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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B24B
審判 全部無効 発明同一  B24B
管理番号 1127916
審判番号 無効2005-80125  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-02-04 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-04-20 
確定日 2005-12-12 
事件の表示 上記当事者間の特許第3615592号発明「研磨装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3615592号の請求項1乃至2に係る発明についての出願は、平成7年7月11日に出願され、平成16年11月12日にその発明について特許権の設定登録がされたものである。
これに対して、平成17年4月20日に審判請求人・久保富美夫により無効審判の請求がなされたところ、平成17年7月15日付けで被請求人・不二越機械工業株式会社より審判答弁書の提出がなされ、平成17年8月23日付けで請求人より審判事件弁駁書の提出がなされたものである。

II.本件発明
本件特許の請求項1乃至2に係る発明(以下、「本件発明1」乃至「本件発明2」という。)は、後記VI.2に示すとおり、本件特許請求の範囲の記載に不備はないから、願書に添付された明細書及び図面(以下、「本件特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 ワークを保持する保持部と、表面に研磨面が形成された定盤と、前記保持部と定盤とを相対的に運動させる運動機構とを備える研磨装置において、
前記保持部が、
下方に向けて開放する凹部を備えるヘッド部材と、
該ヘッド部材の凹部内側に配された保持部材と、
外側部が前記ヘッド部材の壁部に固定されると共に、内側部が前記保持部材に固定され、該保持部材を上下方向及び水平方向への移動を微小範囲内で許容可能に吊持する弾性部材と、
前記ヘッド部材の内部を前記保持部材および前記弾性部材によって画成して設けられる第1圧力室と、
弾性のある薄膜からなり、前記保持部材の外面側に外周部で固定され、外側面でワークに当接して該ワークを前記定盤の研磨面へ押圧可能に設けられた弾性薄膜と、
前記保持部材の外側面および前記弾性薄膜の内側面によって画成される第2圧力室とを備え、
前記第1圧力室へは第1流体供給手段によって所定圧力の流体が供給され、前記第2圧力室へは第2流体供給手段によって所定圧力の流体が供給されることを特徴とする研磨装置。
【請求項2】 前記第1流体供給手段には第1圧力室へ供給される流体の圧力を調整する第1圧力調整装置が備えられ、前記第2流体供給手段には第2圧力室へ供給される流体の圧力を調整する第2圧力調整装置が備えられていることを特徴とする請求項1または2記載の研磨装置。」

III.請求人の主張の概要
請求人は、下記甲第1号証を提出し、
(1)本件特許の請求項1乃至2に係る発明は、本件特許出願の日前の他の特許出願であって本件出願後に出願公開がされた特願平7-43218号の願書に最初に添付された明細書及び図面(甲第1号証)に記載された発明と同一であるので特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである(以下、「無効理由1」という。)。
(2)本件特許の請求項1は、特許を受けようとする発明が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない(以下、「無効理由2」という。)。
(3)本件特許の請求項1は、発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載したものではなく、特許法第36条第5項に規定する要件を満たしていない(以下、「無効理由3」という。)。
と主張している。
[甲号各証]
甲第1号証:特願平7-43218号の願書に最初に添付された明細書及 び図面(特開平8-39422号公報を援用)

IV.被請求人の主張の概要
被請求人は、上記請求人の主張に対して、審判答弁書において、
(1)本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一ではない、
(2)本件特許の請求項1に係る発明は明確である、
(3)本件特許の請求項1には発明を特定するために必要と認める事項のすべてが記載されている、
と反論している。

V.甲第1号証の記載内容及び先願発明
請求人の提出した甲第1号証には、以下の技術的事項が記載されている。

(イ)「【請求項1】 基板の作動面を研磨するための装置であって、
研磨パッドと、
キャリアであって、その中に前記基板を受容しその基板を前記研磨パッドに対して位置決めするための基板受容部を有するキャリアとを備え、
前記基板キャリアが、前記基板の異なった別々の部分において、前記基板と前記研磨パッドとの間に、異なった負荷圧力与えるための、差別的バイアシング(differential biasing)部材を含む、
装置。
【請求項2】 前記差別的バイアシング部材が、その中にチャンバを含み、そのチャンバが、前記基板の異なった別々の部分に異なった負荷圧力を供給するために、加圧できる、請求項1記載の研磨装置。
【請求項3】 前記チャンバが、前記基板受容部の内側の末端部を形成する下部適合壁を有する囲われた空洞を含む、請求項1記載の研磨装置。
【請求項4】 前記下部適合壁が、可変厚さを有する、請求項3記載の研磨装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】〜【請求項4】)

