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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する H02P
管理番号 1129503
審判番号 訂正2005-39192  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-03-17 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2005-10-20 
確定日 2005-11-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3231553号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3231553号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の趣旨
本件審判の請求の要旨は、特許第3231553号発明(昭和61年5月9日に出願された特願昭61-106469号の一部を平成6年7月25日に新たな特許出願としたもの、平成13年9月14日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記(1)ないし(3)のとおり訂正することを求めるものである。
(1)特許請求の範囲第1項に
「(e)前記周波数指令および前記電圧指令を徐々に増加させて、前記誘導電動機を回転させるステップ。」
とあるのを、
「(e)前記(b)のステップにおいて、前記周波数指令および前記電圧指令を徐々に増加させて、前記誘導電動機を回転させるステップ。」
と訂正する。
(2)特許請求の範囲第2項に
「(f)前記周波数指令および前記電圧指令を徐々に増加させて、前記誘導電動機を回転させるステップ。」
とあるのを、
「(f)前記(b)のステップにおいて、前記周波数指令および前記電圧指令を徐々に増加させて、前記誘導電動機を回転させるステップ。」
と訂正する。
(3)【0007】 【課題を解決するための手段】に
「上記目的を達成する第1の発明の特徴は、誘導電動機に電力を供給するインバータを電圧指令に基づいて制御する制御装置の制御定数を、前記制御装置の前記電圧指令を出力するコンピュータにより設定する方法において、次のステップを有することにある。
(a)前記電圧指令および前記誘導電動機の周波数指令を所定値に設定するステップ、
(b)前記所定値に基づいて前記インバータから出力される交流電圧を前記誘導電動機に印加することにより、前記誘導電動機を回転させるステップ、
(c)前記回転している誘導電動機に流れる電流を検出するステップ、
(d)検出された前記電流に基づいて、前記コンピュータにより、前記誘導電動機の1次インダクタンスと関係する、前記制御装置の制御定数を設定するステップ。
上記目的を達成する第2の発明の特徴は、誘導電動機に電力を供給するインバータを直交するベクトルの電圧指令(V1d*,V1q*)に基づいて制御する制御装置の制御定数を、前記制御装置の前記電圧指令を出力するコンピュータにより設定する方法において、次のステップを有することにある。
(a)前記電圧指令および前記誘導電動機の周波数指令を所定値に設定するステップ、
(b)前記所定値に基づいて前記インバータから出力される交流電圧を前記誘導電動機に印加することにより、前記誘導電動機を回転させるステップ、
(c)前記回転している誘導電動機に流れる電流の、前記電圧指令の1つのベクトル成分に対応するベクトル成分を検出するステップ、
(d)前記電圧指令,前記周波数指令、および検出された前記電流のベクトル成分に基づいて、前記コンピュータを用い前記誘導電動機の1次インダクタンスを演算するステップ、
(e)得られた前記1次インダクタンスに基づき前記コンピュータにより前記制御装置の制御定数を演算し、この制御定数を設定するステップ。」
とあるのを
「上記目的を達成する第1の発明の特徴は、誘導電動機に電力を供給するインバータを電圧指令に基づいて制御する制御装置の制御定数を、前記制御装置の前記電圧指令を出力するコンピュータにより設定する方法において、次のステップを有することにある。
(a)前記電圧指令および前記誘導電動機の周波数指令を所定値に設定するステップ、
(b)前記所定値に基づいて前記インバータから出力される交流電圧を前記誘導電動機に印加することにより、前記誘導電動機を回転させるステップ、
(c)前記回転している誘導電動機に流れる電流を検出するステップ、
(d)検出された前記電流に基づいて、前記コンピュータにより、前記誘導電動機の1次インダクタンスと関係する、前記制御装置の制御定数を設定するステップ。
(e)前記(b)のステップにおいて、前記周波数指令および前記電圧指令を徐々に増加させて、前記誘導電動機を回転させるステップ。
上記目的を達成する第2の発明の特徴は、誘導電動機に電力を供給するインバータを直交するベクトルの電圧指令(V1d*,V1q*)に基づいて制御する制御装置の制御定数を、前記制御装置の前記電圧指令を出力するコンピュータにより設定する方法において、次のステップを有することにある。
(a)前記電圧指令および前記誘導電動機の周波数指令を所定値に設定するステップ、
(b)前記所定値に基づいて前記インバータから出力される交流電圧を前記誘導電動機に印加することにより、前記誘導電動機を回転させるステップ、
(c)前記回転している誘導電動機に流れる電流の、前記電圧指令の1つのベクトル成分に対応するベクトル成分を検出するステップ、
(d)前記電圧指令,前記周波数指令、および検出された前記電流のベクトル成分に基づいて、前記コンピュータを用い前記誘導電動機の1次インダクタンスを演算するステップ、
(e)得られた前記1次インダクタンスに基づき前記コンピュータにより前記制御装置の制御定数を演算し、この制御定数を設定するステップ。
(f)前記(b)のステップにおいて、前記周波数指令および前記電圧指令を徐々に増加させて、前記誘導電動機を回転させるステップ。」
と訂正する。

