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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B24B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B24B
審判 全部申し立て 発明同一  B24B
管理番号 1124333
異議申立番号 異議2003-73836  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-08-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-30 
確定日 2005-09-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第3464929号「スラリー供給システム及びこれを備えた研磨システム」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3464929号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第3464929号の請求項1ないし4に係る発明は、平成11年2月12日に特許出願され、平成15年8月22日にその特許権の設定登録がなされ、その後、早苗 道弘より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成17年7月20日に訂正請求がなされたものである。

第2.訂正の適否について
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載について、「・・・・前記スラリーを貯留する複数のタンクと;」の後に「前記複数のタンクの各々に連結され、貯留されたスラリーを取り出すための供給用配管と;前記供給用配管に設けられた供給用ポンプと;」との記載を追加し、「・・・・前記複数のタンクの各々に連結され、・・・・」とあるのを「・・・・前記供給用配管に対して独立した配管系であり、前記複数のタンクの各々に連結され、・・・・」と訂正する。
イ.訂正事項b
特許請求の範囲請求項4乃至6を削除する。
ウ.訂正事項c
特許請求の範囲の請求項7を請求項4に繰り上げるとともに、「・・・・スラリー原液を貯留する複数のタンクと;」の後に「前記複数のタンクの各々に連結され、貯留されたスラリー原液を取り出すための供給用配管と;前記供給用配管に設けられた供給用ポンプと;」との記載を追加し、「・・・・前記複数のタンクの各々に連結され、・・・・」とあるのを「・・・・前記供給用配管に対して独立した配管系であり、前記複数のタンクの各々に連結され、・・・・」と訂正する。
エ.訂正事項d
明細書の段落【0006】の記載について、「・・・・前記スラリーを貯留する複数のタンクと;」の後に「前記複数のタンクの各々に連結され、貯留されたスラリーを取り出すための供給用配管と;前記供給用配管に設けられた供給用ポンプと;」との記載を追加し、「・・・・前記複数のタンクの各々に連結され、・・・・」とあるのを「・・・・前記供給用配管に対して独立した配管系であり、前記複数のタンクの各々に連結され、・・・・」と訂正する。
オ.訂正事項e
明細書の段落【0007】の記載について、「・・・・スラリー原液を貯留する複数のタンクと;」の後に「前記複数のタンクの各々に連結され、貯留されたスラリー原液を取り出すための供給用配管と;前記供給用配管に設けられた供給用ポンプと;」との記載を追加し、「・・・・前記複数のタンクの各々に連結され、・・・・」とあるのを「・・・・前記供給用配管に対して独立した配管系であり、前記複数のタンクの各々に連結され、・・・・」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、「前記複数のタンクの各々に連結され、貯留されたスラリーを取り出すための供給用配管と;前記供給用配管に設けられた供給用ポンプと;」との事項を追加し、発明特定事項であるタンクから供給されるスラリーの供給路に関して限定するとともに、同じく発明特定事項である循環用配管系を「前記供給用配管に対して独立した配管系」と限定しているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、しかも、この限定した事項は、明細書の【請求項4】、段落【0022】〜【0024】及び図2に記載されていたものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項bは、特許請求の範囲の【請求項4】、【請求項5】、【請求項6】を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮目的とした明細書の訂正に該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。。
訂正事項cは、訂正事項bに伴い、訂正前の【請求項7】を【請求項4】に形式的に繰り上げるもので、さらに、「前記複数のタンクの各々に連結され、貯留されたスラリー原液を取り出すための供給用配管と;前記供給用配管に設けられた供給用ポンプと;」との事項を追加し、発明特定事項であるタンクから供給されるスラリーの供給路に関して限定するとともに、同じく発明特定事項である循環用配管系を「前記供給用配管に対して独立した配管系」と限定しているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、しかも、この限定した事項は、明細書の【請求項4】、段落【0022】〜【0024】及び図2に記載されていたものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項dは、前記訂正事項aと整合を図るものであり、訂正事項eは、前記訂正事項cと整合を図るものであるから、それぞれ明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。そして、いずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き及び同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3.特許異議の申立てについての判断
1.申立ての理由の概要
申立人早苗 道弘は、本件発明についての特許に対して、証拠として甲第1号証(特開平9-290368号公報)を提出し、本件発明の特許は特許法第29条第1、2項の規定に違反してなされたものであり、また、証拠として甲第2号証(特願平9-315197(特開平11-126764号)号)を提出し、本件発明の特許は特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、本件発明についての特許を取り消すべき旨主張している。

