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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03B
管理番号 1125766
異議申立番号 異議2003-70299  
総通号数 72 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-04-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-01-28 
確定日 2005-08-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3309849号「透過型スクリーンおよび透過型液晶表示装置」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3309849号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3309849号の請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明3」、「本件発明4」、「本件発明5」という)は、平成7年10月25日に出願した特願平7-277484号の一部を平成12年8月21日に新たな特許出願としたものであって、平成14年5月24日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、特許異議申立人株式会社 ディスクにより特許異議の申立てがなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成15年11月4日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の可否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は以下のa、bのとおりである。
1).訂正事項a
請求項1において「各シリンドリカルレンズの集光作用に基づいて感光した非粘着部を除いた境界部に相当する位置に、ストライプ状の遮光パターンが転写により形成され、」とあるのを、
「各シリンドリカルレンズの集光作用に基づいて感光した非粘着部を除いた境界部に相当する粘着部のみの位置に、ストライプ状の遮光パターンが転写紙から転写層を転移させることにより形成され、」と訂正する。

2).訂正事項b
明細書段落番号0013に「各シリンドリカルレンズの集光作用に基づいて感光した非粘着部を除いた境界部に相当する位置に、ストライプ状の遮光パターンが転写により形成され、」とあるのを、「各シリンドリカルレンズの集光作用に基づいて感光した非粘着部を除いた境界部に相当する粘着部のみの位置に、ストライプ状の遮光パターンが転写紙から転写層を転移させることにより形成され、」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、訂正前の請求項1の特許請求の範囲の減縮に該当し、また、請求項1について新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、上記訂正事項bは、上記訂正事項aの訂正に伴って、発明の詳細な説明の記載を適合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書、及び3項において準用する第126条第2,3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断
(1)特許異議申立人 株式会社 ディスクは、本件発明1-5は、甲第1号証〜甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明1-5の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、当該特許は取り消されるべきものである旨主張している。

(2)本件発明
上記2.で示したとおり、上記訂正は認められるから、本件発明1-5は、平成15年11月4日付けの訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1-5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

請求項1
フレネルレンズシートと、透明支持体の片面に、放射線硬化型樹脂の硬化物により形成された凸シリンドリカルレンズが0.3mm以下の間隔で並設されてなるレンズ部が形成されており、かつ、前記支持体の他面である平坦な表面には、紫外線露光前に粘着性を有する紫外線感光性樹脂層を介して、前記紫外線感光性樹脂層の表面の、各シリンドリカルレンズの集光作用に基づいて感光した非粘着部を除いた境界部に相当する粘着部のみの位置に、ストライプ状の遮光パターンが転写紙から転写層を転移させることにより形成され、さらに、前記遮光パターンの観察側に拡散層を設けた構成のレンチキュラーシート、とを組み合わせてなることを特徴とする透過型スクリーン。

請求項2
前記レンチキュラーレンズシートのレンズ部の厚みを、0.1mm〜0.2mmの範囲としたことを特徴とする請求項1記載の透過型スクリーン。

請求項3
前記レンチキュラーレンズシートの光拡散層の観察側に、帯電防止機能を有する保護フィルムが積層された構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の透過型スクリーン。

請求項4
前記レンチキュラーレンズシートの光拡散層の観察側に、反射防止機能を有する保護フィルムが積層された構成としたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の透過型スクリーン。

請求項5
請求項1〜4の何れかに記載の透過型スクリーンを、液晶表示部の観察者側に配置した構成であることを特徴とする透過型液晶表示装置。

(3)刊行物記載の発明
当審が通知した取消しの理由に引用された甲第1号証である刊行物(特開平3-127041号公報)(以下、「刊行物1」という。)には次の事項が記載されている。
ア.「プロジェクションTV等に用いられる透過形スクリーンは、レンチキュラーレンズシートと他のレンズシートとを組み合わせたものが多い。」(2頁左下欄3-5行)

イ.「第1図は、本発明による透過形スクリーンの第1の実施例の一部を抜き出して示した断面図である。この例の透過形スクリーン1は、ベースフィルム11の光源側に第1のレンチキュラーレンズ部12を複数平行に形成してあり、観察側の非集光面11bに帯状の遮光層13を形成してある。・・・第1のレンチキュラーレンズ部12は、光源光を集光および拡散させるものであり、電離放射線硬化形樹脂により成形してある。電離放射性硬化形樹脂としては、例えば、エポキシ、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ウレタンアクリレート等を用いることができ、透明性があることが望ましい。遮光層13は、コントラストを向上させるために設けられており、第1のレンチキュラーレンズ部12の非集光面11bに帯状に形成してある。遮光層13は、黒色の顔料等を分散したインキ等を用いて、ベースフィルム11上に印刷することにより形成される。」(2頁右上欄1行-同左下欄15行)

