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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A63F
管理番号 1128930
異議申立番号 異議2003-73482  
総通号数 74 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-02-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2005-11-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3439727号「弾球遊技機の入賞装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3439727号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3439727号の請求項1に係る発明についての特許出願は、平成5年10月21日に出願された特許出願(特願平5-287769号)の一部を特許法第44条第1項の規定により、平成12年7月18日に新たな特許出願としたものであって、平成15年6月13日にその特許権の設定登録がなされ、その後、平成15年12月26日付けで町田彬より特許異議の申立てがなされ、平成16年2月25日付けで特許異議申立て理由補充がなされ、平成17年5月30日付けで当審より取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年8月5日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(2-1)訂正の内容
ア.訂正事項a
願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1中の「弾球遊技機の入賞装置において、」の後に、「前記開閉板(29)は前記枢軸(64)を前記開口部(32)の下部近傍で枢支されており、」を挿入する。
イ.訂正事項b
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1中の「前記開閉板(29)が開状態のときに」を、「前記開閉板(29)が前記枢軸(64)廻りに前側に揺動して前記開口部(32)を開いた開状態のときに」と訂正する。
ウ.訂正事項c
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1中の「遊技球(B)を受けて停留させ」を、「遊技球(B)を受けて前記枢軸(64)よりも前側で停留させ」と訂正する。
エ.訂正事項d
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1中の「連動部材(57)に設け、」の後に、「前記停留部(67)は、前記遊技球が1個収まる程度に左右に間隔をあけて前記開閉板(29)に突設された一対の側板(68)を備え、」を挿入する。
オ.訂正事項e
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1中の「前記停留部(67)を構成する」を削除する。
カ.訂正事項f
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1中の「前記開閉板(29)側の側板(68)に対向するように」を、「前記開閉板(29)側の前記側板(68)に対して前記遊技球(B)の直径よりも小さい間隔で上下に対向するように」と訂正する。
キ.訂正事項g
特許明細書の段落【0007】中の「弾球遊技機の入賞装置において、」の後に、「前記開閉板29は前記枢軸64を前記開口部32の下部近傍で枢支されており、」を挿入する。
ク.訂正事項h
特許明細書の段落【0007】中の「前記開閉板29が開状態のときに」を、「前記開閉板29が前記枢軸64廻りに前側に揺動して前記開口部32を開いた開状態のときに」と訂正する。
ケ.訂正事項i
特許明細書の段落【0007】中の「遊技球Bを受けて停留させ」を、「遊技球Bを受けて前記枢軸64よりも前側で停留させ」と訂正する。
コ.訂正事項j
特許明細書の段落【0007】中の「連動部材57に設け、」の後に、「前記停留部67は、前記遊技球が1個収まる程度に左右に間隔をあけて前記開閉板29に突設された一対の側板68を備え、」を挿入する。
サ.訂正事項k
特許明細書の段落【0007】中の「前記停留部67を構成する」を削除する。
シ.訂正事項l
特許明細書の段落【0007】中の「前記開閉板29側の側板68に対向するように」を、「前記開閉板29側の前記側板68に対して前記遊技球Bの直径よりも小さい間隔で上下に対向するように」と訂正する。
ス.訂正事項m
特許明細書の段落【0038】中の「弾球遊技機の入賞装置において、」の後に、「開閉板29は枢軸64を開口部32の下部近傍で枢支されており、」を挿入する。
セ.訂正事項n
特許明細書の段落【0038】中の「開閉板29が開状態のときに」を、「開閉板29が枢軸64廻りに前側に揺動して開口部32を開いた開状態のときに」と訂正する。
ソ.訂正事項o
特許明細書の段落【0038】中の「遊技球Bを受けて停留させ」を、「遊技球Bを受けて枢軸64よりも前側で停留させ」と訂正する。
タ.訂正事項p
特許明細書の段落【0038】中の「連動部材57に設け、」の後に、「停留部67は、遊技球が1個収まる程度に左右に間隔をあけて開閉板29に突設された一対の側板68を備え、」を挿入する。
チ.訂正事項q
特許明細書の段落【0038】中の「停留部67を構成する」を削除する。
ツ.訂正事項r
特許明細書の段落【0038】中の「開閉板29側の側板68に対向するように」を、「開閉板29側の側板68に対して遊技球Bの直径よりも小さい間隔で上下に対向するように」と訂正する。
テ.訂正事項s
【図1】に、当接リブを示す符号72及びその引き出し線を追加する。

(2-2)訂正の目的、新規事項の有無及び拡張.変更の存否
上記訂正事項aは、開閉板(29)の構成を限定するものであり、そして、このことは、特許図面の【図6】に記載されているものと認められるから、当該訂正事項aは、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内において開閉板(29)の構成を限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、
上記訂正事項bは、開閉板(29)の開状態の構成を限定するものであり、そして、このことは、特許明細書の段落【0027】中の「開閉板29は図1に示すように、枢軸64廻りに開位置まで回動する」及び特許図面の【図1】に記載されているものと認められるから、当該訂正事項bは、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内において開閉板(29)の開状態の構成を限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、
