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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1124948
審判番号 不服2003-1457  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-23 
確定日 2005-10-13 
事件の表示 平成 8年特許願第118890号「陰極線管」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年11月28日出願公開、特開平 9-306388〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成8年5月14日の出願であって、平成14年12月19日付け(発送日;同年12月24日)で拒絶査定がなされ、これに対して、平成15年1月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月24日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年2月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年2月24日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおり補正された。
「ほぼ矩形状のパネル、このパネルに連設された漏斗状のファンネルおよびこのファンネルの径小端部に連設された円筒状のネックからなる真空外囲器を有し、上記ファンネルのネック側近傍の外側に装着される偏向ヨークの発生する磁界により上記ネック内に配設された電子銃からの電子ビームを上記パネルの長軸および短軸方向に偏向する陰極線管において、
上記ファンネルのネック側近傍の外形が上記ネック側から上記パネル方向に次第に円形から上記長軸および短軸方向以外の方向に最大径をもつ非円形状に変化し、かつ上記最大径の半径をL、この最大半径Lと長軸方向半径との差をΔH、上記最大半径Lと短軸方向半径との差をΔVとし、これらΔHとΔVとの加算量をΔHVとするとき、上記偏向ヨークのパネル側端部において、
0.3≦ΔHV/L≦0.6
の関係に形成されており、 しかも上記偏向ヨークの少なくともパネル側端部を上記ファンネルの形状に合わせた形状とすることを特徴とする陰極線管。」(当審注;下線部は、補正個所を示す。)
上記補正は請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「偏向ヨーク」について、「偏向ヨークの少なくともパネル側端部を上記ファンネルの形状に合わせた形状とする」との限定を付加するものであり、上記補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成15年法律第47号)附則第2条第7項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法(以下、「平成15年改正前特許法」という。)17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において読み替えて準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特公昭48-34349号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
1a.「この発明は・・・低偏向電力で鮮明な画像を再現し、且つ、対角コンバーゼンスの少いすぐれた広偏向角カラー受像管を実現させるものである。以下、この発明の一実施例を図面を用いて説明する。第5図において、外囲器21は水平軸Hと垂直軸Vとの比率が略4:3の長方形状の筒状パネル22と漏斗状フアンネル23とで構成されている。そしてこのフアンネル23の径小端部は円筒状のネツク28で構成されており、このネツク28内には3個の単位電子銃29を水平方向に一直線状に並列した直線形配列三電子銃30が収容されている。・・・ネック28の外径が拡大する部分は三電子銃30より放出される電子ビーム32が水平および垂直方向に偏向される偏向部37で、この偏向部37の外側には偏向装置11が配置される。上記偏向部37の形状は第6A図乃至第6F図に示すように径大部側がパネル22の断面形状と略同じ形状に形成される画面形状に相似した長方形状に形成されており、ネツク28側に近づくに従つて、楕円状を経て円形状に移行する角錐状に形成されている。」(2ページ左欄38行〜右欄26行)
1b.「偏向部が従来のカラー受像管の如く円錐状に形成されていると、特にこの偏向部の径を大きくしない限り電子ビーム32は偏向部内壁にぶつかり、ネツクシヤドウ18を発生する。このネツクシヤドウ18の発生を防止するため、偏向部径を拡大すると偏向電力の増大をまねく。しかしながらカラー受像管の画面の大きさは通常水平軸Hと垂直軸Vとの比率が略4:3の長方形状であり、偏向部における電子ビーム32の拡りは、上記画面と相似の小さな長方形状であり、電子ビーム32が偏向部内壁に最もひつかかり易いのは長方形状の対角部である。従つて、電子ビーム32の偏向が最も大きくなる偏向部37の径大部側が電子ビーム32の拡がりと略同じ形状の長方形状断面に形成されたこのカラー受像管はネツクシヤドウ18の発生を完全に防止することができる。しかも、偏向電力については従来のカラー受像管の偏向部17は円形断面に形成されており、水平および垂直方向に対して余分な偏向磁界を形成させなければならないために、偏向装置11に過剰な電流を流す必要があつたが、電子ビーム32の拡りと相似の断面形状の角錐状に形成された偏向部37は類似の形状に形成された偏向装置41を近接して配置することにより、上記余分の偏向磁界を形成するために必要とした電流分だけ、偏向電流を減少させることが出来るし、亦、仮令上記直線形配列三電子銃30を配置するためネツク28を太く形成しても、上記偏向部37と偏向装置41の併用によつて偏向電力の増加をもたらさないカラー受像とすることが出来る。」(3ページ左欄32行〜右欄18行)

