• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03G
管理番号 1127307
異議申立番号 異議2003-73543  
総通号数 73 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-10-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2005-09-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3458517号「非磁性1成分現像剤および画像形成方法」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3458517号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3458517号の請求項1ないし7に係る発明は、平成7年3月29日に出願され、平成15年8月8日にその発明について特許の設定登録がなされた。
本件特許公報が、平成15年10月20日に発行されたところ、本件の請求項1ないし7に係る特許に対して、近藤英生より特許異議の申立があり、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成17年6月27日付けで訂正請求がなされた。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求は、本件明細書を、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、次のとおりである。
特許請求の範囲の請求項1の、「線押圧力が30〜150N/mである現像方法」との記載を、「線押圧力が36〜150N/mである現像方法」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正は、発明を特定する事項である、担持体に対する規制部材の線押圧力の範囲を「30〜150N/m」から、「36〜150N/m」に縮小する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。また、訂正後の下限値「36N/m」は、願書に添付した明細書の実施例の記載に基づくものであるから、該訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

3 訂正の適否についての結論
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについての判断
1 申立ての理由の概要
特許申立人は、下記の甲第1号証ないし甲第3号証を提出して、本件請求項1ないし7に係る発明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許を取り消すべき旨主張する。

甲第1号証:特開平5-188751号公報
甲第2号証:特開平4-362956号公報
甲第3号証:特開昭62-982号公報

2 本件の請求項1〜7に係る発明
前項「第2」で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1〜7に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 現像剤が供給される現像剤担持体と該担持体を押圧する現像剤層厚規制部材を備え、該担持体に対する該規制部材の線押圧力が36〜150N/mである現像方法に使用される非磁性1成分現像剤であって、該非磁性1成分現像剤が架橋性ポリエステル樹脂と非架橋性ポリエステル樹脂との混合物である結着樹脂および着色剤を混練し粉砕して得られる軟化点が130℃以下であるトナー粒子からなることを特徴とする非磁性1成分現像剤。
【請求項2】 架橋性ポリエステル樹脂と非架橋性ポリエステル樹脂との重量比が50:50〜92:8の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の非磁性1成分現像剤。
【請求項3】 現像剤がトナー粒子と脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の非磁性1成分現像剤。
【請求項4】 請求項1乃至3のいずれかに記載の非磁性1成分現像剤を用いることを特徴とする画像形成方法。
【請求項5】 現像剤担持体に現像剤層厚規制部材を押圧し、該担持体を該規制部材に対し相対的に移動させることにより、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非磁性1成分現像剤が押圧部を通過して、該担持体上に現像剤層が形成する工程、該担持体上の現像剤を静電潜像保持部材との対向域で静電潜像保持部材へ移転させる工程、静電潜像保持部材上の現像剤を転写材へ転写する工程、および接触型の熱定着器により現像剤を転写材へ定着する工程を有する画像形成方法。
【請求項6】 155℃以下の表面温度で熱定着する工程を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の画像形成方法。
【請求項7】 現像剤層厚規制部材と現像剤担持体との間に電圧を印加しないことを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。」
3 甲号各証の記載事項
(1) 甲第1号証には、
(1a)「現像領域へ現像剤を搬送する合成樹脂製現像剤担持体と該現像剤担持体に圧接し、搬送される現像剤量を規制する規制部材を備えた一成分現像装置において、前記現像剤担持体が脱アルコール型シリコーン樹脂表面層を有することを特徴とする現像装置。」(特許請求の範囲の請求項1)
に関し、
(1b)従来技術における課題について、「現像剤担持体が・・・現像ローラ乃至現像スリーブである場合を例にとると、使用を重ねるにつれ、これに圧接するトナー規制部材上にトナーが固着したり、現像ローラ表面へのトナーのフィルミング等による付着が発生し易く、その結果、トナー荷電量が低下したり、トナー搬送量が不十分になったりして画像濃度ムラ、濃度低下、白スジの発生(特に黒ベタ画像の場合)等の問題が発生する。」(段落【0003】)
(1c)「そこで本発明は、現像領域へ現像剤を搬送する合成樹脂製現像剤担持体と該現像剤担持体に圧接し、搬送される現像剤量を規制する規制部材を備えた一成分現像装置であって、使用を重ねても、現像剤規制部材への現像剤固着や現像剤担持体への現像剤フィルミングが生じにくく、現像剤荷電性、搬送性が安定し、熱安定性、耐摩耗性にも優れ、長期にわたり良好な画像が得られる現像装置を提供することを目的とする。」(段落【0004】)
と記載され、実施例中には、
(1d)「この現像スリーブは駆動ローラ15が回されることで、これに従動回転する。・・・・・トナー収容槽11には上端がこれに片持ち支持され、下端が現像スリーブ13に対し反対方向に若干折り曲げられている規制部材16が配置され、現像スリーブ13に約3.5g/mmの力で圧接している。」(段落【0011】)
(1e)「この規制部材16は、トナー収容槽11から第一攪拌部材12及び第二攪拌部材14により攪拌、供給されたトナー1を摩擦帯電させ、一定のトナー層厚を現像スリーブ13の表面に形成する。・・・・・」(段落【0012】)
(1f)「トナー1は負帯電性のトナー、具体的にはビスフェノールA型ポリエステル樹脂(AV:19、OHV:23、軟化点123℃、Tg:65℃)100重量部と、カーボンブラックMA#8(三菱化成工業株式会社製)5重量部と、ボントロンS-34(オリエント化学工業株式会社製)3重量部と、ビスコールTS-200(三洋化成工業株式会社製)2.5重量部からなる組成物を、既知の方法によって混練、粉砕、分級し、粒径が7〜13μmの範囲に80重量%分布した、平均粒径10μmであるトナー粒子を製造し、このトナー粒子に流動化剤として疏水性シリカ(タルコ社製、タラノックス500)を0.5重量%添加し、ホモジナンザーにより回転数200rpmで1分間混合、攪拌したものである。」(段落【0013】)
(1g)「このような現像装置を・・・・・レーザビームプリンタに装着し、現像スリーブ13が感光体PCと接触する現像領域において感光体上の静電潜像に現像スリーブ13の表面に存在するトナー1を付着させ、その静電潜像を顕像化した。かくして得られた感光体上のトナー像は、・・・・・転写用紙上に転写され、・・・・・定着された後、画像として排出される。」(段落【0014】)
と記載されている。

(2) 甲第2号証には、
