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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200135267 審決 特許
無効200680035 審決 特許
異議200370102 審決 特許
異議199874668 審決 特許
無効200035635 審決 特許

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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) A63F
審判 一部無効 4項(134条6項)独立特許用件 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) A63F
審判 一部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) A63F
審判 一部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) A63F
管理番号 1125228
審判番号 無効2001-35278  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1989-09-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-06-27 
確定日 2005-10-26 
事件の表示 上記当事者間の特許第1855980号発明「スロットマシン」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第1855980号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許第1855980号の請求項1及び2に係る発明は、昭和63年3月18日に特願昭63-65543号として出願され、平成5年10月18日に特公平5-74391号として出願公告がなされ、平成6年7月7日にその設定登録がなされ、その後、平成13年6月27日付けでサミー株式会社より請求項1に係る発明について本件無効審判の請求がなされ、平成13年10月4日付けで被請求人より審判事件答弁書が提出され、平成14年1月10日付けで請求人より弁駁書が提出され、平成15年6月27日付けで職権による無効理由通知がなされ、平成15年9月1日付けで被請求人より意見書及び訂正請求書が提出され、平成15年9月4日付けで特許庁より請求人に審尋がなされ、平成15年10月30日付けで請求人より審尋に対する意見書が提出され、平成15年12月25日付けで職権による訂正拒絶理由通知がなされ、平成16年3月8日付けで被請求人より意見書が提出されたものである。

第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
i.訂正事項a
特許第1855980号明細書における特許請求の範囲の請求項1の
「1 表示窓内にそれぞれ所定の図柄を表示する複数のリールを乱数値に応じて停止するように制御する制御装置を備えたスロットマシンにおいて、前記制御装置は遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、前記乱数値に応じた停止制御を中止するように構成したことを特徴とするスロットマシン。」を、
「1 表示窓内にそれぞれ所定の図柄を表示する複数のリール、
これら各リールの回転を停止させるためのストップボタンスイッチ、
予め定めた範囲で乱数を発生する手段、
前記乱数の範囲を区分し、入賞及び外れを判定するための確率テーブル、
前記乱数をサンプリングする手段、
サンプリングした乱数値が前記確率テーブルのどの区分に属するかを判定する手段、
前記各ストップボタンスイッチをオンしたときの表示位置から4コマ以内の範囲内で、前記判定した乱数値に応じた図柄が表示されるように前記各リールの回転を停止させる停止制御を行う制御装置を備えたスロットマシンにおいて、
前記制御装置は遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、
前記乱数値に応じた停止制御を中止して、この停止制御の中止にかかるリールの回転を前記ストップボタンスイッチの操作タイミングで停止させるように構成したことを特徴とする
スロットマシン。」と訂正する。
ii.訂正事項b
同特許請求の範囲の請求項2の
「2 前記制御装置が複数のリールの一部についてのみ前記停止制御を中止し、他のリールに対しては一定の停止制御を行うことを特徴とする請求項1記載のスロットマシン。」を、
「2 表示窓内にそれぞれ所定の図柄を表示する複数のリール、
これら各リールの回転を停止させるためのストップボタンスイッチ、
予め定めた範囲で乱数を発生する手段、
前記乱数の範囲を区分し、入賞及び外れを判定するための確率テーブル、
前記乱数をサンプリングする手段、
サンプリングした乱数値が前記確率テーブルのどの区分に属するかを判定する手段、
前記各ストップボタンスイッチをオンしたときの表示位置から4コマ以内の範囲内で、前記判定した乱数値に応じた図柄が表示されるように前記各リールの回転を停止させる停止制御を行う制御装置を備えたスロットマシンにおいて、
前記制御装置は遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、
複数のリールの一部についてのみ前記乱数値に応じた停止制御を中止して、この停止制御の中止にかかるリールの回転を前記ストップボタンスイッチの操作タイミングで停止させ、
他のリールに対しては、前記乱数値に応じた停止制御に代えて、前記ストップボタンスイッチをオンしたときの表示位置から4コマ以内の範囲内で、特定の図柄が表示されるように一定の停止制御を行うように構成したことを特徴とする
スロットマシン。」と訂正する。
iii.訂正事項c
同明細書第3頁第3行(公告公報第2欄第15行)に記載の「技術介入者」を「技術介入性」と訂正する。
iv.訂正事項d
同明細書第3頁第12行(公告公報第2欄第24行)に記載の「技術者」を「遊技者」と訂正する。
v.訂正事項e
同明細書第3頁第17行〜第4頁第3行(公告公報第3欄第3〜9行)
に記載の「本発明は、……ものである。」を、
「本発明は、『注:以下、訂正請求の特許請求の範囲の請求項1の記載のとおりであるから具体的記載は省略する。』ものである。」と訂正する。
vi.訂正事項f
同明細書第4頁第15〜18行(公告公報第3欄第21〜24行)に記載の「また、……となる。」を
「また、上記の停止制御を複数のリールの一部についてのみ中止し、他のリールに対しては、前記乱数値に応じた停止制御に代えて、ストップボタンスイッチをオンしたときの表示位置から4コマ以内の範囲内で、特定の図柄が表示されるように一定の停止制御を行うことにより、熟練者にとって更に有利な結果が得られるものとなる。」
と訂正する。
vii.訂正事項g
同明細書第6頁第16行(公告公報第4欄第18行)及び同明細書第6頁第20行(公告公報第4欄第21行)に記載の「確立テーブル」を「確率テーブル」とそれぞれ訂正する。
viii.訂正事項h
同明細書第8頁第17行(公告公報第5欄第16行)に記載の「停止さえる」を「停止させる」と訂正する。
ix.訂正事項i
同明細書第12頁第2行(公告公報第6欄第37行)に記載の「タイミグ」を「タイミング」と訂正する。
x.訂正事項j
同明細書第12頁第19行(公告公報第7欄第10行)に記載の「払り出し」を「払い出し」と訂正する。
xi.訂正事項k
同明細書第15頁第10〜20行(公告公報第8欄第17〜27行)に記載の「以上のように、……得られる。」を
「以上のように、本発明は、『注:以下、訂正請求の特許請求の範囲の請求項1の記載のとおりであるから具体的記載は省略する。』ものであるから、熟練者にとっては、ある範囲でその熟練度に応じた結果が得られてゲームの魅力が向上する一方、熟練者でない者にとっても、ある一定のコイン払い出し率が確保される。これにより、技術介入性と平等性が調和して各遊技者の熟練度に応じたゲームができるという効果が得られる。」と訂正する。
xii.訂正事項l
同明細書第16頁第9行(公告公報第8欄第33〜34行)に記載の「2L,2C,2R……キャビネット」を「2L,2C,2R……表示窓」と訂正する。
xiii.訂正事項m
同明細書第16頁第16行(公告公報第8欄第38行)に記載の「10……CPU」を「11……CPU」と訂正する。

2.独立特許要件の適否について
訂正請求に係る特許第1855980号の請求項2に係る発明(前記第2.1.訂正事項b参照、以下「訂正発明2」という。)は、本件無効審判請求の対象とされていないため、特許法第134条第5項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第3項の規定により、該訂正発明2が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないから、訂正発明2が、特許法第29条第2項の規定による、刊行物である下記の第1引用例乃至第4引用例に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるか否か、以下検討する。
第1引用例:特開昭59-186580号公報
第2引用例:実願昭58-128413号(実開昭60-37380号)
のマイクロフィルム(甲第1号証)
第3引用例:特開昭57-86373号公報
第4引用例:実願昭60-74971号(実開昭61-191081号)
のマイクロフィルム