上記訂正事項cは、遊技球(B)の停留位置を限定するものであり、そして、このことは、特許図面の【図1】に記載されているものと認められるから、当該訂正事項cは、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内において遊技球(B)の停留位置を限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、
上記訂正事項dは、停留部(67)の構成を限定するものであり、そして、このことは、特許明細書の段落【0023】中の「停留部67は遊技球Bが1個収まる程度に左右に間隔をあけて突設された側板68」に記載されているものと認められるから、当該訂正事項dは、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内において停留部(67)の構成を限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、
上記訂正事項eは、上記訂正事項dにより側板(68)が停留部(67)を構成するものであることが明らかとなったことに基づいて、これと重複する記載を削除するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、
上記訂正事項fは、側板(68)と当接リブ(72)との関係を限定するものであり、そして、このことは、特許図面の【図1】、【図2】及び【図6】に記載されているものと認められるから、当該訂正事項fは、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内において側板(68)と当接リブ(72)との関係を限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、
上記訂正事項g〜l及び上記訂正事項m〜rは、それぞれ上記訂正事項a〜fと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、
上記訂正事項sは、【図1】に、当接リブを示す符号72及びその引き出し線を追加するものであり、そして、追加した引き出し線で示す部分が当接リブ72であることは、特許図面の【図2】及び【図6】に記載されているものと認められるから、当該訂正事項sは、特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内において【図1】を訂正したものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とした図面の訂正に該当し、
いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2-3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立て及び取消理由についての判断
(3-1)本件発明
上記(2-3)の所に記したように、上記訂正が認められるので、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される下記のとおりである。
「1.内部が複数個の通路(43)に区画された開口部(32)と、横方向の枢軸(64)廻りに前記開口部(32)を開閉しかつ開状態のときに上方から落下する遊技球(B)を前記開口部(32)内に案内する開閉板(29)と、該開閉板(29)を開閉操作する開閉駆動手段(56)とを備え、前記複数個の通路(43)の何れかを特定通路(43a)とした弾球遊技機の入賞装置において、前記開閉板(29)は前記枢軸(64)を前記開口部(32)の下部近傍で枢支されており、前記開閉板(29)が前記枢軸(64)廻りに前側に揺動して前記開口部(32)を開いた開状態のときに遊技球(B)を受けて前記枢軸(64)よりも前側で停留させかつ前記開閉板(29)の閉動作時に停留中の遊技球(B)を前記特定通路(43a)へと案内する停留部(67)を前記開閉板(29)に設け、前記開閉板(29)の開放中に前記特定通路(43a)への遊技球(B)の侵入を阻止する阻止部(73)を、前記開閉駆動手段(56)と前記開閉板(29)とを連動させる連動部材(57)に設け、前記停留部(67)は、前記遊技球が1個収まる程度に左右に間隔をあけて前記開閉板(29)に突設された一対の側板(68)を備え、前記開口部(32)が形成されたフロント板(26)の上壁(33)に、前記開閉板(29)が閉状態のときに前記開閉板(29)の後面が当接する当接リブ(72)を、前記開閉板(29)側の前記側板(68)に対して前記遊技球(B)の直径よりも小さい間隔で上下に対向するように左右に間隔をあけて下方に突設したことを特徴とする弾球遊技機の入賞装置。」

(3-2)特許異議申立て理由の概要
申立人は、平成16年2月25日付け特許異議申立理由補充書において、下記の証拠方法を提出し、本件発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、取り消されるべきものであると主張している。
また、特許異議申立書には、下記甲第1号証〜甲第3号証の他に、特開平5-220260号公報、特開平5-220261号公報、特開平4-231086号公報が引用されている(なお、これらの引用例は、特許異議申立理由補充書22ページ21,22行に、甲第2号証と同様のものとして記載されている)。
甲第1号証:実願昭62-56392号(実開昭63-163874号)
のマイクロフィルム)
甲第2号証:特開平5-220259号公報
甲第3号証:特開平5-131055号公報

(3-3)取消理由の概要
当審において通知した取消理由には、上記(3-2)と同様の特許法第29条第2項違反の理由と共に、本件発明は、停留部67の左右を確実に規制する構成が不明瞭であるから、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものではなく、また、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載したものでもないという特許法第36条第5項第1,2号違反の理由が挙げられている。

(3-4)特許法第29条第2項違反について
(3-4-1)異議申立人が引用した刊行物
引用例1:実願昭62-56392号(実開昭63-163874号)
のマイクロフィルム(甲第1号証)
引用例2:特開平5-220259号公報(甲第2号証)
引用例3:特開平5-131055号公報(甲第3号証)
引用例4:特開平5-220260号公報
引用例5:特開平5-220261号公報
引用例6:特開平4-231086号公報

(3-4-2)引用例に記載された発明
i.本件出願前に国内において頒布された引用例1〔実願昭62-56392号(実開昭63-163874号)のマイクロフィルム〕には、