ウ.「最後に、製造例をあげて、製造工程に従い、さらに具体的に説明する。ベースフィルム11として、厚さ100μmのPETフィルムを用いており、その表面にアクリルウレタン系のプライマーを塗布した。金型ロール3は、直径500mm、幅500mmの大きさのものを用いており、その表面には、長径0.16mm、短径0.11mm、ピッチ0.21mmの楕円形状のレンチキュラーレンズ型が形成してある。」(6頁左下欄13行-同右下欄2行)

したがって、刊行物1には、第1図も参照すると、
「他のレンズシートと、ベースフィルム11の光源側に、電離放射線硬化形樹脂により形成されたピッチ0.21mmの楕円形状のレンチキュラーレンズが、複数平行に形成してあり、平坦な表面である観察側の、非集光面11bに帯状の遮光層13を形成されたレンチキュラーシート、とを組み合わせた透過型スクリーン。」(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されている。

また、同じく甲第2号証である刊行物(特開平4-340534号公報)(以下、「刊行物2」という。)には次の事項が記載されている。
エ.「従来、透過形スクリーンの構成としては図4の投射型テレビジョン受像機に示すように、赤色発光CRT11、緑色発光CRT12、青色発光CRT13および赤色光投射レンズ14、緑色光投射レンズ15、青色光投射投射レンズ16の前面にフレネルレンズ17とレンチキュラーレンズシート18とを重ねて配置した構成のものが用いられている。」(3頁左欄43-49行)

オ.「図1は本発明の第一の実施例の透過形スクリーン用レンチキュラーレンズシートの断面図を示す。図1において、レンチキュラーレンズシート10は、入射光側となるスクリーン基材1の一方の主平面にレンチキュラーレンズ2を形成している。そして、もう一方の出射光側主平面にフィルムシート3を一体的に積層・接着してなるものである。フィルムシート3はスクリーン基材1と屈折率が近似しているか同一部材たとえば透明アクリル樹脂などで厚さ寸法100〜200μm程度に構成するとともに、着色したり内部に所定の光拡散材5例えば粒径3μm程度の顔料・微細シリカ・アルミナ・ガラスビーズなどを2〜3重量%混入している。さらにフィルムシート3は出射光側表面に帯電防止用の透明電極層4たとえば酸化錫被膜や酸化インジューム被膜を表面抵抗率1.0×1013 Ω以下となるよう膜厚寸法を所定に例えば0.1〜0.01μm程度にコーティングしてなるものである。」(3頁右欄48行-4頁左欄14行)

また、同じく甲第3号証である刊行物(特開平7-248537号公報)(以下、「刊行物3」という。)には次の事項が記載されている。
カ.「本発明の透過型スクリーン200は光入射光側にフレネルレンズシート1を、該前面に透明なレンチキュラーレンズシートを2を、観察者に最も近い出射光側に、光拡散性微粒子(拡散材)8を含む薄型拡散層9と、透明層10との2層からなる前面拡散パネル3とを配置した3枚構成としている。」(3頁右欄36-41行)

キ.「第3の実施例は、外光コントラストの改善、写り込みの防止、ホコリやゴミの付着のない鮮明な画像を目的とし、帯電防止処理と反射防止処理を同時に対策したことを特徴とする。即ち、第一の実施例または第二の実施例において、フレネルレンズシートの光入射光側平面と、拡散パネルの観察者に最も近い主平面側とに帯電防止膜32を形成することにより、静電気によるホコリやゴミ付着を防止する。さらに、第一の実施例または第二の実施例において、フレネルレンズシートと、レンチキュラレンズシートと、拡散パネルの内、少なくとも一つの構成部材に反射防止膜33を塗布、乾燥させることにより、外光コントラストの改善と、写り込みのない画像を得ることを特徴とする。まず、帯電防止膜32を前述のごとくフレネルレンズシート1Bと拡散パネル3Bの所定表面に形成する。次に、該帯電防止膜32に重ねて反射防止膜33を少なくとも一つの構成部材に形成する。上記構成により摩擦や電荷による静電気が発生しても、反射防止膜33の表面に静電気による帯電を防止できる特徴を有している。」(6頁左欄3-21行)

また、同じく甲第5号証である刊行物(特開昭50-136028号公報)(以下、「刊行物4」という。)には次の事項が記載されている。
ク.「図面により本発明を説明すれば、第1図に示す如く、透明なレンチキュラースクリーン(1)の裏面に感光性樹脂を回転塗布機等で均一に塗布し、感光性樹脂層(2)を設け、次にレンチキュラー・スクリーン(1)側より露光し、レンチキュラー・スクリーン(1)のレンズ効果により集光された光を受けた感光性樹脂層に潜像を形成し、現像液により感光性樹脂ストライプパターンを形成する。次に該感光性樹脂ストライプ黒色染色液を用いて染色し、黒色のストライプパターン(3)を形成し、該ストライプパターン(3)上にクリヤラッカー等をスプレー等で均一に吹付けて塗布層(4)を設け、さらに必要に応じて塗布層(4)の表面をボール研磨あるいはサンドブラスト法等の表面研磨法で処理し、粗面化してなるものである。」(1頁右下欄10行-2頁左上欄4行)

