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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1126456
審判番号 無効2005-80106  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-04-05 
確定日 2005-11-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第3566005号発明「パネル照明装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3566005号の請求項1,2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 【1】手続の経緯
平成 8年10月 4日 出願(特願平8-283097号)
平成16年 6月18日 設定登録(特許第3566005号)
平成17年 4月 5日 無効審判請求
平成17年 6月27日 答弁書


【2】当事者の主張
〔1〕請求人の主張及び提出した証拠方法
請求人は、「特許第3566005号の特許権を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」という趣旨で無効審判を請求し、審判請求書において甲第1〜11号証を提示し、以下の無効理由を主張する。
(a)本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、特許法第123条第1項第4号の規定により、無効とされるべきである。

(b)本件特許は、特許法第17条の2に規定する要件を満たしていない補正をしたので、特許法第123条第1項第1号の規定により、無効とされるべきである。

(c)本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反しているので、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とされるべきである。

<本件特許発明の進歩性を否定するためのもの>
甲第1号証:特開平1-104287号公報
甲第2号証:特開平6-254213号公報
甲第3号証:実願昭62-125653号(実開昭64-32877号)のマイクロフィルム
甲第4号証:実願平2-102769号(実開平4-59887号)のマイクロフィルム
甲第5号証:実願平4-7578号(実開平5-66596号)のCD-ROM
甲第6号証:実願昭56-75625号(実開昭57-187483号)のマイクロフィルム
甲第7号証:実願昭62-127467号(実開昭64-33101号)のマイクロフィルム
甲第8号証:実願平3-89356号(実開平5-41019号)のCD-ROM
甲第9号証:実願昭56-2253号(実開昭57-115081号)のマイクロフィルム

<本件特許発明の内容、出願時記載事項を特定するためのもの>
甲第10号証:特許第3566005号公報
甲第11号証:特開平10-108939号公報


〔2〕被請求人の主張
一方、被請求人は、「本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」という趣旨で、「本件特許は、特許法第36条第6項第2号の規定、特許法第17条の2の規定、及び特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、無効とされるべきものではないものと思料いたします。」と答弁している。


【3】本件特許発明
本件請求項1,2に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】複数の情報が描かれたパネルと、これら各情報をそれぞれ映し出す1枚の基板に取り付けられた複数の光源と、これら各光源の出射光を相互に分離する複数の部屋が形成された光源支持基体とを備えて構成されるパネル照明装置において、上下方向に隣接する前記各部屋は、その背面に前記基板が当接してその背面にあけられた孔を介して部屋内を臨む前記光源が上下方向に取り付けられ、その下壁および前記光源から前記パネルに向かって広がる両側壁が前記パネルとの間で前記光源を囲んで閉じて、前記背面および前記両側壁の各上縁並びに前記パネルとの間で略台形状をなすその上壁が開放されており、かつ、前記下壁は、前記パネルの背面から遠ざかるに従って前記光源に近づく傾斜を上下方向に有し、その下方に位置する前記部屋に取り付けられた前記光源から出射される光を仕切る仕切壁を形成していると共に、その下方に位置する前記部屋に取り付けられた前記光源に生じる熱を放出する隙間をその下方に位置する前記部屋の開放された前記上壁との間に形成していることを特徴とするパネル照明装置。
【請求項2】前記パネルはスロットマシンに用いられるパネルであることを特徴とする請求項1記載のパネル照明装置。」(以下、請求項1,2に係る発明を、それぞれ、「本件特許発明1」等という。)


