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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1125475
審判番号 不服2003-3149  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-27 
確定日 2005-10-28 
事件の表示 特願2000-337420「カラープルーフ作成用光熱変換ヒートモード記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月19日出願公開、特開2001-162843〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は、平成8年10月22日に出願された特願平8-298190号の一部を特許法44条1項の規定に基づき新たな特許出願としたものであって、平成15年1月17日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年2月27日付けで本件審判請求がされたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年12月13日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「支持体(基体)上に光熱変換層及び着色剤を含むインク層が積層された光熱変換型ヒートモード記録材料と、別の支持体上に受像層を有する光熱変換型ヒートモード受像材料とを、前記記録材料の前記インク層を有する面と前記受像材料の前記受像層を有する面を対面させて重ね合わせ、画像情報に応じた光を照射することにより、網点画像を前記受像材料に作成するカラープルーフ作成用光熱変換型ヒートモード記録装置であり、前記記録材料と前記受像材料とを重ね合わせる前に、前記記録材料のインク層を有する面を、表面が粘着力を持つ粘着性クリーニングローラーを圧接させることによりクリーニングし、かつ、前記受像材料の受像層を有する面を、表面が粘着力を有する粘着性クリーニングローラーを圧接させることによりクリーニングすることを特徴とするカラープルーフ作成用光熱変換型ヒートモード記録装置。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-290731号公報(以下「引用例1」という。)には、次のア〜キの記載が図示とともにある。
ア.「本発明は、薄膜を有するドナーシートに像様に熱エネルギを印加し、ドナーシートから剥離現像によって像様の薄膜を受像材料に転写することにより、面積変調型画像および/または文字等線画像を形成し、カラー画像の形成、特に印刷分野におけるカラープルーフ(DDCP:Direct Digital Color Proof)の作製・・・などを行うことができる多機能型画像形成システムに関し、さらに、・・・ディジタル画像信号に基づくレーザヘッドのヒートモード記録、サーマルヘッドによる感熱記録とを要求される画像品質に応じて切り換えて画像形成可能な画像形成システムに関する。」(段落【0001】)
イ.「レーザへの通電時間、従って、・・・レーザの発光時間を制御することにより、軟化、溶融もしくは気化、昇華するインクの量もしくは面積を変調し、インクの濃度変調もしくはハーフトーン(網点)の面積変調を行って、各画素の濃度階調を得ることもできる。」(段落【0005】)
ウ.「図3に示される例において、色材シート10は、支持体18、支持体18上に形成され、光熱変換物質を含む光熱変換層19、光熱変換層19上に形成される熱剥離層20および熱剥離層20上に形成されるトナー等の顔料を含む色材薄膜(以下、色材層という)22とを有する。」(段落【0024】)
エ.「受像材料12は、受像支持体26、受像支持体26上に形成されるクッション層28、およびクッション層28上に形成される受像層16とを有する。」(段落【0054】)
オ.「クッション層28は、弾性を有する層で、転写時における色材シート10と受像材料12との押圧力を吸収し、かつ色材層22と受像層16との良好な密着を可能とし、両者間に介在するゴミやチリなどを埋め込むことができるものである。」(段落【0055】)
カ.「レーザヘッドによるヒートモード記録(サーマルプリント)方式でカラープループ(審決注;「カラープルーフ」の誤記と認める。)を作成するプロセスの一例を以下、図3に示す画像記録工程を順を追って説明する図3に示される画像記録工程においては、まず図3(a)に示されるように、受像材料12上に色材層22と受像層16とが対面するように搬送し、図3(b)に示されるように、保護シート17を受像材料12から剥がして、色材シート10と受像材料12を積層する。その場合、加熱ローラなどのラミネート手段によって加圧加熱して積層し、色材層22と受像層16とを均一の粘着力で接着すると均一厚画像を得る上で好ましい。」(段落【0063】)
キ.「ヒートモード露光によって熱エネルギが像様に印加され、・・・剥離ムラや見当ズレ等のない1色の高画質、高解像度、高階調網点画像を得ることができる。」(段落【0078】)

2.引用例1記載の発明の認定
記載ア〜キを含む引用例1の全記載及び図示によれば、レーザヘッドによるヒートモード記録で面積変調を行う場合には、画像情報に応じた光を照射することにより網点画像を受像材料に作成することが明らかである。
したがって、引用例1にはカラープルーフ作成用のヒートモード記録装置として次のような発明が記載されていると認めることができる。
「支持体、支持体上に形成された光熱変換層、光熱変換層上に形成された熱剥離層及び熱剥離層上に形成された色材層を有する色材シートと、受像支持体、受像支持体上に形成されたクッション層及びクッション層上に形成された受像層とを有する受像材料とを、色材層と受像層とが対面するように搬送し、画像情報に応じた光を照射することにより網点画像を受像材料に作成するカラープルーフ作成用のヒートモード記録装置。」(以下「引用発明1」という。)

