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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K |
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管理番号 | 1127311 |
異議申立番号 | 異議2002-72200 |
総通号数 | 73 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-12-06 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-09-10 |
確定日 | 2005-10-04 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3264301号「局所投与製剤」の請求項1〜3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3264301号の請求項1〜3に係る特許を取り消す。 |
理由 |
(1)手続の経緯 本件特許3264301号の発明は、平成6年3月29日に出願され、平成13年12月28日にその特許権の設定登録がなされ、その後、その特許につき山之内製薬株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年1月14日に意見書提出とともに訂正請求がされたものである。 (2)訂正の適否の判断 2-1 訂正の内容 特許請求の範囲の請求項1〜3を 「【請求項1】 クロモグリク酸ナトリウム1%、抗ヒスタミン剤および血管収縮剤を含有することを特徴とする点鼻剤または点眼剤。 【請求項2】 抗ヒスタミン剤がマレイン酸クロルフェニラミンである請求項1に記載の点鼻剤または点眼剤。 【請求項3】 血管収縮剤が塩酸ナファゾリンである請求項1または2に記載の点鼻剤または点眼剤。」 と訂正する。 2-2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び、拡張変更の存否 上記訂正事項は、いずれも訂正前の請求項1〜3の末尾の「局所投与製剤」を訂正前の請求項4に記載された「点鼻剤または点眼剤」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、上記訂正は、いずれも願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、また、当該訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2、3項の規定に適合するので、この訂正を認める。 (3)本件発明 上記訂正は、これを認容することができるから、本件請求項1〜3に係る発明は、訂正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりのものである。(以下、それぞれ「本件発明1」「本件発明2」「本件発明3」という。) (4)取消理由通知書で引用された刊行物、及びそれらの記載事項の概要 (以下の刊行物1〜12は異議申立人の提出した甲第1〜12号証に対応する) 刊行物1;第七改正日本薬局方第二部解説書(昭41年4月大改定) 第408頁第25行〜第409頁第8行 ナファゾリン・クロルフェニラミン液として塩酸ナファゾリン0.5gとマレイン酸クロルフェニラミン1gを含む全量1000mlの溶液処方が記載されている。薬効欄には、ナファゾリンの効果を抗ヒスタミン剤の併用により一層増強することを目的とした処方である旨が記載され、適用欄には鼻炎などに点滴または噴霧すると記載されている。 刊行物2;一般薬・日本医薬品集(1992〜1993)薬事時報社 第782頁〜第783頁 一般用医薬品の鼻炎用点鼻薬の製造(輸入)承認基準が記載されている。782頁の表において、配合しなければならない有効成分が挙げられたI欄には塩酸ナファゾリンなどの血管収縮剤が列挙され、配合できる有効成分が挙げられたII〜VI欄の内のII欄にはマレイン酸クロルフェニラミンなどの抗ヒスタミン剤が列挙されている。更に、鼻炎用点鼻薬として承認、販売されている一般薬製品の処方等が記載されている。 