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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1128434
審判番号 不服2000-19155  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-04 
確定日 2005-12-09 
事件の表示 平成 5年特許願第198127号「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 2月28日出願公開、特開平 7- 51431〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯、本願発明
本願は、平成5年8月10日に出願したものであって、平成12年10月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その請求項1に係る発明は、平成16年11月25日付け手続補正書により全文補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)

【請求項1】
外周に複数種類の図柄の表示された複数の回転リールの回転を、
ゲーム中に発生されたボーナスフラグにもとづいて停止制御するようにしたスロットマシンにおいて、
上記スロットマシンには、ボーナスフラグが発生されているにもかかわらず、全ての回転リールが停止した状態で、ボーナス図柄を出現させる代わりに出現させる特定種類の図柄の組合せを予め記憶したリーチ目記憶手段と、
ストップスイッチからのストップ信号にもとづいて、各回転リールの回転を停止させ図柄を停止表示させるリール駆動制御手段と、
前記リール駆動制御手段からのリール位置情報にもとづいて回転リールの停止位置を判定し、停止表示された図柄の組み合わせが前記リーチ目記憶手段に記憶された特定種類の図柄の組み合わせと一致したことを条件に、前記ボーナスフラグの発生の如何に関わらず、リーチ目出現信号を出力するリーチ目判定手段と、
このリーチ目判定手段からのリーチ目判定信号にもとづいて、遊技者にリーチ目が出現したことを報知するリーチ目報知手段と、を備え、
前記リール駆動制御手段は、
回転リールの回転の開始から予め定めた一定時間の経過を条件に、回転リールの回転を停止させるとともに、
ボーナスフラグが発生した場合に、ストップスイッチの操作にもとづいて、当該ボーナスフラグに対応するボーナス図柄を停止制御し、
ボーナスフラグが発生されているにもかかわらず、ストップスイッチの操作にもとづいてボーナス図柄を停止制御できない場合に、リーチ目記憶手段に予め記憶された特定種類の図柄の組み合わせを停止制御し、
ボーナスフラグが発生していない場合にも、ストップスイッチの操作にもとづいて、リーチ目記憶手段に予め記憶された特定種類の図柄の組み合わせを停止制御するようにした ことを特徴とするスロットマシン。

2.当審の拒絶理由
一方、当審において平成16年9月28日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である下記の引用例1乃至6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用例1:パチスロ必勝本漫画ローレンス12月号増刊,株式会社綜合図書,1991年12月25日発行,100頁
引用例2:特開平3-114482号公報
引用例3:実願平2-81073号(実開平3-029178号)のマイクロフィルム
引用例4:特開平2-31778号公報
引用例5:「パチスロ攻略マガジンNO.1 パチンコ攻略マガジン増刊12月21日号」,株式会社双葉社,1990年12月21日発行,第14〜26頁
引用例6:「パチスロ必勝ガイド3」,白夜書房,1991年 3月 1日発行,第2巻第2号(通巻第4号),第59〜64頁,

2-1.引用例に記載の発明
(1)引用例1
引用例1には、スロットマシンに関し、
(1-1) 第100頁上段のムサシ(パイオニア)の説明欄に、
「リーチ目は単刀直入でわかりやすく、ビッグボーナスが入ると「MUSASHI」が、レギュラーボーナスが入ると「単チェリー」が出やすくなる。MUSASHIはどのラインに揃ってもリーチ目だが、上段で揃うのは信用度が低いのではずしてある…。また、「MUSASHI」は通常時でも揃うことがあるので、短い間隔で2〜3回揃ってはじめて確実なリーチ目といえる。………レギュラーのリーチ目となる単チェリー…も通常時に出ることがあるので、やはり短時間に2〜3度揃って確実といえる。」と記載されている。
(1-2) また、白抜きのマル5,6の図に、単チェリーのリーチ目の例が記載されており、左列にはチェリーの図柄が出ているが、当該図の中列及び右列には図柄が出ていないため、任意の種類の図柄でよいものと認められる。
(1-3) また、本体の写真より、該本体が、3つの回転リールと、該回転リールに対応した3つのストップスイッチを有する典型的なスロットマシンであることが認められる。
前記(1-1)乃至(1-3)の記載によれば、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「3つの回転リールと、該回転リールに対応した3つのストップスイッチを有するスロットマシンにおいて、ビッグボーナスが入ると「MUSASHI」が揃うリーチ目が、レギュラーボーナスが入ると「単チェリー」のリーチ目が出やすくなり、これらのリーチ目は通常時にも出ることがあるスロットマシン。」

