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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1129694
審判番号 不服2003-22949  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-04-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-26 
確定日 2006-01-12 
事件の表示 特願2002-196467「オフラインプリント方法、出力制御データの作成方法、およびプリント装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月23日出願公開、特開2003-118178〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は、平成7年9月26日に出願された特願平7-247638号(以下「原出願」という。)の一部を特許法44条1項の規定により新たな特許出願としたと主張して出願されたものであって、平成15年10月24日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年11月26日付けで本件審判請求がされるとともに、同年12月24日付けで明細書についての手続補正(平成14年改正前特許法17条の2第1項3号の規定に基づく手続補正であり、以下「本件補正」という。)がされたものである。
本件補正後の特許請求の範囲及び本件補正前(平成15年7月16日付けの手続補正は原審において却下されたから、本件補正前とは平成15年2月14日付け手続補正後のことである。)の請求項1,2,6,7,11,12,16の記載は次のとおりである。
(本件補正後の特許請求の範囲)
【請求項1】 画像データ、および前記画像データのプリント出力制御データを着脱可能な記憶媒体に生成および格納する生成格納工程と、
前記記憶媒体に記憶された前記画像データを、前記記憶媒体に記憶された前記プリント出力制御データに基づいてオフラインでプリント出力するプリント出力工程とを有し、
前記生成格納工程において、複数の画像データファイルフォーマットより選択された画像データファイルフォーマットに基づいて、前記画像データの前記プリント出力制御データを前記記憶媒体に生成および格納し、
前記プリント出力制御データは、画像データファイル名とは別に、前記画像データの前記画像データファイルフォーマットに関する情報を有することを特徴とするオフラインプリント方法。
【請求項2】 着脱可能な記憶媒体に記憶された画像データを、前記記憶媒体に記憶された前記画像データのプリント出力制御データに基づいてプリント出力するオフラインプリント方法に用いる前記プリント出力制御データの作成方法であって、
前記画像データを前記記憶媒体にオフラインで生成および格納するとともに、複数の画像データファイルフォーマットより選択された画像データファイルフオーマットに基づいて、前記画像データの前記プリント出力制御データを前記記憶媒体にオフラインで生成および格納し、
前記プリント出力制御データは、画像データファイル名とは別に、前記画像データの前記画像データファイルフォーマットに関する情報を有することを特徴とするプリント出力制御データの作成方法。
【請求項3】 着脱可能な記憶媒体にオフラインで生成および格納された画像データを、複数の画像データファイルフォーマットより選択された画像データファイルフォーマットに基づいて前記記憶媒体にオフラインで生成および格納された前記画像データのプリント出力制御データに基づいてプリント出力し、かつ、前記プリント出力制御データは、画像データファイル名とは別に、前記画像データの前記画像データファイルフォーマットに関する情報を有することを特徴とするオフラインプリント方法。
【請求項4】 請求項3記載のオフラインプリント方法を用いたことを特徴とするプリント装置。

(本件補正前の請求項1,2,6,7,11,12,16)
【請求項1】 画像データ、および前記画像データの出力制御データを着脱可能な記憶媒体に生成および格納する生成格納工程と、
前記記憶媒体に記憶された前記画像データを、前記記憶媒体に記憶された前記出力制御データに基づいてオフラインで出力する出力工程とを有し、
前記生成格納工程において、複数の画像データファイルフォーマットより選択された画像データファイルフォーマットに基づいて、前記画像データの前記出力制御データを前記記憶媒体に生成および格納することを特徴とするオフラインプリント方法。
【請求項2】 前記出力制御データは、画像データファイル名とは別に、前記画像データの前記画像データファイルフォーマットに関する情報を有することを特徴とする請求項1記載のオフラインプリント方法
【請求項6】 着脱可能な記憶媒体に記憶された画像データを、前記記憶媒体に記憶された前記画像データの出力制御データに基づいて出力するオフラインプリント方法に用いる前記出力制御データの作成方法であって、
前記画像データを前記記憶媒体にオフラインで生成および格納するとともに、複数の画像データファイルフォーマットより選択された画像データファイルフォーマットに基づいて、前記画像データの前記出力制御データを前記記憶媒体にオフラインで生成および格納することを特徴とする出力制御データの作成方法。
【請求項7】 前記出力制御データは、画像データファイル名とは別に、前記画像データの前記画像データファイルフォーマットに関する情報を有することを特徴とする請求項6記載の出力制御データの作成方法。
【請求項11】 着脱可能な記憶媒体にオフラインで生成および格納された画像データを、複数の画像データファイルフォーマットより選択された画像データファイルフォーマットに基づいて前記記憶媒体にオフラインで生成および格納された前記画像データの出力制御データに基づいて出力することを特徴とするオフラインプリント方法。
【請求項12】 前記出力制御データは、画像データファイル名とは別に、前記画像データの前記画像データファイルフォーマットに関する情報を有することを特徴とする請求項11記載のオフラインプリント方法。
【請求項16】 請求項11から15のいずれか一項記載のオフラインプリント方法を用いたことを特徴とするプリント装置。