【4】当審の判断(特許法第29条第2項の規定違反についての検討)
〔1〕甲各号証の記載事項
(a)請求人が提出した甲第1号証(特開平1-104287号公報)には、遊戯機に関して、以下の記載がある。
1.「本発明は、周面に多数の符合を施した回転ドラムを横方向に複数並置して構成されたゲーム装置を遊戯機の機枠に内蔵し、機枠の正面を覆う表構成部材に開設された遊戯表示開口部の遊戯表示部材を透してゲーム装置の符合を遊戯者に可視させる遊戯機に関する。」(1頁左欄18行〜右欄3行)
2.「図示の実施例は、所定数のパチンコ球を一単位としてゲームに賭け、ゲーム結果の重みに応じて予め定められた球数のパチンコ球を支払うスロットマシン形式の遊戯機である。」(2頁右上欄9〜12行)
3.「表構成部材たる正面カバー9には、遊戯者から見て正面となる位置に、遊戯及び遊戯結果や態様を表示する遊戯表示窓部12を有する。第9図に於て、表構成部材(9)全体の中程に位置する遊戯表示窓部12は、ゲーム装置3を可視させるため開設した長方形の遊戯表示開口部12Aと、遊戯表示開口部12Aに装着された遊戯表示部材69と、更に遊戯表示部材69の背後から正面カバー9の未形成空間9Aと嵌合するように正面カバー9に装着された補助構成部材13とで構成してある。」(4頁左上欄8〜18行)
4.「この遊戯表示部材69は、第9図に示すように、透視可能な材質であるクリアープレイト69Aとゲーム表示プレイト69Bとを重ね合せて構成したものであり、ゲーム装置3の表示を遊戯者が容易に視認し得る・・・。第10図に於て、遊戯表示部材69には、各回転ドラム4に対応する3つの可視窓70が設けてあり、主構成枠7の開口7A内に入り込んだ各回転ドラム4の一側面を視認し得るようになっている。」(4頁右上欄5〜16行)
5.「この計9個の表示符号の組合せ方向を特定するため、即ちゲームを意味付ける表示の一つとして、遊戯表示部材69のゲーム表示プレイト69Bに、上中下3本の横方向ラインと2本の斜方向ラインから成る方向ライン71を施してある。」(4頁左下欄1〜6行)
6.「第1図、第10図に於て、遊戯表示部材69の可視窓70の左隣りには、ゲームを意味付ける表示として、各方向ライン上の組合せを賭の対象とするかどうかを示す賭ライン表示が施されており、この賭ライン表示の背後には賭ライン表示ランプ(プレイランプ)72が臨んでいる。賭ライン表示とプレイランプ72は各方向ライン毎に5個設けてあるため、全体として賭率表示器を構成し、その点灯位置及び点灯個数により賭率を表示する。尚、正確には、このプレイランプ72は、遊戯表示部材69上に施された賭ライン表示としての窓部と、補助構成部材13に設けられたランプ本体72aとを以って構成されるものであるが、第10図に於ては、便宜上、遊戯表示部材69上の窓部に、このプレイランプ72等の参照符号(72〜82)を付すことにする。以下に述べる表示ランプや表示器(73〜82)についても、同様である。」(4頁左下欄7行〜右下欄5行)
7.「上記プレイランプ72の下側には、ゲーム開始が可能なときに点滅されるスタートランプ73が、プレイランプ72の左側には、賞球の支払が所定数に達した打止時に点灯されるウエイトランプ(完了ランプ)74が設けてある。また、各可視窓70の下側には、ストップランプ75が設けてある。遊戯表示部材69の可視窓70の右側には、供給皿18への球の投入を催促する投入要求ランプ76、賞球発生時に点灯する賞球ランプ77、・・・、小ボーナス又は大ボーナス中のボーナスゲームの際に点灯する第1のボーナスランプ79、・・・、大ボーナス終了時に点灯されるゲームオーバーランプ82が設けてある。」(4頁右下欄6行〜5頁左上欄4行)
8.「第10図に於て、補助構成部材13は、上記の諸ランプや表示器(72〜82)についてのランプ本体や表示器本体(72a〜82a)を有し、遊戯表示部材69の背面側に位置する。第9図〜第11図に於て、補助構成部材13は、上記3つの回転ドラム4の前側部分を通すための窓用開口201を中央に有し、上枠に長尺の照明手段14を有する長方形の枠体200と、該枠体200に、その背面側より設けた配線基板210(ランプ基板F)と、配線基板211(ランプ基板G)と、配線基板212(ランプ基板E)と、配線基板220(制御基板D)と、・・・を備えている。配線基板210(ランプ基板F)は、枠体200に設けた区画室202内に収納させるプレイランプ本体72a及びスタートランプ本体73aを担持しており、配線基板211(ランプ基板G)は、ウエイトランプ本体74aを担持している。配線基板212(ランプ基板E)は、ストップランプ本体75aを担持している。配線基板220(制御基板D)は、投入要求ランプ本体76a、賞球ランプ本体77a、・・・、ボーナスランプ本体79a、・・・、ゲームオーバーランプ本体82aを担持している。」(5頁左上欄16行〜左下欄1行)
9.「第10図に於て、補助構成部材13の枠体200には、その左枠、下枠及び右枠に、その正面側から、上記ランプ本体を個々独立に収納する長方形の区画室202が蜂の巣状に設けてある。203は、これらの区画室202を構成する区画壁を示す。これらの区画室202には、配線基板210、211、212、220に担持した諸表示ランプ本体、即ちプレイランプ本体72a、スタートランプ本体73a、ウエイトランプ本体74a、ストップランプ本体75a、投入要求ランプ本体76a、賞球ランプ本体77a、及びボーナスランプ本体79a、を独立に納めて、相互の光の干渉を防止している。」(5頁左下欄4〜16行)
10.「上記のように、区画壁203により区画室202を構成し、該区画室202に表示ランプ等(72〜82)の照明手段を配設することにより、光の漏れを防止、表示を鮮明にすることができる。上記表示ランプ本体72a〜77a、79a、82aは、それぞれランプホルダ72b〜77b、79b、82bに差込んで、予め1個づつの独立したランプ組立体として構成しておき、配線基板210、211、212、220にバイヨネット式にワンタッチ装着する。」(5頁右下欄7〜17行)
11.そして、上記4.〜7.の記載及び第10図の記載からみて、遊戯表示部材69には、方向ライン(71)とともに、賭ライン(72)、スタート(73)、ウエイト(完了)(74)、ストップ(75)、投入要求(76)、賞球(77)、ボーナス(79)、ゲームオーバー(82)等の複数の情報が施されていることは明らかであり、また、上記8.〜10.の記載及び第10,11図の記載からみて、補助構成部材13の左枠における上下方向に隣接する各区画室202においては、その背面に配線基板210が当接してその背面にあけられた孔を介して区画室202内を臨む表示ランプ本体72a,73aが上下方向に取り付けられていることは明らかである。
これら1.〜11.の記載等及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「複数の情報が施された遊戯表示部材69と、これら各情報をそれぞれ映し出す配線基板210等に担持した複数の表示ランプ本体72a,73a等と、これら各表示ランプ本体72a,73a等の相互の光の干渉を防止する複数の区画室202が形成された補助構成部材13とを備えて構成されるパネル照明装置において、
補助構成部材13の左枠における上下方向に隣接する前記各区画室202においては、その背面に前記配線基板210が当接してその背面にあけられた孔を介して区画室202内を臨む前記表示ランプ本体72a,73aが上下方向に取り付けられ、
各区画室202は、下側の区画壁203、両側の区画壁203および上側の区画壁203からなり、その下側の区画壁203および両側の区画壁203が前記遊戯表示部材69との間で前記表示ランプ本体72a,73aを囲んで閉じており、かつ、前記下側の区画壁203は、その下方に位置する前記区画室202に取り付けられた前記表示ランプ本体72a,73aから出射される光を仕切る仕切壁を形成しており、
前記遊戯表示部材69はスロットマシン形式の遊戯機に用いられるパネルであるパネル照明装置。」(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)