(2)引用例2
引用例2(特開平3-114482号公報)には、スロットマシンに関し、
(2-1) 第1頁左欄第5-17行に「(1)複数の回転リール、停止していないひとつの回転リールの絵柄さえ合えば入賞となる旨を点灯することによってプレーヤーに伝えるリーチランプ、及びゲームを行うに際して投入されたメダルの数と停止した回転リールの絵柄とを記憶して演算する制御装置を有し、その制御装置は、全ての回転リールのうちのひとつを残して他の全ての回転リールが停止した際に停止した回転リールの絵柄が入賞の可能性がある組合せとなっていると判断した場合にリーチランプを点灯させる命令を発することを特徴としたスロットマシン。」と、
(2-2) 第1頁右欄第8行-第2頁左上欄第1行に「「従来の技術」 スロットマシンは、プレーヤーが次のようにして遊ぶ遊技機である。…決められた範囲の枚数(通常は1〜3枚)のコインを投入する。…スタートボタンを押す。…複数(通常は3つ)の回転リールが回転を始める。(以下においても回転リールは3つであるとして説明する。)…3つの回転リールに対応した3つのストップボタンを順次押すことによって、3つの回転リールの回転を順次止める。」と、
(2-3) 第2頁右上欄第14行-左下欄第11行に「(1)しかしながら、従来のスロットマシンには、ゲームの進行上次のような欠点があった。長時間に渡ってゲームをするプレーヤーは、ゲームに対する緊張感が薄れ、3つのストップボタンを押して3つの回転リールの回転を順次止めるという操作を何気なく行ってしまっていた。その結果、2つの回転リールを止めた時点で、残りのひとつの回転リールの絵柄さえ合えば入賞するというチャンスであるにも拘らず、最後のストップボタンを何気なく押してしまうことでその入賞のチャンスを失ってしまうことが多かった。(2)入賞のチャンスである旨をプレーヤーに伝え、プレーヤーの緊張感を呼び戻すようなスロットマシンであれば、入賞する可能性が高まり、また長時間プレーしても飽きにくいと考えられる。しかし現在のところ、そのようなスロットマシンはなかった。」と、
(2-4) 第3頁右上欄第9行-左下欄第10行に「(1)本実施例のスロットマシンは、各々に被検出部19を有する3つの回転リール10、その3つの回転リール10を各々独自に回転させるためのパルスモーター20、………各モーター20の回転を停止させる命令を発するため各回転リール10を回転させるモーター20に対応したストップボタン60、2つの回転リールが停止した際に残りのひとつの回転リールの絵柄によっては入賞の可能性があるという場合に点灯するリーチランプ70、及びゲームを行うに際して投入されたメダルの数と停止した回転リールの絵柄と記憶して演算することによってリーチランプ70を点灯させる命令を発する制御装置80、から構成されている。」と、
(2-5) 第3頁左下欄第19行-右下欄第5行に「本実施例においては、回転リール10を回転させるためのモーターとしてパルスモーター20を採用している。パルスモーター20は入力されるパルスの数に応じて回転するので、入力するパルスの数を制御することによって回転リール10の回転角度を制御することができる。」と、
それぞれ記載されている。

