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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03G
管理番号 1127306
異議申立番号 異議2003-73530  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-12-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2005-10-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3456010号「トナーの製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3456010号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3456010号の請求項1ないし4に係る発明は、平成6年5月27日に出願され、平成15年8月1日にその発明について特許の設定登録がなされた。
本件特許公報が、平成15年10月14日に発行されたところ、本件の請求項1ないし4に係る特許に対して、近藤英生より特許異議の申立てがあり、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成17年6月27日付けで訂正請求がなされた。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求は、本件明細書を、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、次のとおりである。
(1)訂正事項a
【請求項1】を「【請求項1】少なくともバインダ樹脂並びに着色剤及び/又は帯電制御剤から成るトナー材料の混合工程を有するトナーの製造方法において、着色剤及び帯電制御剤からなる群より選択される少なくとも1種のトナー材料の全量の混合を、混合工程の途中段階又は最終段階で行うに際し、前記混合工程において使用される混合装置の混合槽内温度を混合構外部に冷却手段を講ずることにより下記式(1)を満たす条件で行うことを特徴とするトナーの製造方法。
式(1)混合槽内温度≦Tg-5(℃)
(ただし、Tgは使用するバインダ樹脂のガラス転移温度)」に訂正する。
(2)訂正事項b
【請求項2】を「【請求項2】着色剤及び帯電制御剤より選択される少なくとも1種のトナー材料の全量の混合を、混合工程の最終段階で行うことを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。」に訂正する。
(3)訂正事項c
請求項4を削除する。
(4)訂正事項d
【0004】を、
「【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる目的を達成すべく鋭意検討した結果、混合工程においてトナー材料を段階的に混合する方法、好適には着色剤及び/または帯電制御剤を混合工程の途中段階もしくは最終段階で混合するトナーの製造方法により、上記目的を満足することを見い出し本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、少なくともバインダ樹脂並びに着色剤及び/又は帯電制御剤から成るトナー材料の混合工程を有するトナーの製造方法において、着色剤及び帯電制御剤からなる群より選択される少なくとも1種のトナー材料の全量の混合を、混合工程の途中段階又は最終段階で行うに際し、前記混合工程において使用される混合装置の混合槽内温度を混合槽外部に冷却手段を講ずることにより下記式(1)を満たす条件で行うことを特徴とするトナーの製造方法に存する。
式(1)混合槽内温度≦Tg-5(℃)
(ただし、Tgは使用するバインダ樹脂のガラス転移温度)」に訂正する。
2 新規事項の有無、訂正の目的の適否、及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aおよびbは、請求項1および2において「トナー材料の少なくとも一部の混合」を「トナー材料の全量の混合」に限定し、さらに請求項1の混合工程における混合槽内の温度条件を規定するものである。
そして、該「全量の混合」に関わる部分は、本件の実施例1(【0017】,【0025】,【0028】,【0031】)の記載に基づくものである。
また、該混合工程における混合槽内の温度条件については、訂正前の請求項4および明細書の段落【0010】,【0012】に記載された事項に基づくものである。
よって、これらの訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2)訂正事項cは、請求項を削除するものであるから、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3)訂正事項dは、訂正事項aないしcによる特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載との間に生じた不整合を正すものであるから、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
3 訂正の適否についての結論