2.本件発明について
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1乃至4に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
研磨スラリーを所定の場所に対して供給するスラリー供給システムにおいて、
前記スラリーを貯留する複数のタンクと;
前記複数のタンクの各々に連結され、貯留されたスラリーを取り出すための供給用配管と;
前記供給用配管に設けられた供給用ポンプと;
前記供給用配管に対して独立した配管系であり、前記複数のタンクの各々に連結され、当該タンク中において前記スラリーを循環させるために使用される循環用配管系と;
前記循環用配管系の全てに連結された単一の循環用ポンプと;
前記複数の循環用配管系に接続された流路切り替え手段と;
前記複数のタンクの選択された1つにおいて前記スラリーを循環させるように前記流路切り替え手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするスラリー供給システム。
【請求項2】
前記タンクは、スラリー原液を貯留するスラリー原液タンクであることを特徴とする請求項1に記載のスラリー供給システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記複数のタンクの中からスラリー供給のためのタンクを1つ選択し、
当該選択されたタンクに貯留されたスラリーの循環作業を所定時間行った後に、当該タンクからのスラリー供給作業を開始するように前記流路切り替え手段を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のスラリー供給システム。
【請求項4】
スラリーを用いて被加工材を研磨する研磨装置と;
実際に使用されるスラリーより濃度の高いスラリー原液を貯留する複数のタンクと;
前記複数のタンクの各々に連結され、貯留されたスラリー原液を取り出すための供給用配管と;
前記供給用配管に設けられた供給用ポンプと;
前記タンクから供給されるスラリー原液を所定の希釈液と混合して、適正濃度のスラリーを生成するスラリー混合ユニットと;
前記供給用配管に対して独立した配管系であり、前記複数のタンクの各々に連結され、当該タンク内において前記スラリー原液を循環させるために使用される循環用配管系と;
前記循環用配管系の全てに連結された単一の循環用ポンプと;
前記複数の循環用配管系と前記循環用ポンプとの間に接続された流路切り替え手段と;
前記複数のタンクの選択された1つにおいて前記スラリーを循環させるように前記流路切り替え手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする研磨システム。

