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審決分類 審判 判定 審理一般(別表) 属さない(申立て不成立) B65D
管理番号 1124339
判定請求番号 判定2005-60024  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1997-01-28 
種別 判定 
判定請求日 2005-04-14 
確定日 2005-09-30 
事件の表示 上記当事者間の特許第3598146号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号写真、イ号現物、及びイ号物件説明書に示す「持ち手」は、特許第3598146号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、イ号写真、イ号現物、及びイ号物件説明書に示す、被請求人であるコトコ株式会社が製造した、商品名:ソフタッチなる「持ち手」(以下、「イ号物件」という。)が、特許第3598146号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2.本件特許発明
特許第3598146号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、その構成を各構成要件毎に符号を付し分説して記載すると次のとおりである。

(A)金型の型別れ方向を上下方向として射出成型されてなる持ち手であって、
(B)上方を開放したほぼ半円筒形を呈し中央が細長い水平な握り部(2)と、
(C)この握り部の両端をそれぞれ下方へ曲げた下がり部(3)と、
(D)この下がり部の下端に水平に設けた紐乗せ部(4)と、
(E)この紐乗せ部の前記下がり部と離れた位置から上方に立ち上げた紐止め角(5)と、
(F)この紐止め角の前記下がり部に対向する面から迫り出し下面に水平面に対して傾斜した面を有する抜け止め瘤(6)とを備え、
(G)前記抜け止め瘤が型別れに際して無理抜きされて成形される
(H)持ち手。

3.イ号物件
イ号物件に関して、請求人アイキ産業株式会社は、平成17年4月14日付け判定請求書に添付されたイ号写真、イ号現物、甲第5号証(ソフタッチ離型概念図)、甲第6号証(イ号紐止め角及び抜け止め瘤部分の斜視図)を、及び、平成17年8月29日付け口頭審理陳述要領書に添付され、同日行われた口頭審理の場にて補正されたイ号物件説明書等を提出している。
一方、被請求人コトコ株式会社は、平成17年6月23日付け判定請求答弁書に添付されたイ号物件の訂正説明書、及び、平成17年8月29日付け口頭審理陳述要領書に添付されたイ号物件説明書、乙第1号証の1(イ号物件の離型の工程段階毎の写真)、乙第1号証の2(乙第1号証の1の写真の説明書)、乙第2号証(ソフタッチの製造工程を説明する文書)を提出し、請求人が提出したイ号現物及びイ号写真については、被請求人が製造、販売する「持ち手」であることに相違ないと述べる(上記判定請求答弁書第3頁第6〜7行参照)と共に、上記口頭審理の場にて、被請求人の製造に係る「商品名:ソフタッチ」が、請求人が提出した上記補正されたイ号物件説明書に記載された構成を有することに同意するものの、更に、無理抜きを回避するために「駒を備えた」点、及び、紐が外れにくいようにするために、紐止め角を「その先端が下がり部側へ傾くように上方に立ち上げた」点をも構成として有する旨主張し、イ号物件が同構成を有することについて、請求人は争っていない(口頭審理調書第2頁第23〜28行参照)。
ここで、乙第1号証の1、2及び乙第2号証を参酌しつつ、イ号現物をみてみると、イ号現物の製造においては、イ号現物は金型を用いて射出成形することができること、及び、金型の分離方向自体は天地方向を上下方向として見た場合の左右方向となっているが、持ち手の握り部を上、紐乗せ部を下とした場合には、金型は、持ち手の上下方向に分離されることが明らかである。
また、イ号現物及びイ号写真を観察すれば、イ号物件が、上方を開放したほぼ半円筒形を呈し中央が細長い水平な握り部と、この握り部の両端をそれぞれ下方へ曲げた下がり部と、前記握り部の中央と下がり部とはRをなして結合され、この下がり部の下端に、側方視でその内面と外面とが円弧状であり、ほぼ水平に設けた紐乗せ部と、この紐乗せ部の前記下がり部と離れた位置からその先端が下がり部側へ傾くように上方に立ち上げた紐止め角と、この紐止め角の前記下がり部に対向する面から迫り出し下面に水平面に対して傾斜した面を有する抜け止め瘤とを備えていることが把握される。
そして、乙第2号証からは、イ号物件の製造において、前記抜け止め瘤を型から抜くことは、持ち手の握り部を上、紐乗せ部を下とした場合の上下方向に金型を分割し、続いて、抜け止め瘤を駒と共に下方向に移動させ、更に続いて、該抜け止め瘤が駒の一部を乗り越えて抜かれることが把握されるから、イ号物件は、抜け止め瘤を型から抜くことは、金型を上下に分割し、続いて、抜け止め瘤を駒と共に下方向に移動させ、更に続いて、該抜け止め瘤が駒の一部を乗り越えて抜くことができる形状に形成されているものと認められる。
したがって、イ号物件は、「持ち手」という物品の構成として、請求人が提出した上記補正されたイ号物件説明書に記載された構成を有するものであるから、イ号物件は、請求人が提出した上記補正されたイ号物件説明書に記載された構成及び被請求人の上記主張に係る構成からなる次のとおりであると認める。

