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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1126565
審判番号 不服2003-24910  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-01-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-25 
確定日 2005-11-10 
事件の表示 特願2000-199097「抵抗発熱体及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月18日出願公開、特開2002- 15837〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
この出願は、平成12年6月30日の出願であって、平成15年11月12日付けで拒絶査定がなされたが、同年12月25日に拒絶査定に対する不服審判の請求がなされ、平成16年1月14日付けで手続補正がなされたものである。

2.補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年1月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし10に係る発明
平成16年6月14日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次のとおりのものである。

【請求項1】基板の一方の面に抵抗発熱部を有し、当該基板を介した前記抵抗発熱部存在領域の反対側の基板面に、前記抵抗発熱部の両端に接続する一対の電極と、該電極に接続するリード端子との接続部を有する抵抗発熱体において、
前記電極がガラスフリットを含む厚膜からなり、且つリード端子が金属箔、金属板又は金属片であり、
前記電極とリード端子との接続部が、前記電極構成材料と前記リード端子構成材料のそれぞれが互いに溶融・混合し、固化した状態にあり、
且つ当該接続部が、2種以上の合金が混在した状態にあり、
前記抵抗発熱体が昇温・降温を多数回繰り返す用途に用いられることを特徴とする抵抗発熱体。
【請求項2】 前記絶縁基板裏面にチップサーミスタに接続すると共にリード端子に接続する電極を更に備えたことを特徴とする請求項1記載の抵抗発熱体。
【請求項3】 前記合金が、Ag-Pd系、Ag-Pd-Cu系、Ag-Pd-Ni系、Ag-Pd-Ni-Cu系、Ag-Pd-Sn-Pb系、Ag-Pd-Sn-Pb-Cu系、Ag-Pd-Sn-Pb-Cu-Ni系のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2記載の抵抗発熱体。
【請求項4】 前記リード端子と電極との接触部における、前記リード端子と電極との双方の形状が平板状であり、且つ双方の平板面同士が当接しており、双方の平板厚みが0.5mm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の抵抗発熱体。
【請求項5】 前記リード端子が、金属箔、金属板又は金属線を絶縁部材で被覆したものであり、該リード端子の複数が前記絶縁部材で一体化したものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の抵抗発熱体。
【請求項6】 絶縁基板の一方の面に抵抗発熱部を有し、当該絶縁基板を介した前記抵抗発熱部存在領域の反対側の絶縁基板面に、前記抵抗発熱部の両端に接続する一対の電極と、該電極に接続するリード端子との接続部を有する抵抗発熱体の製造法において、
上記絶縁基板上に抵抗発熱部及び抵抗発熱部の両端に接続する該絶縁基板の裏面側に配置した、ガラスフリットを含む一対の厚膜電極を形成する工程と、次いで前記電極構成材料とリード端子構成材料の平板面のそれぞれが互いに溶融・混合後、固化した状態であって当該接続部が、2種以上の合金が混在した状態を形成するように、当該平板面のみに溶接用電極を当接し、溶接により前記電極と前記リード端子とを接続する工程とを有することを特徴とする抵抗発熱体の製造方法。
【請求項7】 前記電極構成材料がAg-Pd系合金であり、リード端子構成材料がCu表面をNi、Ag、Sn-Pb系合金から選ばれる1種以上で少なくとも接続しようとする箇所を被覆したものであることを特徴とする請求項6記載の抵抗発熱体の製造方法。
【請求項8】 前記電極がAg-Pd系の厚膜電極であり、前記リード端子が平板状のCu板にAg被覆を施した材料であることを特徴とする請求項6記載の抵抗発熱体の製造方法。
【請求項9】 前記電極がAg-Pd系の厚膜電極であり、前記リード端子が平板状のAg-Pd系合金であることを特徴とする請求項6記載の抵抗発熱体の製造方法。
【請求項10】 前記電極に接続する平板状の金属材料の厚みが約100μmであり、溶接後の電極痕の深さが約100μmであることを特徴とする請求項8又は9記載の抵抗発熱体の製造方法。

本件補正は、補正前の請求項1及び請求項8における接続部について、「且つ当該接続部が、2種以上の合金が混在した状態にあり」と限定して新しい請求項1及び請求項6にするとともに、補正前の請求項3及び請求項4を削除して、補正前の請求項5ないし7を新しい請求項3ないし5に繰り上げ、また、補正前の請求項9ないし12を新しい請求項7ないし10に繰り上げるものであって、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除及び第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当し、また、新規事項を追加するものでもない。

そこで、以下において、特許法等の一部を改正する法律(平成15年法律第47号)附則第2条第7項の規定により、なお従前の例によるものとされた特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定する要件(特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか)について検討する。

(2)引用例に記載された発明
本願の出願の日前に頒布された刊行物であって、原審で引用された特開平10-221984号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「本発明は、複写機やプリンター等に用いられる定着器用のセラミックスヒーター、及びこのヒーターを用いた加熱定着装置に関する。」(段落【0001】)

