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審決分類 |
審判 判定 審理一般(別表) 属する(申立て成立) G07F |
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管理番号 | 1129011 |
判定請求番号 | 判定2005-60057 |
総通号数 | 74 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2001-08-24 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2005-08-05 |
確定日 | 2005-12-27 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3607171号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「見本体」は、特許第3607171号発明の技術的範囲に属する。 |
理由 |
1.請求の趣旨 本件判定請求は、判定請求書に添付されたイ号図面及びイ号説明書に示す「見本体」(以下、「イ号物件」という。)が、特許第3607171号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)の技術的範囲に属するとの判定を求めるものである。 なお、被請求人に判定請求書副本を送付し、期間を指定して答弁書の提出を求めたところ、平成17年10月25日付けで判定事件答弁書が提出されている。 2.本件発明 本件発明は、その特許明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、その構成要件を符号を付して分説すると次のようになる。 「A.販売する商品を包装し蓋を備えた容器の形状を有する部材を縦に割った形状の本体と、 B.この本体の下部に連設され、かつ自動販売機の展示部の架台部に設けられたほぼ円形状の開口に係止させることが可能な横断面視ほぼC字形状の挿入部とからなり、 C.この挿入部には、その外周面よりも外側へ突出し前記開口に係止させることが可能な突条となる係止部と底面とが形成されており、 D.前記本体の左右側面を内側へ付勢して変形させることによって、自動販売機の展示部に対して着脱自在となるように構成してある見本体であって、 E.さらに、その左右両側に後方に向かって延びる延長部分が形成されている F.ことを特徴とする見本体。」 3.イ号物件 判定請求書に添付されたイ号図面及びイ号説明書からみて、イ号物件は、次の構成a〜fを備えているものと認められる。 「a.販売する商品を包装し蓋を備えた容器の形状を有する部材を縦に割った形状の本体と、 b.この本体の下部に連設され、かつ自動販売機の展示部の架台部に設けられたほぼ円形状の開口に係止させることが可能な横断面視ほぼC字形状の挿入部とからなり、 c.この挿入部には、その外周面よりも外側へ突出し前記開口に係止させることが可能な突条となる係止部と底面とが形成されており、 d.前記本体の左右側面を内側へ付勢して変形させることによって、自動販売機の展示部に対して着脱自在となるように構成してある見本体であって、 e.さらに、その左右両側並びに蓋の上面及び挿入部の底面に後方に向かって延びる延長部分が形成されている f.ことを特徴とする見本体。」 4.本件発明とイ号物件との対比・判断 (1)構成要件AないしD、及びFの充足性について イ号物件の構成aないしd、及びfが、本件発明の構成要件AないしD、及びFを充足することは、明らかである。 なお、この点については、被請求人も認めている(平成17年10月25日付け判定事件答弁書第2頁第21-25行)。 (2)構成要件Eの充足性について 本件特許明細書では、構成要件Eは、その第0045段落から第0050段落に記載した第四実施例に係る見本体D4の構成として記載されているのみである。そして、その延長部分については、これらの段落の中で、「見本体D4は、上記第一実施例の見本体Dと比べて、左右両側に後方へ向かって延びる延長部分14,14が形成されている点で異なる。」(第0045段落)、また、「より詳しくは、見本体D4は、壜タイプの容器に対応する形状の部材を、その軸心(中央)を通る面で縦に割り、後側の部分を切り落とした形状とした第一実施例の見本体Dに、その左右両側から後方へ向けて延長部分14,14を連設したものである。」(第0046段落)と記載されている。 被請求人は、これらの記載及び図9から、本件発明の延長部分は、見本体D4の左右両側においてのみ存在すると考えるのが妥当であり、イ号物件のように、左右両側のみならず、蓋の上面及び挿入部の底面を含め、見本体が全体的に後方に延びる構成は含まないと主張する(同判定事件答弁書第3頁第16行-第4頁第3行)。 