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについての判断
1 本件発明
前項「第2」で示したように前記訂正が認められるので、本件の請求項1ないし3に係る発明は、前記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された、以下のとおりのものである。
「【請求項1】少なくともバインダ樹脂並びに着色剤及び/又は帯電制御剤から成るトナー材料の混合工程を有するトナーの製造方法において、着色剤及び帯電制御剤からなる群より選択される少なくとも1種のトナー材料の全量の混合を、混合工程の途中段階又は最終段階で行うに際し、前記混合工程において使用される混合装置の混合槽内温度を混合構外部に冷却手段を講ずることにより下記式(1)を満たす条件で行うことを特徴とするトナーの製造方法。
式(1)混合槽内温度≦Tg-5(℃)
(ただし、Tgは使用するバインダ樹脂のガラス転移温度)
【請求項2】着色剤及び帯電制御剤より選択される少なくとも1種のトナー材料の全量の混合を、混合工程の最終段階で行うことを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】着色剤及び帯電制御剤より選択される少なくとも1種のトナー材料が帯電制御剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。」
2 申立ての理由の概要
(1)特許異議申立人は、下記の甲第1号証ないし甲第3号証を提出して、本件請求項1、2および4項に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない旨、また、本件請求項1ないし4に係る発明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許を取り消すべき旨主張する。

甲第1号証:特開平3-288863号公報
甲第2号証:特開平4-230770号公報
甲第3号証:「色材協会誌」(Vol.50,No.9、昭和52年9月20日発行、色材協会発行)の表紙、515〜527頁および546頁
(2)取消理由の概要
平成17年4月18日付けで通知した取消理由は、上記申立人の主張に加えて、本件出願は明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1項に規定する要件を満たしていない、というものである。 記
本件の請求項1ないし4には、着色剤及び帯電制御剤からなる群より選択される少なくとも1種のトナー材料の少なくとも一部の混合を、混合工程の途中段階又は最終段階で行うと記載されており、【0004】,【0006】には一部を混合することが記載されているものの、本件の実施例には、【0017】,【0025】,【0028】,【0031】の記載からみて、着色剤及び帯電制御剤からなる群より選択される少なくとも1種のトナー材料の全量の混合を、混合工程の途中段階又は最終段階で行う例しか記載されておらず、一部の混合を行う場合の実施例は記載されていない。そして、一部の混合を行う場合においても、本件の【0037】に記載の効果と同等の効果が得られるか否かは不明である。よって、本件の請求項1ないし4に記載された事項と対応する事項が、発明の詳細な説明により、実質的に支持されていない。
3 甲号各証の記載事項
(1)甲第1号証には、以下の事項が記載されている。
(1a)「少なくとも、ポリエステル樹脂からなるバインダー樹脂と、ワックスと、着色剤とからなるトナー材料を熔融混練して、ワックスのドメイン体積の平均値が5〜20μm3である混練物を製造し、この混練物を粉砕して得られることを特徴とするトナー」(特許請求の範囲第1項)に関して、
(1b)従来技術における課題について、「ワックスのポリエステル樹脂に対する分散性が良すぎる場合には、ワックスのドメインが過小となって、トナー粒子の表面に露出するワックスの量が少なくなり、その結果、オフセット現象や巻付き現象が発生して充分な定着特性が発揮されない。
一方、ワックスのポリエステル樹脂に対する分散性が悪すぎる場合には、ワックスのドメインが過大となって、トナー粒子の表面に露出するワックスの量が多くなり、その結果、トナーの物理的な付着力が増大して、現像性が低下し、画像濃度の低下を招く問題が生ずる。」(第1頁右下欄第12行〜第2頁左上欄第3行)
(1c)「また、トナーにはその他必要に応じて荷電制御剤等の添加剤を含有させてもよい。」(第3頁左下欄第8〜9行)
(1d)「<トナーの製造例1>バインダー樹脂としてのポリエステル樹脂をジェットミル等により粉砕して、平均粒径が4〜10μm程度の樹脂粒子を製造する。
上記樹脂粒子と、ワックス粒子とをへンシェルミキサー等により攪拌混合して予備混合物を製造する。
この予備混合においては、樹脂粒子の5倍以上の平均粒径を有する大径のワックス粒子に関しては、樹脂粒子とワックス粒子との摩擦帯電により、ワックス粒子の表面が樹脂粒子により被覆され、結果としてバインダー樹脂に対するワックスの分散性が向上する。しかし、樹脂粒子の5倍未満の平均粒径を有する小径のワックス粒子に関しては、ワックス粒子と樹脂粒子の粒径が近いためその表面が樹脂粒子により被覆されにくく、結果として分散が過度に進むことが抑制される。すなわち、大径のワックス粒子については分散性が向上し、小径のワックス粒子は分散性が過度に進むことがないためにワックスのドメイン体積を好適な範囲に設定することができる。