(イ)「電気絶縁性のセラミックス基板として、それぞれ長さ240mm×幅10mm×厚さ0.635mmのAl2O3基板とAlN基板を用意した。それぞれのセラミックス基板上の両端部の所定の位置に直径0.3mmのスルホールをレーザーにより穿孔した。このスルーホールに導体としてAgペーストを充填した後、各セラミックス基板の一表面にAg-Pdペーストをスクリーン印刷法によりスルーホールと接続するように塗布し、焼成して長さ235mm×幅1.5mmの発熱体を形成した。
次に、上記発熱体を形成した各セラミックス基板の一表面と反対側の表面に、Agペーストを用いてスクリーン印刷により電極を形成し、大気中において880℃で10分間焼成した。その後、セラミックス基板の発熱体を形成した一表面にガラスペーストをスクリーン印刷により塗布し、大気中において600℃で10分間焼成して保護層を形成した。」(段落【0020】〜【0021】)

ここで、上記記載事項(ア)における「複写機やプリンター等に用いられる定着器」は、昇温・降温が多数回繰り返されることが明らかである。
よって、上記記載事項(ア)及び(イ)及び図面の記載から、引用例1には、次の発明が記載されているものと認められる(以下「引用例発明1」という。)

[引用例発明1]
「セラミックス基板の一表面に発熱体を有し、当該セラミックス基板を介した前記発熱体の存在する領域の反対側の表面に、前記発熱体の両端部に接続する一対の電極を有するセラミックスヒーターにおいて、前記セラミックスヒーターが昇温・降温を多数回繰り返す用途に用いられるセラミックスヒーター。」

また、本願の出願の日前に頒布された刊行物であって、原審で引用された特開平7-226285号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

(ウ)「本発明は、・・・・、安全で耐久性のある接合ができ、しかも大量生産に対応できる溶射発熱体用電極とその接合方法を提供することを課題とする。」(段落【0004】)

(エ)「上記課題を解決するために、本発明では、溶射発熱体の発熱層と、該発熱層上に形成した自溶合金又はフラックスなしの銀ろうからなる溶射膜と、該溶射膜上に溶着したリード線とからなる溶射発熱体用電極としたものである。
また、本発明では、溶射発熱体の発熱層とリード線とを接合して電極とする溶射発熱体用電極の接合方法において、予め発熱層上に自溶合金又はフラックスなしの銀ろうの層を溶射で形成し、該形成した溶射膜上にリード線を溶着することとしたものである。」(段落【0005】)

(オ)「・・・・発熱層上に自溶合金を溶射し、膜厚を増加させてリード線と自溶合金が主に溶着する方法を考えた。・・・・」(段落【0007】)

(カ)「まず、基材1上のアルミナ(Al2 O3 )絶縁層2に、巾100mm、長さ200mmの溶射発熱体3を構成する。この溶射発熱層3はNiOの金属酸化物である。
その上に自溶合金6(組成、B:1.0〜2.2、Si:3.0〜4.0、Fe:1.5以下、Ba、Niその他)を0.2〜0.5mmの膜厚で巾10mm、長さ100mm溶射を行い、リード線7としてNi線を用いこれを(+)極としてティグ4を(-)極として電流値15Aで電気アークを発生させて、リード線の先端及び接触している自溶合金表面を溶融9させて溶着した。」(段落【0010】)

(キ)図1及び図2に、板状の端子5が記載されている。

上記記載事項(ウ)ないし(キ)及び図面の記載から、引用例2には次の発明が記載されているものと認められる(以下「引用例発明2」という。)。

[引用例発明2]
「自溶合金又はフラックスなしの銀ろうの層に接続するリード線の端子との溶着部を有する溶射発熱体において、自溶合金又はフラックスなしの銀ろうの層が厚膜からなり、且つリード線の端子が板状の金属であり、前記自溶合金又はフラックスなしの銀ろうの層とリード線の端子との溶着部が、前記自溶合金又はフラックスなしの銀ろうの層の構成材料とリード線の端子の構成材料のそれぞれが互いに溶融させて溶着した状態にある溶射発熱体。」

(3)対比
本願の補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)と、上記引用例発明1とを比較すると、本願補正発明における「基板」が引用例発明1における「セラミックス基板」に相当し、以下、それぞれ「一方の面」が「一表面」、「抵抗発熱部」が「発熱体」、「抵抗発熱部存在領域の反対側の基板面」が「発熱体の存在する領域の反対側の表面」、「抵抗発熱部の両端」が「発熱体の両端部」、「抵抗発熱体」が「セラミックスヒーター」に相当する。
してみると、本願補正発明と引用例発明1では、以下の一致点、相違点がある。

[一致点]
「基板の一方の面に抵抗発熱部を有し、当該基板を介した前記抵抗発熱部存在領域の反対側の基板面に、前記抵抗発熱部の両端に接続する一対の電極を有する抵抗発熱体において、前記抵抗発熱体が昇温・降温を多数回繰り返す用途に用いられる抵抗発熱体。」