また、同じく特開昭59-121033号公報(以下、「刊行物5」という。)には次の事項が記載されている。
ケ.「本発明はレンチキュラーレンズ又はモザイク状レンズ等より成る透過形投射スクリーンの観察面側にポジ形感光性粘着剤、即ち感光することで粘着性が消失する粘着剤を配設し、この粘着剤面と反対面より投射光源又はこれと同等の開口を有する光源から投射した光線で該粘着剤を露光し、上記レンズ系の各単位レンズの集光部の粘着性を失わせた後、観察面上から遮光性トナーを散布し、粘着性の残っている未露光部分に粘着させ、露光により粘着性のなくなった部分に付着しただけのトナー及び余剰のトナーを除去することにより、ウエットプロセスを必要とせず容易かつ安価に遮光性に優れたパターンを形成した透過形投射スクリーンを得るものである。」(2頁左下欄13行-同右下欄6行)

コ.「露光用光源としては365nm付近の紫外線を多量に含むものであれば良く」(3頁右上欄10-13行)

また、同じく甲第7号証である刊行物(特開昭62-236282号公報)(以下、「刊行物6」という。)には次の事項が記載されている。

サ.「第1図は本発明における背面投射型表示装置の構成図である。光源1からの光束は集光レンズ2により集光され、マトリクス型ライトバルブ3で画像情報が与えられる。・・・マトリクス型ライトバルブとしては薄膜トランジスタを用いた液晶マトリクス型パネル、(詳細は、日経エレクトロニクス.1984年9月10日号211〜240頁記載を参照されたい)を用いた。スクリーン5は全体で凸レンズ作用をするフレネルレンズ面6と、1次元性レンズである投影画素ピッチの1/2以下のピッチを有するレンチキュラーレンズ面7が形成されている。」(2頁左下欄1行-13行)

(4)本件発明1の特許について
上記認定事項から、刊行物1発明における「ベースフィルム11」は、本件発明1の「透明支持体」に、以下、同様に「光源側」は「片面」に、「電離放射線硬化形樹脂により形成」は「放射線硬化性樹脂の硬化物により形成」に、「楕円形状のレンチキュラーレンズ」は「凸シリンドリカルレンズ」に、「複数平行に形成」は「並設」に、「観察側」は「他面」に、「非集光面11b」は「境界部」に、「帯状の遮光層13」は「ストライプ状の遮光パターン」にそれぞれ相当するから、両者は、
「レンズシートと、透明支持体の片面に、放射性硬化性樹脂の硬化物により形成された凸シリンドリカルレンズが並設されてなるレンズ部が形成されており、かつ、前記支持体の他面である平坦な表面には、境界部にストライプ状の遮光パターンが形成されたレンチキュラーシート、とを組み合わせてなる透過型スクリーン。」
である点で一致し、以下の4点で相違する。

相違点1;本件発明1が、フレネルレンズシートとレンチキュラーシートとを組み合わせて透過型スクリーンを構成したのに対し、刊行物1発明が、レンチキュラーシートと組み合わせるレンズシートをフレネルレンズに限定していない点。

相違点2;本件発明1が、凸シリンドリカルレンズが0.3mm以下の間隔で並設されているのに対し、刊行物1発明には係る限定が付されていない点。

相違点3;本件発明1が、ストライプ状の遮光パターンを、紫外線露光前に粘着性を有する紫外線感光性樹脂層を介して、前記紫外線感光性樹脂層の表面の、各シリンドリカルレンズの集光作用に基づいて感光した非粘着部を除いた境界部に相当する粘着部のみの位置に、転写紙から転写層を転移させることにより形成したのに対し、刊行物1発明がそのような構成を採用していない点。

相違点4;本件発明1が、遮光パターンの観察側に拡散層を設けたのに対し、刊行物1発明がそのような構成を採用していない点。

以下、相違点について検討する。
相違点1;フレネルレンズとレンチキュラーシートとを組み合わせて透過型スクリーンを構成することは、刊行物2、3に記載されているように従来周知の技術であり、刊行物1発明において、組み合わせるレンズシートをフレネルレンズとすることは当業者にとって容易である。