2.当審の判断
そこで、これらの訂正事項について検討すると、上記(1)の訂正は、請求項1において構成要件(e)の「前記誘導電動機を回転させるステップ」が、構成要件(b)の「前記誘導電動機を回転させるステップ」をさらに限定するものであることを明りょうにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また、上記(2)の訂正は、請求項2において構成要件(f)の「前記誘導電動機を回転させるステップ」が、構成要件(b)の「前記誘導電動機を回転させるステップ」をさらに限定するものであることを明りょうにするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また、上記(3)の訂正は、発明の詳細な説明の記載を、請求項の記載と整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記各訂正は、明細書の段落(0052)から(0056)に記載された事項に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでない。

3.むすび
したがって、本件審判の請求は、平成6年改正前の特許法第126条第1項ただし書き、及び同条第2項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
インバータ制御装置の制御定数設定方法
(57)【特許請求の範囲】
1.誘導電動機に電力を供給するインバータを電圧指令に基づいて制御する制御装置の制御定数を、前記制御装置の前記電圧指令を出力するコンピュータにより設定する方法において、次のステップを有することを特徴とするインバータ制御装置の制御定数設定方法。
(a)前記電圧指令および前記誘導電動機の周波数指令を所定値に設定するステップ、
(b)前記所定値に基づいて前記インバータから出力される交流電圧を前記誘導電動機に印加することにより、前記誘導電動機を回転させるステップ、
(c)前記回転している誘導電動機に流れる電流を検出するステップ、
(d)検出された前記電流に基づいて、前記コンピュータにより、前記誘導電動機の1次インダクタンスと関係する、前記制御装置の制御定数を設定するステップ。
(e)前記(b)のステップにおいて、前記周波数指令および前記電圧指令を徐々に増加させて、前記誘導電動機を回転させるステップ。
2.誘導電動機に電力を供給するインバータを直交するベクトルの電圧指令(V1d*・V1q*)に基づいて制御する制御装置の制御定数を、前記制御装置の前記電圧指令を出力するコンピュータにより設定する方法において、次のステップを有することを特徴とするインバータ制御装置の制御定数設定方法。
(a)前記電圧指令および前記誘導電動機の周波数指令を所定値に設定するステップ、
(b)前記所定値に基づいて前記インバータから出力される交流電圧を前記誘導電動機に印加することにより、前記誘導電動機を回転させるステップ、
(c)前記回転している誘導電動機に流れる電流の、前記電圧指令の1つのベクトル成分に対応するベクトル成分を検出するステップ、
(d)前記電圧指令,前記周波数指令、および検出された前記電流のベクトル成分に基づいて、前記コンピュータを用い前記誘導電動機の1次インダクタンスを演算するステップ、
(e)得られた前記1次インダクタンスに基づき前記コンピュータにより前記制御装置の制御定数を演算し、この制御定数を設定するステップ。
(f)前記(b)のステップにおいて、前記周波数指令および前記電圧指令を徐々に増加させて、前記誘導電動機を回転させるステップ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、インバータ制御装置の制御定数設定方法に係り、特に誘導電動機の電動機定数を演算し、演算された電動機定数に基づいて制御装置の制御定数を設定するインバータ制御装置の制御定数設定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にベクトル制御装置においては、電動機定数、例えば励磁インダンタンス及び2次時定数などに基づいて各制御定数が設定される。
【0003】
例えば、特願昭59-173713号及び特願昭58-39434号に示されるベクトル制御装置においては、電圧指令信号を演算する際の制御定数は、電動機定数の1次抵抗,漏れインダクタンス,1次インダクタンス及び2次抵抗に応じて設定する必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来は、電動機定数の設定値に基づいてそれらをマニュアル設定している。そのため、使用する電動機毎に制御定数を変更する必要があり、煩雑となり、また、電動機定数の設計値と実際値の不一致により、制御演算誤差を生じトルクが変動するなどの問題がある。
【0005】
一方、上記問題に対処するものとしては特願昭59-212543号がある。これはインバータ装置を用いて、その電流指令に基づいてインバータより電動機に電圧を印加し、そのときの電圧を検出し、該検出電圧値と電流指令値との関係より電動機定数を測定し、その結果に基づき制御定数を設定するものである。しかし、この特願昭59-212543号に示される例では定数測定用として専用に電圧検出器を設ける必要があり、また、電圧波形が歪波形であることから、検出精度が低く、すなわち、定数測定精度が低いという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、制御装置の制御定数の精度を向上できるインバータ制御装置の制御定数設定方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する第1の発明の特徴は、誘導電動機に電力を供給するインバータを電圧指令に基づいて制御する制御装置の制御定数を、前記制御装置の前記電圧指令を出力するコンピュータにより設定する方法において、次のステップを有することにある。