これらを比較すると、本件補正後の請求項1は、補正前請求項1記載の発明特定事項と請求項1を引用した請求項2記載の発明特定事項を発明特定事項としている。したがって、補正前の請求項1が削除され、それに伴い請求項2の項番を繰り上げるとともに、独立形式に改められたと解さねばならない。補正前の請求項3〜5は削除された。同様の理由により、本件補正後の請求項2,3は、補正前の請求項7,12の項番を繰り上げ、独立形式に改めたものであり、補正前の請求項6,8〜11,13〜15は削除された。本件補正後の請求項4は本件補正前の請求項16に対応しており、項番の変更及び補正前請求項11,13〜15削除に伴い、引用請求項が補正前の請求項12に対応する補正後請求項3に変更されたものである。
また、本件補正後の請求項1では補正前の「出力制御データ」(4箇所)及び「出力する出力工程」が「プリント出力制御データ」及び「プリント出力するプリント出力工程」と、請求項2では補正前の「出力制御データ」(4箇所)及び「出力する」がそれぞれ「プリント出力制御データ」及び「プリント出力する」と、並びに請求項3では補正前の「出力制御データに基づいて出力」及び「出力制御データ」が「プリント出力制御データに基づいてプリント出力」及び「プリント出力制御データ」と補正されているところ、これらの補正は明りようでない記載の釈明を目的とするものと認める(もっとも、補正前の各発明が「オフラインプリント方法」又は「出力制御データに基づいて出力するオフラインプリント方法に用いる前記出力制御データの作成方法」であることを考慮すると、補正前の記載が明りようでないとはいえず、明りようでない旨の拒絶理由が通知されたわけでもないから、厳密にいえば特許法17条の2第4項4号に該当しないかもしれないが、ここでは不問に付す。仮に、このことを理由に本件補正を却下するとしても、補正前請求項12に係る発明と後記本願発明とは実質的に同一発明であるから、審決の結論には影響を及ぼさない。)。
また、本件補正が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたことは明らかである。
したがって、本件補正は特許法17条の2第3項及び4項の規定に違反しないから、これを却下することはできない。
本件補正が却下されないから、本願の請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項3】に記載された事項によって特定されるとおりのものと認めることができる、それは上記のとおりである。