(1)引用例に記載の発明
(1-1)第1引用例に記載の発明
i.第1引用例〔特開昭59-186580号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「1 スタートレバーの操作により回転駆動される複数のリールと、これらのリールを停止させるリールストップ手段とを有するスロットマシンにおいて、前記リールの回転駆動後に順次発生される乱数列から一つの乱数を特定するサンプリング手段と、前記特定された乱数が確率テーブル中のいかなる群に属するかを比較照合する手段と、前記比較照合の結果を入賞ランク別のリクエスト信号として出力するリクエスト発生手段と、前記リクエスト信号を評価し、前記リールのストップ位置を設定すると共に、前記リールストップ手段を制御するリールストップ制御手段とを備えたことを特徴とするスロットマシン。
2 前記リールを停止させるべく操作されるストップボタンを設け、前記リールストップ制御手段がこのストップボタンの操作信号によつて起動される特許請求の範囲第1項に記載のスロットマシン。」(第1頁左下欄第5行〜右下欄第3行)、
「スロットマシンは基本的には、何種かのシンボルマークが周縁部に配列された例えば3個のリールを高速回転させ、これらが停止された時点で所定の窓位置に現れた各リールのシンボルマークがいかなる組み合わせになっているかで入賞が決定される。特に回転しているリールが、遊技者によって操作されるストップボタンで停止されるスロットマシンでは、遊技者の任意性が大きくなりその操作タイミングに遊技者の技術が加味されることにもなるのでゲームの興趣が高く、一層好まれている。スロットマシンの入賞確率は、リールの外周に描かれているシンボルマークの数及び配列によって決めることができるが、遊技者の技量によってこの確率は変化する。」(第2頁左上欄第12行〜右上欄第5行)、
「第9図は発生、更新される乱数値のサンプリング、ヒットリクエストチェック処理のフローチャートである。このフローチャートは、第4図に示したフローチャートにおける“ヒットリクエスト”処理に該当するもので、ゲーム開始後例えばスタートレバーの操作後の所定のタイミング信号(この時点で各リールは定常回転されることが好ましい。)により、その時点で乱数値RAM80(第8図)に存在する乱数値をそのゲームの乱数値として決定する。こうして決定された乱数値は、第9図のフローチャートに従い、後述する入賞確率テーブルと照合され、大ヒットに該当する数値であれば大ヒットリクエスト信号の発生、中ヒットに該当する数値であれば中ヒットリクエスト信号の発生というように小ヒットまでの判断、処理がなされいずれかのヒットリクエストが発生されるかあるいはヒットリクエストなしかがチェックされることになる。なお、“入賞テーブル選択”の処理は、ゲーム開始に先立ち投入されるメダルが何枚であるかによって有効入賞ライン数が変化するので、この投入メダル数に応じた入賞テーブルを選択することを意味している。」(第5頁左上欄第12行〜左下欄第13行)、
「これまでに述べてきた大、中、小の各ヒットの例としては、大ヒットが15枚のメダル支払いの後ボーナスゲームができるようになるもの、中ヒットが10〜15枚のメダル支払い、小ヒットが2〜5枚程度のメダル支払など適宜設定される。ボーナスゲームとしては、例えばメダル1枚の投入毎に1個のリールのみでゲームを実行し、その1個のリールについてある種のシンボルマークが出ればそのまま15枚のメダル支払いがなされ、このような手順で数回のゲームができるようにすることなどが考えられる。」(第5頁右下欄第8〜18行)、
「このため、まず、ストップボタンの操作後、シンボルマークが例えば4個分移動するまでの間にリールを停止させるようにするものとする。そして、ストップボタンが操作された時点でのリールの位置から、これに後続しているシンボルマーク4個までの計5個のシンボルマークが何であるかをチェックするようにしてある。このようにシンボルマークをチェックして、すでにセットアップされたヒットリクエストに対応するシンボルマークの組み合わせを得るのに必要なシンボルマークがその5個の範囲内にあればそこでリールを停止させることになる。なお、このような処理は3個のリールそれぞれについて行われることは言うまでもない。」(第6頁左下欄第17行〜右下欄第10行)、
「また、P14のストップコントロール処理では、すでに得られているヒットリクエストを得るためのシンボルマークが、ストップボタンの操作時に前記した4個の範囲内に存在するかコードナンバーに基づいて判別し、存在する場合にはさらに何パルスだけモータに送り出せばよいかを算出する。そして、P15の処理により、算出された個数分のパルスを計数しながら、予定個数だけモータに送り出した後、リールをストップさせ、P16の処理によりコードナンバーとシンボルナンバーとの参照を行うことになる。こうして全てのリールについて処理を行う。」(第7頁左上欄第12行〜右上欄第5行)、
「第1リールの処理 まず大ヒットリクエストが発生されている場合には第16図のフローチャートに従って、ストップボタンが操作された時点でのRAM1のエリアR1(第14図)のデータに基づき、シンボルマーク4コマずれの範囲でシンボルマークをチェックし、その範囲内に大ヒットを構成するシンボルマーク要素が存在すれば、それがリール窓に現れるようにモータに送り出されるパルス数を調整する。」(第7頁右下欄第12行〜第8頁左上欄第1行)、
「第2リールの処理 前述のように第1リールが停止された後、第2リールの停止処理は次のとおりである。まず、大ヒットリクエストが発生している場合、第18図のフローチャートに従って行なわれ、該当シンボルの並びが達成できれば、それが実行される。」(第8頁右上欄第19行〜左下欄第5行)、
「すなわち、各ラインについて4コマずれのシンボルコードを参照して作成される。」(第8頁左下欄第18〜20行)、
「第3リールの処理 以上のようにして第2リールストップ処理が終了した後、第3リールの停止処理は、大ヒットリクエストが発生されている場合第23図のフローチャートにより行われる。」(第9頁左上欄第12〜16行)、
「やはり第3リールストップ処理においても4コマずれの範囲内でこれをチェックすることが必要であり、」(第9頁右上欄第7〜9行)、
「以上に述べてきた本発明スロットマシンの基本的な構成ブロックとしては、第26図のように表せる。すなわち、本発明によれば、まずスタートレバーの操作タイミングという任意性のある時点で、乱数値をサンプリングし、このサンプリングされた値を入賞確率テーブルと照合してヒットリクエストを発生させる。そして、このヒットリクエストに応じた入賞が得られるように各リールを制御すると共に、このリール制御にゲーム者のストップボタン操作タイミングという限定条件を加味することによって、ランダム性と遊戯者の技術とをミックスすることができることになる。そしてペイアウト率は前記入賞確率テーブルによってかなりの期待値で一定に保つことができ、またこれを任意に設定し得るものである。従って、ある設定されたペイアウト率を保って、配当の高低に関係なく殆んどの入賞配列を出現させることができ、またスロットマシン自体の特徴が現われるのを防止することができる。」(第10頁左上欄第9行〜右上欄第7行)。
ii.これらの記載及び図面第1乃至26図によれば、第1引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「表示窓内にそれぞれ所定のシンボルマークを表示する複数のリールと、これら各リールの回転を停止させるためのストップボタンと、予め定めた範囲で乱数を発生する手段と、前記乱数の範囲を大、中、小の各ヒットリクエスト及びヒットリクエストなしの入賞ランク別の群に区分し、いかなる群に属するかを判定するための入賞確率テーブルと、前記乱数をサンプリングする手段と、サンプリングした乱数値が前記入賞確率テーブルのどの区分に属するかを判定して入賞ランク別のリクエスト信号として出力する手段と、前記各ストップボタンをオンしたときの表示位置から4コマ以内の範囲内で、、前記判定した乱数値に応じた入賞ランクに属するシンボルマークが表示されるように前記各リールの回転を停止させる停止制御を行う制御装置を備えたスロットマシンにおいて、
前記制御装置は、前記乱数値に応じたリールの停止制御の結果、大ヒットの入賞条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、ボーナスゲームとして、メダル1枚の投入毎に1個のリールのみでゲームを実行し、その1個のリールについてある種のシンボルマークが出ればそのまま15枚のメダル支払いがなされるゲームを数回できるように構成したスロットマシン。」