刊行物3; 特公平1-49244号公報 特に第3欄 血管収縮剤(例、キシロメタゾリン)は鼻のうっ血に使用されることが知られているが、治療上有効な量において、ある場合は鼻咽腔の局所刺激痛などを引き起こしうること、クロモグリク酸ナトリウムと血管収縮剤であるキシロメタゾリンを配合するとキシロメタゾリンの濃度が減少されうること、濃度減少により副作用の危険の除去、緩和が図れること、これらを配合した抗アレルギー剤は、クロモグリク酸ナトリウム単独より(鼻炎治療において)効力があり、キシロメタゾリンがクロモグリク酸ナトリウムの作用を延長させること、また、キシロメタゾリンは治療持続時間及び効果を保有しながら投与量を減少することができることが記載されている。 また、この配合剤は、クロモグリク酸ナトリウムを0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%、そしてより好ましくは約1または2%w/v の量で含有しうる旨が記載されている。 刊行物4;European Journal of Respiratory Diseases,Vol.69,Suppl. 146:A126,1986 アレルギー性鼻炎患者に対する二重盲検法の臨床試験において、クロモグリク酸ナトリウム 2%w/v単独投与された患者の75%が有効と評価したが、クロモグリク酸ナトリウム2%w/vと血管収縮剤であるキシロメタゾリン0.025%w/vの配合では投与された患者の100%が症状の抑制に有効と評価したこと、及び、この配合処方では(17名中)9名の患者が2日以内に症状が抑制されたが、単独処方では3名のみであった結果が記載されている。 刊行物5;THE MERCK INDEX,ELEVENTH EDITION 項目6287、9993 ナファゾリンとキシロメタゾリンの化学構造が記載されている。 刊行物6;South African Medical Journal,Vol.67,p801-803、1985 特に第801頁左欄下から第27行〜第5行 アレルギー性鼻炎患者に対するクロモグリク酸ナトリウム2%w/vとマレイン酸クロルフェニラミン0.2%w/vを配合した点鼻液とクロモグリク酸ナトリウム2%w/v単独の点鼻液での治療効果の比較がなされた結果、両者の相違は顕著ではなかったが、いずれも顕著な臨床改善が認められた旨が記載されている。 刊行物7:インタール(登録商標)点鼻液添付文書;1989年2月改訂 第3589〜3590頁 クロモグリク酸ナトリウムは抗ヒスタミン剤、血管収縮剤等と異なるタイプの抗アレルギー剤であり、その作用は抗原抗体反応に伴って起こるマスト細胞からのヒスタミンや、SRS-A等の化学伝達物質の遊離を抑制することによってアレルギー性鼻炎の発現を防止するものであること(薬効薬理の欄) 二重盲検試験及び一般臨床試験として収集された393例のアレルギー性鼻炎に対する有効率は67.2%であったこと、治療開始時水性鼻汁が激しい場合は短期間抗ヒスタミン剤を併用すること、本剤によりアレルギー性鼻炎の症状がコントロールされてくると、それまで必要であった抗ヒスタミン剤、ステロイド剤、血管収縮剤を減量離脱することができること (臨床適用の欄) 刊行物8;BRITISH NATIONAL FORMULARY,Number 23,March 1992 第381頁左欄下から第12行〜右欄第18行 クロモグリク酸ナトリウムの項には、ファイソンズ社のリナクロム(登録商標)としてのクロモグリク酸ナトリウム4%を含有する点鼻液剤が、また、同じくファイソンズ社のリナクロム配合剤(登録商標)としてクロモグリク酸ナトリウム2%とキシロメタゾリン0.025%を配合した点鼻液剤が記載され、これはレジストンワン(登録商標)として一般用医薬品として市販されている旨記載されている。 刊行物9;アレルギー性鼻炎と花粉症の診療Q&A 臨床医薬研究協会(1990年5月1日)126〜131頁,140〜141頁、158〜159頁 クロモグリク酸ナトリウムを始めとする抗アレルギー薬に共通する特徴は遅効性で、各種臨床試験の成績を総合すると、連用による臨床効果の発現には2週間、効果のピークには少なくとも4週間を必要であるのに対し、抗ヒスタミン薬は速効性で、連用により2週間でピークに達すること、従って、通年性、季節性を問わず抗アレルギー薬と抗ヒスタミン薬等の対症薬との併用が必要であり、通年性の場合は併用により症状の改善が見られたならば抗アレルギー薬も減量することができること、インタール(登録商標)療法ではその56.2%で他剤併用がなされていることが記載されている。 