[相違点]
(相違点A)
本願補正発明では、「該電極に接続するリード端子との接続部」を有し、「前記電極とリード端子との接続部が、前記電極構成材料と前記リード端子構成材料のそれぞれが互いに溶融・混合し、固化した状態にあり、且つ当該接続部が、2種以上の合金が混在した状態」であるのに対して、引用例発明1では、そのような構成がない点。

(相違点B)
本願補正発明では、「前記電極がガラスフリットを含む厚膜からなり、且つリード端子が金属箔、金属板又は金属片」であるのに対して、引用例発明1では、そのような構成がない点。

(4)当審の判断
上記相違点について検討する。

[相違点Aについて]
本願補正発明の「電極に接続するリード端子との接続部」を有する構成については、引用例発明2の「自溶合金又はフラックスなしの銀ろうの層に接続するリード線の端子との溶着部」に対応する。
そして、引用例発明2における「自溶合金又はフラックスなしの銀ろうの層とリード線の端子との溶着部が、前記自溶合金又はフラックスなしの銀ろうの層の構成材料とリード線の端子の構成材料のそれぞれが互いに溶融させて溶着した状態」とは、引用例2に「自溶合金又はフラックスなしの銀ろうの層」と「リード線の端子」とを「電気アーク」により「溶融させて溶着」すると記載されている点を参酌すると、「自溶合金又はフラックスなしの銀ろうの層」と「リード線の端子」の構成材料を液相に遷移させて「溶融」し、液相となった両構成材料が「混合」して一部が合金化した後、冷却して「固化」するもの解され、してみると、本願補正発明における「前記電極とリード端子との接続部が、前記電極構成材料と前記リード端子構成材料のそれぞれが互いに溶融・混合し、固化した状態」は引用例発明2における「自溶合金又はフラックスなしの銀ろうの層とリード線の端子との溶着部が、前記自溶合金又はフラックスなしの銀ろうの層の構成材料とリード線の端子の構成材料のそれぞれが互いに溶融させて溶着した状態」に対応するものといえる。
また、本願補正発明の「且つ当該接続部が、2種以上の合金が混在した状態」となる点については、一般に、異種金属を溶接により接合した場合、異種金属間の接合部に複数種類の合金が混在することが知られており(例えば、浜崎正信著「重ね抵抗溶接」初版(1971年8月15日)株式会社産報,第271頁,図15.7を参照。)、従来周知の技術事項というべきである。
してみると、相違点Aについては、当業者が、引用例発明1、引用例発明2及び周知技術に基いて、容易に想到し得た事項といえる。

[相違点Bについて]
「電極にガラスフリットを含む」点については、平成15年11月12日付け拒絶査定においても示したとおり、従来周知の技術手段である(例えば、特開平6-68960号公報、特開平8-293379号公報を参照。)。
また、「厚膜」の電極と「金属箔、金属板又は金属片」からなるリード線の端子については、引用例発明2における「自溶合金又はフラックスなしの銀ろうの層が厚膜からなり、且つリード線の端子が板状の金属」なる構成に対応するものである。
してみると、相違点Bについても、当業者が引用例発明1、引用例発明2及び周知技術の基いて、容易に想到し得た事項といえる。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、引用例発明1、引用例発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしておらず、その出願の際、独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成15年法律第47号)附則第2条第7項の規定により、なお従前の例によるものとされた同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項に規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下する。

3.本願発明について
(1)本願の請求項1に係る発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成15年8月25日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

【請求項1】基板の一方の面に抵抗発熱部を有し、当該基板を介した前記抵抗発熱部存在領域の反対側の基板面に、前記抵抗発熱部の両端に接続する一対の電極と、該電極に接続するリード端子との接続部を有する抵抗発熱体において、
前記電極がガラスフリットを含む厚膜からなり、且つリード端子が金属箔、金属板又は金属片であり、
前記電極とリード端子との接続部が、前記電極構成材料と前記リード端子構成材料のそれぞれが互いに溶融・混合し、固化した状態にあり、
前記抵抗発熱体が昇温・降温を多数回繰り返す用途に用いられることを特徴とする抵抗発熱体。

(2)本願発明の容易想到性
本願発明は、本願補正発明における「且つ当該接続部が、2種以上の合金が混在した状態」なる限定を除いたほか、同様のものである。
そうすると、本願発明に「且つ当該接続部が、2種以上の合金が混在した状態」なる限定をした本願補正発明について、前記のとおり、その容易想到性が肯定されるのであるから、本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、その容易想到性が肯定されるものである。

(3)むすび
したがって、本願発明は、引用例発明1、引用例発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-26 
結審通知日 2005-09-06 
審決日 2005-09-20 
出願番号 特願2000-199097(P2000-199097)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05B)
P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 唯  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 岡本 昌直
間中 耕治
発明の名称 抵抗発熱体及びその製造方法  

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