まず、第1の実施例として開示される、
「扉板6の中央部には、三角形状の特定入賞領域部としての仕切板7,7がパチンコ球の直径よりも幾分大きい程度の幅に対向して立設されており、この仕切板7,7の間には、扉板6が開放位置..・にあるとき落下したパチンコ球8の貯留が可能となつている」(明細書5ページ5〜11行)という記載、明細書4ページ10行〜5ページ2行、明細書5ページ11行〜6ページ1行、明細書6ページ11〜15行、明細書8ページ17行〜9ページ17行の記載、及び図面第1図〜図面第3図の記載からみて、
「内部が継続入賞口9及び通常入賞口11に区画された入賞口5と、横方向の軸廻りに前記入賞口5を開閉しかつ開状態のときに上方から落下するパチンコ球8を前記入賞口5内に案内する扉板6と、該扉板6を開閉操作するソレノイド19とを備えたパチンコ機の入賞装置において、前記扉板6は前記軸を前記入賞口5の下部近傍で軸支されており、前記扉板6が前記軸廻りに前側に揺動して前記入賞口5を開いた開状態のときにパチンコ球8を受けて前記軸よりも後側で貯留させかつ前記扉板6の閉動作時に貯留中のパチンコ球8を前記継続入賞口9へと案内する特定入賞領域部を前記扉板6に設け、前記特定入賞領域部は、前記パチンコ球の直径よりも幾分大きい程度の幅で前記扉板6に立設された一対の仕切板7を備えたパチンコ機の入賞装置。」(引用例1に記載された発明A)、
ついで、第2の実施例として開示される、
「第4図は、特定入賞領域部として仕切板7,7の他の実施例であつて、第2図に示したものに対応する対向した仕切板7,7が扉板6とは別体となつて入賞口5を形成する空間部23の内壁24に固着されている」(明細書6ページ19行〜7ページ3行)という記載、明細書10ページ15〜18行の記載、前記第1の実施例の記載、及び図面第4図の記載からみて、
「内部が継続入賞口9及び通常入賞口11に区画された入賞口5と、横方向の軸廻りに前記入賞口5を開閉しかつ開状態のときに上方から落下するパチンコ球8を前記入賞口5内に案内する扉板6と、該扉板6を開閉操作するソレノイド19とを備えたパチンコ機の入賞装置において、前記扉板6は前記軸を前記入賞口5の下部近傍で軸支されており、前記扉板6が前記軸廻りに前側に揺動して前記入賞口5を開いた開状態のときにパチンコ球8を受けて前記軸よりも後側で貯留させかつ前記扉板6の閉動作時に貯留中のパチンコ球8を前記継続入賞口9へと案内する特定入賞領域部を前記扉板6に設け、前記入賞口5が形成された基板2の内壁24に、仕切板7を、パチンコ球の直径よりも幾分大きい程度の幅で下方に固着したパチンコ機の入賞装置。」(引用例1に記載された発明B)、
さらに、第3の実施例として開示される、
「第5図は、特定入賞領域部の他の実施例であって・・・球受部25は、第6図にも示すようにパチンコ球8を保持できるように入れ物のような形状をなして、底部26と側壁27と奥壁28とからなる」(明細書7ページ4〜14行)という記載、明細書10ページ19行〜11ページ9行の記載、前記第1の実施例の記載、及び図面第5図と図面第6図の記載からみて、
「内部が継続入賞口9及び通常入賞口11に区画された入賞口5と、横方向の軸廻りに前記入賞口5を開閉しかつ開状態のときに上方から落下するパチンコ球8を前記入賞口5内に案内する扉板6と、該扉板6を開閉操作するソレノイド19とを備えたパチンコ機の入賞装置において、前記扉板6は前記軸を前記入賞口5の下部近傍で軸支されており、前記扉板6が前記軸廻りに前側に揺動して前記入賞口5を開いた開状態のときにパチンコ球8を受けて前記軸よりも後側で保持させかつ前記扉板6の閉動作時に保持中のパチンコ球8を前記継続入賞口9へと案内する球受部25を設け、該球受部25は、前記扉板6の開放中に前記継続入賞口9へのパチンコ球8の侵入を阻止し、前記球受部25は、前記パチンコ球8が1個収まる程度に左右に間隔をあけた一対の側壁27を備えたパチンコ機の入賞装置。」(引用例1に記載された発明C)、
を構成とする各発明が記載されているものと認められる。

ii.本件出願前に国内において頒布された引用例2〔特開平5-220259号公報〕には、
「作動レバー560は支軸561を軸芯として回動自在に設けられ、その一端部(後端部)が前記ソレノイド550の作動ロッド551に取り付けられている。この作動レバー560の他端側(前端側)には第1のアーム562と第2のアーム563が取り付けられている。そして、その第1のアーム562の先端部には長孔562aが設けられ、該長孔562a中に、前記開閉扉520の基部側アーム部527のピン528が挿通されている。一方、前記第2のアーム563の先端部には前記保留部材580が一体に設けられている。」(12ページ21欄46行〜22欄6行)、「ソレノイド550が励磁されると・・・保留部材580の先端側が上昇して継続入賞口533aに入った球がその保留部材580の先端部で係止されてそのまま保留され得る状態となる。従って、このとき継続入賞口533aに球が1個入ると、その球は・・・継続入賞口533a中に保留される」(12ページ22欄14〜23行)、「ソレノイド550が消磁されると・・・保留部材580の先端側が下降してその球の保留を解除される。そして、その保留を解除された球がその継続入賞口533a中を流下してその直下の継続入賞検出器533・・・に検出される」(12ページ22欄26〜32行)という記載、及び【図25】(21ページ)、【図26】(30ページ)、【図27】(30ページ)にて、パチンコ球の直径よりも幾分大きい程度の幅で継続入賞口533aを区画するように仕切板を突設する様が示されていることからみて、
「内部が継続入賞口533a及び一般入賞口534a、535aに区画された大入賞口531と、横方向のピン528廻りに前記大入賞口531を開閉しかつ開状態のときに上方から落下する遊技球を前記大入賞口531内に案内する開閉扉520と、該開閉扉520を開閉操作するソレノイド550とを備えたパチンコ遊技機の変動入賞装置500において、前記開閉扉520は前記ピンを前記大入賞口531の下部近傍で回動自在に取り付けられており、前記開閉扉520が前記ピン528廻りに前側に揺動して前記大入賞口531を開いた開状態のときに遊技球を受け入れて前記ピン528よりも後側で保留させかつ前記開閉扉520の閉動作時に保留中の遊技球を流下する継続入賞口533aを設け、前記開閉扉520の開放中に前記継続入賞口533aへ入った遊技球を係止する保留部材580を、前記ソレノイド550と前記開閉扉520とを連動させる作動レバー560に設け、前記大入賞口531において仕切板をパチンコ球の直径よりも幾分大きい程度の幅で前記継続入賞口533aを区画するように突設したパチンコ遊技機の変動入賞装置500。」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。