(a)持ち手の握り部を上、紐乗せ部を下とした場合に、持ち手の上下方向に分離される金型を用いて射出成型することができる持ち手であって
(b)上方を開放したほぼ半円筒形を呈し中央が細長い水平な握り部と、
(c)この握り部の両端をそれぞれ下方へ曲げた下がり部と、
(i)前記握り部の中央と下がり部とはRをなして結合され、
(d)この下がり部の下端に、側方視でその内面と外面とが円弧状であり、ほぼ水平に設けた紐乗せ部と、
(e)この紐乗せ部の前記下がり部と離れた位置からその先端が下がり部側へ傾くように上方に立ち上げた紐止め角と、
(f)この紐止め角の前記下がり部に対向する面から迫り出し下面に水平面に対して傾斜した面を有する抜け止め瘤とを備え、
(g)前記抜け止め瘤を型から抜くことは、金型を上下に分割し、続いて、抜け止め瘤を駒と共に下方向に移動させ、更に続いて、該抜け止め瘤が駒の一部を乗り越えて抜くことができる形状に形成された、
(h)コトコ株式会社が製造した、商品名:ソフタッチなる持ち手。

4.対比、判断
イ号物件の構成が本件特許発明の各構成要件を充足するか否かについて検討する。
(1)構成要件(A)について
本件特許発明の構成要件(A)は、「金型の型別れ方向を上下方向として射出成型されてなる持ち手」である。
一方、イ号物件における構成(a)は、持ち手が、持ち手の握り部を上、紐乗せ部を下とした場合に、持ち手の上下方向に分離される金型を用いて射出成型することができるものであることを示しているが、本件特許発明の構成要件(A)における「金型の型別れ方向を上下方向として」という記載に関しては、本件特許明細書に、「・・・本発明を実施例に基づいて説明する。図1は実施例の斜視図、図2は実施例を上下方向に組み重ねた斜視図である。なお、文中の上下関係は、持ち手を上(図1、A方向を上)、紐乗せ部を下(図1、B方向を下)にした状態で説明する。・・・」(段落【0015】)、「・・・型別れ方向を上下方向にすると、パ-ティング面に対する専有面積が小さい(従来に比して50%)ので、より多くの数が1回の成形で生産出来る。・・・」(段落【0016】)等の記載があることからも明らかであるように、「上下方向」とは、請求人が主張する(口頭審理調書第1頁第21〜24行)如く、持ち手の握り部を上、紐乗せ部を下とした場合に、金型が別れていく方向を意味しているものと解すべきであるから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(A)を充足する。