(a)前記電圧指令および前記誘導電動機の周波数指令を所定値に設定するステップ、
(b)前記所定値に基づいて前記インバータから出力される交流電圧を前記誘導電動機に印加することにより、前記誘導電動機を回転させるステップ、
(c)前記回転している誘導電動機に流れる電流を検出するステップ、
(d)検出された前記電流に基づいて、前記コンピュータにより、前記誘導電動機の1次インダクタンスと関係する、前記制御装置の制御定数を設定するステップ。
(e)前記(b)のステップにおいて、前記周波数指令および前記電圧指令を徐々に増加させて、前記誘導電動機を回転させるステップ。
上記目的を達成する第2の発明の特徴は、誘導電動機に電力を供給するインバータを直交するベクトルの電圧指令(V1d*,V1q*)に基づいて制御する制御装置の制御定数を、前記制御装置の前記電圧指令を出力するコンピュータにより設定する方法において、次のステップを有することにある。
(a)前記電圧指令および前記誘導電動機の周波数指令を所定値に設定するステップ、
(b)前記所定値に基づいて前記インバータから出力される交流電圧を前記誘導電動機に印加することにより、前記誘導電動機を回転させるステップ、
(c)前記回転している誘導電動機に流れる電流の、前記電圧指令の1つのベクトル成分に対応するベクトル成分を検出するステップ、
(d)前記電圧指令,前記周波数指令、および検出された前記電流のベクトル成分に基づいて、前記コンピュータを用い前記誘導電動機の1次インダクタンスを演算するステップ、
(e)得られた前記1次インダクタンスに基づき前記コンピュータにより前記制御装置の制御定数を演算し、この制御定数を設定するステップ。
(f)前記(b)のステップにおいて、前記周波数指令および前記電圧指令を徐々に増加させて、前記誘導電動機を回転させるステップ。
【0008】
【作用】
第1の発明では、制御装置の制御定数の設定に用いる電流を、誘導電動機を回転させた状態で検出している。誘導電動機を回転させる、すなわち周波数指令を与えると、回転停止状態に比べて、誘導電動機内で発生する誘導起電力が大きくなる。このため、電圧指令値と誘導起電力との誤差が小さくなり、検出電流に対する前記誤差の影響が少なくなる。従って、検出された電流に基づいて設定される、1次インダクタンスと関係する制御定数の精度が向上する。
第2の発明では、誘導電動機を回転させた状態で検出した電流の、電圧指令の1つのベクトル成分に対応したベクトル成分を用いて1次インダクタンスを演算するため、1次インダクタンスの精度が向上し、1次インダクタンスに基づいて演算される制御定数の精度も向上する。更に、誘導電動機を回転させた状態で検出した電流の、電圧指令の1つのベクトル成分に対応したベクトル成分を用いて1次インダクタンスを演算するため、この演算に要する時間が短縮され、インバータを制御するコンピュータの負荷率が低減される。
好ましくは、周波数指令および電圧指令を徐々に増加させて、誘導電動機を回転させる。周波数指令および電圧指令を徐々に増加させることにより、始動時に発生する突入電流を防止できる。
【0009】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0010】
図1には、本発明の一実施例が示されている。
【0011】
図において、2は誘導電動機1に可変周波数の交流を供給するインバータでPWM制御により1次電圧を制御する。座標変換器4は電圧指令設定器3からの電圧指令v1d*,v1q*(回転磁界座標)及び電圧位相基準信号sinw1*t,cosw1*tから3相電圧指令信号vu*,vv*,vw*を演算する。比較器6では該電圧指令信号と三角波発生器5からの搬送波とを比較しPWM信号を出力する。
これによりインバータの出力電圧は該PWM信号によりパルス幅変調制御され、その基本波瞬時値量は電圧指令信号に比例して制御される。
【0012】
一方、電動機1の3相電流iu,iv,iwが電流検出器7より検出され、座標変換器8において2軸成分の電流信号i1d,i1q(回転磁界座標)が検出される。
【0013】
また、9は定数演算器で検出電流信号i1d,i1qと電圧指令信号v1d*,v1q*と周波数指令信号w1*及び電動機に速度検出器が取り付けられている場合には、それからの速度信号wrを取り込み電動機定数を演算する。
【0014】
ここで、電圧指令設定器3や定数演算器9の処理にはマイクロプロセッサやその周辺LSIを用い、データの入出力は自動化している。
【0015】
先ず、該インバータ装置を用いた電動機定数の測定法の原理について述べる。それは運転に先立ち、インバータ装置を用いて所定の電圧を電動機に印加し、その結果発生する電動機電流に基づいて電動機定数を演算するものである。ところで、電動機電圧はv1d*,v1q*及びw1*に応じて以下に述べるようにして制御される。座標変換器4はv1d*,v1q*及び電圧位相基準信号cosw1*t及びsinw1*tに基づいて次式に従い3相交流の電圧指令v1*(vu*,vv*,vw*)を作る。
【0016】
【数1】

