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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21V
管理番号 1125344
審判番号 不服2002-16149  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-03-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-22 
確定日 2005-10-27 
事件の表示 平成11年特許願第226530号「面状照明装置および液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年3月21日出願公開、特開2000- 82314〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年7月13日[優先権主張:平成4年7月13日(特願平4-184976号)、優先権主張:平成5年5月13日(特願平5-111852号)]を国際出願日とする特願平6-500920号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成11年8月10日に新たな特許出願としたものであって、その後の経緯は次のとおりである。
(1)拒絶理由の通知:平成13年8月2日(発送:平成13年8月21日)
(2)意見書、手続補正書の提出:平成13年10月18日
(3)拒絶査定:平成14年7月12日(発送:平成14年7月23日)
(4)審判請求書の提出:平成14年8月22日(方式補正:平成14年9 月24日)
(5)手続補正書(明細書)の提出:平成14年9月24日

2.本願発明
本願の請求項1〜10に係る発明は、上記1.(5)の手続補正書により補正された明細書及び図面(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜10に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「拡散パターンを有する導光板と、該導光板の隣接した2辺と対峙するように設置された発光体とを有する面状照明装置において、
前記隣接した2辺と向かい合う辺の端面には反射体がそれぞれ配置されており、
前記拡散パターンの密度分布は、前記2辺から入射する光の強度に基いて求められ、前記2辺近傍から前記2辺のそれぞれが向かい合う辺側に向かって大きくなっており、
前記端面からの反射光の強度を補正するように前記拡散パターンの密度分布が設定されてなることを特徴とする面状照明装置。」

3.本願の出願日及び優先権主張について
本願発明、すなわち、「拡散パターンを有する導光板と、該導光板の隣接した2辺と対峙するように設置された発光体とを有する面状照明装置」を前提にした上で、「前記拡散パターンの密度分布は、前記2辺から入射する光の強度に基いて求められ、前記2辺近傍から前記2辺のそれぞれが向かい合う辺側に向かって大きくなっており、前記端面からの反射光の強度を補正するように前記拡散パターンの密度分布が設定されてなる」面状照明装置は、原出願の明細書又は図面に記載されているものと認められるから、本願は、特許法第44条第1条に基づく適正な分割出願であり、同条第2項に基づいて、その出願日は、原出願の国際出願日である平成5年7月13日とすべきである。
ところで、本願における優先権主張について検討すると、上記した面状照明装置は、優先権主張の基礎となった特願平4-184976号及び特願平5-111852号の明細書又は図面のいずれにも記載されていない。
したがって、本願発明については、優先権主張を認めることはできず、特許法第29条第2項の適用において、本願は、原出願の国際出願日である平成5年7月13日になされたものとすべきである。

4.拒絶査定の理由の概要
拒絶査定の理由の概要は、上記第1、(1)の拒絶理由通知書及び同(3)の拒絶査定書の記載からみて、優先権主張を認めず、新規性及び進歩性の判断基準日を原出願の出願日とした上で、
「この出願の請求項1〜10に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1〜5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開平5-34693号公報
2.特開平5-72981号公報
3.実願昭47-81934号(実開昭49-39378号)のマイクロ フィルム
4.特開平4-358125号公報
5.特開平1-183626号公報 」
というものである。

5.引用文献
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-72981号公報(公開日:平成5年3月21日。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次のように記載されている。
(a)「【実施例】
実施例1.以下、この発明の一実施例を図1〜図4について説明する。図1はこの実施例を示す斜視図であり、図2はその断面図である。図中1〜20は上記従来の表示灯器具と同一あるいは相当する部分である。なお、21は従来例の導光板10と同様に光源の光を通す働きもするが、この実施例では透明であることを利用して導光板のみで使われているので、従来例とは区別して以下導光体という。また21aは導光体21の延長部である。導光体の延長部21aと光拡散反射部12と表示板13とが表示体14を構成している。本体1の内部には光源を点灯させる装置2と共に蛍光ランプ9が内蔵されている。図3は導光体の延長部21aに形成された光拡散反射部12の形状を示す斜視図である。光拡散反射部12は蛍光ランプ9から遠ざかる程導光体の延長部21aに占める割合が多くなっている。これは蛍光ランプから遠ざかる程弱くなる光の反射量を多くすることで、表示板13を均一に光らせるためである。また、この光拡散反射部12はシルク印刷によって白色のインク等を導光体の延長部21a上に印刷したり、サンドブラストによってその表面に凹凸をつけたりする方法で形成される。」(段落【0012】)
(b)「また図7のように、2つのランプを導光体21および表示体14からなる四角形の平面の隣り合う辺に設け、表示体14をランプから遠い角の部分に設けてもよい。この場合、2つのランプをそれぞれ天井と壁に配置すれば、表示が空中に浮いて見える表示器具が得られる。この際ランプを天井と壁に埋め込めば、さらに見栄えがよくなる。」(段落【0015】)

