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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1129681
審判番号 不服2003-11550  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-05-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-20 
確定日 2006-01-12 
事件の表示 特願2002-196469「オフラインプリント方法、出力制御データの作成方法、およびプリント装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月 8日出願公開、特開2003-127508〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は、平成7年9月26日に出願された特願平7-247638号(以下「原出願」という。)の一部を特許法44条1項の規定により新たな特許出願としたと主張して出願されたものであって、平成15年5月20日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年6月20日付けで本件審判請求がされるとともに、同年7月16日付けで明細書についての手続補正(平成14年改正前特許法17条の2第1項3号の規定に基づく手続補正であり、以下「本件補正」という。)がされたものである。
本件補正前後の特許請求の範囲を比較すると、補正前請求項1及び請求項2記載の「出力する」を「プリント出力する」と補正(以下「補正事項1」という。)し、補正前請求項2記載の「記憶媒体に格納されたプリント機能情報」を「記憶媒体に格納されたプリンタとして備えているプリント機能情報」と補正(以下「補正事項2」という。)する(これに付随する補正が、発明の詳細な説明においてもされている。)とともに、請求項4が引用する請求項を「請求項2」から「請求項3」に補正(以下「補正事項3」という。)するものである。
補正事項1は明りようでない記載の釈明を目的とするものと認める(もっとも、本件補正前の「出力する」の直後の記載が「オフラインプリント方法」であることを考慮すると、「出力する」が「プリント出力する」の意味であることは明らかであるから、補正前の記載が明りようでないとはいえず、また補正前の記載が不明りようである旨の拒絶理由は通知されていないから、厳密にいうと補正目的違反であるが、ここでは不問に付す。)。
補正事項2についても、次の理由により明りようでない記載の釈明を目的とするものと認める。「プリント機能情報」は「記憶媒体に格納された」情報であることを考慮すれば、その情報が「プリンタとして備えているプリント機能情報」以外であれば、わざわざ記憶媒体に格納しておくことの技術的意義を理解できない。すなわち、補正前においても、「プリント機能情報」を「プリンタとして備えているプリント機能情報」と理解すべきであるから、補正事項2はそのことを明らかにしたものである。
補正事項3については、補正前請求項4に「前記チェック工程において矛盾が検出された場合、」と記載されているところ、補正前請求項2には「チェック工程」についての記載がなく、チェック工程に関する記載があるのは請求項3であるから、補正前に「請求項2記載の」とあったのは自明な誤記であって、誤記の訂正を目的とするものと認める。
また、本件補正が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたことは明らかである。
したがって、本件補正は特許法17条の2第3項及び4項の規定に違反しないから、これを却下することはできない。
本件補正が却下されないから、本願の請求項1及び請求項2に係る発明(以下、順に「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】及び【請求項2】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
本願発明1:「着脱可能な記憶媒体にオフラインで生成および格納された画像データを、前記記憶媒体にオフラインで生成および格納された前記画像データの出力制御データに基づいてプリント出力するオフラインプリント方法であって、
前記画像データを出力した後に、前記記憶媒体に格納された前記出力制御データを消去することを特徴とするオフラインプリント方法。」(なお、「画像データを出力した後」とは「画像データをプリント出力した後」の意味に解する。)