iii.本件出願前に国内において頒布された引用例3〔特開平5-131055号公報〕には、4ページ6欄28〜30行、5ページ8欄3〜18行、5ページ8欄42〜47行、6ページ10欄4〜16行、及び【図5】(18ページ)、【図13】(20ページ)の記載からみて、
「内部にV入賞集合樋114,115及び球寄せ樋123,124が設けられた開口72と、横方向の軸93廻りに前記開口72を開閉しかつ開状態のときに上方から落下するパチンコ球を前記開口72内に案内する開閉板3と、該開閉板3を開閉操作する駆動ソレノイド108とを備えた弾球遊技機の可変入賞球装置4において、前記開閉板3は前記軸93を前記開口72の下部近傍で回動自在に保持されており、前記開口72が形成されたベース板71の上壁に、前記開閉板3が閉状態のときに前記開閉板3の後面が当接する当接部材を下方に突設した弾球遊技機の可変入賞球装置4。」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。

iv.本件出願前に国内において頒布された引用例4〔特開平5-220260号公報〕、引用例5〔特開平5-220261号公報〕及び引用例6〔特開平4-231086号公報〕には、引用例2に記載された発明と同様の発明が記載されているものと認められる。

(3-4-3)対比及び判断
i.本件発明(前者)と引用例1に記載された発明A(後者)とを対比すると、後者の「継続入賞口9及び通常入賞口11」、「入賞口5」、「軸」、「パチンコ球8」、「扉板6」、「ソレノイド19」、「パチンコ機」、「軸支」、「貯留」、「継続入賞口9」、「特定入賞領域部」、「パチンコ球の直径よりも幾分大きい程度の幅で」、「立設」及び「仕切板7」がそれぞれの機能に照らし、それぞれ、前者の「複数個の通路(43)」、「開口部(32)」、「枢軸(64)」、「遊技球(B)」、「開閉板(29)」、「開閉駆動手段(56)」、「弾球遊技機」、「枢支」、「停留」、「特定通路(43a)」、「停留部(67)」、「遊技球が1個収まる程度に左右に間隔をあけて」、「突設」及び「側板(68)」に相当するものと認められるから、両者は、以下の点において、一致並びに相違しているものと認められる。
一致点
「内部が複数個の通路に区画された開口部と、横方向の枢軸廻りに前記開口部を開閉しかつ開状態のときに上方から落下する遊技球を前記開口部内に案内する開閉板と、該開閉板を開閉操作する開閉駆動手段とを備え、前記複数個の通路の何れかを特定通路とした弾球遊技機の入賞装置において、前記開閉板は前記枢軸を前記開口部の下部近傍で枢支されており、前記開閉板が前記枢軸廻りに前側に揺動して前記開口部を開いた開状態のときに遊技球を受けて停留させかつ前記開閉板の閉動作時に停留中の遊技球を前記特定通路へと案内する停留部を前記開閉板に設け、前記停留部は、前記遊技球が1個収まる程度に左右に間隔をあけて前記開閉板に突設された一対の側板を備えた弾球遊技機の入賞装置。」
相違点
ア.開閉板に設けられた停留部が、遊技球を、前者は、枢軸よりも前側で停留させるのに対し、後者は、枢軸よりも後側で停留させる点。
イ.前者が、開閉板の開放中に特定通路への遊技球の侵入を阻止する阻止部を、開閉駆動手段と前記開閉板とを連動させる連動部材に設けているのに対し、後者が、かかる構成を備えていない点。
ウ.前者が、開口部が形成されたフロント板の上壁に、開閉板が閉状態のときに前記開閉板の後面が当接する当接リブを、前記開閉板側の側板に対して遊技球の直径よりも小さい間隔で上下に対向するように左右に間隔をあけて下方に突設しているのに対し、後者が、かかる構成を備えていない点。

ii.そこで、これらの相違点について検討するに、
引用例1に記載された発明Bの「継続入賞口9及び通常入賞口11」、「入賞口5」、「軸」、「パチンコ球8」、「扉板6」、「ソレノイド19」、「パチンコ機」、「軸支」、「貯留」、「継続入賞口9」、「特定入賞領域部」、「基板2」、「内壁24」、「仕切板7」、「パチンコ球の直径よりも幾分大きい程度の幅で」及び「固着」がそれぞれの機能に照らし、それぞれ、前者の「複数個の通路(43)」、「開口部(32)」、「枢軸(64)」、「遊技球(B)」、「開閉板(29)」、「開閉駆動手段(56)」、「弾球遊技機」、「枢支」、「停留」、「特定通路(43a)」、「停留部(67)」、「フロント板(26)」、「上壁(33)」、「リブ(72)」、「左右に間隔をあけて」及び「突設」に相当するものと認められるから、引用例1に記載された発明Bには、「開口部が形成されたフロント板の上壁に、リブを、左右に間隔をあけて下方に突設した」構成が、
また、引用例3に記載された発明の「V入賞集合樋114,115及び球寄せ樋123,124」、「開口72」、「軸93」、「パチンコ球」、「駆動ソレノイド108」、「可変入賞球装置4」、「回動自在に保持」及び「ベース板71」がそれぞれの機能に照らし、それぞれ、前者の「複数個の通路(43)」、「開口部(32)」、「枢軸(64)」、「遊技球(B)」、「開閉駆動手段(56)」、「入賞装置」、「枢支」及び「フロント板(26)」に相当するものと認められるから、
引用例3に記載された発明には、「開口部が形成されたフロント板の上壁に、前記開閉板が閉状態のときに前記開閉板の後面が当接する当接リブを下方に突設した」構成が、それぞれ備わっているものと認められ、
そうすると、相違点ウ.の前者の構成のうち、「開口部が形成されたフロント板の上壁に、リブを左右に間隔をあけて下方に突設した」り、「開口部が形成されたフロント板の上壁に、開閉板が閉状態のときに前記開閉板の後面が当接する当接リブを突設した」りする構成は、引用例1に記載された発明Bまたは引用例3に記載された発明に備わっているものと認められる。
しかし、相違点ア.の前者の構成である、「開閉板に設けられた停留部が、遊技球を、枢軸よりも前側で停留させ」る構成、相違点イ.の前者の構成である、「開閉板の開放中に特定通路への遊技球の侵入を阻止する阻止部を、開閉駆動手段と前記開閉板とを連動させる連動部材に設けている」構成、
及び、相違点ウ.の前者の構成のうち、「開口部が形成されたフロント板の上壁に、リブを、開閉板側の側板に対して遊技球の直径よりも小さい間隔で上下に対向するように左右に間隔をあけて下方に突設した」構成は、何れの引用例に記載された発明にも備わっていないものと認められる。
なお、引用例1に記載された発明Cの「継続入賞口9及び通常入賞口11」、「入賞口5」、「軸」、「パチンコ球8」、「扉板6」、「ソレノイド19」、「パチンコ機」、「軸支」、「保持」、「継続入賞口9」、「球受部25」及び「側壁27」がそれぞれの機能に照らし、それぞれ、前者の「複数個の通路(43)」、「開口部(32)」、「枢軸(64)」、「遊技球(B)」、「開閉板(29)」、「開閉駆動手段(56)」、「弾球遊技機」、「枢支」、「停留」、「特定通路(43a)」、「停留部(67)」及び「側板(68)」に相当するものと認められるところ、引用例1に記載された発明Cの「球受部25」は、特定通路への遊技球の侵入を阻止する機能を持つが、その機能は「停留部」の機能そのものでもあり、かつ、前者において「停留部」と「阻止部」は別個のものとされているのであるから、引用例1に記載された発明Cの「球受部25」は、前者の「停留部」に相当するものであって、「阻止部」は備わっていないものと認められる。
