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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E04G
管理番号 1126675
審判番号 不服2004-6453  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-09-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-01 
確定日 2005-10-27 
事件の表示 特願2001-398916「コンクリート構造物の補修・補強用シート及びコンクリート構造物の補修・補強方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月11日出願公開、特開2002-256707〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成13年12月28日(優先日、平成12年12月28日)の出願であって、平成16年2月25日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。

2.平成16年4月1日受付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年4月1日受付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「コンクリート構造物のコンクリートが剥離および/または落下する可能性のある箇所に接着剤を用いて貼付することによって、前記コンクリート構造物を補修および/または補強するためのプレハブ化されたシートであって、前記シートが、前記接着剤と一体化して前記シートを前記コンクリート構造物に接着させるための貼付層と、前記接着剤および前記貼付層を保護する保護層とを有する積層体であることを特徴とするコンクリート構造物の補修・補強用シート。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「シート」について「プレハブ化された」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)本願出願前に頒布された刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-195445号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
「【請求項1】経糸及び緯糸の一方が強化繊維、他方が熱可塑性樹脂含有繊維からなり、該経糸と該緯糸とが前記熱可塑性樹脂含有繊維中の熱可塑性樹脂により固着されている強化繊維シートを構造物の表面に設けることを特徴とする構造物の補強方法。」、
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、強化繊維シートによる柱、梁、スラブ、壁、煙突、トンネル等の構造物の補強及び補修方法に関する。」、
「【0019】
本発明の補強方法では、前記強化繊維シートを柱、梁、スラブ、壁、煙突、トンネル等の構造物の表面に設けることにより実施できる。その具体的な施工方法としては、特に限定されないが、例えば図1に示される、コンクリート等の構造物表面11にプライマー層12、下塗り層13を形成した後強化繊維シート14を貼着し、さらにその上に上塗り層15、仕上げ層16を形成する施工方法等を挙げることができる。…」、
「【0024】次に、プライマー層12上に、下塗り層13としてのマトリックス樹脂等を塗布する工程を行う。
【0025】前記マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂等を使用することができるが、作業性の点で常温硬化性樹脂が好ましい。
【0026】前記常温硬化性樹脂としては、20℃における硬化時間が好ましくは30分間〜5時間、さらに好ましくは30分間〜3時間のものが作業性の点で望ましい。
【0027】前記マトリックス樹脂の設計強度発現時間は20℃において通常1〜20日、好ましくは1〜7日であることが望ましい。また、粘度は20℃において通常10〜30000cps、好ましくは100〜20000cpsであることが、含浸性及び脱泡性がよいため望ましい。」、
「【0029】次に、下塗り層13上に、強化繊維シート14を貼着する工程を行う。本工程は、下塗り層13の塗布直後に強化繊維シート14を前記墨出し位置に沿って貼着し、好ましくはシート14の表面を強化繊維方向に、さらに好ましくはシート14の中心部から端部に強化繊維方向に沿ってゴムベラ等でしごき、マトリックス樹脂を強化繊維の中に含浸させ、且つ強化繊維中の空気を追い出し平滑に仕上げることにより行うことができる。」、
「【0031】次に、強化繊維シート14上に、上塗り層15としてのマトリックス樹脂等を塗布する工程を行う。本工程は、前記下塗り工程で使用したものと同様のマトリックス樹脂を用い、ローラー刷毛やゴムベラ等で通常0.01〜2kg/m2、好ましくは0.1〜1kg/m2の塗布量により均一に塗布することによって行うことができる。」、
「【0033】最後に、仕上げ工程を行う。本工程は、上塗り層15上に、ウレタン樹脂あるいはフッ素樹脂等の耐候性塗料を塗布し保護層16を形成することによって行うことができる。」、
「【0035】
【発明の効果】本発明の補強方法は、特定の構造を持つ強化繊維シートを構造物の表面に設ける補強方法であるので、柱、梁、スラブ、壁、煙突、トンネル等の構造物の補強、補修等を高い作業性で効果的に行うことができる。」、
「【0037】図2において20は、本発明の補強方法を施した高架橋である。高架橋20は、舗装部21、鉄筋コンクリート製のRC床版22、及び橋脚23を持つ構造物であって、床版22下面が強化シート14を設けた層により補強されている。」。
これらの記載によれば、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「コンクリート構造物の補修・補強する必要のある箇所にプライマー層12、下塗り層13を用いて貼着することによって、前記コンクリート構造物を補修・補強するためのシートであって、前記シートは、前記下塗り層13が含浸して前記コンクリート構造物に貼着される強化繊維シート14であるコンクリート構造物の補修・補強用シート」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-20067号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
「【請求項1】離型シート表面に第1のバインダ層を介して基材が設けられ、この基材の第1のバインダ層とは反対側の表面に第2のバインダ層を介して光触媒粒子が固定されていることを特徴とする貼着用光触媒機能材。」、
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、脱臭、抗菌、防汚等の光触媒機能を有する貼着用光触媒機能材に関する。」、
「【0008】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係る貼着用光触媒機能材の断面図であり、離型紙5の表面に水溶性バインダ6を介して基材2が設けられ、この基材2の表面にバインダ層7を形成し、このバインダ層7の表面にTiO2粒子3をその一部が露出するように吹き付けてシートSを構成している。」。