(3)引用例3
引用例3(実願平2-81073号(実開平3-29178号)のマイクロフィルム)には、スロットマシンに関し、
(3-1) 第1頁第5-14行に「(1)複数のリールを回転させ、これらが停止したときに各リールの絵柄の組み合わせを表示窓に表示するようにしたスロットマシンにおいて、複数のリールのうちの少なくとも2個が停止された時点で作動し、これらのリールの絵柄が入賞に該当する絵柄の組み合わせの一部を構成していることを検出して報知信号を出力する検出手段と、前記報知信号に応答して作動され、遊技者に入賞が出やすい状態であることを報知する報知手段とを備えたことを特徴とするスロットマシン。」と、
(3-2) 第2頁第9行-第3頁第15行に「ところが従来のスロットマシンでは、各リールの回転速度は絵柄の識別ができない程度に高速回転されるため、遊技者が任意のタイミングでリールを停止できるとは言え、停止操作のタイミングを、全てのリールごとに充分に注意力を集中して決めているとは言い難いのが実情で、ゲームを繰り返してゆくうちにはストップボタンを漫然と操作することが多くなる。このような状況では、入賞は全く偶然性に支配されてしまうことになり、ゲーム性に若干欠けるきらいがあった。また、スロットマシンにはコインの投入枚数に応じて入賞ラインの本数が増えるようになっているが、入賞ラインの本数が複数になると、3本のリールのうち2本が停止した状態で、それぞれの入賞ラインについて入賞が出やすい状態になっているか否かを瞬間的に把握することができない。このため、3本目のリールのストップボタンを無造作に操作して入賞を逸することが少なくなかった。……本考案の目的は、すでに停止されたリールの絵柄により、入賞に該当する絵柄の組み合わせの一部が構成されているときには、遊技者に入賞が得やすい状態であることを報知し、残りのリールの停止タイミングに注意を喚起してゲームの興趣を高めるようにしたスロットマシンを提供することにある。」と、
(3-3) 第8頁第6-12行に「さらに、入賞判定部43は、第1及び第2リール3,4が停止したときに、それぞれの絵柄検出部40,41で検出された絵柄の組み合わせが入賞を構成し得るものであるか否かを検出する。そして、入賞を構成し得るものであるときには、報知器50に報知信号を送る。報知器50は、前記報知信号を受けてチャイム音を発生する。」と、
それぞれ記載されている。

(4)引用例4
引用例4(特開平2-31778号公報)には、スロットマシンにおける表示絵柄の操作機構に関し、
(4-1) 第1頁左欄第5-16行に「1 複数のリール等に表示された絵柄、又は、CRT等に表示された複数の絵柄を、ゲームのスタート操作により変更させると共に、ストップ操作によって表示されている絵柄の変更を停止させるようにしたスロットマシンに於て、絵柄変更のためのスタート機構とその停止機構に、絵板の変更動作が開始された後、任意に設定した時間経過すると絵柄変更動作が自動停止する自動停止機構と、……を設けたことを特徴とするスロットマシンにおける表示絵柄の操作機構。」と、
(4-2) 第3頁右上欄第8-14行に「この構成により、本発明では回転している各リール1〜3は、ストップボタン11〜13の操作によるストップ信号SP1〜SP3か、又は、自動停止指令部からのストップ信号TP1〜TP3のいずれかにより、停止されるようにした手動停止機構と自動停止機構とを結合した絵柄変更の停止機構の例を形成することとなる。」と、
それぞれ記載されている。

(5)引用例5
引用例5には、
(5-1) 第19頁の「5時間目 ボーナスフラッグを見きわめよう」の項目中、2段目〜4段目に「では早速、ボーナスフラッグを判断するいくつかの方法について話をしよう。……次に代表的なものが、リーチ目によるフラッグの判断方法である。前述の「ボーナスフラッグのテンパイ形」も、この仲間といえる。このリーチ目というのは、大きく2種類に分けることができる。1つは、ボーナスフラッグが成立したことで、特定に小役が頻繁に出てくるもの。……もう1つは、7と7の代役絵柄が、有効ラインに並ぶものである。山佐のほとんどの機種が美しいリーチ目を持っている。……」と、
(5-2) 第23〜25頁の「比較4」の項目中、25頁上から3段目には「3番めに考えられるのは、ボーナスフラッグが成立し、左リールにボーナス絵柄が出たにもかかわらず、中リールを止めたタイミングが悪く、ボーナス絵柄のテンパイ形ができなかった場合である。白抜きマル9〜15はその代表的な例で、左リール中段のチェリー同様に、高確率のリーチ目となる。」と、
それぞれ記載されている。

(6)引用例6
引用例6には、第61頁中段左の「スベリとは一体、なんですか!?」の項目には「スベリとは、機械側が決めた役を揃いやすくするために、ボタンを押したタイミングのズレを修正してくれる為に発生する現象だ。」と、同頁下段の「目押しは何故必要なのか?全ては損得が基準である!」の項目に「フラグが立った状態で、7が揃っていない配置を、俗に「リーチ目」と呼び、当たってるかハズレているかの判断材料にするわけですね。………このスベリは最大約4コマの範囲で動き、フラグが立っている時は、その絵柄を引き込んだり、………するのです。つまりフラグが立っていれば、4コマ手前で押しても、スベって揃ってくれます。もし、それより大きな範囲でボタンを押してしまった場合、前述のリーチ目は出るのですが、……」と、それぞれ記載されている。

