、請求項1ないし2、6ないし7、9、17ないし18、22ないし23、25の「膜の研磨終了点を判定する」を「途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定する」と訂正し、同じく、請求項3、19の「予め求めておいた・・時点を研磨終了点と判定する」を「途中ウエハの回転を停止させることなく予め求めておいた・・時点を研磨終了点と判定する」と訂正し、請求項4ないし5、11ないし16、20ないし21、27を削除し、請求項6ないし10、17ないし19、22ないし26を、それぞれ請求項4ないし8、9ないし11、12ないし16に繰り上げる。
(2)訂正事項b
特許明細書の段落【0007】ないし【0008】、【0010】ないし【0012】の「窓から」を「窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で」と訂正し、「ウエハ研磨面」を「ウエハ上の膜面」と訂正し、「膜の研磨終了点を判定する」を「途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定する」と訂正し、同じく、段落【0008】、【0010】の「研磨液の膜を通して」を「研磨液の膜を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で」と訂正し、「予め求めておいた・・時点を研磨終了点と判定する」を「途中ウエハの回転を停止させることなく予め求めておいた・・時点を研磨終了点と判定する」と訂正し、段落【0007】の「請求項6」を「請求項4」と訂正し、「請求項4のウエハ研磨方法は、・・平面形状を有することを特徴とする。」を削除し、段落【0008】の「請求項7」を「請求項5」と訂正し、「請求項8」を「請求項6」と訂正し、「請求項9」を「請求項7」と訂正し、「請求項10のウエハ研磨方法は、・・判定することを特徴とする。」を削除し、段落【0009】を「請求項8のウエハ研磨方法は、請求項7記載のウエハ研磨方法において、前記特定場所が前記ウエハの中心部分であることを特徴とする。」と訂正し、段落【0010】の「請求項17」を「請求項9」と訂正し、「請求項18」を「請求項10」と訂正し、「請求項19」を「請求項11」と訂正し、「請求項20のウエハ研磨装置は、・・平面形状を有することを特徴とする。」を削除し、段落【0011】の「請求項22」を「請求項12」と訂正し、「請求項23」を「請求項13」と訂正し、「請求項24」を「請求項14」と訂正し、段落【0012】の「請求項25」を「請求項15」と訂正し、「請求項26」を「請求項16」と訂正し、「請求項27のウエハ研磨装置は、・・モニタ装置を有することを特徴とする。」を削除する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
上記訂正事項aは、訂正前の請求項1ないし3、6ないし7、9、17ないし19、22ないし23、25において、「前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で」モニタし、「途中ウエハの回転を停止させることなく」膜の研磨終了点を判定することに限定し、「ウエハ研磨面」を「ウエハ上の膜面」に限定し、訂正前の請求項4ないし5、11ないし16、20ないし21、27を削除し、訂正前の請求項6ないし10、17ないし19、22ないし26を、それぞれ請求項4ないし8、9ないし11、12ないし16に繰り上げることを求めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項bについて
訂正事項bは、発明の詳細な説明における課題を解決するための手段の記載について、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の同法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 特許異議申立てについての判断
1 特許異議申立人大坪秀樹の特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人大坪秀樹は、下記の甲第2ないし6号証を提出し、請求項1ないし27に係る発明についての特許は、甲第2ないし6号証より、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1ないし27に係る発明についての特許を取り消すべきである、旨主張している。

甲第2号証:実願昭63-166251号(実開平2-86128号)
のマイクロフィルム
甲第3号証:特開平 3-234467号公報
甲第4号証:特開昭63- 50703号公報
甲第5号証:オーストラリア国特許公開第245213号明細書
甲第6号証:特開昭61-270060号公報

2 特許異議申立人北村清隆の特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人北村清隆は、下記の甲第1ないし9号証を提出し、請求項1ないし3、6ないし12、15ないし19、22ないし27に係る発明についての特許は、甲第1ないし8号証より、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、請求項4ないし5、20ないし21に係る発明についての特許は、特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、また、平成13年8月10日付手続補正書による補正は、明細書又は図面の要旨を変更するものであって、請求項1ないし27に係る発明についての特許は、本件特許出願の公開特許公報である甲第9号証より、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1ないし27に係る発明についての特許を取り消すべきである、旨主張している。

甲第1号証:実願昭63-166251号(実開平2-86128号)
のマイクロフィルム
甲第2号証:特開平 3-234467号公報
甲第3号証:特開昭60-246637号公報
甲第4号証:特開昭59- 60203号公報
甲第5号証:特開昭63- 50703号公報
甲第6号証:特開昭64- 57107号公報
甲第7号証:特公昭62- 11986号公報
甲第8号証:特開昭55- 18060号公報
甲第9号証:特開平 7- 52032号公報

3 特許異議申立人平野周子の特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人平野周子は、下記の甲第1ないし5号証を提出し、請求項1ないし5、7ないし11、17ないし21、23ないし27に係る発明についての特許は、甲第2ないし5号証より、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、請求項1ないし5、7ないし11、17ないし21、23ないし27に係る発明についての特許は、特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、また、平成13年8月10日付手続補正書及び平成13年11月19日付手続補正書による補正は、明細書又は図面の要旨を変更するものであって、請求項1ないし5、7ないし11、17ないし21、23ないし27に係る発明についての特許は、本件特許出願の公開特許公報である甲第1号証より、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1ないし5、7ないし11、17ないし21、23ないし27に係る発明についての特許を取り消すべきである、旨主張している。

甲第1号証:特開平 7- 52032号公報
甲第2号証:実願昭63-166251号(実開平2-86128号)
のマイクロフィルム
甲第3号証:特開平 3-234467号公報
甲第4号証:特開昭60-246637号公報
甲第5号証:特開昭63- 50703号公報

4 本件発明
