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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  A23L
管理番号 1124311
異議申立番号 異議2000-70493  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-06-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-02-03 
確定日 2005-10-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第2932170号「フコイダンを添加した食品」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2932170号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2932170号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)についての出願は、平成8年(1996)12月6日に特許出願され、平成11年5月28日にその特許権の設定登録がなされ、その後、異議申立人 風早芳幸より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成12年9月25日に意見書が提出されたものである。

2.本件発明
本件発明は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「【請求項1】 褐藻から分離精製したフコイダンを食品に添加することを特徴とする食味改良方法。」

3.引用刊行物記載の発明
先の取消理由通知において引用した甲第1号証(WO 97/47208号公報)は、PCT第8条(2)(b)の規定により、特許法第41条第1項の規定による優先権の主張を伴う特許出願の当初明細書であるが、この当初明細書には、以下の(a)ないし(l)の事項が記載されている。
(a)「本発明はフコイダンを構成成分とする、生理的効果にも優れた食品又は飲料に関する。」(1頁4行〜5行)
(b)「本発明の目的は、フコイダン含有の素材を提供し、該素材を利用した、食味が良く且つ健康に有用な生理作用を有する食品及び飲料を提供することにある。」(1頁11行〜12行)
(c)「本発明のフコイダンとしては、純化されたもの及び/又はフコイダン含有物がある。」(2頁18行〜19行)
(d)「本発明の食品又は飲料とは、特に限定はないが、例えば穀類加工品(小麦粉加工品、・・・・・)、油脂加工品(可塑性油脂、・・・・・)、大豆加工品(豆腐類、・・・・・)、食肉加工品(ハム、・・・・・)、・・・・・液体食品(スープ等)、香辛料類等の農産・林産加工品、畜産加工品、水産加工品等が挙げられる。」(3頁下から4行〜4頁18行)
(e)「食品又は飲料の製造においては、任意の工程で、フコイダンを添加しても良いし、食品又は飲料やその原料をフコイダンへ添加し、フコイダンを希釈し、食品又は飲料に含有させても良い。」(4頁下から2行〜5頁1行)
(f)「本発明において、フコイダンとは、分子中にフコース硫酸を含有する多糖及び/又はその分解物であり、特に限定はない。なお褐藻植物由来のフコース含有多糖が通常フコイダン、フコイジン、フカンと通称され、いくつかの分子種があることが知られているが本発明のフコイダンはこれらを包含するものである。」(8頁20行〜23行)
(g)「本発明の食品又は飲料が含有するフコイダンの一例の海藻由来抽出物を製造するに際しては、海藻としては、・・・・・、褐藻類例えばかじめ、あらめ、もずく、ひじき、わかめ、ガゴメ昆布、マ昆布等が用いられ、本発明においては特にフコイダン高含有藻類が適している。」(12頁16行〜20行)
(h)「本発明においては、例えば海藻のカルシウム塩溶液、例えば塩化カルシウム溶液による抽出操作を行い、海藻の塩化カルシウム抽出液を調製する。・・・・・抽出は、50〜130℃の範囲で、10〜180分の範囲で行うのが好ましい。抽出条件としては、抽出液中のアルギン類が低減され、フコイダンが効率よく抽出される条件であればよい。海藻のカルシウム塩抽出の終了後、不溶性成分が除去される。不溶性成分の除去方法としては、遠心分離方法、ろ過方法等より選択すればよい。不溶性成分除去液中のカルシウム塩は例えば限外ろ過方法、イオン交換方法等で除去することができる。カルシウム塩の除去液は活性炭処理、イオン交換処理等を行うことによって更にその海藻臭を選択的に除去することができる。」(13頁2行〜13頁16行)