また、引用例2,4〜6に記載された発明の「継続入賞口533a及び一般入賞口534a、535a」、「大入賞口531」、「ピン」、「開閉扉520」、「ソレノイド550」、「パチンコ遊技機」、「変動入賞装置500」、「回動自在に取り付けられ」、「保留」、「継続入賞口533a」、「作動レバー560」及び「基板」がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の「複数個の通路(43)」、「開口部(32)」、「枢軸(64)」、「開閉板(29)」、「開閉駆動手段(56)」、「弾球遊技機」、「入賞装置」、「枢支され」、「停留」、「特定通路(43a)」、「連動部材(57)」及び「フロント板(26)」に相当するものと認められるから、前者の「阻止部」も、引用例2,4〜6に記載された発明の「保留部材」も、開閉駆動手段と開閉板とを連動させる連動部材に設けられている点で共通しているが、前者の「阻止部」が特定通路への遊技球の侵入を阻止するものであるのに対し、引用例2,4〜6に記載された発明の「保留部材」が特定通路へ入った遊技球を係止するものであること、すなわち、引用例2,4〜6に記載された発明においては、特定通路と「保留部材」とによって、前者の「停留部」に相当するものが構成されていると認められること、前者において「停留部」と「阻止部」は別個のものとされていること、からすると、引用例2,4〜6に記載された発明において、その「保留部材」は、前者の「阻止部」に相当せず、「阻止部」は備わっていないものと認められる。
そして、前者は、相違点ア.の前者の構成である、「開閉板に設けられた停留部が、遊技球を、枢軸よりも前側で停留させ」る構成により、「遊技球の停留状態が遊技者に見えやすくなり、また遊技球が停留部67に停留した状態ではその遊技球の自重により開閉板29に対して開方向の力が加わって開閉板29が安定し、遊技球の停留状態が安定する」という作用効果を明らかに奏し、相違点イ.の前者の構成である、「開閉板の開放中に特定通路への遊技球の侵入を阻止する阻止部を、開閉駆動手段と前記開閉板とを連動させる連動部材に設けている」構成により、訂正明細書の段落【0038】中の「阻止部73が連動部材57と一体に作動するため、簡単な構造で連動部材57により阻止部73を直接的に駆動できる利点がある」という作用効果を奏し、相違点ウ.の前者の構成のうち、「開口部が形成されたフロント板の上壁に、リブを、開閉板側の側板に対して遊技球の直径よりも小さい間隔で上下に対向するように左右に間隔をあけて下方に突設した」構成により、訂正明細書の段落【0038】中の「当接リブ72により、開閉板29側の側板68の立設高さを低く抑えつつ、側板68と当接リブ72とで停留部67の左右を確実に規制して、停留部67に入った遊技球を特定通路43a側に確実に案内できる」という作用効果を奏するものと認められる。
したがって、前者は、後者、引用例1に記載された発明B及びC並びに引用例2〜6に記載された各発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとすることができない。

(3-5)特許法第36条第5項第1,2号違反について
上記(3-3)の停留部67の左右を確実に規制する構成は、上記(2-1)における訂正事項d〜f及びp〜rによって明確となったから、本件請求項1に係る特許は、特許法第36条第5項第1,2号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるとすることができない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠並びに取消理由によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
弾球遊技機の入賞装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】内部が複数個の通路(43)に区画された開口部(32)と、横方向の枢軸(64)廻りに前記開口部(32)を開閉しかつ開状態のときに上方から落下する遊技球(B)を前記開口部(32)内に案内する開閉板(29)と、該開閉板(29)を開閉操作する開閉駆動手段(56)とを備え、前記複数個の通路(43)の何れかを特定通路(43a)とした弾球遊技機の入賞装置において、前記開閉板(29)は前記枢軸(64)を前記開口部(32)の下部近傍で枢支されており、前記開閉板(29)が前記枢軸(64)廻りに前側に揺動して前記開口部(32)を開いた開状態のときに遊技球(B)を受けて前記枢軸(64)よりも前側で停留させかつ前記開閉板(29)の閉動作時に停留中の遊技球(B)を前記特定通路(43a)へと案内する停留部(67)を前記開閉板(29)に設け、前記開閉板(29)の開放中に前記特定通路(43a)への遊技球(B)の侵入を阻止する阻止部(73)を、前記開閉駆動手段(56)と前記開閉板(29)とを連動させる連動部材(57)に設け、前記停留部(67)は、前記遊技球が1個収まる程度に左右に間隔をあけて前記開閉板(29)に突設された一対の側板(68)を備え、前記開口部(32)が形成されたフロント板(26)の上壁(33)に、前記開閉板(29)が閉状態のときに前記開閉板(29)の後面が当接する当接リブ(72)を、前記開閉板(29)側の前記側板(68)に対して前記遊技球(B)の直径よりも小さい間隔で上下に対向するように左右に間隔をあけて下方に突設したことを特徴とする弾球遊技機の入賞装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、パチンコ機、アレンジボール機等の弾球遊技機の入賞装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
パチンコ機等の弾球遊技機において、遊技盤に装着する入賞装置として、従来、内部に複数個の通路を有する開口部の前面側に開閉板を設け、この開閉板をソレノイド等の開閉駆動手段により開閉するように構成し、所定の条件を満足した時に開閉駆動手段が作動して開閉板が開放し、上方から落下する遊技球を開閉板により開口部内の各通路に案内するようにしたものがある。
【0003】
