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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 D06F
管理番号 1127974
審判番号 不服2002-20760  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-18 
確定日 2005-12-13 
事件の表示 平成 6年特許願第 57992号「温風機能付き物干し竿」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 8月29日出願公開、特開平 7-227496号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯・本願発明の特定
本願は、平成6年2月18日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。

「物干し竿から、温風が出る仕組み。」

II.引用例の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用した、本願出願前に頒布された刊行物である実願昭50-120163号(実開昭52-33544号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、次のア、イの事項が図面とともに記載されている。
ア.(明細書1頁12行〜2頁6行)
「1はアルミニウム或いは錆びず強度のある適宜資材により製作した内部中空の物干し竿で、この物干し竿1には所望の間隔を保って熱風流出孔2が開けてある。熱風流出孔2の形状は例えば円孔または竿の長手方向に沿う長孔状若しくはその他の形状の孔が開けてあり、孔の条件としては物干し竿1の強度即ち竿にかかる荷重を支える強度が損なわない範囲の孔の形状及び大きさであることが要求される。上記物干し竿1の一端は開口して熱風流入口3としこれに熱風発生装置4が連接されている。竿の他端は閉止してある。熱風発生装置4は空気取入口5と、この取入口から空気を吸気するモーターを備えたファン6と、取り入れた空気を加熱するヒーター7例えば電熱線とから構成されている。」
イ.(明細書2頁11〜18行)
「以上のように構成したこの考案の物干し竿によれば、物干し竿1の熱風流入口3に取付けた熱風発生装置4から吹き出す熱風を物干し竿内に送り込み、そしてこの熱風を熱風流出孔2から吹き出させるようにしたもので、例えばこの物干し竿に洗濯物を掛け干したとき該流出孔から吹き出す熱風によって洗濯物は迅速に、しかも確実に乾燥することができる。」

上記ア、イの記載事項より、引用例には、空気取入口5からファン6で取り入れた空気を、ヒーター7で加熱して熱風とする、熱風発生装置4と、一端に熱風流入口3を有するとともに、所望の間隔を保って熱風流出孔2を有する物干し竿1とからなり、熱風流入口3に連接された熱風発生装置4からの熱風を、熱風流出孔2から吹き出させ、これによって洗濯物を乾燥させるものが記載されていると認められる。

III.対比
本願発明の用語を用いて本願発明と引用例に記載されたものとを対比すると、引用例に記載された「物干し竿1」は、その熱風流出孔2から吹き出した熱風により洗濯物を乾燥させるものであり、一方、本願発明の「物干し竿」は、吹き出した温風により洗濯物を乾燥させるものであるので、引用例記載のものの、「熱風」及び「物干し竿1」は、それぞれ、本願発明の「温風」及び「物干し竿」に相当する。
また、引用例記載の、空気取入口、ファン6及びヒーター7を備えた熱風発生装置4は、熱風を発生する手段であり、物干し竿1の熱風流入口3と熱風流出孔2とは、この熱風を物干し竿1に導入し、そこから吹き出させる手段であって、これらは、物干し竿から、温風(熱風)を出す手段である点で、本願発明の「温風が出る仕組み」に対応する。
そこで、両者は次の一致点で一致し、次の点で相違する。

(一致点)
「物干し竿から、温風を出す手段」
(相違点)
「温風を出す手段」が、引用例記載のものでは、空気取入口5、ファン6及びヒーター7を備えた熱風発生装置4と、物干し竿1の熱風流入口3と熱風流出孔2とから成るのに対し、本願発明は、「温風が出る仕組み」である点。

IV.判断
上記相違点について検討する。
物干し竿から「温風を出す手段」として、引用例に具体的に記載された構造以外に、同等の機能を奏するものを工夫することは、引用例の記載に接した当業者が適宜なし得たことであるので、引用例に具体的に記載された、空気取入口5、ファン6及びヒーター7を備えた熱風発生装置4と、物干し竿1の熱風流入口3と熱風流出孔2とから成る構成を、単に上位概念化し、「温風が出る仕組み」として、相違点に係る本願発明の構成のようにすることは、当業者が、容易に想到し得たことにすぎない。

ところで、請求人は、平成14年5月21日付け意見書において、「拒絶理由通知書の理由の部分に書いてある(その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、)という事が書かれているが、自分には専門的な知識も持ち合わせていないので、この拒絶理由は正当なものであるとは判断出来ないものであり特許というものは、個人の発想力が一番尊重されるべきであり、誰だれでも思いつくから誰だれでも思いつくとは、必ずしもいいあてはまらないものである。」旨主張し、また、審判請求書で、「この、発明はある時不意にひらめいたものであって、別に知識を駆使して発明したものではないので、知識の有無にかかわる拒絶は成立しないものとみなされる。」と主張している。
しかしながら、発明者が、本願発明をどのように発明したかということと、その発明が、特許法第29条第2項の規定にあたるか否かということとは、まったく別の事項に属することである。
特許法は、第29条第1項に、産業上利用できる発明をした者は、その発明が、特許出願前に、いわゆる公知、公用、公然実施の発明であった場合を除き特許を受けることができる旨規定するとともに、第29条第2項に、これを受けて、「特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。」と定め、この規定に該当するときは、産業上利用できる発明であっても特許を受けることができないとしている。
すなわち、発明者が、その技術分野における通常の知識を持たず、その分野におけるなんらの公知の発明を参考にすることなく、まったく独自に、産業上利用できる発明を完成させたものであったとしても、その発明が、その特許出願前に、その発明の属する技術分野(本願で言えば、洗濯物の乾燥に係る技術分野)における通常の知識を有する者(いわゆる当業者)にとって、その技術分野の公知の発明を示した文献(すなわち引用例)に基づいて、容易に思いつくことができた程度のものである場合には、そのような発明にまで独占権である特許を与えて保護することは、日々公知技術に簡単な改良を加えて工夫するという技術者の自由な活動を不当に制限し、産業の発達を逆に損ない、第1条に規定する特許法の目的に反することになるので、特許法は、第29条第2項の規定を設け、このような発明には特許を与えないとしているのである。
したがって、この技術分野における知識なしに、個人の発想力で発明をしたので、拒絶は成立しない旨の請求人の主張は採用することができない。

V.むすび
以上のように、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載されたものに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-09-26 
結審通知日 2005-10-04 
審決日 2005-10-17 
出願番号 特願平6-57992
審決分類 P 1 8・ 121- Z (D06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 栗山 卓也  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 増沢 誠一
平上 悦司
発明の名称 温風機能付き物干し竿  

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