3.本願発明と引用発明との対比・判断
(1)本願発明と引用発明との対比
i. 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ビッグボーナスが入る、及び、レギュラーボーナスが入る」ことが、本願発明の「ボーナスフラグが発生」することに相当する。
ii. また、引用発明の「3つの回転リールと、該回転リールに対応した3つのストップスイッチを有するスロットマシン」は、3本の回転リールと、該回転リールに対応した3個のストップスイッチを有する典型的なスロットマシンであり、ボーナスフラグの発生に基づいて停止制御するとともに、ストップスイッチのストップ信号にもとづいて、各回転リールの回転を停止させるリール駆動制御手段を備えているものと認められるから、本願発明の「外周に複数種類の図柄の表示された複数の回転リールの回転を、ゲーム中に発生されたボーナスフラグに基づいて停止制御するようにしたスロットマシンにおいて」、「ストップスイッチからのストップ信号にもとづいて、各回転リールの回転を停止させる図柄を停止表示させるリール駆動制御手段を備え」ることに相当する。
iii. また、引用発明の「ビッグボーナスが入ると「MUSASHI」が揃うリーチ目が、レギュラーボーナスが入ると「単チェリー」のリーチ目が出やすく」なることは、ビッグボーナスあるいはレギュラーボーナスのフラグが発生して、ボーナス図柄が出現しない場合、すなわちボーナス図柄を停止制御できない場合に、ボーナス図柄以外の特定種類の図柄が出現する可能性が高いことを意味しているものである。
とすると、引用発明に係る当該構成と、本願発明の「ボーナスフラグが発生されているにもかかわらず、全ての回転リールが停止した状態で、ボーナス図柄を出現させる代わりに出現させる特定種類の図柄の組合せを予め記憶したリーチ目記憶手段」を備え、リール駆動制御手段が「ボーナスフラグが発生した場合に、ストップスイッチの操作にもとづいて、当該ボーナスフラグに対応するボーナス図柄を停止制御し、ボーナスフラグが発生されているにもかかわらず、ストップスイッチの操作にもとづいてボーナス図柄を停止制御できない場合に、リーチ目記憶手段に予め記憶された特定種類の図柄の組み合わせを停止制御」したこととは、「ボーナスフラグが発生されているにもかかわらず、全ての回転リールが停止した状態で、ボーナス図柄を出現させる代わりに予め定められた特定種類の図柄の組合せ(リーチ目)を出現し得」、リール駆動制御手段が「ボーナスフラグが発生した場合に、ストップスイッチの操作にもとづいて、当該ボーナスフラグに対応するボーナス図柄を停止制御し、ボーナスフラグが発生されているにもかかわらず、ストップスイッチの操作にもとづいてボーナス図柄を停止制御できない場合に、予め定められた特定種類の図柄の組み合わせを出現させ得」ることで共通する。
iv. また、引用発明の「これらのリーチ目は通常時にも出る」ことは、ボーナスフラグの発生の如何に関わらず、予め定められた特定種類の図柄の組み合わせが出現し、ボーナスフラグが発生していない場合にも、ストップスイッチの操作にもとづいて、予め定められた特定種類の図柄の組み合わせを停止するようにしたものである。
とすると、引用発明に係る当該構成と、本願発明の「リール駆動制御手段からのリール位置情報にもとづいて回転リールの停止位置を判定し、停止表示された図柄の組み合わせがリーチ目記憶手段に記憶された特定種類の図柄の組み合わせと一致したことを条件に、ボーナスフラグの発生の如何に関わらず、リーチ目出現信号を出力するリーチ目判定手段」を備え、リール駆動制御手段が「ボーナスフラグが発生していない場合にも、ストップスイッチの操作にもとづいて、リーチ目記憶手段に予め記憶された特定種類の図柄の組み合わせを停止制御するようにしたこと」とは、本願明細書の発明の詳細な説明(段落【0026】)の記載を参酌すると、本願発明の「ボーナスフラグが発生していない場合」に、積極的にリーチ目で停止制御するのではなく、偶発的にリーチ目が出現するものと解されるから、「ボーナスフラグの発生の如何に関わらず、予め定められた特定種類の図柄の組み合わせが出現し」、リール駆動制御手段が「ボーナスフラグが発生していない場合にも、ストップスイッチの操作にもとづいて、予め定められた特定種類の図柄の組み合わせを停止するようにした」ことで共通する。