上記第2で示したとおり上記訂正が認められるから、本件の請求項1ないし16に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた、透明窓材を有する窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定することを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項2】 回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた、透明窓材を有する窓から、前記透明窓材及びウエハの間に形成される研磨液の膜を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定することを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項3】 回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた、透明窓材を有する窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく予め求めておいた研磨終了時の光反射状態の特徴と研磨中にモニタして得られた光反射状態の特徴が一致した時点を研磨終了点と判定することを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項4】 回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、研磨液を供給しながら、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた窓であって、前記研磨布から露出して、かつ研磨中にウエハ研磨面と接触しないよう配置された透明窓材を有する窓から、前記透明窓材及びウエハの間に形成される研磨液の膜を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定することを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項5】 回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた、透明窓材を有する窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態を分光反射率によりモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定することを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項6】 請求項5記載のウエハ研磨方法において、予め求めておいた研磨終了時の分光反射率特性の特徴と、研磨中にモニタして得られた分光反射率特性の特徴が一致した時点を研磨終了点と判定することを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項7】 回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた、透明窓材を有する窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の特定場所の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定することを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項8】 請求項7記載のウエハ研磨方法において、前記特定場所が前記ウエハの中心部分であることを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項9】 回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、前記定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に透明窓材を有する窓が設けられ、該窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定するモニタ装置を有することを特徴とするウエハ研磨装置。
【請求項10】 回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、前記定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に透明窓材を有する窓が設けられ、前記透明窓材及びウエハの間に形成される研磨液の膜を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定するモニタ装置を有することを特徴とするウエハ研磨装置。
【請求項11】 回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、前記定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に透明窓材を有する窓が設けられ、該窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく予め求めておいた研磨終了時の光反射状態の特徴と、研磨中にモニタして得られた光反射状態の特徴が一致した時点を膜の研磨終了点と判定するモニタ装置を有することを特徴とするウエハ研磨装置。
【請求項12】 回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、研磨液を供給しながら、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた窓であり、前記研磨布から露出して、かつ研磨中にウエハ研磨面と接触しないよう配置された透明窓材を有する窓から、前記透明窓材及びウエハの間に形成される研磨液の膜を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定するモニタ装置を有することを特徴とするウエハ研磨装置。
【請求項13】 回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、前記定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に透明窓材を有する窓が設けられ、該窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定するモニタ装置を有し、該モニタ装置が少なくとも分光反射率測定装置を有することを特徴とするウエハ研磨装置。
【請求項14】 請求項13記載のウエハ研磨装置において、前記モニタ装置は、予め求めておいた研磨終了時の分光反射率特性の特徴と、研磨中にモニタして得られた分光反射率特性の特徴が一致した時点を研磨終了点と判定することを特徴とするウエハ研磨装置。
【請求項15】 回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、前記定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に透明窓材を有する窓が設けられ、該窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の特定場所の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定するモニタ装置を有することを特徴とするウエハ研磨装置。
【請求項16】 請求項15記載のウエハ研磨装置において、前記特定場所が前記ウエハの中心部分であることを特徴とするウエハ研磨装置。」

5 刊行物1ないし2記載の発明(事項)
当審が通知した取消しの理由に引用した特開平3-234467号公報(特許異議申立人大坪秀樹が提出した甲第3号証、特許異議申立人北村清隆が提出した甲第2号証、特許異議申立人平野周子が提出した甲第3号証。以下「刊行物1」という。)ないし特開昭60-246637号公報(特許異議申立人北村清隆が提出した甲第3号証、特許異議申立人平野周子が提出した甲第4号証。以下「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されていると認める。
(1)刊行物1
ア 公報第2頁右上欄第2-19行
「上記従来の技術では、実際の研磨レートは、研磨クロスの目詰まり度、スタンパの金型取付面の面粗度、各部の温度等の諸条件により研磨のたびに変化するので、あらかじめ経験的に求めておいた研磨レートとは差異が生じてしまう。したがって、研磨時間の計算には誤差を見込む必要があり、研磨を終えるたびにスタンパの厚さの測定をしなければならないという問題点がある。また、スタンパの厚さの測定前には洗浄が必要であり、その洗浄時にあるいは測定時に傷をつけやすいという問題点もある。さらに、繰り返しの研磨、測定に多大の時間がかかるという問題点がある。