(i)「実施例1 (1)ガゴメ昆布を十分乾燥後、乾燥物20kgを自由粉砕機(奈良機械製作所製)により粉砕した。水道水900リットルに塩化カルシウム二水和物(日本曹達社製)7.3kgを溶解し、次にガゴメ昆布粉砕物20kgを混合した。液温12℃から液温90℃となるまで水蒸気吹き込みにより40分間昇温させ、次いでかくはん下90〜95℃に1時間保温し、次いで冷却し、冷却物1100リットルを得た。次いで固液分離装置(ウエストファリアセパレーター社製CNA型)を用い、冷却物の固液分離を行い、約900リットルの固液分離上清液を調製した。固液分離上清液360リットルをダイセル社製FE10-FC-FUSO382(分画分子量3万)を用い、20リットルまで濃縮した。次いで水道水を20リットル加え、また20リットルまで濃縮するという操作を5回行い、脱塩処理を行い、フコイダンを高含有する海藻由来抽出物溶液25リットルを調製した。・・・・・次いでフコイダン高含有海藻由来抽出溶液に2%活性炭(白鷺:食添用)を添加し30分間処理後、荒ろ過、0.8μmのフィルター処理を行い、フィルター処理ろ液(フコイダンI)を調製した。次にそのろ液の半量を120℃で60分間、加圧加熱処理し、熱処理液(フコイダンII)を調製した。フィルター処理ろ液を凍結乾燥し、その乾燥物10mgを1%Na2CO3 、100mM CaCl2 の10mlにそれぞれ懸濁した。両溶液において乾燥物は完全に溶解し、アルギン類の混入は認められなかった。」(15頁下から3行〜17頁15行)」
(j)「実施例9 アルコール含有飲料を表9に示す配合で、常法に従い調製した。本発明品7は、実施例1のフコイダンIIを用い、製品100ml当りフコイダン35mgを添加した。・・・・・対照は、フコイダン無添加のものを用いた。官能評価は、実施例6と同様にして行い、その結果を表10に示した。表10に示すごとく、本発明品7及び8は対照に比較し、舌ざわり感、味のバランス、味切れ、のどごし感が改善されていることがわかった。特に、本発明品7は酸味がマイルドになり、完熟みかんのような風味に仕上がった。」(41頁下から2行〜43頁下から3)
(k)「実施例12 普通の牛乳の均質牛乳(水分88.6w/v%、タンパク質2.8w/v%、脂肪3.5w/v%、乳糖4.5w/v%、灰分0.8w/v%)を用い、本発明品13は、実施例1のフコイダンIを用い、製品100ml当りフコイダン30mgを添加した。・・・・・・・対照は、無添加のものを用いた。官能評価は、実施例6と同様にして行い、その結果を表14に示した。表14より、本発明品13及び14は対照に比べて、舌ざわり感、味のバランスが改善され、牛乳が舌にまとわりつくような食感、すなわち味切れの悪さに関して、味切れが良くなり、牛乳が飲みやすくなった。」(46頁下から4行〜47頁下から5行)
(l)「また、本発明によりアルギン酸含量の低減又は除去されたフコイダンが提供され、該フコイダンは飲食品の本来の物性を損なわず、食感である舌ざわり感、味切れ、味なれ及びテクスチャー等を改善することができ、また食感面での良好な物性を保持する効果があるので、飲食品の製造において極めて有用である。」(60頁20行〜24行)

上記(a)ないし(l)の記載からみて、甲第1号証には、ガゴメ昆布から上記(i)に記載の方法で調製したフコイダンIIをアルコール含有飲料に添加することにより、無添加に比べて、舌ざわり感、味のバランス、味切れ、のどごし感が改善され、酸味がマイルドになり、完熟みかんのような風味に仕上がったことが、同じくガゴメ昆布から上記(i)に記載の方法で調製したフコイダンIを均質牛乳に添加することにより、無添加に比べて、舌ざわり感、味のバランスが改善され、牛乳が舌にまとわりつくような食感、すなわち味切れの悪さに関して、味切れが良くなり、牛乳が飲みやすくなったことが記載されているものと認める。

上記事項は、甲第1号証の優先権主張の基礎とされた先の出願(特願平8-171666号)の当初明細書である甲第2号証にも記載されている。
したがって、特許法第184条の15の規定により読み換えられた特許法第41条第3項の規定により、甲第2号証に記載の上記「ガゴメ昆布から上記(i)に記載の方法で調製したフコイダンIIをアルコール含有飲料に添加することにより、無添加に比べて、舌ざわり感、味のバランス、味切れ、のどごし感が改善され、酸味がマイルドになり、完熟みかんのような風味に仕上がったことが、同じくガゴメ昆布から上記(i)に記載の方法で調製したフコイダンIを均質牛乳に添加することにより、無添加に比べて、舌ざわり感、味のバランスが改善され、牛乳が舌にまとわりつくような食感、すなわち味切れの悪さに関して、味切れが良くなり、牛乳が飲みやすくなったこと」については、甲第1号証の出願について、PCT第21条に規定する国際公開がされたときに、甲第2号証に係る出願について出願公開がされたものとみなして、特許法第29条の2が適用される。
以下において、甲第2号証に係る特願平8-171666号の当初明細書を「先願明細書」という。

4.対比・判断