【0017】
【数2】

【0018】
【数3】

【0019】
そして、インバータの出力電圧V1をv1*に比例して制御する。
【0020】
一方、電動機電流i1d,i1q(回転磁界座標)は図1に示す電流検出器7及び座標変換器8を用いて次式に従い検出される。
【0021】
【数4】

【0022】
iu〜iw:電動機各相電流
図1のPWM電圧制御方式の場合においては、電動機相電流の歪は小さく正弦波に近い。そして、この電流を(4)式に従ってd軸成分i1dとq軸成分i1qに分けて検出する本方式は、基本波成分(w1)が直流信号で検出でき、その検出精度は高い。
【0023】
ところで、定常時における誘導電動機の電圧方程式をd,qの2軸理論に基づいて表わすと次式で与えられる。
【0024】
【数5】
v1d=r1iid-w1(l1+L1)i1q-w1Mi2q …(5)
【0025】
【数6】
v1q=w1(l1+L1)i1d+r1iiq+w1Mi2d …(6)
ここに、i2d,i2q:2次電流のd軸及びq軸成分
r1:1次抵抗
l1:1次漏れインダクタンス
L1:1次有効インダクタンス
M:相互インダクタンス
ここで、2次電流はかご形誘導機の場合測定できないのでこれを以下のようにして消去する。2次電流と1次電流の関係は回転子2次回路に関する電圧方程式に基づいて次式で示される。
【0026】
【数7】
ws・Mi1q=r2i2d-ws(l2+L2)i2q …(7)
【0027】
【数8】
-ws・Mi1d=ws(l2+L2)i2d+r2i2d …(8)
ここに、ws:すべり角周波数
r2:2次抵抗
l2:2次漏れインダクタンス
L2:2次有効インダクタンス
(7),(8)式を用いて(5),(6)式のi2d,i2qを消去すれば
【0028】
【数9】

【0029】
【数10】

【0030】
となる。この関係式を基にして、次に個々の電動機定数の測定原理について述べる。
【0031】
〔r1+r2′,l1+l2′の測定〕
v1d=v1d*,v1q=v1q*=0,w1=w1*,w1=ws、すなわち、v1d*を所定値に設定し、略回転停止にて一定周波数で励磁する条件を設定すれば、(9),(10)式は次式で与えられる。
【0032】
【数11】

【0033】
【数12】
0≒w1(l1+l2′)i1d+(r1+r2′)i1q …(12)
ここにr22≪w12(l2+L2)2
r2′:1次換算の2次抵抗
l2′:1次換算の2次漏れインダクタンス
さらに両式(11),(12)を連立させると、電動機抵抗及び漏れインダクタンスは次式で測定演算できる。
【0034】
【数13】