(2a)「結着樹脂および着色剤並びに所望に応じて他の添加剤を含有する電子写真用現像剤組成物において、結着樹脂の主成分がポリエステルよりなり、そのポリエステルは第1のポリエステルと第2のポリエステルとからなり、第1のポリエステルと第2のポリエステルの重量比は80:20乃至20:80であり、前記第1のポリエステルは全酸成分中0.05mol%以上40mol%未満の3価以上のポリカルボン酸或いはその酸無水物或いはその低級アルキルエステル及び/又は全アルコール成分中0.05mol%以上40mol%未満を占める3価以上のポリオールを構成単量体として有し、軟化点Tspが100℃以上130℃未満である非線状ポリエステルであり、また前記第2のポリエステルは軟化点Tspが80℃以上110℃未満の線状ポリエステルであり、第1のポリエステルと第2のポリエステルの軟化点Tspの差が10℃以上で、第1のポリエステルおよび第2のポリエステルは、共に全酸成分中50mol%以上の脂肪族のジカルボン酸或いはその酸無水物を含む単量体よりなることを特徴とするフルカラー電子写真用現像剤組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)
(2b)「さらに本発明の目的は、流動性に優れ、凝集を起こさず、耐衝撃性にも優れている熱ローラー定着用トナーを用いた電子写真用現像剤組成物を提供することにある。」(段落【0015】)
(2c)「前記第1のポリエステルと前記第2のポリエステルの配合重量比は、80:20乃至20:80であり、特に70:30乃至30:70であることが好ましい。前記第1のポリエステルの配合重量比が上記範囲より大きいときには低温定着性及び定着面の平滑性が低下する傾向があり、一方第1のポリエステルの配合重量比が上記範囲より小さいときには耐ホットオフセット性、耐ブロッキング性が低下する傾向がある。」(段落【0022】)
(2d)「本発明のトナーは、例えば次のような方法により製造することができる。すなわち、必須成分である前記第1のポリエステルおよび第2のポリエステルあるいはさらにその他の樹脂を加えたものに、着色剤を加え、さらには必要に応じてその他の添加剤を加え、これらを予備混合した後、溶融混練し、冷却し、粗砕し、さらに微粉砕し、次いで分級することにより、所望の粒径の粒子粉末よりなるトナーを得ることができる。」(段落【0047】)
(2e)「クリーニング性向上剤としては、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の微粒子粉末などがある。更に現像性を調整するための添加剤、例えばメタクリル酸メチルエステルの重合物の微粒子粉末などを用いてもよい。」(段落【0051】)
(2f)「本発明のトナーは、磁性体微粉末を含有するものであるときには単独で現像剤として用いられ、又磁性体微粉末を含有しないものであるときは、キャリアと混合して二成分系の現像剤を調製して用いることができる。キャリアとしては、特に限定されないが、鉄粉、フェライト、ガラスビーズ等、又はそれらの樹脂被覆したものが用いられ、トナーのキャリアに対する混合比は0.5〜10重量%である。またキャリアの粒径としては、30〜500μmのものが用いられる。又キャリアを用いずに非磁性一成分トナーとしてもよい。」(段落【0053】)
(2g)「実施例1〜7及び比較例1〜7
各実施例および比較例においては、表3に示す組合せおよび配合量のポリエステルの合計80重量部とスチレン-アクリル樹脂の20重量部と、マゼンタ系染料「ROB-B」(オリエント化学社製)の1重量部と、電荷制御剤「ボントロンP-51」(オリエント化学社製)の0.8重量部と、低分子量ポリプロピレン「ビスコール660P」(軟化点Tsp:130℃、三洋化成工業社製)の2重量部とを予備混合した後、溶融、混練、冷却、粉砕、分級の工程による通常の方法により、平均粒径が10μmの粒子粉末を製造した。」(段落【0060】)
と記載され、
(2h)表3には、各実施例、比較例で使用した第1および第2のポリエステルの軟化点が示されており、実施例においては、第1のポリエステルが、110〜115℃、第2のポリエステルが、85〜102℃の軟化点であったこと、比較例においては、第1のポリエステルが、95〜135℃、第2のポリエステルが、102〜115℃の軟化点であったことが記載されている。

(3) 甲第3号証には、
(3a)「カラートナー画像の定着方法において、シヤープメルト性ポリエステル樹脂70〜95重量%とスチレン-アクリル系共重合体5〜30重量%とから少なくともなる結着樹脂を含有しており軟化点が約60℃〜約150℃である各色のトナーから形成されているカラー画像を、ゴム材質として平均分子量が2万〜20万の低温加硫型メチルビニル系シリコーンゴムを具備する定着ローラで定着することを特徴とするカラートナー画像定着方法。」(特許請求の範囲第1項)
(3b)「本発明で使用するシヤープメルト性ポリエステル樹脂の軟化点は、60〜150℃好ましくは80〜120℃が良い。」(第3頁右上欄第18〜20行)
(3c)「実施例1
プロピレングリコール5.25部(モル量)とフマール酸5.00部(モル量)を170〜200℃で4時間反応し、軟化点113℃ Mw22000、Mn4000のポリエステル樹脂(T1=133℃、T2=158℃、|△T|=25℃)を得た。得られたポリエステル樹脂95重量部、スチレン-ブチルメタクリル共重合体(三洋化成社製ハイマーSBM73)5重量部および下記着色剤(結着樹脂100重量部に対して3重量部混合)を混合し、溶融混練し、冷却後粉砕、分級して平均粒径9μの各色のトナーを得た。トナーの軟化点は116℃であつた。」(第5頁左下欄第14行〜右下欄第6行)
(3d)「比較例1
実施例1で使用したポリエステル樹脂のみを使用すること以外は実施例1と同様にしてイエロー、マゼンタシアンの各色現像剤を調製した。尚、トナーの軟化点は114℃であつた。」(第6頁左上欄第6〜10行)
と記載されている。

4 対比・判断
(1) 本件の請求項1に係る発明について
ア 対比
本件の請求項1に係る発明と、甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された実施例の記載(摘記事項(1d))からみて、甲第1号証に記載された発明においては、規制部材は、現像スリーブに約3.5g/mm、すなわち、約34N/mの力で圧接しており、該圧接する力は、本件の請求項1に係る発明における「現像剤担持体に対する現像剤層厚規制部材の線押圧力」に相当するものである。
また、同実施例の記載からみて、甲第1号証に記載された発明においては、トナーとして、少なくともポリエステル樹脂からなる結着樹脂と着色剤であるカーボンブラックとを混練粉砕して得られた1成分非磁性トナーを用いている。
よって、両者は、「現像剤が供給される現像剤担持体と該担持体を押圧する現像剤層厚規制部材を備える現像方法に使用される非磁性1成分現像剤であって、該非磁性1成分現像剤がポリエステル樹脂である結着樹脂および着色剤を混練し粉砕して得られるトナー粒子からなる非磁性1成分現像剤」である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:
現像剤担持体に対する現像剤層厚規制部材の線押圧力が、本件の請求項1に係る発明では、「36〜150N/m」の範囲を規定するのに対して、甲第1号証に記載された発明では、「約34N/m」である点。
相違点2:
結着樹脂であるポリエステル樹脂に関して、請求項1に係る発明が、「架橋性ポリエステル樹脂と非架橋性ポリエステル樹脂との混合物」であることを規定するのに対して、甲第1号証では、単にポリエステル樹脂としている点。
相違点3:
現像剤の軟化点に関して、請求項1に係る発明が、「軟化点が130℃以下である」ことを規定するのに対して、甲第1号証には、現像剤の軟化点について明記していない点。

イ 相違点について
まず相違点1について検討する。
甲第1号証には、実施例中に、現像剤層厚規制部材の線押圧力が、約34N/mであることが記載されているだけで、現像剤層厚規制部材の線押圧力を特定する旨の記載はない。そして、摘記事項(1b)、(1c)から明らかなように、甲第1号証に記載された発明は、現像剤層厚規制部材へのトナーの固着を課題としており、それを解決することを目的とするものであるところ、現像剤層厚規制部材の線押圧力が高いほどそのような固着が起こりやすいことは自明であるから、実施例に記載された約34N/mという線押圧力をそれ以上に引き上げようとする動機は見いだせない。
また、甲第2号証及び甲第3号証には、現像剤担持体に対する現像剤層厚規制部材の線押圧力についは、全く記載されていない。
よって、甲号各証に記載された発明からでは、相違点1に係る構成を導き出すことはできない。
そして、本件の請求項1に係る発明は、相違点1ないし相違点3に係る構成が相俟って、(1)融着や微粉化が起こりにくく、(2)低温での熱定着が可能で、(3)トナー飛散や白地カブリ、中抜けもなく、高寿命高画質な現像剤を得られ、さらに、摩擦帯電を助ける補助部材/手段のないシンプルで安価な設計の現像方法に用いた場合でも効果を発揮するという、明細書記載の顕著な効果を奏するものである。
したがって、相違点2及び3について検討するまでもなく、本件の請求項1に係る発明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとすることができない。