(ロ)「【産業上の利用分野】本発明は、半導体処理の分野に関する。特に本発明は、一様性の高いまたコストが低減された、基板を化学的機械的に研磨するための方法及び装置に関する。本発明は、基板上の異なった場所から材料を除去する速さの一様性を改善するための装置を提供し、それによって最終的に基板から回収される有用なダイの数を増す。更に、本発明は単一の研摩パッド上で多基板を同時に研摩する為の装置と方法を提供し、それによって化学的機械的研摩装置の生産性を上げる。」(段落【0001】)

(ハ)「本発明は、改善された一様性と歩留まりをもって大きな研摩パッド上で基板を研摩するための多数の実施例を提供する。ここで述べる本発明の各実施例においては、基板12は、図1の研摩装置10のような研摩装置上で、研摩パッド22に押し付けられ、好ましくは制御された回転をもって軌道路(orbital path)を運動をする。研摩パッド22は回転運動をするのが好ましいが、基板12がそれに対して運動させられている間静止状態に維持されてもよい。
図1及び2に示される本発明の実施例においては、基板キャリア24が基板12を受容しまた基板12を回転研摩パッド22上に位置決めするように提供されている。キャリア24はトランスファ-ケ-ス54に連結されており、そのトランスファケ-スは、キャリア24とその中に受容されている基板12とを研摩パッド22上で軌道路に沿って動かし、また研摩装置10のベ-ス14のような固定点に関してキャリア24及び基板12の回転方向を同時に制御するように形成されている。キャリア24は、基板12のエッジに隣接してかけられている基板上の負荷と比べて基板12の中心部に選択的に差別的に負荷をかけるように形成されている。基板12の中心部に差別的に負荷をかけることによって、基板12の中心部における材料除去率は、基板12のエッジに隣接した部分の材料除去率と合致するように調整される。」(段落【0012】〜【0013】)

(ニ)「図1には、ここで説明する本発明の何れの実施例を用いて基板12を研摩するためにも有用な研摩装置10が示されている。本装置10は、ここで説明する本発明の各実施例にとって有用であるが、図解を容易にするために、キャリア24と研摩パッド22と関連づけて描かれている。本研摩装置10は一般的に、回転可能なプラテン16及びその上の研摩パッド22を支えるベ-ス14と、基板12を受容し、基板12を研摩パッド22上に位置決めするキャリア24と、研摩パッド22に関して基板12に負荷をかけまた運動させるようにキャリア24に接続されたトランスファ-ケ-ス54とを含む。研摩パッド22を回転させたい場合は、図示しないモ-タ及び歯車組立体がベ-ス14の下側に配設され、プラテン16の下側の中心に接続されプラテン16を回転させる。プラテン16は、軸受でベ-ス14から支持されてもいいし、或いはモ-タと歯車組立体がプラテン16を回転すると同時に支持してもよい。研摩パッド22は、プラテン16の上面に置かれており、それによりモ-タと歯車組立体によって回転させられる。」(段落【0017】)

(ホ)「キャリアの上部バイアシング部分102は、研摩パッド22に対して基板12に負荷をかけるために与えられる一次的圧力を制御するように形成されている。一次的負荷圧力を制御するために、キャリア24の上部バイアシング部分102は、研摩パッド22に対して基板12に負荷をかけるように選択的に加圧される空洞112として形成されている。空洞112は、その上端を形成しているキャリアプレ-ト80と、下部本体部分の上面と、キャリアプレ-ト80から下方向に伸延し下部本体部分104で終わるベロ-ズ110とによって画成されている。ベロ-ズ110は、キャリア24の実質的な捩じれを防止するのに十分な剛性を与えるおよそ1000分の8インチの厚さのステンレス鋼で製作するのが好ましい。ベロ-ズ110は、空洞114の外壁として働き、またそれはキャリアプレ-ト80から基板12へ回転運動を伝える働きもする。」(段落【0032】)