次いで、バインダー樹脂としてのポリエステル樹脂と、上記予備混合物と、着色剤と、その他必要に応じて用いられる添加剤とからなるトナー材料を、ヘンシェルミキサー等により予備混合し、2軸型エクストルーダー等により溶融混練した後、気流式粉砕分級機等により粉砕、分級して、平均粒径が7〜16μm程度のトナーを製造する。」
(第3頁左下欄第20行〜第4頁左上欄第7行)
(1e)「<実施例1>
〔ポリエステル樹脂Aの製造〕
ポリオキシエチレン化ビスフェノールA 15モル%
ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA 35モル%
テレフタル酸 32.5モル%
n-ドデセニル無水コハク酸 5モル%
トリメリット酸 12.5モル%
以上の単量体を縮重合して、ポリエステル樹脂Aを製造した。
〔樹脂粒子の製造〕
上記ポリエステル樹脂Aをジェットミルにより粉砕し、平均粒径が8μmの樹脂粒子Aを製造した。
〔予備混合物の製造〕
上記樹脂粒子A 10部
ワックス(ビスコール660P.低分子量ポリプロピレン,三洋化成工業杜製)10部
以上の材料をへンシェルミキサーにより5分間にわたり攪拌混合して予備混合物Aを製造した。
〔トナーの製造〕
上記ポリエステル樹脂A 97部
予備混合物A 6部
カーボンブラック 10部
以上の材料をヘンシェルミキサーにより予備混合した後、2軸型工クストルーダーにより溶融混練し、気流式粉砕分級機により粉砕、分級して、平均粒径が11μmの粉末を製造した。
なお、溶融混練後の混練物におけるワックスのドメイン体積の平均値は、6μm3であった。
以上の粉末に、さらに疎水性シリカ微粒子(アエロジルR-972.日本アエロジル杜製)を0.3重量%となる割合で外部から添加混合してトナーAを製造した。」
(第5頁右下欄第11行〜第6頁右上欄第5行)
(1f)発明の効果として、
「以上の実施例から明らかなように、本発明のトナーによれば、現像剤搬送担体の表面に圧接配置された薄層形成部材を用いた二成分系非接触現像方法を適用して画像を形成するに際して、オフセット現像および巻付き現象を伴わずに良好な定着を達成することができると共に、多数回にわたり画像を形成する際にも画像濃度の高い画像を形成することができる。」(第8頁右下欄第1行〜第8行)と記載されている。
(2)甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】溶剤、該溶剤に可溶な第1の結着樹脂及び該溶剤に不溶な着色剤の粒子を混合し、剪断力をかけながら、該着色剤の粒子を該結着樹脂に分散して分散物を得、得られた分散物から該溶剤を除去して該着色剤の粒子が分散されている着色結着樹脂組成物を得、該着色結着樹脂組成物、第2の結着樹脂及び荷電制御剤の混合物を溶融混練して混練物を得、得られた混練物からトナーを生成することを特徴とするトナーの製造方法。」 (特許請求の範囲の請求項1)
(2b)従来技術における課題について、
「一般に該混合物の溶融混練方法は、スクリュー型押出機、加圧加熱二ーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、バンバリーミキサーの如き混練機を使用し、1回の分散工程を経て、該混合物から溶融混練物を得ている。電子写真用カラートナーの場合、トナーの製造工程におけるこの溶融混練工程は、者色剤や荷電制御剤のトナー粒子中における分散状態を左右する重要な工程である。
結着樹脂中に含有されている着色剤の分散状態が不均一であると、カラートナーの場合所望の着色力が得られず、彩度が低下し、くすんだ色調となる。さらに、2次凝集した着色剤が結着樹脂中で偏析することによる濃度の不均一性が生じたりする。
さらに、トナー粒子中またはトナー粒子間における荷電制御剤の分散不良は、電子写真用トナーとしての帯電特性に欠陥を招来する場合がある。例えば、トナーの帯電の立上りが遅く、好ましい帯電量が得られない。さらに、低温及び高温の如き各種環境におけるトナーの帯電特性に著しい差異を生ずる。
くり返し多数枚の複写をすると、トナーの帯電能力が低下し、帯電量分布のブロードな環境安定性に欠けるトナーとなり易い。」
(段落【0003】〜【0006】)
(2c)本発明の目的として、
「本発明の目的は、着色剤の分散生が良好で、着色力の高いトナーが得られるトナーの製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、彩度が高く、透明性に優れたカラートナーの製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、帯電安定性に優れたトナーを製造するための方法を提供することにある。
本発明の目的は、画像濃度の高いトナー像が得られるトナーを製造するための方法を提供することにある。
本発明の目的は、多数枚の複写によっても帯電劣化しにくいカラートナーを製造するための方法を提供することにある。
本発明の目的は、環境安定性に優れた帯電特性の得られるトナーを製造するための方法を提供することにある。」
(段落【0012】〜【0017】)
(2d)「荷電制御剤は、溶剤に不要な着色剤の分散工程とは切り離して分散せしめるよう考慮されている。これにより、トナーの摩擦帯電は好ましく改良されることになり、速やかなトナーの帯電の立上りや帯電の均一性を達成することができる。」(段落【0023】)