(2) 本件の請求項2ないし7に係る発明について
本件の請求項2ないし7に係る発明は、前記本件の請求項1に係る発明の構成に加えて、更に別の構成を要件とするものであるから、本件の請求項2ないし7に係る発明についても、前項に記載したのと同様の理由により、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとすることができない。

5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件請求項1ないし7に係る発明の特許を取り消すことはできない。
したがって、本件請求項1ないし7に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対して付与されたものと認めないから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
非磁性1成分現像剤および画像形成方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】現像剤が供給される現像剤担持体と該担持体を押圧する現像剤層厚規制部材を備え、該担持体に対する該規制部材の線押圧力が36〜150N/mである現像方法に使用される非磁性1成分現像剤であって、該非磁性1成分現像剤が架橋ポリエステル樹脂と非架橋ポリエステル樹脂との混合物である結着樹脂および着色剤を混練し粉砕して得られる軟化点が130℃以下であるトナー粒子からなることを特徴とする非磁性1成分現像剤。
【請求項2】架橋性ポリエステル樹脂と非架橋性ポリエステル樹脂との重量比が50:50〜92:8の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の非磁性1成分現像剤。
【請求項3】現像剤がトナー粒子と脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の非磁性1成分現像剤。
【請求項4】請求項1乃至3のいずれかに記載の非磁性1成分現像剤を用いることを特徴とする画像形成方法。
【請求項5】現像剤担持体に現像剤層厚規制部材を押圧し、該担持体を該規制部材に対し相対的に移動させることにより、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非磁性1成分現像剤が押圧部を通過して、該担持体上に現像剤層が形成する工程、該担持体上の現像剤を静電潜像保持部材との対向域で静電潜像保持部材へ転移させる工程、静電潜像保持部材上の現像剤を転写材へ転写する工程、および接触型の熱定着器により現像剤を転写材へ定着する工程を有する画像形成方法。
【請求項6】155℃以下の表面温度で熱定着する工程を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の画像形成方法。
【請求項7】現像剤層厚規制部材と現像剤担持体との間に電圧を印加しないことを特徴とする請求項5に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は電子写真法、静電記録法等において使用される乾式静電荷像現像方法による画像形成方法及び非磁性1成分現像剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に電子写真方式では、各種の光導電物質を含む感光体(通常はドラム状に加工した感光ドラム)上に種々の手段により静電荷の電気的潜像を形成し、該静電潜像を粉体からなる現像剤で現像し、必要に応じて紙あるいはフィルム等の基材上に粉体を転写した後、加圧、加熱等の方法により定着することが行われる。現像剤としては、鉄粉、フェライト粉等のキャリアとトナーとからなる2成分現像剤やキャリアを必要としない1成分現像剤(非磁性または磁性トナー)が知られている。
【0003】
1成分現像剤を用いる現像方法としては、現像剤担持体表面に現像剤層を付着形成し、それを感光体などの静電潜像保持部材に接触させて現像剤を転移させる接触現像方法や非接触に対向させて現像剤を転移させる飛翔現像方法などが知られている。また現像剤を転移させる際の静電気力制御方法としては、現像剤担持体と静電潜像保持部材の間に直流電界を形成させる方法や、交流バイアスを印加し潜像保持部材に向かう方向と担持体に向かう方向と交互に電界が加わるようにする方法等が知られている。
【0004】
現像剤担持体上に現像剤層を形成させる方法としては、現像剤担持体を現像剤層厚規制部材と対向させ相対移動させることによって対向域を通過する際に現像剤量を規制し、担持体上に現像剤層を形成させる方法が一般的である。
磁性キャリア粒子を用いた2成分方法や磁性トナーを用いる方法においては、担持体背面に磁界発生手段を配置した担持体(マグネットローラ)に現像剤を磁気的に吸着させて、担持体と規制部材の適正な距離を保たせた間隙を通過させ現像剤層を形成させる方法が一般的である。
【0005】
磁気的拘束力を用いない場合、例えば非磁性1成分などの非磁性現像剤を用いる場合には、摩擦帯電荷によるクーロン力によって現像剤層を形成させる必要がある。これらの場合、上記同様に間隙を通過させるだけでは十分な静電荷量が確保できず、現像剤層厚が不均一になったり、現像剤が周辺に飛散したりすることがある。そのため磁気力を用いない方法の場合は一般的に現像剤層厚規制部材を現像剤担持体に押圧することが多い。すなわち、現像剤は担持体により搬送され、規制部材と担持体との押圧部を押し広げながら通過することにより、適度な現像剤層厚を形成すると同時に押圧部を押し広げる際の摩擦エネルギーによって十分な摩擦帯電荷を得て安定な現像剤層を形成できる。
【0006】
一方、トナーの製造方法としては、バインダー樹脂と他の成分を混合混練して冷却して固めたトナー原料を粉砕して所望の粒径のトナー粒子を得る粉砕トナー製造方法や、必要な成分とバインダー樹脂原料の単量体とを分散した状態で重合反応を行いトナー粒子を合成する重合トナー製造方法が知られている。
粉砕トナー製造の粉砕方法としては、粗砕したトナー原料を気体と共にノズルより噴射させ原料粒子同士の衝突や衝突板との衝突によって粉砕するジェットミルなどの方法や高速で運動する衝撃部材によって粉砕する機械的粉砕方法等が知られている。粉砕されたトナー原料は分級工程によって所望の粒径の粒子のみを選択し、トナー粒子を得る。乾式静電荷像現像剤のトナーは平均粒径5〜20μm程度のものが通常使用される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
近年、パーソナル化、省スペース化などの市場要求に伴い、複写機、プリンタ等の小型化が促進される傾向にある。電子写真装置のさらなる小型化を達成するためには、感光体、例えば感光ドラムの小径化とともに現像槽のより小型化が必要となる。
【0008】
しかし、従来から最も一般的に用いられてきた2成分現像方式の場合、キャリア粒子とトナー粒子の混合物を攪拌する現像室と消費されたトナーを補給するための補給トナー室を必要とし、さらに現像室におけるトナーとキャリアの混合比率を制御する機能も必要であり、小型化・簡素化の観点からは多くの問題点を有する。
【0009】
これらの問題を回避するため、キャリア粒子を用いない磁性1成分方式がパーソナルユースには多く用いられるようになった。しかし、さらに簡素化を進めようとした場合、現像剤を保持するために用いられているマグネットローラ方式では部品点数の削減・低コスト化に限界がある。またトナー粒子中に含有される強磁性成分は一般に金属酸化物粒子であり、プリントされた紙のリサイクルの弊害にもなる。
【0010】
そうした状況下、強磁性成分もマグネットローラも用いない非磁性1成分現像方式が注目されてきた。非磁性1成分現像方式には飛翔現像方式と接触現像方式があるが、これらの方式は、一般に写真等の階調表現を必要とするアナログ画像表現には不向きなものの、電子写真特有のエッジ効果(印字画像の境界部にトナーが過剰に現像される現象)が少なく、印字文字の太りも起こりにくいのでレーザープリンター等のデジタルの2値表現には向いていると言われている。
【0011】
さらに近年のデジタル画像情報処理技術の発展に伴い、デジタルフルカラー複写機やモノクロデジタル複写機の出力部としても非磁性1成分方式が注目されている。
非磁性1成分方式の問題点は前述の押圧された現像剤層規制部材を用いたとき発生する。すなわちトナーが周辺に飛び散らず均一な層形成を行うのに充分な押圧力を層厚規制部材に加える場合、摩擦エネルギーによってトナーが現像剤担持体や層厚規制部材に融着したり、微粉砕されてしまったり、致命的問題を生ずる。これらの問題を回避するためにガラス転移点や軟化点が高く固いトナーを用いると熱定着性能が悪くなり、十分に紙などへ定着させるためには高い温度と大きなエネルギーが必要となる。
【0012】