(2)構成要件(B)について
本件特許発明の構成要件(B)は、「上方を開放したほぼ半円筒形を呈し中央が細長い水平な握り部(2)」を備えた構成である。
一方、イ号物件は、その構成として、「上方を開放したほぼ半円筒形を呈し中央が細長い水平な握り部」なる構成(b)を備えており、上記構成要件(B)と構成(b)とは、「持ち手」という物品を構成する「握り部」の構造ないし形状を特定する点で、同一の構成と捉えるべきものであるから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(B)を充足する。

(3)構成要件(C)について
本件特許発明の構成要件(C)は、「この握り部の両端をそれぞれ下方へ曲げた下がり部(3)」を備えた構成である。
一方、イ号物件は、その構成として、「この握り部の両端をそれぞれ下方へ曲げた下がり部」なる構成(c)を備えており、上記構成要件(C)と構成(c)とは、「持ち手」という物品を構成する「下がり部」の構造ないし形状を特定する点で、同一の構成と捉えるべきものであり、更に、イ号物件は、握り部と下がり部の結合部分の構造ないし形状について、前記握り部の中央と下がり部とはRをなして結合されること(構成(i))を単に付加的に有するものと解されるから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(C)を充足する。

(4)構成要件(D)について
本件特許発明の構成要件(D)は、「この下がり部の下端に水平に設けた紐乗せ部(4)」を備えた構成である。
一方、イ号物件は、その構成として、「この下がり部の下端に、側方視でその内面と外面とが円弧状であり、ほぼ水平に設けた紐乗せ部」なる構成(d)を備えており、上記構成要件(D)と構成(d)とは、「持ち手」という物品を構成する「紐乗せ部」の構造ないし形状を、下がり部の下端にほぼ水平に設けたことを特定している点で、同一の構成を有すると言うべきであり、更に、上記構成(d)における、紐乗せ部が、側方視でその内面と外面とが円弧状であることは、本件特許発明の構成要件(D)から独立して、付加的に具備される構成であるので、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(D)を充足する。

(5)構成要件(F)について
本件特許発明の構成要件(F)は、「この紐止め角の前記下がり部に対向する面から迫り出し下面に水平面に対して傾斜した面を有する抜け止め瘤(6)」を備えた構成である。
一方、イ号物件は、その構成として、「この紐止め角の前記下がり部に対向する面から迫り出し下面に水平面に対して傾斜した面を有する抜け止め瘤」なる構成(f)を備えており、上記構成要件(F)と構成(f)とは、「持ち手」という物品を構成する「抜け止め瘤」の構造ないし形状を特定する点で、同一の構成と捉えるべきものであるから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(F)を充足する。

(6)構成要件(H)について
本件特許発明の構成要件(H)は、「持ち手」である。
一方、イ号物件の構成(h)も、商品名:ソフタッチなる「持ち手」であるから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(H)を充足する。

以上を整理すると、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(A)、(B)、(C)、(D)、(F)、(H)を充足する。