(b)同じく、甲第2号証(特開平6-254213号公報)には、スロットマシンに関して、以下の記載がある。
1.「【請求項1】前面パネルと、この前面パネルの表面に形成された表示部と、前記前面パネルの裏面に固定され、四方を壁で囲まれたランプハウジングと、このランプハウジング内に位置し、前面パネルの表面の表示部を裏側から照明する発光源と、前記ランプハウジングを取り囲む四方の壁のうち、左右に対向する両側壁に相対向して形成されるとともに、上下方向に所定間隔で複数段形成された差込溝と、複数段の差込溝のうち、少なくとも一つの段の左右に相対向した差込溝に両端部がそれぞれ差し込まれ、ランプハウジング内を上下方向に仕切る遮光板とを備えたことを特徴とするスロットマシン。」(【特許請求の範囲】)
2.「・・・上記中央前面パネル30は、前記前面パネル20と同様に、アクリル板により形成され、図3に示すように、その中央に透明な3個の窓部31・・・が横並びに配置されている。各窓部31内には、回転リール32〜34がそれぞれ配置されている。」(段落【0011】)
3.「前記中央前面パネル30の表面には、図3に示すように、計5本の賞ライン35〜39が表示されている。5本の賞ライン35〜39は、入賞の判定を行うラインを表示する、上中下段の3本の賞ライン35〜37、及び中央で×点状に中央で交わった2本の賞ライン38,39とから構成されている。また、前記中央前面パネル30には、図3に示すように、その窓部31の向かって左側に、各賞ライン15〜19に対応して、メダル投入枚数に応じた有効ラインを表示するための、上下方向に並んだ5段の有効ライン表示部50〜54が設けられている。これに対し、中央前面パネル30の向かって右側には、縦並びに3個のデジタル表示部40が設けられている。」(段落【0012】)
4.「一方、前記中央前面パネル30の裏面には、図1,4に示すように、枠形のランプハウジング60が固定されている。上記ランプハウジング60は、図1に示すように、その四方が壁で囲まれ、前後面が開放された中空構造を成す。具体的には、ランプハウジング60は、図1に示すように、上壁61と、底壁62と、左右の側壁63,64とで全体がロ字形に囲まれている。」(段落【0017】)
5.「また、ランプハウジング60内には、図1に示すように、その内部を縦に仕切る2枚の仕切壁65,66が設けられている。そして、右側壁64と右仕切壁65とに挟まれた内部には、右側中空部70が形成されている。また、左側壁63と左仕切壁66とに挟まれた内部には、左側中空部71が形成されている。上記右側中空部70の開口の一方は、図4に示すように、中央前面パネル30の窓部31の左側に形成した有効ライン表示部50〜54の裏面に、一方の開口を向けて位置し、開口の他方は、基板90により塞がれている。」(段落【0018】)
6.「前記左右に相対向した差込溝81内には、図1,2に示すように、右側中空部70内を上下に仕切る遮光板67の左右両端部68,68が各々差し込まれている。本実施例では、図1に示すように、この遮光板67の差し込み位置は、上記差込溝81のうち、中央前面パネル30の表面に表示された5段の有効ライン表示部50〜54の各々を仕切ることのできる位置・・・に差し込まれ、右側中空部70内が5つに仕切られている。」(段落【0020】)
7.「前記基板90には、図1に示すように、前記有効ライン表示部50〜54又は前記各表示部41〜43の各々に対応する位置に、複数の取付孔92・・・が形成されている。各取付孔92のうち、有効ライン表示部50〜54に対応する位置には、発光源91、例えばランプやLEDなどが取り付けられ、中央前面パネル30を裏面から照明可能としている。・・・」(段落【0023】)
8.そして、図4の記載からみて、発光源91を取り付ける基板90が1枚であることは明らかである。
これら1.〜8.の記載等及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、甲第2号証には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「有効ライン表示部50〜54が表示された中央前面パネル30と、これら有効ライン表示部50〜54をそれぞれ映し出す1枚の基板90に取り付けられた複数の発光源91と、これら各発光源91の出射光を相互に分離するように遮光板67により上下に仕切られた複数の部屋が形成されたランプハウジング60とを備えて構成され、上下方向に隣接する前記各部屋は、その背面に前記基板90が当接して部屋内を臨む前記発光源91が上下方向に取り付けられ、前記中央前面パネル30はスロットマシンに用いられるパネルであるパネル照明装置。」(以下、「甲第2号証記載の発明」という。)