相違点2;上記刊行物1発明は、ピッチ0.21mmの間隔で凸シリンドリカルレンズを並設しており、これは本件発明1の0.3mm以下の間隔に含まれている。また、0.3mm以下の数値範囲に臨界的意義があるとすることもできないので、刊行物1発明において、凸シリンドリカルレンズを0.3mm以下の間隔で並設することは当業者が容易に想到しえたものというべきである。

相違点3;刊行物5には、レンチキュラーレンズより成る透過型投射スクリーンの観察面側に感光することで粘着性が消失する粘着剤を配設し、この粘着剤面と反対面より投射光源から投射した光線で該粘着剤を露光し、上記レンズ系の各単位レンズの集光部の粘着性を失わせた後、観察面上から遮光性トナーを散布し、粘着性の残っている未露光部分に粘着させ、露光により粘着性のなくなった部分に付着しただけのトナー及び余剰のトナーを除去することにより、遮光性に優れたパターンを形成すること(上記記載事項ケ参照)、また、光源として紫外線を多量に含むものを用いること(上記記載事項コ参照)、が開示されている。また、転写紙から転写層を転移させることによりストライプ状の遮光パターンを形成することは従来周知の技術であり(例えば、特開平4-156441号公報参照)、刊行物1発明において、刊行物5に記載された技術事項及び当該周知技術を適用し、「紫外線露光前に粘着性を有する紫外線感光性樹脂層を介して、前記紫外線感光性樹脂層の表面の、各シリンドリカルレンズの集光作用に基づいて感光した非粘着部を除いた境界部に相当する粘着部のみの位置に、ストライプ状の遮光パターンが転写紙から転写層を転移させることにより形成され」る構成とすることは、当業者にとって容易である。

相違点4;遮光パターン上に拡散層を形成することは刊行物4に開示されており(上記記載事項ク参照)、上記刊行物1発明において、上記刊行物4に記載された技術事項を適用することは、当業者にとって容易である。

そして、本件発明1の作用効果も、刊行物1〜5及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

したがって、本件発明1は、刊行物1〜5に記載された発明、および周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明1の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(5)本件発明2の特許について
本件発明2は、本件発明1に「レンチキュラーレンズシートのレンズ部の厚みを、0.1mm〜0.2mmの範囲とした」構成を付加したものである。

上記付加された構成について検討すると、刊行物1には、「長径0.16mm、短径0.11mm、ピッチ0.21mmの楕円形状のレンチキュラーレンズ型が形成してある」(上記記載事項ウ参照)と記載されており、ここで刊行物1の第1図を参照すると、「長径」が本願発明2における「レンズ部の厚み」に相当することが明らかである。してみれば、刊行物1発明は、レンズ部の厚みを0.16mmとしており、これは本件発明2の0.1mm〜0.2mmの範囲に含まれている。そして、0.1mm〜0.2mmの数値範囲に臨界的意義があるとすることもできないので、刊行物1発明において、レンチキュラーレンズシートのレンズ部の厚みを、0.1mm〜0.2mmの範囲とすることは当業者が容易に想到しえたものというべきである。

そして、本件発明2の作用効果も、刊行物1〜5及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

したがって、本件発明2は、刊行物1〜5に記載された発明、および周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明1の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(6)本件発明3の特許について
本件発明3は、本件発明1に「レンチキュラーレンズシートの光拡散層の観察側に、帯電防止機能を有する保護フィルムが積層された構成」を付加したものである。

上記付加された構成について検討すると、拡散層上に帯電防止機能を有する膜を積層することは、刊行物3に開示されており(上記記載事項キ参照)、積層させるものとして、膜に替えてフィルムを採用することは、当業者が適宜選択可能な設計上の事項にすぎないから、刊行物1発明において、当該刊行物3に記載された技術事項を適用し、「レンチキュラーレンズシートの光拡散層の観察側に、帯電防止機能を有する保護フィルムを積層」することは当業者にとって容易である。

そして、本件発明3の作用効果も、刊行物1〜5及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

したがって、本件発明3は、刊行物1〜5に記載された発明、および周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明3の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(7)本件発明4の特許について
本件発明4は、本件発明1〜3の何れかに「レンチキュラーレンズシートの光拡散層の観察側に、反射防止機能を有する保護フィルムが積層された構成」を付加したものである。

上記付加された構成について検討すると、拡散層上に反射防止機能を有する膜を積層することは刊行物3に開示されており(上記記載事項キ参照)、積層させるものとして、膜に替えてフィルムを採用することは、当業者が適宜選択可能な設計上の事項にすぎないから、刊行物1発明において、当該刊行物3に記載された技術事項を適用し、「レンチキュラーレンズシートの光拡散層の観察側に、帯電防止機能を有する保護フィルムを積層」することは当業者にとって容易である。