(3)対比・判断
補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「下塗り層13」は補正発明の「接着剤」に相当し、以下同様に、「貼着」は「貼付」に、「前記下塗り層13が含浸して前記コンクリート構造物に貼着される強化繊維シート14」は「前記接着剤と一体化して前記シートを前記コンクリート構造物に接着させるための貼付層」に、それぞれ相当するから、両者は、
「コンクリート構造物の補修・補強する必要がある箇所に接着剤を用いて貼付することによって、前記コンクリート構造物を補修および/または補強するためのシートであって、前記シートが、前記接着剤と一体化して前記シートを前記コンクリート構造物に接着させるための貼付層であるコンクリート構造物の補修・補強用シート。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]補正発明のシートを貼付する箇所が、コンクリートが剥離および/または落下する可能性のある箇所であるのに対し、刊行物1記載の発明はコンクリート構造物の補修・補強する必要のある箇所である点。
[相違点2]補正発明のシートは、プレハブ化されたシートであって、前記シートが、貼付層と、前記接着剤および前記貼付層を保護する保護層とを有する積層体であるのに対し、刊行物1記載の発明のシートは、積層体ではない点。

上記相違点について検討する。
[相違点1]について
刊行物1記載の発明のシートは、補修・補強する必要のある箇所に貼付されるのであるから、このシートをコンクリートが剥離および/または落下する可能性のある箇所に用いるようにすることは、当業者が適宜できる事項にすぎない。
[相違点2]について
刊行物2には、水溶性バインダ6、基材2、バインダ層7の表面にTiO2粒子3をその一部が露出するように吹き付けて(補正発明の「保護層」に相当)積層したシートS、すなわち、積層される層を全て予め積層(プレハブ化)した積層体であるシートが開示されており、刊行物1記載の発明のシート14の使用に当たっては、該シート14上に上塗り層15を塗布し、その上に保護層16を形成する事項が記載されている(段落【0019】、【0033】参照)から、刊行物1に記載された上記保護層を予め積層し、相違点2に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項にすぎない。

そして、補正発明の作用効果も、刊行物1、2記載の発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、補正発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年4月1日受付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年12月28日受付の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「コンクリート構造物のコンクリートが剥離および/または落下する可能性のある箇所に接着剤を用いて貼付することによって、前記コンクリート構造物を補修および/または補強するためのシートであって、前記シートが、前記接着剤と一体化して前記シートを前記コンクリート構造物に接着させるための貼付層と、前記接着剤および前記貼付層を保護する保護層とを有する積層体であることを特徴とするコンクリート構造物の補修・補強用シート。」

(2)本願出願前に頒布された刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した補正発明から「シート」の限定事項である「プレハブ化された」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、刊行物1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-21 
結審通知日 2005-01-05 
審決日 2005-01-18 
出願番号 特願2001-398916(P2001-398916)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E04G)
P 1 8・ 121- Z (E04G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊波 猛長島 和子  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 南澤 弘明
斎藤 利久
発明の名称 コンクリート構造物の補修・補強用シート及びコンクリート構造物の補修・補強方法  
代理人 宇野 晴海  
代理人 宇野 晴海  

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