(c)同じく、甲第3号証(実願昭62-125653号(実開昭64-32877号)のマイクロフィルム)には、インジケータに関して、以下の記載がある。
1.「エレベータの壁面に埋めこまれ、一面が開口部となつているケース1の内奥に、・・・取付板8を固定し、この取付板8にソケツト7を取付け、光源5と反射板6が固定されている。ケース1の開口部にはフエイスプレート2に保持された表示部3があり、反射板6によりこの表示部3に向かわされた光源5からの光によつて表示を行なう。そして光源5と表示部3の間には光もれを防止する遮蔽箱4が設けられ、・・・わずかなすきま11が反射板6と遮蔽箱4との間に形成されている。・・・これによつて、光源5からの熱は空気の対流により、遮蔽箱4の内側から周囲に発散されることになる。」(明細書4頁9行〜5頁5行)
2.「フエイスプレート2に対向するケース1の面上の上部と下部に、放熱用の穴12、13を設けることにより、さらにケース1内の空気の対流を加えることができる。」(明細書5頁11〜15行)
これら1.2.の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、甲第3号証には、以下の技術が記載されているものと認められる。
「光源5により生じる各遮蔽箱4内の熱を、空気の対流を利用して、各遮蔽箱4の内側から周囲に発散するようにしたインジケータ。」

(d)同じく、甲第4号証(実願平2-102769号(実開平4-59887号)のマイクロフィルム)には、表示装置に関して、以下の記載がある。
1.「合成樹脂製ケースの内部を隔壁によって区画して複数の部屋を形成するとともに、この各部屋の底面側にランプを配設し、前記各部屋の前面側に対応して絵、文字、記号など各表示部を施してなる表示板を配設した表示装置において、前記ケース内の各部屋の配列が少なくとも縦方向に複数個にわたり連接するよう配置し、・・・この壁部と前記上部に位置した部屋の隔壁との間で前記ケース上方で開口し、かつ下方で下部に位置する部屋と連通する放熱路を設けたことを特徴とする表示装置。」(実用新案登録請求の範囲)
2.「この考案は・・・、表示用ランプの発熱によるケース内温度の上昇を遮熱板や放熱反射板等の新たな部品などを用いることなく、特に下部に位置した部屋を含むケース内部において空気の対流効果を利用し、極めて簡素な構造で放熱効率を上げることのできる表示装置を提供することを目的とする。」(明細書4頁16行〜5頁2行)
3.「左右双方の部屋4K,4Lにおいては、それぞれの部屋4K,4Lの上部隔壁3a,3jおよび下部隔壁3c,3eにスリット6を設け、通気がなされるよう構成されるとともに図面中央上部に位置する部屋4Mについては、この部屋4Mの上部壁面3fのスリット6によって通気がなされるよう構成されている。中央下段に位置した部屋4Nについては、・・・部屋4Kの右側側部及び部屋4Lの左側側部に壁部7a,7bを形成し、この両壁部7a,7bと上段の部屋4Mの左右両壁部3k,3lとの間で、前記ケース1の上方で開口し、かつ下方で下部に位置する部屋4Nと連通する放熱路8a,8bを設けている。」(明細書11頁8行〜12頁5行)
これら1.〜3.の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、甲第4号証には、以下の技術が記載されているものと認められる。
「内部を隔壁3によって区画して複数の部屋4を縦方向に連接配置した表示装置において、下部に位置する部屋4内に配設した表示用ランプ2の発熱によるケース1内温度の上昇を、上部に位置する各部屋4の隔壁3間に設けた放熱路8a,8bを介し、空気の対流効果を利用して、ケース1外に放出するようにした表示装置。」

(e)同じく、甲第5号証(実願平4-7578号(実開平5-66596号)のCD-ROM)には、ウォーニングランプの放熱構造に関して、以下の記載がある。
1.「近年、このウォーニング表示をおこなう項目数が増加したため、ケース内面に壁で仕切った多数の隣接する部屋を作り、これらの部屋にそれぞれウォーニングランプを設置し、部屋の上部には目的に応じたウォーニングレンズを取り付けたウォーニング装置が用いられている。このような装置は、図2(A)の側面図、(B)の正面図に示すように、各部屋1の広さが壁4で仕切られて狭いため、長い時間ランプ2が点灯していると発熱により部屋1の温度が上がり、ウォーニングレンズ3が熱によって変形するおそれがる。」(段落【0003】)
2.「このため、計器ケース5に空気流通用の穴5aを設けて、空気を該穴5aからケース1の外面に配置されているフレキシブ配線板6との隙間を通して放熱するようにしたものがある。なお、フレキシブ配線板6にも同じ位置に穴を設けて、外部に放熱し易いようにしたものも用いられている。」(段落【0004】)
3.「図1(A),(B)には、本考案に係るウォーニングランプの放熱構造の一実施例が示されている。(A)は側面から見た端面図であり、(B)はウォーニングレンズを取り去った状態での正面図である。図に示すように、計器ケース5に開けられたランプ穴にウォーニングランプ2が嵌合配置されており、該ランプ2を囲むように正面視四角形の壁4が設けられていて各部屋に仕切られている。該壁4のうち隣の部屋との境になる壁4の下部には、隣室と連通する四角形の開口部4aが設けられており、該開口部4aの下側にあたるケース5にも略同幅の外部と連通する四角形の開口部5aが設けられている。」(段落【0010】)
4.「また、これら開口部4a,5aの前面に位置したケース5面には遮光壁7が立設されており、該遮光壁7はケース5の開口部5aの周囲を取り囲むように正面視コ字状で、かつその高さは壁4に設けられた開口部4aの高さよりも高く構成されている。なお、部屋を構成する前記四角形の壁4の上面には、目的に応じたウォーニングレンズ3がそれぞれ取り付けられている。」(段落【0011】)
5.「この状態で、ウォーニングランプ2が点灯されると、ウォーニングレンズ3が輝いてウォーニング表示として視認される。ウォーニングランプ2が長時間にわたって点灯しつづけていると、ウォーニングランプから発散される熱によって部屋の温度が上昇する。温度の上昇した空気は遮光壁7の上部を乗り越えて、一部は隣室との仕切り壁4の開口部4aから矢印Aのように隣室へと流出し、その他はケース5の開口部5aから矢印Bのように外部に流出する。またこのとき、反対側の壁4の開口部4aとケース5の開口部5aとからは冷えた空気が部屋内に流入してくる。このため、部屋の中で発生したウォーニングランプ2の熱は効率良く放熱される。」(段落【0012】)
6.そして、図2の放熱構造の改良型である図1の放熱構造が、「温度の上昇した空気は遮光壁7の上部を乗り越えて、一部は隣室との仕切り壁4の開口部4aから矢印Aのように隣室へと流出し、その他はケース5の開口部5aから矢印Bのように外部に流出する。」(5.の記載を参照。)のであるから、図2の放熱構造が、計器ケース5の内面を仕切り壁4で仕切ってなる複数の部屋1が上下方向に隣接し、計器ケース5における各部屋1の上部に空気流通用の穴5aを設けたものであることは明らかである。
これら1.〜6.の記載等及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、甲第5号証には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「計器ケース5の内面を仕切り壁4で仕切ってなる複数の部屋1を上下方向に隣接させ、各部屋1の背面にフレキシブ配線板6が当接してその背面にあけられた孔を介して部屋1内を臨むウォーニングランプ2が上下方向に取り付けられ、各部屋1の前部に目的に応じたウォーニングレンズ3を取り付けて構成され、各部屋1の上壁が開放されており、かつ、仕切り壁4は、その下方に位置する部屋1に取り付けられたウォーニングランプ2に生じる熱を放出する空気流通用の穴5aをその下方に位置する部屋1の開放された上壁との間に形成しており、ウォーニングランプ2の点灯により温度が上昇した空気が、部屋1の上部に設けた空気流通用の穴5aから外部に放熱できるようにしたウォーニング装置。」(以下、「甲第5号証記載の発明」という。)