(1-2)第2引用例に記載の発明
i.第2引用例〔実願昭58-128413号(実開昭60-37380号)のマイクロフィルム〕には、以下の事項が記載されている。
「(1)周縁部にそれぞれ複数種類の絵柄が配列された複数個のリールが回転停止された際に、所定の入賞ライン上に位置する各リールの絵柄の組み合わせによって入賞が決定されるスロットマシンにおいて、前記絵柄が特定の組み合わせになったことを検出する検出手段と、この検出手段からの検出信号によって作動され、前記リールのうち少なくとも1個を用いる副次的ゲームの回数を決定する副次的ゲーム回数決定手段とを備えることを特徴とするスロットマシン。・・・
(3)前記副次的ゲームは、1個のリールを低速で駆動させ、再び同じ絵柄が入賞ラインに並んだときに、所定枚数のコインが排出されるものであることを特徴とする実用新案登録請求の範囲第(1)頃又は第(2)項記載のスロットマシン。」(第1頁第5行〜第2頁第4行)、
「本考案においては,停止された複数個のリールの絵柄が特定の組み合わせになると、いわゆる通常のゲームとは異なる副次的ゲーム(以下、ボーナスゲームという)のチャンスが与えられるようにする。しかもこのボーナスゲームは通常のゲームよりも入賞率が高く設定されると共に、このボーナスゲームの実行可能回数の決定もゲームの一要素に盛り込むことによって、極めてゲーム性に富んだものとなる。」(第2頁第20行〜第3頁第8行)、
「コイン投入後にスタートレバー3が操作されると、全リール4、5、6は各リール毎に設けたパルスモータによって一斉に回転され、それぞれのリール窓7、8、9内で各リールの絵柄は順次変化し、絵柄の識別は不可能となる。これと同時に、コイン投入口1へのコイン投入は禁止されるべく、図示せぬロック用コイルが作動し、コイン投入口1は閉じられ、またスタートレバー3の再操作もロックされる。こうして所定時間経過すると、スロットマシン本体内に設けられた乱数発生器によるランダム値に応じて第1リール4、第2リール5が所定の間隔で順次停止される。同時に第3リール6の任意停止が可能となり、第3リールのストップボタン10の操作許可表示11(例えばランプの点灯)がなされる。」(第4頁第7行〜第5頁第1行)、
「第1及び第2リール4、5の停止後は、第3リール6が低速で回転しており、この状態で第3リールストップボタン10が操作されると第3リール6が直ちに停止する。次に入賞ラインに並んでいる全リール4、5、6の絵柄が決定され、この組合せから入賞が判定されることになる。」(第6頁第2〜7行)、
「入賞がボーナス入賞例えば3個の「ピエロ」が入賞ラインに並ぶと、ボーナスゲームが与えられる。すなわち、ボーナスゲームのミュージュック音と共にボーナスゲーム回数決定用ルーレット20が作動される。このルーレット20としては、それぞれ回数表示坂内部に配列されたランプを順次点灯させるものが利用される。なお、回数表示板は第1図に示すような円環状のものに限定されず、ライン状のものでもよい。そしてボーナスゲーム回数決定のために遊戯者は任意のタイミングでボーナスゲーム用ルーレットのストップボタン21を操作する。そしてその時点にルーレット20に点灯表示された数字(1〜12)の回数がボーナスゲーム可能回数となる。なお、このボーナスゲームの回数決定は、ランダム制御による自動停止によって行なわれるようにしてもよい。」(第6頁第19行〜第7頁第15行)、
「こうしてボーナスゲームの回数が決定されると、スタートレバー3の再操作ロックが解除され、スタートレバー3が操作されると、第3リール6のみが低速で回転し、同時にコイン投入口1が開放される。ボーナスゲームとしては、1枚のメダル投入に対し、第3リール6に「ピエロ」 が現れるボーナスゲーム入賞となる。第3リールのストップボタン10が操作されると、第3リール6が停止され、ボーナスゲームの入賞判定がなされることになり、入賞があればコイン払い出しの後、入賞がなければそのまま次回のボーナスゲームが続行可能となる。こうしてボーナスゲームは前述した回数だけ行うことができ、予定回数行った後に、通常ゲームの初期状態ヘとリセットされてその回のゲーム終了となる。なお、ボーナスゲームの回数消化は、ルーレット20の回転表示板において1回づつ低次の数値表示へと移行表示される。」(第7頁第16行〜第8頁第13行)、
「乱数発生部34は、2個の乱数値をサンプリングし、この乱数値に応じてモータ制御部25を制御する。すなわち、パルスモータ31の始動後約2秒経過すると、乱数発生部34からサンプリングした乱数値に応じてパルスモータ31を停止させる。更に、約1.5秒経過すると、もう1つの乱数値に応じてパルスモータ32が停止する。このようにして第1及び第2リール3、4が順次停止する。前記第2リール4の停止と同時に、モータ制御部26は、パルスモータ33の回転を低速(高速時の1/8)に切り換える。このパルスモータ33が低速回転になると、第1図に示すストップボタン操作許可表示11が点灯する。遊戯者は、第3リール5の絵柄を見ながら、入賞絵柄の配列が完成されるように、ストップボタン10を押す。このストップボタン10が押されると、モータ制御部28は周波数の低いパルスをモータ駆動回路30へ送るのを停止する。この結果、第3リール5の回転が停止する。」(第9頁第10行〜第10頁第9行)、
「入賞判定部44は、「ピエロ」が横一列に並んだことを検知した場合は、前述したように最高の15枚のコインを払い戻すとともに、ボーナスゲーム開始信号をボーナスゲーム回数決定部50に送る。このボーナスゲーム回数決定部50は、ランプ駆動回路51に接続した複数のランプ52a,52b・・・52nを順次点減させ、ランプ光によるルーレット20を作動させる。遊戯者は、適当なタイミングで、ストップボタン21を押せば、ルーレット20の作動が停止する。この時には、ルーレット20に描かれている数字のうちいずれか1つがランプによって照明されている。このルーレット20で決定されたゲーム回数は、ボーナスゲーム制御部53に記憶される。」(第11頁第17行〜第12頁第10行)、
「前述したように、第3リール5が低速回転してからコイン1枚を入れてボーナスゲームを開始する。第3リール5の回転中にストップボタン10を押せば第3リール5の回転が停止する。この第3リール5が停止した時に、入賞ラインに再び「ピエロ」が現れると、ボーナスゲーム入賞判定部54はコイン排出制御部45を作動させて、15枚のコインを払い戻す。前記ボーナスゲームの回数は、カウンタ55でカウントされ、予め与えられた回数に達すると、ボーナスゲームが終了し、通常のゲームに戻る。」(第12頁第11行〜第13頁第1行)。
ii.これらの記載及び図面第1乃至4図によれば、第2引用例には、以下の発明が記載されている。
「表示窓内にそれぞれ所定の絵柄を表示する3個のリール4,5,6と、第3リール6の回転を停止させるためのストップボタン10と、予め定めた範囲で乱数を発生して前記乱数をサンプリングする乱数発生部34と、通常ゲームにおいては、第1、第2リールの2個のリール4,5を前記サンプリングした乱数値に応じて自動停止するとともに、第3リール6をストップボタンの操作タイミングで任意停止できるように制御する制御装置を備えたスロットマシンにおいて、
前記制御装置は前記通常ゲームの遊技中、回転停止された際に表示窓内に特定の組み合わせの絵柄が表示されるという特定の条件が達成されると所定のゲーム回数分、乱数値に応じて第1、第2リールを自動停止する前記通常ゲームを中止して、入賞率が高く設定される副次的ゲームとしてのボーナスゲームに移行して、該ボーナスゲームにおいては、第1リール4、第2リール5は前記特定の組み合わせの絵柄が表示された停止状態のままで、第3リール6の回転を低速回転をもって再開し、その後に第3リール6の回転をストップボタン10の操作タイミングで任意停止したときに前記特定の絵柄が表示されると入賞となるように構成したスロットマシン。」

(1-3)第3引用例に記載の発明
i.第3引用例〔特開昭57-86373号公報〕には、以下の事項が記載されている。
「表面にそれぞれ数種のシンボルを付した複数個の回転部材をスタート操作部の作動に応じて回転させるとともに個々のストップ操作部の作動によって前記複数個の回転部材の回転を停止させ、該停止時における回転部材のシンボルの組合せに応じて賞品を排出する組合せゲーム機において、シンボル停止位置における前記各回転部材に付されたシンボルの種類を検出して、これに対応したシンボルデータ信号を発生させる位置検出器と、ストップ操作部の作動に応じてストツプ信号を発するストップ信号発生回路と、ストップ操作部の作動とは無関係に遅延制御信号を発する遅延制御信号発生回路と、遅延制御信号により制御され、かつ前記ストップ信号による回転部材の停止動作をランダムに遅延させる第1の遅延回路と、遅延制御信号により制御され、該遅延制御信号を入力したときには、各位置検出器からのシンボルデータ信号を比較して、それらの組合せが特定の組合せとなっているときには回転部材の停止動作を遅延させる第2の遅延回路と、を設けたことを特徴とする組合せゲーム機。」(第1頁左下欄第5行〜右下欄第9行)、
「本発明は組合せゲーム機、特に回転式組合せゲーム機に関するものである。」(第1頁右下欄第11〜12行)、
「従来より、表面にそれぞれ数種のシンボルを付した複数個の回転部材をスタート操作部の作動に応じて回転させ、個々のストップ操作部の作動によって前記複数個の回転部材の回転を直ちに停止させ、停止時における回転部材のシンボルの組合せに応じて賞品メダルを排出する組合せゲーム機が知られており、回転部材としては同軸に回転するリール状のものや、互いに平行な軸の回りに回転する回転円板状のものなどが用いられている。このような組合せゲーム機では、遊技者がストップ操作部の操作に熟練すると、ストップ操作釦をタイミングよく押すことによりシンボルの組合せをかなり正確に行なうことが出来るようになるので、遊技が単調化するとともに特定の組合せゲーム機からのみ極めて多量の賞品メダルが排出されることとなる。ところで、このような組合せゲーム機を多数設置する遊技場では、その総賞品排出量を経営上の理由から制限することが一般であるので、多数の遊技者に楽しんでもらうためには特定者のみが特に多量の賞品を獲得することは望ましくない。」(第1頁右下欄第13行〜第2頁左上欄第14行)、
「本発明は、これらの点に鑑み、なるべく多くの遊技者にゲームを楽しんでもらうために、ストップ操作部による回転部材の停止タイミングを種々の状態で遅延させることにより、遊技の単調化を防ぎ、また、特定の組合せゲーム機から極めて多量の賞品メダルが排出される確率を減らし、多くの遊技者にゲームを楽しんでもらえるような組合せゲーム機を提供することを目的とする。」(第2頁左上欄第15行〜右上欄第3行)、
「回転円板2はスタート操作部のスタート操作釦6の作動により回転し、各回転円板2,2,2をそれぞれ別個に停止するためのストップ操作部のストップ操作釦7,8,9の作動により停止される。賞品メダルの排出量は窓4に現われるシンボル3の組合せによって決定され、メダル受け皿10に排出される。」(第2頁右上欄第14〜20行)、
「第3図は、ストップ操作部の操作による回転円板2の停止タイミングを種々の状態で遅延させる回路のブロック図である。このような回路は各回転円板の機構ごとに設けられているものである。以下、そのうちの一回路についてのみ説明を行なうが、他の回路についても、その構成、作用は全く同じである。」(第3頁左上欄第18行〜右上欄第4行)、
「第3図中、Cで示される遅延制御信号は、定期的に、または必要に応じて遅延制御信号発生回路で発生されるくり返しパルス信号であり、波形整形回路30に入力される。」(第3頁右上欄第20行〜左下欄第3行)、
「点線33で囲まれた部分は、遅延制御信号により制御され、かつ、ストップ信号による回転部材の停止動作をランダムに遅延させる第1の遅延回路33である。」(第3頁左下欄第11〜14行)、
「今、遅延制御信号が発生されていない状態では、シフトレジスター27の入力端子bにはクロックパルス信号が入力されていないので該シフトレジスター27はカウントを行っておらず、そのセットデータは零である。したがって、シフトレジスター27の入力端子aにアンドゲート26から“H”レベルのストップ信号が入力されると零のセットデータが減算回路35の入力端子aに与えられることになる。」(第4頁右下欄第8〜17行)、
「このように遅延制御信号が発生されていない状態では、遊技者がストップ操作釦を押すと直ちにストップソレノイド23が駆動されて回転円板2は停止される。」(第5頁左上欄第8〜11行)、
「次に遅延制御信号が発生されている状態でストップ操作釦が押された場合について述べる。まず、第1の遅延回路の動作について述べる。アンドゲート31は、その二つの入力端子a,bが共に“H”のとき“H”を出力する回路であるので、パルス状の遅延制御信号が波形整形回路30を介してアンドゲート31に加えられると、該遅延制御信号と発信回路34からのパルス信号とが重畳された部分の信号がクロックパルス信号としてアンドゲート31から出力される(なお、遅延制御信号のパルス巾は発信回路34のパルス信号のパルス巾より大きく設定されている。)。このクロックパルス信号はシフトレジスター27の入力端子bに入力されるので、シフトレジスター27はこのクロックパス信号を0から255の間でくり返しカウントすることになる。さて、シフトレジスター27の入力端子aにアンドゲート26を介してストップ信号が入力されると、その時のセットデータが減算回路35に与えられる。このセットデータの値はストップ信号が与えられるタイミングで決まる0から255の間のランダムな数である。減算回路35ではこのセットデータをアンドゲート31から受けたクロックパルス信号により一つづつ減算してゆき、減算値が零となった時にその出力端子cに出力信号を出すが、その減算にかかる時間は、セットデータが0から255の間のランダムな数であること、またクロックパルス信号のパルス数も遅延制御信号と発振回路34の出力信号との関係で決まるランダムなものであることから、ランダムな時間となる。したがって、ストップ信号がアンドゲート26に入力されてから減算回路35の出力端子cに出力されるまでの時間は、減算回路35でセットデータを減算するに必要なあるランダムな時間だけ遅れることになる。これが第1の遅延動作である。」(第5頁左上欄第12行〜左下欄第7行)、
「このように本発明は、遅延制御信号を定期的に、または必要に応じて発することにより、組合せゲーム機においてストップ操作釦を押してから回転部材が停止するまでの時間を種々の状態で遅延させることができ、これにより遊技者がストップ操作部の操作に熟練して期待する位置に正確に回転部材を止めてしまうことにより起きるゲームの単調化や、特定の組合せゲーム機から極めて多量の賞品メダルが排出されることなどを防ぐことができる。」(第6頁右上欄第13行〜左下欄第2行)。
ii.これらの記載及び図面第1乃至3図によれば、第3引用例には、以下の発明が記載されている。
「表示窓内にそれぞれ所定のシンボルを表示する複数のリール状又は円板状の回転部材2、これら各回転部材2の回転を停止させるためのストップ操作釦7,8,9、遅延制御信号が発生されていない状態ではセットデータとして0を出力し、遅延制御信号が発生されている状態ではセットデータとして予め定めた0〜255の範囲でランダム数を出力するシフトレジスター27、ストップ信号が入力されるとシフトレジスター27からその時のセットデータが与えられる減算回路35、前記各ストップ操作釦7,8,9をオンしたときのストップ信号に応じて前記減算回路35に与えられるセットデータの値で決まる時間で前記各回転部材2の回転を停止させる停止制御を行う制御装置を備えた回転式組合せゲーム機において、前記制御装置は、遅延制御信号が発生されていない状態では前記ストップ操作釦7,8,9をオンしたときのストップ信号に応じて前記各回転部材2を直ちに停止させ、また、定期的にまたは必要に応じて遅延制御信号が発生されている状態では前記ストップ操作釦7,8,9をオンしたときのストップ信号を前記ランダム数値に応じた時間だけ遅延させて前記各回転部材2を遅延停止させるように構成した回転式組合せゲーム機。」