この種の入賞装置は、複数個の通路の内、ある特定の通路を通過する遊技球を検出する検出スイッチを設け、開閉板が1回開閉動作する間に、検出スイッチが遊技球を1個検出すれば、それによって他の異なる入賞装置等を作動させるような態様で使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の開閉板は板状であって、上方から落下する遊技球をその落下位置及び方向等に応じて単に開口部内の各通路側に案内するだけであるため、開閉板が1回開閉動作する間に、場合によっては特定の通路を多数個の遊技球が通過し、検出スイッチがその都度遊技球を検出することになる。従って、開閉板が1回開閉動作する間に、検出スイッチによる遊技球の検出を最大1回のみ有効にする場合には、検出スイッチが最初の遊技球を検出したときの信号のみを記憶しておき、その後の信号をキャンセルする必要がある。
【0005】
また開閉板を経て開口部内に入った遊技球は、全て何れかの通路を通って通過して行くので、遊技者にとっては、特定の通路に遊技球が入ったか否か判断し難い。このため、特定の通路に遊技球が入れば、別の入賞装置が作動して新たな利益状態になることが判っていても、ゲーム中にそれを確実に判断し難く、場合によっては、次に大きな利益状態が得られるにも拘らず、途中でゲームを断念するようなことがある。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑み、開閉板の1回の開閉動作に対して特定通路を通る遊技球の最大個数を制限でき、しかも特定通路に遊技球が入ったか否かを遊技者が目視によって判断できる弾球遊技機の入賞装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、内部が複数個の通路43に区画された開口部32と、横方向の枢軸64廻りに前記開口部32を開閉しかつ開状態のときに上方から落下する遊技球Bを前記開口部32内に案内する開閉板29と、該開閉板29を開閉操作する開閉駆動手段56とを備え、前記複数個の通路43の何れかを特定通路43aとした弾球遊技機の入賞装置において、前記開閉板29は前記枢軸64を前記開口部32の下部近傍で枢支されており、前記開閉板29が前記枢軸64廻りに前側に揺動して前記開口部32を開いた開状態のときに遊技球Bを受けて前記枢軸64よりも前側で停留させかつ前記開閉板29の閉動作時に停留中の遊技球Bを前記特定通路43aへと案内する停留部67を前記開閉板29に設け、前記開閉板29の開放中に前記特定通路43aへの遊技球Bの侵入を阻止する阻止部73を、前記開閉駆動手段56と前記開閉板29とを連動させる連動部材57に設け、前記停留部67は、前記遊技球が1個収まる程度に左右に間隔をあけて前記開閉板29に突設された一対の側板68を備え、前記開口部32が形成されたフロント板26の上壁33に、前記開閉板29が閉状態のときに前記開閉板29の後面が当接する当接リブ72を、前記開閉板29側の前記側板68に対して前記遊技球Bの直径よりも小さい間隔で上下に対向するように左右に間隔をあけて下方に突設したものである。
【0008】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳述する。図1乃至図7は本発明をパチンコ機に採用した場合の実施例を例示する。図7はパチンコ機の全体を示し、図7において、1は前面枠で、機枠の前面側に開閉自在に枢着されている。前面枠1にはガラス扉2及び前面板3が装着され、またその後側に遊技盤4が着脱自在に装着されている。
【0009】
遊技盤4の前面には、発射された遊技球Bを案内するガイドレール5が設けられると共に、障害釘の他、入賞口6,7,8,9,10、始動口11,12、図柄表示装置13、始動ゲート14、入賞装置15、特別入球装置16、アウト口17、及び各種の表示ランプが夫々設けられている。
【0010】
図柄表示装置13は3個の図柄表示部を有し、その各図柄表示部は10種類の異なる図柄、例えば0〜9までの数字図柄をセグメント表示するようになっている。始動ゲ-ト14は図柄表示装置13の変動開始用であって、図柄表示装置13の下方近傍に配置されている。入賞装置15は所謂当たり用であって、図柄表示装置13の各図柄表示部の変動後における停止図柄が、予め設定された当たり図柄を表示する時に、所定時間だけ開状態に作動するようになっている。
【0011】
特別入球装置16は所謂大当たり用であって、図6に示すように、入賞装置15内に設けられた検出スイッチ18が遊技球Bを検出した時に、始動口11,12の何れかに既に遊技球Bが入っていれば所定時間だけ開くようになっている。
【0012】
前面板3には上皿19が装着され、この上皿19の前縁部に、球抜きレバー20が設けられている。前面枠1の下部には下皿21と発射装置22用の操作ハンドル23とが設けられ、この操作ハンドル23を操作すれば、上皿19から遊技球Bが1個づつ発射部に供給され、その遊技球Bを発射モーターの作動によりガイドレール5に沿って発射するようになっている。
【0013】
入賞装置15は、図1〜図6に示すように、フロント板26、下部カバー27、後部カバー28及び開閉板29から構成され、入賞装置15の後部を遊技盤4のルーター孔30に挿入した状態で、フロント板26を介して遊技盤4にねじ31により取り付けられている。
【0014】
フロント板26には、上部に矩形状の開口部32が設けられ、また後面に、開口部32に対応して上壁33と左右の上部側壁34とから成りかつ下方が開口したコ字状の上部周壁35が後方へ突設されている。各上部側壁34の下側には第1取付ボス36と、中間に凹部を有する枢支リブ37と、第1取付ボス36よりも低い第2取付ボス38とがこの順に突設されている。
【0015】
下部カバー27は底壁39と左右の下部側壁40とから成る上方が開口したコ字状の下部周壁41を有し、この下部周壁41とフロント板26の上部周壁35とによりフロント板26の後側に矩形状筒部を構成し、この筒部内に通路43が形成されている。
【0016】
底壁39の後端には下方に突出する後壁44が形成され、この後壁44の中央部には左右に間隔をあけて後方へ突出する一対のスイッチ取付部45が形成されている。底壁39及び各スイッチ取付部45の上部には、前後方向に特定通路43aを形成するリブ46が突設され、またスイッチ取付部45には、特定通路43aを通過した遊技球Bを検出するように、孔付きの検出スイッチ18が着脱自在に後方から装着されている。
【0017】
また下部側壁40には、図3に示すように、第2取付ボス38が挿入される溝47が形成されると共に、この溝47の後側に筒状のネジ孔48が形成され、第1取付ボス36と第2取付ボス38との間に下部側壁40を挿入した状態でネジ孔48を介して下部カバー27がフロント板26に皿ネジ49により取り付けられている。
【0018】
後部カバー28は前後方向が開口した矩形枠部50と、この矩形枠部50の前端両側に形成された取付板51とを備え、この取付板51が左右の通路43の後方を閉塞するように第1取付ボス36にネジ52により取り付けられている。矩形枠部50の下側には、特定通路43a内に突出するガイド板53が形成され、遊技球Bを検出スイッチ18の孔の方向へ案内している。また矩形枠部50の両側の下方には凸壁部54が設けられ、この凸壁部54内が開口部32に連通する球落下通路55となっている。