(f)同じく、甲第6号証(実願昭56-75625号(実開昭57-187483号)のマイクロフィルム)には、ランプ式表示装置に関して、以下の記載がある。
1.「第3図は本考案の表示装置の構成部品を示し樹脂板(スモーク又は乳白色)9と、・・・固定用仕切り板(鋼板)10と、光拡散用乳白樹脂板11と、・・・ランプハウス(鋼板又はアルミ板)12と、・・・ランプハウス仕切り板(鋼板又はアルミ板)13と、ランプソケット14と、ランプ15と、固定用ナット16と、ランプソケット固定ビス17とから構成される。」(明細書4頁19行〜5頁8行)
2.「ランプハウス12は第3図に示すように、1つの表示窓に対して、左右それぞれ異なった高さに通風穴がもうけてあり、・・・ランプハウス内部全体の空気対流を良好にしている。」(明細書6頁1〜8行)
これら1.2.の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、甲第6号証には、以下の技術が記載されているものと認められる。
「ランプ15により生じるランプハウス12内の熱を、ランプハウス12内部全体の空気対流を良好にして、ランプハウス12外に放出するようにしたランプ式表示装置。」

(g)同じく、甲第7号証(実願昭62-127467号(実開昭64-33101号)のマイクロフィルム)には、灯具に関して、以下の記載がある。
1.「該灯具ボディ2の後壁にはソケット5に支持された上記点灯バルブ1を挿入すると共に、積極的に内部空気を流動排出することが可能な充分な大きさを有する略長方形状の放熱孔6を開口すると共に、内挿した点灯バルブ1と該灯具ボディ2の上壁間に遮熱板7を架設して成る。該遮熱板7は、点灯バルブ1の上方、即ち中央部が上方に膨出した山形に成る正面からの断面形状を呈し、前後方向に延びる導熱溝7aを構成すると共に、側面形状が後方に上昇傾斜した傾斜反射面7bを有し、板面後端レベルが前記放熱孔6の上部を臨むように位置してなる。上記構造では、点灯バルブ1の点灯時に生ずる発熱は、他の空気より軽量であるため遮熱板7方向に流動すると共に、該遮熱板7の導熱溝7aに沿って後方に流動し後端から放熱孔6を介してその上部から灯具ボディ2外に常時放出するようになる。」(明細書5頁7行〜6頁4行)
この1.の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、甲第7号証には、以下の技術が記載されているものと認められる。
「点灯バルブ1により生じる灯具ボディ2内の熱を、点灯バルブ1の上部に後方に上昇傾斜してその板面後端レベルが放熱孔6の上部に臨む位置になるよう配置して設けた遮熱板7を介して放熱孔6に案内し、灯具ボディ2外に放出するようにした灯具。」