(1-4)第4引用例に記載の発明
第4引用例〔実願昭60-74971号(実開昭61-191081号)のマイクロフィルム〕には、以下の発明が記載されている。
「表示窓内にそれぞれ所定のシンボルを表示する複数のリール4〜6と、これら各リールの回転を停止させるためのストップボタン11〜13と、予め定めた範囲で乱数を発生する乱数発生回路35と、前記乱数の範囲を区分し、特定の入賞、それ以外の入賞及び外れを判定するためのROM39と、前記乱数をサンプリングする乱数値サンプリング回路36と、サンプリングした乱数値が前記ROM39の特定の入賞の範囲内に属するかを判定してリクエスト信号を出力するリクエスト信号発生回路38と、前記各ストップボタン11〜13をオンした時点のシンボルから3〜4個ずれたシンボルの範囲内に前記判定した乱数値に応じた特定の入賞シンボルがあるときには、前記判定した乱数値に応じた特定の入賞シンボルが表示されるように前記各リールの回転を停止させる停止制御を行う制御装置を備えたスロットマシンにおいて、
前記制御装置は遊技中、シンボルの組み合わせが特定の入賞となった場合には遊技者に有利なボーナスゲームに移行して、該ボーナスゲームにおいては1個のリールだけで合計12回のゲーム回数分、入賞が争われるように構成したスロットマシン。」

2.訂正発明2と引用発明〔第1引用例に記載の発明〕との対比検討
(1)訂正発明2と引用発明との対比
i.訂正発明2と引用発明とを対比すると、両者は、いずれもスロットマシンの発明であって、引用発明における「シンボルマーク」、「ストップボタン」、「入賞確率テーブル」は、訂正発明2における「図柄」、「ストップボタンスイッチ」、「確率テーブル」に相当し、引用発明における「前記各ストップボタンをオンしたときの表示位置から4コマ以内の範囲内で、前記判定した乱数値に応じた入賞ランクに属するシンボルマークが表示されるように前記各リールの回転を停止させる停止制御を行う」構成は、通常ゲームの形態として、訂正発明2における「おいて書き」前の構成(以下、該構成によるゲームを「乱数値ゲーム」という。)に相当する。
さらに、引用発明における「前記乱数値に応じたリールの停止制御の結果、大ヒットの入賞条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、ボーナスゲームとして、メダル1枚の投入毎に1個のリールのみでゲームを実行し、その1個のリールについてある種のシンボルマークが出ればそのまま15枚のメダル支払いがなされるゲームを数回できるように構成した」ことは、訂正発明2における「遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、複数のリールの一部についてのみ前記乱数値に応じた停止制御を中止して、この停止制御の中止にかかるリールの回転を前記ストップボタンスイッチの操作タイミングで停止させ、他のリールに対しては、前記乱数値に応じた停止制御に代えて、前記ストップボタンスイッチをオンしたときの表示位置から4コマ以内の範囲内で、特定の図柄が表示されるように一定の停止制御を行うように構成した」ことと対比して、前記通常ゲームとは異なる特別ゲームの形態として、「遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、特別ゲームとしての停止制御を行うように構成した」ことにおいて一致する。
ii.そうすると、訂正発明2と引用発明は、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違するものと認められる。
一致点.「表示窓内にそれぞれ所定の図柄を表示する複数のリール、
これら各リールの回転を停止させるためのストップボタンスイッチ、
予め定めた範囲で乱数を発生する手段、
前記乱数の範囲を区分し、入賞及び外れを判定するための確率テーブル、
前記乱数をサンプリングする手段、
サンプリングした乱数値が前記確率テーブルのどの区分に属するかを判定する手段、
前記各ストップボタンスイッチをオンしたときの表示位置から4コマ以内の範囲内で、前記判定した乱数値に応じた図柄が表示されるように前記各リールの回転を停止させる停止制御を行う制御装置を備えたスロットマシンにおいて、
前記制御装置は遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、特別ゲームとしての停止制御を行うように構成したスロットマシン。」

相違点A. 遊技中特定の条件が達成された時に予め定めたゲーム回数分行う特別ゲームとして、訂正発明2は、複数のリールの一部についてのみ乱数値に応じた停止制御を中止して、この停止制御の中止にかかるリールの回転をストップボタンスイッチの操作タイミングで停止させ、他のリールに対しては、前記乱数値に応じた停止制御に代えて、前記ストップボタンスイッチをオンしたときの表示位置から4コマ以内の範囲内で、特定の図柄が表示されるように一定の停止制御を行うように構成したのに対し、引用発明は、ボーナスゲームとして、例えばメダル1枚の投入毎に1個のリールのみでゲームを実行し、その1個のリールについてある種のシンボルマークが出ればそのまま15枚のメダル支払いがなされるゲームを数回できるように構成した点。