本件発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載の「褐藻から分離精製したフコイダンを食品に添加することを特徴とする食味改良方法。」により特定されるものである。
ところで、特許出願に係る発明の要旨認定は、特段の事情がない限り、明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり、特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか、あるいは、一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って、明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎないと解されるところ(最高裁昭和62年(行ツ)第3号平成3年3月8日第2小法廷判決・民集45巻3号123頁参照)、本件の請求項1に記載の「褐藻」、「分離精製」、「フコイダン」及び「食味改良」は、その技術的意義が明確であって、その意味内容を確定的に把握することができる。
したがって、明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載に従って本件発明の要旨を認定すると、本件発明は、「褐藻から分離精製したフコイダンを食品に添加することを特徴とする食味改良方法。」ということになる。
本件の請求項1には、フコイダンの分離精製方法及びフコイダンの精製の程度(純度)について具体的に限定する記載は何もないので、本件発明の「分離精製したフコイダン」は、明細書の発明の詳細な説明の段落【0017】ないし段落【0019】に具体的に記載されている分離精製方法により得られるフコイダンに限定されるものではない。
本件明細書に記載されていない処理方法により得られるフコイダンであっても、その処理がフコイダンを分離精製する処理といえるときは、該フコイダンは本件発明に係る「分離精製したフコイダン」ということになる。
以上の点を踏まえた上で、本件発明と先願明細書に記載の発明を対比、検討する。
先願明細書に記載の「ガゴメ昆布」は、本件発明の「褐藻」に該当し、先願明細書に記載の「アルコール含有飲料」及び「均質牛乳」は、本件発明の「食品」に該当する。
また、本件発明のフコイダンについて、明細書の発明の詳細な説明に「本発明のフコイダンは、・・・・・褐藻特有の硫酸多糖で、水溶性で卵白様の粘性と曳糸性を示す粘質物であり、主な構成糖はLーフコースから成り、エステル結合した硫酸基をもつ酸性多糖である。」と定義しているが、先願明細書にも、「本発明において、フコイダンとは、分子中にフコース硫酸を含有する多糖及び/又はその分解物であり、特に限定はない。なお褐藻植物由来のフコース含有多糖が通常フコイダン、フコイジン、フカンと通称され、いくつかの分子種があることが知られているが本発明のフコイダンはこれらを包含するものである。」(先願明細書の9頁末行〜10頁3行参照。)と記載されていることから、「フコイダン」の技術的に意味するところについては、両者に実質的な差異はない。
そして、先願明細書の実施例1に記載のガゴメ昆布からフコイダンI及びフコイダンIIを調製するまでの各段階での処理(先願明細書の実施例1参照。)は、ガゴメ昆布からフコイダンI及びフコイダンIIを分離精製する処理といえるから、先願明細書の「実施例1に記載の処理方法で調製されたフコイダンIあるいはフコイダンII」は、本件発明に係る「分離精製したフコイダン」に該当する。
してみると、両者は、褐藻から分離精製したフコイダンを食品に添加する点で一致し、本件発明は、該フコイダンを添加することにより食品の食味を改良するのに対して、先願明細書に記載の発明は、該フコイダンを添加することにより食品の舌ざわり感、味のバランス、味切れ、のどごし感を改良し、特にアルコール含有飲料においては、前記の改良に加えて、酸味をマイルドにし、完熟みかんのような風味に仕上げる点で、両者は一応相違する。
上記相違点について検討する。
先願明細書には、フコイダンIIをアルコール含有飲料に添加することにより、無添加に比べて、アルコール含有飲料の舌ざわり感、味のバランス、味切れ、のどごし感が改善され、酸味がマイルドになり、完熟みかんのような風味に仕上がったこと(先願明細書の実施例8参照。)が、同じくフコイダンIを均質牛乳に添加することにより、無添加に比べて、牛乳の舌ざわり感、味のバランスが改善され、牛乳が舌にまとわりつくような食感、すなわち味切れの悪さに関して、味切れが良くなり、牛乳が飲みやすくなったこと(先願明細書の実施例11参照。)がそれぞれ記載されている
ところで、「食味」とは、一般に「食物の味。食べたときの味」(広辞苑 第5版 “しょくみ【食味】”の項参照)と定義される。