v. してみると、本願発明と引用発明の両者は、
「外周に複数種類の図柄の表示された複数の回転リールの回転を、ゲーム中に発生されたボーナスフラグにもとづいて停止制御するようにしたスロットマシンにおいて、
上記スロットマシンは、ボーナスフラグが発生されているにもかかわらず、全ての回転リールが停止した状態で、ボーナス図柄を出現させる代わりに予め定められた特定種類の図柄の組合せ(リーチ目)を出現し得、ストップスイッチからのストップ信号にもとづいて、各回転リールの回転を停止させる図柄を停止表示させるリール駆動制御手段を備え、前記ボーナスフラグの発生の如何に関わらず、前記特定種類の図柄の組み合わせが出現し、
前記リール駆動制御手段は、
ボーナスフラグが発生した場合に、ストップスイッチの操作にもとづいて、当該ボーナスフラグに対応するボーナス図柄を停止制御し、
ボーナスフラグが発生されているにもかかわらず、ストップスイッチの操作にもとづいてボーナス図柄を停止制御できない場合に、予め定められた特定種類の図柄の組み合わせを出現させ得、
ボーナスフラグが発生していない場合にも、ストップスイッチの操作にもとづいて、予め定められた特定種類の図柄の組み合わせを停止するようにしたスロットマシン。」
である点で一致し、

vi. 以下の点で相違しているものと認められる。
・相違点1
ボーナスフラグが発生されているにもかかわらず、ストップスイッチの操作にもとづいてボーナス図柄を停止制御できない場合に、本願発明では、ボーナス図柄を出現させる代わりに特定種類の図柄の組合せを出現させるように停止制御するのに対し、引用発明では、ボーナス図柄を出現させる代わりに特定種類の図柄の組合せを出現させやすくしているにすぎず、必ず前記組合せが出現するか否か不明である点。
・相違点2
本願発明は、リール駆動制御手段からのリール位置情報にもとづいて回転リールの停止位置を判定し、停止表示された図柄の組み合わせが前記リーチ目記憶手段に記憶された特定種類の図柄の組み合わせと一致したことを条件に、ボーナスフラグの発生の如何に関わらず、リーチ目出現信号を出力するリーチ目判定手段と、このリーチ目判定手段からのリーチ目判定信号にもとづいて、遊技者にリーチ目が出現したことを報知するリーチ目報知手段とを備えるのに対し、引用発明は、ボーナスフラグの発生の如何に関わらず、リーチ目(予め定められた特定種類の図柄の組み合わせ)が出現するものの、リーチ目を記憶するリーチ目記憶手段と、リーチ目が出現したことを判定するリーチ目判定手段と、リーチ目が出現したことを遊技者へ報知するリーチ目報知手段と備えていない点。
・相違点3
リール駆動制御手段は、本願発明では、回転リールの回転の開始から予め定めた一定時間の経過を条件に、回転リールの回転を停止させるのに対し、引用発明では、そのような構成が明らかでない点。

(2)相違点の検討
i. 相違点1について
ボーナスフラグが発生した場合に、必ずリーチ目(特定種類の図柄の組み合わせ)を出すことにより遊技者へ当該発生を報知するか、ある程度の割合でリーチ目を出すことにより遊技者へ当該発生を報知するか、というボーナスフラグ成立に基づくリーチ目出現の割合は、ボーナス図柄出現の予告として、当該予告をする割合を任意に設定することにより遊技者の期待感をどの程度のものにするか等という遊技性を考慮して当業者が適宜決定し得た単なる設計的事項にすぎないものであるから、相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものである。