本発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、研磨を終えるたびに、スタンパの洗浄とその厚さの測定とを繰り返す必要のない、研磨時間の短いスタンパの金型取付面の研磨方法およびその研磨機を提供することを目的とするものである。」
イ 公報第3頁左上欄第18行-第4頁左上欄第1行
「第1図および第2図において、スタンパ1は、情報信号をカッティングしたガラス原盤上にニッケルを500〜2000Åの厚さに蒸着して導電化した後、その上に電鋳によりニッケルを305〜330μmの厚さに電着して形成したものであり、前記ガラス原盤そのものである円盤状の保護盤2に剥離されずにそのまま被着されている。また、該スタンパ1の金型取付面1aは、研磨定盤6に張られた研磨クロス5に当接する。
前記研磨定盤6は、図示しない研磨機本体(以下、単に「本体」という。)に回転可能に設置されており、その軸部6aは、電動モータ等から構成される本体に設けられた駆動部9の出力軸に接続され、設定された回転数で研磨定盤6を回転させる。
一方、本体に着脱かつ回転自在に装着された軸部7aを有する円盤状の研磨ホルダ7は、図示しない移動機構により軸方向に移動自在であり、前記保護盤2のスタンパ1が被着している面と反対側の全面を前記研磨定盤6に対して設定された圧力で均一に押圧可能である。また、該研磨ホルダ7には図示しない吸盤が埋設されており、該吸盤により前記保護盤2を吸着することにより保持する。
また、該研磨ホルダ7は、前記研磨定盤6の回転中心軸とずれた位置にその回転中心軸があり、研磨定盤6が回転することにより、その回転とは反対回りの回転をする。これにより前記スタンパ1の金型取付面1aと前記研磨クロス5とが互いに摺擦して研磨される。該研磨に際しては、液体の研磨剤が設定された割合で前記研磨クロス5に滴下される。測定面2aは、前記保護盤2のスタンパ1が被着している面より外側の面に環状に形成されており、前記金型取付面1aと平行で前記研磨クロス5に対向している。
ガラス板4は、前記研磨定盤6に張られた研磨クロス5の表面からわずかに後退してほぼ同一平面を形成するように該研磨定盤6の適宜部位に形成された取付孔6bに嵌着されており、その表面は前記研磨クロス5が張られることなく露出している。
光学式変位計(例えば、株式会社キーエンス製の光学式変位センサPAシリーズ。)3のセンサ3aは、前記取付孔6bの前記ガラス板4より下方に嵌着されており、その測定光3dは、該ガラス板4を透過して前記測定面2aを照射可能である。
前記測定光3dは、研磨定盤6の回転に伴って移動し、1回転する間に前記測定面2aと2回交差するので、その交差のたびに該測定面2aを照射することになる。
前記センサ3aはコード3cおよび不図示のスリップリング等を介して前記光学式変位計3の演算部3bに接続されている。
該演算部3bは、前記センサ3aの測定信号に基づいて前記金型取付面1aに垂直な方向の前記測定面2aの変位量の測定値を常時演算して求め、制御ユニット8に入力するものである。
本体に設けられた該制御ユニット8は、ひとつの研磨代寸法を設定でき、かつ前記測定値が該研磨代寸法に達したときに前記駆動部9を停止させて研磨を終了させる機能を有する公知のものである。」
ウ 公報第4頁左上欄第20行-同頁右上欄第6行
「研磨中、光学式変位計3の演算部3bは、前記センサ3aの測定信号に基づいて、金型取付面1aに垂直な方向の測定面2aの変位量の測定値を常時演算して求め、前記制御ユニット8に入力する。該制御ユニット8は、前記測定値が前記研磨代寸法に達したときに前記駆動部9を停止させ研磨を終了させる。」
エ 公報第5頁左上欄第19行-同頁右上欄第2行
「なお、第1および第2実施例では、スタンパの代りにガラス板やシリコンウエハー等を研磨することも可能であり、同様の仕上寸法精度が確保できる。」
上記摘記事項ア-エの記載からみて、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認める。
[刊行物1記載の発明]
回転する研磨定盤6の研磨クロス5が張り付けられた面に、研磨ホルダ7により支持した保護盤2に被着されたスタンパ1を回転させつつ押し付けてスタンパ1を研磨する際に、研磨定盤6及び研磨クロス5の回転中心と周縁との間に設けられた、ガラス板4を有する取付孔6bを通して、前記研磨定盤6及び前記スタンパ1が共に回転している状態で、研磨中の、保護盤2上の測定面2aの変位量の測定値を常時演算して求め、途中スタンパ1の回転を停止させることなくスタンパ1の研磨終了点を判定するスタンパ1の研磨方法。

(2)刊行物2
ア 公報第1頁右下欄第16行-第2頁左上欄第18行
「すなわち、第2図(a)に断面図で示すように、シリコン基板(1)上の単結晶層(3)の研磨量が多過ぎた場合は、活性領域の厚さが非常に小さくなってしまい、デバイスの耐圧などに悪影響を及ぼす。また、第2図(b)に断面図で示すように、研磨量が不足の場合には、単結晶層の表面に所要の平たん性が得られないという問題が起こる。
このように、従来の方法では、単結晶層(3)の研磨量の制御が時間設定によっており、研磨量の多過ぎや不足の場合ができていた。これに対処し、少量宛研磨し、研磨ごとに単結晶層(3)の表面の凹凸を測定し、凹凸がなくなるまで研磨を繰返す方法もあるが手間がかかり過ぎ生産性を阻害し、実用的ではない。・・この発明は、上記従来の方法の欠点をなくするためになされたもので、膜厚測定装置により半導体基板上の絶縁膜の膜厚を測定しながら、単結晶層及び絶縁膜の表面研磨を行い、所要の絶縁膜厚になったところで研磨をやめるようにし、研磨の制御性がよく、所要の厚さで表面平たんな単結晶層が得られる、半導体装置の製造方法を提供することを目的としている。」
イ 公報第2頁左上欄第20行〜同頁右上欄第18行
「以下、この発明の一実施例による半導体装置の製造方法を、第3図に示すシリコン基板部の要部断面図により説明する。(4)は光学的に薄膜の厚さを測る膜厚測定装置で、シリコン基板(1)上面の絶縁膜(2)の厚さを測定する。選択エピタキシャル成長直後は、第1図と同様に、鎖線で示すように比較的厚い絶縁膜(2)とシリコンの単結晶層(3)が形成されてある。膜厚測定装置(4)により絶縁膜(2)の膜厚を測定しながら、絶縁膜(2)及び単結晶層(3)の表面を研磨し、実線で示すように所要の絶縁膜(2)厚さになったところで、研磨をやめる。このときは、始めは絶縁膜(2)から突出していた単結晶層(3)の表面は、絶縁膜(2)面と同一に平たんに研磨されてある。
このように、膜厚測定装置(4)により絶縁膜(2)厚を測定しながら、所要厚さに至るまで研磨することにより、単結晶層(3)の表面は絶縁膜(2)と同一面になっており、研磨が過ぎることも不足することもなく、適量に研磨でき、単結晶層(3)の表面が精度よく平たんにされる。」

6 対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「研磨定盤6」は前者の「定盤」に相当し、同様に、「研磨クロス5」は「研磨布」に相当する。
後者の「保護盤2に被着されたスタンパ1」は、研磨対象物である限りで、前者の「膜付きウエハ」と共通し、後者の「研磨ホルダ7」は、研磨対象物を支持する支持板である限りで、前者の「ウエハ支持板」と共通する。
また、研磨終了点の判定のために用いられる後者の「ガラス板4を有する取付孔6b」は、前者の「透明窓材を有する窓」に相当している。
してみると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、支持板により支持した研磨対象物を回転させつつ押し付けて研磨対象物を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた、透明窓材を有する窓を通して、前記定盤及び前記研磨対象物が共に回転している状態で、途中研磨対象物の回転を停止させることなく研磨対象物の研磨終了点を判定する研磨対象物研磨方法。
[相違点1]
研磨対象物及びその研磨終了点の判定について、前者は「膜付きウエハ」であり、「研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタ」しているのに対し、後者は「スタンパ1」であって、スタンパ1を被着している保護盤2上の測定面2aの変位量の測定値を常時演算し、間接的に研磨加工量を検出している点。
上記相違点1について検討する。
[相違点1について]