【0019】
矩形枠部50の内側には、ソレノイド(開閉駆動手段)56と連動部材57とが前後方向に配置され、ソレノイド56の可動鉄心58に固定された連動部材57が前後方向に移動自在とされている。ソレノイド56は矩形枠部50の側壁に両側からネジ59により取り付けられ、また可動鉄心58はバネ60により後方に付勢されている。
【0020】
連動部材57は両端が可動鉄心58に固定された取付ベース61と、この取付ベース61の前端両側から左右に突出し更にその先端が前方に突出した左右一対の係合アーム62とを備えている。そして、各係合アーム62の前端部は下方に突出し、その先端には後下方へ傾斜した係合部63が設けられ、通路43内で係合部63が前後移動するようになっている。
【0021】
開閉板29は開口部32を開閉し、かつ開状態の時に上方から落下する遊技球Bを開口部32内に案内するためのものであって、閉位置と開位置との間で前後方向に回動するように下端部の各枢軸64が枢支リブ37の凹部と下部側壁40との間で枢支されている。
【0022】
開閉板29には、左右両端に側部リブ65が、中間部分に側部リブ65よりも若干低い中間リブ66が夫々設けられ、これらのリブ65,66により開閉板29が補強されている。また開閉板29の中央には、この開閉板29が開状態の時に、開口部32内の特定通路43aに入ろうとする遊技球Bを受けて停留させ、かつ閉時に遊技球Bを特定通路43a側へと案内する停留部67が一体に設けられている。
【0023】
停留部67は遊技球Bが1個収まる程度に左右に間隔をあけて突設された側板68と、この各側板68を連結する連結板69と、この連結板69の中央部分で遊技球Bを支持する支持リブ70とを有し、開閉板29が閉塞する時に、通路43内で遊技球Bが落下して特定通路43aに入るように連結板69の後端が円弧状に短く形成されている。
【0024】
開閉板29の側部リブ65の後端には、側面視U字状で上方開放の被係合部71が設けられ、連動部材57が前方へ移動する時に、係合部63が被係合部71に後方から当接して開閉板29を開状態とし、また連動部材57が後方へ移動する時に、被係合部71を引っ掛けて開閉板29を閉状態とするように、係合部63と被係合部71とが係合している。従って、連動部材57の前後移動により開閉板29が容易に開閉する。
【0025】
なお、フロント板26の上壁33には開閉板29の側板68に対向するように左右に間隔をあけて当接リブ72が下方に突設され、開閉板29が閉状態の時に、開閉板29の後面が当接するようになっている。この当接リブ72により、開閉板29側の側板68の立設高さを低く抑えつつ、側板68と当接リブ72とで停留部67の左右を確実に規制して、停留部67に入った遊技球を特定通路43a側に確実に案内できる。側板68の立設高さを十分に高くすれば、上記のような当接リブ72がなくても同様の効果を奏することはできるが、側板68は開閉板29の開閉動作に伴って移動するため、その高さが高くなればそれだけその移動時に他の部材と干渉し易くなり、例えば他の部材の配置位置を全体に後方に移動させる必要が生じ、入賞装置が前後方向に大型化する等の新たな問題点が発生する。また、当接リブ72は、開閉板29を所定の閉位置で規制する機能をも同時に備えていることにより、これらの機能を別個の部材で実現する場合と比べて構成を簡略化できる。また取付ベース61の前端には、前方に突出する阻止部73が設けられ、この阻止部73は連動部材57が前方へ移動した時に、停留部67の後方に位置し、遊技球Bが特定通路43a側へ進入するのを阻止している。従って、阻止部73はソレノイド56に連動して阻止位置と阻止解除位置との間で前後方向に移動自在である。
【0026】
次に、上記構成における動作を説明する。通常時にはソレノイド56が消磁状態にあり、連動部材57がバネ60により後方に付勢されているので、連動部材57が後方位置にある。このため、開閉板29は、図6に示すように、枢軸64から上方に起立した閉位置にあり、開口部32を前面側から閉じている。従って、上方から落下する遊技球Bは開閉板29の前側を通過して下方に落下する。
【0027】
遊技球Bが始動ゲ-ト14に入ると、図柄表示装置13の各図柄表示部の図柄が一定時間だけ変動する。そして、図柄表示装置13の各図柄表示部の停止図柄が当たり図柄になると、入賞装置15のソレノイド56が励磁し、その可動鉄心58がバネ60に抗して前方へ移動する。これによって連動部材57が前方へ移動し、その係合アーム62前端の係合部63が開閉板29を前方へ押動するので、開閉板29は図1に示すように、枢軸64廻りに開位置まで回動する。この時、開閉板29は開口部32の下端縁に当接して規制されている。
【0028】
開閉板29が開位置まで回動すると、上方から落下する遊技球Bは、開閉板29に当たった後、この開閉板29により開口部32側に案内されるため、開口部32側へと入って行く。この時、開閉板29の中央部に落下する遊技球Bがあれば、その最初の遊技球Bは開閉板29に当たった後、図1に示す如く停留部67によって受け止められて停留する。
【0029】
従って、開閉板29が開いても、遊技球Bが直ちに特定通路43aに入ることはなく、また停留部67に遊技球Bが停留状態にあることを遊技者は目視により確認できる。また遊技球Bが停留部67に停留する時、停留部67の後方には阻止部73が位置しているため、停留部67を乗り越えて遊技球Bが特定通路43a側に進入することはない。
【0030】
開閉板29の左右両側に落下した遊技球Bは、開閉板29に当たって開口部32側に案内された後、左右両側の通路43を経て後部カバー28の球落下通路55に入り、下方に落下し回収されて行く。また停留部67に遊技球Bが1個停留すれば、その後に開閉板29の中央部側に落下する後続の遊技球Bは、停留部67に停留状態にある遊技球B、或いは開閉板29等に当たった後、停留部67の両側に振り分けられ、開口部32の両側の通路43を経て球落下通路55へと移動する。
【0031】
開閉板29が開いて所定時間経過すると、ソレノイド56が消磁し、バネ60によって可動鉄心58、連動部材57が後方へ移動するため、図6に示すように、開閉板29が閉位置まで枢軸64廻りに回動し、開口部32を閉じる。そして、停留部67に停留されていた遊技球Bが下方へ落下し、特定通路43aを経て検出スイッチ18側へと移動し、検出スイッチ18の孔から下方へと落下するので、検出スイッチ18が遊技球Bを検出する。検出スイッチ18が遊技球Bを検出した時、既に始動口11,12の何れかに遊技球Bが入っていれば、次に特別入球装置16が作動する。
【0032】
上記構成によれば、開口部32の後方にソレノイド56を設け、このソレノイド56と開閉板29とを連動させる連動部材57を前後方向に設けているため、入賞装置15を上下方向及び左右方向に対してコンパクトに構成することができ、遊技盤4の前側から入賞装置15を装着することができる。
【0033】
