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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L |
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管理番号 | 1128253 |
審判番号 | 不服2003-25021 |
総通号数 | 74 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-10-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-12-25 |
確定日 | 2005-12-22 |
事件の表示 | 特願2001- 96942「多孔質断熱材の熱伝導率制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月 9日出願公開、特開2002-295787〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成13年3月29日の出願であって、その請求項1、2に係る発明は、平成15年10月9日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものと認めるところ、その請求項1に記載された発明は次のとおりである。 【請求項1】 繊維径7〜14.5μmの炭素繊維を所要量平坦に且つランダムに積層した状態で、2〜100パンチ/cm2の密度でニードルパンチを行い、次に2000℃〜2400℃で黒鉛化し、次いでフェノール樹脂、フラン樹脂及びアミノ樹脂の群から選ばれた1種もしくは2種以上の物質を含浸し、然る後樹脂の硬化を行うことを特徴とする多孔質断熱材の熱伝導率制御方法。 (以下、「本願発明1」という。) 2.引用例 原査定の拒絶の理由で引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-108150号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。 ・「(1)嵩密度が0.01〜0.5g/cm3、2200℃におけるフエルトの厚さ方向の熱伝導率が1.0kcal/m・hr℃以下であり、実質的に炭素繊維間の絡合によってフエルトの形態を保持していることを特徴とする、高温域における断熱特性に優れた炭素繊維フエルト。 (2)炭素繊維が平均単繊維直径1〜9μmを有するものであることを特徴とする、請求項1記載の炭素繊維フエルト。 (3)炭素繊維がピッチ系のものであることを特徴とする、請求項1又は2記載の炭素繊維フエルト。 (4)炭素繊維がメソフェーズピッチ系のものであり、かつ、温度20℃相対湿度65%の雰囲気中で、吸湿性が2%以下であることを特徴とする、請求項3記載の炭素繊維フエルト。 (5)ピッチをメルトブロー法て紡糸後、シート状に捕集し、不融化、炭化して得られた、平均単繊維直径1〜9μmの炭素繊維から成るマットを積層し、2〜100パンチ/cm2の密度でニードルパンチすることを特徴とする、請求項1記載の炭素繊維フエルトの製造方法。」(特許請求の範囲) ・「本発明の炭素繊維フェルトは不活性雰囲気では極めて安定であり、 500〜2800℃の範囲で優れた耐熱性、形態安定性を示し、特に放射伝熱に対する優れた断熱材を形成する。」(2頁左上欄5〜8行) ・「実施例 1 軟化点284℃、メソフェーズ含有率100%の石油系ピッチを原料として、メルトブロー法により繊維を製造し、ネットコンべヤーの上にシート状に捕集した。 このピッチ繊維のシート状物を、空気中昇温速度2.4℃/分で300℃まで昇温させつつ不融化した後、さらに不活性気体中て昇温速度5℃/分で615℃まで昇温させて軽度に炭化させた。得られた繊維の平均単繊維直径は6.5μm、マットの目付は28g/m2であった。 得られたマットを12枚積層してニードルパンチを行った。パンチ密度をそれぞれ1.8、7、35、95、110回/cm2としてフェルト状物を作った後、最高温度2000℃で炭化を行った。パンチ前の嵩密度を軽度炭化の際に加える圧力で変更し、炭化後の嵩密度がいずれも0.1±0.01g/cm3になるようにした。なおハンチ密度を1.8回/cm2としたものはマットとしてのまとまりが悪く、取扱い中に容易に多数のシートに剥離する傾向が認められた。 得られたフェルト状物の吸湿性はいずれも約0.08%であり、石川島播磨重工業(株)製断熱材高温熱伝導率測定装置 (ITC 25- VRII) により測定した2200℃における熱伝導率はそれぞれ0.52、0.60、0.68、0.77、1.12kcal/m・hr℃であった。」(4頁右上欄12行〜左下欄16行) 3.対比・判断 (1)引用例記載の発明 上記「2.引用例」で摘示した事実によれば、引用例には、下記の発明が記載されていると認められる。 「平均単位繊維直径1〜9μmの炭素繊維を積層した状態で、2〜100パンチ/cm2の密度でニードルパンチを行い、次に2000℃で炭化し、500〜2800℃の範囲で優れた耐熱性、形態安定性を示し、特に放射伝熱に対する優れ、2200℃における炭素繊維フエルトの厚さ方向の熱伝導率が1.0kcal/m・hr℃以下である断熱材の製造方法」 (2)一致点、相違点の認定 本願発明1と引用例に記載された発明を対比すると、引用例に記載された発明の「平均単位繊維直径」は本願発明1の「繊維径」に相当し、以下同様に「炭素繊維」は「炭素繊維」に、「ニードルパンチ」は「ニードルパンチ」にそれぞれ相当する。 