刊行物2には、膜付きウエハを研磨対象物とし、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定することが記載されている(上記摘記事項(2)イ参照)。
刊行物1記載の発明と刊行物2記載のものは、研磨を停止させることなく研磨終了点を判定する技術の分野で共通し、また、刊行物1記載の発明の研磨対象物は、スタンパ1に限られたものでもない(上記摘記事項(1)エ参照)。
してみると、刊行物1記載の発明の研磨対象物を膜付きウエハとすることに格別の想到困難性はなく、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、膜の研磨終了点を判定することも刊行物2記載の事項のとおりであるから、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項を採用し、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。
[本件発明1の効果について]
そして、本件発明1の採用する事項によってもたらされる効果も、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項から予想することができる程度のものであって格別なものではない。
したがって、本件発明1は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2について
本件発明2と、刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「本件発明1について」でみたとおりの一致点及び相違点を有し、その他の相違点は、以下のとおりである。
[相違点2]
本件発明2では、「透明窓材及びウエハの間に形成される研磨液の膜を通して」モニタを行っているのに対し、刊行物1記載の発明では、そのように特定されていない点。
上記相違点2について、以下検討する。
[相違点2について]
刊行物1記載の発明も、研磨液を供給しながら研磨を行っており、かつ、透明窓材であるガラス板4が研磨クロス5の表面からわずかに後退して配置されていることからみて(上記摘記事項(1)イ参照)、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項を適用した際には、透明窓材及びウエハの間に研磨液の膜が形成され、その膜を通してモニタが行われるとみるのが相当である。
してみると、上記相違点2に係る本件発明2の構成は、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項を適用することによって必然的にもたらされるものであり、当業者であれば容易になし得たことである。
[本件発明2の効果について]
そして、本件発明2の採用する事項によってもたらされる効果も、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項から予想することができる程度のものであって格別なものではない。
したがって、本件発明2は、上記理由、及び「本件発明1について」で示したとおりの理由により、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明3について
本件発明3と、刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「本件発明1について」でみたとおりの一致点及び相違点を有し、その他の相違点は、以下のとおりである。
[相違点3]
本件発明3では、「予め求めておいた研磨終了時の光反射状態の特徴と研磨中にモニタして得られた光反射状態の特徴が一致した時点」を研磨終了点と判定するのに対し、刊行物1記載の発明では、そのように特定されていない点。
上記相違点3について、以下検討する。
[相違点3について]
刊行物1記載の発明における研磨終了点の判定方法も、研磨中の光反射状態をモニタして、反射光による保護盤上の測定面の変位量の測定値が、設定した研磨代寸法を示す所定の値となったところで研磨終了点と判定するものである(上記摘記事項(1)イ及びウ参照)から、予め求めておいた研磨終了時の光反射状態の特徴と研磨中にモニタして得られた光反射状態の特徴が一致した時点を研磨終了点と判定しているといえる。
してみると、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項を適用する際に、上記相違点3に係る本件発明3の構成により研磨終了点と判定することは、当業者であれば容易になし得たことである。
[本件発明3の効果について]
そして、本件発明3の採用する事項によってもたらされる効果も、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項から予想することができる程度のものであって格別なものではない。
したがって、本件発明3は、上記理由、及び「本件発明1について」で示したとおりの理由により、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明4について
本件発明4と、刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「本件発明1について」でみたとおりの一致点及び相違点を有し、その他の相違点は、以下のとおりである。
[相違点4]
本件発明4では、「研磨液を供給しながら」研磨を行い、「研磨布から露出して、かつ研磨中にウエハ研磨面と接触しないよう」透明窓材を配置し、「透明窓材及びウエハの間に形成される研磨液の膜を通して」モニタを行っているのに対し、刊行物1記載の発明では、そのように特定されていない点。
上記相違点4について、以下検討する。
[相違点4について]
刊行物1記載の発明も「研磨液を供給しながら」研磨を行っており、刊行物2記載の事項を適用した際には、「研磨布から露出して、かつ研磨中にウエハ研磨面と接触しないよう」透明窓材が配置され、「透明窓材及びウエハの間に形成される研磨液の膜を通して」モニタを行うものとなることは、「本件発明2について」で示したとおりである。
してみると、上記相違点4に係る本件発明4の構成は、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項を適用することによって必然的にもたらされるものであり、当業者であれば容易になし得たことである。
[本件発明4の効果について]
そして、本件発明4の採用する事項によってもたらされる効果も、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項から予想することができる程度のものであって格別なものではない。
したがって、本件発明4は、上記理由、及び「本件発明1について」で示したとおりの理由により、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明5について
本件発明5と、刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「本件発明1について」でみたとおりの一致点及び相違点を有し、その他の相違点は、以下のとおりである。
[相違点5]
本件発明5では、光反射状態を「分光反射率」によりモニタするのに対し、刊行物1記載の発明では、そのように特定されていない点。
上記相違点5について、以下検討する。
[相違点5について]
膜厚を測定する際に、光反射状態を分光反射率によりモニタすることは従来周知である(例えば、特開昭63-50703号公報及び特開昭64-57107号公報における従来技術の記載を参照)。
してみると、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項を適用する際に、上記従来周知の事項を採用し、上記相違点5に係る本件発明5の構成となすことは、当業者であれば容易になし得たことである。
[本件発明5の効果について]
そして、本件発明5の採用する事項によってもたらされる効果も、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び上記従来周知の事項から予想することができる程度のものであって格別なものではない。
したがって、本件発明5は、上記理由、及び「本件発明1について」で示したとおりの理由により、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び上記従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本件発明6について