本願発明2:「着脱可能な記憶媒体にオフラインで生成および格納された画像データを、前記記憶媒体にオフラインで生成および格納された前記画像データの出力制御データに基づいてプリント出力するオフラインプリント方法に用いる前記出力制御データを作成する方法であって、
前記記憶媒体に格納されたプリンタとして備えているプリント機能情報を参照してプリント機能設定を行うための設定画面を表示する工程と、
前記表示工程により表示された前記設定画面上で設定された前記プリント機能設定に基づいて、前記出力制御データを生成する工程と、
前記生成工程により生成された前記出力制御データを前記記憶媒体に格納する工程とを有することを特徴とする出力制御データの作成方法。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-37564号公報(以下「引用例」という。)には、次のア〜クの記載又は図示がある。
ア.「本発明は、印刷データを作成する第一の情報処理装置と、印刷データを印刷する第二の情報処理装置に係り、特に、第一の情報処理装置で作成された印刷データを、第二の情報処理装置でフロッピディスク等の媒体を経たオフライン形式で受付けて印刷する場合に好適なオフラインプリントサーバ、及び、その制御方式に関する。」(2頁右下欄10〜16行)
イ.「印刷データが格納されたフロッピディスク等の媒体を印刷データを印刷しようとするプリンタ装置の接続されている第二の情報処理装置にセットした後、印刷機能の呼出し、印刷しようとする印刷データの選択、印刷部数、用紙の選択、縮小拡大印刷等の指定、プリンタの選択、両面/片面等の印刷形式の指定等の印刷条件設定、印刷の指示等の所定の操作を行なわなければらならい。さらに、その操作は、印刷データを作成した第一の情報処理装置、つまり、利用者が使い慣れている情報処理装置と異なる場合が多い。このため、複雑な印刷条件により印刷する場合などは慣れない操作を行なわなければらならい煩わしてがあり、また、第二の情報処理装置を始めて使用するには、使用経験のない装置を利用する際の利用意志の縮退による利用者数の低迷という問題点があった。
本発明の目的は、フロッピディスク等の媒体に格納された印刷データを印刷する第二の情報処理装置における利用者の操作の煩わしさを低減することにある。」(3頁右上欄4行〜左下欄3行)
ウ.「上記目的は、印刷するデータの作成を行なう第一の情報処理装置、及び、データの内容を印刷する第二の情報処理装置において、次に述べる手段を設けることにより達成される。
(第一の情報処理装置)・・・印刷データ、印刷しようとする印刷データの選択指示、及び、印刷条件を格納するための可搬な第一の記憶媒体。・・・印刷データの選択指示、及び、印刷条件を第一の記憶媒体に格納する第二の格納手段。
(第二の情報処理装置)・・・印刷データの選択指示に対応する印刷データ、及び、印刷条件を読出す第二の読出し手段。・・・印刷条件に応じて、印刷データの印刷を行なう印刷手段。」(3頁左下欄5行〜右下欄13行)
エ.「フロッピディスク120は、・・・印刷文書選択指示データ503、文書データ504、及び印刷条件データ505からなる。印刷文書選択指示データ503、文書データ504、及び印刷条件データ505は、ファイル形式でフロッピディスク120に格納される。・・・第5図は文書フロッピディスクのデータ構成を示している。・・・印刷文書選択指示データ503は、フロッピディスク120に格納されている文書データ504の内、どの文書を印刷するのかを示しており、印刷する各文書データ504のファイル名が全て記述されている。文書データ504は、文字、図形、イメージ等からなる文書を表現するデータが格納されており、ワードプロセッサ301a-b、または、302a-bで作成される。印刷条件データ505は、印刷文書選択指示データ503に記述された各文書データのファイル毎に用意されており、対応する文書データ504を印刷する際の印刷部数等の印刷条件が記述されている。」(5頁左上欄10行〜右上欄13行)
オ.「オフライン印刷が指定されたならば、印刷を指示された文書データ504の格納場所が固定ディスク206内か、またはフロッピディスク装置207に装着されているフロッピディスク120内かを調べ(ステップ107)、文書データ504が固定ディスク206内に格納されている場合には、文書データ504をフロッピディスク装置207に装着されているフロッピディスク120に複写する(ステップ108)。」(6頁左上欄11〜18行)