【0035】
【数14】

【0036】
しかし、本測定法で求まる定数の大きさは、1次と2次の合成値であり、特に抵抗に関しては分離した値が要求される。分離は次のようにして行う。
【0037】
〔r1の測定法〕
v1d=v1d*,v1q=v1q*=0,w1*=0、すなわち、v1d*を所定値に設定し、直流電圧を印加する条件を設定すれば、(1)〜(3)式から各相電圧は次式に比例した電圧となる。
【0038】
【数15】
vu*=v1d*,vv*=vw=-v1d*/2 …(15)
これにより、電動機に直流電流が流れ、その時検出されd,q成分の電流は(4)式より求まり、
【0039】
【数16】
i1d=iu,i1q=0 …(16)
となる。したがって、d軸成分の電圧指令値v1d*と電流検出値i1dから、1相当りの1次抵抗r1が次式より測定演算できる。
【0040】
【数17】

【0041】
なお、2次抵抗r2は前測定法で求めた(13)式の演算結果より(17)式の演算結果を差し引けば演算できる。
【0042】
〔l1+L1の測定法〕
v1d=v1d=0,v1q=v1q*αw1*,w1=w1*,ws≒0
すなわち、無負荷状態においてv1q*とw1*を所定値に設定し、いわゆるV/F一定制御運転(磁束一定条件)を行う。ここで、(10)式において無負荷条件である故i1q≒0となり、したがって(l1+L1)は次式より測定演算できる。
【0043】
【数18】

【0044】
〔T2の測定法〕
2次時定数T2は次式で与えられる。
【0045】
【数19】

【0046】
ここで、r2′は前述の測定演算の(13)と(17)式より求めることができ、また、1次換算値のl2′+L2′は概略次式で表わすことができる。
【0047】
【数20】

【0048】
ここで、l2′≒11とする。
【0049】
したがって、T2は前記(18)式の結果(l1+L1)をr2′で除算して求めることができる。
【0050】
以上述べた電動機定数の演算は定数演算器9において行われ、その演算結果に基づいて電圧指令設定器3内のベクトル制御の制御定数が設定される。なお、これらの演算や設定処理にはマイクロプロセッサを用いて自動的に行うため、次にそのプログラムの内容を図2〜図6のフローチャートより説明する。
【0051】
いま、始動スイッチが投入されると、図2に示すフローが開始され、ブロック21にて電動機定数の自動測定を行うかどうかの判別を行う。すでに測定済みで再度行う必要がない場合には、ブロック24にジャンプされ、記憶要素に書込まれた電動機定数を用いてベクトル制御に必要な演算、すなわち、後述するように電流指令i1d*,i1q及び周波数指令w1*に基づいてv1d*,v1q*を演算する。
一方、測定を実施する場合は、ブロック22において図3に示す順序に従い、電動機定数を測定,演算し、その結果を記憶要素に記憶し、次にブロック23にて上記結果を基にブロック24において用いられるベクトル制御の制御定数を演算し記憶要素に記憶する。次に、ブロック24においてベクトル制御の演算を上述の制御定数を用いて行い電動機を速度制御する。
【0052】
電動機定数の測定は、図3に示すようにブロック31〜33まで3つのモードがあり、順に、r1+r2′及びl1+l2′,r1,l1+L1の各測定を行う。各測定については前述したので、以下では各測定法の手順について図4〜図6のフローチャートを用いて説明する。
【0053】
図4では、先ずブロック41にてv1q*=0,v1d*,w1*を所定値に設定する。このとき、v1dが小さく、トルクが小さいことから電動機は回転停止のままであり前述したws=w1の条件が成立する。次にブロック42にてi1d,i1qの信号を取込み、ブロック43にて(13)式よりr1+r2′を演算、またブロック44にて(14)式に従いl1+l2′を演算する。
【0054】
図5では、先ずブロック51にてv1q*=0,w1*=0,v1d*を所定値に設定する。次にブロック52にてi1dの信号を取込みブロック53にて(17)式よりr1を演算する。さらにブロック54にてこのr1をブロック43にて演算されたr1+r2′より差し引きr2′を演算する。
【0055】
図6では、先ず、ブロック61にて、w1*とviqを電動機定数値に設定し運転する。なお始動時の突入電流を避けるため、w1*とviq*は一定レートにて立上げ加速終了後、ブロック62にてi1d,i1qの信号取込み、ブロック63にて(18)式よりl1+L1を演算する。さらにこの結果を基にブロック64にてT2を
T2=l1+L1/r2′
より演算する。
【0056】
以上の測定結果に基づいて、制御定数を設定し、その後、ベクトル制御による速度制御を行う。
【0057】
次に、電圧形ベクトル制御装置(例えば特開昭58-39434号記載)に本発明を適用した場合において、図7を参照して説明する。図において1〜10は図1と同一であるので説明は省略する。本制御方式は速度指令wr*と速度検出信号wrの偏差に応じたトルク電流指令i1q*及び励磁電流指令i1d*及び周波数指令w1*に応じて次式に従い電圧指令v1d*,v1q*を演算する。
【0058】
【数21】
v1d*=r1i1d*-(l1+l2′)w1*i1q* …(21)
【0059】
【数22】
v1q*=(l1+L1)w1*i1q*+r1*i1q* …(22)
ここで制御定数(r1,l1+l2′,l1+L1)は定数演算器9の演算結果より設定する。
【0060】
また、励磁電流指令i1q*は電動機磁束が所定値(φ=L1i1d*)になるよう励磁電流指令器32により設定される。
【0061】
一方、i1q*は速度指令wr*と実速度wrの偏差に応じて速度調節器(ASR)33の出力より得られる。なおASRのゲインは機械系の慣性モーメントJに応じて決定されるが、Jは例えば特願昭59-212543号記載の方法にて測定できる。
次に、w1*は速度検出器10よりの実速度信号wrとすべり周波数演算器34の信号ws*の和より求め、発振器35より2相信号sinw1t*,cosw1t*を出力する。ここで演算器34は次式に従い、i1d*,i1q*及びT2よりすべり角周波数ws*を演算する。
【0062】
【数23】