しかし、第0049段落には、「上記の構成からなる見本体D4は、その左右方向の幅を細くするように変形させた後、前記挿入部5を開口3’内に挿入することで展示部3に設置できるが、このとき、前記延長部分14,14の下部には、内側への変形が残ることから、見本体D4が設置状態にあるときは、常に、延長部分14,14は元の形状へ復元しようとする。そして、この延長部分14,14の復元力によって見本体D4はより強い力でかつ確実に展示部3に固定され、また、延長部分14,14がそれぞれ左右方向に開こうとすることによって、見本体D4は常に前側に付勢され、前記開口3’の形状が図6に示すようなものであっても、見本体D4は安定した状態で設置されることになる。」と記載されており、この記載からすると、本件発明の延長部分が奏すべき作用効果は、挿入部を展示部の開口内に挿入すると、延長部分に内側への変形を生じ、その復元力により、見本体を確実に展示部に固定することと認められ、このことから、本件発明の延長部分が展示部の開口部付近に存在することは必須の要件と認められるが、そうだからといって、蓋の上面及び挿入部の底面を含め、見本体が全体的に後方に延びる構成が排除される理由はない。 また、第0048段落に、「上記の構成からなる見本体D4は、真空成形または圧空成形によって成形することができ、トムソン法により打ち抜きが可能であるので、壜タイプの容器のような複雑な形状の見本体でも簡単に、かつ能率良く成形することができる。」と記載されており、この成形方法からすると、通常は、左右両側のみならず、蓋の上面及び挿入部の底面を含めて延長部分が形成されることになり、仮に、左右両側においてのみ存在する延長部分を形成しようとすると、成形後に、蓋の上面及び挿入部の底面に形成された延長部分を切除しなければならなくなる。 したがって、構成要件Eについて、延長部分は、蓋の上面及び挿入部の底面を含め、見本体が全体的に後方に延びる構成を排除していると解する余地はなく、むしろ、このような構成を含んでいると解するのが相当である。 また、被請求人は、平成16年7月29日付け拒絶理由(乙第2号証)で引用した意匠登録第1010164号公報(乙第4号証)の見本体には、左右両側のみならず、蓋の上面及び挿入部の底面にも延長部分が存在するとして、本件発明が特許を受けたのは、その延長部分が、見本体D4の左右両側においてのみ存在し、蓋の上面及び挿入部の底面にも存在する構成は含まない点に進歩性が認められたからであると主張する(同判定事件答弁書第4頁下から第7-3行)。 しかし、乙第4号証は、見本体の係止部に底面を設けることが周知であることを示すために引用されたものであり、審査官は、乙第4号証に、見本体の左右両側のみならず、蓋の上面及び挿入部の底面にも延長部分が存在することが記載されていると認めたわけではない。乙第2号証の「補正の示唆」の(4)に「本願は、請求項2に係る発明を削除すると、拒絶の理由は解消される。」と記載されているように、審査官は、延長部分を備えた請求項1に係る発明には拒絶理由がないことを認めたのである。その際、上記したように、延長部分は、蓋の上面及び挿入部の底面を含め、見本体が全体的に後方に延びる構成を含むことを前提にしていたものと考えられる。 なお、被請求人において、本件発明には無効理由が存在するとの主張があるのであれば、無効審判を請求されたい。 更に、被請求人は、イ号物件の延長部分は、本件発明のものと比較して極めて短いため、本件特許明細書の上記第0049段落に記載した作用効果を奏することはできないと主張する(同判定事件答弁書第5頁第4-16行)。 しかし、イ号物件の延長部分が本件発明のものと比較して短いものであっても、イ号物件の挿入部を開口内に挿入すると、本件発明のものと同様に、延長部分の下部に内側への変形が残ることから、程度の差こそあれ、イ号物件の延長部分は、本件発明のものと同様の作用効果を奏するものと認められる。 以上のことから、イ号物件の構成eは、本件発明の構成要件Eを充足する。 5.むすび イ号物件の構成aないしfは、本件発明の構成要件AないしFを充足することから、イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属する。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
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判定日 | 2005-12-14 |
出願番号 | 特願2000-219216(P2000-219216) |
審決分類 |
P
1
2・
0-
YA
(G07F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 沖田 孝裕 |
特許庁審判長 |
水谷 万司 |
特許庁審判官 |
長浜 義憲 岡本 昌直 |
登録日 | 2004-10-15 |
登録番号 | 特許第3607171号(P3607171) |
発明の名称 | 見本体 |
代理人 | 千葉 太一 |
代理人 | 藤本 英夫 |