カ.「フロッピディスク120に格納されているデータがプリントサーバ303で処理不可能な場合は、その旨のエラーメッセージをディスプレイ装置215に5秒間表示し(ステップ160)、フロッピディスク120をフロッピディスク装置217から吐きだす(ステップ161)。フロッピディスク120に格納されているデータがプリントサーバ303で処理可能な場合は、フロッピディスク120から印刷文書選択指示データ503を読出す(ステップ153)。そして、印刷文書選択指示データ503に対応する文書データ504及び印刷条件データ505を読出して(ステップ155、156)、印刷キュー800に登録するとともに固定ディスク装置216に複写し(ステップ157)、印刷プログラム430を起動する(ステップ159)。」(6頁左下欄11行〜右下欄5行)
キ.「文書データ504を印刷条件データ505に従って印刷する(ステップ431)。」(7頁左上欄1〜2行)
ク.印刷条件設定画面を示す第7図には、印刷条件として「印刷部数」のほか、「袋とじ印刷」、「用紙」等が図示されており、袋とじ印刷をするかどうか、及び用紙サイズが印刷条件に含まれることがみてとれる。

2.引用例記載の発明の認定
記載又は図示ア〜クを含む引用例の全記載及び図示によれば、オフライン形式での印刷方法(すなわち、オフラインプリント方法)は次のようなものである。
「第一の情報処理装置により、文書データ、印刷文書選択指示データ及び前記文書データごとの印刷条件データをフロッピディスク等の可搬な記憶媒体に格納し、
前記記憶媒体を第二の情報処理装置に装着し、前記印刷文書選択指示データに対応する前記文書データ及び前記印刷条件データを読出し、前記印刷条件データに従って印刷するオフラインプリント方法。」(以下「引用発明A」という。)
また、引用例に記載された、可搬な記憶媒体への印刷条件データ作成方法は次のようなものである。
「フロッピディスク等の可搬な記憶媒体に文書データ、印刷文書選択指示データ及び印刷条件データを格納するための印刷条件データの作成方法であって、
前記可搬な記憶媒体を印刷を行う第二の情報処理装置とは別の第一の情報処理装置に装着して、印刷部数等の印刷条件を設定し、設定された印刷条件の印刷条件データを前記可搬な記憶媒体に格納する印刷条件データの作成方法。」(以下「引用発明B」という。)

3.本願発明1と引用発明Aとの一致点及び相違点の認定
引用発明Aの「フロッピディスク等の可搬な記憶媒体」が、第一の情報処理装置及び第二の情報処理装置に対して着脱可能であることは自明である。
引用発明Aの「文書データ」及び「印刷条件データ」は、可搬な記憶媒体にオフラインで生成および格納されたデータであり、それぞれ本願発明1の「画像データ」及び「出力制御データ」に相当する。
引用発明Aの「印刷条件データ」は「文書データ」ごとに作成されており、「印刷条件データに従って印刷する」のだから、引用発明Aを「画像データの出力制御データに基づいてプリント出力するオフラインプリント方法」ということができる。
したがって、本願発明1と引用発明Aとは、
「着脱可能な記憶媒体にオフラインで生成および格納された画像データを、前記記憶媒体にオフラインで生成および格納された前記画像データの出力制御データに基づいてプリント出力するオフラインプリント方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉本願発明1では「前記画像データを出力した後に、前記記憶媒体に格納された前記出力制御データを消去する」のに対し、引用発明Aがそのようにするのかどうか明らかでない点。

4.本願発明2と引用発明Bとの一致点及び相違点の認定
引用発明Bは、引用発明Aの「オフラインプリント方法」に用いることを前提としたものであり、「印刷条件データ」と「出力制御データ」に相違はない。
引用発明Bが「出力制御データを生成する工程」及び「前記生成工程により生成された前記出力制御データを前記記憶媒体に格納する工程」を有することは明らかである。
したがって、本願発明2と引用発明Bとは、
「着脱可能な記憶媒体にオフラインで生成および格納された画像データを、前記記憶媒体にオフラインで生成および格納された前記画像データの出力制御データに基づいてプリント出力するオフラインプリント方法に用いる前記出力制御データを作成する方法であって、
前記出力制御データを生成する工程と、
前記生成工程により生成された前記出力制御データを前記記憶媒体に格納する工程とを有する出力制御データの作成方法。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点2〉出力制御データの生成に当たり、本願発明2が「記憶媒体に格納されたプリンタとして備えているプリント機能情報を参照してプリント機能設定を行うための設定画面を表示する工程」及び「前記表示工程により表示された前記設定画面上で設定された前記プリント機能設定に基づいて、前記出力制御データを生成する工程」を有するのに対し、引用発明Bがこれらの工程を有するかどうか明らかでない点。