本件発明5を引用する本件発明6と、刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「本件発明1について」でみたとおりの一致点及び相違点、並びに相違点5を有し、その他の相違点は、以下のとおりである。
[相違点6]
本件発明6では、「予め求めておいた研磨終了時の分光反射率特性の特徴と、研磨中にモニタして得られた分光反射率特性の特徴が一致した時点」を研磨終了点と判定するのに対し、刊行物1記載の発明では、そのように特定されていない点。
上記相違点6について、以下検討する。
[相違点6について]
刊行物1記載の事項においても、研磨中にモニタして得られた光反射状態の特徴が、予め求めておいた研磨終了時のものと一致した時点で研磨を終了させているといえることは、「本件発明3について」で示したとおりである。
また、相違点5に係る構成が従来周知であることも、「本件発明5について」で示したとおりである。
してみると、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項、及び上記従来周知の事項を適用し、上記相違点6に係る本件発明6の構成により研磨終了点と判定することは、当業者であれば容易になし得たことである。
[本件発明6の効果について]
そして、本件発明6の採用する事項によってもたらされる効果も、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び上記従来周知の事項から予想することができる程度のものであって格別なものではない。
したがって、本件発明6は、上記理由、及び「本件発明1について」で示したとおりの理由により、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び上記従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)本件発明7について
本件発明7と、刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「本件発明1について」でみたとおりの一致点及び相違点を有し、その他の相違点は、以下のとおりである。
[相違点7]
本件発明7では、ウエハ上の膜面の「特定の場所」をモニタするのに対し、刊行物1記載の発明では、そのように特定されていない点。
上記相違点7について、以下検討する。
[相違点7について]
膜厚を測定する際に、ウエハ上の膜面のどの特定の場所を選択するかは、適宜必要に応じてなすべき設計的事項といえる。
してみると、上記相違点7に係る本件発明7の構成は、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項を適用する際の設計的事項であり、当業者であれば容易になし得たことである。
[本件発明7の効果について]
そして、本件発明7の採用する事項によってもたらされる効果も、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項から予想することができる程度のものであって格別なものではない。
したがって、本件発明7は、上記理由、及び「本件発明1について」で示したとおりの理由により、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(8)本件発明8について
本件発明7を引用する本件発明8と、刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「本件発明1について」でみたとおりの一致点及び相違点、並びに相違点7を有し、その他の相違点は、以下のとおりである。
[相違点8]
本件発明8では、ウエハ上の膜面の「ウエハの中心部分」をモニタするのに対し、刊行物1記載の発明では、そのようになっていない点。
上記相違点8について、以下検討する。
[相違点8について]
膜厚を測定する際に、ウエハ上の膜面のどの特定の場所を選択するかは、適宜必要に応じてなすべき設計的事項といえることは、「本件発明7について」で示したとおりである。
そして、その「特定の場所」を「ウエハの中心部分」としたことにも、格別なものは認められない。
してみると、上記相違点8に係る本件発明8の構成は、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の事項を適用する際の設計的事項であり、当業者であれば容易になし得たことである。
[本件発明8の効果について]
そして、本件発明8の採用する事項によってもたらされる効果も、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項から予想することができる程度のものであって格別なものではない。
したがって、本件発明8は、上記理由、及び「本件発明1について」で示したとおりの理由により、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(9)本件発明9ないし16について、
本件発明9ないし16は、「ウエハ研磨方法」である本件発明1ないし8を、その「ウエハ研磨方法」を行う「ウエハ研磨装置」としてそれぞれその表現ぶりを変更して記載したものである。
そして、本件発明9ないし16は、刊行物1記載の発明との対比において、それぞれ本件発明1ないし8と実質的に同一の一致点及び相違点を有するものである。
してみると、本件発明9ないし16は、それぞれ「本件発明1について」ないし「本件発明8について」で示したとおりの理由により、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び上記従来周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし16は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1ないし16についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ウエハ研磨方法及びその装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた、透明窓材を有する窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定することを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項2】回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた、透明窓材を有する窓から、前記透明窓材及びウエハの間に形成される研磨液の膜を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定することを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項3】回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた、透明窓材を有する窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく予め求めておいた研磨終了時の光反射状態の特徴と研磨中にモニタして得られた光反射状態の特徴が一致した時点を研磨終了点と判定することを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項4】回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、研磨液を供給しながら、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた窓であって、前記研磨布から露出して、かつ研磨中にウエハ研磨面と接触しないよう配置された透明窓材を有する窓から、前記透明窓材及びウエハの間に形成される研磨液の膜を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定することを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項5】回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた、透明窓材を有する窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態を分光反射率によりモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定することを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項6】請求項5記載のウエハ研磨方法において、
