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審決分類 審判 訂正 原文新規事項追加の訂正 訂正しない C08G
管理番号 1128400
審判番号 訂正2004-39190  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-12-26 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-08-06 
確定日 2005-12-15 
事件の表示 特許第3359629号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.請求の要旨と特許請求の範囲についての訂正の内容
本件審判の請求の要旨は、特許3359629号発明(平成14年4月8日〔特許法第41条に基づく優先権主張平成13年4月9日、日本〕特許出願、平成14年10月11日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。
そして、特許請求の範囲については、請求項1の
「【請求項1】 有機ポリイソシアネート、ポリオール及び硬化剤からなるポリウレタンを主な構成素材としてなる研磨パッドであって、前記硬化剤の主成分が4,4’-メチレンビス(o -クロロアニリン)であり、且つ、前記ポリオールが、数平均分子量が500〜1600であり、且つ、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.9未満であるポリテトラメチレングリコールを含んでなることを特徴とする研磨パッド。」を、
「【請求項1】 有機ポリイソシアネート、ポリオール及び硬化剤からなるポリウレタンを主な構成素材としてなる研磨パッドであって、前記有機ポリイソシアネートが、トルエンジイソシアネート及び4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートからなり、前記硬化剤の主成分が4,4’-メチレンビス(o -クロロアニリン)であり、且つ、前記ポリオールが、ポリテトラメチレングリコール及び低分子ポリオールからなり、該ポリテトラメチレングリコールの数平均分子量が500〜1600であり、且つ、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.9未満であり、前記ポリウレタンは、塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体からなる微小中空体がポリウレタン中に分散された発泡ポリウレタンであり、さらに弾性率の変化率(60℃における弾性率/20℃における弾性率)が0.47以上であって弾性率の温度依存性が小さいことを特徴とする研磨パッド。」と訂正しようとするものである。
2.訂正の適否
上記の特許請求の範囲の訂正は、特許請求の範囲の請求項1に、
構成1「前記有機ポリイソシアネートが、トルエンジイソシアネート及び4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートからなり、」、
構成2「ポリテトラメチレングリコール及び低分子ポリオールからなり、該ポリテトラメチレングリコールの」、
構成3「前記ポリウレタンは、塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体からなる微小中空体がポリウレタン中に分散された発泡ポリウレタンであり、さらに弾性率の変化率(60℃における弾性率/20℃における弾性率)が0.47以上であって弾性率の温度依存性が小さい」を付加するものであり、これらは特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
上記付加された構成1〜3のうち、構成3については、さらに、「塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体からなる微小中空体がポリウレタン中に分散された発泡ポリウレタンであり、」とする限定(以下、「限定1」という。)と、「さらに弾性率の変化率(60℃における弾性率/20℃における弾性率)が0.47以上であって弾性率の温度依存性が小さい」とする限定(以下、「限定2」という。)に分けることができ、それぞれ、限定1及び2について、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものかどうかについて検討する。
1)限定1について、
限定1について、審判請求人は、平成16年11月29日付の意見書(以下、単に「意見書」という。)において、本発明の研磨パッドを、訂正明細書の段落【0022】を引用し、特許第3013105にみられるような加圧ガスを内包した高分子微小エレメントが含浸されたポリウレタンマトリックスからなるものであるとしている。
しかしながら、訂正明細書の段落【0022】は、本件特許明細書の段落【0023】を訂正したものであり、願書に添付した明細書の記載した事項の範囲内においてしたものかどうかの判断は、訂正明細書ではなく、特許明細書の記載に基づいて判断されなければならないものであるから、以下は特許明細書の段落番号を採用する。
本件特許明細書(以下、単に「本件明細書」という。)の段落【0023】には、「特許第3013105にみられるような加圧ガスを内包した高分子微小エレメントが含浸されたポリウレタンマトリックス」という記載はあるものの、該高分子微小エレメントが、本件限定1に係る「塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体からなる微小中空体」であるとする記載はない。そこで、特許第3013105号公報に、「塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体からなる微小中空体」が記載されているかどうか検討する。