しかしながら、省エネルギーの観点から、低温定着は現在必須な要求性能である。比較的室温に近い現像器内においては強固で、かつ約100℃以上の定着温度領域では溶融しやすいようにトナーの分子量分布や熱特性を設計することが必須である。ひとつの方法としては、画像に光沢を望まれているフルカラートナーの場合のようにシャープな分子量分布を有するバインダー樹脂を用いることで常温では強固で定着温度では溶融するトナーを製造することは可能なものの、一方でホットオフセットと言われる致命的現象が発生する。ホットオフセットとは、定着温度範囲より高い温度において、トナーの粘性がなくなりトナーが液状に近い状態になったとき、定着器側にもトナーが付着してしまい、画像劣化を生ずる現象である。シャープ過ぎる分子量分布を有するバインダー樹脂を用いた場合、軟化点温度付近で急激に粘性が減少するため、定着温度範囲より僅かに高い温度になるとこのホットオフセット現象が生じてしまう。フルカラー用定着器においては、定着器の表面に離型剤として、シリコーンオイルを供給しながら定着を行うことでホットオフセットを防いでいるが、ローコスト化の観点からはシリコーンオイル供給機構は省略すべきものである。
【0013】
低温での定着性を損なわず、非磁性1成分現像方式を実現させるための装置側からの対策として、弱い摩擦エネルギーでの高い摩擦帯電効率を得るための創意はいくつか実現されている。たとえば、現像剤担持体へトナーを供給するスポンジローラ等の接触部材を接触させ摩擦の機会を増やす方法や、現像剤担持体と現像剤層厚規制部材の間や現像剤担持体と前記接触部材の間に電位差を付けて、その間を通過する現像剤に電荷を注入する方法などが知られてはいる。しかし、前述の通り電子写真装置の低価格化が迫られる現在、それらの補助部材は極力排除することが切望されている。
【0014】
現像剤が充分な摩擦帯電量を得られない場合、トナーの機内への飛散や白地カブリ等の好ましくない現象が発生する。
また非磁性1成分は2成分に比べて、「中抜け」現象が起こりやすい。中抜けとは、文字や線を画像形成する時画像の中にトナー粒子が存在しない部分が生じてしまう好ましくない現象である。それらの問題点を解決するため、トナーのころがりを良くし、一部のトナー粒子あるいはトナー粒子の一部分のみに摩擦力が集中しないように形状が球形に近いトナーを用いる方法(特開平4-44056号公報、特開平5-142857号公報等)や球形に近い重合トナーを用いる方法(特開平3-259161号公報、特開平4-225368号公報、特開平5-165253号公報等)等が知られている。トナー粒子は現像器内で回転しながら、現像剤担持体などと摩擦帯電するため、形状が不均一で凹凸があるトナーより球状に近く平滑な表面を持ったトナーのほうが実際に接触できる表面が広くなり摩擦帯電性の面でも有利である。
【0015】
しかしながら重合トナーはその製造工程で形状、分子量、添加される顔料などの分散を制御するために各種の添加剤を使用することが多く、帯電制御能力の点で好ましくない。特に高温高湿や低温低湿等で画像品質の劣化が見られる等の環境安定性で問題となることが多い。
一方、粉砕法によって製造したトナーは、環境安定性の点では重合トナーより優れているものの、形状が不均一で中抜け防止のためには好ましくない。粉砕法によって球形に近いトナーを作る方法(クリプトロンを使用した方法、粉体と工業vol.25No.5(1993)、p59など)も知られているが、まだ不十分である。
以上のような状況下、低温定着用現像剤を用い、融着やトナーの微粉砕化が起こらない程度の弱い摩擦エネルギーで現像剤に均一で十分な摩擦帯電量を与えることは困難であり、現在、155℃以下の温度で良好な定着性能を得られる非磁性1成分現像剤は知られていない。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決し、(1)融着や微粉化が起こりにくく、(2)低温での熱定着が可能で、(3)トナー飛散や白地カブリ、中抜けもなく、高寿命高画質な現像剤を得るべく、鋭意検討した結果、ある特定の組成・熱特性を有するトナーを使用することで本発明を達成した。さらにある種の添加剤を加えることにより、摩擦帯電を助ける補助部材/手段のないシンプルで安価な設計の現像方法に用いた場合でも効果を発揮する。
【0017】
すなわち、本発明の要旨は、現像剤が供給される現像剤担持体と該担持体を押圧する現像剤層厚規制部材を備え、該担持体に対する該規制部材の線押圧力が36〜150N/mである現像方法に使用される非磁性1成分現像剤であって、該非磁性1成分現像剤が架橋ポリエステル樹脂と非架橋ポリエステル樹脂との混合物である結着樹脂および着色剤を混練し粉砕して得られる軟化点が130℃以下であるトナー粒子からなることを特徴とする非磁性1成分現像剤、並びに現像剤担持体に現像剤層厚規制部材を押圧し、該担持体を該規制部材に対し相対的に移動させることにより、上記非磁性1成分現像剤が押圧部を通過して、該担持体上に現像剤層が形成する工程、該担持体上の現像剤を静電潜像保持部材との対向域で静電潜像保持部材へ転移させる工程、静電潜像保持部材上の現像剤を転写材へ転写する工程、および接触型の熱定着器により現像剤を転写材へ定着する工程を有する画像形成方法に存する。
【0018】
現像剤のガラス転移点、架橋性ポリエステル樹脂と非架橋性ポリエステル樹脂の配合比について特定の範囲のものを用いることによりさらに良好な定着性能を得ることが出来る。さらに窒素吸着法による比表面積が45m2/g以上の無機酸化物微粒子を添加すると現像剤の流動性が良くなり安定した現像剤層形成が行え、好ましい。また本発明は、現像剤層厚規制部材や供給部材などの接触部材に電圧を印加しない場合や摩擦帯電エネルギーが比較的小さい場合、現像剤中に脂肪酸金属塩を含有させると一層好ましい。
【0019】
また本発明は、脂肪酸金属塩を含有した場合、現像剤担持体に接触する部材が現像剤層厚規制部材、潜像保持部材、現像剤漏れ防止シール部材以外には存在しない状態すなわち現像剤が帯電しにくい状態で効果を発揮する。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いられるトナーは熱可塑性バインダー樹脂中に、着色剤、必要に応じて帯電制御剤、離型剤、その他の物質等を分散含有した微粉末である。
【0020】
前記トナー構成成分のうち、バインダー樹脂としては、飽和もしくは不飽和ポリエステル樹脂であり、好ましくは架橋性ポリエステル樹脂と非架橋性ポリエステル樹脂とを適当な比率で混合したものを主成分として用いる。架橋性ポリエステル樹脂を単独で使用した場合には、適度な保存安定性とホットオフセット温度を確保した場合、低温での定着が悪くなる。非架橋性ポリエステル樹脂を単独で使用した場合には、ホットオフセットが定着可能温度に近い温度から発生してしまう。
【0021】
トナー用バインダー樹脂として最も一般に使用される架橋性スチレン-アクリル系樹脂や分子量の異なる樹脂をブレンドすること等により得られる非常にブロードな分子量分布やいくつかのピークを持つ分子量分布としたタイプの非架橋性スチレン-アクリル系樹脂を用いた場合には、常温付近での適度な強靱性が確保できず、現像器内での融着が発生した。また、指や消しゴム等で擦った場合の定着強度はポリエステル樹脂トナー並でも、紙を折り曲げた場合のハゲ落ちが悪かった。
【0022】
本発明に用いられる架橋性ポリエステル樹脂は、2価のカルボン酸単量体と2価のアルコール単量体と3価以上の多価カルボン酸単量体や多価アルコール単量体との重縮合によって得られる。2価のアルコール単量体としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール等のジオール類、ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノール類、その他の2価のアルコール単量体が挙げられる。2価のカルボン酸単量体としては、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ジフェン酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、これらの酸の無水物もしくは低級アルキルエステルを主成分とするものが挙げられる。3価以上の多価カルボン酸としては、トリメリト酸、シクロヘキサントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ブタントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、オクタンテトラカルボン酸、及びこれらの酸の無水物、その他を挙げることができる。3価以上の多価アルコール単量体としては、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0023】