そして、本件発明4の作用効果も、刊行物1〜5及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

したがって、本件発明4は、刊行物1〜5に記載された発明、および周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明4の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(8)本件発明5の特許について
本件発明5は、本件発明1〜4の何れかを「液晶表示部の観察者側に配置した構成」としたものである。

上記構成について検討すると、フレネルレンズとレンチキュラーシートとからなるスクリーンを液晶マトリクス型パネル(液晶表示部に相当)の観察者側に配置することは刊行物6に開示されており(上記記載事項サ参照)、刊行物1発明において、当該刊行物6に記載された技術事項を適用することは、当業者にとって容易である。

そして、本件発明5の作用効果も、刊行物1〜6及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。

したがって、本件発明5は、刊行物1〜6に記載された発明、および周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明5の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1-5の特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1-5についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める制令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
透過型スクリーンおよび透過型液晶表示装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】フレネルレンズシートと、
透明支持体の片面に、放射線硬化性樹脂の硬化物により形成された凸シリンドリカルレンズが0.3mm以下の間隔で並設されてなるレンズ部が形成されており、
かつ、前記支持体の他面である平坦な表面には、紫外線露光前に粘着性を有する紫外線感光性樹脂層を介して、前記紫外線感光性樹脂層の表面の、各シリンドリカルレンズの集光作用に基づいて感光した非粘着部を除いた境界部に相当する粘着部のみの位置に、ストライプ状の遮光パターンが転写紙から転写層を転移させることにより形成され、
さらに、前記遮光パターンの観察側に拡散層を設けた構成のレンチキュラーシート、
とを組み合わせてなることを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項2】前記レンチキュラーレンズシートのレンズ部の厚みを、0.1mm〜0.2mmの範囲としたことを特徴とする請求項1記載の透過型スクリーン。
【請求項3】前記レンチキュラーレンズシートの光拡散層の観察側に、帯電防止機能を有する保護フィルムが積層された構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の透過型スクリーン。
【請求項4】前記レンチキュラーレンズシートの光拡散層の観察側に、反射防止機能を有する保護フィルムが積層された構成としたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の透過型スクリーン。
【請求項5】請求項1〜4の何れかに記載の透過型スクリーンを、液晶表示部の観察者側に配置した構成であることを特徴とする透過型液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートとの組み合わせよりなる透過型スクリーンに関し、特に、液晶プロジェクターを用いる単管式の液晶プロジェクションテレビに代表される透過型液晶表示装置向けとして使用するのに適した透過型スクリーンに関する。
【0002】
【従来の技術】
透過型スクリーンは、一般にフレネルレンズシートとレンチキュラーレンズシートとを組み合わせてなる構成である。前記レンチキュラーレンズシートは、図3に示すように、両面に凸シリンドリカルレンズ面が形成され、片面(映像光の出射側)の各シリンドリカルレンズの境界部には突起が形成され、突起の上部には遮光層(光吸収性の黒色ストライプ)が形成された構成であるのが一般的である。
【0003】
このように、レンチキュラーレンズシートの表裏に、凸シリンドリカルレンズ面が形成されているのは、プロジェクタ(光源)が3管式のCRT方式の場合、表裏のレンズで3色のズレを補正するのに適しているためである。
【0004】
近年、液晶プロジェクションテレビに代表される透過型液晶表示装置が普及し、その映像を観察するのに適した透過型スクリーンが要求されている。具体的には、映像画質の高精細化に伴い、液晶プロジェクターの画素数も増大しており、同時に、レンチキュラーレンズシートに対しても凸シリンドリカルレンズのファインピッチ化が要求されている。例えば、現状の凸シリンドリカルレンズのピッチが0.7mm前後であるのを、0.3mm以下のファインピッチ化することが要求されている。
【0005】