(ヘ)「キャリア24の下部本体部分104は、基板12の異なる場所における基板12と研摩パッド22との間の負荷圧力を微妙に調整するのに使われる。下部本体部分104は、一般的には正しい(right)円形の中空部材であり、スリ-ブ部分130内に受容されており、またベロ-ズ110の下端部と下部本体部分104との間の接続を形成している一般的に円形の上部壁138を有する。外部円形壁140が、円形部材132から下方に伸延しており、下部輪郭壁142で終わっている。円形部材132と外部壁140と下部輪郭壁142がチャンバ-144の外部境界を形成している。下部輪郭壁142は、ほぼ平坦な外側表面152と輪郭のついた内側表面とを有する。好ましくは、下部輪郭壁142の内側表面の輪郭は、壁142の外周からその半径のおよそ三分の一の位置まで広がっている第一のテ-パ-付き部分146と、テ-パ-付き部分146のどの部分よりも薄い、壁142の中心部における一定厚さの薄膜150を形成する平坦部分148とを含む。壁142の外側或いは下部の表面152は平坦であり、それはその上にフィルム154、好ましくは閉じたセル(closed cell)のフィルムの層を受容しているのが好ましい。スリ-ブ130の下端部は、壁142の外側面152及びその上のフィルム154を越えて下側に伸延しており、壁142と一緒になって、下部基板受容凹み28を形成している。」(段落【0033】)

(ト)「スリ-ブ部分130は、その中に内部バイアシング部分30の部品を受容し、これらの部品及び基板12を軌道路内で案内するように形成されている。スリ-ブ部分130は、上部の一般的に正しい環状(right annular)部材132であって、その上端部においてキャリアプレ-ト80の下端部に接続されている部材と、下部の一般的に正しい環状リング134とを含む。その円環リング134は、環状部材132の下側に接続され、環状部材132とリング134との接続部に配設された円形のリ-フ(leaf)バネ128によって下方向に押し付けられ研摩パッド22に係合することができるようになっている。スリ-ブ部分130は、強い実質的に剛性のある部材を提供し、その部材はその中に下部本体部分104を受容し、軌道路を通してその下部本体部分104を案内する。」(段落【0034】)

(チ)「基板12と研摩パッド22との間に負荷圧力を与えるために、空洞112及びチャンバ-144に、加圧状態で流体を供給しなければならない。さらに、空洞112に供給される流体は、チャンバ-144に供給される流体とは違った圧力に独立して維持できなければならない。それらの流体を供給するために、駆動軸56はその中を長手方向に伸延する一対の流路160、162を含む。同様に、第二の軸64は、その中を長手方向に伸延する一対の流路160’,162’を含む。回転ユニオン164が、駆動軸54の上端部に備えられ、流路160、162に流体を供給する。回転ユニオンはまた、クロスア-ム60の、駆動軸54と第二の軸64との双方への接続部にも置かれており、またクロスア-ム60は一対の貫通する通路(図示せず)を含み、その通路は回転ユニオンと連携して、流体を流路160から流路160’に、また流路162から流路162’に流す。流路160’は流体を加圧状態で供給し、空洞112を選択的に加圧する。ホ-ス124が、流路162’の下部端末部に回転フィッティングで接続されており、流路162’から下部本体部分にある開口126に延びており、流体を下部本体部分104のチャンバ-144に供給するようになっている。」(段落【0035】)