ii. 相違点2について
引用例2,3には、スロットマシンにおいて、回転リールで「リーチ」もしくは「入賞を構成する絵柄の組み合わせの一部」が揃い、入賞の可能性がある場合に、当該リーチ等の表示を見逃して入賞のチャンスを逸することがないように、リールが前記リーチ等の表示であることを判定して、遊技者へリーチが発生したことを報知する周知技術が記載されている。
このように、前記周知技術は、回転リールが入賞の可能性を有する図柄表示態様であることを遊技者に報知する報知手段であり、引用発明と前記周知技術とが、当回遊技及び次回以降遊技にかかわらず、遊技者が入賞のチャンスを見逃す不利益を未然に防止するという課題で共通するとともに、前記周知技術の報知手段が入賞の可能性が高いことを報知するものである限り、報知対象の図柄表示態様が周知技術の「リーチ表示」であるか引用発明の「リーチ目表示」であるかについては格別相違するものではないので、引用発明において、リールが、特定種類の図柄の組合せ、すなわちリーチ目で停止している場合に、当該リーチ目を見落としてボーナス図柄を出現させるチャンスを逸することがないように、遊技者にリーチ目が出現したことを報知する報知手段を備える構成とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。
そして、リーチ目及びリーチ目と同じ特定図柄が、ボーナスフラグや大当りフラグの発生の如何に関わらず出現することは、引用発明を認定した引用例1だけでなく引用例5,6や特開平3-75078号公報(16頁右下欄7-15行等参照)にも記載されており、ボーナスフラグ等が発生しないで偶然リーチ目と同じ特定図柄が出現した場合にも、ボーナスフラグ等が発生したことを擬似的に報知するものであるから、当該リーチ目の出現は、ボーナス図柄が停止制御できなかった場合と、ボーナス図柄出現の可能性とは無関係に偶然に停止表示された場合の双方を含むものである。
とすると、前述したような引用発明においてリーチ目を報知する構成を採用した際に、結果としてボーナスフラグ発生を擬似的に報知する構成を含むことは当業者であれば格別困難なく想起し得る事項であり、ボーナス図柄が出現する可能性が極めて高いという期待感を得ながらも、遊技者が回転リールの停止操作に格別の注意を払う必要があることから、スリルに富み、興趣溢れた遊技を行うことができるという効果も、当業者にとって予測可能なものである。
また、スロットマシンにおいて、ボーナス等の役が成立するための図柄を記憶しておき、停止された図柄が記憶された図柄に一致するかどうかを判定することは通常行われていること(例えば特開昭62-127086号公報(3頁右上欄20行-4頁左下欄8行、第5,6図等参照))であるから、リーチ目が出現したことの報知を実現するために、リーチ目を記憶しておくリーチ目記憶手段と、出現したリーチ目が前記リーチ目記憶手段に記憶されたリーチ目と一致するか否かを判定するリーチ目判定手段とを備える構成とすることは、当業者が適宜なし得た程度の単なる設計的事項程度のことにすぎない。

iii. 相違点3について
回転リールの回転の開始から予め定めた一定時間の経過を条件に、回転リールの回転を停止させるようにすることは、引用例4等に記載されているように周知技術であり、引用発明に当該周知技術を適用して相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。

iv. 作用効果について
本願発明における作用効果は、引用発明、引用例5,6及び周知技術に基づいて、当業者が当然予測できるものと認められる。

(3)まとめ
よって、本願発明は、引用発明、引用例5,6及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、当審で通知した拒絶の理由に対する平成16年11月25日付け意見書において、引用例1に記載されている事項は、「スロットマシンの制御プログラムを解析した結果得られたものであるということができず、外から現象を眺めた結果、自身の主観から得られた憶測を単に表現しているものにすぎない」ものである旨主張する。
しかしながら、引用例1に記載されているスロットマシンが公然に実施されたか否かを検討しているのではなく、本願出願時における技術常識に照らし、引用例1に記載されている事項より引用発明を認定するとともに、引用発明の各構成が、本願発明の各構成とどのように対応しているどうかを検討しているのである。
引用例1には、確かに、スロットマシンの内部的処理についての明示的記載がないが、ストップスイッチからのストップ信号に基づいて各回転リールの回転を停止させるリール駆動制御手段を備え、所定図柄を出現させるフラグが発生されているにもかかわらず、前記所定図柄を停止できない場合に、前記所定図柄以外の図柄を出現させるという構成は、特開昭59-40883号公報(第2頁右上欄第19行〜同頁左下欄第9行、第2頁右下欄第19行〜第3頁左上欄第6行、及び、第3頁左下欄第1〜14行参照)、及び、特開昭59-186580号公報(第1頁左欄第5行〜第2頁左上欄第5行、第3頁左下欄第2行〜右下欄第1行、及び、第6頁左下欄第11行〜右下欄第10行参照)等に記載されているように、スロットマシンにおいて一般的に行われている内部的な処理である。
したがって、本願出願時におけるスロットマシンに関する技術常識に基づき、当然に、本願発明と引用発明との一致点の認定に至るものであると認められる。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2,3に記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-25 
結審通知日 2005-01-27 
審決日 2005-03-25 
出願番号 特願平5-198127
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 鉄 豊郎
國分 直樹
発明の名称 スロットマシン  
代理人 米山 淑幸  
代理人 北村 仁  

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