このレンチキュラーレンズシートは、両面に凸シリンドリカルレンズ面が形成されている構成であるので、透明な熱可塑性樹脂シートに対してプレス成型を行なったり、溶融押し出しと同時に両面成型を行なうことにより得られているのが現状である。しかし、熱可塑性樹脂に対する各種の成型法では、上記のファインピッチ化が非常に困難であった。その理由は、熱成型後の冷却時に温度の不均一が生じ、成型物に反りが発生したり、熱収縮の不均一が発生するというプラスチック特有の熱戻り現象に起因するためである。
【0006】
一方、ファインピッチなレンズシートを成型するのに好適な製造方法として、紫外線(または、電子線)硬化性樹脂を用いた各種の成型方法が知られており、以下に例示する成形方法が例示される。
【0007】
特開昭61-177215号フレネル金型と透明樹脂板との隙間に紫外線硬化性樹脂を注入して、紫外線を照射することにより、前記透明樹脂板と、この透明樹脂板に重合接着され、かつ反透明樹脂板側にフレネルレンズ面を有する紫外線硬化性樹脂とを備えてなるフレネルレンズ(およびその製造方法)。
【0008】
特開昭63-134227号フレネル金型に紫外線(電子線)硬化性樹脂を塗布した後、前記樹脂にフィルムを脱泡しながらラミネートし、紫外線(電子線)を照射して成型後、フィルム(および樹脂)を離型した後、透明基板と一体化する。
【0009】
上記に代表される、紫外線(電子線)硬化性樹脂を用いた成型方法では、レンチキュラーレンズシートではなく、複雑な形状のフレネルレンズシートの製造を目的としているものが殆どであり、透過型スクリーン用の遮光パターンを有するレンチキュラーレンズシートの製造に関する提案はなされていないのが現状であった。
【0010】
また、既存の透過型スクリーンの観察側に用いるレンチキュラーレンズシートは、観察時の視野角度を拡げるために、SiO2,Al2O3,CaCO3などの光拡散材をレンチキュラーレンズシートに混入させたり、上記光拡散材を練り込んだ拡散フィルム、または上記光拡散材を結合剤と混合し塗料としたものを塗布した拡散フィルム、などの光拡散層を、レンチキュラーレンズシートの観察側表面に積層するなどしている。何れの場合においても、遮光パターン(ブラックストライプ)が、レンチキュラーレンズシートの最も観察側に近い位置、または拡散層上に遮光パターン(ブラックストライプ)が形成されており、外側に露出して傷が付き易いという問題がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高精細・高画質の液晶プロジェクションテレビの観察に好適な、フレネルレンズシートと、ファインピッチな凸シリンドリカルレンズを有するレンズ部と共に、そのレンズ部のピッチに対応するファインピッチな遮光パターンの形成されたレンチキュラーレンズシートを組み合わせた、透過型スクリーン、およびこの透過型スクリーンを用いた液晶プロジェクション表示装置を提供することを課題とする。
【0012】
また、本発明は、視野角度が広く、レンズ部に設けた遮光パターン(ブラックストライプ)が、外側に露出して傷が付く問題を解決したレンチキュラーレンズシートを用いた透過型スクリーンを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、フレネルレンズシートと、透明支持体の片面に、放射線硬化性樹脂の硬化物により形成された凸シリンドリカルレンズが0.3mm以下の間隔で並設されてなるレンズ部が形成されており、かつ、前記支持体の他面である平坦な表面には、紫外線露光前に粘着性を有する紫外線感光性樹脂層を介して、前記紫外線感光性樹脂層の表面の、各シリンドリカルレンズの集光作用に基づいて感光した非粘着部を除いた境界部に相当する粘着部のみの位置に、ストライプ状の遮光パターンが転写紙から転写層を転移させることにより形成され、さらに、前記遮光パターンの観察側に拡散層を設けた構成のレンチキュラーシート、とを組み合わせてなることを特徴とする透過型スクリーンである。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記レンチキュラーレンズシートのレンズ部の厚みを、0.1mm〜0.2mmの範囲としたことを特徴とする請求項1記載の透過型スクリーンである。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記レンチキュラーレンズシートの光拡散層の観察側に、帯電防止機能を有する保護フィルムが積層された構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の透過型スクリーンである。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記レンチキュラーレンズシートの光拡散層の観察側に、反射防止機能を有する保護フィルムが積層された構成としたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の透過型スクリーンである。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の透過型スクリーンを、液晶表示部の観察者側に配置した構成であることを特徴とする透過型液晶表示装置である。
【0018】
<作用>
本発明の透過型スクリーンに用いるレンチキュラーレンズシートは、紫外線(電子線)硬化性樹脂を用いることによって、熱可塑性樹脂による成型品では実現不可能なレンズ部の凸シリンドリカルレンズピッチが、0.3mm以下のファインピッチ化が可能であり、最小ピッチ50μmまでの微細なピッチのレンチキュラーレンズ部を作製することができる。