記載(b)及び【図7】によれば、2つの蛍光ランプ(9)は、導光体(21)の隣接した2辺のそれぞれと対峙するように設置されているものということができる。
さらに記載(a)によれば、光拡散反射部12は蛍光ランプ9から遠ざかるほど、導光体の延長部21aに占める割合を多くして、表示板13を均一に光らせるようにしているから、光拡散反射部12の密度分布は、蛍光ランプ9が対峙する辺から入射する光の強度に応じて求められ、この辺に向かい合う辺側に向けて大きくなっており、しかも、その密度分布は、蛍光ランプ9が対峙する辺から入射する光の強度を補正するように設定されているものといえる。

したがって、上記記載及び図面の記載を総合すると、引用文献1には、次のような発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「光拡散反射部(12)を有する導光体(21)と、該導光体(21)の隣接した2辺のそれぞれと対峙するように設置された2つの蛍光ランプ(9)とを有する表示体において、
前記光拡散反射部(12)の密度分布は、前記2辺から入射する光の強度に基いて求められ、
前記2辺近傍から前記2辺のそれぞれが向かい合う辺側に向かって大きくなっており、
前記2辺から入射する光の強度を補正するように前記光拡散反射部(12)の密度分布が設定されてなる表示体。」

(2)引用文献2
特開平3-118594号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次のように記載されている。
(a)「面光源装置10は、表面側から乳白色ポリエステルフィルムによる透過性の乱反射シート11、面光源パネル12及び同様な乳白色ポリエステルフィルムによる反射バックシート13を積層せしめてなるとともに蛍光灯である下端の光源14及び面光源パネル12の光源14側を除く3端面に亘って設けた白色テープによる端反射部15を備えてなる。」(第3頁右上欄1〜8行)
(b)「面光源パネル12は,例えば130×240mmの縦横寸法を有するとともに、6mm厚の厚肉化した単一のアクリル透明樹脂板である透明基板16を用い、その一側面、特に背面略全面に多数高密度に分布した網点による乱反射層17を形成せしめてある。
乱反射層17は、平行パターン部位18と調整パターン部位19とを備えたものとされ、平行パターン部位18は、光源14からの離隔面内方向に向けて平行無段階的に順次面積比を増加状に変化せしめてある。本例にあってこの増加状変化は,面光源パネル12の光源14と上方端反射部15との中央よりこの端反射部15側に偏位した位置が最大面積比部分となるパターンをもって行うものとしてある。このようにしたのは、端反射部15の反射光によって光源14から最離隔位置であるこの端反射部15近傍が明るすぎる結果になり易いのを防止して平行パターン部位18の均一性を確保するためである。」(第3頁右上欄16行〜同左下欄15行)

上記記載(b)において、平行パターン部位18の面積比は、乱反射層17の密度といえるから、上記記載及び図面を総合すると、引用文献2には、次のような発明が記載されているものと認められる。
「乱反射層(17)を有する面光源パネル(12)の光源(14)側を除く端面に、光源(14)からの光を反射する端反射部(15)を配置し、この端面からの反射光の強度を補正するように、乱反射層(17)の密度が設定されてなる面光源装置。」

(3)引用文献3
特開平5-134251号公報(公開日:平成5年5月28日。以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに次のように記載されている。
「【0012】
【実施例】
以下,ラップトップ型のコンピュータ,ワードプロセッサ等の液晶表示面を照明する液晶バックライトとして,これらに内蔵設置される面光源装置に本発明を適用した例により,更に説明すれば,第1図及び第2図において1は液晶表示面の背面側に位置するように設けた,光透過性にして不透明乳白色ポリエステルフィルムによる光拡散シート,2は,長方形の透明基板3の背面側に面積比漸増乱反射パターン4を形成したエッジライトパネル,8は更にこのエッジライトパネル2の背面側に配置した白色ポリエステルフィルムによる光反射シートであり,また9は,エッジライトパネル2の短辺側一端の端面に臨ませて近接配置した一次光源を示す。
・・・・・
【0015】透明基板3は,16×25cmのB5相当サイズのものとし,その非照明面,即ち上記背面側(第1図にあっては下面に該る)に,数mm幅の外周端部を残した全面に亘る面積漸増乱反射パターン4をスクリーン印刷によって印刷形成せしめてある。
・・・・・
【0017】面積漸増乱反射パターン4は,マトリックス上に位置するように円形の乱反射点6…を多数列,多数行に格子状に配置してなる網点パターンを用い,且つ,その面積比はこれを,例えば20%から100%近くの範囲において一次光源9側から,光源離隔方向,即ち透明基板3の面内方向に無段階的に漸増変化せしめ,その面積比最大部位5が,中央部より非光源側端面側に偏位した,一次光源9から4/5 程度離隔した位置になるようにしてある。
【0018】この面積比最大部位を非光源側端面としないのは,該端面からの光の放出を防止するようにこれを鏡面仕上げすることによって得られる反射光が非光源側端面近傍の輝度を向上する方向に作用するため,最大面積比部分を非光源側端面近傍に配置すると該部分が明るすぎる一方,その手前が暗くなり,均一性を損う結果になるからであり,従って本例にあっては,面内方向に面積比を無段階的に漸増変化せしめる一方,最大面積比位置より先においては,逆にこれを対称状を呈するように減少せしめるようにしてある。」(段落【0017】、【0018】)