3.特許法第29条第1,2項について
(1)刊行物1
当審が通知した取り消し理由に引用した甲第1号証(以下。「刊行物1」という。)には、以下のような事項が記載されている。
ア.段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は、各種の精密研磨加工、例えば、半導体デバイス加工におけるウェーハのポリッシング工程で研磨剤として用いるスラリを研磨装置に供給するスラリ供給装置に係り、特に、スラリの混合量を少なくしても、自動的に研磨剤原液、各種添加剤を自動的に調合して必要な量のスラリを安定的に研磨装置に供給することのできるスラリ供給装置に関する。」
イ.段落【0012】
「また、他の好ましい実施形態によれば、複数の前記混合タンクが前記原液定量供給部の下流に並列に設けられ、選択的に切り替えて一の混合タンクが前記スラリ供給部に接続される。」
ウ.段落 【0017】
「研磨剤、薬液、添加剤の各原液の流れについて概略的に説明すると、これらの各原液は、まず、原液タンク1、2、3から、原液定量供給部を構成する計量タンク7、8、9に移送され、予め決められた混合割合に相当する所定量を計量タンク7、8、9にて計量してから、混合タンク10に送られるようになっている。この混合タンク10では、原液を均一に混合して調製する。その後、スラリは、その下流の溜タンク60に送られて、ここで一定温度に調温されながら溜めておかれ、研磨装置100へは、スラリ供給部に組み込まれたスラリ供給ポンプ70によって所定の設定流量で供給される。」
エ.段落【0045】
「・・・・。なお、溜タンク60では、スラリを研磨装置100に送らないときには、スラリを劣化させないために、スラリ供給ポンプ70から吐出されたスラリを戻りライン73を介して溜タンク60に環流させ、スラリの循環をさせておく。」
オ.段落【0051】〜【0052】
「一方、混合タンク10、80からそれぞれスラリを送る管路84、85は、バルブ86を介してスラリ供給ポンプ70の吸込管に接続されており、従って、このバルブ86を切り替えることによって、混合タンク10、80の一方から吸込まれたスラリが研磨装置100に供給される。・・・・スラリ供給装置では、混合タンク10、80のうち、一方のタンクのスラリをスラリ供給ポンプ70から研磨装置100に供給している間に、他方のタンクには計量タンク7、8、9から送った原液を混合してスラリを調製し、一方のタンクの残量が少なくなるまで待機するというように、第1実施形態における混合タンクと溜タンクを一つのタンクで兼用するようしてタンクを利用することが可能となる。その場合も、両タンクとも、二段構造になっているので、混合量については、広い範囲の混合量の変化に対応することが可能となる。」
カ.図3
他の実施例に関する記載である前記エ.の摘記事項を参酌すると、図3には、混合タンク10,80には、スラリ供給ポンプ70から吐出されたスラリを混合タンク10,80に環流させ、スラリを循環させる戻りライン、及び、スラリを循環させる流路を構成するためのバルブ86を含む流路切り替え手段が看取でき、また、バルブ86は切り替えて用いられていることから、混合タンク10を使用する場合は混合タンク80の循環が不可能であり、混合タンク80を使用する場合は混合タンク10の循環が不可能であることは、構造から明らかである。
また、流路切り替え手段を有することから、流路切り替え手段を制御する制御手段を有していることは自明である。

以上のとおりであり、刊行物1には次の「スラリ供給装置」が記載されているものと認める。(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

「スラリを研磨装置に供給するスラリ供給装置において、
前記スラリを貯留する混合タンク10,80と;
前記混合タンク10,80からそれぞれスラリを送る管路84,85と;
前記管路84,85に設けられたスラリ供給ポンプ70と;
前記混合タンク10,80に連結されたスラリ供給ポンプ70から吐出されたスラリを混合タンク10,80に環流させる戻りラインと;
前記混合タンク10,80の一方において前記スラリを循環させるように流路切り替え手段を制御する制御手段とを備えたスラリ供給装置」

(2)対比
本件発明1と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「スラリ」は前者の「研磨スラリー」に相当し、以下同様に、「スラリ供給装置」は「スラリー供給システム」に、「混合タンク10,80」は「複数のタンク」に、「管路84,85」は「供給用配管」に、「スラリ供給ポンプ70」は「供給用ポンプ」に、後者の「混合タンク10,80に連結されたスラリ供給ポンプ70から吐出されたスラリを混合タンク10,80に環流させる戻りライン」は、前者の「前記複数のタンクの各々に連結され、当該タンク中において前記スラリーを循環させるために使用される循環用配管系」に相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>
研磨スラリーを所定の場所に対して供給するスラリー供給システムにおいて、
前記スラリーを貯留する複数のタンクと;
前記複数のタンクの各々に連結され、貯留されたスラリーを取り出すための供給用配管と;
前記供給用配管に設けられた供給用ポンプと;
前記複数のタンクの各々に連結され、当該タンク中において前記スラリーを循環させるために使用される循環用配管系と;
前記複数の循環用配管系に接続された流路切り替え手段と;
前記複数のタンクの選択された1つにおいて前記スラリーを循環させるように前記流路切り替え手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするスラリー供給システム。