(h)同じく、甲第8号証(実願平3-89356号(実開平5-41019号)のCD-ROM)には、照明器具に関して、以下の記載がある。
1.「図において、11は器具本体で、上板12と、一方の対向する側板13と、他方の対向する側板14とから、下面に照射開口15を開口した四角形の枠状に形成されている。上板12には複数の放熱口16が形成され、各側板13,14の下縁部には取付縁部17が外方に折曲形成され、一方の対向する側板13には後述する遮熱板を兼用した反射板21の傾斜面部22の端部位置に対応して側板13の略横幅全域に横長状の放熱口18が形成されている。」(段落【0010】)
2.「反射板21は遮熱板として兼用され、中央部から両側を上方に傾斜させた傾斜面部22を有する略V字形状に形成され、各傾斜面部22の端部に器具本体11の側板13の内面に接合する接合片部23が形成されている。そして、この反射板21は、器具本体11の上板12に取付けられた取付台24にねじ等によって取付けられ、この取付状態において、各傾斜面部22の端部が放熱口18の上側に位置し、器具本体11の内部の上部空間25を隔離する。」(段落【0011】)
3.「ランプ31の点灯時に発生するランプの発熱は、熱気が反射板21の表面に対流して各傾斜面部22の傾斜に沿って上昇し、各傾斜面部22の端部まで上昇すると、器具本体11の放熱口18を通じて熱気が外部に放出される。」(段落【0016】)
4.「したがって、ランプ31の発熱は、効率よく外部に放熱されるので、反射板21が高温になることがなく、かつ、ランプ31の発熱による熱気が反射板21の上部空間25に直接的に対流せず、点灯装置51への熱的影響を軽減する。」(段落【0017】)
これら1.〜4.の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、甲第8号証には、以下の技術が記載されているものと認められる。
「ランプ31の上部に傾斜面部22を有する反射板21を配置し、この傾斜面部22の端部を放熱口18の上側に位置するよう配置してなる照明器具において、ランプ31により生じる器具本体11内の熱を、傾斜面部22を介して放熱口18に案内し、器具本体11外に放熱するようにした照明器具。」

(i)同じく、甲第9号証(実願昭56-2253号(実開昭57-115081号)のマイクロフィルム)には、大形表示装置に関して、以下の記載がある。
1.「第4図において、(7)は取付枠、(8)は支持板で、上記取付枠(7)の両側面間に装架されている。(9)は止板で、同じく上記取付枠(7)の両側面間に装架されている。また上記支持板(8)は図に示すように、表示ユニツトの表示部側に傾斜して設けられており、最下段の表示ユニツト(3)は、この傾斜した支持板(8)の上面に沿つて止板(9)に当接するまで挿入され、図示しない固定手段によつて固定される。そして、その上面側に配設される表示ユニツト(3)は、その下段の表示ユニツトの上面に沿つて次々に挿入され、表示ユニツト(3)すべてが傾斜して配設されるものである。以上のように構成することによつて、表示ユニツト(3)内で稼動時に発生する熱は図に示すように、ケース(4)の天井に沿つて裏面の開口部から飛散する。」(明細書2頁17行〜3頁13行)
この1.の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、甲第9号証には、以下の技術が記載されているものと認められる。
「表示ユニツト(3)を上下に複数段隣接配置してなる大形表示装置において、表示ユニツト(3)のすべてを傾斜配設して、表示ユニツト(3)内で稼動時に発生する熱を、ケース(4)の天井に沿つて裏面の開口部から飛散するようにした大形表示装置。」


〔2〕本件各特許発明と甲各号証記載の発明との対比・判断
(a)本件特許発明1について
1.本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との対比
本件特許発明1と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明の「複数の情報が施された遊戯表示部材69」,「配線基板210」,「担持した」,「表示ランプ本体72a,73a」,「相互の光の干渉を防止する」,「区画室202」,「補助構成部材13」,「下側の区画壁203」,「両側の区画壁203」,「上側の区画壁203」が、本件特許発明1の「複数の情報が描かれたパネル」,「基板」,「取り付けられた」,「光源」,「出射光を相互に分離する」,「部屋」,「光源支持基体」,「下壁」,「両側壁」,「上壁」にそれぞれ相当するから、両者は、
「複数の情報が描かれたパネルと、これら各情報をそれぞれ映し出す基板に取り付けられた複数の光源と、これら各光源の出射光を相互に分離する複数の部屋が形成された光源支持基体とを備えて構成されるパネル照明装置において、
上下方向に隣接する前記各部屋は、その背面に前記基板が当接してその背面にあけられた孔を介して部屋内を臨む前記光源が上下方向に取り付けられ、その下壁および両側壁が前記パネルとの間で前記光源を囲んで閉じており、かつ、前記下壁は、その下方に位置する前記部屋に取り付けられた前記光源から出射される光を仕切る仕切壁を形成しているパネル照明装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
複数の光源の取り付け構成について、本件特許発明1が、複数の光源を「1枚の基板」に取り付けたのに対し、甲第1号証記載の発明では、複数の光源(表示ランプ本体72a,73a等)を複数の基板(配線基板210等)に分けて取り付けた点。
<相違点2>
光源支持基体のランプ収納部分の両側壁の構成について、本件特許発明1が、「光源からパネルに向かって広がる」ものであるのに対し、甲第1号証記載の発明では、光源支持基体(補助構成部材13)のランプ収納部分の両側壁(両側の区画壁203)が、光源(表示ランプ本体72a,73a)からパネル(遊戯表示部材69)に向かって広がるようになされていない点。
<相違点3>
光源支持基体のランプ収納部分の上壁の構成について、本件特許発明1が、「背面および両側壁の各上縁並びにパネルとの間で略台形状」をなし、「開放されている」のに対し、甲第1号証記載の発明では、光源支持基体(補助構成部材13)のランプ収納部分の上壁(上側の区画壁203)が、背面および両側壁(両側の区画壁203)の各上縁及びパネル(遊戯表示部材69)との間で略台形状をなさず、開放されていない点。
<相違点4>
光源支持基体のランプ収納部分の下壁の構成について、本件特許発明1が、「パネルの背面から遠ざかるに従って光源に近づく傾斜を上下方向に有し、その下方に位置する部屋に取り付けられた光源から出射される光を仕切る仕切壁を形成していると共に、その下方に位置する部屋に取り付けられた光源に生じる熱を放出する隙間をその下方に位置する部屋の開放された上壁との間に形成し」たのに対し、甲第1号証記載の発明では、光源支持基体(補助構成部材13)のランプ収納部分の下壁(下側の区画壁203)が、パネル(遊戯表示部材69)の背面から遠ざかるに従って光源(表示ランプ本体72a,73a)に近づく傾斜を上下方向に有しておらず、その下方に位置する部屋(区画室202)に取り付けられた光源(表示ランプ本体72a,73a)に生じる熱を放出する隙間をその下方に位置する上壁(上側の区画壁203)との間に形成していない点。