上記の記載において、面積漸増乱反射パターン4の面積比は、面積漸増乱反射パターン4の密度といえるから、上記記載及び図面を総合すると、引用文献3には、次のような発明が記載されているものと認められる。
「面積漸増乱反射パターン(4)を有する透明基板(3)の非光源側端面を、一次光源(9)からの光を反射するように鏡面仕上げし、この非光源側端面からの反射光を補正するように面積漸増乱反射パターン(4)の密度が設定されてなる液晶バックライト。」

6.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「光拡散反射部(12)」は、その機能、構造、形状からみて、本願発明の「拡散パターン」に相当し、以下同様に、「導光体(21)」は「導光板」に、「蛍光ランプ(9)」は「発光体」に、そして、「表示体(14)」は「面状照明装置」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「光拡散反射部(12)の密度分布」も、本願発明における「拡散パターンの密度分布」も、入射光か反射光かはさておき、「導光板内の光の強度を補正するように設定されている」限りで一致する。
してみると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「拡散パターンを有する導光板と、該導光板の隣接した2辺と対峙するように設置された発光体とを有する面状照明装置において、前記拡散パターンの密度分布は、前記2辺から入射する光の強度に基いて求められ、前記2辺近傍から前記2辺のそれぞれが向かい合う辺側に向かって大きくなっており、前記導光板内の光の強度を補正するように前記拡散パターンの密度分布が設定されてなる面状照明装置。」
〈相違点1〉
本願発明においては、導光板の2辺と対峙するように設置された発光体の個数が特定されていないのに対して、引用発明においては、「該導光体(21)の隣接した2辺のそれぞれと対峙するように設置された2個の蛍光ランプ(9)」である点。
〈相違点2〉
本願発明においては、「前記隣接した2辺と向かい合う辺の端面には反射体がそれぞれ配置されて」いるとともに、「前記端面からの反射光の強度を補正するように前記拡散パターンの密度分布が設定されて」いるのに対して、引用発明においては、このような反射体が配置されておらず、「前記導光体(21)の隣接した2辺からの光の強度を補正するように前記光拡散反射部(12)の密度分布が設定されて」いる点。

7.相違点についての検討及び判断
そこで、上記相違点1及び2について検討する。
(1)相違点1について
本願発明においては、発光体の個数が特定されておらず、2つの発光体を導光板の隣接した2辺のそれぞれと対峙するように設置することも含み得るものであるから、相違点1は、実質的な相違点とはいえない。
本願明細書を参酌すると、発光体として略L字型のものが記載されているから、本願発明における「導光板の隣接した2辺と対峙するよう設置された発光体」をこのような略L字型の発光体と解する余地はある。
しかしながら、仮にそうだとしても、略L字型の発光体を、導光板の隣接する2辺に対峙するように配置することは、例えば、原査定の拒絶理由に引用された実願昭47-81934号(実開昭49-39378号)のマイクロフィルム(L字型に曲がった管状のランプ(5)参照)や特開平4-358125号公報(L字型ランプ(6)を参照)にみられるように、本願出願前より周知の技術であり、引用発明における「2つの蛍光ランプ(9)」を、このような周知の発光体に代えることは、当業者が容易に想到し、かつ採用し得ることである。

(2)相違点2について
本願発明の相違点2に係る構成の技術的意義は、明細書段落【0072】の発明の効果の記載によれば、「少ない消費電力で光を略均等に放射可能な面状照明装置が実現する。」ことにあるものと解される。
これに対し、引用文献1にも、上記した記載(a)に、表示板13を均一に光らせるという本願発明と同様の技術的課題が示されており、さらに、段落【0014】及び【図5】には、光拡散反射部の密度を表示体の中心で密になるようにして、向かい合う2つの辺から入射する光の強度を補正することが示されている。
ところで、引用文献2や引用文献3によれば、面光源装置の面光源パネルや、液晶バックライトの透明基板といった面状照明装置の導光板において、非光源側端面に反射体を配置するとともに、面状照明装置の輝度を均一化するため、光を拡散するパターンの密度を、非光源側端面からの反射光の強度を補正するように設定することは、本願出願前より周知の技術である。
してみると、引用発明において、2つの蛍光ランプ(9)が対峙する隣接した2辺と向かい合う辺の端面に、反射体を配置するとともに、表示体を均一に光らせるべく、該反射体が配置された端面からの反射光の強度を補正するように光拡散反射部(12)の密度分布を設定し、本願発明の相違点2に係る構成とすることは、これを妨げる特段の事情も見当たらず、当業者が容易に想到し、かつ採用し得ることである。

(3)相違点についての検討及び判断のむすび
本願発明は、全体構成でみても、引用発明及び前述した周知の技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものではない。
したがって、本願発明は、引用発明及び前述した周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

8.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-26 
結審通知日 2005-08-30 
審決日 2005-09-13 
出願番号 特願平11-226530
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21V)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日夏 貴史  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 柳 五三
山本 信平
発明の名称 面状照明装置および液晶表示装置  
代理人 須澤 修  
代理人 藤綱 英吉  
代理人 上柳 雅誉  

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