予め求めておいた研磨終了時の分光反射率特性の特徴と、研磨中にモニタして得られた分光反射率特性の特徴が一致した時点を研磨終了点と判定することを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項7】回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた、透明窓材を有する窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の特定場所の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定することを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項8】請求項7記載のウエハ研磨方法において、
前記特定場所が前記ウエハの中心部分であることを特徴とするウエハ研磨方法。
【請求項9】回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、
前記定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に透明窓材を有する窓が設けられ、該窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定するモニタ装置を有することを特徴とするウエハ研磨装置。
【請求項10】回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、
前記定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に透明窓材を有する窓が設けられ、前記透明窓材及びウエハの間に形成される研磨液の膜を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定するモニタ装置を有することを特徴とするウエハ研磨装置。
【請求項11】回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、
前記定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に透明窓材を有する窓が設けられ、該窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく予め求めておいた研磨終了時の光反射状態の特徴と、研磨中にモニタして得られた光反射状態の特徴が一致した時点を膜の研磨終了点と判定するモニタ装置を有することを特徴とするウエハ研磨装置。
【請求項12】回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、研磨液を供給しながら、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、
定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた窓であり、前記研磨布から露出して、かつ研磨中にウエハ研磨面と接触しないよう配置された透明窓材を有する窓から、前記透明窓材及びウエハの間に形成される研磨液の膜を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定するモニタ装置を有することを特徴とするウエハ研磨装置。
【請求項13】回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、
前記定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に透明窓材を有する窓が設けられ、該窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定するモニタ装置を有し、該モニタ装置が少なくとも分光反射率測定装置を有することを特徴とするウエハ研磨装置。
【請求項14】請求項13記載のウエハ研磨装置において、
前記モニタ装置は、予め求めておいた研磨終了時の分光反射率特性の特徴と、研磨中にモニタして得られた分光反射率特性の特徴が一致した時点を研磨終了点と判定することを特徴とするウエハ研磨装置。
【請求項15】回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、
前記定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に透明窓材を有する窓が設けられ、該窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の特定場所の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定するモニタ装置を有することを特徴とするウエハ研磨装置。
【請求項16】請求項15記載のウエハ研磨装置において、
前記特定場所が前記ウエハの中心部分であることを特徴とするウエハ研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、半導体ウエハ、特にSOI(Silicon-on-Insulator)ウエハ等の膜付きウエハの研磨方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウエハ研磨では、上面に研磨布が張り付けられた定盤を回転させ、研磨布上に研磨液を滴下しながら、研磨布にウエハ支持板に固定したウエハを、ウエハ支持板により回転させつつ押し付けて、ウエハと研磨布との摩擦により研磨を進行させる方法が広く用いられている。この方法において、研磨加工量は通常、定盤の回転速度、研磨荷重、研磨液の供給量及びその温度、ウエハの回転及び揺動、等が厳しく管理された条件下で、研磨時間によって調節される。
【0003】
研磨によるウエハ厚さの減少量と研磨時間とから平均の加工速度を求め、研磨時間の決定に用いる。通常のウエハ研磨においては、加工速度の測定はこの方法以外になく、又諸条件の変動がもたらす数%の加工速度の変動は実用上支障がないので、この方法で十分であった。
【0004】
膜付きウエハにもこの研磨方法が適用される。通常のウエハの研磨と比較すると、研磨加工量の変動の許容幅が小さいので、研磨時間で加工量を制御しようとすれば、加工速度のわずかな変動も許さないような厳しい工程管理が必要となる。この種の研磨では膜の厚さの調節がその主な目的であって、研磨加工量の制御はその手段に過ぎない。膜の厚さは肉眼による干渉縞の観察あるいは光学的な測定によって知ることが出来るので、実験的な研磨では、研磨を時々中断して、膜厚を確認しながら研磨終了の時期を決めるのが一般的である。
【0005】
この方法は失敗の少ない安全な方法であるが、生産のための方法としては問題が多い。即ち、研磨を中断する度にウエハの洗浄、乾燥が必要なため、1枚当たりの処理時間が長く、自動化のための機構が複雑となり研磨費用が高くなる問題がある。又、中断と中断の間の時間が短くなると、定常状態の研磨と条件が異なってくるため、予期した研磨加工量が得られず、かえって制御性が悪化してしまうという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、研磨途中でウエハを定盤から離すことなく研磨中の膜の厚さを知ることができ、研磨の高精度な制御が効率よくできるウエハの研磨方法及び装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1のウエハ研磨方法は、回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた、透明窓材を有する窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定することを特徴とする。
請求項2のウエハ研磨方法は、回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた、透明窓材を有する窓から、前記透明窓材及びウエハの間に形成される研磨液の膜を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定することを特徴とする。