(2e)「負荷電制御剤としては、カルボキシル基及び水酸基を有する芳香族化合物の金属錯体が挙げられる。代表例としては、アルキル置換サルチル酸の金属錯体が挙げられる。
具体的には、ジーターシャリーブチルサリチル酸のクロム錯体、ジーターシャリーブチルサリチル酸のアルミニウム錯体、ジーターシャリーブチルサリチル酸の亜鉛錯体、ジーターシャリーブチルサリチル酸の銅錯体が挙げられる。なかでも、ジーターシャリーブチルサリチル酸のクロム錯体、ジーターシャリーブチルサリチル酸の亜鉛錯体及びジーターシャリーブチルサリチル酸のアルミニウム錯体が好ましい。」
(段落【0048】)
(2f)「(実施例1)プロポキシ化ビスフェノールとフマル酸を縮合して得られたポリエステル樹脂(重量平均分子量18000,エチルエチルケトン100gに対して10g以上溶解)70重量部
キナクリドン顔料(C.I.ピグメントレッド122)(メチルエチルケトンに対して実質的に不溶)30重量部
メチルエチルケトン(b.p.約80℃)20重量部
上記材料を、密閉式の容器を有し、剪断力で着色剤を分散するための攪拌ブレードを2枚具備している加圧式ニーダーの密閉容器に全量投入し、常温下にてメチルエチルケトンに上記樹脂及び顔料がなじみ濡れるまで、ゆっくりニーダーを稼働せしめた。
次いで、密閉容器内の温度を徐々に昇温させ、昇温と同時にニーダーの混合性を増すべく出力を上げた。温度約80℃で2時間ニーダー攪拌を行い、その後、分散物をニーダーから取り出し、分散物を60℃の2本ロールミルを用いて10パス通過せしめた。さらに、分散物に含有されるメチルエチルケトンを完全に除去するため、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥せしめ、マゼンタ色の樹脂組成物を得た。
該マゼンタ色樹脂組成物をスピードミルにより約2mm粒径に粉砕し、得られた粉砕物100重量部に上記ポリエステル樹脂530重量部及び有機含クロム錯体(ジアルキルサリチル酸のクロム錯体)粉末24重量部を加え、2軸押出し機により溶融混練を行った。
この最終混練物を粉砕し分級して、体積平均粒径8μmのマゼンタトナーを得た。」
(段落【0063】〜【0065】)
(2g)「以上により得られたトナーの特性を確認すべく、図1に示すOPC感光ドラムを有したカラー電子写真装置にスタート剤を導入して、複写試験を行った。
マゼンタトナー単色で低温低湿環境か及び高温高湿環境下、マゼンタトナーを補給しながら、3万枚耐刷試験を行ったところ、3万枚後も初期と変わらないかぶりのない良好な彩度に優れた画像であった。連続複写中かすれや濃度低下もなかった。複写初期と3万枚耐刷後とのトナーの停電量は、それぞれ-38.5μc/g、-40.2μc/gであった。」
(段落【0068】および【0069】)
(3)甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
(3a)「Tgはトナーの場合の凝集(Block-ing)温度とよく一致し低分子量のものをトナー用樹脂として用いる事は困難である。」
(第520頁右欄第5行〜第7行)
(3b)「(vi)擬集(Blocking)温度;トナーの貯蔵や補給、あるいは複写物の保管など実用面できわめて重要であり、一般には複写機内の温度上昇や保管状態などを考慮して40〜50℃以下で擬集するものは避けねばならない。」
(第521頁右欄第14行〜18行)
4 対比・判断
(1)36条違反について
前記「第2」に記載のように平成17年6月27日付けの訂正請求による訂正が認められたことにより、本件の請求項1ないし3に記載された事項と対応する事項が、発明の詳細な説明により実質的に支持されているものと認められるので、36条違反は解消されたものと認められる。
(2)29条違反について
ア 本件請求項1に係る発明について
(ア)対比
本件の請求項1に係る発明(以下、「本件請求項1発明」という。)と、甲第1号証に記載された発明(以下、「甲第1号証発明」という。)とを対比する。
摘記事項(1a)(1c)および(1d)の記載からみて、甲第1号証には「少なくともバインダ樹脂並びに着色剤及び/又は帯電制御剤から成るトナー材料の混合工程を有するトナーの製造方法」が記載されている。
また、摘記事項(1d)には、樹脂粒子とワックス粒子とを撹拌混合して予備混合物を製造し、次いで、バインダー樹脂としてのポリエステル樹脂と、上記予備混合物と、着色剤と、その他必要に応じて用いられる添加剤とからなるトナ-材料を予備混合する、トナーの製造方法が記載されており、さらに摘記事項(1c)にはその他必要に応じて荷電制御剤(帯電制御剤に相当する。)等の添加剤を含有させてもよいと記載されていることから、甲第1号証には、着色剤及び帯電制御剤からなる群より選択される少なくとも1種のトナー材料の全量の混合を、混合工程の途中段階又は最終段階で行うことが記載されている。
よって、本件請求項1発明と甲第1号証発明とは、「少なくともバインダ樹脂並びに着色剤及び/又は帯電制御剤から成るトナー材料の混合工程を有するトナーの製造方法において、着色剤及び帯電制御剤からなる群より選択される少なくとも1種のトナー材料の全量の混合を、混合工程の途中段階又は最終段階で行うトナーの製造方法」である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:
本件請求項1発明では、前記混合工程において使用される混合装置の混合槽内温度を混合槽外部に冷却手段を講ずることにより式(1)混合槽内温度≦Tg-5(℃)(ただし、Tgは使用するバインダ樹脂のガラス転移温度)を満たす条件で行うのに対し、甲第1号証には該混合槽内温度についての記載がない点。
(イ)相違点1について
前記相違点1について検討する。
甲第1号証には、混合工程において使用される混合装置の混合槽内温度については全く記載されていない。
甲第2号証には、摘記事項(2f)に攪拌時の温度が記載されているが、「混合槽内温度を混合槽外部に冷却手段を講ずることにより式(1)混合槽内温度≦Tg-5(℃)(ただし、Tgは使用するバインダ樹脂のガラス転移温度)」を満たす条件にすることは記載がなく、該条件を示唆する記載もない。
甲第3号証には、バインダ樹脂のガラス転移温度Tgに関する記載はあるが、混合槽内温度を混合槽外部に冷却手段を講ずることにより式(1)混合槽内温度≦Tg-5(℃)(ただし、Tgは使用するバインダ樹脂のガラス転移温度)を満たす条件にすることは記載がなく、該条件を示唆する記載もない。
よって、甲号各証に記載された事項からでは、相違点1に係る構成を導き出すことはできない。
そして、本件の請求項1に係る発明は、相違点1に係る構成を有することにより、「小粒径トナーの作製時においても帯電量のばらつきや着色ムラが発生せず、また、チャージアップによる画質劣化がなく、さらには、長期あるいは連続使用時の耐久性に優れたトナーを効率的に製造することが可能となる。」という、本願明細書の段落【0037】に記載の顕著な効果を奏するものである。
(ウ)まとめ
したがって、本願請求項1に係る発明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとすることができない。
イ 本願請求項2および3に係る発明について
請求項1に係る発明の構成を全て引用する請求項2および3に係る発明についても前記(1)と同様に判断される。
第4 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件請求項1ないし3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
したがって、本件請求項1ないし3に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対して付与されたものと認めないから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
トナーの製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくともバインダ樹脂並びに着色剤及び/又は帯電制御剤から成るトナー材料の混合工程を有するトナーの製造方法において、着色剤及び帯電制御剤からなる群より選択される少なくとも1種のトナー材料の全量の混合を、混合工程の途中段階又は最終段階で行うに際し、前記混合工程において使用される混合装置の混合槽内温度を混合槽外部に冷却手段を講ずることにより下記式(1)を満たす条件で行うことを特徴とするトナーの製造方法。
式(1)混合槽内温度≦Tg-5(℃)
(ただし、Tgは使用するバインダ樹脂のガラス転移温度)
【請求項2】着色剤及び帯電制御剤より選択される少なくとも1種のトナー材料の全量の混合を、混合工程の最終段階で行うことを特徴とする請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】着色剤及び帯電制御剤より選択される少なくとも1種のトナー材料が帯電制御剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電子写真複写機やレーザビームプリンタ等の電子写真法を用いた画像形成装置に用いられるトナーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、トナーは、バインダ樹脂、着色剤、帯電制御剤及び離型剤(ワックス)や磁性粉等のその他の添加剤等からなるトナー材料を混合し、溶融混練した後、粉砕、分級して製造される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この場合、トナー材料を配合し混合する工程が極めて重要である。すなわち、混合工程で各材料の混合が十分でないと、トナーとしても性能的に振れのある不都合なものしか得られない。
しかしながら、各トナー材料はそれぞれ独自の物理特性(粒度、見かけ比重、摩擦帯電性等)を有するため、一度に仕込んで混合しても材料間の凝集が発生しやすく、従って、得られるトナーには帯電量のばらつきや着色ムラ等の不具合が発生したり、また、長期あるいは連続使用時の耐久性に難がある等、必ずしも常に満足すべき結果は得られていなかった。また、上記の問題を解決すべく、混合での分散均一性を上げるために撹拌混合強度を増す(混合回転数や混合時間等のアップ)試みもなされているが、徒に生産性を悪化させるのみならず、帯電制御剤や着色剤等の特定成分の過度の分散に起因するトナーのチャージアップが発生して、画質劣化を招くという問題が新たに発生する。特に小粒径のトナー(平均粒径で10μm以下)の製造において、以上述べた問題が障壁となっていた。