(7)構成要件(E)及び構成要件(G)について
本件特許発明の構成要件(E)は、「この紐乗せ部の前記下がり部と離れた位置から上方に立ち上げた紐止め角(5)」を備えた構成であり、本件特許発明の構成要件(G)は、「前記抜け止め瘤が型別れに際して無理抜きされて成形される」構成である。
一方、イ号物件において、「この紐乗せ部の前記下がり部と離れた位置からその先端が下がり部側へ傾くように上方に立ち上げた紐止め角」を備える構成(e)は、「持ち手」という物品を構成する紐止め角の構造ないし形状を特定している点で、本件特許発明の構成要件(E)に対応するものであり、また、「前記抜け止め瘤を型から抜くことは、金型を上下に分割し、続いて、抜け止め瘤を駒と共に下方向に移動させ、更に続いて、該抜け止め瘤が駒の一部を乗り越えて抜くことができる形状に形成された」構成(g)は、「持ち手」という物品を構成する抜け止め瘤を型から抜く際の抜かれ方を特定することにより、「持ち手」という物品の構造ないし形状を特定している点で、本件特許発明の構成要件(G)に対応するものである。
そこで、イ号物件が、本件特許発明における構成要件(E)及び(G)を充足するか否かについて更に検討をすすめる。
まず、イ号物件の構成(e)及び構成(g)の技術的意義を検討するに、イ号物件においては、紐が外れにくいようにするために、構成(e)たる「紐乗せ部の前記下がり部と離れた位置からその先端が下がり部側へ傾くように上方に立ち上げた紐止め角」を備えたが故に、構成(g)に言及されるような、型から製品を抜くにあたり、まず、金型を上下に分割し、続いて、抜け止め瘤を駒と共に下方向に移動させなければ、抜け止め瘤を型から抜くことができない形状の「持ち手」となっているものと認められるから、イ号物件は、構成(e)の具備を前提として、構成(g)を具備するものであり、イ号物件において、構成(e)と構成(g)とは一体不可分の構成というべきものである。
一方、本件特許発明は、従来知られた、本件特許明細書に添付された図5に示されるような射出成形による持ち手においては、金型の型別れ方向が横方向(図中前後方向に相当)であり、使用時に手が痛くなり、重量の大きい物には数個重ねて補強できず、保管運搬時には体積を少なくできず、紐に掛け易い堅牢な持ち手を簡単で安価に作ることができなかったという技術課題が存在した(本件明細書段落【0002】及び【0003】参照)との認識の下、請求項1に係る本件発明の各構成を構成要件として備えることにより、金型にスライド部分を作らなくても、金型の型別れ方向を上下方向として抜け止め瘤を無理抜きしてなる射出成型品の持ち手を提供でき、また、パーティング面に対する専有面積を小さくして多数個取りし、安価で提供できる。また、抜け止め瘤の下面に、水平面に対し傾斜した面があると、コア型から離型する時に滑り、無理抜きを容易にする。さらに、持ち手の握り部をほぼ半円筒形にすると、尖った部分がなく、荷重が使用者の手に広く平均して掛かり、この持ち手を上下に組み重ねることを可能にする(本件明細書段落【0005】、【0006】、及び【0017】参照)という効果を奏するものと認められるものの、本件特許明細書には、上記構成(e)たる「紐乗せ部の前記下がり部と離れた位置からその先端が下がり部側へ傾くように上方に立ち上げた紐止め角」、及び、上記構成(g)たる「抜け止め瘤を型から抜くことは、金型を上下に分割し、続いて、抜け止め瘤を駒と共に下方向に移動させ、更に続いて、該抜け止め瘤が駒の一部を乗り越えて抜くことができる形状に形成された」構成を直接開示ないし示唆する記載はないばかりか、持ち手を構成する一部分の形状を特定の形状とするために、金型の一部分を駒等の移動可能な部材とする等の何らかの金型の工夫をするという技術思想自体についても、示唆する記載はない。
これに関し、請求人は、無理抜きとは、弾性変形させることにより、型からアンダーカット部を抜くことであり、本件特許発明が、製品等を型から直接無理抜きすることの他に、金型の一部を構成する駒や突き出しピン等を用いて、一旦、型本体から製品を外して、更に、駒等から製品を無理抜きすることをも包含する旨、及び、イ号物件の持ち手が突き出しにより、弾性変形させられた抜け止め瘤とともに離型されるのであるから、イ号物件の抜け止め瘤は無理抜きされている旨(口頭審理調書第2頁第30行〜第3頁第4行、及び、口頭審理陳述要領書第6頁第19行〜第8頁第2行参照)、甲第3号証及び甲第4号証を示しつつ主張している。
しかしながら、例え、「無理抜き」という概念が、製品等を型から直接無理抜きすることの他に、金型の一部を構成する駒や突き出しピン等を用いて、一旦、型本体から製品を外して、更に、駒等から製品を無理抜きすることをも包含することが、甲第3号証及び甲第4号証等にあるように本願出願時点の技術常識であり、イ号物件における抜け止め瘤が駒から無理抜きされるものであったとしても、既述したように、イ号物件は、上記構成(e)にある紐止め角の形状に合わせて、移動する駒を備えた金型を選択し、構成(g)を備えたものであり、上記構成(e)及び構成(g)は、いわば、本件特許発明がその目的としない別異の目的たる「紐が外れにくいようにする」ことを達成し具現化するための構成というべきであるから、上記請求人の主張は採用できない。
以上のとおり、イ号物件の構成(e)及び(g)は、本件特許発明の構成要件(E)及び(G)とは、技術的意義が異なる構成であるから、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(E)及び構成要件(G)を充足するとはいえない。

