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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B42D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1128769
審判番号 不服2003-11259  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-19 
確定日 2006-01-04 
事件の表示 平成 6年特許願第103342号「偽造防止媒体、その製造方法および偽造防止方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年10月31日出願公開、特開平 7-285286〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成6年4月18日の出願であって、平成15年5月13日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年6月19日付けで本件審判請求がされるとともに、同年7月18日付け(後に、同年9月4日付けで方式補正された。)で明細書についての手続補正(平成6年改正前特許法17条の2第1項5号の規定に基づく手続補正であり、以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成15年9月4日付けで方式補正された同年7月18日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正目的
本件補正前後の【請求項1】の記載を比較すると、「光回折パターン情報層」につき「前記パターン表示された領域が複数の領域に区画され、」と限定しているから、平成6年改正前特許法17条の2第3項2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認める。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。

2.補正発明の認定
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載されたとおりの次のものと認める。
「基材と、前記基材上に形成され、文字,図形,記号,模様,絵柄若しくはこれらの結合またはこれらと色彩との結合による所定の情報をパターン表示するホログラムまたは回折格子からなる光回折パターン情報層とを備える偽造防止媒体であって、前記光回折パターン情報層は、前記パターン表示された領域が複数の領域に区画され、凹凸形状にホログラムまたは回折格子が形成されている樹脂層と、前記樹脂層の凹凸形状に形成された反射層とからなることを特徴とする偽造防止媒体。」

3.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-153993号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア〜オの記載が図示とともにある。
ア.「カード基材上に、接着剤層を介して反射性薄膜層、ホログラム層、絵柄層が順次積層してなることを特徴とする絵柄付きホログラムカード。」(1頁左下欄5〜7行)
イ.「ホログラムは、物体からの光の波面を光の干渉縞として利用し、立体的な画像を再生しうるものである。このようなホログラムは、製造に高度な技術を要するところから偽造防止の手段としてクレジットカード、バンクカード等のカード類の一部に設けたり、外観の目新しさを狙つて雑誌、単行本等の本の表紙、パンフレット、カレンダー、レコードジャケット、紙製、プラスチック製のパッケージ、衣類等に設けることが試みられている。」(1頁左下欄15行〜右下欄3行)
ウ.「カードのデザインに合い、かつ、ホログラムと同調した絵柄を表面に有する、装飾性および偽造防止性の高い絵柄付きホログラムカードを提供するものである。」(1頁右下欄16〜19行)
エ.「ホログラム層5を構成する材量は、・・・ホログラムの微小凹凸形状を付与できうる合成樹脂が使用できる。」(5頁右上欄5〜9行)
オ.「絵柄とホログラムが一体に構成される絵柄付きホログラム転写シートは、支持体上に、剥離性保護層7、絵柄層6、ホログラム層5、反射性薄膜層3、接着剤層2が順次積層された構成で形成されている。・・・上記構成の絵柄付きホログラム転写シートを用い、加熱圧着または圧着により、カード基材上に、ホログラム層5の表面に絵柄を有するホログラムを形成する。」(7頁左下欄18行〜右下欄17行)

4.引用例1記載の発明の認定
記載イ,ウからみて、記載アの「ホログラムカード」は「偽造防止の手段として」のものである。
記載アの「ホログラム層」は記載エのとおり、微小凹凸形状を有する樹脂層である。
したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「カード基材上に、接着剤層を介して反射性薄膜層、微小凹凸形状を有する樹脂層からなるホログラム層、絵柄層が順次積層してなる偽造防止手段としての絵柄付きホログラムカード。」(以下「引用発明」という。)