本発明に用いられる非架橋性ポリエステル樹脂は、2価のカルボン酸単量体と2価のアルコール単量体とを主成分とする重縮合によって得られる。実質的に非架橋性樹脂の性質を失わない程度、すなわち線形ポリマーに対し高々分岐構造を与える程度の範囲内で3価以上の多価カルボン酸単量体や多価アルコール単量体等を約2モル%程度以下添加しても良い。これらの単量体としては、架橋性ポリエステル樹脂と同様のものなどが使用できる。
【0024】
また、上記の架橋性ポリエステル樹脂または非架橋性ポリエステル樹脂はそれぞれ1種類ずつで使用するに限らず、それぞれ2種以上を併用することもできる。架橋性ポリエステル樹脂と非架橋性ポリエステル樹脂の重量比率は50:50から92:8、中でも特に60:40〜90:10が好ましい。この範囲より架橋性樹脂が多い場合には十分な低温定着性が確保できず、少ない場合には、ホットオフセットが発生しやすい。
【0025】
そして、該バインダー樹脂を用いて製造した現像剤の軟化点は、130℃以下であり、125℃以下であるものが好ましい。軟化点が高すぎる場合は、充分な低温定着性が得られず、定着強度が悪化する傾向にあるので好ましくない。また、該バインダー樹脂を用いて製造した現像剤のガラス転移温度は、示差熱分析装置で測定したときの転移開始(変曲点)が50℃〜70℃であるのが好ましい。ガラス転移温度が低い場合、長期保管時の熱安定性が悪く、トナーの凝集や固化を招き使用上問題がある。高すぎる場合は、充分な低温定着性が得られず、定着強度が悪化する傾向にあるので好ましくない。特に65〜70℃の場合は、トナーの融着や微粉粉砕や保管時の熱安定性にマージンがあるもののやや定着性が悪化する傾向があるので軟化点を低め(具体的には115℃以下程度)とした方が好ましい。ガラス転移温度は50〜65℃であることが一層好ましい。
【0026】
着色剤としては、従来から用いられるものであれば、任意の適当な顔料や染料が使用できる。例えば、酸化チタン、亜鉛華、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、紺青、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、アントラキノン染料、モノアゾ及びジスアゾ系染顔料などを相当するトナーの色に合わせて単独または適宜混合して用いる。着色剤の含有量は、現像により可視像を形成することができるようトナーを着色するに十分な量であればよく、例えばバインダー樹脂100重量部に対して3〜20重量部とするのが好ましい。
【0027】
トナーの帯電制御としては、使用するバインダー樹脂等の組成制御等の方策や現像剤担持体表面の組成制御等の方策も考えられるが、正の帯電性を得るためには正の帯電制御剤を、負の帯電性を得るためには負の帯電制御剤を用いても良い。これらは、各種公知のものの中から適宜選択すればよい。
正の帯電制御剤としては、例えば、各種ニグロシン染料、特公平1-54694、特公平1-54695、特公平1-54696号公報等に記載の4級アンモニウム化合物、特開昭51-455、特公昭63-57787、特公表平2-501506号公報等に記載のトリフェニルメタン化合物、特開平3-119364、特開平3-202856、特開平3-217851号公報等に記載のイミダゾール誘導体やイミダゾール類の金属錯体等が挙げれる。
【0028】
負の帯電制御剤としては、特公平3-37183、特公平2-16916号公報等に記載の含金アゾ染料や特公昭55-42752号公報等に記載のサリチル酸類金属錯体、特開昭63-163374号公報等に記載のサリチル酸類金属塩、特開平5-119535号公報等に記載の金属元素を含有しないカリックスアレン化合物などが挙げられる。
【0029】
上記した帯電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー内部に添加する方法と外添する方法とがある。内添する場合、これら化合物の使用量は、前記バインダー樹脂100重量部に対して、通常0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部の範囲で用いられる。また、外添する場合は、樹脂100重量部に対し、0.01〜10重量部が好ましい。
【0030】
この他、熱特性や物理特性を改良する目的でトナー中に内添しうる助剤としては、公知のものが使用可能であるが、例えば、離型剤としてポリアルキレンワックス、パラフィンワックス、高級脂肪酸、脂肪酸アミド、金属石鹸等が挙げられる。その添加量は、現像剤中に0.1〜10重量%程度が好ましい。本発明においては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂が離型剤として好ましく使用できた。0.5〜6重量%添加することによりホットオフセット温度を上昇できる。
【0031】
粉砕法によるトナーの製造方法の場合、上記の各成分をニーダー等で混練し、冷却後、粉砕し、分級すればよい。
トナーの平均粒径は5〜20μmが好適である。トナーの粒径は一般的には、コールターカウンターによる方法が広く用いられている。今回の発明で使用したトナーの平均粒径は、コールターカウンターTA-II型に100μmのアパチャーを使用し、トナー粒子をアイソトンに分散し、第3チャンネル〜第16チャンネルを使用しトナー粒径分布を測定し体積平均により決定した。
【0032】
トナーの軟化点はフローテスター法を用いて測定した。フローテスター(島津製作所製CFT500)において、直径1mm長さ1mmのノズルを用い、加熱体を80℃に設定しトナー1gを投入する。プラジャーを軽く押し当て、300秒間予熱した後、20Kg/cm2の圧力をかけ、6℃/分の速度で昇温する。昇温によりトナーは軟化しノズルからトナーが押し出され、プラジャーは下降する。下降の開始から終了までのプラジャーの下降距離の中点に相当するときの温度をもって軟化点とする。
【0033】
トナーのガラス転移点は示差熱分析装置(島津製作所製DT-30型)を用い、標準物質としてアルミナを使用し、トナー約20mgを試料セルに投入し測定部にセットし、一度10℃/分の昇温速度で100℃まで加熱し室温まで冷却した後、再び10℃/分で昇温し、このときのDTA曲線の変曲温度部の前後のなめらかな曲線部分それぞれから接線を引き、それら接線同士の交点をもってガラス転移点とする。
【0034】
またトナーを主成分とし、無機酸化物微粒子や脂肪酸金属塩等を混合した現像剤の場合においても、軟化点およびガラス転移点はトナーの熱特性により支配的であり、トナー粒子単独で測定した場合と混合物である現像剤で測定した場合の差は、測定誤差範囲内程度である。
また、本発明において添加される比表面積45m2/g以上の無機酸化物微粒子としては、珪素、チタン、アルミニウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、セリウムなどの酸化物やそれらの複合酸化物が使用できる。それらの表面をシランカップリング剤やチタンカップリング剤やシリコーン、その他の樹脂などで表面処理を施しても良い。従来より公知の微粒子状無機酸化物としては、シリカ(日本アエロジル社R972、グンゼ産業社タラノックス500等)、チタニア(出光興産製IT-S等)、アルミナ(日本アエロジル社アルミニウムオキサイドC等)、マグネシア(宇部興産製気相法高純度超微粉マグネシア100A等)、酸化鉄(BASF製Sicopur FF4098等)等の無機酸化物微粒子が知られている。添加量としては現像剤中に0.01〜3重量%、さらに好ましくは0.03〜1.5重量%添加することで適度な流動性を確保することが出来る。
【0035】
窒素吸着法による比表面積は、島津製作所マイクロメリティックス フローソーブ2300形を用い、セルに試料を適量投入し200℃で10〜20分間脱ガスを行い、比表面積(m2/g)を測定する。試料の分解などの恐れがあり、200℃での脱ガスが不可能な場合は、それ以下の温度で脱ガスを行い、同じサンプルで繰り返し測定を行い値が安定したときの測定値を採用する。
【0036】
本発明においては、比較的弱い摩擦エネルギーしか与えないような現像方法(現像剤層厚規制部材の押圧力が弱い場合や摩擦帯電を助ける補助部材/手段のない場合など)を用いた場合、脂肪酸金属塩を添加すると帯電性が改良され一層好ましい。脂肪酸金属塩としては、好ましくは8〜35個の炭素元素を有する飽和又は不飽和の脂肪酸の金属塩を使用できる。金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、銅、ルビニウム、銀、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、カドニウム、バリウム、水銀、アルミニウム、クロム、スズ、チタン、ジルコニウム、鉛、マンガン、テツ、コバルト、ニッケルの塩及びその混合物を含むが、これらには制限されない。添加する前の脂肪酸金属塩粉末の粒径は、平均が0.2〜30μm程度のものを通常用いるが、トナー粒子との混合時の解砕効果等もあるので特に限定されるものではない。しかしながら、粗粉が少なく小さな粒径のものの方が混合時の均一分散が容易であり、より好ましい。脂肪酸金属塩の添加量は、粒径等にも依存するが、現像剤中に0.02〜5重量%、さらに好ましくは0.05〜3重量%添加することで顕著に効果を発揮する。