本発明は上記した現状に鑑み、その課題を解決すべくなされたものであって、その目的は小粒径トナーとした場合でも、帯電量のばらつきや着色ムラが発生せず、また、チャージアップによる画質劣化がなく、さらには、長期あるいは連続使用時の耐久性の高いトナーの製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはかかる目的を達成すべく鋭意検討した結果、混合工程においてトナー材料を段階的に混合する方法、好適には着色剤及び/または帯電制御剤を混合工程の途中段階もしくは最終段階で混合するトナーの製造方法により、上記目的を満足することを見い出し本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、少なくともバインダ樹脂並びに着色剤及び/又は帯電制御剤から成るトナー材料の混合工程を有するトナーの製造方法において、着色剤及び帯電制御剤からなる群より選択される少なくとも1種のトナー材料の全量の混合を、混合工程の途中段階又は最終段階で行うに際し、前記混合工程において使用される混合装置の混合槽内温度を混合槽外部に冷却手段を講ずることにより下記式(1)を満たす条件で行うことを特徴とするトナーの製造方法に存する。
式(1)混合槽内温度≦Tg-5(℃)
(ただし、Tgは使用するバインダ樹脂のガラス転移温度)
【0005】
本発明のトナーの製造方法においては、混合工程で各トナー材料が段階的に添加混合される。すなわち、混合工程において、混合は2段階以上の操作を経て実施される。特に、トナー性能に大きな影響を及ぼす帯電制御剤及び/または着色剤が、混合工程の途中段階もしくは最終段階で添加されることにより、始めから一度に混合を行う場合に比べて各材料間の不必要な凝集及び特定成分の過度の分散を同時に排除できる。従って、本発明の製造方法によれば、前記した問題点を解消したトナーをさしたる労力を必要としないで効率的に製造することができる。
以下、本発明のトナーの製造方法を詳細に説明する。
【0006】
まず、トナーの構成材料であるバインダ樹脂、着色剤、帯電制御剤及びその他の添加物等を所定割合で配合して混合する。この際の装置としては、Vブレンダー、ボールミル等の重力落下式混合機やヘンシェルミキサー(三井三池加工機社製)、スーパーミキサー(カワタ社製)等の高速流動式混合機が使用される。
本発明においては、この混合を段階的に実施し、好ましくはトナー材料のうち帯電制御剤及び/または着色剤の少なくとも一部を混合工程の途中段階又は最終段階で混合することを特徴とする。帯電制御剤及び着色剤のうち混合工程で添加する材料は、着色剤のみ、あるいは帯電制御剤のみでもよく、着色剤及び帯電制御剤の両成分を加えてもよい。両成分を加える場合、混合のある段階で着色剤と帯電制御剤を同時に加えてもよいし、先に着色剤を加えて混合して、更に、その後の段階で帯電制御剤を加えてもよく、その添加順が逆の場合であってもよい。
またトナー材料の仕込み量の一部を混合した後、残量を混合してもよい。更には一部のトナー材料の混合物とその他のトナー材料の混合物を混合してもよい。また、混合条件として、装置の撹拌回転数を最初から同じ条件のまま行ってもよいし、途中もしくは最終での添加に合わせて変更してもよい。
【0007】
混合時間は混合される構成材料及び混合装置の特性に合わせて適宜設定される。必要に応じては、途中段階もしくは最終段階での添加に合わせて混合装置自体を変更してもよい。本発明において、特に望ましい混合工程の実施の態様は、▲1▼混合装置としてヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速流動式混合機を用いること、▲2▼途中もしくは最終で添加される着色剤及び/または帯電制御剤の混合条件は、その前段階の条件よりも撹拌混合強度を弱めること(例えば、撹拌回転数を下げること、混合時間を短時間化すること、あるいはそれらを組み合わせて行うこと等)である。
【0008】
ここで、高速流動型混合機とは、混合容器底部に取り付けた羽根を高速で回転させて、羽根の強力なせん断及び衝撃作用により粉粒体を流体のように分散させて混合を行う形式の混合機をいう。この方式の混合機は、重力落下方式の混合機に比べて撹拌強度が強く、短時間で効率よく混合が行えるため、生産性の面で有利である。しかし、逆に着色剤や帯電制御剤等の微粒子成分の過度の分散を起こしやすい。そのため、これらの成分を途中段階もしくは最終段階で添加し、しかもその時の撹拌混合強度を弱めるとより好ましい結果を得られることが見い出された。
【0009】
また、これらの高速流動式混合機では、上記したような強力な撹拌作用に伴う混合槽内温度上昇が見られる。これらの発熱は、場合によっては、各トナー材料に悪影響を及ぼし、特にバインダ樹脂が凝集固化する現象が発生すると、材料の分散混合性が悪化する原因となる。従って、本発明においては、混合工程において使用される混合装置の混合槽内の温度をバインダ樹脂のガラス転移温度以下で管理することが好ましい。中でも特に下記の条件で行うのがよい。
【0010】
【数1】
混合槽内温度≦Tg-5(℃)
(ただし、Tgは使用するバインダ樹脂のガラス転移温度)
特に望ましくは、下記の条件がよい。
【0011】
【数2】
混合槽内温度≦Tg-10(℃)
【0012】