5.補正発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用発明1の「カード基材」及び「微小凹凸形状を有する樹脂層からなるホログラム層」は、補正発明の「基材」及び「凹凸形状にホログラムまたは回折格子が形成されている樹脂層」にそれぞれ相当し、引用発明1の「反射性薄膜層」は補正発明の用語に従えば「前記樹脂層の凹凸形状に形成された反射層」であるといえる。
そして、補正発明と引用発明1とは「偽造防止媒体」である点で一致する。
したがって、補正発明と引用発明1とは、
「基材と、前記基材上に形成され、ホログラムまたは回折格子からなる層とを備える偽造防止媒体であって、前記層は凹凸形状にホログラムまたは回折格子が形成されている樹脂層と、前記樹脂層の凹凸形状に形成された反射層とからなる偽造防止媒体。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉基材上に形成され、ホログラムまたは回折格子からなる層につき、補正発明では「文字,図形,記号,模様,絵柄若しくはこれらの結合またはこれらと色彩との結合による所定の情報をパターン表示する光回折パターン情報層」と限定され、さらに補正発明は「パターン表示された領域が複数の領域に区画され、」との限定を有するのに対し、引用発明1では絵柄が形成されているものの、それはホログラム層自体によって形成されているのではなく、ホログラム層に絵柄層が積層されており、ホログラム層が複数の領域に区画されていない点。

6.相違点についての判断
本願出願前に頒布された実願昭62-161828号(実開平1-67079号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、
カ.「ICカードには多種の目的に同時に利用できるものもあり、多目的利用に際しては、利用者に利用目的を目視判別可能なように知らしめる手段を講じることが重要な課題であり、しかも前記手段は偽造防止の点からも優れたものでなくてはならない。」(2頁1〜6行)
キ.「利用目的の表示部(5)を万線状凹凸パターン群(7)が形成されたシート状基体(4)に打抜き加工する際に、万線状パターン(7)と打抜き部(5)との所定位置を一致せしめるごとく打抜くことにより、微細な偽造防止技術を講ずることが可能である。」(5頁6〜10行)
ク.「第3図はその一例を示す図である。打抜き部(5)は万線状パターン群(10)〜(14)の所定領域を占め、その打抜き位置を特徴付けることによって、極めて高度な偽造防止効果を奏するようになる。」(5頁11〜14行)
ケ.「万線状パターン群の代わりにホログラム等をホットスタンプやシール貼りで形成してもよい。」(6頁3〜5行)
との各記載があり、第3図にはカタカナの「ク」が6区画の万線状凹凸パターンに囲まれた白抜き文字として表示される様子が図示されている。
これら引用例2の記載及び図示によれば、引用例2記載の「万線状凹凸パターン群」は「文字,図形,記号,模様,絵柄若しくはこれらの結合またはこれらと色彩との結合による所定の情報をパターン表示する」ものであり、かつ「パターン表示された領域が複数の領域に区画され」ているから、万線状凹凸パターン群であるかホログラムまたは回折格子からなる光回折パターンであるかの相違を除いては、相違点に係る補正発明の構成であると認めることができる。引用例2にはさらに、記載ケのとおり、万線状凹凸パターン群をホログラムに代えてもよい旨の記載があり、かかる変更をしたものは相違点に係る補正発明の構成にほかならない。
そうである以上、引用発明1を出発点として、絵柄表示に当たり、引用例2記載の技術を採用して相違点に係る補正発明の構成に至ることは、当業者にとって想到容易といわざるを得ない。
もっとも、引用例2記載の技術において、パターン表示された領域を複数の領域に区画するのは、万線状パターン群に限られるとの反論があるかもしれないので、さらに検討を加える。
引用例1,2に記載されているわけではないけれども、ホログラムを複写すると白化又は黒化の現象が発生するため、偽造防止のうちの複写防止に有用であることは原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-18586号公報に記載されているように周知である。また、白化又は黒化により複写防止をなすに当たっては、白化又は黒化される箇所とされない箇所がランダムに混在すれば、なお一層複写防止として有効であることは当業者には自明である(ホログラムを利用するものではないが、白化又は黒化される箇所をランダムにして複写防止をする技術は特開昭64-4785号公報に記載されている。)とともに、ホログラム形成箇所が白化又は黒化されるかどうかは回折方向に依存することも前掲特開昭62-18586号公報の記載から明らかである。そうであれば、引用例2記載の技術において、万線状パターン群をホログラムに変更した場合に、複数の区画とすることが予定されていないと仮にしても、引用発明1に引用例2記載の技術を採用する際に、
ホログラムからなるパターン表示された領域を複数の領域に区画することは、有効な複写防止を図る上での設計事項程度であるから、独立特許要件の判断には影響しない。
以上述べたとおり、相違点に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、かかる構成を採用したことによる予測できないほどの作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明1及び引用例2記載の技術(又はこれに周知技術を加える)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[補正の却下の決定のむすび]
本件補正前の請求項1に係る発明を限定的に減縮した本件発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は平成6年改正前特許法17条の2で読み替えて準用する同法126条3項の規定に違反している。したがって、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により、本件補正は却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年10月3日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載されたとおりの次のものと認める。
「基材と、前記基材上に形成され、文字,図形,記号,模様,絵柄若しくはこれらの結合またはこれらと色彩との結合による所定の情報をパターン表示するホログラムまたは回折格子からなる光回折パターン情報層とを備える偽造防止媒体であって、前記光回折パターン情報層は、凹凸形状にホログラムまたは回折格子が形成されている樹脂層と、前記樹脂層の凹凸形状に形成された反射層とからなることを特徴とする偽造防止媒体。」