【0037】
本発明において使用される無機酸化物粒子や脂肪酸金属塩の添加方法としては、最も一般的にはヘンシェルミキサー等の攪拌羽根を高速回転させトナー粒子と添加物を均一混合する方法や、ハイブリダイザー等の気流を併用しさらに粒子同士を強く付着させる方法などが知られている。
図1の現像器を例に現像方法について説明する。
【0038】
現像剤担持体1は、通常、円柱状あるいは円筒状の形態の表面を担持表面として用いる。材質は弾性体、剛体どちらでも良いが、接触現像方法においては弾性体を用いる方法が一般的である。表面は現像剤6の搬送性を上げる目的で適度な表面粗さを与えても良い。またトナー粒子との適度な摩擦帯電が得られるような材質を考慮しなければならない。非磁性1成分接触型現像の場合、弾性体現像剤担持体の一般的な形態としては、導電性ゴムローラ(NBRゴム、シリコーンゴムなどに導電性粒子を分散含有させたものなど)を用いる。導電ゴムの表層に誘電体層を設ける場合もある。
【0039】
現像剤層厚規制部材2は、角棒状の剛体、突起状の弾性体、板バネ状のものの面や先端を利用するもの、ローラ、その他、あるいはそれらの複合型など各種が挙げられる。現像剤層厚規制部材2はそれ自身の弾性力あるいは現像剤担持体1の弾性力あるいは外部からの力あるいはそれらの複合力によって、現像剤担持体1に押圧されている。現像剤層厚規制部材2の押圧力は、押圧された単位長さ当たりの圧力として定義することが一般的である。押圧される同士のどちらか一方が弾性体の場合、圧力に分布がある。例えば、図1においては押圧部の中央付近で圧力が最大となり、現像剤担持体1の回転方向の上流側及び下流側は圧力が徐々に弱くなるためである。
【0040】
本発明の現像剤を用いる場合、現像剤の融着や微粉砕を防ぐために線押圧力は、150N/m以下が好ましく、120N/m以下がさらに好ましい。また現像剤担持体1上への現像剤6の均一層形成と摩擦帯電のために30N/m以上であることが好ましい。例えば、バネ材によって現像剤層厚規制部材2を押圧する場合、規制部材とバネ材を重量計の上にセットし、バネ材が現像装置に装着されたときと同じ曲がり量あるいは縮み量になるように上から力を加え、その時の重量計の重量表示によって、押圧力の合計が測定できる。押圧力合計をN(ニュートン)単位に換算し、現像剤層厚規制部材2と現像剤担持体1の接触する長さで割ることにより単位長さ当たりの押圧力である線押圧力が算出される。
【0041】
現像剤層厚規制部材2の電気的特性については、絶縁体のもの、導電体のものに電圧を印加する場合、あるいは導電体ではあるが電気的にはどこにも接続されずフロートになっているものなど各種であるが、絶縁体の場合や導電体でも電圧を印加しない場合には逆帯電トナーによる「白地カブリ」が発生しやすく、そうした場合、脂肪酸金属塩添加は顕著に改善効果を発揮する。現像剤担持体1をこの押圧に対して、直角方向に摺るように相対移動させることにより現像剤6粒子は押圧部を押し広げながら通過し、現像担持体1上に均一に塗布され現像剤層を形成する。この押圧部の形態、圧力、組成、印加電圧によって、現像剤層厚、トナーの帯電量はコントロールされる。大局的には圧力が大きいほど塗布される現像剤層厚は少なく帯電量は高くなるが、形態、組成、印加電圧については複雑な物理、化学の現象となるので一概には議論できない。
【0042】
本発明に用いられる静電潜像保持部材3は、導電性基材表面上にセレン、有機感光性物質などの層を設けた感光体や導電性基材表面に絶縁体層を設けた静電気受容体などを使用し、表面に静電荷分布による静電潜像パターンを形成する。複写機、レーザプリンターで用いられる一般的な形態は、アルミニウムなどの金属製の円筒表面に感光材料を塗布したものを用いる。感光材料として有機感光材料を用いる場合、感光層の比誘電率は1〜5程度であり、層厚10〜50μm程度で使用される場合が一般的である。
【0043】
画像形成の工程は、一般に用いられているゼログラフィーの原理に従い、均一帯電、露光の手順などにより静電潜像保持部材3上に静電荷分布の潜像を形成する。この時の静電潜像保持部材3上の最大電位が、導電性基材を基準に絶対値で100〜1200V程度、さらに好ましくは300〜900V程度になるようにコントロールする。
【0044】
一方、現像剤担持体1には前述のごとく、現像剤層厚規制部材2によって現像剤層を形成する。現像剤担持体1と現像剤層厚規制部材2の間には、特に電圧をかけない場合、短絡して同電位とする場合、500V以下程度の電圧をかける場合などがある。
また現像剤担持体1の相対的移動方向の現像剤層厚規制部材2より上流側に現像剤供給手段4を設けても良い。現像剤供給手段4としては、現像剤6が自重と流動性によって現像剤担持体1に付着する力に加え積極的に現像剤6を現像剤担持体1の方向へ向かわせるものを用いる。例えば、スポンジ状やブラシ状の部材に現像剤6を含ませて現像剤担持体1に擦り付ける方法が用いられる。この時の摩擦を利用して現像剤6の摩擦帯電を促進しても良い。この現像剤供給手段4に導電性の材料を用いて、現像剤6が現像剤担持体1へ向かう静電気力を与えるように現像剤担持体1との間に電圧をかけても良い。また一般的にはローラ状のエンドレスな現像剤担持体1が用いられるので静電潜像保持部材3への現像を終えた残りの現像剤6が付着した現像剤担持体1がこの現像剤供給手段4の部分に戻ってくるので清掃手段を兼ねさせることもできる。その効果を積極的に利用したい場合は逆に現像剤6が現像剤担持体1から離れる方向に力が加わるように電圧をかけても良い。また、清掃と供給を兼ねるあるいは現像剤6の帯電を挙げる目的で交番電界を印加しても良い。しかしながら、これらの供給/清掃手段は装置の低価格化の障害となるため、使用しないほうが好ましい。この場合はトナー粒子の摩擦や電荷注入による帯電の機会が減少するため、逆帯電トナーによる「白地カブリ」などの悪しき現象が発生しやすい。こうした場合に脂肪酸金属塩添加は効果を発揮する。
【0045】
また、図1のような形態の現像器を用いる場合、現像剤担持体1の下方隙間より現像剤6が漏れる恐れがあるため現像剤漏れ防止シール部材5を付けることが一般的である。
以上の工程により潜像を形成した静電潜像保持部材3と現像剤層を形成した現像剤担持体1を対向させ、現像剤6中の少なくともトナー粒子を転移させ潜像を顕像化する。この際、飛翔現像においては、現像剤担持体1と静電潜像保持部材3との間に50〜500μmの間隙を形成させ静電気力で転移させる。接触現像の場合は、現像剤層が静電潜像保持部材3に接触し、潜像パターンに見合ったトナー粒子が静電気力で転移される。トナーを転移させたい潜像電位と白地としたい潜像電位の間の電位に現像剤担持体1の電位を保つ方法が一般的である。
【0046】
潜像パターンに転移したトナーは、通常の複写機やレーザプリンタの場合、紙やフィルムなどの転写材へさらに転写する。この転写工程においては、転写材を静電潜像担持部材に接触させて、転写材の背面よりコロナ放電により電荷をあたえる方法や導電性の転写ローラを押圧し電圧を印加する方法などが一般的である。ローラ転写等の圧力を加える転写工程の場合、前述の「中抜け」が発生しやすい。また1成分現像方法は2成分現像方法に比べ、これも「中抜け」が発生しやすい。
【0047】
転写材へ転写されたトナーは接触型定着器において、熱により溶融定着させる。接触型定着器は、省エネルギーのために表面温度155℃以下、さらには145℃で行う。表面温度の測定方法は特に限定されないが、熱電体等の接触型の温度センサーが好ましい。定着器の形態としては、通常、少なくとも一方に熱源を有し、少なくとも一方の表面が弾性体である2本のローラを押圧しながら回転させ、その押圧部に現像剤を転写させた転写材を通過させることで行う方法が最も一般的である。表面温度に位置的分布がある場合や周囲の環境やプリントを行う時間的タイミングで表面温度が異なる場合は、最も表面温度が低くなる状況での温度が定着可能な温度より低くならないように設定する必要がある。別の形態としてはベルト状の接触熱定着器を用いたSURF方式(キャノン社パーソナル複写機FC310等で採用)やオンデマンド定着方式(キャノン社レーザプリンタA404G2等で採用)等が挙げられる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、下記実施例及び比較例中、単に「部」とあるのは、いずれも「重量部」意味するものとする。
以下に示す配合比による13種のトナー原料を2軸混練押出機で混練し、粉砕し、分級しトナー粒子を調達した。配合比とともにトナー粒子のガラス転移点と軟化点と平均粒径も記載する。
【0049】
トナー粒子A
架橋性ポリエステル樹脂A 60部