特許第3013105号公報によれば、その第4頁第8欄には、「このような高分子微小エレメントの例には、ポリビニールアルコール、ペクチン、ポリビニールピロリドン(Polyvinyl pyrrolidone)、ハイドロキシエチルセルローズ(hydroxyethylcellulose)、メチルセルローズ、ハイドロプロピルメチルセルローズ(hydropropylmethylcellulose)、カーボキシメチルセルローズ(carboxymethylcelulose)、ハイドロキシプロピルセルローズ(hydroxypropylcellulose)、ポリアクリル酸(polydcrylic acids)、ポリアクリルアミド(polyacryl amides)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycols)、ポリハイドロキシエーテルアクリライト(polyhydroxyetheracrylites)、澱粉、マレイン酸共重合体(maleic acid copolymers)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリウレタン(polyurethanes)、およびそれらの組み合わせが含まれる。」と記載されている。
そこには、高分子微小エレメントの材料として「塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体」とする記載はなく、そして、該高分子微小エレメントの材料として例示されるものの多くは、ポリウレタン以外は、水溶性あるいは親水性の高分子であり、「塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体」を想起させる記載も認められない。
その例1において、中空高分子微小球体として「エクスパンセル 551DE」という記載が認められるものの、このものが塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体であるとの記載はない。
なお、意見書に添付する資料2のエクスパンセルマイクロスフェアーに関するカタログ(日本フィライト株式会社作成)において、「エクスパンセル 551DE」が塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体からなると思われる記載があるとしても、特許第3013105号公報には、「エクスパンセル 551DE」という特殊な例が記載されるものであって、そのことでもって、すべての「塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体からなる微小中空体」が、高分子微小エレメントとして記載されているとすることはできない。
したがって、本件明細書の段落【0023】には限定1についての記載はなく、さらに、本件明細書に記載されている事項の範囲を、特許第3013105公報に広げたとしても、限定1に係る、一般的な「塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体からなる微小中空体」についての記載は認められない。
本件明細書には、その実施例において、「エクスパンセル 551DE」が記載され、その説明として「塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体からなる微小中空体」と記載されているものの、実施例に記載されているものは単に「エクスパンセル 551DE」そのものでしかなく、そのことでもって、その上位概念に相当する、共重合割合や微小中空体の粒径などが特定されない、一般的な「塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体からなる微小中空体」が記載されているとすることはできない。
2)限定2について
審判請求人は、意見書において、数値の変化を表すものとして、一般的に変化差と変化率が用いられるとしている。しかしながら、弾性率の変化として、変化差ではなく、変化率をその指標として用いることを説明するものとはいえないし、本件明細書にはそのことを示す記載もない。
また、20℃と、40℃及び60℃の弾性率が、ただ羅列して記載されているに過ぎない実施例から、その変化率の指標として20℃と60℃の弾性率のみを選択・使用して変化率の指標とすることについて、意見書では、資料6を使用して説明している。しかし、資料6の内容が、本件明細書に記載されているとすることもできず、また、20℃と60℃の弾性率の変化率が弾性率の指標として、本件明細書から自明なことであるともいえない。
したがって、本件明細書には、弾性率の変化率についての記載もなく、また、「弾性率の変化率(60℃における弾性率/20℃における弾性率)」が、弾性率の変化率の指標として本件明細書の記載から自明であるともいえないものであるから、限定2に係る「弾性率の変化率(60℃における弾性率/20℃における弾性率)が0.47以上」が記載されているとすることはできない。
3.むすび
以上のとおりであるから、この訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内でしたものとすることはできず、特許法第126条第3項の規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-13 
結審通知日 2004-12-15 
審決日 2005-01-05 
出願番号 特願2002-105459(P2002-105459)
審決分類 P 1 41・ 842- Z (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 健史  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 佐野 整博
石井 あき子
登録日 2002-10-11 
登録番号 特許第3359629号(P3359629)
発明の名称 ポリウレタン組成物からなる研磨パッド  
代理人 梶崎 弘一  
代理人 梶崎 弘一  
代理人 鈴木 崇生  
代理人 福井 賢一  
代理人 光吉 利之  
代理人 鈴木 崇生  
代理人 光吉 利之  
代理人 福井 賢一  
代理人 尾崎 雄三  
代理人 尾崎 雄三  

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