5.相違点についての判断及び本願発明1,2の進歩性の判断
(1)相違点1の判断及び本願発明1の進歩性の判断
引用発明Aの「可搬な記憶媒体」の代表例はフロッピディスクであり、これは格納・消去を繰り返すことができる記憶媒体である。
引用例の記載オによれば、文書データをフロッピディスクに格納する態様として、固定ディスク内に格納されている文書データをフロッピディスクに複写することが予定されており、これは当該文書データをオフラインで印刷することを目的とするものと解するのが自然であり、そうである以上、再度の印刷予定がある場合を除き、印刷終了した文書データをフロッピディスクにとどめておく必要性がないことは明らかである。引用発明Aでは「印刷文書選択指示データ」をも可搬な記憶媒体に格納しており、直ちに印刷する予定がない文書データをも格納しているけれども、印刷が終了しかつ再度の印刷予定がない文書データまで、格納しておかなければならない理由もない。
さらに、フロッピディスク等の可搬な記憶媒体の記憶容量には限界があるから、印刷が終了しかつ再度の印刷予定がない文書データを残しておいたのでは、記憶容量が限界に達するおそれもあるから、印刷が終了しかつ再度の印刷予定がない文書データを消去することに困難性があるとはいえない。実際、印刷のためのデータであるかどうかは別として、フロッピディスクに格納したデータのうち不要となったデータを消去することは、当業者であるとないとを問わず日常経験していることがらであるから、引用発明Aにおいて、印刷終了後、すなわち、画像データを出力した後に文書データを消去することには何ら困難性がないことは明らかである。そればかりか、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-150915号公報(原審における引用文献4)に「印字を行なわせる。その後、その外部記憶装置内の特定のディレクトリの印字し終えたファイルを消去する。」(1頁【要約】欄)と記載があることからみても、上記判断は妥当である。そして、印刷条件データは文書データごとに作成されているのだから、文書データを消去する場合に印刷条件データを同時に消去することは設計事項というよりない。
この点請求人は「印字後に再度、記憶媒体をプリンタに装着した場合においても、不本意な自動印刷を行うことがないという利点を有する。したがって、不本意な自動印刷を抑制するためにユーザの確認を取るなどの操作を行う必要も無く、自動印刷を犠牲にすることもない。」(平成15年7月16日付け手続補正書(審判請求書を補正対象とした)3頁41〜44行。以下「主張1」という。)、「印字終了後、記憶媒体に残された画像データに対して、新たに出力制御データを生成して記憶媒体に格納することにより、前記画像データを生成、格納したホスト以外の別のホストによっても再利用することが可能となる。」(同書同頁44〜47行。以下「主張2」という。)及び「引用発明4では、出力制御データに相当するものは、外部記憶装置の特定ディレクトリ内のファイルを読み出すイニシエータ処理部(24)、或いは実際の印字処理として、プログラムROM(7)又はICカード(11)に存在すると考えられるが、これらに記憶されたデータは消去の対象となっていない。」(同書4頁30〜33行。以下「主張3」という。)と主張している。
主張1は、「ユーザの確認を取るなどの操作を行う必要も無く」との主張からみて、印字終了後に自動的に出力制御データを消去することを前提とするものと解される(自動消去でなければ、消去時にユーザの確認等が必要である。)が、自動的に消去することは本願発明1の発明特定事項ではないから、本願発明1の要旨に基づかない主張であるばかりか、1回印刷すれば再度印刷しないようにするか、再度印刷するかは設計事項であり、再度印刷しない画像データだけを対象とするのであれば、自動消去は設計事項である。
主張2は、出力制御データだけを消去し、画像データを消去しないことを前提とした主張であるが、画像データを消去しないことは本願発明1の発明特定事項ではない(実際、発明の詳細な説明には「メモリカードに格納されていたプリントジョブコマンドファイル及び画像データファイルを消去する。」(段落【0054】)と記載されている。)から、本願発明1の要旨に基づかない主張である。そればかりか、原出願の願書に最初に添付した明細書には、「出力制御情報及び画像データを消去」(【請求項7】、段落【0016】及び段落【0057】)並びに「メモリカードに格納されていたプリントジョブコマンドファイル及び画像データファイルを消去」(段落【0039】)と記載されている一方で、出力制御データのみを消去することは記載されていないから、本願出願はそもそも違法な分割出願(本願発明1が出力制御データだけを消去し、画像データを消去しない方法を含むことは明らかである。)であって、出願日が遡及しないものである。もちろん、出願日非遡及については請求人に通知していないから、審決の直接的又は間接的理由とするものではない。