(構成モノマー:エチレングリコール、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸)
非架橋性ポリエステル樹脂A 40部
(構成モノマー:ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA、イソフタル酸、テレフタル酸)
帯電制御剤 クロム含金アゾ染料A 1部
(ボントロンS-34、オリエント化学製)
カーボンブラックA 6部
(三菱カーボンブラックMA100、三菱化学社製)
低分子量ポリプロピレンA 2部
(ビスコール550P、三洋化成社製)
ガラス転移点 61℃ 軟化点 118℃ 平均粒径 9.3μm
【0050】
トナー粒子B
架橋性ポリエステル樹脂A 90部
非架橋性ポリエステル樹脂A 10部
帯電制御剤 クロム含金アゾ染料A 1部
カーボンブラックA 6部
低分子量ポリプロピレンA 2部
ガラス転移点 63℃ 軟化点 126℃ 平均粒径 8.9μm
【0051】
トナー粒子C
架橋性ポリエステル樹脂A 40部
非架橋性ポリエステル樹脂A 60部
帯電制御剤 クロム含金アゾ染料A 1部
カーボンブラックA 6部
低分子量ポリプロピレンA 2部
ガラス転移点 60℃ 軟化点 114℃ 平均粒径 9.3μm
【0052】
トナー粒子D
架橋性ポリエステル樹脂A 100部
帯電制御剤 クロム含金アゾ染料A 1部
カーボンブラックA 6部
低分子量ポリプロピレンA 2部
ガラス転移点 63℃ 軟化点 131℃ 平均粒径 9.2μm
【0053】
トナー粒子E
架橋性ポリエステル樹脂B 80部
(構成モノマー:エチレングリコール、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA、テレフタル酸、アジピン酸、トリメリト酸)
非架橋性ポリエステル樹脂B 20部
(構成モノマー:ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA、エチレングリコール、イソフタル酸、テレフタル酸)
帯電制御剤 クロム含金アゾ染料B 2部
(T-95、保土ヶ谷化学製)
カーボンブラックA 4部
低分子量ポリプロピレンB 4部
(数平均分子量Mn=8,000)
ガラス転移点 61℃ 軟化点 123℃ 平均粒径 9.0μm
【0054】
トナー粒子F
架橋性ポリエステル樹脂C 55部
(構成モノマー:エチレングリコール、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA、テレフタル酸、トリメリト酸)
非架橋性ポリエステル樹脂B 45部
帯電制御剤 クロム含金アゾ染料B 2部
カーボンブラックA 4部
低分子量ポリプロピレンB 4部
ガラス転移点 65℃ 軟化点 122℃ 平均粒径 9.2μm
【0055】
トナー粒子G
架橋性ポリエステル樹脂C 100部
帯電制御剤 クロム含金アゾ染料A 1部
カーボンブラックA 6部
低分子量ポリプロピレンA 2部
ガラス転移点 71℃ 軟化点 145℃ 平均粒径 9.0μm
【0056】
トナー粒子H
架橋性ポリエステル樹脂A 70部
非架橋性ポリエステル樹脂C 30部
(構成モノマー:ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA、テレフタル酸、トリメリト酸1.5モル%)
帯電制御剤 クロム含金アゾ染料A 1部
カーボンブラックA 6部
低分子量ポリプロピレンA 2部
ガラス転移点 63℃ 軟化点 122℃ 平均粒径 8.8μm
【0057】
トナー粒子I
非架橋性ポリエステル樹脂C 100部
帯電制御剤 クロム含金アゾ染料A 1部
カーボンブラックA 6部
低分子量ポリプロピレンA 2部
ガラス転移点 64℃ 軟化点 113℃ 平均粒径 9.1μm
【0058】
トナー粒子J
スチレン系樹脂A 100部
(モノマー重量比がスチレン/n-ブチルアクリレート=75/25である高分子量成分とスチレン単独である低分子量成分の混合物であり、分子量分布は40万と5,000にピークを有する)
帯電制御剤 クロム含金アゾ染料C 2部
(スピロンブラックTRH、保土ヶ谷化学製)
カーボンブラックA 6部
低分子量ポリプロピレンB 3部
ガラス転移点 61℃ 軟化点 127℃ 平均粒径 9.1μm
【0059】
トナー粒子K
スチレン系樹脂B 100部
(モノマー重量比がスチレン/n-ブチルアクリレート=80/20であり、分子量分布は35万と1万5千にピークを有する)
帯電制御剤 クロム含金アゾ染料C 2部
カーボンブラックA 6部
低分子量ポリプロピレンB 3部
ガラス転移点 62℃ 軟化点 143℃ 平均粒径 9.0μm
【0060】
トナー粒子L
スチレン系樹脂C(架橋型) 100部
(構成モノマーが、スチレン、n-ブチルアクリレート、ジビニルベンゼンからなり、溶剤可溶分の分子量分布は1万2千にピークを有する)
帯電制御剤 クロム含金アゾ染料C 2部
カーボンブラックA 6部
低分子量ポリプロピレンB 3部
ガラス転移点 62℃ 軟化点 140℃ 平均粒径 9.4μm
【0061】
トナー粒子M
スチレン系樹脂C(架橋型) 70部
スチレン系樹脂D 30部
(構成モノマーが、スチレン、n-ブチルアクリレートからなり、分子量分布は1万にのみピークを有する)
帯電制御剤 クロム含金アゾ染料C 2部
カーボンブラックA 6部
低分子量ポリプロピレンB 3部
ガラス転移点 59℃ 軟化点 130℃ 平均粒径 8.7μm
【0062】
実施例1
トナー粒子A100部にシリカ微粉末(日本アエロジル社製R972、比表面積120m2/gであり、表面がジメチルシラン基により疎水化処理されている)0.2部とを加えて、ヘンシェルミキサーで混合し現像剤を調達した。
この現像剤をIBM製レーザプリンター4019(図1に示した現像器Aに対応する現像器を装備し、現像剤層厚規制部材の長さは23cmである。)を用い、現像剤担持体に現像剤層厚規制部材を押圧するバネ材の力を8.33Nに設定(線押圧力は36N/mである。)し、プリントテストを行ったところ、1枚目から3000枚目まで良好な画像形成が行えた。
【0063】
次にゼログラフィー用A4サイズ普通紙上にトナー粒子による未定着の画像を形成させ、直径25mm長さ272mmで内部に光学式熱源を配置したテフロン表面を有する上ローラに直径23mm長さ230mmのシリコーンゴム製下ローラを19Nの力で押圧し、ニップ幅1.5mm、回転周速度25mm/秒の条件で未定着画像面が上ローラと接触する向きで押圧部を通過させ、定着テストを行った。この時の上ローラの表面温度は140℃と150℃との条件でテストした。両方の温度ともトナー粒子は普通紙上に充分な強度で溶融定着できており、指擦りテスト、折り曲げテストともにほとんどトナーは剥げなかった。
さらに5℃刻みで温度を上げながらホットオフセットを確認したところ、180℃まで発生しなかった。
【0064】
実施例2
実施例1で調達した現像剤を用い、この現像剤をカシオ製電子写真プリンタCP-500U(図2に示した現像器Bに対応する現像器を装備し、現像剤層厚規制部材の長さは22cmである。)を用い、現像剤担持体に現像剤層厚規制部材を押圧するバネ材の力を25.5Nに設定(線押圧力は116N/mである。)し、プリントテストを行ったところ、1枚目から3000枚目まで良好な画像形成が行えた。
【0065】
実施例3
トナー粒子Bを用い実施例1同様にシリカ微粉末を添加し現像剤を調達し、実施例2同様の実写テストを行ったところ、1枚目から3000枚目まで良好な画像形成が行えた。
実施例1同様の定着性試験を行ったところ、指擦りテストでは問題なく、折り曲げテストにおいて140℃では実施例1に比べると劣るものの150℃では十分な強度で定着していた。ホットオフセットは200℃まで発生しなかった。
【0066】
実施例4
トナー粒子Cを用い実施例1同様にシリカ微粉末を添加し現像剤を調達し、実施例2同様の実写テストを行ったところ、2500枚目ごろより画像に縦スジが1本発生したが、3000枚まで縦スジの増加はなかった。現像器の現像剤層厚規制部材を確認したところわずかにトナーが融着していた。
実施例1同様の定着性試験を行ったところ、140℃と150℃ともに十分な強度で定着していた。ホットオフセット発生温度、現像剤耐久性、および定着温度幅においてやや劣っていたが、許容範囲内であった。
【0067】
比較例1
トナー粒子Dを用い実施例1同様にシリカ微粉末を添加し現像剤を調達し、実施例2同様の実写テストを行ったところ、1枚目から3000枚目まで良好な画像形成が行えた。
実施例1同様の定着性試験を行ったところ、140℃と150℃ともに指擦りテストでは問題ないものの折り曲げテストでは定着強度不足であった。ホットオフセットは210℃まで発生しなかった。
耐久性には問題ないものの定着性に問題が有ることが確認された。
【0068】
実施例5
トナー粒子Eを用い実施例1同様にシリカ微粉末を添加し現像剤を調達し、実施例2同様の実写テストを行ったところ、1枚目から3000枚目まで良好な画像形成が行えた。