【0019】
しかもこのレンチキュラーレンズシートのレンズ部のピッチに対応した遮光パターンを形成したレンチキュラーレンズシートが得られるので、ファインピッチに対応した透過型スクリーンとすることができる。
【0020】
また、既存の透過型スクリーンの観察側に用いるレンチキュラーレンズシートは、観察時の視野角度を拡げるために、SiO2,Al2O3,CaCO3などの光拡散材をレンチキュラーレンズシートに混入させたり、上記光拡散材を練り込んだ拡散フィルム、または上記光拡散材を結合剤と混合し塗料としたものを塗布した拡散フィルム、などの光拡散層を、レンチキュラーレンズシートに設けた遮光パターンの(上から)観察側表面に積層した構成としたので、遮光パターンが外側に露出して傷が付き易いという問題が解消できる。
【0021】
光拡散層上に、帯電防止機能または反射防止機能を有するフィルムが積層された構成とすることにより、レンチキュラーレンズシートの使用時にそれぞれの機能を発揮すると共に、光拡散層を保護する役目を果たすことになる。
【0022】
【発明の実施の形態】
図面を参照して、本発明を詳細に説明する。図1は、透過型スクリーンのフレネルレンズシートと組み合わせて用いるレンチキュラーレンズシートに関する断面説明図である。フレネルレンズシート(図示せず)と、透明支持体(22)の片面に、放射線硬化性樹脂の硬化物により形成された凸シリンドリカルレンズが並設されてなるレンズ部(21)が、形成されており、かつ、前記支持体(22)の他面には、各シリンドリカルレンズの境界部に相当する位置に、ストライプ状の遮光パターン(23)が設けられ、さらに、前記遮光パターン(23)の観察側に光拡散層(24)を設けた構成のレンチキュラーレンズシート(30)、とを組み合わせたことを特徴とする透過型スクリーンである。
【0023】
ここで、前記レンチキュラーレンズシート30のレンズ部21の厚みを、0.1mm〜0.2mmの範囲とすることが、凸シリンドリカルレンズのファインピッチ化により好ましい。
【0024】
また、前記レンチキュラーレンズシート30のレンズ部20の凸シリンドリカルレンズのピッチが、0.3mm以下であることより画像を鮮明に投射することができるので好ましい。
【0025】
図2は、本発明の透過型スクリーンに用いるレンチキュラーレンズシートの連続製造装置を示す説明図である。この製造装置は、ロールから供給される支持体フィルム(1)の加工工程順に、支持体フィルムの片面に紫外線硬化性樹脂を塗布する塗布装置(2)、表面にレンチキュラーレンズの逆形状が形成されたレンズ成型用ロール(3)、このレンズ成型用ロール(3)に対向した位置に加圧用ロール(3’)、紫外線照射装置(4)、レンチキュラーレンズが形成された支持体フィルムのレンズ側の反対側に、ロール状のフィルムから供給された紫外線感光性樹脂フィルム(6)を積層するラミネート用ロール対(5,5’)、紫外線照射装置(9)、ロール状の転写紙から供給された転写紙(11)にて黒色の転写層を形成するためのラミネート用ロール対(10,10’)、ロール状のフィルムから供給された拡散フィルム(14)を積層するラミネート用ロール対(13,13’)、ロール状のフィルムから供給された帯電防止機能または反射防止機能を有する透明樹脂フィルム(16)を積層するラミネート用ロール対(15,15’)を、順次配設された構成である。
【0026】
次に、図2の製造装置を用い、本発明の透過型スクリーンに用いるレンチキュラーレンズシートの製造方法を説明図する。上記の図2に示す製造装置を使用して、以下のプロセスでレンチキュラーレンズシートを作製する。支持体フィルム(1)としては、紫外線透過性を有する透明な樹脂フィルムが好ましい。さらに、支持体フィルム(1)は、レンズ部の形成される側に紫外線硬化性樹脂の易接着処理が施されてあることが一層好ましい。そして、支持体フィルム(1)の具体的な材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)などが使用される。
【0027】
支持体フィルム(1)の片面に紫外線硬化性樹脂を設ける塗布装置(2)は、均一な厚さに塗布できれば特に限定されるものではないが、ドクターブレード,ダイコートなどの塗布装置が望ましい。支持体フィルム(1)の片面への紫外線硬化性樹脂の塗布厚は、形成するレンチキュラーレンズの形状によって異なるが、0.1mm〜0.2mmが適当である。なお、塗布厚は、樹脂の粘度や支持体フィルムの送り速度などによって調整することができる。
【0028】
次に、紫外線硬化性樹脂が塗布形成された支持体フィルムを、レンチキュラー成型用ロール対(3,3’)間に通し、レンズ成型用ロール(3)の形状を紫外線硬化性樹脂に転写すると同時に、紫外線照射装置(4)からの紫外線照射により、塗布された紫外線硬化性樹脂を硬化させる。レンチキュラーレンズと逆の形状が表面に形成されたレンズ成型用ロール(3)は、切削加工された金属型や、この金属型から所定の方法により複製した樹脂製型を、ロール表面に配設するなどして構成される。
【0029】
次いで、紫外線硬化性樹脂からなるレンチキュラーレンズが形成された支持体フィルムをラミネート用ロール対(5,5’)に供給し、前記支持体フィルムのレンズの反対側に、ロール状のフィルムから供給される紫外線感光性樹脂フィルム(6)をラミネートする。
【0030】