請求項3のウエハ研磨方法は、回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた、透明窓材を有する窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく予め求めておいた研磨終了時の光反射状態の特徴と研磨中にモニタして得られた光反射状態の特徴が一致した時点を研磨終了点と判定することを特徴とする。
請求項4のウエハ研磨方法は、回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、研磨液を供給しながら、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた窓であって、前記研磨布から露出して、かつ研磨中にウエハ研磨面と接触しないよう配置された透明窓材を有する窓から、前記透明窓材及びウエハの間に形成される研磨液の膜を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定することを特徴とする。
【0008】
請求項5のウエハ研磨方法は、回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた、透明窓材を有する窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態を分光反射率によりモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定することを特徴とする。
請求項6のウエハ研磨方法は、請求項5記載のウエハ研磨方法において、予め求めておいた研磨終了時の分光反射率特性の特徴と、研磨中にモニタして得られた分光反射率特性の特徴が一致した時点を研磨終了点と判定することを特徴とする。
請求項7のウエハ研磨方法は、回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて膜を研磨する際に、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた、透明窓材を有する窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で、研磨中のウエハ上の膜面の特定場所の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定することを特徴とする。
【0009】
請求項8のウエハ研磨方法は、請求項7記載のウエハ研磨方法において、前記特定場所が前記ウエハの中心部分であることを特徴とする。
【0010】
請求項9のウエハ研磨装置は、回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、前記定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に透明窓材を有する窓が設けられ、該窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定するモニタ装置を有することを特徴とする。
請求項10のウエハ研磨装置は、回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、前記定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に透明窓材を有する窓が設けられ、前記透明窓材及びウエハの間に形成される研磨液の膜を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定するモニタ装置を有することを特徴とする。
請求項11のウエハ研磨装置は、回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、前記定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に透明窓材を有する窓が設けられ、該窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく予め求めておいた研磨終了時の光反射状態の特徴と、研磨中にモニタして得られた光反射状態の特徴が一致した時点を膜の研磨終了点と判定するモニタ装置を有することを特徴とする。
【0011】
請求項12のウエハ研磨装置は、回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、研磨液を供給しながら、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けられた窓であり、前記研磨布から露出して、かつ研磨中にウエハ研磨面と接触しないよう配置された透明窓材を有する窓から、前記透明窓材及びウエハの間に形成される研磨液の膜を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定するモニタ装置を有することを特徴とする。
請求項13のウエハ研磨装置は、回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、前記定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に透明窓材を有する窓が設けられ、該窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定するモニタ装置を有し、該モニタ装置が少なくとも分光反射率測定装置を有することを特徴とする。
請求項14のウエハ研磨装置は、請求項13記載のウエハ研磨装置において、前記モニタ装置は、予め求めておいた研磨終了時の分光反射率特性の特徴と、研磨中にモニタして得られた分光反射率特性の特徴が一致した時点を研磨終了点と判定することを特徴とする。
【0012】
請求項15のウエハ研磨装置は、回転する定盤の研磨布が張り付けられた面に、ウエハ支持板により支持した膜付きウエハを回転させつつ押し付けて研磨するウエハ研磨装置において、前記定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に透明窓材を有する窓が設けられ、該窓を通して、前記定盤及び前記膜付きウエハが共に回転している状態で研磨中のウエハ上の膜面の特定場所の光反射状態をモニタして、途中ウエハの回転を停止させることなく膜の研磨終了点を判定するモニタ装置を有することを特徴とする。
請求項16のウエハ研磨装置は、請求項15記載のウエハ研磨装置において、前記特定場所が前記ウエハの中心部分であることを特徴とする。
【0013】
【作用】
本発明方法において、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けた窓からウエハの研磨面の光の反射状態を見て研磨状態を判定すれば、研磨を中断せずに研磨状態の終点を知ることが出来るので、研磨処理の時間を短くでき、装置も簡単で済む。光の反射状態は、光ケーブルでウエハの研磨面に光を照射してその反射光をビデオカメラに用いられている電荷結合素子(CCD)を用いた撮像装置で取り、これをブラウン管などの撮像表示装置で表示せしめ、撮像表示装置に現れた干渉縞により厚さを判断する。膜厚の場合、2μm以下では旧型の蛍光灯や白熱灯で縞が見え、1μm以下では白色灯では虹色の縞が見える。
【0014】
又、光ケーブルでウエハの研磨面に光を照射してその反射光を分光反射率測定装置に入れ、特定の波長のピークにより所望の厚さになったことを知る。この研磨状態の判定は、研磨中に行っても、研磨を一時停止して行ってもよい。一時停止しても前記の従来の方法よりも研磨終点までの時間は極めて小さくできる。
【0015】
本発明の装置において、透明窓材とウエハとの間にできる研磨液の膜を通してウエハの研磨面に照射した光の反射光を観察あるいは評価するのであるが、研磨液は液中に微粒子が懸濁したものであり、光を散乱する性質をもっているので、透明窓材の表面とウエハの研磨面との間の間隔が小さい方が観察あるいは評価に都合がよい。
【0016】