<相違点1>
前者は、循環用配管系を供給用配管に対して独立した配管系としたのに対して、後者はそのように特定されていない点。
<相違点2>
前者は、前記循環用配管系の全てに連結された単一の循環用ポンプを有しているのに対して、後者は、そのように特定されていない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
相違点1の循環用配管系を供給用配管に対して独立した配管系とした構成、及び、相違点2の循環用ポンプを供給用ポンプとは別に設けた構成とすることは本件出願前周知とは言えず、本件発明1は当該両構成を有することによりスラリーの循環及び供給を同時的に行えるという顕著な効果を奏するものである。

したがって、本件発明1が刊行物1記載の発明であるとすることができないばかりでなく、刊行物1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

本件発明2〜4は、本件発明1の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから、上記本件発明1で説示したと同様の理由により、刊行物1記載の発明であるとすることができないばかりでなく、刊行物1記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

4.特許法第29条の2について
(1)刊行物2
特許異議申立人が証拠として提出した甲第2号証(以下、「刊行物2」という。)には、以下のような事項が記載されている。
ア.段落【0038】
「図1は、スラリ供給装置の概略構成図である。スラリ供給装置11は、複数(本実施形態では2個)の混合タンク12a,12bを備える。第1,第2混合タンク12a,12bは、同一形状に形成されている。また、第1,第2混合タンク12a,12bは、同一の役割、即ち、第1,第2原液タンク13,14から供給される原液を希釈・混合して生成した薬液としてのスラリを蓄えるとともに循環させるために設けられている。」
イ.段落【0039】
「・・・・。そして、スラリ供給装置11は、生成したスラリ17を、CMP装置18a,18bに供給する。」
ウ.段落【0068】
「第1,第2混合タンク12a,12bには、共通に設けられたメイン循環配管31が接続されている。生成されたスラリ17は、各混合タンク12a,12bとメイン循環配管31との間にそれぞれ設けられた第1,第2ポンプ32a,32bによって、各混合タンク12a,12bからメイン循環配管31を介して循環される。この循環は、液だまりを無くしてスラリ17が凝固するのを防ぐ。」
エ.段落【0069】
「メイン配管31には各CMP装置18a,18bにスラリ17を供給するための分岐管105a,105bが接続されている。各分岐管105a,105bは、CMP装置18a,18bに備えられたノズルに接続されている。各分岐管105a,105bにはそれぞれ供給弁33a,33bが設けられている。循環されるスラリ17は、供給弁33a,33bの操作によりメイン循環配管31から分岐管105a,105bを介して各CMP装置18a,18bに供給される。」
オ.段落【0071】〜【0072】
「また、スラリ供給装置11には、第1,第2混合タンク12a,12bに対応してメイン循環配管31と並列に第1,第2サブ循環配管34a,34bが設けられている。第1,第2サブ循環配管34a,34bと第1,第2ポンプ32a,32bとの間には切換弁35a,35bが設けられ、第1,第2サブ循環配管34a,34bと第1,第2混合タンク12a,12bとの間には切換弁36a,36bが設けられている。
【0072】切換弁35a,35bは、スラリ17の循環経路をメイン循環配管31又は第1,第2サブ循環配管34a,34bに切り換えるために設けられている。即ち、スラリ供給装置11は、第1,第2混合タンク12a,12bにて生成したスラリ17を、切換弁35a〜36bを切り換え操作することにより、各タンク12a,12bからメイン循環配管31又は第1,第2サブ循環配管34a,34bを介して循環させる。」
カ.段落【0084】
「・・・・。更に、制御装置41は、第1,第2混合タンク12a,12bのスラリ17の残量が所定量となると供給弁33a,33bを開閉操作して第1,第2混合タンク12a,12bを切り換える。これにより、制御装置41は、各CMP装置18a,18bにスラリ17を連続して供給する。」
キ.【0114】〜【0115】
「ステップ53aはスラリ循環処理(スラリ循環手段)であって、制御装置41は、先ず生成したスラリ17を第1サブ循環配管34aを介して循環させる。即ち、制御装置41は、切換弁35a,36aを第1サブ循環配管34a側に切り換え、生成したスラリ17を第1サブ循環配管34aを介して循環させる。これにより、スラリ17の液だまりが無くなって乾燥し難くなると共に、砥粒が沈殿し難くなる。
【0115】次に、制御装置41は、液面センサ30bの検出信号に基づいて、第2混合タンク12b内のスラリの残量が所定量となると、該第2混合タンク12b内のスラリ17をほとんど使い切ったと判断する。そして、制御装置41は、第1混合タンク12aにて生成したスラリ17の循環経路をメイン循環配管31に切り換えるよう切換弁35a〜36bを制御する。これにより、制御装置41は、第1混合タンク12aのスラリ17をメイン循環配管31を介してCMP装置18a,18bに継続的に供給する。」
ク.段落【0146】
「スラリ供給動作において、制御装置41aは、各混合タンクを使用して、搬入される第1,第2原液タンク13,14に蓄えられた原液15,16を各混合タンク12a,12bに設けた液面センサ30a,30bの検出信号に基づいて体積計量して各混合タンク12a,12bに供給する。そして、制御装置41aは、更に純水を各混合タンク12a,12bに供給し、第1,第2原液を希釈・混合してスラリ17を生成する。」
ケ.段落【0152】
「また、本実施形態のスラリ供給装置61に搬入される第1,第2原液タンク13,14には、第1,第2循環配管62a,62bが装着される。各循環配管62a,26bには、第3,第4ポンプ63a,63b、リリーフ弁64a,64b、及び流量制御弁65a,65bが備えられている。第3,第4ポンプ63a,63bは、各原液タンク13,14の原液15,16を第1,第2循環配管62a,62bにて循環させるために設けられている。この循環によって、各原液タンク13,14における原液15,16の沈殿を防止する。」