(リ)「研摩パッド22に対して基板12に負荷をかけるために、ベロ-ズの空洞112及びチャンバ-144に流体が加圧状態で供給される。ベロ-ズの空洞112に流体によって与えられる圧力は、キャリア24に対して負荷をかける部品の重量及びキャリア24それ自身の重量と一緒になって、研摩パッド22に対する基板12の一次的負荷圧力0.3から0.7kg/cm2 を創り出す。もし基板12が研摩される際エッジ部分の過剰研摩が生じないならば、チャンバ-144は大気圧に保たれる。しかしながら、基板12のエッジ部分に過剰研摩が生じるならば、基板12の中心部を下方向に研摩パッド22に対して付加的に差別的に押し付けるに十分な距離だけ、輪郭のついた下部壁144特にその中心部の平坦部分148を外側にたわませるに十分な圧力でチャンバ-144が加圧される。チャンバ-144に供給される圧力は、基板12のエッジにおける研摩率を均一化するために、基板12の中心部の研摩率を増やすように、平坦部分148のたわみを制御するために変えてもよい。与えられた半導体研摩操作に対して望ましいたわみ量は、一旦研摩とエッジ部の過剰研摩の履歴が確立されると、製造中に定められるであろう。」(段落【0036】)

(ヌ)図2の記載によれば、ベロ-ズ110は、上端部がキャリアプレ-ト80に固定され、下端部が下部本体部分104に固定されることが看取できる。

上記記載事項及び図面の記載からみて、甲第1号証には次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。
[先願発明]
基板12を保持するキャリア24と、上面に研磨パッド22が置かれたプラテン16と、前記キャリア24とプラテン16とを相対的に運動させる運動機構とを備える研磨装置10において、
前記キャリア24が、
キャリアプレート80と、環状部材132及び環状リング134よりなるスリーブ部分130とから構成されるヘッド部材と、
該スリーブ部分130内に受容される下部本体部分104と、
上端部がキャリアプレ-ト80に固定され、下端部が下部本体部分104に固定されるベロ-ズ110と、
上記ヘッド部材の内部を、キャリアプレ-ト80と、下部本体部分104の上面と、ベロ-ズ110とによって画成して設けられる空洞112と、
下部本体部分104の外部円形壁140に設けられた下部輪郭壁142であって、下部輪郭壁142の内側表面の輪郭は、下部輪郭壁142の外周からその半径のおよそ三分の一の位置まで広がっている第一のテ-パ-付き部分146と、テ-パ-付き部分146のどの部分よりも薄い、下部輪郭壁壁142の中心部における一定厚さの薄膜150を形成する平坦部分148とを含み、その外側面で基板12に当接して基板12をプラテン16の研磨パッドに対して押圧可能に設けられた下部輪郭壁142と、
下部本体部分104の外部円形壁140及び下部輪郭壁142の内側面によって画成されるチャンバー144とを備え、
前記空洞112へは流路160’によって所定圧力の流体が供給され、前記チャンバー144へは流路162’によって所定圧力の流体が供給される研磨装置10。