2.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
本願発明と引用発明1とは、
「基材と、前記基材上に形成され、ホログラムまたは回折格子からなる層とを備える偽造防止媒体であって、前記層は凹凸形状にホログラムまたは回折格子が形成されている樹脂層と、前記樹脂層の凹凸形状に形成された反射層とからなる偽造防止媒体。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉基材上に形成され、ホログラムまたは回折格子からなる層につき、本願発明では「文字,図形,記号,模様,絵柄若しくはこれらの結合またはこれらと色彩との結合による所定の情報をパターン表示する光回折パターン情報層」と限定されているのに対し、引用発明1では絵柄が形成されているものの、それはホログラム層自体によって形成されているのではなく、ホログラム層に絵柄層が積層されている点。

3.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
相違点に係る本願発明の構成は、前掲引用例2に記載されているほか、実願平2-72490号(実開平4-30981号)のマイクロフィルムに「上層のホログラム層32は、文字部分32a、マーク部分32bおよび模様部分32cを含み、それ自体がパターン化されている。」(5頁12〜15行)及び「第2のホログラム層32の絵柄によっては、その一部だけを第1のホログラム層31の上に重ねるようにすることもできる。」(8頁16〜19行)と、実願平1-35166号(実開平2-126166号)のマイクロフィルムに「ホログラム形成層4自体があるパターンを有することになるので、従来のホログラム転写箔に比べて偽造や改ざんを極めて困難なものにすることが可能となる。」(7頁9〜12行)と、並びに実願平1-84022号(実開平3-24676号)のマイクロフィルムに「最近では、・・・通常のホログラムと印刷の絵柄とを一体化させた一体型ホログラムが提案されており、これは外観上優れていると共に、偽造防止効果をより高めたものである。」(4頁7〜11行)と記載されているとおり周知である。さらに、本願発明に対して引用されたわけではないが、前掲特開昭62-18586号公報には「光学的透明変換媒体が反射層として透明薄膜層を有するホログラム又は回折格子である」(1頁左下欄13〜14行)及び「表示部4を含む基材1上に設けられた光学的透明変換媒体5とからなる被複写体1は本発明複写防止方法に用いられる被複写体の実施例に適用される。小切手からなる上記被複写体1を複写した場合、その複写物18は第6図に示されるように媒体5の設けられた一部分の複写画像が白ベタの画像19として得られ、媒体5の設けられていない部分の複写画像は通常の複写画像20として得られる。」(8頁右下欄7〜15行)と記載があるとともに、第6図には「DNP]との白抜き文字が符番19で図示されているから、白抜き文字が白ベタの画像として複写されたと認めることができ、そのためには、白抜き複写される文字パターンとしてホログラム又は回折格子が形成されていると解すべきであるから、相違点に係る本願発明の構成は同公報にも記載されているというべきである。
そうである以上、引用発明1を出発点として、絵柄表示に当たり、上記周知技術を採用して相違点に係る本願発明の構成に至ることは、当業者にとって想到容易といわざるを得ない。また、相違点に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-10-31 
結審通知日 2005-11-01 
審決日 2005-11-14 
出願番号 特願平6-103342
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B42D)
P 1 8・ 575- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 聡子  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 藤本 義仁
番場 得造
発明の名称 偽造防止媒体、その製造方法および偽造防止方法  
代理人 金山 聡  

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