血管収縮性点鼻薬は鼻粘膜の血管周囲に浸潤して、血管の収縮をきたし、局所に乏血を生じて粘膜の充血と腫脹を一時的に解消するので、作用は投与直後から1分以内に生じ、3〜6時間は持続する旨が記載されている。 刊行物10;日本臨床、第49巻、増刊号、955-956頁,1991年 表1には、アレルギー性鼻炎の各種薬物療法の特徴がまとめられている。 刊行物11;診断と新薬、第21巻、第10号、51-69頁、1984 6千名以上のアレルギー性鼻炎患者に対するクロモグリク酸ナトリウム2%点鼻液剤の市販後臨床成績が報告されている。この報告は本願明細書に開示された臨床試験と同じくアレルギー性鼻炎の諸症状の改善を評価指標としており、同様の判定基準で評価がされているが、有効率は71.7〜85.8%であり、多くは75%以上であること(62頁)、インタール(登録商標)点鼻液単独使用例は全症例の25%で、他剤併用例が75%を占めており、併用としては抗ヒスタミン薬が最も多く、次いでステロイド剤、特異的減感作、非特異的減感作、血管収縮剤の順であったこと(59頁)が記載されている。 刊行物12;Annals of Allergy,28,548-553,1970 特に第552頁左欄第1行〜第13行、右欄第8行〜第10行 クロモグリク酸ナトリウム1%水溶液を鼻粘膜に適用した後にアレルゲン(ハウスダスト又は牧草の花粉混合物)で刺激した後の鼻咽腔-外鼻孔の圧力変化によって保護作用を測定し、鼻粘膜に対するアレルゲンの刺激に対してクロモグリク酸ナトリウムは顕著な保護作用を示すこと、これらの結果はアレルギー性血管運動神経性鼻炎及び花粉症の治療につながる可能性があることが記載されている。 (5)対比判断 5-1 本件発明1について 刊行物7には、インタール(登録商標)点鼻液(クロモグリク酸ナトリウムを2%含有するアレルギー性鼻炎治療用の点鼻液)が記載されている。 本件発明1と上記製剤とを対比すると、両者はクロモグリク酸ナトリウムを含有する点鼻剤である点で一致し、以下の点で相違している。 A)前者はクロモグリク酸ナトリウムの他に抗ヒスタミン剤および血管収縮剤も含有するのに対し、後者は有効成分はクロモグリク酸ナトリウムのみである点 B)前者はクロモグリク酸ナトリウムの濃度が1%であるのに対し、後者はその倍の2%である点、 以下、相違点につき検討する。 A)抗ヒスタミン剤および血管収縮剤を含有する点 アレルギー性鼻炎の治療に使用される各種薬物のうち、クロモグリク酸ナトリウムなどのメジエター遊離抑制薬は遅効性、抗ヒスタミン薬、血管収縮薬は速効性であり(刊行物9、10)、クロモグリク酸ナトリウムを有効成分とする点鼻薬は多くの場合抗ヒスタミン剤、血管収縮剤などと併用されることは広く知られている(刊行物11)。刊行物7のクロモグリク酸ナトリウム製剤にしても、既に起こっている症状を抑える薬物ではないことや治療開始時には抗ヒスタミン剤と併用される場合があること、血管収縮剤やステロイド剤とも併用されることが記載されている。 また、刊行物3、4、8にはクロモグリク酸ナトリウムに血管収縮剤(キシロメタゾリン)を配合したり、抗ヒスタミン剤(クロルフェニラミン)を配合して(刊行物6)点鼻剤として使用することもすでに試みられている。 このようにクロモグリク酸ナトリウム点鼻剤による治療時に併用される薬物をあらかじめ配合して用い、クロモグリク酸の遅効性を補ったり、即効性成分の副作用の緩和を図ることは当業者が普通に行う範囲のことであるところ、キシロメタゾリンと類似の化合物であり(刊行物5)、同様に血管収縮剤として鼻炎に処方されるナファゾリンは、抗ヒスタミン剤との配合によって一層その効果が増強されることが知られている(刊行物1)。 そうすると、クロモグリク酸ナトリウムの遅効性であるという欠点を補うため速効性の薬剤をあらかじめ配合しておくこと、その際、刊行物1,2のような点鼻剤の一般的処方とされる血管収縮剤(塩酸ナファゾリン)と抗ヒスタミン(マレイン酸クロルフェニラミン)を配合成分とすることは当業者が容易に想到し得たことと認められる。 B)クロモグリク酸ナトリウム濃度を1%とする点 刊行物3にはクロモグリク酸ナトリウムの配合により血管収縮剤キシロメタゾリンの濃度が減少でき、副作用の危険を除去するか緩和することが記載されている。