【0063】
ここでのT2も定数演算器9の測定結果を用いて自動設定する。
【0064】
以上述べたように、ベクトル制御装置内の電動機定数に関係する制御定数の設定に関し、本発明を用いれば、実運転前において、ベクトル制御装置の電圧制御信号及び電流検出信号により電動機定数を簡便に測定し、その結果に基づいて制御定数を自動調整するため、調整の手間が大幅に削減され、取扱い容易なベクトル制御装置を提供できる。
【0065】
図8は、本発明を応用した他の実施例であり、速度センサを用いないベクトル制御装置への適用例を示す。同装置の動作の詳細は特願昭59-173713号に述べているので、ここでは簡単に述べる。図において1,2,4〜9,31〜34は図7と同一物であるので説明は省略する。図7と異とするところは速度検出器を用いずにベクトル制御する。それにはインバータ出力電流i1と電圧位相基準信号sinw1t,cosw1*tを基にトルク成分電流i1qを検出し、その指令値i1q*との偏差に応じて周波数調節器(AFR)35で1次周波数w1*を制御する。さらにすべり周波数演算器34において、i1qからすべり角周波数ws*を演算し、w1*からそれを差し引き回転速度の推定値wrを求め速度制御する。
【0066】
本制御装置においても電動機定数は電圧指令信号及び電流検出信号より定数演算器9で演算し、これをもとに各制御部の制御定数を決定することができる。
【0067】
【発明の効果】
第1の発明によれば、検出された電流に基づいて設定される、1次インダクタンスと関係する制御定数の精度が向上する。
第2の発明によれば、1次インダクタンスの精度が向上し、1次インダクタンスに基づいて演算される制御定数の精度も向上する。更に、1次インダクタンスの演算に要する時間が短縮され、インバータを制御するコンピュータの負荷率が低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例を示すインバータ装置の構成図。
【図2】
本発明における演算内容のフローチャート。
【図3】
本発明における演算内容のフローチャート。
【図4】
本発明における演算内容のフローチャート。
【図5】
本発明における演算内容のフローチャート。
【図6】
本発明における演算内容のフローチャート。
【図7】
本発明を適用した制御装置の構成図。
【図8】
本発明の他の実施例を示すベクトル制御装置の構成図。
【符号の説明】
1…誘導電動機、2…インバータ、3…指令設定器、4,8…座標変換器、7…電流検出器、9…電動機定数演算器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2005-11-18 
出願番号 特願平6-172269
審決分類 P 1 41・ 853- Y (H02P)
最終処分 成立  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 高木 進
高橋 学
登録日 2001-09-14 
登録番号 特許第3231553号(P3231553)
発明の名称 インバータ制御装置の制御定数設定方法  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  

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