VI.当審の判断
1.無効理由1について
1-1 本件発明1について
本件発明1と先願発明とを対比すると、先願発明における「基板12」は、本件発明1における「ワーク」に相当し、以下同様に、「キャリア24」は「保持部」に、「上面に研磨パッド22が置かれたプラテン16」は「表面に研磨面が形成された定盤」に、「キャリアプレート80と、環状部材132及び環状リング134よりなるスリーブ部分130とから構成されるヘッド部材」は「下方に向けて開放する凹部を備えるヘッド部材」に、「下部本体部分104」は「保持部材」に、それぞれ相当することが明らかである。
そして、先願発明における「ベロ-ズ110」は、一端部がヘッド部材の壁部に固定されると共に、他端部が下部本体部分104に固定され、下部本体部分104を上下方向への移動を微小範囲内で許容可能に吊持するという限りにおいて、本件発明1における「弾性部材」と共通しており、先願発明における「空洞112」は、ヘッド部材の内部を前記下部本体部分104とベロ-ズ110によって画成して設けられるという限りにおいて「第1圧力室」と共通している。
また、先願発明における「下部輪郭壁142」は、弾性のある薄膜からなり、その外側面で基板12(ワーク)に当接して基板12をプラテン16(定盤)の研磨面に対して押圧可能に設けられているという限りにおいて本件発明1における「弾性薄膜」と共通しており、先願発明における「チャンバー144」は、下部本体部分104の外側面及び下部輪郭壁142の内側面によって画成されるという限りにおいて本件発明1における「第2圧力室」と共通している。
さらに、先願発明における「流路160’」及び「流路162’」は、「空洞112」及び「チャンバー144」に所定圧力の流体を供給するものであるから、それぞれ「第1流体供給手段」及び「第2流体供給手段」ということができる。
したがって、本件発明1と先願発明とは、
「ワークを保持する保持部と、表面に研磨面が形成された定盤と、前記保持部と定盤とを相対的に運動させる運動機構とを備える研磨装置において、
前記保持部が、
下方に向けて開放する凹部を備えるヘッド部材と、
該ヘッド部材の凹部内側に配された保持部材と、
一端部が前記ヘッド部材の壁部に固定されると共に、他端部が前記保持部材に固定され、該保持部材を上下方向への移動を微小範囲内で許容可能に吊持する弾性部材と、
前記ヘッド部材の内部を前記保持部材および前記弾性部材によって画成して設けられる第1圧力室と、
弾性のある薄膜からなり、外側面でワークに当接して該ワークを前記定盤の研磨面へ押圧可能に設けられた弾性薄膜と、
前記保持部材の外側面および前記弾性薄膜の内側面によって画成される第2圧力室とを備え、
前記第1圧力室へは第1流体供給手段によって所定圧力の流体が供給され、前記第2圧力室へは第2流体供給手段によって所定圧力の流体が供給される研磨装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
弾性部材が、本件発明1では、「外側部が前記ヘッド部材の壁部に固定されると共に、内側部が前記保持部材に固定され、該保持部材を上下方向及び水平方向への移動を微小範囲内で許容可能に吊持する」ものであるのに対し、先願発明では、上端部がキャリアプレ-ト80に固定され、下端部が下部本体部分104に固定されるベロ-ズ110であって、下部本体部分104は上下方向への移動は許容されるものの水平方向へ移動できるか否か明らかでない点。
[相違点2]
弾性薄膜が、本件発明1では、「前記保持部材の外面側に外周部で固定され」るのに対して、先願発明では、下部本体部分104の外部円形壁140に設けられた下部輪郭壁142であって、下部輪郭壁142の内側表面の輪郭は、下部輪郭壁142の外周からその半径のおよそ三分の一の位置まで広がっている第一のテ-パ-付き部分146と、テ-パ-付き部分146のどの部分よりも薄い、下部輪郭壁壁142の中心部における一定厚さの薄膜150を形成する平坦部分148とを含むものである点。

上記相違点について検討する。
[相違点1について]
先願発明において、「ベローズ110」は、上端部がヘッド部材の壁部に固定されると共に、下端部が下部本体部分104に固定されており、前記下部本体部分104は、ベロース110により負荷圧力を与えられて上下方向へ移動されるものである。そして、下部本体部分104について、甲第1号証には、「下部本体部分104は、一般的には正しい(right)円形の中空部材であり、スリ-ブ部分130内に受容されており、」と記載されているだけであり(上記摘記事項(ヘ)参照)、水平方向への移動ができることについて何ら記載されていない。また、甲第1号証の図2の記載をみても、下部本体部分104を水平方向への移動を微小範囲内で許容可能に吊持することについて記載されているとすることができない。
一方、本件発明1においては、保持部材を吊持する弾性部材は、外側部が前記ヘッド部材の壁部に固定されると共に、内側部が前記保持部材に固定され、該保持部材を上下方向及び水平方向への移動を微小範囲内で許容可能に吊持するものであって、本件発明1は上記特定事項を具備することにより、「ウェーハが研磨される際に発生する水平方向(特に径方向)への作用力を吸収することができる」(本件特許明細書段落【0012】参照)という作用効果を奏するものと認められる。
してみると、上記相違点1が、課題解決のための具体化手段における微差とすることはできない。