そして、ファインピッチなシリンドリカルレンズの境界部に相当する位置に遮光パターンを形成する。このシリンドリカルレンズの境界部に相当する位置に遮光パターンを形成する方法については、本出願人による特願平7-210723号において提案している。上記提案は、感光性樹脂の露光部と非露光部とでの粘着性の有無の違いが生じ、この粘着性の有無の違いを利用して、レンズ部側からの露光により、レンズ部の背面に形成した感光性樹脂層の粘着性を有する部分に遮光処理を施すというものである。
【0031】
本発明においても、上記提案の原理を利用して、レンチキュラーシートの平坦面に遮光パターンを形成する。紫外線感光性樹脂フィルム(6)としては、紫外線露光部が反応により非粘着性となり、未露光部が粘着性を有する特性を示すことが好ましい。上記の紫外線感光性樹脂フィルムとしては、例えばクロマリンフィルム(商品名;デュポン製)が用いられ、110℃に加熱されたラミネート用ロール対(5,5’)を通して、支持体フィルムのレンズ部の反対側にラミネートする。次いで、紫外線照射装置(9)によりレンズ部側から紫外線を照射することによって、レンチキュラーレンズの集光作用に基づく集光部・非集光部に対応する非粘着部・粘着部を紫外線感光性樹脂フィルムに形成し、前記フィルムから表面の保護フィルムを剥離する。(図示せず)
【0032】
そして、ラミネート用ロール対(10,10’)に通すことによって、ロール状の転写紙から供給される転写紙(11)から前記粘着部のみに黒色の転写層を転移させ、遮光パターンを形成する。遮光パターンの加圧転写には、例えばクロマリンインキフォイル(商品名;デュポン製)などが用いられ、遮光パターン(ブラックストライプ)の線幅は、紫外線の露光量やフィルムの送り速度によって調整することができる。
【0033】
次に、遮光パターンを含む観察側の全面に、ロールから供給される拡散フィルム(14)をラミネート用ロール対(13,13’)によって積層する。拡散フィルム(14)としては、例えばYS300(商品名;ソマール工業(株)製)などが用いられ、レンチキュラーレンズシートにラミネートする側に粘着加工を施すことで常温で積層することができる。
【0034】
最後に、目的に応じて、帯電防止機能または反射防止機能を付与した透明樹脂フィルム(16)を、ラミネート用ロール対(15,15’)に通してラミネートする。帯電防止機能を有する透明樹脂フィルム(16)としては、非イオン系,アニオン系,カチオン系の界面活性剤をフィルムに練り込む方法や、上記界面活性剤を結合剤と混合しフィルム表面に塗布する方法、導電性付与物質(例えば、酸化錫をドープした酸化インジウム)をフィルム表面に真空蒸着し導電膜を形成する方法、などによって得ることができる。
【0035】
反射防止機能を有する透明樹脂フィルム(16)としては、SiO2,Al2O3,CaCO3などの無機質粉末を結合剤と混合し塗料としたものをフィルム表面に塗布し、表面を粗面化したノングレアフィルムを積層することによって得ることができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、以上の構成からなるので、高精細・高画質の液晶表示装置の観察に好適な、ファインピッチなレンズ部を有すると共に、そのレンズ部に対応するさらにファインピッチな遮光パターンの形成された精密な構成のレンチキュラーレンズシートが提供されるので、鮮明な画像を投射可能なスクリーンとすることができる。また、液晶プロジェクションテレビなどに代表される透過型液晶表示装置向けの透過型スクリーンに要求されている0.3mm以下のファインピッチのレンチキュラーレンズシートが容易に、安定して作製でき、前記テレビに限らず、より広範囲での前記スクリーンの応用が可能となる。
【0037】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレンチキュラーシートを示す断面説明図。
【図2】レンチキュラーシートの連続製造装置を示す説明図。
【図3】従来のレンチキュラーシートを示す断面説明図。
【符号の説明】
21…レンズ部
22…透明支持体
23…遮光パターン
24…拡散層
25…透明樹脂フィルム
30…レンチキュラーシート
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-02-05 
出願番号 特願2000-249373(P2000-249373)
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (G03B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 星野 浩一  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 瀬川 勝久
柏崎 正男
登録日 2002-05-24 
登録番号 特許第3309849号(P3309849)
権利者 凸版印刷株式会社
発明の名称 透過型スクリーンおよび透過型液晶表示装置  
代理人 阿部 龍吉  
代理人 高橋 詔男  
代理人 米澤 明  
代理人 蛭川 昌信  
代理人 菅井 英雄  
代理人 鈴木 慎吾  
代理人 韮澤 弘  
代理人 内田 亘彦  
代理人 志賀 正武  
代理人 船山 武  
代理人 高橋 詔男  
代理人 鈴木 慎吾  
代理人 船山 武  
代理人 青木 健二  
代理人 志賀 正武  
代理人 白井 博樹  

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