2.各相違点についての検討
<相違点1について>
相違点1について検討するために甲第2号証をみると、甲第2号証には、上記〔1〕(b)で述べたように、「有効ライン表示部50〜54が表示された中央前面パネル30(本件特許発明1の「複数の情報が描かれたパネル」に相当する。以下同様。但し「」を省略。)と、これら有効ライン表示部50〜54(各情報)をそれぞれ映し出す1枚の基板90(基板)に取り付けられた複数の発光源91(光源)と、これら各発光源91の出射光を相互に分離するように遮光板67(下壁、仕切壁)により上下に仕切られた複数の部屋が形成されたランプハウジング60(光源支持基体)とを備えて構成され、上下方向に隣接する前記各部屋は、その背面に前記基板90が当接して部屋内を臨む前記発光源91が上下方向に取り付けられ、前記中央前面パネル30はスロットマシンに用いられるパネルであるパネル照明装置。」という発明が記載されており、この発明においては、複数の光源(発光源91)を1枚の基板(基板90)に取り付けている。
そして、上記のような甲第2号証記載の発明の技術を甲第1号証記載の発明に適用することについては何ら阻害要因を認めることができず、且つ、当該技術に基づき相違点1として摘記した本件特許発明1の構成を想起する点に格別の困難性は認められないから、本件特許発明1の上記相違点1に係る構成は甲第1,2号証記載の発明から当業者が容易に想到できたものにすぎない。
<相違点2について>
照明装置において、両側壁を光源からパネルに向かって広がるように構成することは、例えば、特開平1-115006号公報,特開平4-292225号公報に示されているように従来周知である。
そして、上記のような照明装置における周知技術を甲第1号証記載の発明に適用することについては何ら阻害要因を認めることができず、且つ、当該技術に基づき相違点2として摘記した本件特許発明1の構成を想起する点に格別の困難性は認められないから、本件特許発明1の上記相違点2に係る構成は甲第1号証記載の発明及び照明装置における周知技術から当業者が容易に想到できたものにすぎない。
<相違点3について>
相違点3について検討するために甲第5号証をみると、甲第5号証には、上記〔1〕(e)で述べたように、「計器ケース5(光源支持基体)の内面を仕切り壁4(下壁、仕切壁)で仕切ってなる複数の部屋1(部屋)を上下方向に隣接させ、各部屋1の背面にフレキシブ配線板6(基板)が当接してその背面にあけられた孔を介して部屋1内を臨むウォーニングランプ2(光源)が上下方向に取り付けられ、各部屋1の前部に目的に応じたウォーニングレンズ3を取り付けて構成され、各部屋1の上壁が開放されており、かつ、仕切り壁4は、その下方に位置する部屋1に取り付けられたウォーニングランプ2に生じる熱を放出する空気流通用の穴5a(隙間)をその下方に位置する部屋1の開放された上壁との間に形成しており、ウォーニングランプ2の点灯により温度が上昇した空気が、部屋1の上部に設けた空気流通用の穴5aから外部に放熱できるようにしたウォーニング装置(パネル照明装置)。」という発明が記載されており、この発明においては、各部屋(部屋1)の上壁が開放されている。
ところで、上記<相違点2について>で述べた従来周知の照明装置は、両側壁を光源からパネルに向かって広がるようにしたものであるから、その側面視形状は略台形状をなすものであり、また、排熱装置において、背面および両側壁の各上縁並びにパネルとの間で略台形状に形成しその上壁部分を開放するように構成することは、例えば、実願昭62-156699号(実開平1-62616号)のマイクロフィルム(リフレクタ20の膨出部22を参照。),実願昭63-130565号(実開平2-53205号)のマイクロフィルム(内側ヨロイ窓10を参照。)に示されているように従来周知である。
そして、上記のような甲第5号証記載の発明の技術並びに照明装置及び排熱装置における周知技術を甲第1号証記載の発明に適用することについては何ら阻害要因を認めることができず、且つ、当該技術に基づき相違点3として摘記した本件特許発明1の構成を想起する点に格別の困難性は認められないから、本件特許発明1の上記相違点3に係る構成は甲第1,5号証記載の発明の技術並びに照明装置及び排熱装置における周知技術から当業者が容易に想到できたものにすぎない。
<相違点4について>
相違点4について検討するために甲第5号証をみると、甲第5号証には、上記〔1〕(e)で述べたように、「計器ケース5の内面を仕切り壁4で仕切ってなる複数の部屋1を上下方向に隣接させ、各部屋1の背面にフレキシブ配線板6が当接してその背面にあけられた孔を介して部屋1内を臨むウォーニングランプ2が上下方向に取り付けられ、各部屋1の前部に目的に応じたウォーニングレンズ3を取り付けて構成され、各部屋1の上壁が開放されており、かつ、仕切り壁4は、その下方に位置する部屋1に取り付けられたウォーニングランプ2に生じる熱を放出する空気流通用の穴5aをその下方に位置する部屋1の開放された上壁との間に形成しており、ウォーニングランプ2の点灯により温度が上昇した空気が、部屋1の上部に設けた空気流通用の穴5aから外部に放熱できるようにしたウォーニング装置。」という発明が記載されており、この発明においては、各部屋(部屋1)の上壁が開放されており、下壁(仕切り壁4)がその下方に位置する部屋の開放された上壁との間に熱を放出する隙間(空気流通用の穴5a)を形成し、光源(ウォーニングランプ2)の点灯により温度が上昇した空気が、部屋の上部に設けた隙間から外部に放熱できるようにしている。
ところで、表示装置において、光源により生じる各部屋内の熱を空気の対流等を利用して各部屋外に放出するように構成することは、例えば、甲第3号証,甲第4号証,甲第6号証,甲第9号証に示されているように従来周知であり、また、本件特許発明1においては、上下方向に隣接する各部屋を仕切る仕切壁となり且つ光源に近づく傾斜を有する下壁が、その下方の部屋に配した光源から見て上方の傾斜壁であるということができるところ、照明装置において、光源の上方に傾斜壁を設けて部屋内の熱を放熱孔に案内して部屋外に放出するように構成することは、例えば、甲第7号証,甲第8号証に示されているように従来周知であり、さらに、排熱装置において、上下方向に傾斜する複数の傾斜壁により仕切壁を形成し、その下方部分である開放された上壁とその下方に位置する傾斜壁との間に熱を放出する隙間を形成するように構成することは、例えば、実願昭56-16768号(実開昭57-130495号)のマイクロフィルム(電子ブロック10間の空間を上下に分離する斜板5を参照。),実願昭55-14284号(実開昭56-118715号)のマイクロフィルム(短冊状板5を一定間隔で多数並列設置して成るフイルターB(第3,6図)を参照。)に示されているように従来周知である。
そして、上記のような甲第5号証記載の発明の技術並びに表示装置,照明装置及び排熱装置における周知技術を甲第1号証記載の発明に適用することについては何ら阻害要因を認めることができず、且つ、当該技術に基づき相違点4として摘記した本件特許発明1の構成を想起する点に格別の困難性は認められないから、本件特許発明1の上記相違点4に係る構成は甲第1,5号証記載の発明の技術並びに表示装置,照明装置及び排熱装置における周知技術から当業者が容易に想到できたものにすぎない。