[相違点2について]
先願発明において、下部輪郭壁142は、下部輪郭壁142の外周からその半径のおよそ三分の一の位置まで広がっている第一のテ-パ-付き部分146と、テ-パ-付き部分146のどの部分よりも薄い一定厚さの薄膜150を形成する平坦部分148とから構成されている。また、甲第1号証の図2の記載からみて、下部輪郭壁142のテ-パ-付き部分146は、外部円形壁140下端に一体的に形成されていると認められ、本件発明1における「保持部材の外面側に外周部で固定され」る弾性薄膜とは、その形状及び配置手段において相違している。
そして、本件発明1においては、上記相違点2に係る構成を具備することにより、「第2圧力室32へ第2流体供給手段によって所定圧力の流体を供給することで、弾性薄膜30を介して、より直接的に流体圧による等圧力を作用させ、ウェーハ24の全面を研磨面へ均等に押圧できる。」(本件特許明細書段落【0017】参照)という作用効果を奏するものと認められ、上記相違点2が、課題解決のための具体化手段における微差とすることはできない。

したがって、本件発明1は先願発明と同一であるとすることはできない。
よって、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。

なお、請求人は審判事件弁駁書において、「被請求人は、弾性部材14の外側部が固定されるヘッド部材の壁部は、ヘッド部材10を構成する平板壁部10b側でもよいと主張するのであるから、外側部と上端部は同意語であり、よって弾性部材の他端の内側部と下端部とも同意語であり、構成要件の文節Fは甲第一号証に記載されたものである。」(第2頁第5〜8行)と主張しているが、上述のとおり、本件発明1における「弾性部材」は、「外側部が前記ヘッド部材の壁部に固定されると共に、内側部が前記保持部材に固定され」ることにより「該保持部材を上下方向及び水平方向への移動を微小範囲内で許容可能に吊持する」ものであるから、弾性部材14の外側部が平板壁部10b側に固定されていてもよいとの主張をもって、外側部と上端部、及び、他端の内側部と下端部とが同意語であるとすることはできない。
また、請求人は、「弾性薄膜」に関して、「被請求人は、本件特許の請求項1の記載を甲第一号証に記載されるボックス構造のものが除かれるように記載すべきである。」(第3頁第10〜11行)とも主張しているが、本件発明1において、「弾性薄膜」は、「保持部材の外面側に外周部で固定され」とされており、保持部材とは別部材として特定されているから、外部円形壁140下端に一体的に形成されている先願発明の下部輪郭壁142のテ-パ-付き部分146とは形状及び配置手段において相違していることも上述のとおりである。
よって、請求人の上記主張は採用することができない。

1-2 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用する発明であって、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当するものである。
そして、本件発明1は、上記1-1に示した理由により、先願発明と同一であるとすることはできないから、本件発明2も、同様の理由により、先願発明と同一であるとすることはできない。
よって、本件請求項2に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものではない。

2.無効理由2について
2-1 無効理由2の概要
請求人は、本件特許の請求項1に係る発明は、下記(1)、(2)の点で特許を受けようとする発明が明確でないから特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないと主張している。
(1)請求項1における「外側部が前記ヘッド部材の壁部に固定されると共に、」において、ヘッド部材の「壁部」の意味が、ヘッド部材10を構成する平板壁部10b側か筒状側壁部10c側か、それとも、平板壁部10b側と筒状側壁部10c側のいずれ側であってもよいか不明りょうである。
(2)請求項1における「該ヘッド部材の凹部内側に配された保持部材と、」において、保持部材はヘッド部材の凹部内側に配されるとされているが、図1では保持部材の底部面はヘッド部材の凹部を構成する筒状側壁部10cの底部よりはみ出した外側にあり、「内側」の意味が、前記筒状側壁部10cの底部位置との関係で不明りょうである。