主張3については、前掲特開平5-150915号公報には、印刷済みのファイルを消去することが記載されているのであって、印刷済みのファイルを消去する場合に、同ファイル専用の出力制御データを削除することは、前示のとおり設計事項であるから、同文献に出力制御データを消去することが記載されているかどうかは、進歩性判断に当たり検討する必要のないことがらである。
以上のとおり、請求人の主張1〜3はすべて失当であって、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を採用することは当業者にとって容易であり、同発明特定事項を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明1は引用発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

(2)相違点2の判断及び本願発明2の進歩性の判断
印刷条件設定に当たり、プリント機能設定を行うための設定画面を表示し、表示された設定画面上で設定されたプリント機能設定に基づいて印刷条件設定を行うこと、すなわち出力制御データを作成することは周知であり(例を挙げるまでもないが、後記周知例1,2にも記載されているとおりである。)、この周知技術を引用発明Bに採用することは設計事項というよりない。
そうすると、問題とすべきは、設定画面を表示するに当たり、「記憶媒体に格納されたプリンタとして備えているプリント機能情報を参照」することが当業者にとって想到容易かどうかの点だけである。
引用発明Bの印刷条件として例示されている「印刷部数」は「プリンタとして備えているプリント機能」には依存しないものであるから、印刷条件を「印刷部数」等「プリンタとして備えているプリント機能」に依存しないものだけとする場合には、プリンタとして備えているプリント機能情報を参照する必要はないであろう。しかし、引用例には、印刷条件として「印刷部数」のほかに、袋とじ印刷をするかどうか、及び用紙サイズが例示されており、このほかにも、印刷条件設定項目としては、両面印刷の設定、ソータの使用等が例を挙げるまでもなく周知であり、これら印刷条件設定項目についてはプリンタがサポートしている場合とサポートしていない場合があること、換言すれば、設定どおりにプリントされるかどうかは使用するプリンタに依存することが明らかである。
原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-114767号公報(以下「周知例1」という。)には「印刷装置2はホスト7へ用紙データを送信する。ホスト1は受信した用紙データを記憶する。次にステップ52では、表示画面11に印刷仕様表示選択画面を表示する。・・・表示指定のある場合はステップ60で使用用紙サイズ、用紙送り方向を用紙データに基き画面表示する。」(3頁左上欄7行〜右上欄4行)と記載があり、同じく引用された特開平6-274294号公報(以下「周知例2」という。)には「接続されたプリンタのプリントモードの設定状態を画面に表示するするとともに、表示された複数の給紙位置候補の中から選択された給紙位置を画面に表示するモード表示手段と、このモード表示手段により表示された給紙位置の用紙サイズを設定変更可能な用紙サイズ候補を表示する用紙サイズ表示手段と、この用紙サイズ表示手段により表示された用紙サイズ中から所望の用紙サイズを指示する指示手段と、この指示手段による指示に基づい既に選択された給紙位置の用紙サイズを選択された用紙サイズに変更し、該変更された用紙サイズを含む選択可能な複数の用紙サイズを最新のプリントモードとして記憶媒体に順次更新可能に登録するプリントモード登録手段とを有することを特徴とする情報処理装置。」(【請求項4】)と記載がある。これら周知例1,2記載の「用紙データ」や「給紙位置の用紙サイズ」は、「プリンタとして備えているプリント機能情報」の例であり、周知例1,2には「プリンタとして備えているプリント機能情報」が「ホスト」又は「情報処理装置」(これらは、引用発明Bの「第一の情報処理装置」に相当する。)に通知されることが記載されている。