刊行物3にはクロモグリク酸ナトリウムの濃度については減量可能かどうか言及されず、単にクロモグリク酸ナトリウムの濃度範囲は0.1〜10%・・より好ましくは約1または2%w/vとされているが、当該発明がなされたイギリスにおいて認可されているクロモグリク酸ナトリウム単剤の使用濃度は4%であることからすると、上記の好ましいとされる濃度1又は2%は通常の量である4%(刊行物8)の半分から4分の1にあたる。したがって、刊行物3には血管収縮剤と併用する場合、クロモグリク酸ナトリウムの使用濃度も通常の量より低くできることが開示されているということができる。 また、刊行物12には、1%のクロモグリク酸ナトリウム溶液にハウスダストや牧草の花粉混合物の刺激に対し明確な保護作用があると報告されている。 そうすると、クロモグリク酸ナトリウムに血管収縮剤や抗ヒスタミン剤を配合した場合、各配合成分の使用濃度を単剤の場合より減少させ、配合剤としての総合的な作用を適切な範囲に留めようとすることは当業者が当然に配慮することであって、特にその濃度を単剤の場合の2%(刊行物7)から、有効濃度の範囲内である1%とする点にしても格別な創意を要するものと認めることはできない。 さらに、本件発明1の点鼻薬の効果にしても、アレルギー鼻炎の諸症状の改善に有効な、作用機作の異なる3剤を配合したことにより期待される効果を格別越えるものとすることはできない。 (被申立人の主張について) 被申立人は、刊行物3にはクロモグリク酸ナトリウム1%と血管収縮剤の配合剤の臨床試験結果は全く示されていず、刊行物12は、単に溶液状態のクロモグリク酸の「薬理作用」を見ているにすぎないと主張するが、刊行物3には0.1〜10%という幅広い有効濃度範囲が開示されており、通常、濃度2%で有効である薬剤を半分の濃度1%で使用した場合、2%よりはその作用は緩和されるとしても、それなりの作用を奏することは経験則上明らかであり、クロモグリク酸ナトリウムの場合は1%でその薬理作用を奏すること自体確認されているのであるから、上記点は1%濃度の採用の困難性の根拠となるものではない。 また、被申立人は3成分の配合によりクロモグリク酸ナトリウム2%の単独投与あるいは該成分と抗ヒスタミン剤、あるいは血管収縮剤との2剤の組み合わせから予想できない顕著な相乗効果が得られる旨主張している。この主張は、主に本件明細書に、クロモグリク酸ナトリウム1%、マレイン酸クロルフェニラミン0.25%、塩酸ナファゾリン0.025%を有効成分とする実施例1の製剤が34症例で有効率76.5%であり、比較例1(クロモグリク酸ナトリウム2%)、比較例2(クロモグリク酸ナトリウム1%マレイン酸クロルフェニラミン0.25%)の製剤は29症例で有効率それぞれ55.2%、58.6%であることを根拠とするものであるが、本件発明1は実施例1の処方に限定されるものではない上、上記の有効率の結果自体、3成分配合の効果を格別顕著と評価するに足りないものである。 すなわち、刊行物7によれば、クロモグリク酸ナトリウム2%の点鼻薬の393例のアレルギー性鼻炎に対する有効率は67.2%、刊行物11によれば同点鼻薬の有効率は71.7〜85.8%(表12)と報告され、本件明細書の有効率55.2%より高い有効率であることや、異議申立人の提出した参考資料1(薬理と治療、第23巻、第8号、303-310頁、1995年)、参考資料2(医学と薬学、第34巻、第2号、295-305頁、1995年)、参考資料3(医学と薬学、第34巻、第2号、307-318頁、1995年)、参考資料4(臨床医薬、第11巻、第8号、1727-1737頁、1995年)、参考資料5(基礎と臨床、第29巻、第12号、3277-3286頁、1995年)によれば、実施例1の処方の製剤の有効率は56.3〜88.2%という幅のある範囲で報告されていることからすると、「有効率」の値は、症例数や重症度等によりかなり変動することを前提に評価すべきであると考えられる。そうすると、本件明細書の臨床使用の結果の有効率の数値から、直ちに実施例1の製剤が顕著な相乗効果を奏するとすることはできない。 以上のとおりであるから、本件発明1は刊行物1〜12に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 5-2 本件発明2、3について 本件発明2,3は、本件発明1の抗ヒスタミン剤をマレイン酸クロルフェニラミンに、血管収縮剤を塩酸ナファゾリンに特定したもの、あるいはクロモグリク酸ナトリウム1%とマレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ナファゾリンの3成分の組み合わせからなる点鼻剤又は点眼剤に係る発明であるが、上記の通りこれらはいずれも点鼻薬成分として周知であるから、上記と同様の理由により当業者が容易に発明し得たものである。 (6)むすび 以上のとおり、本件発明1〜3は、上記刊行物1〜12に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 局所投与製剤 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】クロモグリク酸ナトリウム1%、抗ヒスタミン剤および血管収縮剤を含有することを特徴とする点鼻剤または点眼剤。 【請求項2】抗ヒスタミン剤がマレイン酸クロルフェニラミンである請求項1に記載の点鼻剤または点眼剤。 【請求項3】血管収縮剤が塩酸ナファゾリンである請求項1または2に記載の点鼻剤または点眼剤。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 この発明はクロモグリク酸ナトリウム1%、抗ヒスタミン剤および血管収縮剤を含有する局所投与製剤に関するものであり、医療の分野で利用される。 【0002】 【従来の技術】 クロモグリク酸ナトリウムはアレルギー反応に伴って起こるマスト細胞の脱顆粒現象を抑制し、ヒスタミン、SRS-A等の化学伝達物質の遊離抑制作用を示し、臨床的には気管支喘息及びアレルギー性鼻炎の誘発試験において誘発反応の抑制を示すものである。そのため抗アレルギー剤として点鼻剤、点眼剤などの局所投与製剤の形態で汎用されている。 一方、海外ではクロモグリク酸ナトリウムと血管収縮剤であるジャイロメタゾリンを配合した抗アレルギー剤が上市されている。 また、クロモグリク酸ナトリウムと抗ヒスタミン剤であるマレイン酸クロルフェニラミンを配合した製剤が臨床試験されたことがある[African.Med.J.67.801(85)]。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 クロモグリク酸ナトリウムは優れた抗アレルギー剤であるが、単品で投与すると速効性に欠ける傾向があり、アレルギー性の鼻炎の諸症状の改善のためには、アレルギー性鼻炎のシーズンの約4週間前から投与を開始する必要があった。また、上記クロモグリク酸ナトリウムと血管収縮剤または抗ヒスタミン剤との組み合せも、クロモグリク酸ナトリウム単品投与とほぼ同様の問題点があった。 【0004】 【課題を解決するための手段】 この発明の発明者らは上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、クロモグリク酸ナトリウムに抗ヒスタミン剤および血管収縮剤を同時に配合することにより、アレルギー性鼻炎の諸症状を早期に飛躍的に改善できることを見出し、これらを含有する局所投与製剤を調製することによりこの発明を完成した。 【0005】 この発明の局所投与製剤としては、例えば点眼剤、点鼻剤、吸入剤(例えばエアゾール剤、粉末状吸入剤、液状吸入剤など)などが挙げられる。 この発明に用られる抗ヒスタミン剤としては、例えば塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、プロメタジン、メキタジン、塩酸ジフェニルピラリン、フマル酸クレマスチンなどが挙げられる。 また、血管収縮剤としては塩酸ノルフェネフリン、塩酸フェニレフリン、塩酸ナファゾリン、ジャイロメタゾリン、塩酸ミドドリン、塩酸メトキサミン、硝酸テトラハイドロゾリンなどが挙げられる。 【0006】 この発明の局所投与製剤中のクロモグリク酸ナトリウムの含量(濃度)は1%である。また配合される抗ヒスタミン剤および血管収縮剤の配合比率は、それぞれの種類によっても異なるが、通常クロモグリク酸ナトリウム1重量部に対して、それぞれ抗ヒスタミン剤では0.05乃至1重量部、好ましくは0.1乃至0.5重量部であり、血管収縮剤では0.005乃至0.5重量部、好ましくは0.01乃至0.1重量部である。 【0007】 次にこの発明の局所投与製剤の製造方法について説明する。 点眼剤、点鼻剤を調製するには、精製水または滅菌精製水にクロモグリク酸ナトリウム、抗ヒスタミン剤および血管収縮剤を添加し、撹拌して溶解する。 これらの製剤には所望により、等張化剤(例えば塩化ナトリウムなど)、緩衝剤(例えばホウ酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなど)、保存剤(例えば塩化ベンザルコニウムなど)、増粘剤(例えばカルボキシビニルポリマーなど)、安定化剤(例えばエデト酸ナトリウムなど)のような通常用いられる添加剤を加えてもよい。 