また、連動部材57を前後方向に摺動自在に設け、この連動部材57が前方へ移動した時に、停留部67の後方に位置して遊技球Bの特定通路43aへの進入を阻止する阻止部73を連動部材57に設けているため、停留部67を小さくでき、しかも、開閉板29を閉状態とした時、阻止部73が後方へ移動するので、開閉板29の後面の近傍で遊技球Bを下方へ落下させることができ、通路43の奥行きを多くとる必要がなく、入賞装置15の前後方向の長さを短くすることができる。
【0034】
なお、本実施例では、パチンコ機の入賞装置15として例示したが、本発明は、パチンコ機用に限定されるものではなく、アレンジボール機等における各種の入賞装置においても同様に実施できることは言うまでもない。また停留部67は遊技球Bを2個若しくはそれ以上の一定数停留させるようにしても良く、その個数は実施例の1個に限定されるものではない。更に停留部67は、遊技球Bを停留できる構造であれば、本実施例に限定されるものではない。
【0035】
なお、内部が複数個の通路43に区画された開口部32と、この開口部32を開閉しかつ開状態の時に上方から落下する遊技球Bを該開口部32内に案内する開閉板29と、この開閉板29を開閉操作する開閉駆動手段56と、複数個の通路43の内、特定通路43aを通過する遊技球Bを検出する検出スイッチ18とを備えた弾球遊技機の入賞装置において、開口部32の後方に開閉駆動手段56を設け、この開閉駆動手段56と開閉板29とを連動させる連動部材57を前後方向に設け、開閉板29が開状態の時に、上方から落下した遊技球Bを受けて停留させ、かつ開閉板29の閉時に該遊技球Bを前記特定通路43a側へと案内する停留部67を前記特定通路43aに対応して開閉板29に設けた場合には、開閉板29が1回開閉動作する間に、特定の通路43aを通過して検出スイッチ18により検出される遊技球Bの最大数を所定数、例えば1個に確実に制限でき、検出スイッチ18が不要な遊技球Bを検出することがなく、しかも特定通路43aに遊技球Bが入ったか否かを遊技者が目視により確認し確実に判断することができると共に、入賞装置15を上下方向及び左右方向に対してコンパクトに構成することができ、遊技盤4の前側から入賞装置15を容易に装着することができる。
【0036】
また連動部材57の前端部に係合部63を設け、連動部材57が前方へ移動した時に開閉板29を開状態とし、連動部材57が後方へ移動した時に開閉板29を閉状態とするように、係合部63が係合する被係合部71を開閉板29に設けた場合には、連動部材57の前後移動により開閉板29の開閉操作を容易に行うことができる。
【0037】
更に連動部材57を前後方向に摺動自在に設け、この連動部材57が前方へ移動した時に、停留部67の後方に位置して遊技球Bの特定通路43aへの進入を阻止する阻止部73を連動部材57に設けた場合には、停留部67を小さくしても特定通路43aに遊技球Bが進入することはなく、しかも、開閉板29を閉状態とした時、阻止部73が後方へ退避するので、開閉板29の後面近傍で遊技球Bを下方へ落下させることができ、入賞装置15の前後方向の長さを短くすることができる。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、内部が複数個の通路43に区画された開口部32と、横方向の枢軸64廻りに開口部32を開閉しかつ開状態のときに上方から落下する遊技球Bを開口部32内に案内する開閉板29と、該開閉板29を開閉操作する開閉駆動手段56とを備え、複数個の通路43の何れかを特定通路43aとした弾球遊技機の入賞装置において、開閉板29は枢軸64を開口部32の下部近傍で枢支されており、開閉板29が枢軸64廻りに前側に揺動して開口部32を開いた開状態のときに遊技球Bを受けて枢軸64よりも前側で停留させかつ開閉板29の閉動作時に停留中の遊技球Bを特定通路43aへと案内する停留部67を開閉板29に設け、開閉板29の開放中に特定通路43aへの遊技球Bの侵入を阻止する阻止部73を、開閉駆動手段56と開閉板29とを連動させる連動部材57に設け、停留部67は、遊技球が1個収まる程度に左右に間隔をあけて開閉板29に突設された一対の側板68を備え、開口部32が形成されたフロント板26の上壁33に、開閉板29が閉状態のときに開閉板29の後面が当接する当接リブ72を、開閉板29側の側板68に対して遊技球Bの直径よりも小さい間隔で上下に対向するように左右に間隔をあけて下方に突設しているので、開閉板29の1回の開閉動作に対して特定通路43aを通る遊技球Bの最大個数を制限できると共に、特定通路43aに遊技球Bが入ったか否かを遊技者が目視により判断できる。しかも阻止部73が連動部材57と一体に作動するため、簡単な構造で連動部材57により阻止部73を直接的に駆動できる利点がある。
更に、当接リブ72により、開閉板29側の側板68の立設高さを低く抑えつつ、側板68と当接リブ72とで停留部67の左右を確実に規制して、停留部67に入った遊技球を特定通路43a側に確実に案内できる。また、当接リブ72は、開閉板29を所定の閉位置で規制する機能をも同時に備えていることにより、これらの機能を別個の部材で実現する場合と比べて構成を簡略化できる。
【0039】
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施例を示す入賞装置の縦断面図(a)と平断面図(b)である。
【図2】
本発明の実施例を示す入賞装置の正面図である。
【図3】
本発明の実施例を示す入賞装置の側面図である。
【図4】
本発明の実施例を示す入賞装置の一部省略平面図である。
【図5】
図1(b)のA-A線断面図である。
【図6】
本発明の実施例を示す入賞装置の閉状態の側面断面図である。
【図7】
本発明の実施例を示すパチンコ機の正面図である。
【符号の説明】
18 検出スイッチ
29 開閉板
32 開口部
43 通路
43a 特定通路
56 ソレノイド(開閉駆動手段)
57 連動部材
67 停留部
73 阻止部
B 遊技球
【図面】







 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-10-18 
出願番号 特願2000-217512(P2000-217512)
審決分類 P 1 651・ 534- YA (A63F)
P 1 651・ 121- YA (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小林 英司  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 篠崎 正
辻野 安人
登録日 2003-06-13 
登録番号 特許第3439727号(P3439727)
権利者 株式会社藤商事
発明の名称 弾球遊技機の入賞装置  
代理人 谷藤 孝司  
代理人 谷藤 孝司  

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