引用発明Bにおいて、印刷条件設定項目に「プリンタとして備えているプリント機能」に依存する項目(袋とじの設定、用紙サイズ、両面印刷の設定、ソータの使用等)を含ませることは、それを実現することに技術的困難性がない限り当業者にとって想到容易といわざるを得ない。そして、「プリンタとして備えているプリント機能」に依存する項目を印刷条件設定項目に含ませるためには、「第一の情報処理装置」が「プリンタとして備えているプリント機能情報」を認識しなければならないことはいうまでもなく、逆にそのような認識ができれば技術的困難性はない。
上記周知例1では、「プリンタとして備えているプリント機能情報」が「ホスト」に送信されているのであるが、これは「印刷装置」と「ホスト」がオンラインで接続されていることが前提となっており、印刷データは当然ホストから印刷装置に送信される。ところで、引用発明Bは、第一の情報処理装置と第二の情報処理装置がオンラインで接続されていないことが前提であり、そのため印刷データは、第一の情報処理装置→可搬な記憶媒体→第二の情報処理装置の順に可搬な記憶媒体を介して、第一の情報処理装置から第二の情報処理装置に通知される仕組みになっている。すなわち、第一の情報処理装置と第二の情報処理装置がオンラインで接続されているならば、第一の情報処理装置から第二の情報処理装置に直接送信するのであるが、それが不可能なため代替手段として、可搬な記憶媒体を介しているのである。そして、「プリンタとして備えているプリント機能情報」は、印刷データとは逆に第二の情報処理装置から第一の情報処理装置に通知されるべき情報であるが、直接送信できないとしても、印刷データと同様に可搬な記憶媒体を介することで通知できることは自明というべきである。したがって、引用発明Bを出発点とした場合であっても、「第一の情報処理装置」が「プリンタとして備えているプリント機能情報」を認識できることは明らかであり、またそのためには「可搬な記憶媒体」に「プリンタとして備えているプリント機能情報」を格納し、これを第一の情報処理装置で参照しなければならない。
以上のとおりであるから、相違点2に係る本願発明2の発明特定事項を採用することは当業者にとって容易であり、同発明特定事項を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
なお請求人は「本願請求項2に係る発明では、・・・プリント機能情報は、ホストへ移動して記憶媒体から消えてしまうのではなく、記憶媒体にそのまま保持される。・・・一旦プリンタ情報を記憶媒体に格納しておけば、出力制御データを生成する度にプリンタにアクセスする必要がなく、また、記憶媒体に格納されたプリント機能情報を複数のホストで使用することが可能となり、オフラインプリントの利便性がさらに向上し、加えて、プリンタ機能設定画面を表示して画面上で設定を行うことで、設定が容易になる、という周知技術1および周知技術2では得られない顕著な効果を奏する。」(平成15年7月16日付け手続補正書(審判請求書を補正対象とした)5頁3〜11行)と主張するが、プリント機能情報が記憶媒体にそのまま保持されることは、本願発明2の発明特定事項ではないから、本願発明2の要旨に基づかない主張であり失当である。仮に、そのような限定があったとしても、プリント機能が変更されない限り、プリント機能情報を記憶媒体から削除する必要はなく、別の画像データに対して同一プリンタでプリントする際に利用できることは明らかであるから、プリント機能情報を記憶媒体に残すことは設計事項というべきである。
したがって、本願発明2は引用発明B及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明1及び本願発明2が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-10 
結審通知日 2005-11-15 
審決日 2005-11-28 
出願番号 特願2002-196469(P2002-196469)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 立澤 正樹  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 國田 正久
藤本 義仁
発明の名称 オフラインプリント方法、出力制御データの作成方法、およびプリント装置  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  

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