実施例1同様の定着性試験を行ったところ、140℃と150℃ともに十分な強度で定着していた。ホットオフセットは185℃まで発生しなかった。
【0069】
実施例6
トナー粒子Fを用い実施例1同様にシリカ微粉末を添加し現像剤を調達し、実施例2同様の実写テストを行ったところ、1枚目から3000枚目まで良好な画像形成が行えた。
実施例1同様の定着性試験を行ったところ、指擦りテストでは問題なく、折り曲げテストにおいて140℃では実施例1に比べると劣るものの150℃では十分な強度で定着していた。ホットオフセットは185℃まで発生しなかった。
【0070】
比較例2
トナー粒子Gを用い実施例1同様にシリカ微粉末を添加し現像剤を調達し、実施例1同様の定着性試験を行ったところ、140℃と150℃ともに指擦りテスト、折り曲げテストで定着強度不足であった。ホットオフセットは220℃まで発生しなかった。
定着性に問題が有ることが確認された。
【0071】
実施例7
トナー粒子Hを用い実施例1同様にシリカ微粉末を添加し現像剤を調達し、実施例2同様の実写テストを行ったところ、1枚目から3000枚目まで良好な画像形成が行えた。
実施例1同様の定着性試験を行ったところ、指擦りテストでは問題はなく、折り曲げテストにおいて140℃では実施例1に比べると劣るものの150℃では十分な強度で定着していた。ホットオフセットは200℃まで発生しなかった。
【0072】
比較例3
トナー粒子Iを用い実施例1同様にシリカ微粉末を添加し現像剤を調達し、実施例1同様の定着性試験を行ったところ、140℃と150℃ともに十分な強度で定着しているもののオフセットが発生しており、温度変更してテストを行ってもすべてオフセットが発生した。すなち、紙へトナーが溶融定着しかつオフセットも発生しない定着温度領域は存在しないことが確認できた。
【0073】
比較例4
トナー粒子Jを用い実施例1同様にシリカ微粉末を添加し現像剤を調達し、実施例2同様の実写テストを行ったところ、1500枚目より画像に縦スジが発生し、現像剤層厚規制部材にトナーが融着していた。
実施例1同様の定着性試験を行ったところ、140℃と150℃ともに指擦りテストでは問題ないものの折り曲げテストでは定着強度不足であった。ホットオフセットは205℃まで発生しなかった。
耐久性、定着性に問題が有ることが確認された。
【0074】
比較例5
トナー粒子Kを用い実施例1同様にシリカ微粉末を添加し現像剤を調達し、実施例1同様の定着性試験を行ったところ、140℃と150℃ともに指擦りテスト、折り曲げテストで定着強度不足であった。ホットオフセットは220℃まで発生しなかった。
定着性に問題が有ることが確認された。
【0075】
比較例6
トナー粒子Lを用い実施例1同様にシリカ微粉末を添加し現像剤を調達し、実施例1同様の定着性試験を行ったところ、140℃と150℃ともに指擦りテスト、折り曲げテストで定着強度不足であった。ホットオフセットは220℃まで発生しなかった。
定着性に問題が有ることが確認された。
【0076】
比較例7
トナー粒子Mを用い実施例1同様にシリカ微粉末を添加し現像剤を調達し、実施例2同様の実写テストを行ったところ、2500枚目より画像に縦スジが発生し、現像剤層厚規制部材にトナーが融着していた。
実施例1同様の定着性試験を行ったところ、指擦りテストでは問題ないものの140℃と150℃ともに折り曲げテストで定着強度不足であった。ホットオフセットは200℃まで発生しなかった。
耐久性、定着性に問題が有ることが確認された。
【0077】
実施例8
実施例1で調達した現像剤を用い、この現像剤を実施例2でプリント評価に用いたカシオ製電子写真プリンタCP-500Uの設定に加え、電気の接続法を改造し、導電性の現像剤層厚規制部材と導電性のスポンジローラ状の現像剤供給手段とともに電気的には直接どこにも接続せず電気的にフロートの状態でプリントテストを行ったところ、「カブリ」「中抜け」が実施例2に比べ僅かに悪化するものの実使用上ほとんど問題にならないレベルで1枚目から1000枚目まで良好な画像形成が行えた。
【0078】
実施例9
トナー粒子A100部に小粒径ステアリン酸亜鉛(アメリカ合衆国SYNPRO社製DLG-20)0.1部とシリカ微粉末(比表面積160m2/gであり、表面がトリメチルシラン基により疎水化処理されている)0.1部とを加えて、ヘンシェルミキサーで混合し現像剤を調達した。
この現像剤を実施例8同様にカシオ製電子写真プリンタCP-500Uの電気の接続法を改造し、導電性の現像剤層厚規制部材と導電性のスポンジローラ状の現像剤供給手段とともに電気的には直接どこにも接続せず電気的にフロートの状態でプリントテストを行ったところ、1枚目から3000枚目まで良好な画像形成が行えた。
【0079】
実施例10
トナー粒子B100部にステアリン酸亜鉛(アメリカ合衆国SYNPRO社製ACF)1部とシリカ微粉末(日本アエロジル製R972)0.5部とを加えて、ヘンシェルミキサーで混合し現像剤を調達した。
この現像剤をエプソン製レーザビームプリンタLP-1500(現像剤層厚規制部材が板バネ状の部材であり、現像剤担持体表面に接触する部材はこの現像剤層厚規制部材と感光体と現像剤漏れ防止シール部材以外にない。)の電気接続を改造し現像剤層厚規制部材を現像剤担持体と同電位とした改造機でプリントテストしたところ、3000枚目まで良好な画像形成が行えた。
【0080】
実施例11
トナー粒子Eにステアリン酸亜鉛(アメリカ合衆国SYNPRO社製ACF)0.5部とシリカ微粉末(日本アエロジル製R972)0.3部とを加えて、ヘンシェルミキサーで混合し現像剤を調達した。
この現像剤を実施例2でプリント評価に用いたカシオ製電子写真プリンタCP-500Uの設定に加え、導電性のスポンジローラ状の現像剤供給手段をはずした改造機でプリントテストを行った。連続実写テストを行うと時々トナーが現像ローラに乗らない部分が生じるものの現像器の改造機を手で振ると良好な状態に戻った。2000枚目まで白地カブリ等のない良好な画像形成が行えた。
【0081】
実施例12
実施例11で調達した現像剤を用い、実施例2でプリント評価に用いたカシオ製電子写真プリンタCP-500Uの設定に加え、導電性のスポンジローラ状の現像剤供給手段をはずし、現像剤層厚規制部材を現像ローラと同電位となるように電気配線をした改造機でプリントテストを行った。連続実写テストを行うと実施例11同様に時々トナーが現像ローラに乗らない部分が生じるものの現像器の改造機を手で振ると良好な状態に戻った。2000枚目まで白地カブリ等のない良好な画像形成が行えた。
【0082】
実施例13
トナー粒子F100部に小粒径ステアリン酸亜鉛(アメリカ合衆国SYNPRO社製DLG-20)0.3部とシリカ微粉末(比表面積160m2/gであり、表面がトリメチルシラン基により疎水化処理されている)0.2部とを加えて、ヘンシェルミキサーで混合し現像剤を調達した。
この現像剤を実施例1でプリント評価に用いたIBM製レーザプリンタ4019の設定に加え、電気の接続法を改造し、導電性の現像剤層厚規制部材と導電性のスポンジローラ状の現像剤供給手段とともに電気的には直接どこにも接続せず電気的にフロートの状態でプリントテストを行ったところ、1枚目から2000枚目まで良好な画像形成が行えた。
【0083】
【発明の効果】
本発明を用いることにより、(1)融着や微粉化が起こりにくく、(2)低温での熱定着が可能で、(3)トナー飛散や白地カブリ、中抜けもなく、高寿命高画質な現像剤を得ることができ、さらにはこのような問題が解決された画像形成方法を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に使用できる現像方法の一例を示す図。
【図2】
本発明に使用できる現像方法の他の一例を示す図。
【符号の説明】
1 現像剤担持体
2 現像剤層厚規制部材
3 静電潜像保持部材
4 現像剤供給手段
5 現像剤漏れ防止シール部材
6 静電現像剤
【図面】


 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-09-09 
出願番号 特願平7-72014
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G03G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 菅野 芳男  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 阿久津 弘
秋月 美紀子
登録日 2003-08-08 
登録番号 特許第3458517号(P3458517)
権利者 三菱化学株式会社
発明の名称 非磁性1成分現像剤および画像形成方法  
代理人 長谷川 曉司  
代理人 長谷川 曉司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