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-52161号公報(以下「引用例」という。)には、次のア〜エの記載が図示とともにある。
ア.「信号ケーブルを介して接続されるホストコンピュータとの間で信号を授受するためのホストインタフェースと、このホストインタフェースを介して前記ホストコンピュータから受け取つた画像情報、文字情報、制御情報などを解釈して画像メモリ上に画像データを展開する第1の印刷データ生成手段と、着脱自在に装着される可搬型メモリに結合してそのメモリにアクセスするためのメモリインタフェースと、このメモリインタフェースに前記可搬型メモリが装着されたことに応答し、そのメモリに書き込まれている画像情報、文字情報、制御情報を読み取つて解釈して画像メモリ上に画像データを展開する第2の印刷データ生成手段と、第1および第2印刷データ生成手段によって前記画像メモリに書き込まれた画像データを用紙に印刷する印刷手段とを備えたプリンタ。」(1頁左下欄特許請求の範囲)
イ.「文字コードを文字の描画データに変換するためのフォントメモリ10や、ファクシミリ画像情報のようにデータ圧縮された画像情報を元にもどすためのデータ伸長部11、それに各種の処理の過程でデータの一時記憶場所となる作業用メモリ12などを備えている。」(3頁右上欄18行〜左下欄3行)
ウ.「ICカード6は超小型コンピュータ、ワードプロセッサ、電子手帳あるいはファクシミリ受信装置などの情報機器にセットされていて、これら情報機器によってICカード6に印刷したい情報が書き込まれる。」(3頁左下欄末行〜右下欄4行)
エ.「ICカード6を・・・プリンタのカード挿入口にセットする。するとメモリインタフェース5内のセンサでカード挿入が検知され、その検知信号に応動してCPUlが印刷処理を開始する。まずメモリインタフェース5を介してICカード6の管理情報P(1〜n)rsvを読み出し、P(1〜n)が記録されるべきか否かを判別する。次に管理情報P(1〜n)hdrを読み出しP(1〜n)の先頭アドレスを認識し、画情報を作業用メモリ12、データ伸長部11、フォントメモリ10などに転送する。そして、圧縮された画像情報であればデータ伸長部11で元にもどして画像メモリ9にドットパターン展開し、コードによる文字情報であればフォントメモリ10でフォントに変換して画像メモリ9にドットパターン展開し、場合によってはこれらを合成したドットパターン画像データを作成する。画像メモリ9のデータは順次プリンタエンジン7に送られてプリントアウトされる。」(3頁右下欄9行〜4頁左上欄7行)

2.引用例記載の発明の認定
記載ウ,エの「ICカード6」が記載アの「可搬型メモリ」の例であり、ここには「超小型コンピュータ、ワードプロセッサ、電子手帳あるいはファクシミリ受信装置などの情報機器」によって、画像情報、文字情報及び制御情報が書き込まれる。
したがって、引用例には次のようなプリント方法が記載されていると認めることができる。
「超小型コンピュータ、ワードプロセッサ、電子手帳あるいはファクシミリ受信装置などの情報機器によって可搬型メモリに画像情報、文字情報及び制御情報を書き込み、
画像情報、文字情報及び制御情報を書き込んだ前記可搬型メモリをプリンタのカード挿入口にセットし、前記プリンタは画像情報、文字情報及び制御情報を読み込み、前記プリンタ内の画像メモリにドットパターン展開し、前記画像メモリのデータをプリンタエンジンに送ることによりプリントアウトするプリント方法。」(以下「引用発明」という。)

3.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
引用発明の「可搬型メモリ」、「画像情報」及び「制御情報」は、本願発明の「着脱可能な記憶媒体」、「画像データ」及び「プリント出力制御データ」にそれぞれ相当し、「画像情報、文字情報及び制御情報」は「可搬型メモリ」を介してプリンタに伝達されるから、引用発明は「オフラインプリント方法」であり、「可搬型メモリ」への「画像情報、文字情報及び制御情報」の書き込みと「オフラインで生成および格納」に相違はない。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「着脱可能な記憶媒体にオフラインで生成および格納された画像データを、前記記憶媒体にオフラインで生成および格納された前記画像データのプリント出力制御データに基づいてプリント出力するオフラインプリント方法。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉「プリント出力制御データ」につき、本願発明が「複数の画像データファイルフォーマットより選択された画像データファイルフォーマットに基づい」たデータであり、「画像データファイル名とは別に、前記画像データの前記画像データファイルフォーマットに関する情報を有する」との限定を付しているのに対し、引用発明は同限定を付していない点。