3.作用効果についての検討
そして、本件特許発明1の構成によってもたらされる効果も、甲第1,2,5号証記載の発明及び周知技術から普通に予測できる範囲内のものであって格別なものがあるとは認められないから、本件特許発明1は甲第1,2,5号証記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。

(b)本件特許発明2について
1.本件特許発明2と甲第1号証記載の発明との対比
本件特許発明2は、本件特許発明1の構成に「前記パネルはスロットマシンに用いられるパネルである」との構成を付加したものである。ところで、甲第1号証記載の発明には、上記付加した構成に対応して、「前記遊戯表示部材69はスロットマシン形式の遊戯機に用いられるパネルであるスロットマシン形式の遊戯機」との構成を備えており、この構成において、「遊戯表示部材69」が、上記(a)1.で述べたように、本件特許発明2の「パネル」に相当し、また、「スロットマシン形式の遊戯機」が、本件特許発明2の「スロットマシン」に相当しているから、両者は、
「複数の情報が描かれたパネルと、これら各情報をそれぞれ映し出す基板に取り付けられた複数の光源と、これら各光源の出射光を相互に分離する複数の部屋が形成された光源支持基体とを備えて構成されるパネル照明装置において、
上下方向に隣接する前記各部屋は、その背面に前記基板が当接してその背面にあけられた孔を介して部屋内を臨む前記光源が上下方向に取り付けられ、その下壁および両側壁が前記パネルとの間で前記光源を囲んで閉じており、かつ、前記下壁は、その下方に位置する前記部屋に取り付けられた前記光源から出射される光を仕切る仕切壁を形成しており、
前記パネルはスロットマシンに用いられるパネルであるパネル照明装置。」の点で一致し、上記本件特許発明1と甲第1号証記載の発明との相違点1〜4と同様の点で相違する。

2.各相違点についての検討
相違点1〜4については、上記(a)2.で検討したとおりである。

3.作用効果についての検討
そして、本件特許発明2の構成によってもたらされる効果も、甲第1,2,5号証記載の発明及び周知技術から普通に予測できる範囲内のものであって格別なものがあるとは認められないから、本件特許発明2は甲第1,2,5号証記載の発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。


【5】むすび
以上のように、本件特許発明1,2は甲第1,2,5号証記載の発明及び周知技術に基づき、何れも、当業者が容易に発明できたものであるということができ、本件特許発明1,2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許法第123条第1項第2号により無効とすべきである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定を適用して、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-12 
結審通知日 2005-09-14 
審決日 2005-09-27 
出願番号 特願平8-283097
審決分類 P 1 113・ 121- Z (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 前田 建男
辻野 安人
登録日 2004-06-18 
登録番号 特許第3566005号(P3566005)
発明の名称 パネル照明装置  
代理人 黒田 博道  
代理人 峯岸 武司  

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