(2)相違点の検討
i. 引用発明は、要するに、乱数値に応じた停止制御を行う遊技中に特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、遊技者に有利なボーナスゲームを行うスロットマシンの発明であり、該発明は、第4引用例にも開示されるように、当該技術分野において周知の形態のものである。
ii.ところで、第2引用例には、前記(1-2)における摘示事項及び発明の認定によれば、通常ゲームにおいては、第1、第2リールの回転を乱数値に応じて停止制御し、第3リールの回転をストップボタンの操作タイミングで任意停止させるように制御すると共に、遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、通常のゲームとは異なり入賞率が高く設定される副次的ゲームとしてのボーナスゲームに移行して、該ボーナスゲームにおいては、第1、第2リールは停止状態のままで、低速回転する第3リールの回転をストップボタンの操作タイミングで任意停止させるように構成したスロットマシンの発明が開示されており、その技術的意義は、乱数値に応じた停止制御を行うリールを含むことで平等性をもたせた通常ゲームから、特定の条件が達成された時に予め定めたゲーム回数分、乱数値に応じた停止制御を中止して、遊技者が第3リールの絵柄を見ながら入賞絵柄の配列が完成されるようにストップボタンで任意停止させることで遊技者に有利な技術介入性をもたせたボーナスゲームに移行することにあるものと認められる。
そこで、前記相違点に係る特別ゲームの構成について、訂正発明2の構成と第2引用例に記載の発明とを対比すると、第2引用例に記載の発明における「第3リールの回転をストップボタンの操作タイミングで任意停止させる」構成は、訂正発明2における「一部のリールの回転をストップボタンスイッチの操作タイミングで停止させ」る構成に相当し、該リールの回転速度について、訂正発明2は、特に限定することなく通常の高速「回転」になるよう構成したのに対し、第2引用例に記載の発明は、「低速回転」になるように構成した点で相違(以下、「相違点A1」という。)するとともに、訂正発明2は「他のリールに対しては、乱数値に応じた停止制御に代えて、ストップボタンスイッチをオンしたときの表示位置から4コマ以内の範囲内で、特定の図柄が表示されるように一定の停止制御を行うように構成」したのに対し、第2引用例に記載の発明は「第1、第2リールは特定の組み合わせの絵柄が表示される停止のままに」構成した点で相違(以下、「相違点A2」という。)する。
iii.まず、前記相違点A1について検討する。
第2引用例に記載の発明は、ボーナスゲームとして、その実用新案登録請求の範囲の請求項3に示されるように「1個のリールを低速で駆動させ」(第2引用例第1頁第20行〜第2頁第1行)ることを要旨に、「ボーナスゲームは通常のゲームよりも入賞率が高く設定される」(同第3頁第4〜5行)ことを作用目的とするものであり、第3リールが低速回転になると通常ゲームと同様に「遊戯者は、第3リール5の絵柄を見ながら、入賞絵柄の配列が完成されるように、ストップボタン10を押す。」(同第10頁第3〜5行)ものであるから、遊技者は、ボーナスゲームにおいて、第3リールを停止対象に該リールの回転速度が絵柄を認識できる程度の回転速度であることを前提にストップボタンスイッチの操作タイミングで該リールを任意停止させるものである。すなわち、第2引用例に記載の発明は、ボーナスゲームにおいて、通常のゲームよりも入賞率が高く設定されるようにすることが作用目的であるから、ゲーム性を担保できる範囲で第3リールの回転速度を低速に設定するものであって、遊技者が特定の絵柄を任意停止させる操作において技術介入性が導入されているというべきものである。
そして、引用発明を認定した第1引用例には、周知の従来技術として、通常の速度で回転している全てのリールの回転を各ストップボタンの操作タイミングで任意停止できるようにしたスロットマシンが、遊技者の技術が加味されゲームの興趣が高くなるので好まれていることが記載(第1引用例第2頁左上欄第12行〜右上欄第5行)されているところ、遊技者に有利なゲームを提供するというボーナスゲームの周知の課題を熟知する当業者は、前記記載に係るリールの回転を任意停止できるゲーム形態が該ボーナスゲームに合致すると当然理解あるいは想定するものと認められる。
また、第3引用例には、前記第2.2.(1-3)における摘示事項及び発明の認定によれば、周知の従来技術として特定の遊技者(熟練者)に有利なゲームである、ストップボタンスイッチの操作タイミングで全てのリールを停止させるゲームのみを恒常的に行うスロットマシンが記載(第3引用例第1頁右下欄第13〜19行)されているとともに、該従来技術においてゲームの単調化や賞品メダルの偏在化の問題が生じていたので、前記問題を解決することを課題に、前記「ストップボタンスイッチの操作タイミングでリールを停止させるゲーム」に対して「定期的にまたは必要に応じて」、「乱数値に応じてリールを遅延停止させるゲーム」という、訂正発明2の「乱数値ゲーム」に比較し得るゲームを行うように構成したスロットマシンの発明が開示されており、該発明は、特定の遊技者(熟練者)に有利な技術介入性をもたせた「ストップボタンスイッチの操作タイミングでリールを停止させるゲーム」と、平等性をもたせた「乱数値に応じてリールを遅延停止させるゲーム」とを遊技中に組み合わせて行うスロットマシンを示唆するものと認められる。
してみると、第1引用例に記載の従来技術、あるいは、第3引用例に記載の発明には、特定の遊技者(熟練者)が、通常の回転速度(第2引用例に記載の発明でいう高速)で回転するリールの任意の図柄をストップボタンスイッチの操作タイミングで停止できることが示されているから、ボーナスゲームにおいて、第2引用例に記載の発明における第3リールの回転速度をどの程度に設定するかは、対象とする遊技者の技術介入性やゲームの採算性を考慮して適宜決め得る事項といえる。
iv.ついで、前記相違点A2について検討する。
特定の条件が達成された時に訂正発明2及び第2引用例に記載の発明で行なわれるゲームの本質は、訂正発明2の「一部のリール」、あるいは、第2引用例に記載の発明の「第3リール」を対象に、該リールに特定の図柄が表示されるようにストップボタンスイッチの操作タイミングで停止させることで技術介入性を発揮できるゲームを行う構成にあるところ、第2引用例に記載の発明のボーナスゲームにおいては、全リールのうち第1、第2リールの表示図柄を既に入賞にあたる特定の図柄が表示される停止状態に設定した上で、回転可能な第3リールを任意停止させて入賞ラインに同じ特定の図柄が並ぶことをもって入賞としているものと見なせるものであるから、入賞ラインとなる前記第1、第2リールに特定の図柄を表示させるにあたって、当初から停止状態にて特定の図柄を該入賞ラインに表示することを変更して、第1、第2リールを一旦回転させた後に停止操作に応じて所定の停止制御を行って前記特定の図柄が入賞ラインに表示されるようにすることは、当業者にとって単なる設計的事項のものというべきである。
そして、スロットマシンの技術分野において、ストップボタンスイッチをオンしたときの表示位置から所定コマ数の範囲内で、特定の図柄が表示されるようにリールの停止制御を行う構成は、引用発明及び第4引用例に記載の発明にも示されるように周知技術である。
してみると、前記相違点A2は、第2引用例に記載の発明の単なる設計変更程度のものであって、当業者にとって適宜に採用し得る事項に過ぎない。
v.そうすると、第2引用例には、低速回転であるもののリールの回転をストップボタンの操作タイミングで任意停止させることで、遊技者に有利な技術介入性をもたせたようにしたゲームがボーナスゲームに適合することが開示されており、引用発明と第2引用例に記載の発明は、いずれも、乱数値に応じた停止制御を行う遊技中に特定の条件が達成された時に、予め定めたゲーム回数分、遊技者に有利なボーナスゲームを行うものであるから、該ボーナスゲームとして、引用発明に示される、1個のリールのみで実行するボーナスゲームに代えて、第2引用例に記載の発明に示される、第1、第2及び第3リールの停止制御を行う構成について、前記第3リールという複数のリールの一部についてのみリールの回転をストップボタンスイッチの操作タイミングで停止させる構成を採用し、該構成を採用するにあたって前記各周知技術を適用して、第3リールの回転速度を通常の高速回転とするとともに、入賞のしやすさを適宜考慮して前記第1、第2リールという他のリールに対しては一旦回転させた後にストップボタンスイッチをオンしたときの表示位置から4コマ以内の範囲内で特定の図柄が入賞ラインに表示されるように一定の停止制御を行う構成に設計変更することによって、前記相違点Aに係る訂正発明2の構成のようにすることは、当業者が容易に想到できることである。
vi.被請求人(特許権者)は、引用発明における「ボーナスゲーム」は、本件明細書における「ボーナスゲーム」に相当し、訂正発明2における「おいて書き」後の「即止めゲーム」とは異種のものであるから、これと対比して「特別ゲーム」として一致するとの認定は誤りである旨主張している。
しかしながら、引用発明と訂正発明2の両者は、「通常ゲーム」の形態として、訂正発明2における「おいて書き」前の構成において一致し、遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、前記通常ゲームとは異なる形態として魅力のある別のゲームを行うのであるから、これを「通常ゲーム」とは範疇及び価値の異なるゲームの意味で「特別ゲーム」として捉えることは妥当というべきである。
また、本件明細書の実施例に開示されている「ボーナスゲーム」は、訂正発明2の構成要件ではないから、該主張は、特許請求の範囲の記載に基づかないものであり、これと対比すべき技術的必然性も全く認められない。
そして、「特別ゲーム」としての引用発明と訂正発明2の具体的な相違点の評価については、相違点の検討においてなされるべき問題である。
vii.また、被請求人(特許権者)は、第2引用例に記載の発明における第3リールの回転は、高速回転時の1/8の低速回転であって、初心者でも入賞絵柄の配列を完成させることができ、技術介入性を導入するものではないから、引用例としての適格性を欠く旨主張している。
しかしながら、第2引用例に記載の発明は、前記iii.において示したように、通常のゲームよりも入賞率が高く設定されることを作用目的にリールの回転速度を低速回転とするものであって、遊技者はリールの絵柄を認識できる回転速度であることを前提にリールの回転をストップボタンスイッチの操作タイミングで停止できるという特性のゲームを提供するものであり、通常の高速回転よりは低速回転(高速時の1/8)であるもののリールの絵柄が1秒間に数個(明示的記載はないが約3〜4個)変化するものであるために、遊技者が特定の絵柄を任意停止する操作において技術介入性も導入されていることは明らかである。そして、低速回転として高速時の1/8とすることは、第2引用例における1つの例示であって、遊技者の熟練度によってリールの絵柄を認識できる回転速度及び所望のリール絵柄に応じたタイミングで回転停止できる操作技術に個人差があることが常識であるとともに、第1引用例における従来技術の記載に照らして、当業者は、通常の速度で回転しているリールの回転を任意停止できるようにしたゲームについて、これが遊技者に有利なゲームを提供するというボーナスゲームの課題に合致すると当然理解あるいは想定するものと認められるから、第2引用例における第3リールの回転速度をどの程度の速度にするかは、必ずしも該第2引用例の実施例にとらわれることなく、わずかに低速あるいは通常の速度とすることを含め、通常のゲームよりもどの程度入賞率を高く設定するかに応じ、想定する遊技者の技術介入性をも考慮して、当該技術分野の技術常識及び知見に従って当業者が自由に想起し得る事項というべきである。
この点について付言すると、第2引用例と同様に被請求人(特許権者)により本件特許出願前に出願され、実願昭58-128412号(実開昭60-37379号)のマイクロフィルムとして公開された刊行物には、第2引用例に示される通常ゲームと類似の構成からなり、低速回転(高速時の1/8)させたリールを任意停止できるようにしたスロットマシンについて、遊技者が該リールの絵柄をある程度識別でき、入賞が遊技者の技能に左右されるという目的効果のものである旨が記載されており、また、同じく被請求人(特許権者)により出願され、特開昭58-185184号公報として公開された刊行物には、通常ゲーム中に高速回転させた各リールを任意停止させて「SKILL・STOP」の絵柄が3個並ぶとボーナスゲームとなり、該ボーナスゲーム中は低速回転させた各リールを任意停止させるようにしたスロットマシンについて、ボーナスゲーム中にリールを低速回転させることにより通常ゲームに比べて入賞し易くするという目的効果のものである旨が記載されており、前者の刊行物に記載の通常ゲーム、あるいは、後者の刊行物に記載のボーナスゲームにおける、リールを低速回転させることの目的効果が、初心者でも100%所望の絵柄でリールを任意停止できるようにすることを意図するものではないのは明らかであるから、前記各刊行物の記載事項に照らしてみても、第2引用例に記載の発明における、リールを低速回転させることに係る目的効果あるいは技術的意義についての被請求人(特許権者)の解釈が、当該技術分野における技術常識に反するものであり、該発明に係る技術的理解を誤るものであることは明らかである。
viii.また、前記相違点Aに係る訂正発明2は、引用発明及び第3引用例に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想到できるものである。
すなわち、第1引用例に周知の従来技術として記載されるように、通常の速度で回転しているリールの回転を任意停止できるゲームは、遊技者に有利なゲームを提供するというボーナスゲームの周知の課題に合致するゲームであることが当業者に明らかであり、また、第3引用例に記載の発明は、特定の遊技者(熟練者)に有利な技術介入性をもたせた「ストップボタンスイッチの操作タイミングで通常の速度で回転しているリールを停止させるゲーム」と、平等性をもたせた「乱数値に応じてリールを遅延停止させるゲーム」とを遊技中に組み合わせて行うものといえるから、引用発明に示される1個のリールのみで行うボーナスゲームについて、ボーナスゲームに係る前記周知の課題に基づいて、第3引用例に記載の発明に示される、通常の速度で回転しているリールを任意停止させるゲームをボーナスゲームとして採用するとともに、入賞のしやすさを適宜考慮して前記1個のリール以外の他のリールに対しては特定の図柄が表示されるように一定の停止制御を行う周知の引き込み制御を導入して、前記相違点Aに係る訂正発明2の構成のようにすることは、当業者が容易に想到できるものである。
ix.そして、訂正発明2における、平等性と技術介入性が調和して各遊技者の熟練度に応じたゲームができるという作用効果は、引用発明に第2引用例乃至第4引用例に記載の発明を適用したものにおいて、当業者が容易に予測できるものである。