(3)対比・判断
引用刊行物には、上記(2)1a.及び1b.の記載から、以下の発明(以下、「引用刊行物記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「水平軸Hと垂直軸Vとの比率が略4:3の長方形状の筒状パネル22と漏斗状フアンネル23とで構成された外囲器21と、フアンネル23の径小端部は円筒状のネツク28で構成され、このネツク28内に電子銃30が収容され、ネツク28の外径が拡大する部分は電子銃30より放出される電子ビーム32が水平および垂直方向に偏向される偏向部37で、この偏向部37の外側には偏向装置11が配置されているカラー受像管であって、偏向部37の形状は、径大部側がパネル22の断面形状と略同じ形状に形成される画面形状に相似した長方形状に形成され、ネツク28側に近づくに従つて、楕円状を経て円形状に移行する角錐状に形成されており、電子ビーム32の拡りと相似の断面形状の角錐状に形成された偏向部37は類似の形状に形成された偏向装置41を近接して配置するもの。」
本願補正発明(前者)と上記引用刊行物記載の発明(後者)とを対比する。
後者の「水平軸Hと垂直軸Vとの比率が略4:3の長方形状の筒状パネル22」、「外囲器21」、「円筒状のネツク28」、「電子銃30」、「電子ビーム32」、「偏向部37」、「偏向装置11」、「カラー受像管」は、それぞれ、前者の「ほぼ矩形状のパネル」、「真空外囲器」、「円筒状のネック」、「電子銃」、「電子ビーム」、「ファンネルのネック側近傍」、「偏向ヨーク」、「陰極線管」に相当する。
後者の「偏向部37の形状は、径大部側がパネル22の断面形状と略同じ形状に形成される画面形状に相似した長方形状に形成され、ネツク28側に近づくに従つて、楕円状を経て円形状に移行する角錐状に形成され」る点及び「電子ビーム32の拡りと相似の断面形状の角錐状に形成された偏向部37は類似の形状に形成された偏向装置41を近接して配置する」点の構成は、前者の「ファンネルのネック側近傍の外形が上記ネック側から上記パネル方向に次第に円形から上記長軸および短軸方向以外の方向に最大径をもつ非円形状に変化」する点及び「偏向ヨークの少なくともパネル側端部を上記ファンネルの形状に合わせた形状とする」点の構成に相当する。
なお、請求人は、審判請求の理由において、上記の点に関し、「引用文献は、本願発明の特徴とするところの「偏向ヨークが装着されるファンネルのネック側近傍の外形がネック側からパネル方向に次第に円形から長軸および短軸方向以外の方向に最大径をもつ非円形状に変化し、しかも、偏向ヨークの少なくともパネル側端部をファンネルの形状に合わせた形状とする」ことを開示していない。すなわち、引用文献は、第3頁右欄の第9行乃至第14行に、「電子ビームの拡がりと相似の断面形状の角錐状に形成された偏向部は類似の形状に形成された偏向装置を近接して配置することにより偏向電流を減少させることができる」旨を開示している。しかしながら、この引用文献では、偏向ヨークのパネル側端部の形状については何ら示唆されていない。」と主張しているので、その点について検討すると、前者の偏向ヨークのパネル側端部に相当する、後者の偏向部37の径大部側において、偏向部37は長方形状に形成されており、また、偏向装置11は偏向部37と類似の形状に形成され、しかも、偏向部37に近接配置されているのであるから、「偏向ヨークの少なくともパネル側端部がファンネルの形状に合わせた形状」となっていることは明らかであり、請求人の上記主張は採用できない。
また、後者の偏向部37の形状は、径大部側がパネル22の断面形状と略同じ形状に形成される画面形状に相似した長方形状に形成されており、パネル22は水平軸Hと垂直軸Vとの比率が略4:3の長方形状のものであるから、後者において前者で定義されたΔHV/Lを計算すると、略0.6となって、前者の「偏向ヨークのパネル側端部において、0.3≦ΔHV/L≦0.6の関係」を満たしているものである。
後者の「フアンネル23」は「ネツク28」を含めた構成となっている点で、前者のファンネルとは一応相違するが、これに伴う構造上の差異は特に認められないから、この点は、単に部材の呼称上の差異であって、実質的な相違とは認められない。

したがって、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定に違反するものであり、特許法159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年2月24日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成14年10月25日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。
「ほぼ矩形状のパネル、このパネルに連設された漏斗状のファンネルおよびこのファンネルの径小端部に連設された円筒状のネックからなる真空外囲器を有し、上記ファンネルのネック側近傍の外側に装着される偏向ヨークの発生する磁界により上記ネック内に配設された電子銃からの電子ビームを上記パネルの長軸および短軸方向に偏向する陰極線管において、
上記ファンネルのネック側近傍の外形が上記ネック側から上記パネル方向に次第に円形から上記長軸および短軸方向以外の方向に最大径をもつ非円形状に変化し、かつ上記最大径の半径をL、この最大半径Lと長軸方向半径との差をΔH、上記最大半径Lと短軸方向半径との差をΔVとし、これらΔHとΔVとの加算量をΔHVとするとき、上記偏向ヨークのパネル側端部において、
0.3≦ΔHV/L≦0.6
の関係に形成されていることを特徴とする陰極線管。」

4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりのものである。

5.対比・判断
請求項1に係る発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「偏向ヨーク」の限定事項である、「上記偏向ヨークの少なくともパネル側端部を上記ファンネルの形状に合わせた形状とする」との限定を省いたものである。
そうすると、請求項1に係る発明の構成要件を全て含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり引用刊行物記載の発明であるから、請求項1に係る発明も、引用刊行物に記載された発明ということになる。
なお、原査定では、本願発明について特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとしているが、請求人も審判請求書等において本願発明と引用刊行物に記載された発明との対比について言及しており、実質的に新規性についても意見を述べているものであるから、あらためて拒絶理由は通知せず審決することとした。

6.むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明は、引用刊行物に記載された発明であり、特許法29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
そして、請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-10 
結審通知日 2005-08-16 
審決日 2005-08-31 
出願番号 特願平8-118890
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01J)
P 1 8・ 113- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀部 修平  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 杉野 裕幸
山川 雅也
発明の名称 陰極線管  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 村松 貞男  
代理人 橋本 良郎  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  

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