上記の条件で混合を行うことにより、樹脂の凝集固化の発生がなく、またその他の材料の分散混合性の悪化も回避できる。なお、混合槽内温度を上記の条件に抑えるためには、混合槽外部に水冷等の冷却装置を設置する等の手段を講ずるのが望ましい。また混合工程の全段階において温度管理することが好ましいが、混合工程の一部のみ温度管理をしてもよい。
混合の後、混合物を溶融混練する。溶融混練工程で使用される装置としては、2本あるいは3本ロール、バンバリーミキサー、一軸あるいは二軸押し出し機等が挙げられる。この工程において、バインダ樹脂と相溶性を有する成分は樹脂と溶融し、また、バインダ樹脂と相溶性を有しない帯電制御剤等の成分は、溶融した樹脂中に分散される。
【0013】
次に上記溶融混練物を冷却固化させた後、粗粉砕、微粉砕及び分級の各工程を経てトナーが製造される。粗粉砕にはハンマーミル、カッターミル等が、微粉砕には高速回転式微粉砕機やジェット粉砕機等が用いられ、分級には強制うず型遠心分級機や慣性分級機等が用いられる。
本発明のトナーの製造方法は、混合工程においてトナー材料を段階的に混合するという要件さえ満たせば、特に通常の単色画像形成用の非磁性の黒トナーに限らず、磁性トナーやフルカラー画像形成用のカラートナー等、従来公知の種々の電子写真用のトナーの製造に適用することができる。
【0014】
本発明に使用するトナー材料は従来公知のもの全てが使用可能であるが、たとえば、下記の如くである。
バインダ樹脂:スチレン/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂など
着色剤:カーボンブラック、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、キナクリドン顔料、銅フタロシアニン顔料、アントラキノン染料、ローダミン染料など
帯電制御剤:正帯電用としては、ニグロシン化合物(変性物を含む)、第4アンモニウム化合物、スチレンアミノ樹脂など、負帯電用としては、含金属錯体染料、アルキルサリチル酸のクロムや亜鉛等との錯化合物など
その他の添加剤:離型剤(ワックス)として、低分子量のポリエチレンやポリプロピレンなど、磁性トナー作製時の磁性粉として、マグネタイト微粒子やフェライト微粒子など
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明する。実施例及び比較例中、「部」は「重量部」である。
実施例1
トナー処方は下記にて行った。
【0016】
【表1】
・バインダ樹脂成分 スチレン/n-ブチルアクリレート樹脂(軟化点約140℃、Tg約60℃)
100部
・ワックス成分 低分子量ポリプロピレン(三洋化成製、ビスコール660P)
3部
・着色剤成分 カーボンブラック(三菱化成製、三菱カーボンブラック#40)
8部
・帯電制御剤成分 ニグロシン染料(オリエント化学製、ボントロンN09)
3部
【0017】
製造に当たっては、まず、バインダ樹脂成分とワックス成分とをヘンシェルミキサーで約30分間混合した後、一旦装置を停止させ、着色剤成分と帯電制御剤成分とをその中に加えて、さらに約3分間の混合を行い、混合を終了した。なお、混合工程の全ての期間を通じて、水冷を施すことにより混合槽内の温度は約50℃以下とした。
その後、二軸押し出し機にて、加熱溶融混練した。
得られた混練物を冷却固化させた後、フェザーミルで粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕した。さらに、粒径が5μm以下のトナー微粉をローター回転型分級機でカットして粒径を揃えた(平均粒径で約8μm)。ヘンシェルミキサーを用いて、この分級品に疎水性シリカを添加し、トナーを作製した。
このトナー6部と、平均粒径約50μmのフェライトキャリア94部とをVブレンダーで混合して現像剤を作製した。
【0018】
これらのトナー及び現像剤に対する評価試験として、有機光導電体ドラムを感光体とする市販の複写機を用いた実写による画像品質確認及び耐久性確認(5万枚連続実写試験)を行った。
結果を表1に示す。なお、画像濃度の測定は、画像のベタ部分をマクベス反射濃度計を用いて行い、カブリの測定は、通紙前後の紙の背景部の白度の差をハンター白度計で測定した。また、ブローオフ法による現像剤の帯電量測定も併せて実施し、Q/Mと表記した。
【0019】
【表2】

【0020】
表1によれば、画像品質として、十分な画像濃度と低いカブリのレベルを有し、しかも5万枚を通じてほぼ初期の画像品質を維持した。また、その間の現像剤帯電量も極めて安定して推移することがわかった。
【0021】
比較例1
実施例1と全く同様の配合処方を用い、ヘンシェルミキサーでの混合時に全ての材料を同時に仕込んで、約30分間の混合を行うこと以外は、実施例1と全く同様な操作でトナー及び現像剤を作製し、評価試験も同様に行った。その結果を表2に示す。
【0022】
【表3】

【0023】
表2によれば、特に連続実写で画像濃度の大幅な低下が見られ、画像品質の劣化が顕著であった。また、その間の現像剤帯電量も大幅なチャージアップ傾向が見られ、安定性に欠けることが確認された。これは、着色剤や帯電制御剤成分の混合工程での過度の分散に起因するものと考えられる。
実施例2
トナー処方は下記にて行った。
【0024】
【表4】
・バインダ樹脂成分 ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物とテレフタル酸とを主成分に合成されるポリエステル樹脂(軟化点約140℃、Tg約65℃)