(3)まとめ
よって、訂正発明2は、第1引用例乃至第4引用例に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当するから、本件訂正は、特許法第134条第5項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第3項に規定する独立特許要件に適合しない。

3.むすび
以上のとおり、訂正請求に係る特許第1855980号の請求項2に係る発明(訂正発明2)は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないところ、該独立特許要件に係る特許法第29条第2項の規定に該当するから、本件訂正は、特許法第134条第5項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第3項の規定により、認められない。

第3.本件発明
前記第2.のように、訂正請求は認められないから、本件無効審判請求に係る特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、本件特許の設定登録時における以下のとおりのものである。
「1 表示窓内にそれぞれ所定の図柄を表示する複数のリールを乱数値に応じて停止するように制御する制御装置を備えたスロットマシンにおいて、前記制御装置は遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、前記乱数値に応じた停止制御を中止するように構成したことを特徴とするスロットマシン。」
第4.当事者の求めた審判及び当審無効理由通知
1.請求人の主張
請求人は、審判請求書において、特許第1855980号の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めることを請求の趣旨とし、下記の甲第1号証を提出して、本件発明は、その出願日前に公知の甲第1号証に記載の発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであること、あるいは、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであることから、本件発明の特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効すべきものである旨主張する。
甲第1号証:実願昭58-128413号(実開昭60-37380号)
のマイクロフィルム

2.被請求人の主張
被請求人は、訂正請求を行うとともに、本件発明は、新規性及び進歩性を有するものであるから、特許法第29条第1項第3号違反及び同第29条第2項違反の無効理由は存在しない旨主張する。

3.当審無効理由通知
当審は、平成15年6月27日付けで職権による無効理由を以下のように通知した。
I.無効理由1(特許法第29条第2項違反)
本件発明は、その出願日前に公知の刊行物である下記の第1引用例乃至第4引用例に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件発明の特許は、同法第123条第1項第2号の規定により、無効にすべきものである。
第1引用例:特開昭59-186580号公報
第2引用例:実願昭58-128413号(実開昭60-37380号)
のマイクロフィルム(甲第1号証)
第3引用例:特開昭57-86373号公報
第4引用例:実願昭60-74971号(実開昭61-191081号)
のマイクロフィルム

II.当審無効理由2(特許法第36条第3、4項違反)
本件発明に係る「前記乱数値に応じた停止制御を中止するように構成」という事項については、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲における記載が不備であり、本件発明は、特許法第36条第3項及び第4項第1、2号の規定に違反して特許されたものであるから、その特許は、同法第123条第1項第4号の規定により、無効にすべきものである。

第5.当審の判断
I.当審無効理由1(特許法第29条第2項違反)に基づく判断
当審が平成15年6月27日付けで職権によりなした当審無効理由1(特許法第29条第2項違反)に基づいて、本件特許に係る無効事由について、以下、検討判断する。
1.引用例に記載の発明
第1引用例乃至第4引用例に係る摘示事項、及び該引用例の記載に基づいて認定した各発明については、前記第2.2.(1)におけるものと同じであるから、それを援用する。

2.本件発明と引用発明〔第1引用例に記載の発明〕との対比検討
(1)本件発明と引用発明との対比
i.本件発明と引用発明とを対比すると、両者は、いずれもスロットマシンの発明であって、引用発明における「シンボルマーク」は、本件発明における「図柄」に相当し、引用発明における「前記各ストップボタンをオンしたときに、前記判定した乱数値に応じた入賞ランクに属するシンボルマークが表示されるように前記各リールの回転を停止させる停止制御を行う」構成は、通常ゲームの形態として、本件発明における「複数のリールを乱数値に応じて停止するように制御する」構成に相当する。
さらに、引用発明における「前記乱数値に応じたリールの停止制御の結果、大ヒットの入賞条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、ボーナスゲームとして、例えばメダル1枚の投入毎に1個のリールのみでゲームを実行し、その1個のリールについてある種のシンボルマークが出ればそのまま15枚のメダル支払いがなされるゲームを数回できるように構成した」ことは、本件発明における「遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、前記乱数値に応じた停止制御を中止するように構成した」ことと対比して、前記通常ゲームとは異なる特別ゲームの形態として、「遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、特別ゲームとしての停止制御を行うように構成した」ことにおいて一致する。
ii.そうすると、本件発明と引用発明は、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違するものと認められる。
一致点.「表示窓内にそれぞれ所定の図柄を表示する複数のリールを乱数値に応じて停止するように制御する制御装置を備えたスロットマシンにおいて、前記制御装置は遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、特別ゲームとしての停止制御を行うように構成したスロットマシン。」
相違点B. 遊技中特定の条件が達成された時に予め定めたゲーム回数分行う特別ゲームとして、本件発明は、乱数値に応じた停止制御を中止するように構成したのに対し、引用発明は、ボーナスゲームとして、例えばメダル1枚の投入毎に1個のリールのみでゲームを実行し、その1個のリールについてある種のシンボルマークが出ればそのまま15枚のメダル支払いがなされるゲームを数回できるように構成した点。