4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
「画像データファイルフォーマット」と「プリント出力制御データ」の関係につき、本願明細書には、「画像データファイルフォーマットとしてTIFFを選択した場合、データ圧縮方法はG3(MH)、G4(MMR)、RLE(ランレングス)、LZWが選択でき、デフォルトはG3である。」(段落【0044】)及び「画像データファイルフォーマットとしてTIFFを選択した場合のみ、TIFF Compressionの選択項目が有効である。」(段落【0056】)との各記載があり、これ以外に「出力制御データ」及び「画像データファイルフォーマット」の関係について記載した箇所は見あたらない。
また、本願明細書の「画像ファイル名はsample.tifである。」(段落【0057】)との記載によれば、「画像データファイル名」が拡張子を含む趣旨であることは明らかである。
そうすると、「画像データファイルフォーマット」、「プリント出力制御データ」及び「画像データファイル名」3者の関係として例示されているのは、画像データファイルフォーマットとしてTIFFを選択した場合、拡張子である「tif」だけではデータ圧縮方法を特定できないため、拡張子を含む画像データファイル名とは別に、選択したデータ圧縮方法を記憶媒体にプリント出力制御データの1つとして格納することだけである。すなわち、「複数の画像データファイルフォーマットより選択された画像データファイルフォーマットに基づい」たデータとは、すべての画像データファイルフォーマットに対して選択することまでは要求されておらず、1つの画像データファイルフォーマットに対して何らかの選択を行ったデータであってもよく、「画像データファイル名とは別に、前記画像データの前記画像データファイルフォーマットに関する情報を有する」とは、拡張子だけでは特定できないデータ圧縮方法に関する情報を有することであってもよい。
引用例の記載イ,エにあるように、引用発明の「画像情報」は、「圧縮された画像情報」を含むことを予定しており、当然プリンタはそれを展開できなければならない。また、「画像情報」は、適宜のファイル名を付したファイルとして「可搬型メモリ」に格納されることが一般的であり、「圧縮された画像情報」であれば、tif,jpg等「画像データファイルフォーマット」に対応した拡張子を付したファイル名とすることも一般的である。ところで、「圧縮された画像情報」のための「画像データファイルフォーマット」によっては、同一拡張子であっても、複数のデータ圧縮方法からその1つが選択されることは周知である。本願明細書の上記記載もそのことを前提としたものと解さねばならない。
そうすると、「画像データファイル名」の拡張子だけでは、どのデータ圧縮方法によりデータ圧縮されているのかプリンタは認識できないから、データ圧縮方法についての情報をプリンタに伝達すべきことはいうまでもない。なお、オフラインプリントではないものの、データ圧縮方法についての情報を画像再生側(プリンタを含む)に伝達すべきであることは、例えば特開平3-265371号公報に「圧縮方法に関する情報を相手装置に送信する」(1頁左下欄8〜9行)と、特開平6-282501号公報に「プリンター10へ送信されるデータの第一のバイトは、データ圧縮情報も含んでいる。」(段落【0025】)と、及び特開平5-233771号公報に「ヘッダーには、・・・データ圧縮処理に用いた画像データ圧縮パラメータ65・・・などが書き込まれる。」(段落【0005】)と記載されていることからみて、周知というべきであるから、上記判断の正当性については疑いの余地がない。ところで、引用発明はオフラインプリント方法であり、「圧縮された画像情報」はプリンタではなく「超小型コンピュータ、ワードプロセッサ、電子手帳あるいはファクシミリ受信装置などの情報機器」によって作成されるのだから、圧縮方法をプリンタに伝達するに当たっては、「可搬型メモリ」に格納せざるを得ない。
したがって、引用発明を出発点として、「圧縮された画像情報」を「拡張子を含むファイル名だけでは圧縮方法を特定できないファイル」を含む複数のものとし、画像データファイルフォーマットが拡張子を含むファイル名だけでは圧縮方法を特定できない場合に、選択された圧縮方法を制御情報に加えること、すなわち、相違点に係る本願発明の発明特定事項に至ることは当業者にとって想到容易である。また、同発明特定事項を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
すなわち、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-10 
結審通知日 2005-11-15 
審決日 2005-11-28 
出願番号 特願2002-196467(P2002-196467)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 立澤 正樹  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 國田 正久
藤本 義仁
発明の名称 オフラインプリント方法、出力制御データの作成方法、およびプリント装置  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  

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