100部
・ワックス成分 低分子量ポリプロピレン(三洋化成製、ビスコール550P)
3部
・着色剤成分 カーボンブラック(三菱化成製、三菱カーボンブラックMA600)
10部
・帯電制御剤成分 クロム含金属染料(オリエント化学製、ボントロンS34)
3部
【0025】
製造に当たっては、まず、バインダ樹脂成分とワックス成分とをスーパーミキサーで約40分間混合した後、一旦装置を停止させ、着色剤成分と帯電制御剤成分とをその中に加えて、さらに約5分間の混合を行い、混合を終了した。なお、混合工程の全ての期間を通じて、水冷を施すことにより混合槽内の温度は約50℃以下とした。
その後、二軸押し出し機にて、加熱溶融混練した。
得られた混練物を冷却固化させた後、フェザーミルで粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕した。さらに、粒径が5μm以下のトナー微粉をローター回転型分級機でカットして粒径を揃えた(平均粒径で約7μm)。ヘンシェルミキサーを用いて、この分級品に疎水性チタニアを添加し、トナーを作製した。
このトナー7部と、平均粒径約50μmのマグネタイトキャリア93部とをVブレンダーで混合して現像剤を作製した。
これらのトナー及び現像剤に対する評価試験として、有機光導電体ドラムを感光体とする市販のレーザービームプリンタを用いた実写による画像品質確認及び耐久性確認(5千枚連続実写試験)を行った。
結果を表3に示す。なお、評価方法は実施例1と同様に行った。
【0026】
【表5】

【0027】
表3によれば、画像品質として、十分な画像濃度と低いカブリのレベルを有し、しかも5千枚を通じてほぼ初期の画像品質を維持した。また、その間の現像剤帯電量も極めて安定して推移することがわかった。
【0028】
実施例3
実施例2と全く同様の配合処方を用い、スーパーミキサーでの混合時に、最初に樹脂成分、ワックス成分及び着色剤成分を仕込んで約40分間の混合を行った後、一旦装置を停止させ、帯電制御剤成分をその中に加えて、更に約5分間の混合を行い、混合を終了した。なお、混合工程の全てを通じて、水冷を施すことにより混合槽内の温度は約50℃以下とした。
以下、実施例2と全く同様な操作でトナー及び現像剤を作製し、評価試験も同様に行った。その結果を表4に示す。
【0029】
【表6】

【0030】
表4によれば、画像品質として、十分な画像濃度と低いカブリのレベルを有し、しかも5千枚を通じてほぼ初期の画像品質を維持した。また、その間の現像剤帯電量も極めて安定して推移することがわかった。
【0031】
実施例4
実施例2と全く同様の配合処方を用い、スーパーミキサーでの混合時に、最初に樹脂成分、ワックス成分及び帯電制御剤成分を仕込んで約40分間の混合を行った後、一旦装置を停止させ、着色剤成分をその中に加えて、更に約5分間の混合を行い、混合を終了した。なお、混合工程の全てを通じて、水冷を施すことにより混合槽内の温度は約50℃以下とした。
以下、実施例2と全く同様な操作でトナー及び現像剤を作製し、評価試験も同様に行った。その結果を表5に示す。
【0032】
【表7】

【0033】
表5によれば、画像品質として、十分な画像濃度と低いカブリのレベルを有し、しかも5千枚を通じてほぼ初期の画像品質を維持した。また、その間の現像剤帯電量も極めて安定して推移することがわかった。
【0034】
比較例2
実施例2と全く同様の配合処方を用い、スーパーミキサーでの混合時に全ての材料を同時に仕込んで、約40分間の混合を行うこと以外は、実施例2と全く同様な操作でトナー及び現像剤を作製し、評価試験も同様に行った。その結果を表6に示す。
【0035】
【表8】

【0036】
表6によれば、特に連続実写で画像濃度の大幅な低下が見られ、画像品質の劣化が顕著であった。また、その間の現像剤帯電量も大幅なチャージアップ傾向が見られ、安定性に欠けることが確認された。これは、着色剤や帯電制御剤成分の混合工程での過度の分散に起因するものと考えられる。
【0037】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のトナー製造方法によれば、小粒径トナーの作製時においても帯電量のばらつきや着色ムラが発生せず、また、チャージアップによる画質劣化がなく、さらには、長期あるいは連続使用時の耐久性に優れたトナーを効率的に製造することが可能となる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-09-26 
出願番号 特願平6-114971
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G03G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 菅野 芳男  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 前田 佳与子
秋月 美紀子
登録日 2003-08-01 
登録番号 特許第3456010号(P3456010)
権利者 三菱化学株式会社
発明の名称 トナーの製造方法  
代理人 長谷川 曉司  
代理人 長谷川 曉司  

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