(2)相違点の検討
i. 引用発明は、要するに、乱数値に応じた停止制御を行う遊技中に特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、遊技者に有利なボーナスゲームを行うスロットマシンの発明であり、該発明は、第4引用例にも開示されるように、当該技術分野において周知の形態のものである。
また、引用発明を認定した第1引用例には、周知の従来技術として、通常の速度で回転している全てのリールの回転を各ストップボタンの操作タイミングで任意停止できるようにしたスロットマシンが、遊技者の技術が加味されゲームの興趣が高くなるので好まれていることが記載(第1引用例第2頁左上欄第12行〜右上欄第5行)されているところ、遊技者に有利なゲームを提供するというボーナスゲームの周知の課題を熟知する当業者は、前記記載に係るリールの回転を任意停止できるゲーム形態が該ボーナスゲームに合致すると当然理解あるいは想定するものと認められる。
ii.ところで、第2引用例には、前記第2.2.(1-2)における摘示事項及び発明の認定によれば、通常ゲームにおいては、第1、第2リールの回転を乱数値に応じて停止制御し、第3リールの回転をストップボタンの操作タイミングで任意停止させるように制御すると共に、遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、通常のゲームとは異なり入賞率が高く設定される副次的ゲームとしてのボーナスゲームに移行して、該ボーナスゲームにおいては、第1、第2リールは停止状態のままで、低速回転する第3リールの回転をストップボタンの操作タイミングで任意停止させるように構成したスロットマシンの発明が開示されており、その技術的意義は、乱数値に応じた停止制御を行うリールを含むことで平等性をもたせた通常ゲームから、特定の条件が達成された時に予め定めたゲーム回数分、乱数値に応じた停止制御を中止して、遊技者が第3リールの絵柄を見ながら入賞絵柄の配列が完成されるようにストップボタンで任意停止させることで遊技者に有利な技術介入性をもたせたボーナスゲームに移行することにあるものと認められる。
すなわち、第2引用例に記載の発明は、ボーナスゲームにおいて、その停止形態が異なるものの、第1、第2、第3リールからなる全てのリールについて、乱数値に応じた停止制御が行われないように実質的に停止制御が中止されるものである。
また、第2引用例に記載の発明は、前記第2.2.(2)iii.における相違点A1の検討で示したように、該ボーナスゲームにおいて、通常のゲームよりも入賞率が高く設定されるようにすることが作用目的であるから、ゲーム性を担保できる範囲で第3リールの回転速度を低速に設定するものであって、遊技者が特定の絵柄を任意停止させる操作において技術介入性が導入されているものであり、該第3リールの回転速度をどの程度に設定するかは、対象とする遊技者の技術介入性やゲームの採算性を考慮して適宜決め得る事項というべきである。
iii.さらに、第3引用例には、前記第2.2.(1-3)における摘示事項及び発明の認定によれば、周知の従来技術として特定の遊技者(熟練者)に有利なゲームである、ストップボタンスイッチの操作タイミングで全てのリールを停止させるゲームという、本件発明の「乱数値に応じた停止制御を中止するゲーム」に相当するゲームのみを恒常的に行うスロットマシンが記載(第3引用例第1頁右下欄第13〜19行)されているとともに、該従来技術においてゲームの単調化や賞品メダルの偏在化の問題が生じていたので、前記問題を解決することを課題に、前記「乱数値に応じた停止制御を中止するゲーム」に対して「定期的にまたは必要に応じて」、「乱数値に応じてリールを遅延停止させるゲーム」という、本件発明の「乱数値に応じて停止するように制御するゲーム」に相当するゲームを行うように構成したスロットマシンの発明が開示されており、該発明は、遊技者(熟練者)に有利な技術介入性をもたせた「乱数値に応じた停止制御を中止するゲーム」と、平等性をもたせた「乱数値に応じてリールを遅延停止させるゲーム」とを遊技中に組み合わせて行うスロットマシンを示唆するものと認められる。
iv.そうすると、まず、引用発明と第2引用例に記載の発明は、いずれも、乱数値に応じた停止制御を行う遊技中に特定の条件が達成された時に、予め定めたゲーム回数分、遊技者に有利なボーナスゲームを行うものであるから、該ボーナスゲームとして、引用発明に示される、1個のリールのみで実行するボーナスゲームに代えて、第2引用例に記載の発明に示される、第1乃至第3リールからなる全てのリールについて乱数値に応じた停止制御を中止する構成のボーナスゲームを採用するとともに、リールの回転速度については、前記周知技術に倣って通常の速度を採用して、前記相違点Bに係る本件発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到できることである。
v.また、第1引用例に周知の従来技術として記載されるように、通常の速度で回転しているリールの回転を任意停止できるゲームは、遊技者に有利なゲームを提供するというボーナスゲームの周知の課題に合致するゲームであることが当業者に明らかであり、あるいは、第2引用例に記載の発明に示される、乱数値に応じた停止制御を行うことで平等性をもたせた通常ゲームから、特定の条件が達成された時に予め定めたゲーム回数分、乱数値に応じた停止制御を中止してストップボタンの操作タイミングで特定のリールを任意停止させるように停止制御を行うことで遊技者に有利な技術介入性をもたせたボーナスゲームに移行するようにしたゲーム構成に照らすと、第3引用例に記載の発明に示される前記2種類のゲームを組み合わせたものにおいて、ストップボタンの操作タイミングで全てのリールを停止させることで技術介入性をもたせた「乱数値に応じた停止制御を中止するゲーム」をもってボーナスゲームとすることによって、平等性をもたせた通常ゲームから技術介入性をもたせたボーナスゲームに移行するとともに、遊技者に有利なボーナスゲームとしての特性にも合致するゲーム構成が得られるものと、当業者が当然理解するというべきであるから、引用発明に示される、1個のリールのみで実行するボーナスゲームに代えて、前記周知の従来技術、あるいは、第3引用例に記載の発明に示される、ストップボタンの操作タイミングで全てのリールを停止させることで技術介入性をもたせた「乱数値に応じた停止制御を中止するゲーム」の構成をボーナスゲームとして採用して、前記相違点Bに係る本件発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到できることである。
vi.そして、本件発明における平等性と技術介入性が調和して各遊技者の熟練度に応じたゲームができるという作用効果は、引用発明に第2引用例乃至第4引用例に記載の発明を適用したものにおいて、当業者が容易に予測できるものである。

(3)まとめ
よって、本件発明は、第1引用例乃至第4引用例に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

II.当審無効理由2(特許法第36条第3、4項違反)に基づく判断
当審が平成15年6月27日付けで職権によりなした当審無効理由2(特許法第36条第3、4項違反)に基づいて、本件特許に係る無効事由について、以下、検討判断する。
(1)発明の詳細な説明の記載不備(特許法第36条第3項)
本件発明の「乱数値に応じた停止制御を中止する」実施の形態とはどのようなものを含むのか、発明の詳細な説明に明確に記載されていないから、当業者が容易に実施できる程度に記載されているとは認められない。

(2)特許請求の範囲の記載不備(特許法第36条第4項第1、2号)
本件発明は、「前記乱数値に応じた停止制御を中止するように構成」という事項を構成要件としているが、乱数値に応じて停止するように制御することに代えてどのような停止制御を行うのか発明の構成が不明であるとともに、ゲームの平等性と技術介入性が調和して各遊技者の熟練度に応じたゲームができるという目的効果を達成するに足りる、発明に欠くことができない事項の構成を明確に把握することができないから、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるとも、発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものであるとも認められない。

(3)まとめ
よって、本件発明に係る明細書の記載は、特許法第36条第3項及び第4項第1、2号の規定に適合しないから、本件発明の特許は、同法第123条第1項第4号の規定に違反してされたものである。

3.むすび
以上のとおり、本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その出願日前に公知の刊行物に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、その特許は、同法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきものであり、あるいは、本件特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、明細書の記載が不備であって、特許法第36条第3項及び第4項第1、2号の規定に違反して特許されたものであるから、その特許は、同法第123条第1項第4号の規定により、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。


第6.備考:訂正発明1に係る特許法第29条第2項違反の判断
訂正請求に基づく特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明1」という。)が、当審が平成15年6月27日付けで職権によりなした当審無効理由1(特許法第29条第2項違反)に該当するか否か、以下、補足的に検討判断する。
1.訂正発明1
訂正発明1は、特許請求の範囲の請求項1に係る訂正事項aとして前記第2.1.i.に記載される、以下の事項により特定されるものである。
「1 表示窓内にそれぞれ所定の図柄を表示する複数のリール、
これら各リールの回転を停止させるためのストップボタンスイッチ、
予め定めた範囲で乱数を発生する手段、
前記乱数の範囲を区分し、入賞及び外れを判定するための確率テーブル、
前記乱数をサンプリングする手段、
サンプリングした乱数値が前記確率テーブルのどの区分に属するかを判定する手段、
前記各ストップボタンスイッチをオンしたときの表示位置から4コマ以内の範囲内で、前記判定した乱数値に応じた図柄が表示されるように前記各リールの回転を停止させる停止制御を行う制御装置を備えたスロットマシンにおいて、
前記制御装置は遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、
前記乱数値に応じた停止制御を中止して、この停止制御の中止にかかるリールの回転を前記ストップボタンスイッチの操作タイミングで停止させるように構成したことを特徴とする
スロットマシン。」

2.引用例に記載の発明
第1引用例乃至第4引用例に係る摘示事項、及び該引用例の記載に基づいて認定した各発明については、前記第2.2.(1)におけるものと同じであるから、それを援用する。