また、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明における「食味」について「5食味向上活性 食品の甘みをおさえ、酸味・塩味を際立たせ、味のバランスを取り、風味を向上させる効果がある。」(段落【0009】)及び「この活性の特徴は、・・・・・旨味を付加する作用ではなく、酸味や塩味を際立たせたり、甘みをまろやかな、控えめにする等、味のバランスをとり、香りを引き出し、その結果、食品に独特の風味をあたえる活性であって、風味向上活性と称してもよい活性である。」(段落【0012】)と記載され、本件発明に係る「食味改良」の例として「味のバランスをとる」ことが示されている。
「食味」についての上記定義及び本件明細書の上記記載からみて、先願明細書に記載の「味のバランス・・・・・が改善され」と「酸味がマイルドになり、完熟みかんのような風味に仕上がった」(先願明細書の実施例8参照。)、及び「味のバランスが改善され」(先願明細書の実施例11参照。)は、まさに食味の改良に当たることは明らかであり、先願明細書には、フコイダンIIをアルコール含有飲料に添加することにより、あるいはフコイダンIを均質牛乳に添加することにより、アルコール含有飲料及び牛乳の食味を改良することが記載されているというべきである。
そうすると、上記相違点は、両者の実質的な相違点とはいえない。
この点について、特許権者は、平成12年9月25日付け意見書において、「証拠発明の実施例では、各種の食品にフコイダンを添加した発明品を対照飲食品と比較し、フコイダンを多量に含む食品の食感(舌ざわりのまろやかさ、なめらかさ、味とのバランス、味切れ、のどごし感等)を官能評価(5良1悪)し、その平均値を食感の総合としている。証拠発明の明細書では、『食感』と『味』とは明確に区別して扱われており、実施例の食品飲料に関しては、すべて『食感』について官能評価が行われているが、実施例17の清酒と実施例18のみりん及び発酵調味料については、食感の評価に加え味と香りに関して特別に官能評価がなされ、対照飲食品と比較して向上効果が全くない結果が記載されている。」(意見書4頁10行〜18行)及び「証拠発明の明細書には、本特許発明の食味改良法及びその効果は一切記載されていないことが明白であり、証拠発明のフコイダンは食味向上効果が全くないことも知れるであろう。」(意見書4頁27行〜29行)と主張する。
確かに、特許権者が指摘するとおり、先願明細書の実施例17及び18には、清酒、みりん及び発酵調味料について、フコイダン添加品と対照品(無添加)の味についての官能評価にほとんど差がないことを示す実験結果が示されている。
しかし、実施例17及び18においては、先願明細書の実施例4に記載の分離精製方法により調製されたフコイダン-Uを用いている。
該フコイダン-Uは、フコースを主体としウロン酸を実質的に含まないフコイダン-Fを除いている点で、上記実施例8及び11において用いたフコイダンI及びフコイダンIIとは別異の物である。
また、実施例17及び18に記載の清酒、みりん、発酵調味料と実施例8及び9に記載のアルコール含有飲料及び牛乳とは、成分組成を異にする全く別の飲食物である。
そうだとすると、実施例17及び18に記載の官能評価の結果をもって、直ちに実施例8及び11に記載の実験結果は誤りである、あるいは信憑性に欠けるものであるということはできない。
また、先願明細書の実施例8及び11に記載の官能評価結果が、主として「食感」についてのものであったとしても、実施例8及び11に上記したとおりの記載がある以上、フコイダン添加による食味改良は先願明細書に開示されているとみるべきである。
したがって、特許権者の上記主張は採用しない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本件請求項1に係る発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本件の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。
したがって、本件請求項1に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するので、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-04-23 
出願番号 特願平8-357434
審決分類 P 1 651・ 161- Z (A23L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 冨士 良宏引地 進  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 鵜飼 健
種村 慈樹
登録日 1999-05-28 
登録番号 特許第2932170号(P2932170)
権利者 板谷 喜郎
発明の名称 フコイダンを添加した食品  
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