2-2 当審の判断
[(1)の点について]
本件特許明細書には、弾性部材をヘッド部材に固定することについて、「14は弾性部材の一態様である板状の弾性部材であり、例えば硬質のゴム板材(本実施例では布入りニトリルゴム)によってドーナツ状に形成されている。外側部14aがヘッド部材10の内底面に固定されると共に内側部14bが保持プレート12に固定されている。これにより、板状の弾性部材14は、保持プレート12を上下方向及び水平方向への移動を微小範囲内で許容可能に吊持している。」(段落【0011】)と記載されている。
上記記載によれば、本件発明1における弾性部材の「外側部」は、保持プレート12を上下方向及び水平方向への移動を微小範囲内で許容可能に吊持できるようにヘッド部材10の内底面(壁部)に固定されるものであればよいものである。また、図1に、外側部14aを筒状側壁部10cの内底面10aにリング16により固定することが記載されているが、当該記載事項は、弾性部材をヘッド部材に固定するための一実施例として示されたものにすぎない。
したがって、請求項1に、「壁部」が、ヘッド部材10を構成する平板壁部10b側及び筒状側壁部10c側のいずれか又は両方であるかが特定されていないことをもって特許を受けようとする発明が明確でないとすることはできない。

[(2)の点について]
本件請求項1及び本件特許明細書の記載からみて、本件発明1においては、保持部材は、ヘッド部材の凹部の内部で、弾性部材により上下方向及び水平方向への移動を微小範囲内で許容可能に吊持されていればよいものである。そして、本件請求項1における「ヘッド部材の凹部内側に配された」は、図1に記載された形態を含めて、保持部材がヘッド部材の凹部の内部に配されたことを意味するものと解される。また、保持部材が弾性部材により上下方向及び水平方向への移動を微小範囲内で許容可能に吊持される場合には、保持部材の底部がヘッド部材の凹部を構成する筒状側壁部10cの底部からはみ出ることが当然あり得ることも自明の事項である。
してみると、図1において保持部材の底部がヘッド部材の凹部を構成する筒状側壁部10cの底部よりはみ出していることをもって前記「ヘッド部材の凹部内側に配された保持部材」の記載が不明りょうであるとすることはできない。

よって、本件特許の請求項1の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

3.無効理由3について
3-1 無効理由3の概要
請求人は、本件特許の請求項1に係る発明は、下記(1)〜(3)の研磨装置の保持部材に必須の事項が記載されていないから、発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載したものではなく、特許法第36条第5項に規定する要件を満たしていないと主張している。
(1)ワーク(ウエーハ)の水平方向の飛び出し防止手段の環状テンプレート40、及びそれを弾性薄膜30の外側面に装着すること。
(2)環状テンプレート40と弾性薄膜30で形成されるウエーハ保持空間部とヘッド部材を構成する筒状側壁部10cの底部との位置関係。
(3)保持プレートの水平方向の移動を微少範囲で許容するため、保持部材の外周面と筒状側壁部10cの内周面の双方に当接するようリング状の弾性部材26を設けること。

3-2 当審の判断
特許法第36条第5項についての違反は、特許法第123条に規定する、特許を無効にすることについて審判を請求することができる場合に該当しない。
よって、特許法第36条第5項に規定する要件を満たしていないとの理由により本件請求項1に係る特許を無効にすることはできない。

なお、上記請求人の主張について付言するに、本件特許明細書における、発明が解決しようとする課題、課題を解決するための手段及び発明の効果の記載からみて、本件発明1は、請求項1に記載された発明特定事項を具備することにより、「ワーク全面を研磨面へ均等に押圧することによってワーク全面を均一に研磨し、ワーク外周のダレを防止すると共に、ワーク表面の平坦度を向上できる」という目的を達成し本件特許明細書に記載された効果を奏するものと認めることができる。
したがって、上記(1)〜(3)に挙げた事項は、いずれも本件発明1における必須の特定事項とは認めることができない。

VII.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1乃至2についての特許を無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-07 
結審通知日 2005-10-13 
審決日 2005-11-02 
出願番号 特願平7-174603
審決分類 P 1 113・ 537- Y (B24B)
P 1 113・ 161- Y (B24B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齋藤 健児  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 豊原 邦雄
佐々木 正章
登録日 2004-11-12 
登録番号 特許第3615592号(P3615592)
発明の名称 研磨装置  
代理人 堀米 和春  
代理人 綿貫 隆夫  
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