3.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用発明1の「支持体」、「光熱変換層」、「色材層」及び「色材シート」並びに「受像支持体」、「受像層」及び「受像材料」は、本願発明の「支持体(基体)」、「光熱変換層」、「着色剤を含むインク層」及び「光熱変換型ヒートモード記録材料」並びに「別の支持体」、「受像層」及び「光熱変換型ヒートモード受像材料」にそれぞれ相当し、引用発明1において「支持体」、「光熱変換層」及び「色材層」は積層されている。
したがって、本願発明と引用発明1とは、
「支持体(基体)上に光熱変換層及び着色剤を含むインク層が積層された光熱変換型ヒートモード記録材料と、別の支持体上に受像層を有する光熱変換型ヒートモード受像材料とを、前記記録材料の前記インク層を有する面と前記受像材料の前記受像層を有する面を対面させて重ね合わせ、画像情報に応じた光を照射することにより、網点画像を前記受像材料に作成するカラープルーフ作成用光熱変換型ヒートモード記録装置。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉本願発明が「前記記録材料と前記受像材料とを重ね合わせる前に、前記記録材料のインク層を有する面を、表面が粘着力を持つ粘着性クリーニングローラーを圧接させることによりクリーニングし、かつ、前記受像材料の受像層を有する面を、表面が粘着力を有する粘着性クリーニングローラーを圧接させることによりクリーニングする」(審決注;本願発明が記録装置の発明であることを考慮し、「・・・クリーニングする手段を有する」の趣旨であると解する。)のに対し、引用発明1は同構成を有さない点。

4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭59-182768号公報(以下「引用例2」という。)には、次のク〜スの記載が図示とともにある。
ク.「記録ヘッドとプラテンローラとの間で、熱溶融性もしくは熱昇華性のインク層を有するインクシートの前記インク層と記録シートとを接触させ、前記記録ヘッドに信号を印加してインク層のインクを選択的に記録シート上に転写せしめる熱転写記録装置において、記録シート上にインクが転写される転写部以前の前記インクシートおよび記録シートの搬送経路中に配設され、前記インクシートおよび記録シートの両シートに付着した粉塵を除去する粉塵除去手段を有す熱転写記録装置。」(1頁左下欄1〜14行)
ケ.「粉塵除去手段をローラで構成し、少なくともローラ表面部分を粘性の高い多孔質の材料にして、インクシートおよび記録シートに接触させることを特徴とする特許請求の範囲第1項および第2項記載の熱転写記録装置。」(1頁左下欄末行〜右下欄4行)
コ.「本発明者は転写ムラの種々の要因を研究したところインクシートおよび記録シートに付着する粉塵等が画質に影響していることを突止めた。」(2頁左上欄11〜14行)
サ.「粉塵除去ローラ5A,5B,5C,5Dは、第3図に具体的構成が示めされているとおり、少なくともそのローラー表面が粘性の高い多孔質の材料たとえばシリコン、ウレタンのような発泡材からなるローラ5が各々用いてられている。」(3頁左上欄7〜11行)
シ.「第3図に示すように、それらのシート面に付着した粉塵Dはローラ5の表面に配設された無数の孔5Hに吸収されるごとく払拭される。」(3頁左上欄18行〜右上欄1行)
ス.「上述した粉塵除去手段は、粘性の高い多孔質からなるローラを用いる例を示したが、これ以外にインクシートおよび記録シートにエアを吸付けて粉塵を除去する手段あるいはブラシをあてて粉塵を除去する手段等種々のものが考えられる。」(4頁左下欄12〜16行)
セ.「上述した粉塵除去ローラはインクシートおよび記録シートの各々両面に配設する必要もなく、インクシートと記録シートSとの対面側の粉塵除去ローラ5A,5Cだけにしてもよい。」(4頁右下欄10〜13行)