【0008】 エアゾール剤を調製するには、クロモグリク酸ナトリウム、抗ヒスタミン剤および血管収縮剤を、それぞれ常法により、好ましくは5μm以下に微粉砕し、必要ならば分散剤を加えて、冷却下噴射剤と共に噴霧容器中に充填して調製する。好ましい分散剤としては、スパン80(Span 80)、スパン85(Span 85)などの登録商標名で市販されている非イオン性界面活性剤、大豆レシチンなどの両性界面活性剤、オレイルアルコールなどの天然アルコールなどが挙げられる。 好ましい噴射剤としては、フッ素化・塩化低級アルカンであるCFC(クロロフルオロカーボン)11、CFC12、CFC114およびこれらの混合物が挙げられる。 【0009】 吸入剤のうち、液状の吸入剤については、上記の点眼剤などの場合と同様にして製造され、上記と同様な添加剤が所望により添加される。この液状の吸入剤はネブライザー(登録商標名)などの吸入器具を用いて投与される。 粉末状の吸入剤は、前記のエアゾール剤の場合と同様にして製造した各成分の微粉砕末に、必要により乳糖などの賦形剤を混合して製造される。この粉末状の吸入剤はスピンヘラー(登録商標名)などの吸入用器具を用いて投与される。 このようにして得られるこの発明の局所投与製剤は患者の症状に応じて1日1回乃至数回投与される。 【0010】 【効果】 この発明の製剤の効果を調べるために、後記実施例1で得られた点鼻剤と比較例1および2の点鼻剤を用いて臨床試験(2乃至4週間の投与)を実施し、アレルギー性鼻炎の諸症状の改善度を医師の診療と患者の自己申告から評価した。 なお評価に用いたアレルギー性鼻炎の諸症状は次のとおりである。 くしゃみ発作(1日の発作回数)、 鼻汁(1日の鼻のかんだ回数)、 鼻閉、嗅覚異常、日常生活の支障度、 下甲介粘膜の腫脹、下甲介粘膜の色調、 水性分泌、鼻汁の性状 また、改善度は上記諸症状の改善の程度により、次の5段階とした。 消失、著明改善、改善、不変、悪化 製剤の有用性は、上記の項目について総合的に判定した。 判定は「極めて有用」、「有用」、「やや有用」および「有用とはいえない」の4段階とした。 各製剤の有効率(「極めて有用」または「有用」の判定の割合)を表1に示す。 【表1】 表1から明らかなように、この発明の製剤(実施例1)は、比較例1および2の製剤に比べて、顕著にアレルギー性鼻炎の諸症状を改善することがわかる。 【0011】 【実施例】 以下、この発明の局所投与製剤を実施例により説明する。 実施例1 クロモグリク酸ナトリウム、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ナファゾリンおよびエデト酸ナトリウムを精製水に溶解し、そこへ塩化ベンザルコニウムを加えて撹拌し、析出物を濾過して、以下の処方の点鼻剤を得た。 【表2】 【0012】 実施例2 クロモグリク酸ナトリウム、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ナファゾリン、エデト酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ナトリウムを滅菌精製水に加え、撹拌溶解し無菌ろ過して、以下の処方の点眼剤を得た。 【表3】 【0013】 比較例1 実施例1と同様にして、以下の処方の点鼻剤を調製した。 【表4】 【0014】 比較例2 実施例1と同様にして、以下の処方の点鼻剤を調製した。 【表5】 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2003-07-28 |
出願番号 | 特願平6-59391 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(A61K)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 森井 隆信 |
特許庁審判長 |
竹林 則幸 |
特許庁審判官 |
森田 ひとみ 渕野 留香 |
登録日 | 2001-12-28 |
登録番号 | 特許第3264301号(P3264301) |
権利者 | 藤沢薬品工業株式会社 |
発明の名称 | 局所投与製剤 |
代理人 | 田伏 英治 |
代理人 | 田伏 英治 |
代理人 | 長井 省三 |