また、引用例に記載された発明の「500〜2800℃の範囲で優れた耐熱性、形態安定性を示し、特に放射伝熱に対する優れ、2200℃における炭素繊維フエルトの厚さ方向の熱伝導率が1.0kcal/m・hr℃以下である断熱材の製造方法」は製造方法ではあるが、2200℃における炭素繊維フエルトの厚さ方向の熱伝導率を1.0kcal/m・hr℃以下にするという、その作用・機能からみて、熱伝導率を制御するものといえるので、本願発明1の「多孔質断熱材の熱伝導率制御方法」に相当すると認められる。 そうすると、両者は、「繊維径7〜9μmの炭素繊維を所要量積層した状態で、2〜100パンチ/cm2の密度でニードルパンチを行い、次に2000℃で加熱した多孔質断熱材の熱伝導率制御方法。」で一致し、下記の点で相違する。 (相違点1)繊維径が、本願発明1が7〜14.5μmであるのに対し、引用例は1〜9μmである点。 (相違点2) 本願発明1では、「平坦に且つランダムに」であるのに対し、引用例には、かかる構成の明記がない点。 (相違点3) 本願発明1は、「2000℃〜2400℃で黒鉛化し、次いでフェノール樹脂、フラン樹脂及びアミノ樹脂の群から選ばれた1種もしくは2種以上の物質を含浸し、然る後樹脂の硬化を行う」のに対し、引用例には、2000℃で炭化することは記載されているものの、黒鉛化及び樹脂の含浸、硬化にかかるの構成の明記がない点。 (3)相違点の検討 上記相違点1ないし3について検討する。 ・相違点1について 炭素繊維の繊維径を7〜14.5μmに限定することは当業者が適宜採用し得た設計事項である。 ・相違点2について 炭素繊維を積層するに際し、平坦に且つランダムに積層することは、当業者が適宜行う設計事項である。 ・相違点3について 炭素繊維断熱材において、炭化及び黒鉛化し、次いでフェノール樹脂、フラン樹脂等の物質を含浸し、然る後樹脂の硬化を行う点は、本願発明1の出願前に周知の技術(例えば、特開平9-316217号公報(請求項2)、特開平3-261661号公報(1頁右下欄行2頁左上欄12行、3頁左下欄19行〜右下欄6行)参照)であり、引用例記載の発明において、2000℃で炭化するに際して、上記周知技術を適用し、黒鉛化し、次いでフェノール樹脂、フラン樹脂等の物質を含浸し、然る後樹脂の硬化を行うことは当業者が容易になし得たことである。 また、黒鉛化温度を2000℃〜2400℃という温度範囲にすることは当業者が適宜採用し得た設計事項であり、格別なものではない。 なお、請求人は平成16年1月20日付けの審判請求書補正書において、「引用文献1(引用例:審決注)は、嵩密度を調整することで所期の熱伝導率(2200℃において1.0kcal/m/hr/℃以下)を得るものであるが、実施例4のように平均単繊維径(単位はμm?)と測定した熱伝導率には相関関係がない。引用文献1の技術で熱伝導率を調整することは物理的に不可能である。また、実施例には、500℃から2800℃の熱伝導率測定例がない。従って、いかに当業者といえども引用文献1の技術で熱伝導率は調整できないものである。本願発明は、熱伝導率の調整を実現したもので、引用文献1の技術とは全く異なる。」と主張している。 しかし、本願の明細書の表4に大気圧で20〜800℃の熱伝導率が記載されている実施例7と実施例10は、表3から明らかなように、メソフェースピッチ系の繊維径7μmとするものであり、等方形ピッチ系の繊維径12.5〜14.5μmとするものではないので、繊維径と熱伝導率との相関関係の有無については、本願の明細書及び図面からは明らかではなく、引用例に記載のものも、繊維径、ニードルパンチの密度及び加熱温度は本願発明と同様な数値を有するものであり、少なくともニードルパンチの密度を調整することで、熱伝導率を調整しているので、請求人の「いかに当業者といえども引用文献1の技術で熱伝導率は調整できないものである。本願発明は、熱伝導率の調整を実現したもので、引用文献1の技術とは全く異なる。」という主張は採用できない。 そして、本願発明1の奏する効果は、引用例に記載された発明及び上記周知の技術から当業者が予測し得る程度のものにすぎない。 4.まとめ したがって、本願の請求項1に係る発明(本願発明1)は、引用例に記載された発明及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって本願の請求項2に係る発明について判断するまでもなく、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-10-19 |
結審通知日 | 2005-10-25 |
審決日 | 2005-11-07 |
出願番号 | 特願2001-96942(P2001-96942) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F16L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 丸山 英行 |
特許庁審判長 |
水谷 万司 |
特許庁審判官 |
櫻井 康平 長浜 義憲 |
発明の名称 | 多孔質断熱材の熱伝導率制御方法 |
代理人 | 杉山 毅至 |
代理人 | 西教 圭一郎 |
代理人 | 廣瀬 峰太郎 |
代理人 | 西教 圭一郎 |
代理人 | 廣瀬 峰太郎 |
代理人 | 杉山 毅至 |