3.訂正発明1と引用発明〔第1引用例に記載の発明〕との対比検討
(1)訂正発明1と引用発明との対比
i.訂正発明1と引用発明とを対比すると、両者は、いずれもスロットマシンの発明であって、引用発明における「シンボルマーク」、「ストップボタン」、「入賞確率テーブル」は、訂正発明1における「図柄」、「ストップボタンスイッチ」、「確率テーブル」に相当し、引用発明における「前記各ストップボタンをオンしたときの表示位置から4コマ以内の範囲内で、前記判定した乱数値に応じた入賞ランクに属するシンボルマークが表示されるように前記各リールの回転を停止させる停止制御を行う」構成は、通常ゲームの形態として、訂正発明1における「おいて書き」前の構成(以下、該構成によるゲームを「乱数値ゲーム」という。)に相当する。
さらに、引用発明における「前記乱数値に応じたリールの停止制御の結果、大ヒットの入賞条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、ボーナスゲームとして、メダル1枚の投入毎に1個のリールのみでゲームを実行し、その1個のリールについてある種のシンボルマークが出ればそのまま15枚のメダル支払いがなされるゲームを数回できるように構成した」ことは、訂正発明1における「遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、前記乱数値に応じた停止制御を中止して、この停止制御の中止にかかるリールの回転を前記ストップボタンスイッチの操作タイミングで停止させるように構成した」(以下、訂正発明1の該構成によるゲームを「即止めゲーム」という。)ことと対比して、前記通常ゲームとは異なる特別ゲームの形態として、「遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、特別ゲームとしての停止制御を行うように構成した」ことにおいて一致する。
ii.そうすると、訂正発明1と引用発明は、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違するものと認められる。
一致点.表示窓内にそれぞれ所定の図柄を表示する複数のリール、
これら各リールの回転を停止させるためのストップボタンスイッチ、
予め定めた範囲で乱数を発生する手段、
前記乱数の範囲を区分し、入賞及び外れを判定するための確率テーブル、
前記乱数をサンプリングする手段、
サンプリングした乱数値が前記確率テーブルのどの区分に属するかを判定する手段、
前記各ストップボタンスイッチをオンしたときの表示位置から4コマ以内の範囲内で、前記判定した乱数値に応じた図柄が表示されるように前記各リールの回転を停止させる停止制御を行う制御装置を備えたスロットマシンにおいて、
前記制御装置は遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、特別ゲームとしての停止制御を行うように構成したスロットマシン。

相違点C. 遊技中特定の条件が達成された時に予め定めたゲーム回数分行う特別ゲームとして、訂正発明1は、乱数値に応じた停止制御を中止して、この停止制御の中止にかかるリールの回転を前記ストップボタンスイッチの操作タイミングで停止させるように構成したのに対し、引用発明は、ボーナスゲームとして、メダル1枚の投入毎に1個のリールのみでゲームを実行し、その1個のリールについてある種のシンボルマークが出ればそのまま15枚のメダル支払いがなされるゲームを数回できるように構成した点。

(2)相違点の検討
i. 引用発明は、要するに、乱数値に応じた停止制御を行う遊技中に特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、遊技者に有利なボーナスゲームを行うスロットマシンの発明であり、該発明は、第4引用例にも開示されるように、当該技術分野において周知の形態のものである。
また、引用発明を認定した第1引用例には、周知の従来技術として、通常の速度で回転している全てのリールの回転を各ストップボタンの操作タイミングで任意停止できるようにしたスロットマシンが、遊技者の技術が加味されゲームの興趣が高くなるので好まれていることが記載(第1引用例第2頁左上欄第12行〜右上欄第5行)されているところ、遊技者に有利なゲームを提供するというボーナスゲームの周知の課題を熟知する当業者は、前記記載に係るリールの回転を任意停止できるゲーム形態が該ボーナスゲームに合致すると当然理解あるいは想定するものと認められる。
ii.ところで、第2引用例には、前記第2.2.(1-2)における摘示事項及び発明の認定によれば、通常ゲームにおいては、第1、第2リールの回転を乱数値に応じて停止制御し、第3リールの回転をストップボタンの操作タイミングで任意停止させるように制御すると共に、遊技中特定の条件が達成された時には予め定めたゲーム回数分、通常のゲームとは異なり入賞率が高く設定される副次的ゲームとしてのボーナスゲームに移行して、該ボーナスゲームにおいては、第1、第2リールは停止状態のままで、低速回転する第3リールの回転をストップボタンの操作タイミングで任意停止させるように構成したスロットマシンの発明が開示されており、その技術的意義は、乱数値に応じた停止制御を行うリールを含むことで平等性をもたせた通常ゲームから、特定の条件が達成された時に予め定めたゲーム回数分、乱数値に応じた停止制御を中止して、遊技者が第3リールの絵柄を見ながら入賞絵柄の配列が完成されるようにストップボタンで任意停止させることで遊技者に有利な技術介入性をもたせたボーナスゲームに移行することにあるものと認められる。
そして、第2引用例に記載の発明は、ボーナスゲームにおいて、その停止形態が異なるものの、第1、第2、第3リールからなる全てのリールについて、乱数値に応じた停止制御が行われないように実質的に停止制御が中止されるものである。
また、第2引用例に記載の発明は、前記第2.2.(2)iii.における相違点A1の検討で示したように、該ボーナスゲームにおいて、通常のゲームよりも入賞率が高く設定されるようにすることが作用目的であるから、ゲーム性を担保できる範囲で第3リールの回転速度を低速に設定するものであって、遊技者が特定の絵柄を任意停止させる操作において技術介入性が導入されているものであり、該第3リールの回転速度をどの程度に設定するかは、対象とする遊技者の技術介入性やゲームの採算性を考慮して適宜決め得る事項というべきである。
iii.さらに、第3引用例には、前記第2.2.(1-3)における摘示事項及び発明の認定によれば、周知の従来技術として特定の遊技者(熟練者)に有利なゲームである、ストップボタンスイッチの操作タイミングで全てのリールを停止させるゲームという、訂正発明1の「即止めゲーム」に相当するゲームのみを恒常的に行うスロットマシンが記載(第3引用例第1頁右下欄第13〜19行)されているとともに、該従来技術においてゲームの単調化や賞品メダルの偏在化の問題が生じていたので、前記問題を解決することを課題に、前記「即止めゲーム」に対して「定期的にまたは必要に応じて」、「乱数値に応じてリールを遅延停止させるゲーム」という、訂正発明1の「乱数値ゲーム」に比較し得るゲームを行うように構成したスロットマシンの発明が開示されており、該発明は、特定の遊技者(熟練者)に有利な技術介入性をもたせた「乱数値に応じた停止制御を中止するゲーム」(「即止めゲーム」に相当)と、平等性をもたせた「乱数値に応じてリールを遅延停止させるゲーム」(「乱数値ゲーム」に比較可能)とを遊技中に組み合わせて行うスロットマシンを示唆するものと認められる。
iv.そうすると、第2引用例に記載の発明に示される、乱数値に応じた停止制御を行うことで平等性をもたせた通常ゲームから、特定の条件が達成された時に予め定めたゲーム回数分、乱数値に応じた停止制御を中止してストップボタンの操作タイミングで特定のリールを任意停止させるように停止制御を行うことで遊技者に有利な技術介入性をもたせたボーナスゲームに移行するようにしたゲーム構成に照らすと、第3引用例に記載の発明に示される前記2種類のゲームを組み合わせたものにおいて、ストップボタンの操作タイミングで全てのリールを停止させることで技術介入性をもたせた「即止めゲーム」をもってボーナスゲームとすることによって、平等性をもたせた通常ゲームから技術介入性をもたせたボーナスゲームに移行するとともに、遊技者に有利なボーナスゲームとしての特性にも合致するゲーム構成が得られるものと、当業者が当然理解するというべきである。
v.しかして、第1引用例に周知の従来技術として記載されるように、通常の速度で回転しているリールの回転を任意停止できるゲームは、遊技者に有利なゲームを提供するというボーナスゲームの周知の課題に合致するゲームであることが当業者に明らかであり、あるいは、引用発明と第2引用例に記載の発明は、いずれも、乱数値に応じた停止制御を行う遊技中に特定の条件が達成された時に、予め定めたゲーム回数分、遊技者に有利なボーナスゲームを行うものであるから、該ボーナスゲームとして、引用発明に示される、1個のリールのみで実行するボーナスゲームに代えるものとして、前記周知の従来技術、あるいは、第2引用例に記載の発明に示される、乱数値に応じた停止制御を中止してストップボタンで特定のリールを任意停止させる構成のボーナスゲームに着目し、その具体的形態として、第3引用例に記載の発明に示される、乱数値に応じた停止制御を中止してストップボタンの操作タイミングで全てのリールを停止させることで技術介入性をもたせた「即止めゲーム」の構成を採用して、前記相違点Cにかかる訂正発明1の構成のようにすることは、当業者が容易に想到できることである。
vi.また、訂正発明1における、平等性と技術介入性が調和して各遊技者の熟練度に応じたゲームができるという作用効果は、引用発明に第2引用例乃至第4引用例に記載の発明を適用したものにおいて、当業者が容易に予測できるものである。

(3)まとめ
よって、訂正発明1は、第1引用例乃至第4引用例に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
 
審理終結日 2004-10-27 
結審通知日 2004-11-01 
審決日 2004-11-19 
出願番号 特願昭63-65543
審決分類 P 1 122・ 856- ZB (A63F)
P 1 122・ 121- ZB (A63F)
P 1 122・ 531- ZB (A63F)
P 1 122・ 534- ZB (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 尾崎 淳史  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 村山 隆
中村 和夫
登録日 1994-07-07 
登録番号 特許第1855980号(P1855980)
発明の名称 スロットマシン  
代理人 嶋末 和秀  
代理人 鈴木 英之  
代理人 栗宇 一樹  
代理人 早稲本 和徳  
代理人 七字 賢彦  
代理人 飯田 秀郷  
代理人 岩坪 哲  
代理人 松本 司  

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