これら引用例2の記載によると、インクシートから記録シートに熱転写記録をするに際し、インクシート及び記録シートに付着した粉塵が、転写ムラの原因となっており、インクシートと記録シートを重ね合わせる前に粉塵除去ローラ等の粉塵除去手段により粉塵を除去することが、良好な熱転写を行う上で有効であることが把握できる。
引用例2記載の「インクシート」は光熱変換層を有さない点で本願発明の「記録材料」又は引用発明1の「色材シート」と異なるけれども、光熱変換層の有無と粉塵の悪影響に多大な関係があると認めることはできない。また、引用例2記載の「記録シート」が「支持体上に受像層を有する」とはいえないけれども、「記録材料」又は「インクシート」からインクが転写されるシートである点で共通するのだから、引用発明1の受像材料上に粉塵が存在する場合も、転写ムラの原因となることは当業者であれば直ちに看取できることがらである。
そうであれば、引用発明1においても、色材シート及び受像材料上の粉塵を除去すべく(当然、、色材シート及び受像材料を重ね合わせる前である。)、引用例2記載の粉塵除去手段を設けることは当業者にとって想到容易といわざるを得ない。
この点請求人は、「引用例1の段落【0113】には、受像材料にクッション層を有するものでは、ゴミ等を受容できるので、ゴミなどの影響を受けにくい画像形成が可能である旨も記載されるが、記録装置側で異物による転写不良を、「前記記録材料と前記受像材料とを重ね合わせる前に、前記記録材料のインク層を有する面を、表面が粘着力を持つ粘着性クリーニングローラーを圧接させることによりクリーニングし、かつ、前記受像材料の受像層を有する面を、表面が粘着力を有する粘着性クリーニングローラーを圧接させることによりクリーニングすること」により解消する本発明の技術思想を示唆する物は何もありません。」(平成15年6月26日付け手続補正書(方式)5頁13〜20行)と主張する。この主張は、本願発明が引用発明1と同一でないことの主張、又は引用発明1のみに基づく進歩性の主張としては理解できるものの、ここで問題としているのは引用発明1に引用例2記載の技術を適用することの容易性であるから主張自体失当である。すなわち、引用例1に異物による転写不良が生じること及び転写不良をクリーニングにより解消することが示唆されていなければ、引用発明1にクリーニング手段(引用例2記載の粉塵除去手段はクリーニング手段である。)を適用することができないわけではない。なぜなら、引用例1以外の文献により異物による転写不良が生じることや、それがクリーニングにより解消することが記載されているか、引用例1以外の文献から当業者がそのことを看取できるならば、引用発明1にクリーニング手段を採用する動機は十分あるからである。なお、請求人の主張する段落【0113】には「受像材料にクッション層を有するものでは、ゴミ等を受容できるので、ゴミなどの影響を受けにくい画像形成が可能である。」と記載があるけれども、「ゴミなどの影響を受けにくい」のであって「影響を受けない」のではなく、事前にゴミ(粉塵を含む)を除去しておけば一層良好な画像形成が可能となることは当業者が明確に理解できるところであるから、引用例2記載の粉塵除去手段を適用することを妨げる理由にはならない。
また、引用例2記載の粉塵除去手段について、実施例としては表面が粘性の高い多孔質の材料からなるローラーが採用されており、粘性の高い多孔質の材料が粘着力を有するとはいえないかもしれないが、粉塵を除去できるものであれば、いかなる手段も採用可能であることは記載スにあるとおりであるから、ローラーを採用するに当たっても、粉塵を除去できるような表面であれば引用例2記載の実施例にこだわる必要はない。そして、粉塵除去ローラーとしては、その表面が粘着力を有するもの(本願発明でいう「粘着性クリーニングローラー」)は実願平1-67514号(実開平3-6933号)のマイクロフィルム、実願平4-66052号(実開平5-56053号)のCD-ROM、特開平6-239034号公報又は特開平8-144041号公報にみられるように周知であるから、引用発明1に引用例2記載の粉塵除去手段を適用する(記録材料と受像材料とを重ね合わせる前に、記録材料のインク層を有する面及び受像材料の受像層を有する面の粉塵を除去、すなわちクリーニングする)に当たり、粉塵除去手段として粘着性クリーニングローラーを採用することは設計事項というべきである。また、粘着性クリーニングローラーにより粉塵除去を行う場合、除去対象に圧接させることは当然である。
以上のとおり、相違点に係る本願発明の構成は当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は、引用発明1、引用例2記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-18 
結審通知日 2005-08-23 
審決日 2005-09-05 
出願番号 特願2000-337420(P2000-337420)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾崎 俊彦  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 藤本 義仁
藤井 靖子
発明の名称 カラープルーフ作成用光熱変換ヒートモード記録装置  

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