5.均等の判断
ここで、更に、請求人、被請求人共に、主張はしていないものの、本件特許発明の構成要件(E)及び(G)について、いわゆる均等論の適用可否について検討する。
最高裁平成6年(オ)第1083号判決(平成6年2月24日)は、特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存在する場合であっても、以下の五つの要件を満たす場合には、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、対象製品等は特許発明の技術的範囲に属するものとするのが相当であると判示している。
「(均等を判断するための五つの要件)
(1)相違部分が特許発明の本質的部分でなく、
(2)相違部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、
(3)右のように置き換えることに、当業者が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、
(4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者が公知技術から出願時に容易に推考できたものでなく、かつ、
(5)対象製品等が、特許発明の出願手続きにおいて、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる等の特段の事情もない。」
さて、本件特許発明の構成要件(G)たる「前記抜け止め瘤が型別れに際して無理抜きされて成形される」点は、構成要件(F)たる「この紐止め角の前記下がり部に対向する面から迫り出し下面に水平面に対して傾斜した面を有する抜け止め瘤(6)とを備え」る点と共に、本件特許発明の審査過程において、公知技術との差違を明確にするべく、平成16年6月21日付け手続補正書で明確にされた点であり、請求人は同日付の意見書の第3頁第33行〜第5頁第5行目で、「引用文献1(注:登録実用新案第3002601号公報)において成形方法に関する記載はありませんが、引用文献1の荷物保持グリップは無理抜きにより成形されることが全く想定されていない・・・上記の根拠により、引用文献1のグリップは係止部を無理抜きにより形成したものではないため金型構造を複雑にせざるを得ず、本願発明のように一度に多くの持ち手を成形できるという効果は奏し得ません。また、このような引用文献1に引用文献2または3の形状を組み合わせたとしても、本願発明の金型の型別れ方向を上下方向として射出成形され抜け止め瘤を無理抜きして形成される持ち手を導き出すことは容易ではありません。」というように、その技術的意義を公知技術との比較において主張していることからも明らかなように、上記構成要件(G)は、上記構成要件(F)と共に、まさに、本件特許発明の本質をなすべき構成要件の一部であると認められるから、上記の均等を判断するための要件(1)を満たさないことになる。
また、本件特許発明における構成要件(E)をイ号物件の構成(e)に置き換えると上述の本件特許発明の目的の一つであり期待する作用効果の一つでもある「持ち手を上下に組み重ねる」ことができなくなると認められるから、上記の均等を判断するための要件(2)も満たさないことになる。
したがって、いわゆる均等論の観点からも、イ号物件は、本件特許発明の構成と均等なものとして本件特許発明の技術的範囲に属するとはいえないことが明らかである。


6.結論
以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
 
別掲
 
判定日 2005-09-20 
出願番号 特願平7-107985
審決分類 P 1 2・ 0- ZB (B65D)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 溝渕 良一
渡邊 豊英
登録日 2004-09-17 
登録番号 特許第3598146号(P3598146)
発明の名称 持ち手  
代理人 福田 伸一  
代理人 福田 武通  
代理人 福田 賢三  

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