定盤の中心と周縁との間の研磨布張り付け面に半径方向に延長した溝を設けるのは、研磨布にだけ研磨布窓を設けたのでは、研磨液に空気が混じる恐れがあり、空気が混じると観察が困難となるので、研磨液を十分保持できるようにし、空気が混じらないようにするためである。溝に研磨液を十分保持させるため、この溝や研磨布窓は研磨加工に寄与しない領域となるので、ウエハ面内の加工量分布を乱さない形を選ぶ必要があり、定盤の中心から周辺にウエハの研磨面が同一時間で通過するように、定盤の中心から放射状に伸びる近接した2本の直線に囲まれるようにするのがよい。
【0017】
このような形状とすれば、研磨中にウエハが圧縮荷重を受けて圧縮されている研磨布上から圧縮されていない研磨布の部分に乗り上げる時に、研磨布窓に引っ掛かったりしないで、研磨布窓よりくぼみを乗り越えて滑らかに研磨布に乗り上げることができる。
【0018】
透明窓材の溝中における位置及び形状は任意である。観察または測定をウエハの中心で代表させて良い場合には、透明窓材の位置をウエハの回転中心の下に位置させてもよい。
【0019】
アルミニウムのような光の透過しない材料で定盤が作られている時は上記のように、定盤に貫通孔を設けて研磨液が漏洩しないように透明窓材で貫通孔を閉じて光を通過させるようにするが、透明ガラスのような光の通過する材料で定盤が作られているときは、貫通孔や透明窓材を必要としない。しかし、ウエハの研磨面と、溝底との間隔を小さくするために、光を透過させる部分だけ溝底を高くするのがよい。
【0020】
光をウエハの研磨面に照射しその反射光を受けるプローブは、研磨を停止して観察又は評価を行う場合は問題はないが、研磨中に観察又は評価を行う場合、定盤の光通過窓は回転しており、ウエハも自転しているので、ウエハの特定場所を正確に観察又は評価するのに時間を必要とするときは、ウエハの自転速度と同じ速度でプローブを光通過窓と同じ回転路において往復運動させればよい。
【0021】
分光反射率測定装置で膜厚の評価を行う場合には、測定毎に膜厚を計算で求めることが出来るので、研磨の終点を正確に決定できる。研磨中に膜厚計算を行わず、膜が目標の厚さになったときの分光反射率を予め計算で求めておいて、測定した分光反射率の特徴が計算と一致した時点で研磨を終了してもよい。
【0022】
【実施例】
図1、図2に示した実施例について説明する。定盤1は直径300mm、厚さ10mmのアルミニウム製の円盤で、その中心の片面に定盤1を回転するための軸が固定してある。定盤1の軸を固定した面の反対側の面には、中心から放射状に伸びる近接した2本の直線で囲まれ、中心付近から周縁近くまで伸びた溝2が設けてある。溝2の中心側の幅は5mmで周縁側の幅は15mm、深さ1mmとなっている。溝2の長手方向中央には、直径10mmの貫通孔3が設けられ、溝2の反対側では円錐状に拡大している。貫通孔3の溝2側にはパイレックス透明ガラス製の透明窓材4が嵌め込まれ、研磨液が漏れないようにしてある。
【0023】
定盤1の溝2を有する面には、定盤1と同形の厚さ0.7mmのローデルニッタ社製、商品名suba-500ウレタン含浸ポリエステル不織布からなる研磨布5が張り付けられ、溝2に相当する部分は溝2と同形に切り抜かれて、研磨布窓6が形成されている。透明窓材4は定盤1の表面より約0.5mm突出するが、研磨布5の弾性を考慮しても研磨布5の表面より十分低くなっている。
【0024】
定盤1の溝2の反対側には透明窓材4の回転路に面して研磨するウエハ7の研磨面に光を照射しその反射光を受光するプローブ9が配置されている。プローブ9はピント調節用レンズを内蔵し、光ケーブル10に接続され、その他端は二股に別れ図示していない分光反射率測定装置と測定用光源に接続されている。
【0025】
片面に回転用の軸が固定された直径110mm、厚さ10mmの円盤状のアルミニウム製のウエハ支持板8に、表面に熱酸化膜を形成した2枚のシリコンウエハを、熱酸化膜を接せしめて接着し、一方のウエハを平面研削して厚さ15μmのシリコン膜として直径100mmのSOIウエハを、平面研削加工していない面をワックスで張り付けた。
【0026】
粒径が0.01μm以下のシリカ粉末を含むアルカリ性溶液からなるローデルニッタ社製、商品名NALCO-2350を20倍に希釈した研磨液を定盤1の研磨布5の表面に滴下しつつ、定盤1を毎分50回転させながら、ウエハ支持板8に張り付けたウエハ7を、自転速度毎分40回転で回転させつつ、研磨布5に、回転中心が透明窓材4の上に位置するように、研磨荷重10kgfで押し付けて目標膜厚を1μmにして研磨を開始した。
【0027】
この条件では、透明窓材4の移動線速度は約500mm/秒なので、直径10mmの透明窓材4を通してウエハ7の中心を測定出来る時間は、1回の通過に付き約10m秒である。この時間は、波長範囲680〜800nm、分解能1nmで行う分光反射率測定に対して十分であった。測定の参照基準には、同じ条件に置いたシリコンウエハを用いた。
【0028】
研磨開始時、膜の分光反射率は、シリコンウエハと同一のスペクトルを示したが、研磨の進行に伴い反射率の波長に対する周期的な変動が現れ、徐々にその振幅を増した。反射光強度の個々のピークは相互の間隔を狭めながら短波長側へと移行した。個々のピークの移動により、測定波長範囲内のピークが入れ代わるにつれて、ピークの間隔は次第に広がった。
【0029】
計算によれば、SOIの厚さ1μmのシリコン膜の分光反射率は波長700nmと770nmにピークを持つ。そこで、一つのピークの位置が700nmを下回った時点で次のピークの位置を読み、それが765nm以上であれば研磨を終了するものとし、765nm未満であればその位置を追跡しながら研磨を続行した。
【0030】
このようにして10枚のSOIウエハを研磨した結果、総てのウエハにおいて中心の膜厚は0.98〜1.00μmの範囲に収まっていた。研磨の所要時間は30〜45分の範囲にあった。
【0031】
比較例
実施例と同様の条件で同一のSOIウエハのシリコン膜の研磨を行った。研磨途中での膜厚の測定は次のように観察により行った。1.研磨液の供給を停止し、研磨布に純水をかけ流した後、定盤及びウエハ支持板の回転を停止する。2.ウエハをウエハ支持板ごと取り上げ純水でゆすいで水を切る。3.照明に照らされた面光源にウエハを映して観察する。4.下記の目安で膜厚を観察する。5.a)研磨終了の場合、ウエハ支持板からウエハを外す。b)目標より厚い場合は、研磨を再開、所定時間の後1.へ
【0032】
干渉縞の観察による膜厚判断の目安
ナトリウムランプ照射下で縞がぼんやり見える→8〜10μm以下
〃 はっきり見える→5μm以下
3波長発光型蛍光ランプ照明下で縞が見える →3μm以下
旧型の蛍光ランプや白熱ランプでも見える →2μm以下
白色光下(普通の照明)で虹色を呈する。 →1μm以下
【0033】
正味の研磨時間は30〜40分であったが、ウエハ1枚につき2〜4回研磨を中断して膜厚測定を行ったため、平均の研磨時間としては1時間を要した。膜厚測定の結果を元に10秒単位で研磨終了の時期を決めたが、最終的にウエハ中心の膜厚は0.9〜1.1μmの範囲に分布した。又、研磨終了時期をこれより細かく調節しても制御性が良くなることはなく、従来法の研磨の限界精度と考えられた。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、研磨途中でウエハを定盤から離すことなく研磨中の膜の厚さを知ることができるので、研磨の高精度な制御が効率よくできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明装置の一部断面側面図である。
【図2】
図1の定盤1の一部平面図である。
【符号の説明】
1 定盤
2 溝
3 貫通孔
4 透明窓材
5 研磨布
6 研磨布窓
7 ウエハ
8 ウエハ支持板
9 プローブ
10 光ケーブル
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-07-28 
出願番号 特願平5-217987
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (B24B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 鈴木 充  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 神崎 孝之
鈴木 孝幸
登録日 2002-07-12 
登録番号 特許第3326443号(P3326443)
権利者 株式会社ニコン
発明の名称 ウエハ研磨方法及びその装置  
代理人 古谷 史旺  
代理人 古谷 史旺  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