以上のとおりであるので、刊行物2には次の「スラリ供給装置」が記載されているものと認める。(以下、「刊行物2記載の発明」という。)

「スラリーをCMP装置18a,18bに対して供給するスラリ供給装置であって
前記スラリを貯留する第1,第2混合タンク12a,12bと;
前記第1,第2混合タンク12a,12bには、共通に設けられたメイン循環配管31が接続され、
前記第1,第2混合タンク12a,12bとメイン循環配管31との間には第1,第2ポンプ32a,32bが設けられ、
前記第1,第2ポンプ32a,32bとメイン循環配管31との間に切替弁35a〜36bが設けられ、
メイン循環配管31には、分岐管105a,105bが接続されており、各分岐管105a,105bには、供給弁33a,33bが設けられているスラリ供給装置」

(2)対比・判断
刊行物2記載の発明には、CMP装置にスラリーを供給するための供給用の管路及びスラリのタンク内における沈殿を防止するための循環を行う循環のための管路は有しているものの、本件発明1を特定する事項である「供給用配管に対して独立した配管系であ・・・・る循環用配管系」、「供給用ポンプ」と「循環用ポンプ」をそれぞれ有し、「循環用ポンプ」が「循環用配管系の全てに連結された単一の循環用ポンプ」である点を備えておらず、当該事項により本件発明1は、スラリーの循環及び供給を同時的に行えるという顕著な効果を奏するものであり、刊行物2記載の発明とは実質的にも同一とは認められない。

本件発明2〜4は、本件発明1の発明を特定する事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当するから、上記本件発明1で説示したと同様の理由により、刊行物2記載の発明と同一であるとすることはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-09-01 
出願番号 特願平11-33712
審決分類 P 1 651・ 161- Y (B24B)
P 1 651・ 121- Y (B24B)
P 1 651・ 113- Y (B24B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 筑波 茂樹  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 佐々木 正章
菅澤 洋二
登録日 2003-08-22 
登録番号 特許第3464929号(P3464929)
権利者 東京エレクトロン株式会社
発明の名称 スラリー供給システム及びこれを備えた研磨システム  
代理人 河野 登夫  

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